レジリエンス (NATO Chief Scientist Research Report)

日本政府は、国家安全保障戦略を含む安全保障3文書の改定を進めるための取組みを始めていると報道されている。常々、国の安全保障という難しい概念をどのように理解されているかに関心がある。個人的な印象は、日本国内の報道で聞くことの多い「外交・安全保障」という言葉に違和感を覚え、時々、報道で耳にする「外交・防衛」の言葉にやや安堵するというものある。

今まさに中東に関わる紛争で突きつけられていることは、国の安全保障に関わる課題であり、安全保障3文書改定にあたってどのように反映していくのだろうかと気になるところである。

国家の安全保障を考える際に、今時の中東における米国イスラエルのイラン攻撃に伴うエネルギーを中心とする危機を目の当たりにした時に、今年1月に紹介した、2025年12月公表の「NATO科学技術機構(STO)の”Cognitiv Warfare”レポート」と同じく公表されたNATO科学技術機構(STO)の”Resilience”レポートを思い出したのでその拙訳を紹介する。

本レポートでは、「NATO加盟国はそれぞれ、自然災害、重要インフラの機能停止、あるいはハイブリッド攻撃や武力攻撃といった重大な衝撃に耐えうるレジリエンスを備えていなければならない。レジリエンスとは、衝撃や混乱に備え、これに耐え、対応し、迅速に復旧するとともに、同盟の活動の継続性を確保するための、個別の能力および集団的な能力容量を指す」とある。本レポートは、国家の安全保障をレジリエンスという視点からまとめられたともいえると思う。国家の安全保障を考える際に大いに参考となると考えるものである。なお、これまでのMILTERMの投稿では” resilience”を“復元性”として訳してきているが本拙訳では“レジリエンス”とした。(軍治)

レジリエンス

主席科学者研究レポート

Resilience

NATO Chief Scientist Research Report

December 19, 2025

主席科学者研究レポートについて

主席科学者研究レポート(CSRR)は、NATOの上級政治・軍事指導部に対し、科学・技術(S&T)の発展に関する明確かつ証拠に基づく洞察を提供する。これらのレポートは複雑な研究成果を実践的な分析に変換し、同盟が将来の安全保障環境と戦場を形成するために、潜在的な技術的混乱を予測し、想定される能力のギャップを特定し、戦略的に適応することを支援する。

NATO指導部の上級科学顧問として、主席科学者(Chief Scientist)はNATO科学・技術機構(STO)の最先端研究を活用し、計画策定、政策、意思決定を支える証拠基盤を提供する。主席科学者研究レポート(CSRR)は科学的認識の向上に寄与し、長期的な考察を支援するとともに、科学・技術的考慮事項が広範な防衛計画策定及び政策策定に組み込まれることを保証する。主席科学者研究レポート(CSRR)は決心支援ツールとして、同盟の知識基盤と現実世界の優先課題を結びつける役割を果たす。上級指導者が知識を行動に移し、新たな安全保障上の課題に機敏かつ一貫性を持って対応するNATOの能力強化を導くものである。

NATO科学・技術コミュニティの中核をなすのは、同盟の防衛科学・技術協力における主要機関である科学・技術機構(STO)である。NATO科学・技術統括委員会(STB)の統括のもと、科学・技術機構(STO)は多国籍の作業計画を実施し、同盟国およびパートナー国間の科学協力の拠点として機能する。応用研究、実験、試作機試験、分析に取り組む各国の専門家を結集している。相互運用性と情報交換を促進することにより、科学・技術機構(STO)は加盟国がNATOの共有知識基盤に共同投資した成果を、あらゆる軍事力行使手段において決定的な優位性としてNATOが活用することを可能にする。

序文

2022年のNATO戦略コンセプトにおいて、同盟国は、個別的レジリエンス(individual resilience)および集団的レジリエンス(collective resilience)と技術的優位性を強化することで合意した。2016年以降のすべてのNATO首脳会議では、あらゆる脅威やドメイン、重要インフラ、サプライ・チェーンにわたる同盟の集団的な認識、準備、能力を通じてNATOのレジリエンスを引き続き強化し、多岐にわたる悪意ある活動やハイブリッドな課題に対抗する必要性が強調されてきた。同時に、科学・技術(S&T)への継続的な投資は、NATOおよび加盟国が現在および将来の敵対者や競争者を上回る能力を強化し、同盟が堅固かつ強靭であり続け、あらゆる脅威に対応できる態勢を維持することを保証するものである。これにより、1949年のワシントン条約第3条に基づく各国の関与に従い、抑止・防衛、危機の予防・管理、および協力的安全保障というNATOの3つの核心的タスクを遂行することが可能となる。

NATO科学・技術統括委員会(STB)およびNATOレジリエンス委員会(RC)の各委員長は、両コミュニティ間の連携を積極的に強化してきた。本主席科学者研究レポート(CSRR)は、同盟国のレジリエンスを可能にし、関連する成果の認知度を高めるNATO科学・技術機構(STO)の完了済みおよび進行中の活動に関する洞察を提供することを狙いとしている。また、本レポートは、レジリエンス研究コミュニティ間の連携を強化し、既存の活動に対する認識を高めることで両分野における今後の活動を方向づけ、科学・技術機構(STO)の「レジリエンスに関する共同作業計画(CPoW)チャレンジ」において検討可能な研究上の主要な課題を特定することも狙いとしている。本レポートは、レジリエンスが科学・技術機構(STO)における現在および将来の活動における重要な研究テーマであることを強調している。

科学・技術機構(STO)は、防衛研究、政府、産業界、学界の専門家が、同盟国間で国際的に優先度の高い課題について共同で活動し、民間および軍事部門の幅広いステークホルダーと協力するための独自のフォーラムである。これは、強固な民軍パートナーシップに支えられたNATOのレジリエンスに関する活動と重要な共通点を持っている。イノベーションと技術がますます民間商業部門によって牽引される中、レジリエンスを実現する技術的基盤を活用し、関連する課題に対処するためには、科学・技術部門における官民協力の強固な基盤が不可欠となる。

