不人気な戦争に勝利する?米国とイスラエルによるイランへの戦争 (smallwarsjournal.com)
2026年2月28日、米国とイスラエルはイランに対する直接的な軍事作戦を開始し、数十年にわたりくすぶり続けてきた対立が劇的にエスカレートし、未だに終わりが見えない。この状況を、パキスタンの立ち位置から的確に分析した論考があるので紹介する。分析の視点などは参考になると考える。(軍治)
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不人気な戦争に勝利する?
米国とイスラエルによるイランへの戦争:戦略的誤算、エスカレーションの力学、そして双方にとって不利益なジレンマ※
Winning an Unpopular War? The United States–Israel War Against Iran: Strategic Miscalculation, Escalation Dynamics, and a Lose–Lose Dilemma
April 3, 2026
Tahir Azad
smallwarsjournal.com
※「Lose–Lose Dilemma」とは、どの選択肢を選んでも、自分と相手(あるいは自分と周囲)の双方にとって、不利益や損失が生じる板挟みの状況を意味している。
タヒール・マフムード・アザド(Tahir Mahmood Azad)博士は現在、英国レディング大学政治・国際関係学部の研究員。以前はキングス・カレッジ・ロンドンでアフィリエイト・リサーチャーを務め、サンディア国立研究所(米国)、ブリストル大学、ジョージア大学、ジュネーブ大学院、ISDPストックホルム、PRIFドイツでフェローシップを務めた。彼はレスター大学でポスドク・フェローシップを修了し、パキスタンの国防大学(NDU)で戦略・核研究の博士号を取得。また、アザド(Azad)はパキスタンのイスラマバード戦略研究所(ISSI)でリサーチ・フェロー兼プログラム・コーディネーターとしても勤務。彼の研究は核政治、ミサイル拡散、中国の軍事近代化、インド太平洋および中東地域の政治と安全保障、南アジアの戦略問題に焦点を当てている。
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エグゼクティブ・サマリー
2026年2月に始まった米国とイスラエルによる対イラン戦争は、近年のアメリカ外交史において、最も重大な、そして戦略的に欠陥のある軍事行動の一つと言える。明確な最終状態の目標(end-state objectives)を示さず、イランの脆弱性に関する危険なほど楽観的な前提に基づいて開始されたこの紛争は、急速に多次元的な危機へと発展し、中東全体を不安定化させ、世界秩序(global order)の構造的変化を加速させる恐れがある。
本稿は、この戦争は米国にとって好ましい出口を一切示していないと主張する。軍事的勝利であれ戦略的失敗であれ、いずれの結果もアメリカの国益、信頼性、影響力に深刻な損害をもたらす。さらに本稿は、この窮状は戦略的計画策定の不備、イラン社会に対する根本的な誤解、そしてこの地域における紛争を歴史的に支配してきたエスカレーションの論理(escalatory logic)に対する意図的な無視が直接の原因であると主張する。
主な調査結果
- 戦争の目標は依然として不明確で、矛盾しており、作戦上の整合性も欠如している。これは構造的な欠陥であり、決定的な政治的成果が得られないことを確実なものにしている。
- イスラエルの意図的なエスカレーションの態勢(escalatory posture)は、紛争を拡大させ、近隣諸国を地域戦争に巻き込むようにデザインされており、アメリカを犠牲にしてイスラエルの戦略的利益に資するものである。
- イランの社会的な結束力と戦略的な文化は、軍事的損失の有無にかかわらず、政権崩壊や国家の服従を極めて可能性の低いものにしている。
- 中国とロシアはイランの敗北を防ぐための強い構造的動機を持っており、信頼できる証拠によれば、すでに物的支援が行われていることが示唆されている。
- 米国とイスラエルの「勝利」は、統治不能な紛争後の環境、長期にわたる反乱、そして歴史的な規模の正統性危機をもたらすだろう。
- イランの戦略的成功は、石油ドル構造を崩壊させ、湾岸君主制の弱体化を招き、イスラエルの作戦上の自由を制限し、アメリカの覇権の衰退を加速させるだろう。
- トランプ(Trump)大統領とネタニヤフ(Netanyahu)首相は、違法な戦争を開始したことについて直接的な個人的責任を負う。アル・ファラビ(Al-Farabi)学校で168人の児童が殺害されたことは、国際人道法上の戦争犯罪であり、両指導者の歴史的、法的遺産を決定づけるものとなるだろう。
- パキスタンとサウジアラビアの2025年防衛協定は、イスラマバードを維持不可能な立場に追い込んでいる。宗派間の対立を引き起こさずにサウジアラビアの要求に応じることはできず、湾岸諸国との関係を破壊せずにイラン側につくこともできず、戦争の結果、中立を保つ余地がなくなるため、中立を維持することもできない。
- どちらのシナリオでも、アメリカは敗北する。これは、戦略的な意味で「勝利」できる戦争ではない。
1. はじめに:勝利条件のない戦争
2026年2月28日、米国とイスラエルはイランに対する直接的な軍事作戦を開始し、数十年にわたりくすぶり続けてきた対立が劇的にエスカレートした。作戦の直接的な正当化根拠は、イランの核開発の進展と、より広範な地域抑止力の回復という境界的目標に集中していた。初期の攻撃では、イランの軍事および政治指導部の幹部が排除され、国内の重要インフラがターゲットとされたと報じられている。公式声明は自信に満ちたものだった。しかし、その根底にある戦略的論理は、当初から脆弱なものだった。
明確に定義され、相互に整合性があり、かつ作戦上達成可能な目標を持たずに開始された戦争は、終結するよりも拡大する傾向があることはよく知られている。2026年のイランに対する戦役(campaign)は、まさにこの病理を典型的に示している。公式の正当化理由は、核の能力容量の低下、政権交代(regime change)の実現、抑止力の回復、そして地域における米国の優位性(US primacy)の再確立の間で揺れ動いてきた。これらは単に同じ到達目標を異なる形で表現しているのではなく、構造的に相容れない目標であり、それぞれ異なる戦略、異なる手段、そして異なる成功の定義を必要とする。
