米陸軍はどう闘うか-作戦用兵指針 (U.S. Army)
近年、日本ではウクライナ戦争の教訓を踏まえ、無人機(ドローン)、AI、長射程火力、電子戦(電磁戦)などを活用する「新しい戦い方」が注目されている。また、防衛省の「三文書改定に向けた検討状況」(10月26日)においても、急速に変化する安全保障環境や科学技術の進展を踏まえ、将来の戦い方への対応が重要課題として示されている。しかし、戦いの様相の変化と軍事組織の変革は必ずしも同義ではない。新たな装備や技術を導入するだけでは軍隊は変わらず、教育、訓練、ドクトリン、組織編制、能力開発、予算、人材育成を含む総合的な改革が求められる。
ここで紹介するのは米陸軍の『How the Army Fights(HTAF)』(本文と付録の一部)である。この『How the Army Fights(HTAF)』は、中国との戦略的競争やウクライナ戦争の教訓を背景に策定された作戦用兵指針であり、「収束(Convergence)」「打撃(Strike)」「近接会戦(Close Battle)」「持続力(Endurance)」を軸に将来の陸軍像を示している。HTAFを読むことは、米陸軍の戦い方だけでなく、戦い方の変化を組織変革へどのように結び付けようとしているのかを理解する上で有益であり、日本の防衛力強化や三文書改定を考える際の参考にもなると考える。(軍治)
![]()
![]() |
米陸軍はどう闘うか
作戦用兵指針
HOW THE ARMY FIGHTS
Operational Warfighting Guidance
米陸軍副参謀総長(陸軍参謀総長代行)
2026年10月

序文
陸軍には、我が国を防護し防衛するという神聖な責務がある。「米陸軍の方位角(The Army Azimuth)」は、我々の戦略的方向性(strategic direction)を定め、統合部隊の中核としての陸軍の役割を明確にしている。「米陸軍はどう闘うか(How the Army Fights)」は、その方向性を部隊向けの用兵指針(warfighting guidance)へと具体化するものである。
戦場の様相は変化しつつある。自国はもはや安全な避難所ではなく、対等な敵対者は、我々の部隊が敵と交戦する前に、戦闘力(combat power)の創出および投射能力を妨害しうる。継続的な監視と致死性の増大により、決心の時間(decision time)が短縮されており、我々はより迅速に状況を把握し、判断を下し、移動し、打撃を行わなければならない。
したがって、我々は、地理的優位性や事前構築された陣地を悪用する敵対者を打ち負かすことができるよう、米陸軍を整備しなければならない。戦術的な成功だけでは不十分であり、それを統合部隊にとっての作戦上の優位性へと結びつけなければならない。
「米陸軍はどう闘うか(How the Army Fights)」は、陸軍の陸上戦力を、「収束(Convergence)」、「打撃(Strike)」、「近接会戦(Close Battle)」、「持続力(Endurance)」という4つの相互に依存する作戦要素を通じて体系化している。これらを統合することで、我々は能力と部隊編成を最大限に活用し、作戦的機動(operational maneuver)を生み出すことができる。これらは戦場での行動と戦役の結果を結びつける一方で、態勢、アクセス、パートナーシップ、および戦域インフラは、紛争が始まる前にこれらを運用することを可能にする。
この指針は、米陸軍に対し、戦争への備えの在り方を変えることを求めている。我々は、強力な戦術部隊を構築してきた。今こそ、作戦レベルにおいて組織としての重みをさらに強め、統合部隊が戦術的な成功を戦役上の優位性へと結びつけられるよう確保しなければならない。我が米陸軍総軍(Total Army)として、訓練、教育、ドクトリンの策定、および部隊の編成において、このアプローチを強化していかなければならない。
「米陸軍はどう闘うか(How the Army Fights)」の中心にあるのは、米兵である。技術は我々の活動範囲を広げ、戦闘力を強化するだろうが、戦争は依然として人間の意志の争いである。判断力と規律が重要であり、最悪の状況下でも耐え抜く決意もまた重要である。我々の兵士こそが、依然として我々の決定的な優位性である。
国は我々を頼りにしている。その責任を果たすためには行動が求められる。この文書を読み、実践に移し、勝利への準備を整えよ。
これ(米合衆国、自由、憲法など)を、我々は守る!
第40代米陸軍副参謀総長米陸軍大将クリストファー・C・ラネーブ
![]() |
第1章 統合部隊の基盤
なぜ陸上戦力が依然として統合部隊の基盤であり続けているのか、そしてなぜ米陸軍が近代史において3度目の変革を遂げようとしているのか。
独立宣言が採択される前から、すでに陸軍は存在していた。1775年6月に創設された米陸軍は、米国で最も歴史の長い軍種であり、251年以上にわたり米国の自由を守り続けてきた。憲法は議会に陸軍を編成・維持する権限を付与しており、連邦法は米国陸軍に対し、迅速かつ持続的な陸上戦闘(land combat)に備えて組織・訓練・装備を整えることを義務付けている。今日の戦略指針は、その任務をさらに明確にし、自国を防衛するとともに、世界中で「戦闘能力のある部隊(combat-credible forces)」を展開するよう我々に指示している。
米陸軍は、複雑化の進展、技術的変化の加速、国家間の紛争の増加といった特徴を備えた作戦環境に直面している。修正主義的な大国やならず者国家は、経済、外交、軍事の各分野で協力し、米国の影響力を回避し、国際秩序を崩壊させようとしている。対等な敵対者は、我々の統合部隊の行動の自由を拒否するようにデザインされた対介入アプローチを構築している。
現代の戦争は、精密な致死性の加速化と民主化を特徴としている。兵器の射程(weapons reach)は延伸し、あらゆるドメインで作戦展開が加速し、継続的な監視により隠蔽や奇襲(surprise)がますます困難になっている。あらゆるドメインにおける優越は争われており、敵対者の核戦力が作戦的機動(operational maneuver)を脅かしている。自国領土はもはや安全な避難場所ではなく、敵対者は、我が軍が展開する前に戦力投射を妨害するため、国内の動員体制、鉄道、港湾ネットワークを積極的にターゲットとする準備を整えている。こうした脅威に対抗するためには、新たな作戦的用兵アプローチが必要とされている。
統合部隊は、決定的な陸上統制の達成、クロスドメイン効果、および統合作戦の基盤となる陸上を基盤とする能力の提供において、米陸軍に依存している。我々の存在は、同盟国やパートナー国の陸上戦力ネットワークを結びつけ、戦域へのアクセスを確保し、継続的な存在感を維持し、相互運用性を可能にするものである。
要点
陸上戦力は統合部隊の基盤である。統合部隊は、決定的な陸上統制の達成、クロスドメイン効果、および統合作戦の基盤となる陸上を基盤とする能力の提供において、米陸軍に依存している。
我々の不変の目的は、創設以来変わることなく、国家の戦いと戦争に立ち向かい、勝利を収めることである。その目的は不変である。しかし、その目的を達成する方法は、脅威の変化に応じて変化する。過去10年間、米陸軍はマルチドメイン対応編成(multidomain-capable formations)を編成し、戦術的な致死性を向上させてきた。今日繰り広げられている戦争は、その作戦コンセプトの根底にあるあらゆる前提に影響を与えており、我々の用兵コンセプトもそれに応じて適応していかなければならない。
I. モジュール性からマルチドメイン作戦へ
米陸軍がモジュール性からマルチドメイン作戦(MDO)へと転換したのは、脅威の変化や、各階層にわたるより高度な統合と縦深を求める作戦環境の要請を反映したものである。精密打撃兵器、長距離センサー、レイヤー化した防空(layered air defenses)が普及する中、対等な敵対者との大規模な戦闘(large-scale combat)において、米陸軍の組織化や闘うための準備の限界が露呈した。高度な「接近阻止・領域拒否(A2/AD)」システムを撃破し、陸・空・海・宇宙・サイバー空間にわたって戦果を統合するため、米陸軍はマルチドメイン作戦(MDO)のコンセプトを策定し、師団を主要な戦術階層として復活させた。
米陸軍は2022年にマルチドメイン作戦(MDO)を作戦コンセプト(operating concept)として採用し、包括的なドクトリンを確立するとともに、用兵能力の近代化を図り、紛争環境下における複雑なマルチドメイン作戦(MDO)シナリオを想定した訓練を改善し、その闘いの方法(way of fighting)を支援できるよう部隊を再編した。米陸軍は以下の取り組みを行っている。