また、本レポートは、レジリエンス委員会(RC)およびその計画策定グループによる中長期的なレジリエンス計画策定において考慮すべき戦略的動向に関する指針を提供することも狙いとしている。科学・技術機構(STO)は、科学者や技術者による基礎研究において同盟を主導するだけでなく、NATO組織および同盟国の国防関係者に重要な防衛上の影響を及ぼす科学・技術の動向を特定している。こうした動向には、レジリエンスに対する視野の拡大がますます反映されるようになっており、多様な主体による広範な脅威から同盟国の国民のレジリエンスを確保する上で、NATOが同盟国を支援する最前線に立ち続けることへの要請が高まっている。

レジリエンス委員会(RC)の活動が継続し、科学・技術機構(STO)が「レジリエンス」に関する戦略的研究課題(「共同作業計画(CPoW)チャレンジ」)を通じてその活動範囲を拡大する中、本レポートは、今後のプログラムや活動を構築し、両コミュニティ間の連携を強化するための指針となるものである。

Mr Steen Søndergaard

NATO Chief Scientist

NATOは、競争者や敵対者が同盟加盟国の開放性や相互接続性を悪用しようとするだけでなく、直接的あるいは代理勢力を通じてハイブリッド戦術を用いて同盟国の市民の安全を脅かす、予測不可能な戦略的環境に直面している。戦略的競争、不安定性、そして繰り返される衝撃がNATOの広範な安全保障環境を特徴づけており、とりわけ、従来型の紛争と非従来型の紛争の境界線は曖昧になり得る。新技術の活用は、経済、金融、情報、サイバー分野における相互依存関係により、我々の社会に恩恵をもたらす一方で、脆弱性も生じさせている。

NATO加盟国はそれぞれ、自然災害、重要インフラの機能停止、あるいはハイブリッド攻撃や武力攻撃といった重大な衝撃に耐えうるレジリエンスを備えていなければならない。レジリエンスとは、衝撃や混乱に備え、これに耐え、対応し、迅速に復旧するとともに、同盟の活動の継続性を確保するための、個別の能力および集団的な能力容量を指す。レジリエンスは、各国の責任であると同時に、集団的な関与でもある。これは、同盟国が攻撃に抵抗するための個別的および集団的能力容量を維持・発展させることを定めた1949年のワシントン条約第3条に根ざしている(ファクト・ボックス1)。したがって、一国のレジリエンスは同盟全体のレジリエンスに寄与し、国家的レジリエンスおよび集団的レジリエンスは、信頼できる抑止と防衛のための不可欠な要素として位置づけられ、同盟の3つの核心的タスクの遂行を支えるものである。

したがって、抑止と防衛のための準備を強化するには、政府全体のアプローチ(whole-of-government approach)が必要であり、政府内での積極的な連携、官民協力、社会のレジリエンスへの配慮、そして幅広い軍事的・民間的能力を含む、社会全体を視野に入れたアプローチが求められる。また、レジリエンスは、より多くの選択肢をより長く維持することで抑止力を強化し、それによって紛争や危機の激化の可能性を低減させる。

ファクト・ボックス1:第3条は、1949年のワシントン条約にその根拠を置く

「本条約の目標をより効果的に達成するため、締約国は、継続的かつ効果的な自助および相互援助を通じて、個別に、また共同して、武力攻撃に抵抗するための個別的および集団的能力容量を維持し、発展させるものとする。」

同盟国に対するハイブリッド作戦、すなわち第5条の発動基準を下回る作戦であっても、武力攻撃のレベルに達し、北大西洋理事会がワシントン条約第5条に基づく対応を開始する事態を招きかねない。ロシア連邦は、破壊工作、暴力行為、挑発、サイバー攻撃、電子干渉、悪意ある政治的影響力行使など[1]、様々な手段を通じて同盟国に対するハイブリッド行動を強化しており、これは同盟の安全保障に対する脅威となっている。中華人民共和国(PRC)が表明する野心と政策は、NATOの利益、安全保障、および価値観に対してシステム的な課題をもたらしている。中華人民共和国(PRC)とロシアは、金融危機、移民危機、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)、そしてデジタル・ドメインを誤った情報の兵器(weapon of misinformation)として利用することなどを通じて、意図的に危機を利用して統治機能を弱体化させてきた[2]

エネルギー供給や通信システムなどの重要インフラに対する攻撃的かつ意図的な行動は、国家およびNATOの安全保障と防衛に影響を及ぼし、敵対者は短期的・長期的な到達目標を達成するためにこれを絶えず悪用している。敵対者による組織的なハイブリッド戦争には、国家の重要な機能や政府・統治の継続に不可欠なシステムの機能を低下させ、それによって国家のレジリエンスと強靭性を試み、影響を与えることが含まれる。ウクライナのエネルギー部門に対する攻撃は、レジリエンスを損なうために民間インフラがターゲットとされる可能性を示す一例である。

技術は、同盟国の安全保障と防衛にとって、新たな機会、課題、脅威をもたらす主要な要因である。新興技術や先端技術、そして技術システムは、脆弱性を軽減しつつレジリエンスを構築するために活用することができる。NATOが変革を加速させ、新技術やイノベーションを取り入れ、あらゆる「力の手段(Instruments of Power)」[3]において技術から決定的な優位性を引き出すべく技術導入を推進している中、こうしたアプローチはレジリエンスの構築においても重要な意味を持つ。

