統制なき指揮:人工知能時代のミッション・コマンド (Military Review)

軍事における人工知能を適用することが陸軍の指揮の在り方に与える影響について論じたMilitary Review誌9-10月号にあるの記事を紹介する。

記事では、“人工知能の急速な軍事利用は、米陸軍が重視してきたミッション・コマンドの基盤である相互信頼、共通理解、規律ある主導性に新たな緊張を生み出している。AIは状況認識、ターゲティング、行動方針(COA)生成を高速化し、指揮官は「判断する者」から「機械が提示した選択肢を選ぶ者」へ変化しつつある”とみている。著者は、“自動化バイアスや認知的アンカーリングが人間の判断力を侵食し、信頼の対象を人間からアルゴリズムへ移してしまう危険”を指摘し、結果として、“形式上は指揮権を保持しながら実質的な判断が空洞化する「統制なき指揮(command without control)」が生じ得る”と警告する。著者は“AIを拒絶するのではなく、人間の判断の優位性、規律あるAI利用、そして指揮官の権威と説明責任を意識的に維持することが、AI時代のミッション・コマンドの核心である”と結論付けている。

日本でも報道で見られる防衛省・自衛隊の「新しい戦い方」には、当然AIが念頭にある。防衛力整備の観点というよりは部隊の行動へ及ぼす影響などを念頭に置いた議論に役立てば幸いである。(軍治)

統制なき指揮:人工知能時代のミッション・コマンド

Command Without Control : Mission Command in the Age of Artificial Intelligence

Maj. Prabhat Mishra, Indian Army

 September-October 2026, Military Review 

プラバット・ミシュラインド(Prabhat Mishra)陸軍少佐は、(インドと中国の)実効支配の線に沿って勤務している。彼は米陸軍指揮参謀大学(CGSC、フォート・レヴンワース)を卒業し、様々な指揮・参謀職を歴任している。彼の研究関心は軍事リーダーシップ、インドの戦略的自律性、データ分析である。彼は米陸軍指揮参謀大学(CGSC)のビラー・ブルックス優秀軍事学修士(MMAS)論文と、2025-26年度のマッカーサー将軍軍事リーダーシップ執筆コンペティションで優勝者に選ばれている。

2025年12月8日、フィンランドのリーヒマキで行われたNATO東部防衛・抑止ライン(EFDL)のタスク・フォースXパイロット・シリーズの予行演習のデモでドローン映像がモニターに表示されている。NATO東部防衛・抑止ライン(EFDL)のコンセプトは、無人システムを活用し、AI対応のミッション・コマンド・ネットワークを活用し、リアルタイム・データを活用して敵対者の攻撃を検知・妨害するための意思決定を加速する、ドメインや国家軍にまたがる分散型の持続的能力システムである。(写真提供:カーラ・パラ(Karla Parra)米空軍2等軍曹)

戦争は人間の営みであり、力や暴力の脅威や行使によって特徴づけられる意志の衝突である…機械や計算、プロセスによって正確に統制できる機械的なプロセスではない。

ADP 6-0「指揮・統制(Command and Control)」

人工知能(AI)が軍隊の知覚、決定、行動の仕方をますます形作る中で、戦争が機械化に抵抗するという前提は、ドクトリンが予想しなかった形で試されている。ウクライナのAI対応のドローン・ネットワークからイランに対する米イスラエル間の戦役に至るまで、最近の紛争において、機械支援システムは決心サイクルを人間の認知に負担をかける速度に圧縮し、センサーとシューターの連携を可能にし、これまで不可能だった規模とテンポでターゲティングの選択肢を生み出している。

このような環境では、指揮官は意思決定から、大きな時間的制約の中で機械生成の勧告の中から選択へとシフトしている。もはやAIが軍事作戦に影響を与えるかどうかの問題ではない。もうすでにそうなっている。問題は、それが彼らを指揮する人間に何をもたらすのか、ということである。