▪ 階層ごとに変革を進め、戦域軍におけるマルチドメインの支援能力(multidomain enablers)に焦点を絞り、師団を戦術行動の単位とし、よりスリムで、より高い致死性と残存性を備えた戦闘旅団(combat brigades)を構築する。
▪ 新型の極超音速兵器、中距離能力(MRC)、高機動ロケット砲兵システム(HIMARS)、および拡大した射距離(extended ranges)や海上打撃能力を強化するための先進的な弾薬などを含む、長距離精密火力を展開した。
▪ 新たな統合火力防御能力(IFPC)、機動型短距離防空(M-SHORAD)、および無人航空機(UAS)探知能力を統合したレイヤー化した防空・ミサイル防衛。
▪ 次世代の兵器や光学機器を導入し、近接戦闘部隊(close-combat forces)を近代化した。
▪ マルチドメイン作戦(MDO)条件下における戦術部隊の機動性と敏捷性を向上させるため、歩兵分隊用装甲車(FISV)やその他の最新型プラットフォームを配備した。
▪ あらゆるドメインで優位性をもたらす移動型衛星および地上リンクを活用し、指揮・統制ネットワークを近代化した。
米陸軍は、旧式の装備や部隊を整理し、重複する戦術的移動部隊(tactical mobility fleets)や過剰な司令部を削減し、その資源を、より少数でより大きな効果をもたらす能力に再投資することを選択している。
その取り組みは現在も続いている。ロボット技術、自律システム、人工知能、および対無人システム能力は、指揮・統制や後方支援体制がそれに追いつく形で、部隊に大規模に導入されなければならない。今日の紛争は、こうした能力がいかにして速度、観測能力、残存性、そして作戦のテンポを一新しているかを示している。それらの教訓は、現在、「米陸軍はどう闘うか(How the Army Fights)」に反映されている。
II.現代戦
ウクライナやガザにおける現在の紛争、そしてアジアにおける覇権を争う大国による威嚇は、米陸軍が任務遂行の準備を進める中で直面する脅威の広範さと複雑さを如実に示している。2022年のロシアによるウクライナ侵攻は、現代の陸上戦(land warfare)が持つ規模と破壊力を浮き彫りにした。
戦闘開始から数週間が経過すると、双方は機動能力を失い、紛争はマイル単位ではなくヤード単位の攻防へと変わった。こうした陣地戦(positional warfare)の膠着状態を受けて、一部からは「地上機動の終焉(death of ground maneuver)」を時期尚早に宣言する声も上がった。彼らは、継続的な観測、無人システムの普及、AI駆動のターゲティング、そして長距離打撃によって定義される「透明化された戦場(transparent battlefield)」において、地上での攻勢的移動はもはや時代遅れになったと主張したのである。
こうした主張は、戦術的な破壊を作戦上および戦略上の成功と混同している。長距離火力は遠方から敵のネットワークを弱体化させるが、スタンドオフ攻撃(standoff)だけでは、敵を降伏に追い込むことはめったにない。敵が支配する地域を奪取し、敵の意思に反してその支配を確立できるのは、地上機動のみである。戦略的目標を達成するには、統合・連合作戦地域全体およびその奥深くに至るまで、作戦レベルの機動に対して統一された統合アプローチを適用する必要がある。航空・海上部隊はそれぞれのドメインにおいて優越と支配権を確立し、一方、宇宙・サイバー能力は敵対者のターゲティングを妨害し、友軍のネットワークを防護する。その後、陸上部隊はこうした状況を活かし、行動の自由を確保するとともに、必要に応じて諸兵科連合機動(combined arms maneuver)を展開して敵を撃破し、地盤を掌握・保持し、戦果を確固たるものにする。
ウクライナでの紛争はまた、センサーの普及が部隊の隠蔽能力に課題をもたらし、地上機動を著しく制限していることを示している。しかし、戦場の透明化は避けられない運命というわけではない。それは、敵の観測が妨げられず、部隊のシグネチャが管理されていない場合にのみ生じるものである。欺瞞、隠蔽、分散、そして積極的な対偵察活動を通じて、友軍部隊は敵の作戦状況図(operating picture)を混乱させ、歪めることができ、戦場の透明化が決して保証されたものではないことを証明できるのである。
要点
戦場の透明性は固定されたものではない。それは、ある勢力が状況把握を深め、効果的に行動する一方で、敵対者が同様の行動をとる能力を阻害することで得られる相対的な優位性である。
2023年10月にイスラエルで発生したテロ攻撃に続くガザでの作戦は、高密度な都市部および地下での戦闘が抱える課題を浮き彫りにした。高度なセンサーや精密打撃だけでは、塹壕に潜むネットワークを撃破するには不十分であることが判明した。地域を制圧し、安全を確保するためには、周到に計画された諸兵科連合機動(combined arms maneuver)が必要とされた。高烈度かつ持続的な交戦は、2つの要件を浮き彫りにしている。すなわち、弾薬の備蓄量と、スタンドオフ攻撃(standoff)だけでは解決できない事態に対処できる陸上部隊である。
これらの教訓は、「強さによる平和(peace through strength)」を掲げ、敵対者の目標達成を阻止することを求める国家戦略指針に対する我々の対応を形作っている。米陸軍にとって、これは、部隊と能力を前線に展開させ、同盟国やパートナーと定期的に演習を行い、作戦的機動(operational maneuver)に熟達した部隊を擁することを意味する。また、冷戦時代の世代がソ連軍に対して示したのと同じ組織的な重点を置いて、人民解放軍(PLA)-すなわち「米陸軍の能力整備を規定する脅威(pacing threat)」※-に対抗するための組織編成、訓練、装備を整えることも求められる。
※ pacing threatとは、2018年12月6日発行の「TRADOC Pamphlet 525-3-1 The U.S. Army in Multi-Domain Operations 2028」で、使用された用語で米陸軍がロシア軍の能力を評価して使用した用語で、米陸軍における「作戦コンセプト、フォース・デザイン、能力開発の検討を具体的に律する想定脅威」という意味を持つとされる。本文書によると現在では中国人民解放軍(PLA)のことを指している。この趣旨から翻訳では、「米陸軍の能力整備を規定する脅威(pacing threat)」とした。
III.制度上の変化への道
第二次世界大戦の終結以来、米陸軍は新たな作戦上の脅威に対処するため、繰り返し再編を行ってきた。1950年代、新設された統合部隊が原子力戦場の利点と危険性について議論を重ねる中、米陸軍は「ペントミック師団」を導入した。これは、陸軍の核心となる戦術的構造を根本から再デザインしたものであった。5つの自立型戦闘群を中核として編成された各師団は、広範囲への分散配置、縦深への迅速な展開、そして各部隊が上級司令部から切り離された状態で戦闘を行うことを前提とした分散型ミッション・コマンドを通じて、核打撃(nuclear strikes)が支配的な時代を生き残るようデザインされていた。
ペントミック実験は結局、失敗に終わった。これは、諸兵科連合機動(combined arms maneuver)という不変の現実ではなく、新技術への期待に基づいて部隊編成をデザインすると、構造的に脆弱な部隊が生まれることを証明したものである。米陸軍は、泥濘地において適切に機動し、生き残り、戦闘を行うために必要な指揮階層、自給自足能力、および統合的な防護が欠如していれば、戦術的な分散(tactical dispersion)や分散型意思決定(decentralized decision-making)は作戦上、空虚なものに過ぎないことを学んだ。米国陸軍は機動型陸軍である。機動を強化しない組織的変化は、歴史的に見て失敗に終わってきた。
ペントミック・デザインの欠点はすぐに明らかになった。それは指揮・統制を阻害し、自部隊の火力を低下させ、青写真上のみに存在し、実証されていない技術に依存していた。ペントミック・デザインは、わずか5年で廃止されることとなった。こうした構造的な欠陥を是正するため、米陸軍は1960年代初頭に「米陸軍再編成目標師団(ROAD)」を成功裏に導入した。「米陸軍再編成目標師団(ROAD)」により中間司令部が復活し、極めて柔軟で状況に応じたモジュール性が実現されたことで、従来型の諸兵科連合能力(conventional combined arms capability)が飛躍的に向上した。