一貫した最終状態(end-state)が存在しないことは、より根深い知的欠陥を反映している。それは、圧倒的な軍事力を迅速に投入すれば、紛争後の政治的枠組みを必要とせずに政治的成果が得られるという前提である。この前提は、冷戦終結以降、アメリカが行った主要な軍事介入(military engagement)のすべてにおいて誤りであることが証明されてきた。2026年のイラン紛争も例外ではないだろう。
さらに事態を複雑にしているのは、ワシントンとテルアビブの利害の相違である。米国は表向き、交渉または強制的な解決を通じて、イランの国力を抑制的に縮小することを目指している。一方、イスラエルは、これをイランの能力を恒久的に低下させ、地域バランスを再構築する世代的な好機と捉えているようだ。イスラエルの戦略的振舞い(strategic behaviour)は、制御された武力行使ではなく、意図的なエスカレーションを特徴としており、紛争を終結させるのではなく、拡大させるようにデザインされた用兵態勢(warfighting posture)を示唆している。この相違は既に大きな摩擦を生み出しており、紛争が激化するにつれて、ますます手に負えなくなるだろう。
2. 戦略的な誤算:イラン国民はアラブの民衆ではない
この戦役(campaign)の根底にある根本的な戦略的評価の誤りは、イラン社会を、政権交代(regime change)の試みが(たとえ一時的かつ不完全であっても)成功したアラブ諸国の政治環境と混同している点にある。これは極めて重大なカテゴリー誤謬である。
イランは2003年のイラクでも、2011年のリビアでも、外部からの圧力によって政治秩序が崩壊したアラブ諸国でもない。イスラム共和国は、深刻な内部矛盾や国民の正当な不満を抱えながらも、40年にわたる制裁、戦争、そして外部からの敵意によって鍛えられた革命的なイデオロギー的基盤の上に成り立っている。
イランは1980年代にイラクとの8年間にわたる壊滅的な戦争を闘い、降伏することなく壊滅的な損失を被った[1]。イラン国民は西側諸国の圧力の直接的な結果として長期にわたる経済的困窮に耐えてきたが、アメリカの戦略家が予想していたと思われる協調的な政権交代(regime change)は実現しなかった。
上級指導者をターゲットにすることは、政治的意思の崩壊を招くどころか、外部危機の時に政権の国民的正当性を維持するナショナリズムと抵抗のナラティブを強化する可能性が高い[2]。これは予測ではなく、強い国民的アイデンティティを持つ国家に対する強制的な軍事戦役(military campaign)の歴史を通じて一貫して観察されているパターンである。
イランの政治文化は、立憲革命、1953年のクーデター、そしてイラクとの戦争の記憶によって形作られている[3]。外部からの軍事的圧力は、国家の結束を分断するのではなく強化する形で、これらの記憶構造を活性化させる。急速な政治崩壊の予想は、イランの戦略文化の深さと、外部からの侵略の経験を通して形成された国家アイデンティティの度合いを過小評価していた。
イランの作戦遂行能力の高さは、当初の評価を覆す結果となった。指導部を失ったとの報道にもかかわらず、イランは組織的な軍事行動を維持し、イスラエル領土、米国の地域アセット、湾岸地域のインフラに対し、ミサイルとドローンによる継続的な攻撃を行っている。迅速な指導部排除攻撃が急速な政治的崩壊を招くという主張は、紛争開始からわずか数週間で実証的に否定された。
3. エスカレーションの力学:イスラエルのデザインと地域への影響
アメリカとイスラエルの戦略的意図を区別することが重要である。多くの証拠は、イスラエルが単に共有された戦役計画(shared campaign plan)を実行する下位パートナーではなく、米国が表明した戦争理由をはるかに超える戦略的目標(strategic objectives)を追求する独立した主体であることを示唆している。この紛争におけるイスラエルの戦略的振舞い(strategic behaviour)は一貫してエスカレートしており、主要な軍事的ターゲットにとどまらず、経済インフラや政治的象徴にまで及んでおり、イランの抵抗を弱めるどころか、むしろ強めている。
ホルムズ海峡は、世界の石油供給量の約5分の1にあたる約2100万バレルの石油が毎日通過する海域であり、戦略的競争の活発な舞台となっている[4]。この海峡での混乱は、世界の石油価格の急激な上昇を引き起こし、戦争が戦域をはるかに超えた国々に及ぼす直接的な経済的影響を浮き彫りにしている。
湾岸諸国は特に不安定な立場に置かれている[5]。歴史的にアメリカの安全保障体制(security architecture)と連携してきたこれらの国々は、現在、米国の軍事アセットを受け入れたことに対するイランの報復という直接的な脆弱性に直面しており、さらにイスラム教徒が多数を占める国家の破壊に加担したと見なされる国内の圧力も高まっている。サウジアラビアとUAEは、最終的にはワシントンからある程度公然と距離を置くことを余儀なくされる可能性のある戦略的ジレンマに直面しており、これは戦場での結果に関わらず、米国の地域における地位の著しい低下を意味するだろう。
紛争が長引けば長引くほど、またその範囲が広まれば広がるほど、二国間の軍事衝突から多国間地域戦争へと発展する可能性が高まる。これはまさに、ワシントンの戦略立案者たちが最も緊急に阻止すべき事態であり、イスラエルの戦略的振舞い(strategic behaviour)は、まさにそのような事態を引き起こすようにデザインされているように見える。
4. シナリオ1:米イスラエルの「勝利」とその空虚な戦略的成果
分析のために、米国とイスラエルがイランに対して軍事的優位性を確立したと仮定しよう。イランの軍事インフラは大幅に弱体化し、指導体制の継続性は途絶え、通常戦力投射能力は著しく低下する。表面上は、これは軍事的勝利と言える。しかし、戦略的な分析を行うと、アメリカの国益にとって深刻な問題となる結果が明らかになる。
