ロシアのウクライナに対する戦争 -現代のクラウゼヴィッツ戦争の複雑性- ⑫ウクライナとのハイブリッド戦争におけるロシアの戦略に向けて ロシア・セミナー2024

前回の投稿「ロシアのウクライナに対する戦争 -現代のクラウゼヴィッツ戦争の複雑性- ⑩ポスト工業化時代における「国家と戦争」の理論的関係 ロシア・セミナー2024」に続いてロシア・セミナー2024の論文集の第11弾(論文の番号は12)を紹介する。

この論考は、ロシア・ウクライナ戦争に至るまでのノン・キネティックな行動ハイブリッドとキネティックな行動を取り交ぜたハイブリッドな戦争の実態に関するものである。情報とエネルギー、食糧、水力発電、サイバー、核を巧みに利用し相乗効果を得ようとする予測が困難なハイブリッド戦争を理解する一助となると考えるところである。(軍治)

ロシアのウクライナに対する戦争 -現代のクラウゼヴィッツ戦争の複雑性-

Russia’s war against Ukraine -Complexity of Contemporary Clausewitzian War-

12_ウクライナとのハイブリッド戦争におけるロシアの戦略に向けて:相乗効果を得るためのキネティックな行動とノン・キネティックな行動の合成

12_ TOWARD A RUSSIA’S STRATEGY IN A HYBRID WAR AGAINST UKRAINE: SYNTHESIS OF KINETIC AND NON-KINETIC ACTIONS TO ACHIEVE A SYNERGETIC EFFECT

ヴァレリー・ホルディチュク(Valerii Hordiichuk)

ヴァレリー・ホルディチュク(Valerii Hordiichuk)ウクライナ軍大佐は、ウクライナ国防大学軍事戦略研究センター研究部長。博士(技術科学)、上級研究員。学歴および成績:学士(専門家)-IT軍事研究所、修士-ウクライナ国防大学(作戦レベル)、海軍分野、博士-IT(信号処理)、上級研究員-「兵器と軍事装備」。専門分野:戦争技術、軍事政策と軍事戦略、軍事分野における変革と統合プロセス、IT。

ロシア・セミナー2024におけるヴァレリー・ホルディチュク(Valerii Hordiichuk)ウクライナ軍大佐のプレゼンテーションは、フィンランド国防大学(FNDU)のYouTubeチャンネル(https://www.youtube.com/watch?v=5NofPSfLSSU&t=499s)2:27:51よりご覧いただける。

はじめに

ハイブリッド戦争は地政学的対立の一部となっている。ハイブリッドな本質を持つ新たな戦略、戦術、行動は、現代の軍事理論と実践において中心的な位置を占めている。

「ハイブリッド戦争(hybrid war)」の定義について、科学者たちはまだ議論している。このような用語は、武力紛争が勃発する前の国家間(同盟間)対立を特徴づけるものであり、この対立は武力侵略を除くあらゆる影響力を併せ持つという考え方もある。

本章の著者は、「ハイブリッド戦争」という用語が、武力侵略(armed aggression)を含むあらゆる対立の形態と方法を統一しているという事実を支持している。

このように、ハイブリッド戦争理論の古典であるF.ホフマン(F. Hoffman)は、ハイブリッド戦争の遂行とは、軍事的手段と非軍事的手段の協調的な使用であり、主戦場では、紛争の物理的・心理的次元において相乗効果を達成するものであると結論づけている[1]

ウクライナの科学者、ヴォロディミル・ホルバテンコ(Volodymyr Horbatenko)はこのような定義を与えている。ハイブリッド戦争とは、21世紀に特徴的な紛争激化の一種であり、国家と非国家、伝統的な戦略と非伝統的な戦略、資源、手段、破壊活動の方法、特定の政治的到達目標を達成することを狙いとしたサイバー戦(cyber warfare)のメカニズムを組み合わせたものである[2]