現代の陸軍改革者たちにとって、この時代が示す不変の教訓は明らかである。すなわち、将来のフォース・デザイン(force design)において、組織の厚みを犠牲にしてまで技術的な可能性を追い求めることは許されない。大規模戦闘作戦(large-scale combat operations)のための真の即応性、レイヤー化した致死性、持続的な残存能力、そして指揮系統のあらゆる階層にわたって統合された諸兵科連合機動(combined arms maneuver)が不可欠である。
ベトナム戦争後の1970年代から1980年代にかけて、欧州におけるソ連の従来型の量的集中(conventional mass)に直面した米陸軍は、「数的に劣勢な状況で闘い、勝利する(Fight Outnumbered and Win.)」方法に焦点を当てた脅威主導型の戦術である「エアランド・バトル(AirLand Battle)」を開発し、そのアプローチに革命をもたらした。このドクトリンにより、我々の焦点は、「受動的な消耗」から、縦深まで展開して実行される積極的かつ同期化された作戦」へと移行し、近接戦闘という致死性の闘いに影響を及ぼす前に、縦深打撃(deep strikes)を用いて第2梯隊の敵部隊を瓦解させることを目指すようになった。「エアランド・バトル(AirLand Battle)」は、当組織全体を一つにまとめるきっかけとなり、主要な「ビッグ5」戦闘プラットフォームの急速な統合、下士官団の専門化、そして現実的な訓練環境下で即戦力となる指導者を育成するための戦闘訓練センター(CTC)の進化を推進した。さらに、「エアランド・バトル(AirLand Battle)」のドクトリンは、「米陸軍86(the Army 86)」(「師団86(Division 86)」を含む)の再編とうまく組み合わされ、ソ連との欧州戦において必要とされる縦深機動能力(deep maneuver capability)の構築に成功した。
この時代から得られる不変の教訓は、一貫性があり、脅威を基軸とした作戦コンセプト(operating concept)が、能力開発や部隊編成に先立ち、それらを決定づけるべきであるということだ。「エアランド・バトル(AirLand Battle)」は、訓練、リーダーシップ、技術を単一の作戦コンセプトに整合させることで枠組みを確立し、「米陸軍はどう闘うか(How the Army Fights)」は、この枠組みを踏襲して、米陸軍全体にわたる制度的変化を推進することになる。
9.11以降の時代は、これまでとは異なる一連の組織的課題をもたらした。同時進行する対反乱作戦(counterinsurgency operations)の要求に応えるため、米陸軍は組織を拡大・モジュール化を進め、現役部隊および予備役部隊を合わせて戦闘旅団(BCT)の総数を46%増加させるとともに、展開部隊へ直接、専門的な能力を迅速に配備した。20年以上にわたるローテーション展開を通じて、米陸軍は、空と海の優位性、および自国からの妨げのない兵站ルートを活用しつつ、固定された前方拠点から作戦を行うことに慣れていった。
こうした経験により、敵との空中戦下での機動や、電磁シグネチャの隠蔽、あるいは民間業者の支援なしに高いテンポの作戦を継続する必要がほとんどなかった部隊の世代が生まれた。この時代は、対等な脅威と戦うために不可欠な中核的な熟練した諸兵科連合を犠牲にして、当面の状況に合わせた最適化を行うことの危険性を浮き彫りにした。米陸軍が大規模な戦闘作戦に向けて再編を進める中、その作戦アプローチは、統合ドメイン優勢(joint domain supremacy)という時代遅れの前提に依拠してはならない。
致死性の戦場において作戦的機動(operational maneuver)を発揮するためには、米陸軍は、隠蔽(concealment)や奇襲(surprise)がますます困難になっている現代の脅威環境下において、陸上戦力の4つの要素-「収束(Convergence)」、「打撃(Strike)」、「近接会戦(Close Battle)」、「持続力(Endurance)」-を習得しなければならない。これら4つの作戦要素は本質的に相互依存しており、統合部隊が直面する最も複雑な課題を解決するために連携して機能することで、その威力を発揮する。
IV. 陸上戦力の4つの要素
技術的優位性と戦術的な致死性を活かし、米陸軍は今、作戦的用兵に注力しなければならない。米陸軍は、複数のドメインにわたる累積的かつ連続的な行動を通じて、戦術的な勝利を戦略的な成果へと結びつけるため、作戦的機動(operational maneuver)を展開している。
作戦的機動(operational maneuver)は、敵対者にジレンマを突きつけ、収束を利用し敵のシステムを混乱させ、統合部隊を決定的な行動をとれる位置に配置し、戦術的な成功を戦役レベルの優位性へと拡大するものである。この水準の作戦的機動(operational maneuver)を実現するには、以下の4つの作戦要素を適用する必要がある。
「収束(CONVERGENCE)」:全ドメインにわたる効果を意図的に同期させることで、優位性ある立場を創出し、これを活用する。「収束(Convergence)」の要素には、敵に対して投入されるセンサー、指揮ノード、兵器システムの物理的および非物理的な能力やネットワークが含まれる。「収束(Convergence)」は、統合全ドメイン作戦における作戦的機動(operational maneuver)を最大化する。戦域軍および軍団が「収束(Convergence)」を実行する。
「打撃(STRIKE)」:遠距離からの攻勢的な致死・非致死火力を用いて、敵のシステムを弱体化・破壊する。「打撃要素(Strike element)」には、センサー、ターゲティング、集中火力および精密火力、非致死効果、ならびに指揮・統制ネットワークが含まれる。師団から戦域軍に至るまでが「打撃(Strike)」を実行する。
「近接会戦(CLOSE BATTLE)」:諸兵科連合の陸上戦力の階層化された機動を通じて、接触中の敵部隊を包囲、離散させ、破壊、または撃破する。「近接会戦要素(Close Battle element)」には、戦闘部隊、直接火力および間接火力、ならびに指揮・統制が含まれる。「近接会戦(Close Battle)」により、陸域および住民の支配が確立される。師団およびそれ以下の部隊が「近接会戦(Close Battle)」を実施する。
「持続力(ENDURANCE)」:強靭な持続能力と戦力創出を通じて、時間、距離、および紛争下といった状況下においても、態勢を維持し、防衛し、戦闘力を投射する。「持続力要素(Endurance element)」には、兵士の健康、兵站、輸送、警備、対無人航空システム(C-UAS)、防空・ミサイル防衛、サイバー防衛、戦力投射、および強靭なインフラに焦点を置く部隊が含まれる。戦域軍、軍団、およびそれらの支援司令部が、「持続力(Endurance)」を遂行する。
図1. 作戦的機動に適用される陸軍の陸上戦力の4つの要素。 |
第2章:米陸軍の陸上戦力の4つの要素
陸上戦力の4つの作戦要素-「収束(Convergence)」、「打撃(Strike)」、「近接会戦(Close Battle)」、「持続力(Endurance)」-およびそれらがどのように作戦的機動(operational maneuver)を実現するか。
陸上戦力は、地形、資源、および住民を統制するための決定的な能力であり、地上からあらゆる用兵ドメインへと戦力を展開するものである。陸上戦力は、それぞれ異なる縦深と規模で活動する米陸軍、米海兵隊、米特殊作戦部隊、ならびに同盟国やパートナー国の地上部隊を結びつけるものである。米陸軍は、絶えず戦域を設定し、安全保障環境を形成し、重要な地形(critical terrain)を確保しつつ、迅速かつ持続的な陸上戦闘(land combat)を展開する。米海兵隊は、海軍戦役や艦隊支援に不可欠な陸上作戦を展開する。特殊作戦部隊は、インテリジェンスの開発や従来型の部隊のための戦場を形成するために、リスクが高く、目立たない作戦を実施する。地域の同盟国やパートナー国は、自国の領土を守り、集団的な正当性を確立するとともに、かけがえのない現地の専門知識を提供する。
これらの能力が一体となって陸上戦力ネットワークを形成しており、米陸軍はその統合と大規模な運用を支援し、4つの作戦要素を通じて統合戦役および多国籍戦役を指揮している。
「陸上戦力(LAND POWER)」:陸上、資源、人々を統制し、その陸地を拠点としてあらゆるドメインで闘う能力。これは、米陸軍、米海兵隊、米特殊作戦部隊、および同盟国・パートナー国の陸上部隊によって行使され、それぞれが異なる縦深と規模で活動している。