4.1ガバナンスの空白
軍事的優位が政治秩序を生み出すわけではない。イランは人口約9000万人の国であり、高度な国家機構、深いイデオロギー的蓄積、そして極度の苦難の下でも抵抗を続ける歴史的意志を持つ国民を擁している。占領と安定化の課題は、イラクとアフガニスタンを合わせたものをはるかに凌駕するだろう[6]。米国は、このような事業を管理する軍事的、政治的、財政的能力を全く示していない。その結果、地域次元の権力空白が生じ、アメリカの国益に確実に合致しない多数の競合勢力がその空白を埋めることになるだろう。
4.2中国とロシアはイランの完全な敗北を許さないだろう
米国とイスラエルの軍事戦役(military campaign)が中国とロシアからの実質的な反撃を招かずに決定的な結論に至るという想定は、構造的インセンティブの重大な誤解を反映している。中国にとって、イランは単なる外交パートナーではなく、重要なエネルギー供給国であり、より広範なユーラシア統合プロジェクトにおける戦略的拠点である[7]。イラン軍の完全な敗北は、中国のエネルギー安全保障に対する直接的な脅威であり、戦略的に重要な地域から中国の利益を排除するために軍事力を行使するアメリカの意思を示すことになるだろう。
北京は、このような事態を防ぐための強力な構造的インセンティブを開発してきた。信頼できる報告によると、中国はイランに高度な軍事技術支援を拡大しており、その中には米国とイスラエルのアセットに対抗するようにデザインされた能力が含まれている可能性がある[8]。これは、類似の状況における中国の振舞い(behaviour)と一致しており、アメリカの戦略立案者を驚かせるものではなかったはずだ。一方、ロシアは、米国の中東における軍事関与の拡大を、ウクライナからアメリカの資源と注意をそらし、動揺している国々に米国の力の限界を示し、最終的な外交的解決において自国の影響力を強化する機会と見なしている。
4.3イラン国民は降伏しない
たとえ軍事力が最大限に低下したとしても、イラン国民は占領、支配、あるいは外部からの政治秩序の押し付けを受け入れないだろう。イランのエネルギー資源、ホルムズ海峡、そして関連する地域構造を支配するには、米国が維持する意思も能力もない、持続的な軍事的・行政的プレゼンスが必要となる。軍事的「勝利」が実際にもたらすのは、戦略的支配ではなく、戦略的関与、すなわちアメリカの資源、信頼性、そして戦略的注意力を他の戦域から奪う、無期限の関与なのである。
5. シナリオ2:イランの戦略的成功とアメリカの覇権の終焉
もう一つのシナリオ―イランが戦略的な成功を収める場合、それは完全な軍事的勝利ではなく、アメリカの目標を否定し、米国の戦略的行き過ぎを露呈させるという意味で定義される―は、同様に、あるいは恐らくそれ以上に、世界的なアメリカの国益に損害を与える結果をもたらすだろう。
5.1ペトロダラー・アーキテクチャ
世界のエネルギー市場におけるアメリカの支配性と、国際エネルギー取引におけるドルの基盤的役割は、湾岸地域における米国の戦略的優位性(strategic primacy)に構造的に依存している。ペトロダラー制度、すなわち湾岸諸国が石油を米ドルで価格設定し取引し、ペトロダラーの余剰金を米国の金融機関を通じて循環させる仕組みは、自然な市場の結果ではなく、湾岸君主国に対するアメリカの安全保障保証によって維持されている政治・軍事的な取り決めである[9]。米国の戦略的な失敗が明らかになれば、これらの保証の信頼性は壊滅的に損なわれるだろう。
中国は長年にわたり、この事態を組織的に準備してきた。上海協力機構、BRICS枠組みの拡大、中国と湾岸諸国間の二国間通貨協定はすべて、信頼できる代替制度的取り決めを提供するという中国の長期戦略を反映している[10]。イランの戦略的成功は、これらの代替案の採用を劇的に加速させるだろう。ドルの世界基軸通貨としての地位と、アメリカの力を支える金融構造への影響は深刻になるだろう。
5.2湾岸君主国と政治的正当性
サウジアラビア、アラブ首長国連邦、バーレーン、カタールといった湾岸君主国は、安全保障と経済的繁栄を実現しつつ、親米外交政策と国民の相当数の反米感情との矛盾をうまく処理することで、国内における正当性の大部分を維持している。イランが戦略的に成功すれば、こうした信頼性は一瞬にして失われるだろう。
地域全体における政治的影響は重大かつ急速に及ぶ可能性がある。パキスタンやエジプトなど、西側諸国寄りの統治に強い不満を持つ人口を抱える国々は、特に圧力を受けるだろう[11]。これは特定の革命的結果を予測するものではないが、紛争地帯から遠く離れた国々を含め、地域全体の政治的不安定が大幅に増大することを示唆している。
5.3イスラエルの戦略的リスク
イスラエルにとって、イランにおけるアメリカの戦略的失敗は、存亡に関わる重大な影響を及ぼすだろう。イスラエルの作戦上の自由度、すなわちシリア、レバノン、そしてそれ以外の地域での攻撃能力、複数の敵対者に対する同時抑止力の維持、そして戦略的深みの維持は、構造的にアメリカの戦力投射とアメリカの安全保障の保証の抑止力に依存している。強力かつ信頼できるアメリカの軍事プレゼンスがなければ、イスラエルは選択肢と許容される失敗の余地が縮小し、劇的に敵対的な戦略環境に直面することになるだろう。イスラエルが奨励し、利用してきたまさにその戦略的行き過ぎは、イスラエルが変革しようとした地域環境よりも、イスラエルの安全保障にとってより危険な地域環境を生み出したことになる。
5.4ロシアの戦略的利益
中東におけるアメリカの戦略的失敗は、モスクワがウクライナをめぐる西側諸国の決意の限界を既に試しているこの時期に、ロシアに大きな利益をもたらすだろう。失敗に終わった中東の戦役(Middle Eastern campaign)と国内の政治的反発に同時に対処しなければならないアメリカは、ウクライナへの関与を維持する能力を大幅に低下させるだろう。ロシアはこの好機を捉え、領土的獲得を確固たるものにし、モスクワに有利な条件での交渉による解決を迫り、物的能力と政治的信頼性の両面で弱体化したアメリカから最大限の外交的影響力を引き出す可能性が高い。