例えば、NATO加盟国は、エネルギーが軍隊にとって極めて重要な能力の基盤であるという点で一致している。エネルギー技術やシステムが進化する中、革新的なエネルギー技術を注視し、同盟全体におけるレジリエンス、有効性、相互運用性を念頭に置いてその軍事的応用を特定することは、それらの適時な導入に寄与し、同盟に戦略的優位性をもたらすことができる。

同盟は、COVID-19に象徴されるように、医療システムに影響を及ぼす課題に直面してきた。これはグローバルなサプライ・チェーン内の脆弱性を露呈させ、多くの国々が重要物資やサービスに対する世界的な依存関係を再評価するきっかけとなった。したがって、深刻な危機や戦争のための準備の計画策定は、各国のレジリエンス、抑止力、防衛力を構築する上で極めて重要である。これは、NATOの防衛・抑止力、および危機の予防・管理を強化するために、レジリエンスを構築することの重要性を示している。効果的なレジリエンスの構築には、サイバー防衛、軍事的取組みや軍隊の移動性を維持するために重要な民間インフラ、およびソーシャル・メディア上の情報脅威の防止などに関する、積極的な事後対応が求められる。同盟国やパートナー国間の連携、および欧州連合(EU)などの組織との協力を通じたレジリエンスの構築は、NATOの協力的安全保障にとっても極めて重要である。

ウクライナから得られた教訓は、民間と軍の関係者の間の共同計画策定の強化が必要であることから、適切な法整備も含め、レジリエンスを強化するためには社会全体のアプローチ(whole-of-society approach)が重要であることを浮き彫りにしている。

NATOのレジリエンスへのアプローチ

冷戦時代、民間の備え(civil preparedness)(当時は「民間緊急事態計画策定」と呼ばれていた)は同盟国によって十分に組織化され、十分な資源が投入されており、NATOの組織および指揮系統にも反映されていた。1990年代には、(防衛よりも)域外作戦や危機管理への重点が置かれた結果、民間緊急事態対応能力および計画策定が弱体化した。2014年のロシアによるクリミアの違法な併合に続く戦略環境の変化に対応し、NATOは2016年のワルシャワ・サミットにおいて「レジリエンス強化へのコミットメント」を表明した。このサミットにおいて、各国首脳は、NATO防衛計画策定プロセス(NDPP)に沿って同盟国が国家レジリエンス評価を実施するために活用できる指針と評価基準を盛り込んだ「国家レジリエンスのための7つの基本要件」に合意した。これらの基本要件は、3つの主要な国家機能(民間防災)にまたがっている。

政府の継続性
住民への不可欠なサービス
軍への民間支援

これらはすべて、国のレジリエンスを強化するために不可欠であり、(最も)過酷な状況下でも維持されなければならない。

「7つの基本要件」は、軍隊の有効な能力確保、受入国支援計画策定、およびNATOの3つの核心的タスク[4]を効果的に支援するための包括的な枠組みを提供している(ファクト・ボックス2)。「7つの基本要件」間の相互依存関係は、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)のパンデミックおよびロシアによるウクライナへの侵略戦争の際に、はっきりと示された。

ファクト・ボックス2:NATOの7つの基本要件(2016年)

R1 政府の機能および重要な行政サービスの継続性が確保されること。例えば、危機的状況下においても意思決定を行い、市民と意思疎通を図ることができること

R2 強靭なエネルギー供給体制:エネルギーの継続的な供給を確保し、供給途絶に備えた代替策を講じる

R3 人々の無秩序な移動に対処し、その移動とNATOの軍事展開との間の調整を行う能力

R4 強靭な食料・水資源により、混乱や破壊工作から守られた、強靭な供給体制を確保する

R5 多数の負傷者・犠牲者への対応能力;民間医療システムが対応可能であることを確保し、十分な医療物資が備蓄され、安全に保管されていることを確認する

R6 強靭な民間通信システム:十分なバックアップ能力容量を確保し、危機的状況下においても電気通信およびサイバー・ネットワークが機能し続けることを保証する。これには、5Gを含む信頼性の高い通信システムの整備、システム復旧のための堅牢な手段、危機発生時の国家機関への優先的なアクセス、および通信システムに対するリスクの徹底的な評価も含まれる。

R7 強靭な民間交通システム:危機的状況下においても、NATO軍が同盟域内を迅速に移動できること、および民間サービスが交通網を確実に利用できることを確保する

2021年のブリュッセル・サミットにおいて、同盟国は2016年の「ワルシャワからのレジリエンスへの関与」をさらに強化することで合意し、レジリエンスは国家の責任であると同時に、敵対者による従来型の脅威、非従来型の脅威、およびハイブリッドな脅威や活動に対する集団的な関与であることを強調した。したがって、同盟のレジリエンスは、民間の備えと軍事的能力容量の組み合わせによって成り立っている[5]

2022年のNATO戦略コンセプトでは、「我々は、我々の安全保障に対する軍事的および非軍事的な脅威や課題に対し、各国および同盟全体としてのレジリエンスを構築するため、より強固かつ統合的かつ首尾一貫したアプローチを追求する。国家的レジリエンスおよび集団的レジリエンスは、北大西洋条約第3条に根ざした国家の責任および集団的関与として重要である」と述べられている。戦略的脆弱性や依存関係、エネルギー安全保障と供給、重要インフラ、サプライ・チェーン、医療システムといった分野が、さらなる調査と対策の対象として強調された。また、同戦略コンセプトは、同盟が戦略的ショックや混乱に備え、これに耐え、対応し、迅速に回復する能力容量を強化する必要があることを強調し、「我々の国家的レジリエンスおよび集団的レジリエンスを確保することは、すべての核心的タスクにとって極めて重要であり、我々の国家、社会、そして共有する価値観を守るための取組みの基盤となる」と述べている[6],[7]