この変化は軍事リーダーシップ・ドクトリンの基盤を揺るがす。陸軍ドクトリン出版物6-0「指揮統制」に記されたミッション・コマンドは、相互の信頼、共通の理解、そして指揮官の意図に基づく規律ある主導性(disciplined initiative)の行使に基づいて構築されている0F[1]。作戦プロセスも同様に、指揮官を反復的で人間主導の理解、可視化、指揮の中心に置く1F[2]。しかし、AIシステムが状況理解を媒介し決心の結果(decision outputs)に影響を与える中で、信頼の所在は人間のリーダーからアルゴリズム・システムへと移り、権威はヒューマン・マシン・ネットワークにますます分散していく。しかし責任は依然として指揮官にある。

戦場を超えて、これらのダイナミクスは日常的な組織のリーダーシップにも及んでいる。組織レベルでは、リーダーシップは基本的に信頼、雰囲気、そして専門的判断に基づく影響力の行為である2F[3]。AI対応ツールが計画策定、分析、決心支援に組み込まれるにつれて、部下は指揮官の意図よりも機械由来の出力に重きを置くようになるかもしれない。アルゴリズムの信頼が徐々に人間の判断を置き換える中である。懸念されているのは不服従というよりも、人間の判断が徐々に脇に追いやられることにある。

これが私が「統制のない指揮(command without control)」と呼ぶ状態であり、権威は形式的には維持されつつも、それを動かす人間の判断力は、知恵よりも速度に最適化されたシステムによって徐々に空洞化されていく。AIは軍事の意思決定を加速し、さらに重要なことに、誰や何が意思決定を任せるかを再構築し、説明責任は変わらない。

その結果、ミッション・コマンドのドクトリン的基盤との緊張関係は増大し、十分に検証されず、影響を及ぼしている。これに対処するには、指導者たちはAIを否定するのではなく、その再主張を不要に感じさせるためにデザインされたシステム内で人間の判断の優位性を意図的かつ継続的に再主張する必要がある。

アルゴリズムの圧力下でのミッション・コマンド

私は二つの大陸の計画策定ルームに座ったことがある。ある場所では地図に手印が付けられ、無線だけが上層への連絡手段であり、指揮官自身が歩いた地形の判断に基づいて判断が下されていた。もう一方では、AI生成のオーバーレイが参謀が確認するよりも早く画面を埋め尽くし、本能的にその成果を問うよりも発展させようとしていた。その対比は能力とはほとんど関係がなかった。それは機械が不確実性をすぐに解決させたことから来ていた。

ミッション・コマンドはシンプルながらも厳しい前提に基づいている。指揮官は相互の信頼を通じて結束したチームを構築し、共通の理解を築き、明確な意図を示し、規律ある主導性(disciplined initiative)を発揮する3F[4]。この哲学は、人間が不確実性を解釈し、判断を行使し、信頼の枠組みの中で行動すると仮定している。AIは、単にリーダーを置き換えるのではなく、理解の構築、信頼の形成、決心の実行方法を指揮システム内で媒介することで、間接的にこれらの前提に挑戦する。

第一の摩擦点は、ミッション・コマンドの基盤である共通理解にある。AI対応システムは、情報をフィルタリングし、優先順位付けし、提示することで、部隊の戦場の知覚の仕方をますます形作っている。AI対応の軍事意思決定に関する現代の研究は、こうしたシステムが膨大なデータ・セットを集約し、人間の処理能力を超える速度で合成された作戦図(operational pictures)を生成することを浮き彫りにしている4F[5]。

ウクライナでは、AI対応のドローン・ネットワークがセンサーからシューターまでのサイクルを数時間から数秒に圧縮し、機械が媒介するインテリジェンス・監視・偵察(ISR)が戦術レベルでの状況認識の発展と共有の速度を根本的に変えることを示した5F[6]。米イスラエルによるイランに対する継続的な戦役は、このパターンを作戦規模に拡大しており、AIのターゲティング・システムは最初の24時間以内に1,000以上の打撃のターゲットを処理し、構造的に人間の意図的な評価を不可能にしている6F[7]。

その結果、伝統的な参謀主導の状況理解開発プロセスは、機械が厳選したアウトプットによって補完され、場合によっては取って代わられつつある。これにより速度とデータ統合は向上するが、アルゴリズム・フィルタリングへの依存も生じ、指揮プロセス内の可視性、バイアス、解釈可能性に関する重要な疑問が生じる。

