ウクライナのドローン戦争:即興から体系化された戦闘へ (www.orfonline.org)
MILTERMでは、これまでも無人機に関する記事を紹介している。
今回紹介するのは、極めて簡潔であるが2014年のロシアによるクリミア併合前から2022年以降のドローンを含む無人航空システム(UAV)の活用に至る経緯についてよくまとめられたインドのオブザーバー研究財団の記事である。
近年の軍の用兵思想の中の議論では軍事組織に求められる能力として適応(アダプテーション)が注目を浴びているように感じる。本論稿は表題にある「即興から海警化された戦闘へ」が示しているように、ウクライナ軍がロシアとの戦争において日々変化していく激しい戦場に適応していった経過の一端を無人航空システム(UAV)の活用の面からうかがい知ることができるものと考える。(軍治)
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ウクライナのドローン戦争:即興から体系化された戦闘へ
Ukraine’s Drone War: From Improvisation to Systematised Combat
Authors : Kartik Bommakanti | Mohammad Mustafa Ayez
Published on Jan 13, 2026
カルティク・ボンマカンティ(Kartik Bommakanti)はオブザーバー研究財団(インド)の戦略研究プログラムの上級フェロー
モハマド・ムスタファ・アイエズ(Mohammad Mustafa Ayez)はオブザーバー研究財団(インド)のリサーチ・インターン
戦場の必要性がウクライナの志願ドローン(volunteer drones)からAI搭載の大規模無人戦への転換を促した。
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2022年のロシアの電撃戦は、軍事的に優れた敵対者に対してウクライナに非従来型の対応を要求した。特にロシアの航空優越はウクライナに戦闘戦術の見直しを強いた。後者(ウクライナ)は、即席の商用ドローン、限定的な備蓄、ボランティアが作ったプラットフォームなど、断片化されたドローン・エコシステムに依存していた。この適応型の復元性(resilience)は現代戦を一変させ、無人航空機(UAV)は即席の対抗メカニズムからロシアの侵略に対するウクライナの戦略の構造化された構成要素へと進化した。
ウクライナ・ドローン・プログラムの基礎
2014年まで、ウクライナ軍(AFU)は近代的なUAVを保有せず、代わりにトゥポレフ(Tupolev)Tu-143のような旧式ソ連時代のドローンに頼っていたが、これらは現代の軍事作戦にはほとんど効果的ではなかった。クリミア併合とその後のドンバス紛争は転機となり、以降ウクライナ軍作戦では、無人航空機(UAV)は常態化した。しかし、ウクライナのドローン・プログラムは依然として未発達で、大きな能力のギャップに悩まされていた。
これに対抗して、ウクライナの製造業者や民間団体は市販および自家製ドローンを軍に供給し始めた。人民プロジェクトによる商業用無人航空機(UAV)のクラウド・ファンディングや、2014年に開始されたアエロロズヴィドカ・プロジェクトなどのボランティア主導の取り組みは、改良型偵察ドローンを提供した。アルテム・ヴィフヌク(Artem Vyhunnuk)のような民間企業がウクライナのドローン・アセットの主要な供給者として浮上した。
しかし、このボトムアップ・アプローチは戦場での復元性(resilience)を示しつつも、制度的な制約を露呈させた。これらのドローンを軍の装備に組み込むプロセスは遅く、不均一だった。例えば、キーウに拠点を置くアスロン・アヴィア(Athlon Avia)社が2014年に開発したフリア(Furia)偵察無人航空機(UAV)は、2019-20年まで正式に採用されなかった。
2019年にウクライナがトルコ製バイラクタル(Bayraktar)TB2ドローンを取得したことで大きな変化が起こった。これらのドローンは2021年に実戦配備され、同年10月にロシアの砲兵システムと交戦し、ウクライナが即席のドローン使用からより構造化された無人能力へと移行したことを示した。
ウクライナのドローン・エコシステム(2014-2022年)
