電磁界の無法地帯ー第1章 (ARMADA International)

ウクライナでの教訓には、いわゆる電子戦に関する内容も多く含まれている。今回紹介するのは、ARMADA Internationalに掲載の電子戦に関する出版物である。ウクライナでの無人航空機・ドローンの飛躍的な進展が話題となっているが無人航空機・ドローンをめぐる攻防において電磁スペクトラムの果たす役割は極めて大きい。この出版物は3つの章から成っており、第1章では無人航空機・ドローンの攻防は、正に電磁界における攻防となっている様相を述べている。(軍治)

電磁界の無法地帯

THE ELECTROMAGNETIC WILD EAST

Electronic Warfare by ARMADA International Special Edition

はじめに

ウクライナがロシアを自国領土から追い出そうとする闘いは、すでに12年が経過している。その間、双方は厳しい教訓を学んできた。この戦争は、ドンバスの血みどろの戦場と同様に、無線のスペクトラム(radio spectrum)でも闘われており、そして世界中のウクライナ支持者や反対派の心の中においても繰り広げられてきた。

これまでの紛争から導き出された多くの結論の一つは、無人航空機(UAV)が戦術、作戦、戦略の各レベルにおいて決定的な役割を果たし得るという点である。無人航空機(UAV)戦の結果として、ウクライナとロシアの電子戦(EW)活動の多くは、現在、無線のスペクトラム(radio spectrum)の活用に重点が置かれている。この無線のスペクトラム(radio spectrum)は、無人航空機(UAV)が依存する無線信号を通じて無人航空機(UAV)を検知できる環境である。これらの信号は、ジャミングによって悪用される可能性のある攻撃の対象となる脆弱領域(attack surface)を表している。

無人航空機(UAV)をめぐる戦いの激化に伴い、対無人航空機(CUAV)システムの研究、デザイン、開発、試作、生産、配備に向けた産業界の取り組みも相応に活発化している。こうしたシステムの多くは、無線のスペクトラム(radio spectrum)を利用して無人航空機を検知し、妨害を行っている。

一方、双方はともに、全地球測位システム(GNSS)の位置・航法・時刻(PNT)信号に依存している。位置・航法・時刻(PNT)信号の送信は、無人航空機(UAV)や精密誘導兵器の誘導に役立つだけでなく、極めて重要な正確な時刻情報源も提供している。同時に、通信インテリジェンス収集や通信ジャミングといった伝統的な電子戦(EW)任務も継続されている。

本報告書では、ウクライナとロシアの間で続くスペクトラムをめぐる戦い(spectrum battle)について論じる。また、ウクライナの電子戦産業戦略が、いかにして大量かつ迅速に提供される反応型および先制型の能力を開発・配備しているかを解説する。この戦略は、電子戦能力の調達におけるウクライナの革新的なアプローチによって支えられている。

電磁領域での機動(electromagnetic manoeuvre)と革新的な産業戦略および調達プロセスを融合させることで、ウクライナは「電磁的優越(Electromagnetic Superiority and Supremacy: E2S)」を獲得し、維持することができる。「電磁的優越(E2S)」を確保することは、ひいては勝利に向けた極めて重要な一歩となる。ロシアと北大西洋条約機構(NATO)間の緊張が緩和する兆しが見られない中、同盟国はこの点に留意すべきである。

本特集号の制作にあたっては、ウクライナでの現地調査を行い、関係者や戦場、企業、団体を訪問する必要があった。『アルマダ(Armada』誌は、インタビューの手配や有益なフィードバックを提供し、調査旅行中に素晴らしい交流の場を設けてくださった、グリーン・フラッグ・ベンチャーズのデボラ・フェアラム(Deborah Fairlamb)とジャスティン・ジーフェ(Justin Zeefe)、ユリア・ムラスコワ(Julia Muraskova)博士、『カウンターオフェンシブ(Counteroffensive』のティム・マック(Tim Mak)、ならびにウクライナ国防省(MOD)およびBrave1のスタッフの皆様に深く感謝する。

Falcons社、Himera社、Infozahyst社、Kvertus社、TAF Industries社、Teletactica社、Unwave社のスタッフは、惜しみなく時間と知見を提供してくださった。また、ウクライナ軍および同盟軍の関係者数名(匿名を希望)からも、計り知れないほどの支援、洞察、分析を提供していただいた。さらに、キーウのマイダン広場にあるカフェ「アイディアルリスト」の従業員の方々にも、著者に尽きることのないカプチーノを惜しみなく提供してくださったことに、心からの感謝を捧げたいと思う。