第1騎兵連隊第6中隊に配属されたM2A3ブラッドリー歩兵戦闘車両が、2026年5月10日、リトアニアのパブラデ訓練場で行われたプロジェクト・フライトラップ中に、M242 25mmブッシュマスター・チェーン・ガンで無人機システムと交戦している。プロジェクト・フライトラップでは、兵士たちは対無人システム、AI対応の指揮・統制、ライブ・データ・ネットワークを統合し、より速く動き、より迅速に判断し、あらゆるドメインで効果的に闘う。(写真:マックス・エリオット(Max Elliott)米陸軍軍曹)

第二に、AIは軍事意思決定プロセスおよび関連する決心フレームワークの実行を再構築する。AIの指揮統制統合の分析によれば、これらのシステムは計画策定と実行のタイムラインを圧縮し、より迅速な行動方針(course-of-action)の生成と選択を可能にすることが示唆されている7F[8]。意図的な参謀プロセスを行う代わりに、指揮官はAIシステムによって既にフィルターされ、形作られた選択肢を提示されることが多い。この圧縮は、指揮官が継続的な対話、分析、洗練を通じて理解を深めるというドクトリン上の期待に挑戦する。

第三に、AIは軍事組織内の相互信頼の基盤を変える。ミッション・コマンドは指揮官、部下、参謀間の信頼の流れを前提とし、分権型実行(decentralized execution)を可能にする。しかし、軍事文脈におけるAI支援の意思決定に関する研究は、AIツールへの過度な依存がリーダーの本質的な意思決定スキルを損ない、複雑なシステムの統制を維持する能力を複雑にすることを示している8F[9]。時間が経つにつれて、信頼は人からシステムの信頼性への知覚へと移っていく。フェレンツ・ファゼカス(Ferenc Fazekas)は、AI対応の指揮システムは分権型実行(decentralized execution)を支援する意図があっても、意図せずに情報権限を集中化してしまう可能性があると指摘している9F[10]。

第四に、AIはミッション・コマンドの特徴である分権化(decentralization)と集権化(centralization)の間の緊張を強める。一部の学者は、AIが分権型実行(decentralized execution)を強化する可能性があると主張している。ソリン・マテイ(Sorin Matei)とカイル・リード(Kyle Reed)は、AI対応の指揮システムがデータの凝縮と抽出の過程を通じて、上級指揮官と戦術的先端の両方に同時に決心の質(decision-quality)の情報を届け、意図に基づく指揮の論理を侵食するどころか強化できると主張している10F[11]。この見解では、AIの情報非対称性管理能力は脆弱性ではなく、分散型主導性(distributed initiative)の促進要因とされている。

しかし、米陸軍戦争大学のウォーゲームの証拠はこの楽観的な評価に異議を唱えている。アーロン・ウィルコックス(Aaron Wilcox)とチェイス・メトカーフ(Chase Metcalf)は、AI対応の計画策定システムが参謀将校の間に認知的アンカーリング(cognitive anchoring)※1を生み出し、その結果が作戦上欠陥があることが証明された後も機械生成の行動方針(machine-generated courses of action)に従う様子を記録している11F[12]。AIシステムは分権型の主導性(decentralized initiative)を力づけるのではなく、指揮階層ではなく、選択肢の枠組み、順序付け、受け入れ方法に対するアルゴリズムの影響を通じて集権的な認知権威として機能した。つまり、指揮官は統制と主導性のバランスは自然に得られると考えるのではなく、バランスを維持するためにより一層努力しなければならない。

※1 認知的アンカーリング(cognitive anchoring)とは、最初に得た情報(アンカー)に人間の判断が引きずられ、その後に新しい情報が得られても十分に修正できなくなる認知バイアス

最後に、AIはミッション・コマンドにおける権威と説明責任の関係を複雑にしている。決心支援システムが勧告を形成し結果に影響を与える一方で、責任は人間の指揮官にある。AI対応の軍事意思決定に関する研究は、このようなシステムが複雑なモデルや確率的推論によって生成される場合、ユーザーが完全に解釈しづらいことがあり、検証や信頼を複雑にすることが浮き彫りになっている12F[13]。これが隙間を生む。決心の入力はシステムや主体に分散されるが、責任は指揮官にある。