しかし、通常兵器の大量使用とともに、ロシアの攻撃的な戦争戦略は、ハイブリッドの特徴をすべて含み続けている。このような侵略に対抗する方法を理解するためには、このようなハイブリッドの相乗効果を特定し、その教訓を学ぶ必要がある。そこで本研究では、ロシアのウクライナへの本格的な侵攻開始後、このようなハイブリッド相乗効果の最も重要な戦略(戦役)の分析を行った。

調査方法。オープン・ソースからの統計・分析情報の収集と処理、実証的な専門家による評価、収集した資料の分析と合成、「マジック・クワドラント(magic quadrant)1」の視覚化。

※1 「マジック・クアドラント(Magic Quadrant)」とは、リサーチ&アドバイザリ事業に強いGartner社が、様々な市場におけるテクノロジ・サービス・プロバイダーの相対的な位置付けを調査しており、4タイプの分類(象限:クアドラント:Quadrant)でグラフィカルに表現して企業向けに提供されているもの(参考:https://dx-cancam.com/dx/magic-quadrant/)。

方法論。戦略分析の後、専門家評価の手法を用いて、各戦役における様々なタイプの影響力の程度を決定する。この評価に基づいて、このインパクト・ファクターのハイブリッド戦役(hybrid campaigns)における影響力と参加活動のレベルが決定される。

ウクライナに対するロシアのハイブリッド戦の進化

ウクライナに対するロシアの政治は、「ソフト・パワー」とハイブリッドな脅威を利用する政策から、大規模な武力侵略を伴うハイブリッドな戦争に至るまで、あらゆる道を歩んできた。

この道には4つの段階がある。

「ソフト・パワー」の政治利用[3]というハイブリッドの影響力(hybrid influence

ロシアとの統合(一体化)を強要する狙い、政治・外交、経済、エネルギー、情報の影響圏をカバーする広範なハイブリッド行動を用いたハイブリッドの圧力(hybrid pressure

ウクライナ領土の戦略的・経済的に重要な部分を併合し、その経済的潜在力を著しく低下させ、ウクライナ政府に対する政治的支配を確保することを狙いとしたハイブリッド侵略(hybrid aggression

ウクライナの全領土を占領し、ロシアに併合することを狙いとした大規模で高強度な戦争のハイブリッド戦争(hybrid War

図1. ウクライナに対するロシアのハイブリッド戦争の力学。

ハイブリッド戦争の特徴の一つは、その長期的な本質であり、国家レベルで組織された予防的かつ長期的な対策政策が必要とされる。ハイブリッド戦争の他の特徴として、正式な発表がなく、長期的な結果の予測が困難であることが挙げられる。なぜなら、侵略国も侵略の被害国も、社会はあらゆる生活領域において極めて不安定化し、混乱しているからである。さらに、非線形性の増大という特徴もある。これは、紛争全体の成り行きに根本的な影響を及ぼすような小さな出来事の結果を著しく激化させるような状況が、高い確率で発生することを意味する。

したがって、ハイブリッド戦争、とりわけロシアとウクライナの戦争の長い時代に軍事戦略を適応させるだけでなく、ハイブリッド戦争のさらなる拡大を許さない軍事的・政治的メカニズムを導入することが課題となる。そのためには、ハイブリッド脅威の分析を行う必要があり、その一環として、すでに学んだ教訓を分析する必要がある。

ハイブリッド戦略(ハイブリッド戦役)とその主な戦略的・作戦的帰結

情報と心理的影響の戦役「特別軍事作戦」(眩惑:daze2[4]

※2 dazeという単語は、「ぼんやりさせる」や「呆然とさせる」という意味を持っている。何かに驚いたり、混乱したりした結果、頭が働かない状態を表す(参考:https://tentan.jp/word/daze)。ここでは、眩惑と表現した。

何年もの間、クレムリンは情報影響力の手段に莫大な資金を費やし、可能な限りあらゆるものに自分たちのナラティブを織り込んできた。知っての通り、ロシアの戦車はまず入ってこない。まずモスクワ教会、バレエ、ブルガーコフ3、チャイコフスキー、ロシア語が入ってきて、それから初めて戦車が入ってくる。