陸上戦力の4つの作戦要素-「収束(Convergence)」、「打撃(Strike)」、「近接会戦(Close Battle)」、「持続力(Endurance)」-は、相互に依存する能力、編隊、および行動として機能し、作戦的機動(operational maneuver)を実現するとともに、統合部隊の統合全ドメイン機動(joint all-domain maneuver)を可能にする。陸軍部隊は、これら4つの作戦要素を活用して、位置的優位性を獲得し、統合・多国籍作戦を可能にし、時間と距離を超えて敵部隊を撃破する。
「収束(Convergence)」を通じて、戦術部隊および軍団は、サイバー・ドメイン、宇宙ドメイン、電磁スペクトラムにわたって能力を同期させ、敵対者のネットワークを機能低下させ、通信をジャミングし、防空体制を混乱させる。こうした状況が整うと、「打撃(Strike)」および「近接会戦(Close Battle)」の要素を同時に実行することで、敵対者を解体し、撃破する。「打撃(Strike)」は、中・長距離の精密火力および無人システムを活用し、敵部隊や兵站アセットが近接戦闘(close fight)に影響を及ぼす前に、それらを混乱させ、戦力を低下させ、配置を乱すという、縦深作戦を形作る役割を果たす。「近接会戦(Close Battle)」とは、友軍部隊が敵に接近し、これを殲滅する、諸兵科連合機動(combined arms maneuver)の決定的な行動である。この枠組み全体を支えているのが「持続力(Endurance)」であり、これは戦域軍および軍団が堅牢な後方支援体制を構築し、レイヤー化した防護を確立し、作戦のテンポを維持するために必要な戦闘力を持続させることによって生み出される。
要点
「収束(Convergence)」と「持続力(Endurance)」が条件を整える。「打撃(Strike)」と「近接会戦(Close Battle)」が決定的な結果をもたらす。
I.収束(convergence)
「収束(CONVERGENCE)」:全ドメインにわたる効果を意図的に同期させることで、優位な立場を創出し、これを活用する。
「収束(Convergence)」とは、作戦的機動(operational maneuver)を統合する主要な要素であり、陸・空・海・宇宙・サイバー空間、および電磁スペクトラムにわたる能力を同期させるものである。指導者たちは、この「収束(Convergence)」を最大限に活用しようと努めている。敵対者は、レイヤー化した防空、先進ノン・キネティック装備(advanced non-kinetic warfare suites)、そして単一の物理的故障点を持たない精密誘導ミサイルで構成される統合型「接近阻止・領域拒否(A2/AD)」ネットワークを運用している。指揮官は「収束(Convergence)」を活用して敵の弱点を暴き、それを突くことで、「打撃作戦(Strike operations)」が敵のスタンドオフ・ネットワークを体系的に解体し、地上部隊が「近接会戦(Close Battle)」を制圧するための道を開くことを可能にする。
この「収束(Convergence)」は、指揮官が敵対者の指揮所に対してキネティックな打撃(kinetic strike)を仕掛ける一方で、電子戦アセットが予備の通信システムをジャミングする状況で顕著に表れる。同時に、長距離砲兵は、友軍航空機を照らし出しながら、露出した敵のレーダーをターゲットとし、一方、友軍の宇宙・サイバー能力は、より広範な統合防空ネットワークの機能を低下させる。時間と空間を超えて同期されたこれらの組み合わせたマルチドメイン効果は、敵対者を孤立させ、残存する敵部隊を空・海上からの打撃にさらすことになる。
「収束(Convergence)」の作戦上の意義は、複数のジレンマを敵に突きつける能力にある。「収束(Convergence)」は、同時多発的な効果と敵のセンサーネットワークに対する持続的な妨害によって敵を圧倒し、統合部隊に優位性をもたらす。サイバー空間での妨害、センサー機能の低下、およびキネティックな打撃(kinetic strike)を同期させることで、連鎖的な作戦上の麻痺を誘発し、敵の「接近阻止・領域拒否(A2/AD)」アーキテクチャを崩壊させ、統合部隊による全ドメインでの機動のための好機を創出する。「収束(Convergence)」を作戦レベルで運用するには、AIを活用したデータ・ファブリックと、あらゆるセンサーを最適なクロスドメインのシューターにリアルタイムで結びつけることのできるエッジ・コンピューティング・ノードが必要となる。
同期は「収束(Convergence)」の基盤ではあるが、両者は同義ではない。同期は、大隊から戦域軍に至るまで、あらゆる階層で発生する。一方、「収束(Convergence)」は、軍団および戦域軍レベルで実行されるものであり、そこでは指揮官が、宇宙、サイバー空間、電磁スペクトラムを含むあらゆるドメインにわたる戦果を統合するための独自の能力、権限、および能力を有している。
これらの部隊は、部隊全体を代表して「収束(Convergence)」を実行し、下位部隊(subordinate formations)が活用できる作戦的機動(operational maneuver)の実行の機会を創出する。
歴史的な逸話
「グローイング・シンフォニー作戦」(2016年)-ISISのデジタル・インフラに対するサイバーを活用した「収束(Convergence)」:米サイバー・コマンド傘下の統合タスク部隊(JTF)ARESは、アマク通信社やアル・ハイヤット・メディア・センターを含むISISのメディア組織をターゲットとし、管理者のアクセス権を無効化し、プロパガンダを削除するとともに、ISISが新規メンバーの勧誘や活動調整に利用していたサーバーの機能を妨害した。サイバー効果(cyber effects)によってネットワーク機能が低下した結果、安全な通信のためにそのネットワークに依存していた主要要員が露呈した。これは、2015年8月にラッカ近郊で行われた空爆と類似しており、その際、ISISの上級ハッカーであるジュナイド・フセイン(Junaid Hussain)は、オンライン上の活動から物理的な居場所が特定された末に殺害された。サイバー効果(cyber effects)は敵の指揮・統制を低下させると同時に、キネティックなターゲティングを可能にするような脆弱性を生み出し、ISISがデジタル・ネットワークとオペレーターの両方を同時に防護する能力を奪った。敵の情報ネットワークおよび指揮・統制(C2)ネットワークに対するサイバー妨害とキネティックな打撃(kinetic strike)を組み合わせた「収束(Convergence)」は、ISISのプロパガンダおよび指揮システムを弱体化させた。
II. 打撃(strike)
「打撃(STRIKE)」:遠距離からの攻勢的な致死・非致死火力を用いて、敵のシステムを弱体化・破壊する。
「打撃(Strike)」は、火力用兵機能(Fires warfighting function)の遂行にとどまらず、単独で機能するものではない。むしろ、「打撃(Strike)」は、移動性(mobility)、指揮・統制、警備、対無人航空システム(C-UAS)防御火力、およびシグネチャ管理を提供する地上機動部隊に依存している。「打撃(Strike)」は、「収束(Convergence)」による敵のセンサー・システムの妨害の恩恵を受ける一方で、長期にわたる作戦を通じて継続的な補給と遠征後方支援(expeditionary sustainment)を行う「持続力(Endurance)」にも依存している。
対等な敵対者に対して、「打撃(Strike)」の作戦上の意義は、高度な「接近阻止・領域拒否(A2/AD)」ネットワークを無力化する能力にある。地下司令部(command bunker)、輸送・設置・発射装置(TEL)、統合防空レーダーを体系的にターゲティングすることで、敵対者の指揮系統を混乱させ、作戦上の結束力を麻痺させることができる。この混乱により、統合部隊は「接近阻止・領域拒否(A2/AD)」バブル内で機動し、あらゆるドメインにわたって戦力を投射することが可能となる。
現代の戦場で生き残るため、「打撃(Strike)」は移動性(mobility)、迅速な分散、隠蔽、および欺瞞を運用する。この絶え間ない移動性(mobility)と分散のテンポを維持するには、各階層におけるミッション・コマンドと、防護・隠蔽タスクの熟練が不可欠である。