これらの構造的な圧力は、紙上ではミッション・コマンドを保つ一方で、その人間の基盤が崩れ始める条件を露呈させている。

AI、信頼、そして人間の判断力の侵食

30分間でAIが生成した50の打撃の選択肢を検討する参謀将校は、伝統的な意味での意思決定ではない。彼がそれらを管理している。この区別は、平時の計画策定では微妙で、戦闘では壊滅的であり、AIが軍事判断に与える影響の核心にある。ドクトリンは一貫して、指揮は不確実性の中での判断の行使であり、指導者は不完全な情報を解釈し、リスクを受け入れ、曖昧さにもかかわらず行動することを要求する13F[14]。AIは不確実性を残しつつ、リーダーや部下の考え方、決定、行動のあり方を歪める確信の幻想を作り出す。

主なリスクの一つは、自動化バイアス(automation bias)※2の蔓延であり、特に高速な環境では機械生成の成果物を個人が過信しがちである。実証的研究によれば、ユーザーは時間的圧力や認知的負荷がある場合、誤った推奨であってもアルゴリズムの推奨に従うことが多いことが示されている14F[15]。軍事の文脈では、AIシステムがますますターゲティング、情報分析、計画策定ツールに組み込まれているため、このバイアスは意思決定権(decision-making authority)を人間の判断から微妙に遠ざけることがある。

※2 自動化バイアス(automation bias)とは、人間が、自動化されたシステムやAIの判断を過度に信頼し、自分自身の確認や批判的思考を省略してしまう認知バイアス

重要なのは、この傾向がターゲティングの文脈で特に記録されており、自動勧告への過度な依存が、国際人道法における区別義務および比例性の遵守に関して、実務面だけでなく法的な懸念も生じさせていることである15F[16]。リーダーはAIの出力を疑問視すべきインプットではなく、検証すべき結論として受け入れ始めるかもしれない。

この変化は組織のリーダーシップと信頼に重要な影響を与える。軍事組織内のリーダーシップは、専門的な判断と経験に基づく影響力に依存している。しかし、AIシステムが計画策定や分析プロセスに組み込まれるにつれて、その影響の基盤は変化するかもしれない。ジョセフ・ヒュイット(Joseph Huitt)は、AIが決心の仕方や解釈の仕方に影響を与えると主張し、特に分析的に堅牢に見えるシステム生成の出力に過度に依存しないようリーダーは注意すべきだと示唆している16F[17]。

このような文脈では、部下は自らの評価を作成する際にシステム出力にますます依存する傾向がある。これは不服従ではない。これは組織内の信頼の再構成を反映しており、技術が意思決定プロセスにおいてより重要な仲介者となることを示している。

この脆弱性は、認知的に疲弊した兵士に限ったものではない。米陸軍指揮参謀大学では、計画策定演習、戦争演習、学術評価におけるAI統合が急速に進み、正式な機関介入を促している。2025年8月に発行された米陸軍指揮参謀大学(CGSC)通達921は、生成AIツールが「要約や比較を信頼できる分析や助言に確実に変換するための文脈と判断力を欠いている」と明確に警告し、評価評価での無許可の使用を禁止している。これは実戦経験を持つ佐官級将校(field-grade officers)にとって必要性が高い制限である17F[18]。これが専門的な軍事教育の環境でも見られるという事実は、AIに触れることで階級や経験に関係なく独立した判断を取って代わるのに十分であることを示唆している。

AIはまた、リーダーが不確実性やリスクにどう向き合うかにも影響を与え、これらは効果的な指揮の中心である。軍のリーダーシップは伝統的に曖昧さに慣れ、完全な情報なしで意思決定を行う能力を必要とする。しかし、AIシステムは構造化された出力、確率、優先順位付けされた推奨を提示することで、作戦環境の根本的な複雑さを反映しない明確さの知覚を生み出すことができる。研究によると、このようなシステムは特に出力の生成方法を把握できないと、自らの限界を隠してしまうことがある18F[19]。より大きな危険は、AIが不確実性を隠し、本質的に不確実な決定に対する過信を助長することにある。