6. 大国間の次元:形成されつつある代理戦争の舞台
米国とイスラエルによるイランへの戦争は、純粋に地域的な枠組みの中では適切に分析できない。それは、現在の国際情勢を特徴づける大国間競争というより広範な力学と交錯し、またその力学によって積極的に影響を受けている。
中国にとって、戦略的な計算は比較的単純明快である。イランは中国の原油輸入量の約12%を供給している[12]が、この数字は、より広範な湾岸市場における価格決定力としてのイランの重要性を過小評価している。さらに重要なのは、イランは中国のユーラシアにおける長期戦略的デザインにおけるパートナーであるということだ。中東におけるパワー・バランス(balance of power)を必要とするデザインであり、いかなる単一の外部勢力も同地域のエネルギー資源を支配できないようにするものである。
中国がイランを支援するのは、軍事技術移転、情報共有、あるいは米国主導の国際圧力に対する外交的妨害など、イデオロギー的な親和性というよりも、むしろ冷徹な戦略的利益の計算に基づいている。イランが正式に一帯一路構想(Belt and Road frameworks)[13]に組み込まれたことで、イランの安定は中国にとって重要な利益となり、北京は米国の軍事行動によってその安定が失われることを許容できない。
ロシアのこの紛争への関心は、より日和見的で複雑なものである。モスクワは北京のようにイランの存続に直接的な利害関係を持っているわけではないが、アメリカの信頼性の低下、アメリカの戦略的注意と資源の分散、そしてアメリカの安全保障の保証が信頼できないことを第三国に示すことに大きな利害関係を持っている。こうした大国の利害が相互に作用することで、この紛争は国際秩序の将来をめぐるより広範な争いの代理戦争の舞台となりつつある。
7. 国内制約と戦略的罠
トランプ(Trump)政権がこの紛争に突入した際の国内政治情勢は、当初から政権の選択肢を著しく制限してきた。政権は、物議を醸す経済政策、分裂した同盟関係、そして失敗の代償が増幅され、成功の報酬が不確実な国内政治環境といった、重大な政治的重荷を抱えて戦争に臨んだのである。
紛争の経済的影響は、政権の公式発表が示唆していたよりも早く顕在化した。イランによる湾岸諸国のサプライチェーンへの混乱とホルムズ海峡の不安定化の懸念が直接の原因となり、エネルギー価格の高騰はアメリカの消費者に即座に目に見える形で負担を強いている。過去の中東紛争の初期段階では、財政赤字による資金調達でコストが繰り延べられ、長期にわたって分散されていたのに対し、今回の紛争によるインフレの影響は早期に顕在化し、政治的にも大きな問題となっている。
これは、抜け出す道筋のない戦略的な罠を生み出している。撤退や緊張緩和は弱さの表れとなり、イランの抵抗を正当化し、世界的なアメリカの安全保障へのコミットメントの信頼性を損ない、政権を国内の政治的攻撃に晒すことになるだろう。関与を継続すれば、コストが増大し、紛争が管理可能な範囲を超えて拡大し、明白で責任の所在が明らかになり、政治的に壊滅的な敗北を招くリスクがある。政権は自ら招いた状況に陥っており、あらゆる選択肢は悪質で、最もましな選択肢さえも明確には特定できない。
8. 個人の責任:先延ばしにできない問題
この戦争を真剣に分析する上で、個人の責任という問題から目を背けることはできない。戦争は抽象的な概念によって行われるものではない。特定の個人が特定の命令を下すことによって開始され、その命令が大規模な民間人の殺害につながった場合、国際法は、たとえ不完全で政治的な制約があったとしても、刑事責任を問うための仕組みを提供している。
8.1意思決定のアーキテクチャ
敵対行為を開始するという決定は、ワシントンとエルサレムの少数の上級政治指導者によってなされ、アメリカ側では正式な議会の承認を得ておらず、国連憲章の枠組みの下での法的正当性も全く示されていなかった。トランプ(Trump)大統領は最高司令官として、国際法の下で防衛上の正当性がない紛争の開始について、政治的および法的責任を負っている。予防戦争の法的枠組みは、2002年の国家安全保障戦略[14]で表明されて以来、すでに深刻な議論の的となっているが、差し迫った明白な脅威がないにもかかわらず、外国の指導者や民間インフラを意図的にターゲティングすることを正当化するものではない。
ネタニヤフ(Netanyahu)首相の責任は、むしろより直接的で、より計画的である。彼の政権は長年にわたり、米国をこの対立へと組織的に誘導してきた。米国の国内政治力学、情報機関との関係、そして同盟関係を利用し、アメリカの国益とイランの民間人の命を犠牲にしてイスラエルの戦略的野望を満たす紛争にワシントンを引き込んだ。ネタニヤフ(Netanyahu)首相はこの戦争に偶然巻き込まれたのではない。彼はこの戦争を仕組んだ。彼の公の発言、政権の作戦上の決定、そしてワシントンの意思決定環境に対する明白な操作の記録は、法的責任の問題に直接関連する計画性を示している。
8.2イラン最高指導者の殺害
イランの最高指導者イマーム・ハメネイ(Imam Khamenei)師をターゲットとした殺害は、現代において国家が支援する政治的暗殺行為の中でも最も重大なものの一つである。最高指導者の統治実績に対する評価がどうであれ、宣戦布告も法的認可もなく、イランによる明白な侵略行為もないまま現職国家元首をターゲットして排除することは、国際秩序の根幹をなす規範の違反である。外国指導者の暗殺禁止は儀礼ではなく、慣習国際法に基づく構造的規範であり、その侵害はすべての国家に体系的な影響を及ぼす[15]。この行為によって確立された前例は、能力を有するすべての国家が利用できるものであり、その常態化は、国家間の紛争が存亡に関わる規模にまでエスカレートするのを防ぐ最も基本的な保護の一つを侵害する。
8.3アル・ファラビ学校虐殺事件:168人の子供が犠牲に