※3 ブルガーコフ(Mikhail Afanas’evich Bulgakov)[1891~1940]ソ連の小説家・劇作家。幻想的手法と風刺によって革命後の現実を描き、暗に新政権を批判した。死後に公刊された長編小説「巨匠とマルガリータ」は、20世紀ロシア文学を代表する作品の一つとされる。他に小説「白衛軍」「犬の心臓」、戯曲「トゥルビン家の日々」など。(参考:https://kotobank.jp/word/ブルガーコフ)

「特別軍事作戦(special military operation)」による情報と心理的影響力の戦役は、大規模な侵攻のはるか以前から始まっていた。その結果は、ロシア連邦の住民による武力侵略への絶対的支持と、ウクライナと世界の親ロシア的住民による武力侵略への部分的支持であった。これにより、テロリストであるロシア当局は武力侵攻の開始を決定することができた。

その他の結果。プーチンの政治的支持者の中からウクライナ領内に広範なエージェント・ネットワークが展開される可能性、共通の聴衆が生み出す認知的不協和による国際的支持の弱体化、武力侵略を「正当化(legitimize)」するために国際法規範の対立や不完全性を利用すること、など。

兵器としてのエネルギー資源(大量虐殺:genocide)[5]

ロシアがエネルギー政治を遂行する上で特に頼りにしているのは、莫大な天然資源である。ロシアのエネルギー戦略は、地政学的到達目標の達成に貢献することを狙いとしている。

本格的な侵攻が始まる前、ロシアは自国に有利な成果をいくつか挙げていた。石油とガスの針はまだ部分的に汚い仕事をしている。残念なことに、欧州と米国が導入した制裁措置はロシアの侵略を抑えるには十分ではなく、欧州連合(EU)はロシアにエネルギー資源(主にガス)の対価として1日10億ユーロ近くを支払っている[6]

同時に、モスクワの恐喝によって、EU諸国はロシアが信頼できるエネルギー供給国ではないと確信した。その結果、欧州はロシア産炭化水素への依存を解消する取組みを倍加させている。EU圏はまた、再生可能エネルギーの開発計画を加速させている。こうして、あと3年ほどで、ヨーロッパはロシアの石油とガスを必要としなくなりそうだ[7]

ロシア経済の3分の1、予算収入の約半分、輸出の約3分の2を占めるロシアのエネルギー部門は、悲惨な状況にあると言っても過言ではないだろう。国際エネルギー機関(IEA)の予測では、ロシアのエネルギー輸出による年間収入は2030年までに半分以下に減少し、ウクライナ戦争開始前の750億ドルから300億ドルに減少する[8]

制裁により、ロシアのエネルギー企業は欧米の資金や技術を利用できなくなった。クレムリンにとって、これは存亡の危機である。現在のエネルギー埋蔵量は徐々に枯渇しつつあり、北極圏に新たな鉱脈があるとはいえ、その開発には莫大な資金と西側の一流の技術が必要になる。

しかし、エネルギーは今後もロシアの対外経済的・地政学的影響力において、この地域だけでなく全世界で重要な要素であり続けることに留意すべきである。

核による威嚇と恐喝[9]

一方では、核兵器によるクレムリンへの威嚇が部分的に成果をもたらした。特に、ザポリージャ原子力発電所の爆発の可能性に関する報道がなされた結果である。ソーシャル・ネットワークでのこの問題の議論や検索エンジンでのクエリの激しさは、パニックではないにせよ、民間人の間で興奮が高まっていることを示している。

一方、ロシアが核による大惨事を予告したことで、キーウはプーチンと彼の侵略軍の蛮行を示すことができた。これにより、ウクライナを支援する一部の国や国際機関の決意が高まった。

プーチンとそのポケットパワーの予測不可能性、敗北主義、愚かな決意(idiotic resoluteness)を考えれば、核兵器使用の命令はありそうもないが、潜在的にはあり得るという事実を、計画策定やその他の行動は常に考慮に入れなければならない。

図2. ロシア軍の砲撃と占領下にある放射線施設[10]

兵器としての食糧(ホロドモール:holodomor4[11]