AI対応戦における権威、説明責任、倫理的リスク

AIは指揮官の責任を減らさない。むしろ重くなっている。AIシステムがますます作戦上の決心に情報を提供し、優先順位をつけ、さらには形成する一方で、その決定に関する倫理的・法的負担は依然として人間のリーダーにしっかりと委ねられている。その結果、権限は拡大し、説明責任は固定されたままの指揮環境が生まれる。

この緊張は、決心支援と決心所有権の関係から生じる。AIシステムは膨大なデータ・セットを処理し、伝統的な人間の分析を超える速度でターゲティング・オプションを生成することができる。これにより運用効率は向上するが、同時に意思決定者(decision-makers)にはシステム生成の成果を迅速に評価しなければならないという圧力もかかる。この圧力は、テンポの高いターゲティング環境でより顕著になる。

継続中のイラン紛争において、米軍は170以上の情報源を融合させたMaven Smart Systemと商用AIツールの利用を確認し、防衛分析家が意図的な法的審査とは構造的に相容れないと指摘する規模とテンポで打撃のターゲットを生成・ランク付けしたことを確認した19F[20]。

また、この戦役を観察した研究者たちは、AIがターゲティングを大幅に加速させたものの、機械生成の選択肢の量と速度が評価可能なスペースを圧縮したため、人間の判断の必要性を減らすわけではなく、むしろ強化した可能性があると指摘した20F[21]。このような状況下では、意思決定のリスクは、慎重な評価から手続き的な検証へと移行しつつあり、人間の指揮官の役割は、システムの出力を批判的に問いただすのではなく、確認することにある。

同時に、AIは説明責任構造に根本的な課題をもたらしている。伝統的な軍事の説明責任は、決定を特定可能な主体に明確に結びつけるチェーンに依存している。しかし、AI対応システムは意思決定入力をデザイナー、データ・ソース、オペレーター、指揮官のネットワーク全体に分散させる。

イランでの戦役は、この拡散を前例のない形で明らかにした。米軍がAnthropic社のClaude(商用大規模言語モデル)をPalantir社のMavenターゲティング・システムと統合し、打撃の優先順位付けを行ったことで、その使用の倫理的限界をめぐって公論が巻き起こったのである21F[22]。

この亀裂は、意思決定が特定可能な人間の主体ではなく人間と機械のネットワークから生まれる場合、商業開発者、軍のオペレーター、指揮官の間で責任がどのように断片化するかを正確に示している。その結果、意思決定に影響を与える者と責任を負う者の間に大きな格差が広がっている。

軍のリーダーシップは、指揮官が部隊の行動や行動しないこと、そしてその決定の倫理的影響に責任を持つという原則に基づいている22F[23]。AIはこの原則の実践を複雑にしている。区別や比例性といったコンセプトは、文脈に応じた判断と慎重な検証を必要とし、AIシステムでは確実に提供できない。

イラン・イスラエル対立におけるアルゴリズム・ターゲティング※3の分析は、十分な人間の監督がなければ、AIターゲティング・システムが民間人への被害に寄与し、国際人道法の遵守に懸念を生む可能性があることを強調している23F[24]。統計的推論に基づくAIターゲティング・システムは、検証された法的確実性を無視し、国際人道法の原則である区別義務と比例性を損ない、既存の指揮構造が解決するべきではない説明責任のギャップを生み出している24F[25]。

※3 アルゴリズム・ターゲティングとは、アルゴリズムを利用して、ターゲットの発見、識別、優先順位付け、推奨を行うこと

責任が実質的な熟慮された判断ではなく、ターゲティング・リストのクリックという形で手続き的なものになると、統制のない指揮(command without control)はもはや理論的なリスクではなく、作戦上の条件となる。

AI時代の軍事リーダーシップの再構築

AIは新たな軍事リーダーシップ理論を必要としない。変化した条件下で既存の原則をより意図的に適用することを求めます。前述のセクションはパターンを示している。AIは命令を完全に破ることは少なく、判断の置き換えを効率性のように感じさせることで内部からそれを侵食する可能性が高い。意味のある指揮権を回復するには、三つの強化線に沿った意図的な行動が必要である(図参照)。

