融合の課題 (ARMADA International)

ここで紹介するのは、前掲の「将来の戦闘通信:電子戦(EW)とサイバー戦(CW)の融合 (Intelligent Consulting BV)」に関するARMADA InternationalのDr. Thomas Withingtonの記事である。(軍治)

融合の課題

The Challenge of Convergence

 Dr. Thomas Withington

 May 14, 2026

サイバー戦と電子戦の融合が作戦遂行にもたらす課題は、具体的かつ差し迫ったものであり、同盟国が電磁的優位性や覇権を握っているという前提を危うくするものである。

新たな報告書は、戦場におけるサイバー戦と電子戦の融合(convergence)は、NATOが対処しなければならない脅威を予兆していると主張している。

Intelligent Consultingは、同盟国間の戦術通信の進化に関して、非常に必要とされている意見を発信する企業として台頭している。2月、Armadaは同社のディレクターであるMs. Suzanne Buttonが執筆した分析記事 を取り上げた。この記事では、英国陸軍が使用する戦術通信システムの置き換えを試みた英国国防省の数々の失敗について検証している。Intelligent Consultingは現在、北大西洋条約機構(NATO)全体の戦術通信に注目している。

Ms. Buttonは、「Future Battle Comms: Why EW/CW Convergency Demands a Complete NATO Architecture Rethinkの中で、戦場におけるサイバー戦(CW)と電子戦(EW)の融合、そしてそれがNATOの戦術通信アーキテクチャに及ぼす影響について考察している。Ms. Buttonは「アルマダ(Armadaに対し、 「この融合(convergence)は同盟にとって重要な課題だ」と述べた。「関係者は、電子戦とサイバー戦を包括的かつ横断的な問題として捉えられないことが多い。なぜなら、彼らは技術的・物理的な側面にばかり注目し、能力を結びつける手続き的・人的次元を過小評価しがちだからだ」。

報告書は、「電子戦とサイバー戦が融合すると、戦術ネットワークは単に劣化するだけでなく、崩壊する」という厳しい警告から始まる。現代および将来の戦場では、ジャミング信号は干渉や偽の通信を伝達するだけでなく、悪意のあるコードも伝達する可能性がある。戦術、作戦、さらには戦略的な指揮・統制(C2)システムと無線通信の間には、このような相乗効果があり、後者は壊滅的なサイバー攻撃を仕掛ける効果的な手段となる危険性がある。戦場における混乱と動揺の可能性は、ほぼ計り知れない。Ms. Buttonの著作は、「将来の戦闘通信は、指揮、感知、意思決定、火力、兵站、後方支援の中核をなす、争奪の対象となるミッション・システムとして理解されなければならない」と述べている。

これまでのストーリー

1990年代からのインターネットとワールドワイド・ウェブの世界的な普及に最もよく表れるデジタル革命の到来までは、戦場における無線通信を劣化させる主な要因は「地形、天候、距離、そして時折発生する干渉」であったと報告書は述べている。民間世界と同様に、軍隊もデジタル化を進め、インターネット・プロトコル(IP)トラフィックへの依存度を高めた。これにより指揮・統制(C2)効率の面で計り知れない恩恵がもたらされた一方で、IPへの依存は脆弱性を生み出した。「電子戦はサイバー戦の機会を生み出し、サイバー戦は電子戦の影響を増幅させる」と報告書は続ける。

さらに事態を悪化させるのは、IPベースの指揮・統制(C2)システムが普及するにつれて「複雑さが復元性よりも速く増大することが多かった」ことである。後者の要因は、「電磁的優越(Electromagnetic Superiority and Supremacy: E2S)」の保有に対する過信の結果であると主張することもできるだろう。 NATOとその同盟国は、冷戦終結後の過去35年間、戦闘が行われた作戦地域において、事実上、電波帯域(spectrum)を「支配(owned)」してきた。バルカン半島やリビア、あるいはイラクやアフガニスタンにおいて、同盟国の敵対者は、米国とNATO主導の連合軍が望むように現地の電波帯域を使用することを、ほとんど妨害することができなかった。こうした戦術的・作戦上の現実が、誤った安心感を生み出すリスクがある。

ウクライナにおける電磁波の戦い(electromagnetic battle)の実態は、NATOがロシアやその他のほぼ対等な敵対者と紛争に陥った場合、あらゆる周波数帯域(every hertz)を巡って闘わなければならないことを示している。「NATOが混雑し、争奪の絶えない電磁波環境で闘うことを完全に受け入れることに対して、露骨な敵意というよりは、組織的な慣性と政策上の消極性が混在している」と、Ms. Buttonは「アルマダ(Armada誌のインタビューで続けた。「多くの組織はドクトリンの中で周波数帯域(spectrum)の争奪が発生することを認めているが、それを予算、キャリアパス、手続き、調達規則に反映させておらず、物理的、手続き的、人的、技術的な各レイヤーを整合させるよう強制していない」。