※4 ホロドモール(ウクライナ語: Голодомо́р; ロシア語: Голод в Украине; 英語: Holodomor)は、ウクライナ語で飢え・飢饉を意味するホロド(ウクライナ語: Голодо)と、殺害、絶滅、抹殺、または疫病を意味するモル(мо́р)との合成語・造語で、飢餓による殺害 (death by hunger) を意味する(参考:https://ja.wikipedia.org/wiki/ホロドモール)

「穀物取引」などの行動によって、ロシア連邦はウクライナ経済に具体的な打撃を与えた。このような状況は、特に最貧国において、世界的な食料価格の上昇につながりかねない。

ロシアの食品恐喝は部分的に功を奏した。ロイターの情報筋によれば、アントニオ・グテーレス(Antonio Guterres)国連事務総長がプーチンに、ロシアの農業銀行の子会社をSWIFTに接続することと引き換えに、穀物取引の延長を認めるという提案を行ったという[12]。ブルームバーグは、エルドアン(Erdogan)がG20でヨーロッパの指導者たちに「プーチンのニーズを満たす」よう訴えているという情報を掲載した[13]。ロシアは依然として、穀物輸送のための陸路回廊が組織されたEUの特定の国々、特に最も親密なパートナーのひとつであるポーランドと、ウクライナを正面から対立させることに成功している。

しかし、コインの裏側にはもう一つの側面がある。プーチンの願いは実現には程遠い。ウクライナはモスクワとの「穀物回廊(grain corridor)」の立ち上げに同意していない。米国は、(モスクワ抜きで)穀物回廊を実現する方法について代替案を考えている[14]。米国は、「モントルー・ドクトリン(Montreux doctrine)」[15]に反しないよう、黒海に部隊を配備することを定めた法律の採択を計画している。テレグラフ紙は、イギリス空軍がウクライナから出航する大型貨物船を守るため、航空パトロールの回数を増やしていると報じている。

図3. 世界の穀物配送ルート[16]

9月11日から15日にかけて、米国、ルーマニア、ウクライナ、ブルガリア、イギリス、フランスの軍艦が参加してシー・ブリーズ演習(Sea Breeze exercise)が行われた[17]。これらの演習はメガ・ニュースではないが(計画的に行われている)、特にそのほとんどが物理的に穀物回廊をカバーしているため、明らかになった。

NATO諸国のこの「勇気(courage)」は、「穀物回廊(grain corridor)」に関する当初の立場(彼らは譲歩の可能性を考慮した)によるものではなく、ウクライナ外交とウクライナ軍参謀本部の立場によるものであることが重要である。

水力発電施設の破壊(エコサイド:ecocide5[18]

※5 エコサイドとは、「エコ」と「ジェノサイド(大虐殺)」を組み合わせた言葉で、これから先に気候変動が深刻化して多くの命を奪うとされていることから、生態系や環境を破壊する行為は「平和に対する罪」として定めようという、英国を中心に欧州で広がる動き。(参考:https://ideasforgood.jp/glossary/eco-side/)

ロシアはカホフカ水力発電所(HPP)を爆破して何を達成したのか?

右岸と左岸の間に位置するドニプロのある島々は水没し、軍隊は上陸や転覆のための一定の橋頭堡として、特に破壊工作や偵察、あるいは小規模な移動部隊を利用することができた。

ロシア軍はヘルソン地方のドニプロ川にかかる最後の橋を破壊した。

集落の大規模な洪水は、地域の状況を著しく不安定にした。これに加え、ザポリージャ原子力発電所の原子炉冷却の問題による、環境と核の本質の潜在的脅威が加わった。

ロシアは、左岸のヘルソン地方をウクライナの攻勢の可能性のある場所として除外した。今、彼らはそこから部隊の大半を撤退させ、メリトポリ、ベルディアンスク、ドネツク近郊の陣地を強化することができる。