アル・ファラビ(Al-Farabi)学校を破壊した攻撃で168人の学童が殺害された事件は、戦略的な枠組みや政策的な言葉の軟化を許容するものではない。168人の子供が殺された。彼らは戦闘員(combatants)ではなかった。彼らは学校に通う子供たちだった。ローマ規程(Rome Statute)の信頼できる適用によれば、彼らの死は戦争犯罪に該当する[16]。民間人と軍事的ターゲットを区別するための適切な予防措置を故意または無謀に怠ることは、慣習国際人道法、ジュネーブ条約、および武力紛争法の基本原則の下で禁止されている。
ジュネーブ条約第一追加議定書第57条は、締約国に対し、偶発的な民間人の犠牲を避けるためにあらゆる可能な予防措置を講じることを義務付けている[17]。攻撃部隊は、アル・ファラビ(Al-Farabi)学校が授業時間中に使用されている民間施設であることを知っていたか、知っているべきであった。この残虐行為を隠蔽、矮小化、または文脈化しようとする政治的取組みは、アメリカ側とイスラエル側の両方で即座に組織的に行われた。しかし、それは時間の経過とともに成功しないだろう。
法的な次元を超えて、この学校虐殺事件の戦略的な影響は深刻かつ永続的なものである。事件の画像や証言は、いかなる反論(counter-narrative)も打ち消すことのできないほどの強烈さと感情的な力をもってイスラム世界全体に広まった。パキスタン、エジプト、インドネシア、トルコにおいて、アル・ファラビ(Al-Farabi)虐殺事件は、20世紀後半の最も重大な残虐行為の画像に匹敵する動員力を持つ象徴となった。米国主導の地域秩序の正当性という観点から見ると、その戦略的コストは計り知れない。
個人の責任を真摯に問うことは、正義の問題であるだけでなく、紛争後の地域における持続可能な解決のための機能的な前提条件でもある。説明責任がなければ正当性はなく、正当性がなければ安定はない。この戦争が生み出した混乱は、それを生み出した決定、そして決定を下した者たちと向き合わなければ、持続的に対処することはできない。
9. 南アジアの動揺:パキスタンの解決困難なジレンマ
米国とイスラエルによる対イラン戦争がもたらす地政学的な衝撃波は、紛争の直接的な舞台をはるかに超えて広がっている。南アジア、特にパキスタンは、極めて深刻な戦略的窮地に陥っており、同国の外交政策の脆弱性と、現在の政治秩序の構造的な弱点が露呈している。
9.1サウジアラビア防衛協定とその矛盾
パキスタンは2025年にサウジアラビアと正式な防衛協力協定を締結した。これは、数十年にわたるパキスタン軍の湾岸地域への派遣、サウジアラビアからイスラマバードへの資金提供、そして相互のイデオロギー的および外交的連携を反映した、両国の長年にわたる安全保障関係の自然な延長線上にあるものであった[18]。この協定の立案者たちが十分に予見していなかったのは、サウジアラビアの安全保障上の利益とパキスタン自身の戦略的計算が直接的かつ制御不能な衝突に陥るシナリオであった。
そのシナリオは今、現実のものとなった。イランからのエネルギーインフラに対する直接的な報復圧力に直面し、米イスラエル戦役(US–Israeli campaign)の成功に深く関与しているサウジアラビアは、2025年合意の文面ではないにしてもその精神を援用し、パキスタンに安全保障支援、そして少なくとも連帯の公式表明を要請した。パキスタンは憲法上、政治的、戦略的にこれに応じることができない。その結果、二国間関係は深刻な緊張状態に陥り、パキスタンの資金の流れ、外交的地位、軍事協力に影響を及ぼしているが、イスラマバードの現政権はこれをどう対処すべきか明確な戦略を持ち合わせていない。
9.2宗派間の断層線
パキスタンの人口構成と宗派構成を考えると、イランに対する公然とした同盟は、政治的にコストがかかるだけでなく、統治体制にとって存亡の危機となる可能性もある。パキスタンは世界で2番目にシーア派イスラム教徒が多い国であり、人口の15~20%を占めると推定され、カラチ、パンジャブの工業都市、ギルギット・バルティスタン、シンド州の大部分に集中している[19]。この人々にとって、米国とイスラエルによるイランとの戦争は遠い地政学的出来事ではなく、彼らの宗教的アイデンティティと世界のシーア派コミュニティの中心となる国家に対する戦争なのである。
サウジアラビア、あるいはより直接的には米イスラエル戦役(US–Israeli campaign)によるイランへの攻撃に公然と加担するパキスタン政府は、シーア派コミュニティによる大規模な国内動員に即座に直面するだろう。これはほぼ確実に、国家の国内治安機関が対処しきれない規模の宗派間暴力を引き起こすことになる。パキスタンの宗派間紛争の歴史は長く、甚大な被害をもたらしてきた。既に不安定な政治情勢に、これほどの規模の宗派間対立の引き金が加われば、事態は制御不能となる可能性がある。
9.3軍事機構の麻痺
パキスタンの軍事組織は、国の安全保障と外交政策を実質的に決定づける存在であり続けているが、前例のない戦略的麻痺状態に陥っている。湾岸諸国からの資金流入への依存は、サウジアラビアの要求に応じることを示唆している。国内の宗派対立リスクの評価は、公然とサウジアラビアと連携することに反対する根拠となっている。そして、中国の立場、すなわちイランの存続に対する北京の強い構造的利益を認識していることは、米国主導戦役(US-led campaign)を支援していると見なされることへのさらなる躊躇を生み出している。中国・パキスタン経済回廊[20]はパキスタンの戦略的姿勢の基盤となる柱であり、リヤドを満足させるために北京を敵に回すことは、軍事組織が検討できる取引ではない。
軍部は、サウジアラビアに公然と味方すれば、前述のような国内的な影響を招き、中国を敵に回すことになる。しかし、イランに公然と味方すれば、サウジアラビアとの関係と財政的な生命線を破壊してしまう。また、地域的な影響が中立の立場を封じ込めつつある紛争において、中立という建前をいつまでも維持することもできない。そのため、軍部は戦略的な過負荷状態にある時にいつも行うように、決断を迫られる前に、先延ばしにし、曖昧な態度を取り、外部情勢によってジレンマが解決することを期待している。しかし、その戦略にはもはや時間がない。
9.4国民の正当性を欠く政府