| 名称 | バリエーション | 特徴 | 注記 |
| アスロン・アヴィア A1-CM フリア(2014年) | ![]() |
– 先住民のISRドローン
– 飛行時間:3時間 – 航続距離:30マイル |
– 電子戦(妨害)に強い |
| LELEKA-100(2015年) | ![]() |
– 偵察ドローン;砲兵の観測に使用 | – 最も一般的な軍用グレードの小型ドローン |
| 商用クアッド・コプター |
DJIドローン(Mavic、Mini、Phantom)( 2014年から使用) |
– 中国製
– 主にISRに使用される |
-戦争の取組みの一環として民間人およびボランティアから寄付されたもの |
| ピープルズ・ドローン (PDシリーズ) | PD-1(2015年) |
– 商用コンポーネントを用いて開発
– 複数の離陸オプションを備えている – 砲兵や移動追跡のためのターゲット発見に使用 |
– スタートアップ企業Ukrspecsystemsの設立につながった |
PD-2(2020年) |
– PD-1ドローンの改良型
– 妨害防止技術を搭載 |
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| R18(2019年) | ![]() |
– 国産開発のオクトコプター
– 攻撃ドローン;偵察や情報収集にも利用可能 – 主に夜間運用に使用される – サーマル・イメージング・カメラを搭載 – 電子妨害に強い |
– ボランティア・グループ:Aerorozvidkaによって開発された |
| バイラクタル(Bayraktar) TB2(2019年) | ![]() |
– 中高度長航続無人航空機(UAV)(MALE)
– ターゲット打撃および偵察の役割の両方を遂行 – 飛行時間:最大20時間 – 航続距離:150 km |
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| 出典:著者によって複数の情報源からまとめられている。 | |||
2022年初頭のロシア特殊軍事作戦開始までに、ウクライナは分散型ながら効果的なドローン・エコシステムを築いていた。民間技術への依存や攻撃用無人航空機(UAV)の限られた利用可能性に制限があったものの、キーウの小型戦術ドローンの強みは初期のウクライナ抵抗の重要な要素であった。
2022年初頭の初期適応的抵抗
戦争初期段階では、ウクライナはインテリジェンス・監視・偵察(ISR)と精密打撃の二重の役割を果たすバイラクタル(Bayraktar)TB2に大きく依存していた。比較的控えめな能力にもかかわらず、TB2はロシアの装甲車や補給車列(supply convoys)に対する効果的な打撃で作戦上の成果をもたらした。しかし、ロシアが防空を強化し電子戦(EW)対策を展開する中で、TB2の効果は低下した。
これによりウクライナは作戦的戦術(operational tactics)の一環として小型で低コストのドローン配備へと方向転換した。DJIのMavicドローンのような市販の既製品プラットフォームは、急速に軍事作戦に転用された。同時に、ウクライナは既存のボランティア主導のドローン・スタートアップ・エコシステムを活用した。アエロロズヴィドカ(Aerorozvidka)グループが開発したR18ドローンは、ウクライナのホストメル空港防衛において重要な役割を果たした顕著な例として浮上した。
2022年末の外部支援によるドローン戦の拡大
ロシアの初期の戦役目標の失敗は戦略転換を招き、紛争は長期にわたる消耗戦(attrition warfare)の段階へと押し込まれた。ロシアはシャヘド攻撃ドローンを配備し、持続的な打撃を通じて経済的・作戦的コストを課すことを狙いとし、ウクライナの防空網を消耗させた。これに対し、ウクライナは多層的な対抗戦略を採用した。初期の重要な後押しはアメリカからで、約700機のフェニックス・ゴースト・ドローンと数百のスイッチブレードの徘徊型弾薬(loitering munitions)を供給した。特にスイッチブレード・ドローンはウクライナの対装甲能力を強化し、装甲車両や戦車に対する精密打撃を可能にした。国内ドローン能力の拡大をさらに図るため、キーウは「ドローン軍団(Army of Drones)」プログラムを開始し、ウクライナの国内防衛製造拠点への推進力を発揮し、無人システムの革新と生産を加速させた。長距離ドローンの開発は防勢的作戦(defensive operations)から攻勢的打撃(offensive strikes)への転換を示し、ウクライナはロシアの飛行場、石油補給基地、指揮所などに対する縦深の打撃(deep strikes)を行った。