軍事的、作戦的な状況に加え、このテロ行為は経済的にも悪影響を及ぼした。浸水した地域には、多くのインフラ施設がある。水供給、電力供給、これらすべてがカホフカ水力発電所(HPP)の閘門に接続されていた。特に、占領軍がヘルソン地方のカホフカ水力発電所(HPP)を弱体化させたため、ウクライナは1年分の飲料水を失った[19]

ロシアの誤算はどこにあったのか? 水位が低下した結果、クリミア海峡への水の供給に支障が生じた。カホフ貯水池の爆発によるドニエプル川の流出も砲兵の軽減に役立ち、ロシア軍は左岸からさらに移動した[20]

サイバー・テロ

大規模な侵略が始まったことで、ウクライナは前例のない敵のサイバー攻撃に直面した。多くの場合、ロシア連邦のサイバー・テロリストがウクライナの情報通信システムの働きに重大な干渉を行った。しかし、多くの国際的なサイバー専門家が指摘するように、ロシア連邦のサイバー攻撃はその到達目標を達成しなかった。これはウクライナ国家特殊部隊の副司令官も認めている[21]

ウクライナに対する無根拠な侵略と強力なサイバー攻撃戦役は、国際サイバー・コミュニティの支持と結束を刺激した。このような統合(consolidation)と、ウクライナのサイバー防衛とサイバーセキュリティの確保を狙いとしたウクライナと外国、国家、民間、ボランティアのサイバースペース・クラスターの取組みのユニークで迅速な相乗効果の結果として、大規模な軍事侵略の状況下でウクライナのサイバー復元性がかなり成功したという現象が生じた。

図4. 2023.02.23から2022.04.06までのウクライナにおけるロシアのキネティック活動とサイバー活動の相乗効果[22]

ロシア連邦がウクライナに対して放った武力侵略は、歴史上最も汚い紛争のひとつである。戦争規則と戦争法、国際法の違反。禁止された兵器(リン、地雷、その他の禁止された行動原理の弾薬…)の使用、禁止された戦争遂行方法(国際海上航路の遮断、捕虜や民間人の秘密大量破壊と拷問、民間人や民間物を盾として使用、傭兵の使用など)。

以上から明らかなように、大規模なハイブリッド戦争を組織し、確実に遂行するために、ロシア連邦はあらゆる行政権力機関とそれを管理する手段を利用した。ハイブリッド活動のドメインと次元の範囲は極めて広い。このような攻撃を封じ込め、国家機能の決定的に重要な基盤を侵害しないために、ウクライナは、すべての国家当局と関連手段の全面的な関与によって可能であるように、効果的な弾力性のメカニズムを構築する必要がある。

ハイブリッド影響力のタイプの評価と優先順位付け

国際的な研究者、シンクタンク、研究機関の研究成果から[23]、ハイブリッド戦(hybrid warfare)の影響(作戦環境、次元とも呼ばれる)については、情報認知(Info-Cog)、サイバー、金融経済、国際政治/外交、軍事、特殊(環境、社会、宗教など)の各グループがさらなる研究の対象として決定された。

ハイブリッド戦役

 

 

影響のタイプ

情報-心理戦役「特別軍事作戦(SMO)」 兵器としてのエネルギー資源 核による威嚇と恐喝 兵器としての食べ物 水力発電所の弱体化 サイバー・テロ
情報的-認知

6

3

6

3

4

5

27

サイバー

5

1

2

2

2

6

18

金融-経済

1

5

1

5

3

3

18

国際政治/外交

4

4

4

6

1

4

23

軍事

3

6

5

4

6

2

26

スペシャル

(エコ、社会、宗教など)

2

2

3

1

5

1

14

表1. 個々のハイブリッド戦役におけるさまざまなタイプのハイブリッドの影響力の強さに対する専門家の評価。

上記の分析に基づき、最も単純な方法である専門家評価の方法を用いて、単純な整理により優先順位をつけてみよう。ハイブリッド戦略の分析に基づき、専門家評価(本研究の筆者を含む軍事戦略研究センターの専門家が関与)の方法を用いて、個々のハイブリッド影響戦役における(結果による)影響の強さを特徴付ける1から6までのスコアを与えた。ここでは6が最高得点であり、最も影響が大きく、1が最低得点である。