2023年のヴィリニュス・サミットにおいて、同盟国は「新たな集団的レジリエンス目標(New collective Resilience Objectives)[8]」に合意した。これは、より統合的かつ調整の取れたアプローチを通じて同盟のレジリエンスへの関与を強化し、脆弱性を軽減するとともに、平時、危機時、紛争時を問わず、政府機能の継続、不可欠な公共サービスの維持、および軍事作戦に対する民間支援を可能にするための各国および同盟全体の能力を向上させることを目的としている。このレジリエンス目標は、7つの基本要件にまたがる集団的な脆弱性に対処するものであり、同盟国はこれらの集団的目標に基づき、独自の国家的到達目標と実装計画を策定することができる[9]。また、2023年のサミットでは、英国ノースウッドにあるNATO海軍司令部を拠点とする「重要海底インフラの安全保障センター」が発足した。

2024年のワシントン・サミットでは、各国のレジリエンス[10]を強化するための同盟の取組みがさらに強調された(ファクト・ボックス3)。これにより、統合計画策定や、政府全体および官民連携における必要とされる要件や措置に関する認識の統一を通じて、市民の備えと軍の備えがさらに緊密に連携することとなった。これには、政府全体をアプローチ(whole-of-government approach)、官民連携、そして社会のレジリエンスへの配慮が求められる。また、2024年のサミットでは、同盟国間で、民間計画策定を国家および集団防衛計画策定(例えば「欧州・大西洋地域における抑止と防衛(DDA)」一連の計画など)に統合し、集団的レジリエンスをさらに強化するとともに、志を同じくするパートナーとの協力を強化することで合意が形成された。

ファクト・ボックス3

「我々は、民主主義体制(democratic systems)、重要インフラ、サプライ・チェーンなどに対するものを含む、増大する戦略的脅威に対処するため、あらゆる災害およびあらゆるドメインにおいて、同盟の集団的な認識、準備、能力容量を強化し、引き続きレジリエンスを高めていく。我々は、あらゆる種類の悪意ある活動を検知し、防御し、対応するために必要な能力を投入する。また、同様の取組みを行うパートナー、特に欧州連合(EU)との協力を深化させるための具体的な措置を講じる」。NATOワシントン・サミット共同声明(第12項)。

2016年以降、NATOは、軍事的および非軍事的な脅威や安全保障上の課題に対する集団的および各国のレジリエンスの構築に、各国の責任および集団的関与として、一層注力している。

この取組みが今後も継続されることは間違いなく、また継続されなければならない。そのためには、必要な資源を配分することを含め、すべての同盟国がその関与を履行することが求められる。しかし、各国は、それぞれの国内のレジリエンス構造、仕組み、責任に応じて、レジリエンスへの対処や強化の方法を異にするだろう。

NATOの用兵基本コンセプト

NATOの「用兵基本コンセプト(NWCC、2021年)」は、「多層的レジリエンス(Layered Resilience)」を同盟にとっての「戦いの開発の重要事項(WDI)」として位置づけた[11]。この「戦いの開発の重要事項(WDI)」の「多層的レジリエンス」のコンセプトは、戦略的な衝撃や奇襲を予見・耐え抜き、その影響を管理し、戦い抜いて、最終的には敵対者よりも長く持ちこたえ、勝利を収めるという同盟の能力を支える「軍事力行使手段(MIoP)」を提供するものである。これには、軍事的レジリエンスと民間的レジリエンスという、相互に補強し合う「層(layers)」からなる多層的なアプローチ(layered approach)が必要である。このアプローチは、NATOの包括的なレジリエンス・アジェンダを支援するものであり、指揮系統、軍事組織・プロセス、予備部隊、冗長性、および能力と能力容量のバランスを維持することの重要性を認識している。この「多層的レジリエンス」コンセプトは、軍事、軍民、および民軍というすべての層において、同盟が衝撃を吸収し、闘いを継続する能力を強化するものである。連合軍変革コマンド(ACT)は、軍および民間のステークホルダー間の計画策定プロセスを支援し、NATOのレジリエンス・アジェンダに貢献するため、この「多層的レジリエンス」コンセプトを策定した。

NATOレジリエンス委員会

NATOのレジリエンスおよび市民の備えに関する政策は、レジリエンス委員会(RC)によって主導されている。同委員会は、NATOの主要な政治的意思決定機関である北大西洋理事会に直接報告を行う。

レジリエンス委員会(RC)[12]は、NATOの最高諮問機関として、戦略的・政策的な指示や計画策定指針を示すとともに、NATOのレジリエンス活動の調整を監督する役割を担っている。レジリエンス委員会(RC)は、NATOの7つのレジリエンス基本分野を網羅する同盟国代表で構成される6つの専門計画策定グループ(ファクト・ボックス4)によって支援されている。同委員会は、パートナー諸国、国際機関、産業界、その他の利害関係者との重要な架け橋となっている。

レジリエンス委員会(RC)は、同盟内におけるレジリエンス活動の優先順位を定め、国家的レジリエンスおよび集団的レジリエンスに対するNATOの目標を具体的な行動や指針へと落とし込む役割を担っている。同委員会は、同盟が実施するレジリエンス関連活動の全範囲において、政府全体および社会全体の視点が確保されるよう努めている。また、レジリエンス委員会(RC)は、NATO本部にある欧州・大西洋災害対応調整センター(EADRCC)の活動を監督している。同センターは、同盟国およびパートナー諸国間、ならびにNATOが軍事作戦や任務を展開している国々における災害救援の取組みの調整を担う中核機関である。

政策や計画策定に加え、教育(education)と認識(awareness)もまた、レジリエンスを強化するための重要な柱の一つである。「レジリエンス参照カリキュラム(Resilience Reference Curriculum)」は、防衛教育の目的でレジリエンスをテーマとした講座、学習プログラム、および研修を開発するための重要な指針となる枠組みを提供する。これは、同盟の安全保障および各国の国家安全保障に対する軍事的・非軍事的な脅威や課題に対し、NATO加盟国およびパートナー国がレジリエンスを強化する取組みを支援するものである[13]