パキスタンの現文民政権は、選挙の正当性をめぐる論争、国民の不満、そして民主的な委任(democratic mandate)ではなく体制側の独断で統治しているという広範な認識によって既に弱体化した状態で、この危機に突入した。そのため、イラン戦争によって引き起こされた外交危機に対処する能力は著しく制限されている。真の国民的正当性を持つ政権であれば、困難な外交政策上の選択を行い、民主的な委任(democratic mandate)を通じて政治的コストを吸収することができる。しかし、そのような委任を欠く政権には、頼るべき政治的な基盤が存在しない。
アル・ファラビ(Al-Farabi)学校虐殺事件は、イスラマバードの政策判断にさらなる深刻な圧力をかけた。すでに米イスラエル戦役(US–Israeli campaign)に敵対的だったパキスタンの世論は、168人の子供が殺害されたことでさらに過激化し、攻撃連合軍とのいかなる関係も政治的に存続不可能となった。国内主要都市では街頭デモが勃発し、その激しさは、単なる直接的な残虐行為だけでなく、イスラム教徒が多数を占める国家における西側諸国の軍事行動に対するパキスタン国民の長年の不満を反映している。
9.5この戦争はパキスタンをどのように変えるのか
パキスタンの政治の軌跡は、この紛争によって、戦争そのものよりも長く続く形で再構築されつつある。第一の構造的影響は、現在の統治体制の正当性のさらなる喪失である。これは既に進行していたプロセスであり、戦争によって劇的に加速された。第二は、イスラム主義および宗教ナショナリズムの政治勢力の強化である。これらは、戦争によって動員された国民感情の主要な組織的表現である。第三は、パキスタンの中国への戦略的依存の深化である。これは経済パートナーとしてだけでなく、パキスタンの国民が本能的に拒絶する米イスラエル戦役(US–Israeli campaign)に最も合致する外部勢力としてである。
中期的な結果として、パキスタンの外交政策は、これまで曖昧だった米国との関係から、より明確に中国を軸とした戦略的姿勢へと大きく転換する可能性がある。もし戦争の結果、イランが戦略的に勝利すれば、パキスタンにおいてアメリカとの連携を主張してきた人々の政治的活動の余地は、今後一世代にわたって消滅するだろう。この戦争は単に中東を不安定化させているだけではない。世界で5番目に人口の多いこの国の政治を、地域安定にもアメリカの戦略的利益にも資しない形で再構築している。
10. 結論:勝ち目のない不必要な戦争
米イスラエルによる対イラン戦争は、戦略的に意味のあるあらゆる意味において、構造的に勝利の見込みがない。この戦争は、一貫した目標もなく開始され、イラン社会の脆弱性に関する誤った前提に基づき、エスカレーションを管理するのではなく最大限にエスカレーションさせるようにデザインされたイスラエルの戦略的態勢によって遂行され、その進路を必然的に左右するであろう大国間の力学を十分に考慮することなく実行された。さらに、法的承認(legal authorization)も民主的な委任(democratic mandate)もなく、トランプ(Trump)とネタニヤフ(Netanyahu)という、その後に生じるであろう人的犠牲を理解しながらも、それを顧みずに戦争を進めた人物によって開始されたのである。
どちらのシナリオも、アメリカの国益に深刻な損害をもたらす結果となる。勝利すれば、統治不能な占領問題、長期にわたる反乱、中国とロシアの対抗動員、そして歴史的な規模の正統性喪失が生じる。敗北すれば、アメリカの覇権の衰退が加速し、ペトロダラー体制が崩壊し、湾岸諸国の君主制が不安定化し、より広範な地域において西側諸国寄りの統治体制への挑戦のための政治的空間が生まれる。どちらのシナリオでもロシアは利益を得る。どちらのシナリオでも中国は利益を得る。損失を被るのはアメリカと、最終的にはイスラエルだけである。
アル・ファラビ(Al-Farabi)学校で168人の子供が殺害された事件は、この紛争における単なる些細な出来事ではない。それは、この紛争の道徳的な重心である。戦争は統計を生み出すが、この戦争は、特定の、名前が付けられ、写真に収められた残虐行為を生み出し、いかなる軍事的成果も覆すことのできない形で、イスラム世界全体の世論を動かした。パキスタンでは、その波及効果は、サウジアラビアとの防衛協定によってイスラマバードが置かれた絶望的な状況によってさらに悪化し、紛争終結後も一世代にわたって続くであろう形で、すでに国内政治を再構築しつつある。
個人の責任を真剣に問うことなしには、永続的な平和も、正当な紛争後の秩序も実現し得ない。この戦争を命じた指導者たち―最高指導者を殺害し、子供たちでいっぱいの学校を攻撃し、法的権限(legal authority)も民主的な委任(democratic mandate)もないまま紛争を開始した者たち―は、国際法が定める仕組みを通して責任を問われなければならない。そうでなければ、将来のすべての指導者に対し、十分な軍事力と政治的保護さえあれば、民間人の虐殺は国家権力の代償のない手段であるというメッセージが伝えられることになる。
この紛争から得られる最も重要な戦略的教訓―アメリカの外交政策が近年の歴史から繰り返し学ぶことを拒んできた教訓―は、軍事的優位性は政治戦略の代わりにはならないということだ。破壊する能力は統治する能力ではない。イランは武力で解決できる問題ではない。なぜなら、イランは単なる軍事的ターゲットの集合体ではなく、国家としてのアイデンティティ、記憶、そして抵抗の深さをすべて備えた国家だからである。
この戦争は、その直接的な戦術的成果ではなく、国際史における現在の状況を如実に物語るものとして記憶されるだろう。すなわち、一方的な軍事行動の限界、強い国民意識を持つ国家の強靭さ、責任を問われない指導力の破滅的な結果、そしてもはやアメリカの優位性(American primacy)を中心に組織されていない世界における戦略的影響力の急速な再分配である。計画もなく、法的権限(legal authority)もなく、明確に定義されることのなかった目標の達成(the service of objectives)のために闘われた、不必要な戦争―そして、彼らを殺害した者たちの経歴よりも長く語り継がれるであろう168人の子供たちを犠牲にした戦争―の、永続的な戦略的意義はそこにある。
政策提言