図5では、マジック・クアドラントの手法により、最も活発で最も強い影響力を持つ企業を決定している。ハイブリッド企業の数は、ある影響力が平均より大きい(3ポイント以上)活動を決定する。強度は、レーティングテーブルからの単純なレーティングによって決定される。

図5. さまざまなタイプのハイブリッド・インパクトの強度と活動の視覚化。

従って、最も活発で影響力が強いのは、情報認知、軍事、国際政治であることがわかる。サイバーと経済的影響力は強力だが、それほど活発ではないことがわかる。生態学的、宗教的、社会的などの特別なものは、分析されたハイブリッド侵略の戦役の中で最も活動的でなく、最も強力でないと定義されている。

結論

防衛計画策定の原則のひとつに、到達目標は手段を正当化しなければならないというものがある。ロシアは資源を蓄積し、その過程でウクライナの資源を枯渇させ続けているが、ロシアとウクライナの経済指標の差は数倍ではなく、桁違いである。したがって、ウクライナにとって喫緊の課題は、国防と安全保障に必要なだけの支出を行うことである。

そのためには、支出に必要な資源の必要性を正しく判断できることが必要である。これは、本研究が取り組んだ課題のひとつであり、さまざまなハイブリッド戦争戦略に対抗することを狙いとした、さまざまな種類の影響力をハイブリッドに統合(一体化)するための適切なアプローチが提案された。

この分析に基づく方法は、ある慣性的な視点に基づき、コンセプト的に国家の復元性システムの構成要素間の努力配分を可能にする。しかし、軍事紛争学はダイナミックな学問であり、社会の発展と進歩に伴い、人々は互いを破壊するための新たな陰湿な方法を発明する。ハイブリッド戦の新たな手段や戦略の破壊的影響の予断については、その識別のための適切なシステム(おそらく特徴的な原則に従った検知に重点を置くか、その他)が必要である。その上で、兆候の特定に基づく教訓と傾向の複合的な評価を用いれば、より複雑になるが、はるかに効果的である。

ノート

[1] Hoffman F.: Conflict in the 21st Century: The Rise of Hybrid War. Arlington, Potomac Institute for Policy Studies, (2007). р. 20–22.

[2] Велика українська енциклопедія, https://vue.gov.ua/, Гібридна війна (visited: 16.09.2023)

[3] Joseph S. Nye.: Soft Power. The Means to success in world politics. N/Y/ Public Affairs, 2004, https://wcfia.harvard.edu/publications/soft-power-means-success-world-politics.

[4] Парахонський Б., Яворська Г.: Породження війни з безсилля миру: смислова логіка війни. National Institute for Strategic Studies. September 23, 2022, https://niss.gov.ua/news/statti/porodzhennya-viyny-z-bezsyllya-myru-smyslova-lohika-viyny; Козубенко О.: Як виконується «спеціальна військова операція рф на Україні», або Про провалені плани кремля. August 25, 2022, https://armyinform.com.ua/2022/08/25/yak-vykonuyetsya-speczialna-vijskova-operacziya-rf-na-ukrayini-abo-pro-provaleni-plany-kremlya/; Aleksejeva N. and others, Carvin A. (Eds.): Narrative Warfare. How the Kremlin and Russian news outlets justified a war of aggression against Ukraine. Atlantic Council. 2023, https://www.atlanticcouncil.org/in-depth-research-reports/report/narrative-warfare/; and Kolesnikov A.: How Putin’s “Special Military Operation” Became a People’s War. Carnegie Endowment for International Peace. April 10, 2023, https://carnegieendowment.org/politika/89486.