第1章-電磁界の狂騒

無人航空機は、現在進行中のウクライナ戦争における象徴的な兵器となっている。紛争が長期化するにつれ、これらの航空機はますます高度化し、その破壊力も増している。

無人航空機による戦闘は、ウクライナにおける広範な無線のスペクトラム(radio spectrum)をめぐる争いにおいて重要な要素となっているが、依然として対処すべき伝統的な電子戦上の脅威も残っている。

トーマス・ウィティントン(Thomas Withington)

人々はそれを「キル・ゾーン(kill zone)」と呼んでいる。ウクライナの最前線(zero line)に隣接し、その両側に20キロメートル(12.4マイル)から50キロメートル(31マイル)にわたって広がる一帯のことだ[1]。焼け焦げ、荒廃し、血に染まったその風景は、現在進行中のウクライナ戦争における象徴的な兵器、すなわち無人航空機(UAV)の痕跡を如実に物語っている。どの戦争にも、その戦争を象徴する死の道具があるものだ。

第二次世界大戦において、Uボート、戦車、そして最終的には原子爆弾は、その戦争の代名詞となった。1965年から1975年にかけてのベトナム戦争における米国の関与は、優れたロック音楽と同様に、ベル社製UH-1ヒューイ中型輸送ヘリコプターと深く結びついている。エアロスパシアル/MBDA社製のエグゾセ対艦ミサイルは、1982年のフォークランド/マルビナス紛争の象徴となった。

1991年の「砂漠の嵐作戦」において、精密誘導兵器は象徴的な兵器であった。即席爆発装置(IED)は、アフガニスタンやイラクでの長期にわたる対反乱戦争の代名詞となった。無人航空機(UAV)は、ウクライナ戦争と永遠に結びつけられることになるだろう。

無人航空機(UAV)は、現在進行中の戦争における戦術的、作戦的、戦略的な戦闘において不可欠な存在である。一人称視点型無人航空機(FPV UAV)は、ターゲットを探して「キル・ゾーン(kill zone)」を縦横無尽に飛び回っている。前線基地、車両、兵器、センサー、さらには個々の兵士までもが、すべて危険にさらされている。一人称視点型無人航空機(FPV UAV)は、ターゲットを特定するために、インテリジェンス・監視・偵察(ISR)データ、特に映像データを収集している可能性がある。

これらのターゲットは、その後、通常砲兵による攻撃、地上部隊の機動、あるいは最も可能性が高いのは、航空機から投下される無人航空機配送爆弾(UAV-delivered ordnance)や、自爆型無人航空機(suicide UAV)によって攻撃されることになる。

無人化された戦闘

2024年8月以降、光ファイバー無人航空機(FO UAV)という新たな脅威が戦場に現れた。光ファイバー無人航空機(FO UAV)は、機体から引き出される光ファイバー・ケーブルを用いて制御される。このケーブルは、機体が収集したあらゆるインテリジェンス・監視・偵察(ISR)データをパイロットおよび地上管制ステーション(GCS)へ送信する役割も担っている。光ファイバー無人航空機(FO UAV)の利点は、パイロットと機体を結ぶ無線周波数(RF)リンクを介して制御されない点にある。また、機体が収集したデータも、無線信号を用いて地上管制ステーション(GCS)に送信されることはない。

2024年の夏頃から、ウクライナの戦場に光ファイバー無人航空機(FO UAV)が登場し始めた。これらの機体は、従来の電子戦戦術に対してほぼ無敵である。

無線周波数(RF)に依存しない無人航空機を採用することには、2つの大きな利点がある。無線リンクが介在しないため、航空機と操縦者の間、あるいはその逆の方向に信号が送受信されることがない。一方、無線周波数(RF)リンクを採用した従来の無人航空機(UAV)は、これらの無線信号によって検知、位置特定、識別(以下、「処理」と呼ぶ)が可能となる。これらのリンクを処理することで、無人航空機(UAV)およびその操縦者の位置を特定することができる。

ジャミング信号が無人航空機(UAV)の無線周波数(RF)受信アンテナに送信されると、操縦者と機体との通信が遮断される可能性がある。これにより、機体はその場に着陸するか、出発地点に戻る場合がある。