ファクト・ボックス4:レジリエンス委員会の6つの計画策定グループ

  • 民間通信計画策定グループ(CCPG)は、通信部門におけるレジリエンスの構築に関する助言を提供する
  • 市民防護グループ(CPG)は、行政の継続性を確保するとともに、制御不能な人々の移動に効果的に対処する能力について検討している
  • エネルギー計画策定グループ(EPG)は、強靭なエネルギー供給体制の監督を担当している
  • 食糧・農業計画策定グループ(FAPG)は、食糧・水部門におけるレジリエンスに関する課題に取り組んでいる
  • 統合医療グループ(JHG)は、同盟国が大量死傷者や社会機能を麻痺させるような健康危機に対処する能力をカバーしている
  • 輸送グループ(TG)は、内陸陸上、海上、航空の各分野に分かれており、強靭な民間輸送システムを支えている

科学・技術機構(STO)は、NATOのレジリエンスに関する活動を支援

NATO科学・技術機構(NATO STO)は、2016年以降のNATO首脳会議で強調されてきたように、信頼できる抑止力と防衛体制の確立に向け、国家的レジリエンス(national resilience)および集団的レジリエンス(collective resilience)の強化を引き続き支援している。

科学・技術統括委員会(STB)の議長とレジリエンス委員会(RC)の議長は、科学・技術コミュニティとレジリエンス・コミュニティ間の連携と調整を強化するための取組みを主導してきた。両者は共同で、科学・技術が同盟国の国家的レジリエンスおよび集団的レジリエンスをいかに支援できるかについて、知見と指針を提供することに合意した。2023年12月に発表された「思考の材料(Food-for-Thought:FFT)」文書では、「個別および集団のレジリエンスと技術的優位性を強化する」ための4つの主要な提言が示されており、その内容は以下の通りである。

レジリエンス分野と科学・技術分野のコミュニティ間の連携を強化し、戦略的な協力を深める
「7つの基本要件」に関する各委員会の連携と調整を強化するとともに、ウクライナの国家レジリエンス活動から得られた初期の所見や教訓も反映させる
レジリエンスに関する理解を深め、エビデンスに基づいた共通の将来の研究アジェンダを共に策定する
ネットワーキング・イベントを通じて、レジリエンス委員会(RC)の計画策定グループ、NATO民間専門家プール、および科学・技術機構(STO)コミュニティ間の連携を強化する

また、この「思考の材料(Food-for-Thought:FFT)」文書では、科学的知見がレジリエンスに関する助言を強化し得るいくつかの分野も特定している。本レポートの公表を受け、NATO首席科学者室(OCS)は、過去25年間の科学・技術機構(STO)を「7つの基本要件」に照らし合わせて整理した。本調査は、レジリエンスというコンセプトに対する共通の理解を深めるとともに、政策立案者へのレジリエンスに関する助言の提供を支援し得る、現在進行中および完了済みの科学・技術活動を特定することで、共通の研究アジェンダの策定に寄与するものである。

首席科学者室(OCS)の調査によると、約4,000件の科学・技術機構(STO)研究活動のうち、52件が「7つの基本要件」に合致していることが判明した。これは活動総数(タスク・グループ、専門家会議、ワークショップ、シンポジウム)の2%未満に過ぎず、レジリエンスに関する科学・技術知識の重要性を強調し、その充実を図る必要性が浮き彫りとなった。これら52件の活動は、1999年から2025年までの期間を対象に、科学・技術機構(STO) 共同作業計画(CPoW)データベースにおいてあらかじめ設定されたキーワードを用いて特定された。また、本調査の結果、共同作業計画(CPoW)の活動は、それぞれエネルギー、大量死傷者、通信を表すベースライン要件R2、R5、R6との整合性がより高いことが示された(図1)。

1999年から2025年11月までの期間における、NATOの7つの基本要件に沿った科学・技術機構(STO) 共同作業計画(CPoW)の活動

R1 政府の機能および重要な行政サービスの継続性の確保  R2 強靭なエネルギー供給

R3 人々の無秩序な移動とNATOの軍事展開との間の調整   R4 強靭な食料・水資源による強靭な供給体制

R5 多数の負傷者・犠牲者への対応能力   R6 強靭な民間通信システム   R7 強靭な民間交通システム

図1. 1999年から2025年にかけて、NATOの7つの基本要件に沿った科学・技術機構(STO)活動の件数[14]

基本要件については、ファクト・ボックス2に記載されている。

R7に沿った科学・技術機構(STO)の共同作業計画(CPoW)活動は、主に兵站および物資の確保におけるスウォーム・システムの活用に重点が置かれている。科学・技術機構(STO)の焦点は軍事兵站および物資供給の問題に集中しており、これは、調査対象期間において、民間インフラに関する研究が優先されていなかったこと、あるいは軍民間の脆弱性や相互依存関係が詳細に検討されていなかったことを意味する。

52件の研究活動の概要は、別紙1に記載されている。7つの「ベースライン要件」にまたがる52件の活動のうち、科学・技術機構(STO)は各要件を網羅する幅広い活動を行っている。52件の活動のうち40件の技術レポートは、7つの科学・技術機構(STO)科学・技術委員会(STC)に配分されている。したがって、8つの科学・技術委員会(STC)のうち7つが「レジリエンスへの関与(Resilience Commitment)」の支援に取り組んでいる。2022年以降、共同作業計画(CPoW)は、科学・技術統括委員会(STB)によるトップダウン式の優先順位付けなしに、NATOの7つの基本要件に沿った活動を大幅に増加させた。これは、レジリエンスに関連するテーマにおける科学・技術研究への需要が高まっていることを示している。レジリエンスに関する科学・技術機構(STO)活動の3つの例をファクト・ボックス5に示す。