[5] Tatlı M.: The Energy Dimension of Hybrid War and the Ukraine Crisis. International Journal of Social Humanities Sciences Research (JSHSR). July, 2023, https://www.researchgate.net/publication/372448538_The_Energy_Dimension_of_Hybrid_War_and_the_Ukraine_Crisis; Senior Official Condemns Russian Federation’s Missile Strikes against Ukraine’s Critical Infrastructure, as Security Council Holds Emergency Meeting on Attacks. United Nations. November 23, 2022, https://press.un.org/en/2022/sc15118.doc.htm; Frum D.: Why Putin’s Secret Weapon Failed. The Atlantic. June 2, 2023, https://www.theatlantic.com/ideas/archive/2023/06/russia-ukraine-natural-gas-europe/674268/ and Devine K. and van der Merwe B.: Lights over Ukraine: the energy war. 2023, https://news.sky.com/story/the-energy-war-satellite-images-show-the-scale-of-russian-attacks-on-ukraine-infrastructure-12773049.

[6] European energy security post-Russia. Dirksen Senate Office Building, United States. June 07, 2022, https://www.csce.gov/international-impact/events/european-energy-security-post-russia.

[7] Demarais Agathe: Russia will lose the energy war Putin started. November 11, 20227, https://www.politico.eu/article/russia-will-lose-the-energy-war-putin-started/.

[8] World Energy Outlook 2022. Report. International Energy Agency. October, 2022, https://www.iea.org/reports/world-energy-outlook-2022.

[9] Brusylovska O.: Russia’s Nuclear Blackmail as a Threat to the Global Nuclear Order. Russia’s War on Ukraine (39-52). September, 2023, https://www.researchgate.net/publication/373614536_Russia%27s_Nu- clear_Blackmail_as_a_Threat_to_the_Global_Nuclear_Order; Halunko V., Buglak I., Boiko V.: Putin’s Nuclear Blackmail. Advanced Space Law, 9 (93-107). June, 2022, https://www.researchgate.net/publication/362150433_Putin%27s_Nuclear_Blackmail: Dolin V., Kopylenko O.: Global Nuclear Threats. April, 2022, https://www.researchgate.net/publication/360194439_Global_Nuclear_Threats and Lerner K. Lee: Zaporizhzhia nuclear plant perils part of novel challenges regarding nuclear safety. August 9, 2022, https://www.researchgate.net/publication/362608905_Zaporizhzhia_nuclear_plant_perils_part_of_novel_challenges_regarding_nuclear_safety.

[10] Dolin V., Kopylenko O.: Global Nuclear Threats. April, 2022, https://www.researchgate.net/publication/360194439_Global_Nuclear_Threats.

[11] Sydorenko S.: Re-Launching Grain Deal. How to Save Ukraine’s Black Sea Exports after Russia’s Demarche. European Pravda. October 31, 2022, https://www.eurointegration.com.ua/eng/articles/2022/10/31/7149686/; War Speeches. Russia swallows the “grain deal” and complains that Patriot is shooting down: “Kinzhals”. May 22, 2023, https://www.pravda.com.ua/eng/columns/2023/05/22/7403278/; Colibășanu A.: Are Blockade Runners Challenging Russia’s Grain Gauntlet? August 1, 2023, https://cepa.org/article/are-blockade-runners-challenging-russias-grain-gauntlet/; Martin N.: Ukraine war: Russia blocks ships carrying grain exports. March 17, 2022, https://www.dw.com/en/ukraine-war-russia-blocks-ships-carrying-grain-exports/a-61165985 and Prokopenko A.: Is This the End of the Road for the Ukraine Grain Deal? July 19, 2023, https://carnegieendowment.org/politika/90225.

[12] Nichols M.: UN asks Putin to extend Black Sea grain deal in return for SWIFT access, sources say. July 13, 2023, https://www.reuters.com/markets/commodities/un-chief-sends-putin-proposal-keep-black-sea-grain- deal-alive-2023-07-12/.

[13] Hacaoglu S., Nardelli A., and Bhatia R.: Erdogan Urges G-20 to Meet Russian Demands on Grain Deal. September 9, 2023, https://www.bloomberg.com/news/articles/2023-09-09/erdogan-urges-g-20-leaders-to-meet-russian-demands-on-grain-deal?srnd=premium-; Зернова угода в обмін на SWIFT: як шантаж Росії починає набирати обертів, – Reuters. July 13, 2023, https://24tv.ua/economy/prodovzhat-zernovu-ugodu-chogo-hoche-rosiya-oon-vede-listuvannya_n2352201.