いずれにせよ、その無人航空機(UAV)の任務は終了する。機体への無線信号を通じてパイロットの位置を特定することは、パイロットの居場所を突き止め、攻撃できることを意味するかもしれない。光ファイバー無人航空機(FO UAV)は無線リンクに依存しないため、任務を遂行するために全地球測位システム(GNSS)コンステレーションからの位置・航法・時刻(PNT)信号を受信する必要はない。全地球測位システム(GNSS)の位置・航法・時刻(PNT)信号の受信をジャミングして無人航空機(UAV)の出撃を阻止しようとする試みは、すべて失敗に終わるだろう。

一方、従来の無人機は、位置・航法・時刻(PNT)信号の受信が途絶えると任務を終了してしまう可能性があるが、光ファイバー無人航空機(FO UAV)は、インテリジェンス・監視・偵察(ISR)情報の収集、兵器の投下、および/または自爆攻撃のいずれか、あるいはそのすべてを行う能力を備えている。

光ファイバー・ケーブルの長さによって制約はあるものの、ウクライナでは、航続距離が約40km(25マイル)に達する光ファイバー式無人機(FO UAV)の存在が確認されている。これまでのところ、有効な防御手段としては、散弾銃の弾丸のような従来の物理的攻撃手段、および/または指向性エネルギー兵器(DEW)のいずれかが唯一の選択肢であるようだ。高出力レーザーなどの指向性エネルギー兵器(DEW)は、2025年にウクライナの戦場で登場し始めた。高出力マイクロ波兵器は、今年末までに戦場で目にするようになる可能性が高い[2]

光ファイバー無人航空機(FO UAV)が戦場で大混乱を引き起こしている一方で、ウクライナでは重要な国家インフラに対する戦略的攻撃を受けており、この画像が示すように、シャヘド型自爆無人航空機(Shahed suicide UAV)がウクライナの変電所を攻撃した。

ウクライナでは、無人航空機(UAV)が作戦レベルおよび戦略レベルにおいても課題となっている。

イラン・イスラム共和国から調達され、ロシアでライセンス生産された「シャヘド」型自爆無人航空機(Shahed suicide UAV)「キル・ゾーン(kill zone)」外のターゲットを攻撃する。一部のシャヘド・モデル(Shahed models)は、最大810海里(1,500km)の距離にある目標を攻撃可能である[3]。したがって、シャヘド(Shahed)はウクライナの重要国家インフラ(Critical National Infrastructure: CNI)のようなターゲットを攻撃するのに最適である。

2025年から2026年にかけての冬、ロシアがウクライナの重要国家インフラ(CNI)を攻撃するために自爆無人航空機(suicide UAV)を使用していたことは明らかであった。これらの兵器は、ウクライナの送電網やエネルギー・インフラに関連するターゲットを攻撃するために使用された。現在もロシアとウクライナの間では、これらの無人航空機(UAV)が依存する無線周波数(RF)リンクを妨害し、電子攻撃を無効化する対電子対抗手段(ECCM)を開発するための、猫とネズミのような駆け引きが続いている。

対無人航空機(anti-UAV)用ケージを装備したウクライナのナビスター・ディフェンス製MXT-MV装甲車。最前線(zero line)付近に展開する大型装甲車は、自爆無人航空機(suicide UAV)による攻撃に対してますます脆弱になっている。

シャヘド(Shahed)は、ターゲットの位置を特定するために、出撃の少なくとも一部の期間において全地球測位システム(GNSS)の位置・航法・時刻(PNT)信号に依存している。地上の携帯電話ネットワーク、特に携帯電話基地局とその送信信号は、シャヘド(Shahed)に搭載された無線受信機によって航法支援のために利用される可能性がある。一部のシャヘド(Shahed)には衛星通信(SATCOM)端末が搭載されており、パイロットが視界外から機体を制御できるようになっている。また、互いに視界内にある2機以上のシャヘド(Shahed)を接続するメッシュ・ネットワークも確認されている。

これらの航空機を制御するために複数の無線周波数(RF)依存メカニズムを用いることで、防御側が処理し、攻撃しなければならない電波の数が多くなる[4]

無人航空機を撃墜する

ウクライナの電子戦担当の高官によると、「現在、ウクライナの電子戦活動の最大80%がドローン戦(drone battle)に充てられている」という[5]。戦術レベルでは、無人航空機(UAV)による脅威が陸上部隊の機動の様相を一変させた。通常、地上の支配権は、徒歩の歩兵からなる小部隊によって奪取・維持される。部隊は、スピードが命となる環境下で、起伏の激しい地形を高速で移動するピックアップ・トラックによって、目標地点に可能な限り接近して投入される[6]