「打撃(Strike)」とは、あらゆる戦術・作戦レベルにまたがる相互連携型の能力である。師団や軍団が統合支援能力(Joint enablers)と連携してターゲティング・サイクル全体を統合する一方で、分散配置されたセンサーやシューターにより、下位部隊(subordinate formations)も打撃ネットワークに直接参加できるようになっている。同時に、米陸軍は、伝統的なロケット砲兵をはるかに超える「打撃能力容量(Strike capacity)」の拡充を進めており、発射型兵器(launched effects)、徘徊型弾薬(loitering munitions)、一方向攻撃(OWA)無人システム、および手頃な価格の中・長距離精密火力などを取り入れている。
歴史的逸話
ウクライナ、2025年6月 – 「スパイダー・ウェブ作戦」:6月1日、ウクライナは前線から最大4,300 km離れた5か所のロシア長距離航空基地に対し、117機の一人称視点(FPV)型ドローンを発射した。この多面的な攻撃の結果は壊滅的であった。この「打撃(Strike)」により、敵の戦略的プラットフォームの大部分が、その発生源で排除された。41機以上の戦略機が損傷し、そのうち13機が撃墜された。さらに、ロシアの巡航ミサイル搭載機隊の約34%が、一夜のうちに戦力低下を余儀なくされた。その他の事例については、付録Eを参照のこと。
III.近接会戦(Close Battle)
「近接会戦(CLOSE BATTLE)」:諸兵科連合の陸上戦力の階層化した機動を通じて、接触中の敵部隊を包囲、離散させ、破壊、または撃破する。
「近接会戦(Close Battle)」は、陸上戦力の独自かつ不可欠な作戦要素であり、他の軍種が大規模に再現することは不可能なものである。これは、直接火力および間接火力を通じて陸上で行われる戦い(warfare)を含む。単なる一連の戦術的行動にとどまらず、「近接会戦(Close Battle)」は、陸上戦力の致死的な作戦能力と編成の集合体である。「近接会戦(Close Battle)」は、完全統合された諸兵科連合の要素であり、火力や防護から陸軍航空部隊、戦術的後方支援に至るまで、あらゆる要素を統一指揮の下で同期させるものである。これは「収束(Convergence)」と「打撃(Strike)」によって実現される。「近接会戦(Close Battle)」は常に陸上戦力の決定的な要素であり、敵が最も重視するものを奪取または破壊することで、敵を直接撃破する唯一の要素である。
現代の紛争においては、統合部隊が敵が占領している地域を武力によって奪取し、物理的に支配し続ける能力を備えていることが求められる。ウクライナでの事例が示すように、占領下のドンバス地域にあるロシア軍の弾薬庫に対する高機動ロケット砲兵システム(HIMARS)による攻撃は、ロシア軍の攻勢的火力を行使する能力を著しく弱体化させたものの、占領地からロシア軍を駆逐することには至らなかった。戦略的目標および作戦的目標を達成するため、統合部隊は米陸軍が「近接会戦(Close Battle)」を通じて陸上支配を確立することに依存している。
「近接会戦(Close Battle)」は、短期間では構築できない、極めて高い致死性の地上機動編成に基づいている。それらは、長年にわたる厳しい訓練、組織としての専門知識、そして指導力の上に築かれている。「近接会戦編成(Close Battle formations)」は、敵を粉砕し、次なる戦争の最初の戦いに勝利するために必要な、圧倒的な破壊力、戦術的優位性、そして残存能力を備えていなければならない。
米陸軍は現在、対等な闘いでの「近接会戦(Close Battle)」に向けた転換を進めている。我々の旅団戦闘チーム(brigade combat teams)は、能力と戦術的移動性(tactical mobility)を高めた旅団へと再編されている。これらは、迅速な展開、残存性、そして精密な火力集中を実現するよう最適化されている。こうした近代化された部隊は、センサーの普及、継続的な電子戦、量的に集中した火力が特徴となる戦場において、「近接会戦(Close Battle)」を通じて敵を制圧し、最初の闘いに勝利することができるようになるだろう。
「近接会戦編成(Close Battle formations)」は、9つの接触形態すべてにおける作戦遂行に優れていなければならない。単に直接火力や間接火力による接触にとどまらず、現代の戦場で機動を行うためには、空中接触、視覚接触、電磁波接触への習熟も必要である。「近接会戦編成(Close Battle formations)」は、友軍同士の相互理解に必要な接触を確保・維持しつつ、機動の自由を維持するために敵との接触を遮断しなければならない。「近接会戦編成(Close Battle formations)」が隠蔽や欺瞞の訓練を徹底して行っている場合、戦場は透明な状態にはならない。
脅威の高い戦域において「近接会戦(Close Battle)」能力を前線に展開することは、侵略を阻止し、迅速な対応を可能にする上で極めて重要である。戦域に前線展開された空軍と海軍の統合戦力は、航路や空域を制圧することで敵の進入を阻止する一方、前線展開された「近接会戦編成(Close Battle formations)」は、海上要衝、沿岸回廊、および統合発射施設の安全を確保する。しかし、前線展開だけではあらゆる不測の事態に対応できるわけではない。米陸軍は、「近接会戦(Close Battle)」が必要とされるあらゆる場所に戦闘力を投射できる、機敏な世界規模の対応能力を維持しなければならない。
「近接会戦部隊(Close Battle forces)」は、凍てつく北極から乾燥した砂漠、そして三重の樹冠が広がる密林に至るまで、過酷な環境条件下で勝利を収めるべく、訓練と装備を整えている。米陸軍には、戦場を選ぶという余裕はない。敵には常に選択権があり、彼らは必然的に、見つけられる限り最も過酷な地を選ぼうとするからだ。
「近接会戦(Close Battle)」は、あらゆる軍事的な取組みの中で最も過酷であり、かつ最も人間中心の性質を帯びたものである。しかし、まさにこの人間的要素-個々の兵士の物理的な存在、認知的適応力、そして状況認識に根ざしたもの-こそが、領土の制圧と安定化を可能にするのである。我々は、「近接会戦(Close Battle)」の基盤として兵士の訓練を最優先している。高度な技術の有無にかかわらず、敵対者よりも思考を上回り(out-think)、闘いで凌駕する(out-fight)よう訓練を行っている。自律型システムは、兵士が敵を撃破し、その活動を妨害することを可能にするが、領土を掌握し、獲得した戦果を強化させるために求められる、兵士の人間的な判断力、リーダーシップ、そして物理的な存在感に取って代わることは決してできない。
歴史的逸話
ファルージャ、2004年11月-「ファントム・フューリー作戦」。2004年11月8日、米陸軍および米海兵隊の部隊は、イラクで最も堅固に要塞化された都市拠点の一つであるファルージャに対し、「ファントム・フューリー作戦」を開始した。第7騎兵連隊第2大隊と第1歩兵師団の機械化歩兵部隊を中核とする第2-2歩兵タスク部隊は、米海兵隊の各連隊と連携し、戦闘陣地(fighting positions)、スパイダー・ホール、相互に連携した射撃範囲(fields of fire)が張り巡らされた街を、ブロックごとに進撃した。戦車、ブラッドリー戦闘車、および戦闘工兵(combat engineers)が通路を確保する一方で、歩兵部隊は建物に突入し、部屋ごとに制圧していった。この作戦には6週間近くを要した。これこそが、最も細部に至るまでの「近接会戦(Close Battle)」である。監視や精密打撃だけでは確保できない地域を、直接接触した兵士たちだけが制圧し、保持することができたのである。その他の事例については、付録Eを参照のこと。
IV.持続力(ENDURANCE)
「持続力(ENDURANCE)」:強靭な後方支援と戦力創出を通じて、時間、距離、および紛争下といった状況下においても、態勢を維持し、防衛し、戦闘力を投射する。
「持続力(Endurance)」は、戦域軍、軍団、およびそれらを支援するコマンドを活用し、産業基盤や施設から前線の部隊に至るまで、後方支援とレイヤー化した防護を可能にする。軍事作戦の維持、戦闘力の投射、および重要アセットの防護を通じて、統合部隊の作戦テンポを維持し、作戦範囲を拡大する。これにより、統合部隊は累積的かつ順次的な戦役を実行し、攻勢作戦、防御作戦、安定化作戦の間を円滑に移行することができる。「持続力(Endurance)」により、「打撃(Strike)」および「近接会戦(Close Battle)」が中断なく遂行され、あらゆるドメインにわたる「収束(Convergence)」の持続的な運用が可能となる。