以下の提言は、明確に定義されていない目標を達成することよりも、さらなる被害を最小限に抑えることが喫緊の課題であるという認識に基づき、米国の政策立案者に対して提示されるものである。
・ 即時目標明確化:政権は、許容可能な最終状態(end-state)とは何か、そして敵対行為の停止を可能にする条件とは何かを、具体的かつ運用上整合性のある形で定義しなければならない。曖昧さが続くことは、紛争の拡大を企む者以外、誰の利益にもならない。
・ イスラエルのエスカレーションに対する統制を改めて確立せよ:米国は、米国の承認なしにエスカレーション行動が続けば、作戦支援および情報支援を停止するという明確な意思表示をエルサレムに行うべきである。米国は、自国の戦略的課題(strategic agenda)を追求する同盟国によって、いつまでも戦争に巻き込まれるわけにはいかない。
・ 中国を安定における利害関係者として関与させる:ワシントンは、イランに対する中国の支援を対抗すべき敵対行為(adversarial act)とみなすのではなく、地域安定に対する北京の関心を緊張緩和のための裏ルートとして活用できるかどうかを検討すべきである。中国は、イランが不安定化しても、崩壊しても、何の利益も得られない。
・ 利用可能な手段を通じて責任追及を追求せよ:米国議会は、アル・ファラビ(Al-Farabi)学校虐殺事件を引き起こした法的承認(legal authorization)とターゲティングの決心について、独立した調査を開始しなければならない。国際社会は、この問題を国際刑事裁判所に付託すべきである。責任追及は緊張緩和と矛盾するものではなく、むしろその前提条件である。
・ パキスタンのジレンマを認め、支援を提供する:ワシントンは、イスラマバードに対し米イスラエル戦役(US–Israeli campaign)に公然と同調するよう圧力をかけることは成功せず、はるかに長期的な戦略的価値の高い関係を損なうことを認識しなければならない。ワシントンは、パキスタンの正当な制約を公に認めることで、パキスタンへの圧力を積極的に緩和すべきである。
・ 外交的出口戦略(Diplomatic Off-Ramp)を準備せよ:短期的には政治的に多大なコストがかかるとしても、交渉による緊張緩和の枠組みは、あらゆる中期的な選択肢よりも望ましい。戦争が長引けば長引くほど、有利な条件は得られなくなる。円滑な撤退の機会は急速に狭まっている。
・ 紛争後の安定化の計画策定への投資:紛争の結果に関わらず、米国は紛争後の地域政治環境に対する本格的な計画策定を開始しなければならない。こうした計画策定の欠如は、イラクとリビアにおける軍事的成功を戦略的な大失敗へと変えてしまった。これを繰り返してはならない。
ノート
[1] エフライム・カーシュ(Efraim Karsh)著「イラン・イラク戦争 1980-1988」(オックスフォード:オスプレイ出版、2002年)、12-30ページ。ディリップ・ヒロ(Dilip Hiro)著「最長の戦争:イラン・イラク軍事紛争」(ニューヨーク:ラウトレッジ、1991年)も参照。
[2] ジェナ・ジョーダン(Jenna Jordan)著「リーダーを攻撃するが的を外す:テロ組織が首脳部排除攻撃を生き延びる理由」、International Security 38、第4号(2014年):7-38。ジョーダン(Jordan)による298件の指導者ターゲティング作戦に関する実証研究では、首脳部排除は組織の崩壊を引き起こすことはまれであり、結束効果を通じてグループの結束を強化することが多いことがわかった。
[3] エルヴァンド・アブラハミアン(Ervand Abrahamian)著「近代イラン史」(ケンブリッジ大学出版局、2008年)、1-25ページ。また、1953年のクーデターがイランの国民的アイデンティティに及ぼした長期的な政治的影響については、アリ・M・アンサリ(Ali M. Ansari)著「1921年以降の近代イラン:パフラヴィー朝とその後」(ロングマン、2003年)を参照。
[4] 米国エネルギー情報局、「ホルムズ海峡は世界で最も重要な石油輸送の要衝」、Today in Energy、2024年1月4日、https://www.eia.gov/todayinenergy/detail.php?id=61002。EIAは、2023年に1日あたり約2100万バレルの石油が海峡を通過し、これは世界の石油液体消費量の約21%に相当すると推定している。
[5] グレゴリー・F・ガウス3世(Gregory F. Gause III)著「ペルシャ湾の国際関係」(ケンブリッジ大学出版局、 2010年)、45-78ページ。ガウスは、湾岸諸国が外部の大国後援者と国内の世論からの相反する圧力にどのように対処しているかについて詳細な構造分析を提供しており、これは現在の危機に非常に関連のある力学である。
[6] トーマス・E・リックス(Thomas E. Ricks)著「フィアスコ:イラクにおける米軍の冒険」(ニューヨーク:ペンギン・プレス、2006年);ラジブ・チャンドラセカラン(Rajiv Chandrasekaran)著「リトル・アメリカ:アフガニスタン戦争における内なる戦争」(ニューヨーク:ノフ、2012年)。これらの著作はいずれも、作戦の初期段階における軍事的成功が、いかにして政治的秩序や持続可能な統治に結びつかなかったかを体系的に記録している。
[7] 米国エネルギー情報局、「中国」、国別分析概要、2023年8月、https://www.eia.gov/international/analysis/country/CHN。中国は湾岸諸国とイランのエネルギーに依存しているため、これらの供給ルートの安全保障は国家の中核的な利益となる。
[8] アンドルー・スモール(Andrew Small)著「中国・パキスタン軸:アジアの新たな地政学」 (London: Hurst, 2015), 88–112。中国の同地域における軍事技術関係の拡大については、アヌーシラヴァン・エテシャミ(Anoushiravan Ehteshami) および ニヴ・ホレシュ(Niv Horesh) 編著「中東における中国の存在:アラブの春がもたらす影響」 (London: Routledge, 2018) も参照。