前線やその周辺では依然として装甲車両が見られるが、こうしたプラットフォームは無人機(UAV)にとって発見・攻撃が比較的容易である。大型のケージは、これらの車両を自爆ドローン(suicide drones)から守るために設置されている。ロケット推進手榴弾から装甲車両を守るためにアフガニスタンやイラクで用いられたケージを彷彿とさせる状況だ。ピックアップ・トラックも、対無人航空機(CUAV)システムにとって有用なプラットフォームとなっている。

これらの車両には、接近する脅威を処理するための電子支援装置と、無人航空機(UAV)を攻撃するための物理的および/または電子的な効果装置を搭載することができる。このシステム一式は、車両のキャビン内から操作可能である。このような対無人航空機(CUAV)装置は、対無人航空機(CUAV)システムの有効射程内にある車両と兵士を保護することができる。こうした防護措置があるにもかかわらず、徒歩の兵士と車両の両方が、視覚的および電磁的に適切に偽装されていることが依然として不可欠である。また、兵士は車両から降車した後、ジャマーなどの対無人航空機(CUAV)システムをバックパックに携帯する必要がある[7]

全地球測位システム(GNSS)の位置・航法・時刻(PNT)信号ジャミングにより、Starlinkの衛星通信(SATCOM)端末の円滑な運用に支障が生じている。2026年2月現在、ウクライナ国防省(MOD)は、ロシア軍によるStarlinkコンステレーションの不正利用を阻止するという大きな成果を挙げた。

戦術レベルにおける使用中の無線のスペクトラム(radio spectrum)の把握は、無人航空機(UAV)および対無人航空機(CUAV)の運用において極めて重要である。現在、ウクライナでは、無人航空機(UAV)の制御に超短波/超高周波(V/UHF:30メガヘルツ(MHz)~3ギガヘルツ(GHz))帯域の広範囲が使用されている。一人称視点型無人航空機(FPV UAV)の制御チャネルの帯域幅は、使用している無線周波数プロトコルに応じて、300キロヘルツから1メガヘルツの範囲となる。

参考:総務省情報通信白書「我が国の電波の利用状況」https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r07/pdf/n2140000.pdfから抜粋

後者の帯域幅を想定すると、このようなリンクは、このV/UHF帯域全体で2,900以上のチャンネル間をホッピングできる可能性がある。無人航空機(UAV)から地上管制ステーション(GCS)へ映像を送信する無線周波数(RF)リンクは最大40MHzの帯域幅を占有するため、ホッピング可能なチャンネル数は最大74チャンネルとなる。

当然のことながら、無人航空機(UAV)のオペレーターは、探知やジャミングを避けるため、制御信号や映像データが可能な限り広い帯域で伝送されるよう努めている。

「もし国内の無線のスペクトラム(radio spectrum)に空きが生じれば、それを無人航空機(UAV)に活用するつもりだ。なぜなら、そのような空きが再び生じるまでには長い時間がかかるかもしれないからだ」と、ウクライナの電子戦専門家は述べている。

戦術レベルにおいて、無線周波数(RF)を利用しているのは無人航空機(UAV)のオペレーターだけではない。兵士たちは無線機を持ち、民間人は地域の携帯電話サービスに依存しており、ラジオやテレビの放送も続いている。戦術的な無人航空機(UAV)戦闘そのものが、「キル・ゾーン(kill zone)」の無線のスペクトラム(radio spectrum)が「電磁界の無法地帯(the electromagnetic Wild West)」と呼ばれる所以を如実に物語っている。これは、おそらく世界で最も混雑し、争奪戦が繰り広げられている電磁環境を的確に表現した言い回しである[8]。双方は、可能な限り戦術レベルでの無線のスペクトラムの使用(radio spectrum use)を管理するために多大な取組みを払っているが、それでもなお、この途方もない課題を過小評価してはならない。

ロシアは、ウクライナのジャミングをかわすため、無人機(UAV)に制御受信パターン・アンテナを採用したが、  敵対者は、この優位性を無効化する対抗策を開発している。

これまでの紛争におけるロシアの電子戦への取り組みについて、よくある誤解の一つは、ロシアの電子戦部隊がドクトリンに縛られており、戦術的・作戦的な創意工夫を発揮する可能性は低いというものである。しかし、あらゆるレベルのウクライナの電波専門家(spectrum experts)による観察によれば、ロシア軍は適応力、革新力、先制攻撃能力において驚くべき能力を示している。