[14] У держдепі США побачили «життєздатні маршрути» для експорту українського зерна. August 25, 2023, https://zn.ua/ukr/ECONOMICS/u-ssha-pobachili-zhittjezdatni-marshruti-dlja-eksportu-ukrajinskoho-zerna.html.

[15] The USA adopts the law on Black Sea Security, https://www.newgeopolitics.org/2023/09/10/the-usa-adopts-the-law-on-black-sea-security/ (visited: 28.02.24)

[16] https://www.openstreetmap.org/about; Lasheras B. and Shelest H.: Russia Chooses to Starve the World’s Poor (Again). July 20, 2023, https://cepa.org/article/russia-chooses-to-starve-the-worlds-poor-again/.

[17] Sea Breeze 23.3 пройдуть в Чорному морі та дельті Дунаю і матимуть протимінний характер. September 8, 2023, https://mil.in.ua/uk/news/sea-breeze-23-3-projdut-v-chornomu-mori-ta-delti-dunayu-i-matymut-protyminnyj-harakter/.

[18] Шинкаренко С., Барталев С.: Последствия повреждения плотины Каховской ГЭС на реке Днепр. July 2023, https://www.researchgate.net/publication/372447200_Posledstvia_povrezdenia_plotiny_Kahovskoj_GES_na_reke_Dnepr_The_consequences_of_damage_to_the_Kakhovka_Reservoir_dam_on_the_Dnieper_River; Kupriianova L., Kupriianova D.: Ecocide as a precursor of a particularly acute and postponed genocide of Ukrainian and European population in 2023. June, 2023, https://www.researchgate.net/publication/373648078_Ecocide_as_a_precursor_of_a_particularly_acute_and_postponed_genocide_of_Ukrainian_and_European_population_in_2023 and Filatov S.: Barbarians: Who Destroyed the Kakhovka Hydroelectric Power Plant and Why. August, 2023, https://www.researchgate.net/publication/373547369_BARBARIANS_Who_Destroyed_the_Kakhovka_Hydroelectric_Power_Plant_and_Why.

[19] Тарасовський Ю.: Прасад А. Російські військові підірвали греблю Каховської ГЕС. June 6, 2023. https://forbes.ua/news/rosiyski-viyska-pidirvali-kakhovsku-ges-pochalas-evakuatsiya-naselennya-zelenskiy-sklikav-rnbo-onovlyuetsya-06062023-14022.

[20] Черниш О.: Підрив Каховської ГЕС: кому він вигідний і чи зупинить наступ ЗСУ. June 6, 2023. https://www.bbc.com/ukrainian/articles/cw4vw5qn4kzo.

[21] Досвід кіберстійкості з європейськими партнерами. Державна служба спеціального зв’язку та захисту інформації України : державний сайт України, https://cip.gov.ua/ua/events/u-mezhakh-misyacya-kiberbezpeki-v-yes-derzhspeczv-yazku-podilitsya-ukrayinskim-dosvidom-kiberstiikosti-z-yevropeiskimi-partnerami, (visited: 14.04.2023).

[22] An overview of Russia’s cyberattack activity in Ukraine. Special Report: Ukraine: Microsoft Publishing, 2022, p. 10.

[23] Countering hybrid threats. NATO, 2023, https://www.nato.int/cps/en/natohq/topics_156338.htm; Горбулін В.: Світова гібридна війна: український фронт. Київ, НІСД, 2017, http://resource.history.org.ua/item/0013707; Koval M. (Ed.): Theoretical and applied aspects of the Russian-Ukrainian war: hybrid aggression and national resilience. Kharkiv: TECHNOLOGY CENTER PC, 2023, https://doi.org/10.15587/978-617-8360-00-9 and Сиротенко А. (ред.): та ін. Воєнні аспекти протидії “гібридній” агресії: досвід України. Київ, Національний університет оборони України, 2020, https://nuou.org.ua/assets/monography/mono_gibr_viin.pdf.