[9] デイビッド・E・スピロ(David E. Spiro)著「アメリカ覇権の隠された手:ペトロダラーのリサイクルと国際市場」(イサカ:コーネル大学出版局、1999年)、1~42ページ。スピロの基礎研究は、ペトロダラー体制が自発的な市場の結果ではなく、意図的に構築された政治金融構造であり、したがって十分なインセンティブを持つ国家によって意図的に解体される可能性があることを示している。
[10] オリバー・シュトゥンケル(Oliver Stuenkel)著「ポスト・ウェスタン・ワールド:新興大国が世界秩序を再構築する」(ケンブリッジ:ポリティ・プレス、2016年)、78–115ページ。新興国の収斂に関する当初の枠組み、およびSCOの制度的発展に関するその後の文献については、ジム・オニール(Jim O’Neill)著「より良い世界経済のBRICsを築く」、ゴールドマン・サックス・グローバル・エコノミクス・ペーパー第66号、2001年11月も参照。
[11] ピュー・リサーチ・センター、「世界のイスラム教徒:統一と多様性」(ワシントンDC:ピュー・リサーチ・センター、2012年)、28~31ページ。ピューの調査では、パキスタンのシーア派人口はイスラム教徒全体の10~15%と推定されている。アガ・カーン開発ネットワークなどの他の人口統計評価では、方法論や地域的な定義の違いにより、20%に近い数字が示されている。
[12] 米国エネルギー情報局、「中国」、国別分析概要、2023年8月。中国のイランからの原油輸入量は、制裁措置の執行状況の変動により大きく変動している。制裁措置の執行が緩和された期間における中国の原油輸入量に占めるイランの割合は10~14%と推定されている。ガブリエル・コリンズ(Gabriel Collins)著「中国の石油需要の変遷」、ベイカー公共政策研究所、2021年も参照。
[13] ナデージュ・ローランド(Nadège Rolland)著「中国のユーラシア世紀?一帯一路構想の政治的・戦略的意味合い」(シアトル:全米アジア研究所、2017年)、44~78ページ。イランのBRI枠組みへの正式な加盟は、2021年3月に署名されたエネルギー、インフラ、安全保障協力を含む25年間の包括的協力協定によって強化された。
[14] ホワイトハウス、「アメリカ合衆国の国家安全保障戦略」(ワシントンDC:ホワイトハウス、2002年9月)、15-16ページ。2002年の国家安全保障戦略は先制攻撃の原則を明言し、脅威が完全に現実化する前にそれに対して行動する権利を主張した。この原則は、自衛権を実際の武力攻撃への対応に限定する国連憲章第51条と相容れないとして、国際法学界で広く批判された。
[15] ジャン=マリー・ヘンカエルツ(Jean-Marie Henckaerts)および ルイーズ・ドスワルド=ベック(Louise Doswald-Beck)編「慣習国際人道法 第 1 巻: 規則」(ケンブリッジ: Cambridge University Press / ICRC、2005 年)、規則 1 (区別の原則) および関連する解説。外国の国家元首の暗殺の禁止は、慣習国際法、1907 年のハーグ規則、および武力紛争の文脈では、攻撃は軍事目標のみに向けられるべきであるという要件に基づいている。W・ヘイズ・パークス(W. Hays Parks)著「大統領令 12333 号と暗殺」、The Army Lawyer、1989 年 12 月も参照。
[16] 国際刑事裁判所ローマ規程、国連文書A/CONF.183/9(1998年7月17日)、第8条(2) (b)(i)~(iv)は、民間人および民間物に対する意図的な攻撃を犯罪とし、第8条(2)(b)(xxv)は、予想される軍事的優位性に見合わない過剰な民間人の犠牲者をもたらす攻撃を禁止している。第8条(2)(a)(i)はさらに、保護対象者の故意の殺害を犯罪としている。
[17] 1949年8月12日のジュネーブ条約の追加議定書(国際武力紛争の犠牲者の保護に関する議定書I)は、1977年6月8日に採択され、1978年12月7日に発効した。第57条(2) は、当事者に対し、偶発的な民間人の生命の損失を回避し、いかなる場合でも最小限に抑えることを目的として、攻撃手段および方法の選択において実行可能なあらゆる予防措置を講じることを要求している。
[18] フセイン・ハッカニ(Husain Haqqani)著「壮大な幻想:パキスタン、アメリカ、そして誤解の壮大な歴史」 (New York: PublicAffairs, 2013), 290–315。パキスタンとサウジアラビアの安全保障関係の構造的特徴、すなわち資金移転、軍事展開、湾岸諸国の連携の戦略的論理については、ブルース・リーデル(Bruce Riedel)著「死の抱擁:パキスタン、アメリカ、そしてグローバル・ジハードの未来」 (Washington, DC: Brookings Institution Press, 2011)も参 照。2025年の防衛協定は、この十分に文書化された関係の、憶測シナリオにおけるもっともらしい延長として、本稿で扱われている。
[19] ピュー・リサーチ・センター、「世界のイスラム教徒:統一と多様性」、28~31ページ。パキスタンの国内政治におけるシーア派アイデンティティの政治的重要性については、ヴァリ・ナスル(Vali Nasr)著「シーア派の復活:イスラム内部の対立が未来をどのように形作るか」(ニューヨーク:ノートン、2006年)、155~185ページを参照。同書は、パキスタンの政治の宗派化と、外部危機の状況下でのシーア派とスンニ派の線に沿った動員に対する統治体制の脆弱性を記録している。
[20] アンドルー・スモール(Andrew Small)著「中国・パキスタン軸:アジアの新たな地政学」、155–178ページ。CPECの戦略的側面と、それがパキスタンの中国投資と政治的支援への構造的依存をどの程度深めたかについては、 ジークフリート・O・ヴォルフ(Siegfried O. Wolf)著「一帯一路構想における中国・パキスタン経済回廊:概念、背景、および評価」 (Cham: Springer, 2020)も参照。