ファクト・ボックス5:科学・技術機構(STO)のレジリエンスに関する活動のうち、基本要件2および6に関連する3つの事例

例 1. エネルギー安全保障(SAS-198、2025年)。ノルディック・パイン2025(NORDIC PINE 2025):再生可能エネルギー・システムに対するハイブリッド脅威。(NATO基本要件 2

手頃な価格のエネルギーが支障なく供給されることは、技術的に高度な市民社会を維持し、国家の存続を確保する上で極めて重要である。エネルギー安全保障は同盟内で大きな関心事となっており、化石燃料から再生可能エネルギーへの移行を進める中で、その過程における潜在的な脆弱性を把握することが不可欠となる。新しいエネルギー・システムは、伝統的なシステムのように、成熟し、十分に分析された政府の管理体制、セキュリティ分析、および経験に基づいていない可能性があり、その結果、敵対者に対する防御力が低い可能性がある。本プロジェクトの到達目標は、実用的な知識と最近の現場での進展を軍の意思決定者に伝達し、特にサイバー、サプライ・チェーン、悪意ある影響力の分野において、再生可能エネルギー・システムを狙いとしたハイブリッド事案への備えを強化することにある。

例 2. エネルギー安全保障(SAS-191、2024年)。ハイブリッド戦時代のエネルギー安全保障。ノルディック・パイン2024(NORDIC PINE 2024)。(NATO基本要件 2

エネルギー安全保障は、社会の不安定化を招くハイブリッド戦の影響を受けやすい。NATOがエネルギー安全保障、サイバー・セキュリティ、ハイブリッド戦の融合において最前線で役割を果たしていることを認識し、科学・技術機構(STO)は、国家または非国家主体が、地域、地域、国家、あるいは制度レベルでの意思決定に影響を与えることで、NATOが手頃な価格で許容可能なエネルギー供給への確実なアクセスを損なったり、任務に不可欠な要件を満たすために十分なエネルギーを保護・供給する能力を損なったりすることを狙いとして、NATOのエネルギー安全保障およびハイブリッド脅威を意図的な行動として利用している実態に対処する。本プロジェクトの到達目標は、NATOの民間および軍事指導部に対し、分析的支援を提供することである。

事例3. 全球測位衛星システム(GNSS)の性能低下/利用不能環境における協調航法(SET-229、2016年~2020年)。(NATO基本要件6

全球測位衛星システム(GNSS)はNATO軍全体で利用されているが、信号ジャミング(signal jamming)、遮蔽、またはスプーフィングにより、敵対的な環境下での全球測位衛星システム(GNSS)信号の利用可能性は大きな懸念事項となっている。本研究活動の目標は、i) 先進的な協調型航法センサー技術および統合技術を実装し、全球測位衛星システム(GNSS)が利用不能または性能が低下した状況下での作戦に関するコンセプト実証を行うことにより、困難な屋内・都市環境および接近拒否/領域拒否(A2/AD)環境において、NATOの軍事効果を向上させる技術を模索することである。本研究活動では、各国の位置・航法・時刻(PNT)技術を取り上げ、同盟国による採用に向けて数多くの「ベスト・オブ・ブリード」技術が検討された。また、本研究プロジェクトは、科学・技術機構(STO)内での一連の講演シリーズおよびシンポジウムの開催にもつながった。

戦略的研究課題としてのレジリエンス

NATO科学・技術統括委員会(STB)は、この重要な分野におけるニーズを特定し、さらなる科学・技術(S&T)活動を促進することを狙いとして、2022年の科学・技術機構(STO)「共同作業計画(CPoW)チャレンジ」における戦略的研究課題の一つとして「レジリエンス」を採択した。「共同作業計画(CPoW)チャレンジ」は、科学・技術統括委員会(STB)が毎年実施する仕組みであり、同盟国にとって戦略的に重要な分野に対するトップダウンの需要シグナルを提供するものである。これらは1つまたは複数の国が主導し、包括的な課題定義を中心に展開され、短期的および中期的な協力関係と新たな科学・技術機構(STO)研究活動の創出を到達目標としている。通常、期間は1年間で、具体的な需要を実行可能な科学的な協力へと転換するための専門家ワークショップが行われる。

フィンランドは、レジリエンスに関する「共同作業計画(CPoW)チャレンジ」(通算5回目となるチャレンジ)を主導した。レジリエンスをテーマとした最初のワークショップは2024年12月にヘルシンキで開催され、2025年3月にはノルウェーのオスロでフォローアップ・ワークショップが行われた。これまでに特定された「共同作業計画(CPoW)チャレンジ」とその科学的成果である「認知戦(Cognitive Warfare)」(ノルウェー)および「気候変動(Climate Change)」(カナダ)は、レジリエンス・チャレンジと特に関連性が高い。

他の組織・団体との協働

政策に焦点を当てた「将来の戦争・防衛」に関する3部作の会議の第3弾となる「ウィルトン・パーク(Wilton Park) 将来の防衛、抑止力、レジリエンス会議2024」では、特にレジリエンスが取り上げられた。参加者は、防衛・安全保障分野に関わる政府機関および民間団体の関係者でした。科学・技術機構(STO)はこれまでのすべてのウィルトン・パーク会議を支援しており、2024年の会議においても、準備段階での協力に加え、科学・技術機構(STO)スタッフがプレゼンテーションを行うほか、イベントではパネル・モデレーターや報告者(Rapporteur)ラポルトを務め、会議の最終レポート作成にも貢献するなど、多大な貢献を果たした[15]