上司からの反論、あるいはそれ以上の処罰を恐れて、リスクを冒したり率先して行動したりすることをためらうというロシア軍指揮官のイメージとは対照的に、ロシアの電磁戦の実態は正反対のものだ。特に戦術レベルにおいて、ロシアの電子戦要員たちは、ウクライナの             敵対者を包囲網で囲み込むべく、しばしば懸命に活動している。

彼らは、優位性を確保するために、スペクトラムをめぐる戦い(spectrum battle)に新たな技術や戦術を取り入れることを厭わない。以下で詳しく述べるように、光ファイバー無人航空機(FO UAV)の導入や、全地球測位システム(GNSS)の位置・航法・時刻(PNT)信号ジャミングやスプーフィングを回避する手段としての制御受信パターン・アンテナ(CRPA)の採用などが、その好例である。

ウクライナの電子戦担当高官の一人は、「ロシア軍は電子戦の観点から見て、戦術面で非常に独創的だ。彼らは常に状況に適応し、ドクトリンに縛られることなく、極めてプロフェッショナルである」と指摘した[9]。同高官はさらに、ロシア軍の電子戦要員は、既存の戦術・技術・手順を適応させたり、新たなものを開発したりするために、常に活用できる大規模かつ機動性の高い分析チームを有していると述べた。

ドローンを超えて

ウクライナ戦域における電子戦全体において、無人航空機(UAV)をめぐる戦いが中心的な位置を占めているにもかかわらず、ウクライナ軍が対処しなければならないスペクトラム上の脅威(spectrum threat)はこれだけではない。「無人航空機(UAV)をめぐる闘いは非常に激しいが、それははるかに広範な一連の脅威の一部に過ぎない」と、ウクライナ国防省(MOD)は『アルマダ(Armada』誌への書面による声明で述べた[10]。ロシア軍は、指揮・統制(C2)を妨害するため、ウクライナのV/UHF帯の戦術無線および航空機搭載無線をターゲットにするジャミングの送信を続けている。

これに対応して、ウクライナはロシアの指揮・統制(C2)を妨害するため、高周波(HF:3メガヘルツ(MHz)~30MHz)によるジャミングを発信している。主なターゲットは、戦術部隊と指揮官、および指揮官と作戦本部を結ぶ陸上幹線通信網である。また、こうした通信回線を利用した幹線通信をターゲットとするため、衛星通信(SATCOM)への妨害も実施されている。

前述の通り、全地球測位システム(GNSS)の位置・航法・時刻(PNT)へのジャミングは依然として問題となっている。位置・航法・時刻(PNT)信号の受信を妨害することは、無人航空機(UAV)の運用を妨げるだけでなく、Starlink衛星通信端末など、全地球測位システム(GNSS)の位置・航法・時刻(PNT)に依存する他のシステムの円滑な稼働にも影響を及ぼす。Starlink端末は、通信の送受信を行うために、頭上を通過する衛星と同期するために全地球測位システム(GNSS)の位置・航法・時刻(PNT)信号を必要とする場合がある。

ロシアの各戦術用電子支援手段(ESM)は、引き続きウクライナの無線周波数(RF)信号を解析している。ロシアの通信情報(COMINT)部隊による標準的な戦術は、ウクライナの戦術用無線電波を解析して発信源を特定することである。発信源が特定されると、無人機による爆弾投下、自爆型無人機、機動作戦、および/または砲撃によって攻撃が行われる。

電子戦(EW)の格言にあるように、無線を見つけられれば、そのアセットも見つかる。

皮肉なことに、ウクライナもまた、自爆無人航空機(suicide UAV)や一部の地対地ミサイル攻撃から戦略的ターゲットを守るために、全地球測位システム(GNSS)の位置・航法・時刻(PNT)信号ジャミングに依存している。無線のスペクトラム(radio spectrum)の使用を世界的に規制する国連機関である国際電気通信連合(ITU)は、1.1GHzから1.6GHzの周波数帯域において、全地球測位システム(GNSS)コンステレーションの使用のためにいくつかの周波数を割り当てている。

ロシアの兵器が、米国のGPS、欧州連合(EU)のガリレオ(Galileo)、中華人民共和国の北斗(Beidou)、およびロシアのGLONASS(GLObal’naya NAvigatsionnaya Sputnikovaya Sistema)のコンステレーションからの信号を受信できないようにする全地球測位システム(GNSS)ジャマーは、ターゲットの防護において重要な役割を果たしている。とはいえ、ロシアがウクライナの全地球測位システム(GNSS)ジャミング・システムに対抗する対電子対抗手段(ECCM)を開発していることから、ウクライナとロシアの間では絶え間ない競争が続いている。