協力して

Intelligence Consultingの報告書は、電子戦とサイバー戦の融合が戦術ネットワークと指揮・統制(C2)に重大な課題をもたらすと指摘している。現代の電磁戦闘のスピードを考えると、司令部は通信障害が局地的な伝搬問題、ジャミングやスプーフィング、管理の不備、あるいは「これら4つすべてが同時に発生した」結果であるかどうかを判断するのに「数分、あるいは数秒しか時間がない」可能性がある。通信障害とサイバー・インシデントを区別することは、診断を複雑にする可能性がある。

これらの課題は、連合軍や多国籍軍が戦闘を行う場合に深刻化する可能性がある。「国内のテストでは国家システムは強靭に見えるかもしれないが、多国籍軍の構造に接続されると、インターフェースの数、信頼の前提、政策上の注意、相互運用性の妥協が急速に増加する」。さらに懸念されるのは、「国内では許容できたことが、連合軍規模では致命的になる可能性がある」ということだ。サイバー戦と電子戦の融合という課題は、陸上ドメインだけでなく、海上、陸上、宇宙の作戦にも当てはまる。

治療法

Ms. Buttonは、サイバー戦と電子戦の融合という課題に同盟国全体でどのように対処すべきかについて、いくつかの重要な提言を行っている。彼女は、エストニアのタリンにあるNATOのサイバー防衛協力センター(CCDCOE)が、レジリエンスをストレス・テストできる環境を提供する上で重要な役割を担うべきだと主張している。こうした取り組みの結果は、NATOの戦術、技術、手順、ドクトリン、政策に反映させることができる。同様に、バージニア州ノーフォークにあるNATOの連合軍変革コマンド(ACT)も、融合に対処するための「ドクトリン、戦力開発、将来の指揮・統制(C2)コンセプト」の開発に貢献できると述べている。

対応は国家レベルでもなければならない。「国防省は調達と即応態勢のインセンティブを整合させなければならない。作戦コマンドは劣化モードでの能力を要求しなければならない…訓練機関は電子戦、サイバー、戦術通信を別々の思考モデル(mental models)として教えるのをやめなければならない」。この最後の点は、国防関連企業全体にわたる民間人、軍人を問わず、すべての個人が常に「スペクトル思考(spectrum minded)」を持つ必要性と完全に一致する。産業界も役割を果たし、「統合(integration)」を売り込みながら、電子戦とサイバー戦の融合攻撃に対して脆弱な単一障害点を提供するのをやめなければならない。

NATOのサイバー防衛協力センター(CCDCOE)、NATOの連合軍変革コマンド(ACT)、各国の国防省、軍隊、防衛企業、産業界の努力は、サイバー戦争と電子戦の融合の脅威に対する解決策の一部に過ぎないと、Ms. Buttonは主張する。Ms. Buttonは、「通信の復元性を任務保証(mission assurance)の規律として扱う」3PT(物理的、手続き的、人的、技術的アーキテクチャ)アプローチを優先すべきだと述べている。通信ネットワークの物理層は、「生存性、機動性、分散性、段階的劣化を考慮して再デザインされなければならない」。純粋に技術的な復元性ではなく、手続き的な復元性を育成すべきである。「しきい値、トリガー、フォールバック状態、権限境界」は、電子戦とサイバーの報告を融合させる手続き的アーキテクチャによって定義されなければならない。

人的アーキテクチャは、前述のスペクトル思考を重視している。「信頼できる人的アーキテクチャには、クロスドメインのトレーニング・パイプライン、役割に基づく意思決定権限、緊急人員配置モデル、通信要素に組み込まれたサイバー監視機能、そしてリーダーに曖昧さの管理を強いる演習デザインが含まれるだろう」。最後に、技術的アーキテクチャは「戦術的な状況下での信頼性、適応性、セグメンテーション、観測可能性、および復旧をサポートしなければならない」。Ms. Buttonは、無線機とそのネットワークは「サイバーフィジカル・システム(cyber-physical systems)」として扱うべきだと主張している。

波形、ファームウェア、ルーティングロ・ジック、更新プロセス、およびリモート管理インターフェースはすべて潜在的な脆弱性ポイントである。「ペイロードは保護されていても制御プレーンが保護されていない技術アーキテクチャは安全ではない」。Ms. Buttonはインタビューで、「3PTを真に『組み込む(bake in)』には、NATO、国防省、調達当局、および各軍が、要件の最初から3PTに準拠した基準を定義して適用し、調達プロセス全体を通してそれらを可視化する必要がある」と付け加えた。

Intelligent Consultingの報告書は、電子戦とサイバー戦の融合をNATOの最も喫緊の課題の一つとして扱うべきだと主張している。将来の通信ネットワークは、単に圧力下で機能するだけでなく、「周波数帯域(spectrum)とソフトウェア・スタックの両方が同時に攻撃を受けている場合でも、指揮の一貫性、任務の信頼性、作戦効果を維持」する必要がある。最終的に、「最初に適応できるのは、必ずしも最も先進的な装備を持つ部隊ではなく、最も明確なレジリエンス・モデルを持つ部隊となるだろう」。