同盟国やパートナー間でレジリエンスに関するベストプラクティスを共有し、相乗効果を生み出す
脅威の範囲と規模について、政府、産業界、市民の間でより透明性を高める
国家と市民との間の連携を強化する
重要な国家インフラに冗長性を組み込む
レジリエンスに関する検討、計画策定、および行動の初期段階から、防衛、技術・産業基盤、そしてより広範なサプライ・チェーンを巻き込む
EUとNATOの連携を強化し、政府全体をアプローチ(whole-of-government approach)を推進し、効果的な事後対応を確保する

結論と今後に向けて

レジリエンスは常にワシントン条約の中核を成すものであり、昨年のサミットにおいて、同盟国は、あらゆる災害やドメインにわたる集団的な認識、準備、能力容量の強化、ならびに悪意ある活動やハイブリッドな課題への対処を通じて、NATOのレジリエンスを強化することを約束した。こうした取組みは、NATOが「抑止・防衛」、「危機の予防・管理」、「協力的安全保障」という3つの核心的タスクを遂行する上で、大きな支えとなるだろう。

これを受け、NATO科学・技術統括委員会(STB)およびNATOレジリエンス委員会(RC)の委員長らは、NATOの到達目標と任務を支援するため、両委員会の連携強化に向けてますます積極的に取り組んでいる。

科学・技術機構(STO)とレジリエンス委員会(RC)は、パートナーシップをさらに強化し、ネットワーキング・イベントを通じたコミュニケーションを促進するとともに、ウクライナの国家レジリエンス活動から得られた知見や教訓を含め、両コミュニティ間の戦略的連携を強化していく。この戦略的パートナーシップは、NATOのレジリエンスおよび科学・技術(S&T)コミュニティを、共通の将来の研究アジェンダへと導くものである。

さらなる共同の活動(collaborative work)は、NATO科学・技術機構(STO)とその科学・技術コミュニティ、レジリエンス委員会(RC)およびその計画策定グループ、さらに産業界や重要な民間組織との間で「イノベーション思考(thinking innovation)」を促進し、国家的レジリエンスおよび集団的レジリエンスをさらに強化することにつながるだろう。科学・技術機構(STO)とレジリエンス委員会(RC)の連携は、NATO組織全体におけるさらなる協力を促進するものである。さらに、科学・技術機構(STO)とレジリエンス委員会(RC)のパートナーシップは、防衛科学の専門知識が民間の準備上の課題の解決にどのように貢献できるか、また、民間コミュニティが研究を通じて防衛コミュニティとどのように連携し、意思決定者や政策立案者に対して共同で指針を提供できるかを示すものである。

例えば、強靭な国家重要インフラやサプライ・チェーンは、敵対的な混乱や世界的な危機に直面しても、NATOが作戦上の即応性(operational readiness)を維持する上で極めて重要である。科学・技術機構(STO)は、積層造形(additive manufacturing:3D印刷)などの技術の推進や、エネルギー安全保障の強靭性を確保するための解決策の模索を通じて、幅広い課題に取り組んでいる。NATOは、強固なサプライ・チェーンの枠組みを構築することで、あらゆる兵站上の混乱に迅速に対応する能力を高め、幅広い環境下での持続的な作戦に向けて部隊の準備を整えることができる。弾薬や医療管理からエネルギー安全保障能力に至るまでのサプライ・チェーンの相互運用性は、NATOが戦場の同盟軍を継続的に支援するために不可欠である。

科学・技術機構(STO)は、「7つの基本要件」に沿ったその他の分野にも取り組んでいる。その例としては、大規模な移動や人的被害、化学・生物・放射能・核(CBRN)対策、電子戦、航法システム、通信システム、およびハイブリッドな脅威に対抗するためのシステム的アプローチなどが挙げられる。科学・技術機構(STO)の成果は、レジリエンス委員会(RC)の計画策定グループによる活動を支援するとともに、NATOの政治・軍事指導部に対する、政策の策定および実施に向けた証拠に基づく助言の基礎を提供するものである。

科学・技術機構(STO)は、レジリエンスを国家の責務および集団的関与として位置づける同盟国の関与を支援するため、レジリエンスというテーマにおける科学・技術(S&T)の強化を継続するとともに、2025年の「レジリエンスに関する「共同作業計画(CPoW)チャレンジ」からも特定される新たな研究活動に取り組んでいく。

科学・技術機構(STO)のレジリエンスに関する活動は、軍および民間のステークホルダーにまたがるより広範なコミュニティを巻き込み、その連携を強化することを狙いとしている。これにより、NATOの抑止と防衛の強化という任務を支援し、脅威や安全保障上の課題からNATOの価値観を守り抜くことを目指している。