2023年のFPVドローン戦の登場
2023年までにウクライナは一人称視点(FPV)ドローンを導入し、戦場適応における重要な進化を示した。ライブ映像送信を備えた一人称視点(FPV)ドローンは、特に移動目標に対する精密打撃を可能にし、状況認識と打撃能力を効果的に拡大し、「地上部隊(boots on the ground)」として機能した。比較的低コストで500〜700米ドルの範囲であるにもかかわらず、一人称視点(FPV)ドローンは歩兵および装甲プラットフォームの両方に対して効果的であることが証明された。電子戦や妨害に脆弱でありながら、約10〜20キロメートルの縦深にわたる戦場の透明性を高めた。一方、ロシア領への打撃拡大を支援するため、ウクライナはUJ-22エアボーンやビーバー・ドローンなどの国産長距離無人航空機(UAV)の開発を加速させた。
この年はまた、ウクライナ軍(AFU)が無人システム攻撃中隊を設立し、無人戦(unmanned warfare)を軍の構造的一部として制度化するというドクトリン上の節目でもあった。
2024年のAI搭載のドローンと対電子戦作戦
2024年、ウクライナは無人航空機(UAV)の大量生産と技術的進歩を続け、約100万機の一人称視点(FPV)ドローンと1万機の打撃ドローンの製造を目指しており、前線での高い消耗率でドローン集中型戦術(drone-intensive tactics)への継続的な依存を示している。しかし、このアプローチは障害にぶつかった。報告された一人称視点(FPV)の効果率は約70%に向上したが、一人称視点(FPV)ドローン打撃の約60〜80%は特に装甲車両に対して効果が薄かったと推定されている。ロシアはこのギャップを活用し、ますます高度な電子戦システムの配備を行った。対抗策として、ウクライナは光ファイバーとAI統合型ドローンの開発を開始した。光ファイバー・ドローンは、データ転送に無線信号ではなく光ファイバー・ケーブルを利用するため、妨害されない。AI誘導ドローンは、画像認識アルゴリズムを用いた自律追跡とターゲット識別により、ターゲット打撃の効果をさらに向上させた。ウクライナ軍(AFU)はAI搭載のサカー・スカウト・ドローンを発射し、ロシアの軍事アセットを独立して識別できる。
サカー・スカウト・ドローン
これらの技術的適応と並行して、ウクライナ軍(AFU)は無人システム部隊(USF)を設立し、乗員無しのシステム(uncrewed systems)の展開と統合の責任を持つ専任部隊として作戦面でも再編成された。
2025年のドローン戦争の制度化
ドローン戦は現在、ウクライナの攻勢戦略と防勢戦略の不可欠な要素となっている。
戦略的には、ウクライナはロシアの重要インフラ、特に防衛産業施設、ドローン生産施設をターゲットにし続け、無人航空機(UAV)のエコシステムを機能不全にしようと狙っている。「スパイダーウェブ作戦(Operation Spiderweb)」はウクライナの作戦における画期的な出来事であり、同期攻撃で5つのロシア空軍基地を攻撃し、重要な監視機や戦略爆撃機を含む41機のロシア機に大きな損害を与えたと報告されている。
ウクライナは防勢戦略の一環としてドローンを導入し、「ドローン・ウォール(drone wall)」を構築、前線の重要区間に沿って15kmの「キル・ゾーン(kill-zone)」を設置し、戦場の視認性を高めている。これらのシステムは持続監視(persistent surveillance)と精密打撃(precision strikes)を提供するよう進化し、一部地域では歩兵の部分的な代替として機能している。
結論
ウクライナのドローン戦における進展は、戦場の必要性と作戦上の現実によって形作られ、顕著なものとなっている。ドローンは戦争とその闘い方を変えた。しかし、砲兵や航空戦力といった伝統的な軍事能力にはまだ取って代わっていない。ドローンは、全体の勝利を確実にしなくても戦術的・作戦的レベルで決定的な効果をもたらすことができる。