戦域レベルでは、「戦域の設定(setting the theater)」という継続的な戦役を通じて、戦域軍によって「持続力(Endurance)」が生み出される。「戦域の設定(setting the theater)」は静的なものではない。これは、競争、危機、紛争、そして紛争後の安定化の各段階を通じて継続される動的な作戦である。競争の段階において、戦域軍は部隊や物資の事前配置を調整し、戦闘力を投射するために必要な外交的「アクセス、基地使用および上空通過(ABO)」に関する協定を確実に履行する。紛争時には、戦域軍は補給線を動的に調整し、重要な弾薬などの物資の流れを管理するとともに、後続部隊の統合受入・集結・前進・統合(JRSOI)を実施する。紛争後の段階では、戦果の定着を維持し、文民当局への移行を促進し、部隊を撤退させる。
「持続力(Endurance)」によって、地理的条件と不可分な関係にある統合作戦が可能となる。航空、海上、宇宙、サイバー作戦はすべて、安全な陸上地域-基地や深水港(deep-water ports)から飛行場、陸上を基盤とする通信ノードに至るまで-を拠点として展開される。陸軍部隊はこれらの拠点を構築、維持、確保し、無防備な地理的条件を、統合戦闘力を投射・防護する強固な拠点へと変える。
この基盤的な役割には、正式な義務が伴う。米陸軍は、陸上輸送や陸上を基盤とする航空・ミサイル防衛を含む、戦域全体の兵站において「他軍種への陸軍支援(ASOS)」を提供している。また、米陸軍は、陸上を基盤とする水資源から軍郵便業務、被拘禁者管理に至るまで、統合部隊全体が依存する機能について、米国防総省の執行機関(EA)としての役割を果たしている。他の軍種は、米陸軍を前進させるための戦略的移動性(strategic mobility)と作戦的移動性(operational mobility)の多くを提供する一方、米陸軍は、統合部隊が戦域に到着した後、同部隊に「持続力(Endurance)」を提供する。
機動部隊を防護・維持することは、「持続力(Endurance)」の実現に不可欠であり、米陸軍は内部の後方連絡線(interior lines of communication)を構築し、防衛しなければならない。敵対的な環境下において、要員、物資、補給品を防護し、移動させる能力は、長期にわたる戦役を遂行するために必要な作戦上の縦深と到達範囲を統合部隊に提供する。弾薬備蓄の厚み(magazine depth)を備えた堅固な弾薬貯蔵施設、分散配置された装備・補給備蓄、医療ケアおよび負傷者後送などの構成要素からなる内部の後方連絡線は、我々の作戦部隊を支えている。この要件は今日、さらに顕著になっている。いかなる作戦地域においても安全な避難場所が存在しないことは、内部の後方連絡線の極めて重要な必要性を浮き彫りにしている。
分散型編成の下で戦術最前線における作戦テンポを維持するには、従来のネットワークでは対応できないほどの配信能力が求められる。センシングの普及は、従来型の集権的な後方支援拠点や直線的な輸送ルートは容易に探知・攻撃の対象となるため、分散型の補給ノードと冗長化された輸送ルートの構築が不可欠となる。過酷な環境下で「持続力(Endurance)」を確保し、分散した部隊を継続的に支援するためには、米陸軍は自律型の地上・空中・沿岸輸送プラットフォームを運用し、脅威の高い輸送ルートにおける人的リスクを最小限に抑えつつ、輸送能力を拡大しなければならない。
同時に、米陸軍は、積層造形を中核とし、「修理権(right-to-repair)」が確保された先進的な遠征型製造能力を配備しなければならない。前線に展開する部隊が現地で重要な部品を製造できるようにすることで、米陸軍は脆弱な大洋横断の補給線を回避し、現代の紛争のペースに合わせて損傷した装備を戦線に復帰させることができる。
同様に重要なのは、我々の有機的産業基盤(OIB)※が積極的に拡大し、現代の国家間戦(modern interstate warfare)における弾薬の消費量やプラットフォームの消耗率に対応するために必要な予備生産能力を創出することである。我々の有機的産業基盤(OIB)は、先進的な製造技術と民間部門のベスト・プラクティスを活用し、突発的な作戦上の需要に応じて生産内容を迅速に切り替えられるようにしなければならない。この「アジャイルな促進構造」により、数多くの異なる完成品の生産や修理が可能となり、従来の「1工場1製品」という産業モデルを超越した進化を遂げることになる。
※ 有機的産業基盤(OIB:organic industrial base)とは、米陸軍が自ら保有・運営している工廠群(arsenals)、整備廠(depots)、弾薬工場(ammunition plants)から成る政府所有の産業基盤のこと。
また、「持続力(Endurance)」を実現するためには、戦力投射プラットフォーム(PPP)および動員部隊編成施設(MFGI)を強化・拡充することが求められる。陸軍の施設は、歴史的に、部隊や兵士、その家族の駐屯のための行政拠点としての役割を果たしてきた。しかし、国内の安全がもはや保証されていないことを踏まえると、これらの施設を、戦闘力を構築・投射するための「安全な避難所」として捉えることはもはやできない。現代戦(modern warfare)においては、これらの施設が、戦闘力を迅速に整備し、紛争地域へ投射できる強固なプラットフォームへと転換することが求められている。同様に重要なのは、長期化する紛争の需要に対応するための支援能力を強化し、戦時体制へ移行するために必要なインフラを備えていなければならないということである。
陸上戦力の他の作戦要素が総力を挙げて会戦や戦役を勝利に導く一方で、米陸軍が戦争に勝利することを可能にするのは「持続力(Endurance)」である。これは、戦術的な行動と戦略的な勝利をつなぐ要であり、統合部隊が国家目標(national objectives)を達成するために必要な時間と距離にわたって、戦力を投射し、打撃を吸収し、戦闘を継続できるようにするものである。国内の産業基盤から、激戦地における前線の部隊に至るまで、「持続力(Endurance)」はわが国の決意の表れである。それにより、我々は単に戦うだけでなく、いかなる敵対者よりも長く戦い抜くことができるのだ。
歴史的逸話
ノルマンディー、1944年8月~11月-「レッド・ボール・エクスプレス」。サン=ローからの突破後、連合軍は後方支援の体制が追いつかないほどの速さでフランス全土へと進軍した。深水港は依然として損傷したままであり、鉄道網も破壊されていたため、ノルマンディーの海岸からのトラック輸送に全面的に依存せざるを得なかった。米陸軍は「レッド・ボール・エクスプレス」を創設した。これは専用の片道高速道路網であり、最盛期には6,000台近くの車両が運行され、1日あたり12,000トン以上の物資を輸送していた。
作戦の過程で、運転手たちは、機械の故障、疲労、そしてドイツ空軍の攻撃という絶え間ない脅威にさらされながらも、40万トン以上の重要な戦闘物資(combat supplies)を輸送し、第3軍の進撃を支え続けた。「持続力(Endurance)」は、強靭かつ拡張性のある兵站体制を通じて、長距離・長期間にわたって戦闘力を維持し、作戦の早期終結を防ぎ、作戦の成功を継続させた。その他の事例については、付録Eを参照のこと。
第3章 組織の構築とリソースの確保
部隊を編成し、将来の戦闘に備えて装備を整える。
「収束(Convergence)」、「打撃(Strike)」、「近接会戦(Close Battle)」、「持続力(Endurance)」を実行するには、米陸軍の組織と構造を包括的に評価した上で、困難な資源配分の決定を行う必要がある。我々は、これら4つの作戦要素を中心に、組織編成、人員配置、訓練、装備の整備を行う。
I.編成
「収束(Convergence)」は、戦域軍および軍団司令部が、マルチドメイン・コマンドと連携して推進するものである。これらのレベルの部隊は、複数のドメイン、階層、および統合部隊全体にわたる能力を継続的に同期させ、戦果を上げるために、その目的のために特別に編成されなければならない。戦域軍および軍団は、「収束(Convergence)」を実行し、決定的な地点においてマルチドメインの効果を同期させる。これらの司令部には、センシング、決心、行動をリアルタイムで統合するためのネットワーク、権限、および参謀の能力容量(staff capacity)が必要である。その能力容量は、戦闘が始まってから構築できるものではなく、当初から司令部に組み込まれていなければならない。その能力容量と能力なしには、部隊は「収束(Convergence)」を達成することはできない。