付録1 科学・技術機構(STO)の共同作業計画(CPoW)完了済み活動 1999-2025

R1 政府の機能および重要な行政サービスの継続性の確保  R2 強靭なエネルギー供給

R3 人々の無秩序な移動とNATOの軍事展開との間の調整   R4 強靭な食料・水資源による強靭な供給体制

R5 多数の負傷者・犠牲者への対応能力   R6 強靭な民間通信システム   R7 強靭な民間交通システム

NATO参照コード タイトル R1 R2 R3 R4 R5 R6 R7
HFM-201 ソーシャル・メディア:軍事用途におけるリスクと機会
HFM-ET-201 人間の安全保障
IST-086 危機・緊急事態および事後対応管理におけるC3I
MSG-147 危機・災害管理プロセスおよび気候変動の影響に対するM&Sによる支援
SAS-121 ハイブリッド戦:事例研究
SAS-127 ハイブリッド戦の事例研究:NATOへの示唆
AVT-165 新興の小規模電源の利点と障壁
AVT-209 省エネ技術と作戦コンセプト
AVT-227 大型バッテリー・パックにおけるエネルギー貯蔵と安全性の両立
AVT-231 電力システム向け希土類材料の不足
AVT-ET-248 燃料・動力源としての水素と、NATOが直面するインフラ上の課題
SAS-119 エネルギーと防衛:依存度と脆弱性の低減―効率性の向上
SAS-165 新興技術が軍事兵站に及ぼす影響の評価
SAS-191 ノルディック・パイン 2024:再生可能エネルギー・システムに対するハイブリッド型脅威
SET-150 軍事用途における携帯用電源技術およびエネルギー管理
SET-173 NATOの戦闘員向け燃料電池およびその他の新興携帯型電源技術
SET-206 人間が装着・携帯可能な用途およびリモートセンサー向け発電技術
IST-112 常時監視:ネットワーク、センサー、アーキテクチャ
MSG-213 M&Sは、レジリエンスの構築と難民の流入管理を支援
HFM-154 軍事作戦における栄養学と食品基準
HFM-255 防衛分野における合成生物学:機会と脅威
HFM-382 人間の安全保障と軍事作戦
SAS-022 軍事基地における環境汚染防止技術の導入に向けたアプローチ
HFM-041 化学剤に対する予防と治療
HFM-060 化学・生物防衛における作戦的医療上の課題
HFM-100 展開前から展開後までのNATO部隊の医療保護要件:軍隊における公衆衛生
HFM-108 NATOの医療監視・対応、研究および技術的選択肢
HFM-137 部隊医療防護
HFM-157 避難プロセスにおける医療上の課題
HFM-186 生物剤に対する医療対策の研究における最先端
HFM-253 化学戦エージェントの脅威に対する医学的・化学的防衛
HFM-273 化学・生物・放射能防衛
IST-010 21世紀におけるNATO情報システムの防護
IST-062 動的通信管理
IST-174 異種ネットワーク対応作戦における安全な水中通信
IST-187 NATOの作戦への5G技術の適用
SCI-025 通信、電子戦統制および調整
SCI-268 NATOの宇宙:NATO作戦のレジリエンスと有効性を高めるための科学・技術の進展
SET-167 全球測位衛星システム(GNSS)が利用できない環境における航法センサーおよびシステム
SET-229 全球測位衛星システム(GNSS)が利用困難または利用不能な環境における協調航法
SAS-183 エネルギー安全保障のレジリエンス、能力、および相互運用性
SAS-190 エネルギー安全保障のレジリエンス、能力、および相互運用性の強化
SAS-198 「ノルディック・パイン 2025:再生可能エネルギー・システムに対するハイブリッド型脅威」
MSG-221 M&Sは、レジリエンスの構築と大規模な人の移動の管理を支援
HFM-256 化学戦エージェントの脅威に対する実戦的な医療対応能力への、医学的・化学的防衛研究へ転換
HFM-MSG-354 CBRN XR訓練プラットフォームの研究、デザイン、構築および導入
IST-181 テラヘルツ帯の通信とネットワーク
IST-189 ハイブリッド型軍事・商用衛星通信ネットワーク
IST-199 自由空間光通信
SAS-HFM-ET-GD 自律型充電ステーションのネットワークを活用したUAV兵站
SAS-HFM-ET-GC 自律型輸送スウォーム
SAS-218 自律型輸送スウォーム

ノート

[1] NATO Summit 2024, Washington

[2] NATO (2024)、「ハイブリッド脅威への対処」、NATO、5月7日、https://www.nato.int/cps/en/natohq/topics_156338.htm。また、NATO(2025)、「情報脅威への対処に関するNATOのアプローチ」、NATO、2月3日、https://www.nato.int/cps/en/natohq/topics_219728.htm

[3] NATO’s Strategic Concept 2022; NATO Science & Technology Strategy 2025.

[4] NATO(2024)、「レジリエンス、市民防災体制、および第3条」、NATO、11月13日、https://www.nato.int/cps/en/natohq/topics_132722.htm

[5] NATO(2021)、「レジリエンス強化へのコミットメント」、NATO、6月14日、https://www.nato.int/cps/en/natohq/official_texts_185340.htm

[6] NATO’s Strategic Concept 2022.

[7] NATO(2024)、「レジリエンス、市民防災体制、および第3条」NATO、11月13日、https://www.nato.int/cps/en/natohq/topics_132722.htm で閲覧可能。

[8] NATO(2023)、「ヴィリニュス・サミット共同声明」、NATO、7月11日、第61項、https://www.nato.int/cps/en/natohq/official_texts_217320.htm で閲覧可能。

[9] NATO(2021)、「レジリエンス強化へのコミットメント」、NATO、6月14日、https://www.nato.int/cps/en/natohq/official_texts_185340.htm (ヴィリニュス・サミット宣言、第61項)

[10] NATO(2024)、「ワシントン・サミット宣言」、NATO、7月10日、第12項、https://www.nato.int/cps/en/natohq/official_texts_227678.htm

[11] NATO(2024)、「レジリエンス、市民防災体制、および第3条」、NATO、11月13日、https://www.nato.int/cps/en/natohq/topics_132722.htm

[12] NATO(2022)、「レジリエンス委員会」、NATO、10月7日、https://www.nato.int/cps/en/natohq/topics_50093.htm

[13] 連資料:NATO(2025年)『NATO、レジリエンス参照カリキュラムを発表』、NATO、2月21日、https://www.nato.int/cps/en/natohq/news_233458.htm

[14] 合計が53となるのは、アクティビティ「SAS-HFM-ET-GD」がR2とR7の両方に紐付けられているためである。

[15] ウィルトン・パーク(Wilton Park)(2024年)著『未来の防衛、抑止力、レジリエンスに関する会議』、ウィルトン・パーク(Wilton Park)、WP3395、10月、https://www.wiltonpark.org.uk/event/the-future-defence-deterrence-and-resilience-conference/ で閲覧可能。 関連する動画プレイリストも参照のこと。https://www.wiltonpark.org.uk/idea/the-future-defence-deterrence-and-resilience-conference-video-playlist/