例えば、シャヘド型自爆無人航空機(Shahed suicide UAV)などのシステムに搭載されているロシア製の位置・航法・時刻(PNT)受信機は、制御受信パターン・アンテナ(CRPA)を用いて位置・航法・時刻(PNT)信号ジャミングやスプーフィングを検知し、ジャマーの方位を特定した上で、その方向から届く悪意のある信号を無視する。その代わりに、制御受信パターン・アンテナ(CRPA)はジャミングの影響を受けていない方向から届く位置・航法・時刻(PNT)信号を受信する。この戦術に対する典型的な対応策の一つは、潜在的なターゲットをあらゆる角度をカバーする全地球測位システム(GNSS)の位置・航法・時刻(PNT)信号ジャマーで包囲し、受信アンテナが局所的なジャミングやスプーフィング信号から逃れられないようにすることである[11]

ウクライナ国防省(MOD)は、ウクライナ軍が電磁スペクトラム(electromagnetic spectrum)で機動を展開し、ロシアの敵対者に対して優位な立場を確立しようと絶えず努力している状況において、自らが直面する課題を的確に要約している。

同国の優先課題には、無人航空機(UAV)からの防御を目的とした電子戦システムの活用が含まれる。展開中の部隊とその戦力を守るためには戦術レベルでの防御が必要であり、また、「キル・ゾーン(kill zone)」の外側にある潜在的なターゲットを保護するためには、作戦レベルおよび戦略レベルでの防御も必要とされる。

これらの優先事項は、電子戦アーキテクチャの国内開発および生産を通じて達成されることになる。ウクライナがこれらの到達目標を達成するためには、同盟国による支援が引き続き重要となる。後者に関して、ウクライナ国防省(MOD)の声明は、「支援には、ウクライナが電子戦装備の自国での生産および修理体制を確立できるよう、最新技術の移転を含めるべきである」と強調した。

もう一つの優先事項は、「新型電子戦装備の開発における共同協力」である。特に注目されるのは、人工知能(AI)、ロボティクス、および電子戦訓練支援の分野における協力である[12]。以下の章では、ウクライナの産業基盤と調達プロセスがこれらの課題にどのように対応しているか、またそのために同国が採用している独自のアプローチについて検証する。

ウクライナへの高出力マイクロ波兵器の配備が間近に迫り、その展開が予想されていたが、戦場への光ファイバー誘導型無人航空機の配備により、その動きはさらに加速している。

ノート

[1] Miller, C, Campbell, C, Andringa, P, Joiner, S, ‘Inside the ‘kill zone’’, 23rd February 2026 https://ig.ft.com/ukraine-kill-zone/, consulted 1st April 2026.

[2] Withington, T, ‘The Wire: Electromagnetic Warfare Against Fibre Optic UAVs’, on-demand webinar given to the Association of Old Crows, 19th March 2026.

[3] Deutsch, A, Balmforth, T, ‘Exclusive: Russia produces kamikaze drone with Chinese engine’, 13th September 2024 https://www.reuters.com/world/europe/russia-produces-new-kamikaze-drone-with-chinese-engine-sayeuropean-intel-2024-09-13/, consulted 1st April 2026.

[4] Rosenkranz, M, ‘Russia’s Geran-2E: A Threat to Aviation’, 14th January 2026 https://militaeraktuell.at/en/russias-geran-2e-a-threat-to-aviation/, consulted 1st April 2026; Rogoway, T, Altman, H, ‘Shahed-136 With Cellular Modem Found in Ukraine: What It Means’, 30th November 2023 https://www.twz.com/shahed-136-with-cellular-modem-found-in-ukraine-what-it-means, consulted 1st April 2026; Withington, T, ‘Illicit Channels’, 16th December 2025 https://www.armadainternational.com/2025/12/illicit-channels-milcom/, consulted 1st April 2026.

[5] Interview with senior Ukrainian electronic warfare official, Kyiv, December 2025.

[6] Interview with Ukrainian electronic warfare soldier, Odessa, December 2025.

[7] Ibid.

[8] Ibid.

[9] Interview with senior Ukrainian electronic warfare official, Kyiv, December 2025.

[10] Written statement provided to the author by the Ukrainian Ministry of Defence, December 2025.

[11] Interview with senior Ukrainian electronic warfare official, Kyiv, December 2025.

[12] Written statement provided to the author by the Ukrainian Ministry of Defence, December 2025.