「打撃(Strike)」は、戦域軍を通じて各師団によって実行される。これは、遠距離からの攻勢的な致死・非致死火力を用いて、敵のシステムを無力化し、破壊するものである。「打撃(Strike)」では、センサー、ターゲティング、精密火力、非致死効果、およびこれらを統合する指揮・統制ネットワークが活用される。これらの階層にわたる部隊は、「観測して、センシングして、撃破する(see, sense, and kill)」を行い、統合の「キル・ウェブ(kill web)」に組み込まれた状態を維持しつつ、その効果を迅速に評価できなければならない。統合支援能力(Joint enablers)の統合を含め、「打撃(Strike)」のターゲティング・サイクル全体を実行するために必要なシステムおよび参謀の能力容量(staff capacity)は、師団レベル以上で整備されている。「打撃(Strike)」を実施するため、米陸軍はロケット砲兵のみに依存する体制から脱却し、戦闘航空旅団(combat aviation brigades)、一方向攻撃(OWA)ドローン、およびモジュール式発射システムを活用して、致死的な「打撃(Strike)」の選択肢の多様化と規模拡大を図っている。ただし、師団およびそれ以上の指揮レベルは、引き続き「打撃(Strike)」の調整役としての役割を担い、効果的な計画と実行を行うための参謀の能力容量(staff capacity)と専門知識を備えていなければならない。
「近接会戦(Close Battle)」は、師団およびそれ以下の戦術部隊によって遂行される。作戦的機動(operational maneuver)の決定的な要素として、「近接会戦(Close Battle)」には、敵部隊への接近・撃破、緊要地形の占領・保持、および戦果の定着が含まれる。師団は「近接会戦(Close Battle)」における主要な行動単位であり、成功するためには十分な資源と装備が不可欠である。これらの部隊の防護、隠蔽、および残存性を確保することは極めて重要であり、統合された防御射撃、戦術的隠蔽、および強固な欺瞞能力を備えていなければならない。
「持続力(Endurance)」は、戦域軍、とりわけ戦域支援コマンドを通じて実行される。これらの組織は、戦域を設定し、後方支援および防衛態勢、インフラ、アクセス経路を確立するための作戦を実施することで、広大な空間と時間軸にわたって位置的優位性を創出し、それを防衛する。「持続力(Endurance)」を実行する戦域軍は、自律型水上艦艇、分散型積層造形、および争われた条件下でも作戦可能で、強靭な、シグネチャの低い発電システムなど、新たな能力を統合しなければならない。戦域軍が「持続力(Endurance)」を実行するには、適切な戦力構成と資源が必要である。
II. 能力、技術、プラットフォーム
これら4つの要素を作戦上実現するには、現在の部隊ではまだ達成できない規模での射距離、兵力、テンポ、および精度が求められる。これらの能力を構築・維持するには、国内の産業における緊急増産能力を拡大するとともに、軍全体で民需・軍需両用技術を迅速に普及させることが鍵となる。
陸軍事業体全体としての実験とイノベーションは、部隊が必要とする能力を産業界が開発する上で、いずれも不可欠なものだが、能力開発プロセスにおいてそれぞれ異なる役割を果たしている。実験とは、科学的厳密性と体系的な管理を適用して因果関係を明らかにする、トップダウン型のプロセスである。これにより、米陸軍は用兵コンセプト、部隊編成、装備ソリューションを、全軍に導入する前に検証することができる。イノベーションは、兵士や戦術部隊から始まる。それはボトムアップかつユーザー主導のものであり、差し迫った戦術上の課題の解決、即応性の向上、そして現在の状況への適応に焦点を当てている。実験は、米陸軍が将来に向けて何を構築すべきかを示す指針となる一方で、イノベーションは、部隊が現在利用可能な資源を用いて、今日直面している課題を解決する手助けとなる。
要素が求める能力
▪ 自律性(autonomy)。現代の戦場における自律システムの普及は、陸軍部隊が迅速に適応しなければならない作戦上の現実である。部隊は、自律能力の運用を習得すると同時に、兵士が持つかけがえのない判断力、適応力、経験を活かし、最も複雑な脅威を撃退しなければならない。現代の戦術部隊は、兵士の負担を軽減し、戦術的な意思決定(tactical decision-making)を迅速化するため、機械並みの速度で状況をセンシングし、決定し、行動できる自律型プラットフォームを提供することを到達目標に、無人システムを諸兵科連合チーム(combined arms teams)に積極的に組み込んでいる。
▪ 人工知能(AI)を活用したセンシングと決心(Artificial Intelligence (AI)-Enabled Sensing and Decision)。現代の戦場における激化する戦況は、より迅速な意思決定サイクル(decision-making cycles)を要求している。AIは、マルチドメインにわたる膨大なセンサー・データ・ストリームを処理し、「センサー・トゥ・シューター(sensor-to-shooter)」のタイムラインを短縮することで、「収束(Convergence)」と「打撃(Strike)」を直接可能にする。「近接会戦(Close Battle)」においては、AIを活用した計画策定ツールにより、指揮官は敵の行動を予測し、機動オプションを迅速に調整できるようになる。一方、予測分析により、部隊の即応性や消耗率を評価し、「持続力(Endurance)」を維持する。最終的には、目標は、決定的な認知的優位性を確立することである。つまり、兵士や指揮官に対し、数時間ではなく、数秒から数分という短時間で、即座に行動に移せる明確な判断を提供することである。
▪ 指揮・統制(command and control)。米陸軍の現在の通信アーキテクチャは、依然として脆弱な宇宙ベースの通信リンクに過度に依存している。紛争環境下での残存性を確保するため、米陸軍は、戦域の作戦地域内に、戦術用光ファイバー・バックボーンや分散型ノード・ネットワークなどの堅牢な地上インフラを統合した、強靭で、伝送方式に依存しないネットワーク・アーキテクチャを構築しなければならない。さらに、統合部隊、省庁間、および多国籍連合全体で、同期化されたリアルタイムの共通作戦状況図を提供するためには、オープンなデジタル・アーキテクチャと共通インターフェースの標準化が不可欠である。▪
▪ 弾薬(munitions)。大規模な戦闘で優位に立つためには、高性能な精密兵器と手頃な価格の大量生産型兵器との間の慎重なバランスが求められる。極めて精密な弾薬は、高価値ターゲット(HVT)を無力化するために依然として不可欠であるが、長期にわたる紛争における唯一の解決策とはなり得ない。米陸軍は、在庫を早期に枯渇させることなく、「打撃(Strike)」に必要なスタンドオフ距離を達成できる、低コストで拡張性のある弾薬を配備しなければならない。現代の紛争は、弾薬備蓄の厚み(magazine depth)と持続的な生産能力容量(sustained production capacity)が、もはや単なる産業上の考慮事項ではなく、決定的な作戦上の要件であることを証明している。
III. 資金、プログラム、そして近代化の整合を図る
米陸軍本部(HQDA)の陸軍参謀部および事務局は、中央計画策定プロセスを活用し、この「作戦構成(operational construct)」に合わせて資源を配分する。米陸軍の上限予算が実質ベースで横ばいのままである一方、戦略的要件、インフレ、および作戦コストが増加しているため、これら4つの要素への資源配分には制約が生じる見込みである。
コストの増加は、考慮すべき3つの主な要因、すなわち人件費の増加、インフレによる購買力の低下、そして絶え間なく発生する予期せぬ外部要件によって引き起こされている。米陸軍は、用兵の基礎(例:個人および部隊の即応性、兵士の福祉および生活の質)への投資を優先しつつ、限られた近代化予算を、以下の4つの重要な優位性をもたらす能力に集中させなければならない。
▪ 「迅速展開能力(Rapid Deployability)」は、これら4つの要素すべてを可能にする。米陸軍は、「敵地での作戦(away game)」を闘い、勝利するために部隊を編成・装備・配置し、後方支援および戦力投射の経路を強固なものとすることで、ターゲットに対して即座に決定的な作戦的機動(decisive operational maneuver)を集結させることを確実にする。
▪ 「低コストの選択肢(Low-Cost Optionality)」は「打撃(Strike)」を強化する。米国の兵器体系は、高コストで精巧な弾薬やプラットフォームだけで構成されるわけにはいかない。低コストで高性能な代替手段の開発により、陸軍指導部はより多くの選択肢を得るとともに、より広範囲かつ長期間にわたり、長距離の精密火力を行使する能力を高めることができる。
▪ 「作戦的移動性(Operational Mobility)と戦術的移動性(Tactical Mobility)」は、「近接会戦(Close Battle)」において不可欠である。米陸軍は、敵対者の精密火力に対して静的なターゲットとなりかねない、低速で重量の大きいプラットフォームを排除し、機動性の高い分散型システムを構築・調達していく。
▪ 「部隊の簡素化(Fleet Simplification)」が「持続力(Endurance)」を可能にする。米陸軍は、同様の任務を遂行するプラットフォーム間の共通性に焦点を当てることで持続可能性を最大化し、兵站の活動拠点(logistics footprints)に課される整備および設置の要件を軽減している。
高烈度の紛争では、装備の後方支援の補給品が大量に消費される。米国の防衛産業基盤および政府所有の有機的産業基盤(政府の補給基地、兵器廠、弾薬工場などで構成される)は、この負担に対応できるよう適応しなければならない。産業基盤は、平時のスケジュールに依存するのではなく、迅速な補充ソリューションを開発しなければならない。同時に、米陸軍は移動性(mobility)、残存性、および戦闘上の圧倒的優位性を確保するため、戦闘部隊(combat fleets)の近代化を継続する。これらの資源確保の到達目標を達成するには、どこに、いつ、どのように投資を行うかについて、厳格な規律が求められる。
米陸軍は、焦点を絞った近代化戦略を採用している。すべての部隊にあらゆる能力を装備させることは、財政的にも持続可能ではなく、作戦上も効果的ではない。陸軍全体にわたる広範な近代化の取り組みには数十年を要し、配備が完了する頃には調達した装備がすでに時代遅れになっている可能性がある。その代わりに、米陸軍にとって最も重要なシステムのみを迅速に調達することを優先し、複数のベンダーによる競争的な調達を活用して、開発期間を短縮し、生産能力を拡大していく。能力が選定されると、その能力は開発され、迅速な配備計画に基づき、米陸軍の特定部門に統合される。同時に、専用の研究開発資金を投入して、米陸軍の別の部門への配備に向けた次世代の重要技術の開発を推進する。焦点を絞った近代化を確実に成功させるため、旧式装備の処分に際しては、その後方支援管理費を転用し、用兵の優先事項への資金充当に充てる。
我々の投資は、あらゆるプラットフォームを技術的な優越にしようとしたり、あらゆる部隊にあらゆる能力を装備させようとしたりするのではなく、米陸軍を総合的な用兵システムとして強化するものでなければならない。我々は、「収束(Convergence)」、「打撃(Strike)」、「近接会戦(Close Battle)」、「持続力(Endurance)」に不可欠な能力に資源を集中させる。
要点
米陸軍は、すべてを一度に近代化することはできず、またそうすべきでもない。その答えは、焦点を絞った近代化にある。
結論
戦争とは、混沌とし、刻々と変化する環境下において、政策上の最終目的(ends)を達成するために戦われる、依然として人間による活動である。「米陸軍はどう闘うか(How the Army Fights)」は、陸上および陸上を拠点とした作戦的用兵(operational warfighting)のための現代的な枠組みを提供し、マルチドメイン作戦のコンセプト的な縦深を、戦闘における実践的な用兵指針(warfighting guidance)へと落とし込んでいる。その中核となる主張は、米陸軍が陸上戦力の相互依存的な要素を駆使して作戦的機動(operational maneuver)を実現すると同時に、統合部隊の揺るぎない基盤としての役割を果たす、というものである。
対等な敵対者に打ち勝つためには、米陸軍は独立機動旅団の戦術的致死性における近年の改善を基盤とし、上位階層の作戦的用兵(operational warfighting)を通じて累積的な効果を達成しなければならない。軍団および戦域軍は、「収束(Convergence)」能力を発揮して決定的な優位性を確立し、局地的な好機を創出すると同時に、「打撃(Strike)」が深層からの影響力行使者として機能し、敵を奥深くまで撹乱・弱体化・分散させなければならない。このクロスドメインの調整により、「近接戦闘(Close Battle)」が敵と接触して撃破し、決定的な陸上支配を確立するための条件が整う。この枠組み全体を支えるのが「持続力(Endurance)」であり、これは統合部隊に、長期間にわたり広大な距離を超えて継続的な圧力を維持するための作戦上の持続力を提供する。
陸上戦力が確実に敵を撃破できるよう、米陸軍は陸上戦力の4つの作戦的用兵の要素(operational warfighting elements)を中心に、部隊編成、技術、予算を構築する。作戦旅団は、よりスリムで、より高い戦闘能力を備え、迅速な展開に最適化される。有機的産業基盤(OIB)は近代化を図り、大規模な増強能力を確保するとともに、新型の用兵システム(warfighting systems)の導入を可能にする。「米陸軍はどう闘うか(How the Army Fights)」は作戦上の勝利に焦点を当てているが、我々の要素は、国家が戦争に勝利することを可能にする、産業動員と戦略的縦深というより大きな国家システムの中に組み込まれている。
我々の作戦要素の中心には、依然として個々の兵士が存在する。高度な技術、無人システム、自律型ネットワークは「キル・ウェブ(kill webs)」を最適化するが、泥まみれの戦場で実際に戦闘を遂行する兵士たちの人的な判断力、戦術的規律、そして肉体的勇気を、決して代替することはできない。
兵士たちは、「収束(Convergence)」の触媒であり、「打撃(Strike)」の引き金であり、「近接会戦(Close Battle)」の勝敗を分ける決定的な要素であり、「持続力(Endurance)」の担い手であり-そして、勝利を保証する究極の存在である。
付録 G. 米陸軍計画体系 (AR 1-1)
以下に示す米陸軍の計画策定、事業化、予算編成、執行プロセスは、米陸軍事務局と軍指導部が連携して取り組むものであり、陸軍部隊が世界規模の責務を果たすために必要な資源を適切に確保し、備えを確実にするものである。
陸軍計画(AR 1-1)— 戦略の整合。 |
| 文書 | 主要な目的 | 主な執筆者 |
| 米陸軍方向性
(最終目的) Army Azimuth (Ends) |
上級指導部の長期的なビジョン、到達目標、および目指すべき最終的状態を概説する。陸軍に求められる能力について、包括的な構想を示す。 | 米陸軍
参謀総長代行 (ACSA) |
| 米陸軍はどう闘うか
How The Army Fights |
陸軍編成部隊が備えていなければならない作戦上の用兵能力について規定している。陸軍戦略の指針となる文書である。 | 米陸軍
参謀総長代行 (ACSA) |
| 「米陸軍はどう闘うか」
実行命令 How The Army Fights EXORD |
陸軍事業体全体に対し、「陸軍はどう闘うか(HTAF)」を実行するために必要な部隊構成の変更を決定するよう指示する。また、陸軍戦略および陸軍戦役計画における中期目標を明確にする。 | 米陸軍
参謀総長代行 (ACSA) |
| 米陸軍戦略計画
(方法) Army Strategic Plan (Ways) |
陸軍が合衆国法典第10編の義務をどのように履行するかを明確に示す。米陸軍の方向性(Azimuth)達成に向けた中期目標を定める。 | 米陸軍省本部
(G-3/5/7) |
| 米陸軍計画策定指針
(手段) Army Planning Guidance (Means) |
事業化目標覚書(POM)を策定するための明確な優先順位と政策指針を定める。計画策手目標を実行可能な優先順位へと具体化する。 | 米陸軍省本部
(G-3/5/7、G-8) |
| 米陸軍事業化指針覚書
(手段) Army Programming Guidance Memorandum (Means) |
具体的なリソース配分の指針および事業化策定のルールを提示する。限られたリソースを米陸軍計画策定指針(APG)の優先事項に合わせて配分する。 | 米陸軍省本部
(G-8) |
| 米陸軍施策推進計画
(実行・評価) Army Campaign Plan (Execute & Assess) |
陸軍戦略を運用化する。取組みの目標(LOE)を同期させ、戦略目標に向けた進捗状況を追跡する。 | 米陸軍省本部
(G-3/5/7) |
陸軍計画(AR 1-1)— 計画策定、事業化、予算編成、および実行