図 AI時代における軍事リーダーシップの再構築

(作者作成)

第一に、リーダーは人間の判断の優先性を意図的に再主張しなければならない。AIシステムは選択肢を生成し優先順位付けすることはできるが、文脈的な理解、経験、倫理的思考を置き換えることはできない。リーダーはスピードを健全な意思決定と同一視する傾向に抵抗し、重要な決定には意図的な人間のチェック・ポイントを残さなければならない。これは特に高速な環境で重要であり、迅速な対応の圧力が意思決定を事前処理済みの選択肢の中から選択することに回してしまうことがある。判断を再主張することは、AIを否定することを必ずしも必要としない。出力を積極的に検証し、前提を問い直し、意思決定が運用上の文脈に根ざしていることを確保する必要がある。

第二に、リーダーはAIシステムに対する規律ある信頼を育む必要がある。信頼はミッション・コマンドの中心であり続けるが、AI対応環境では対人関係を超えて人間と機械の相互作用も含めなければならない。この信頼は無批判であるべきではない。リーダーは、使用するシステムの能力と限界を理解し、部下がAIの出力を受け入れの結論ではなく、考慮のための入力として扱うようにしなければならない。この規律を築くには、訓練、繰り返し、そして指揮の強調が必要である。部隊はAIの使い方だけでなく、特に出力が文脈的理解や指揮官の意図と矛盾する場合に、適切にAIに挑戦する方法も学ばなければならない。

第三に、リーダーは指揮の権限と説明責任を積極的に維持しなければならない。AI対応システムは意思決定入力をネットワークやプロセス間に分散させることができるが、最終決定権者としての指揮官の役割を薄めてはならない。リーダーは指揮官の意図の優先性を強調し、目的の明確さを確保し、結果の主体性を維持しなければならない。同時に、AIに基づく意思決定に対しては責任を負わなければならず、責任をシステムに委譲できないことを認識しなければならない。これには、特に技術が行動を加速させる環境において、意思決定に対する道徳的かつ職業的な責任感を維持するための意識的な努力が必要である。

これらの適応は理論的なものではない。それらはリーダーシップの実践である。これにより、指揮の人間的な基盤を強化しつつ、新たな能力を統合している。

最終的に、AI対応の部隊の効果は技術的な高度さだけでなく、リーダーが意思決定の仕方の統制を保つ能力にかかっている。AI時代の指揮の指標は、リーダーが機械の出力をどれだけ速く処理できるかではなく、問題は、延期を求めるあらゆる圧力の中で、彼がそれを選ばなかったかどうかである。

結論

継続中の紛争は、この記事がドクトリン、ウォーゲーム、そして制度的観察を通じて主張したことを明確にした。すなわち、AIは外部からの指揮を脅かすのではなく、内部からそれを空洞化させるということである。単一の作戦が数時間以内に数千のAIが優先したターゲット(AI-prioritized targets)を生成し、商用大規模言語モデルを打撃の決心に組み込み、倫理的責任を負うべきかを巡る公的な論争を生むと、ドクトリン的説明責任と作戦現実のギャップは理論的なものではなくなっている。それは構造的なものになってしまった。

これは統制のない指揮の条件(condition of command without control)である。権威は形式的には維持されている。指揮官は肩書き、シグネチャ、法的責任を保持する。侵食されるのは、命令に意味を与える人間の判断力であり、悪意や怠慢ではなく、速度、規模、分析的完全性に最適化されたシステムによって置き換えられ、判断の放棄と効率が区別がつかないものに感じられる。

それでも、軍のリーダーシップの永続的な原則は依然として有効である。戦争は人間の営みであり、効果的な指揮は依然として判断、信頼、責任に依存している。機械が届かず信号もない地形で兵士を指揮した経験のある将校は、これをドクトリンではなく経験として理解している。その理解こそがAI時代に求められるものであり、最も失われるリスクがあるものである。現代のリーダーの課題は、これらの原則が技術によって置き換えられず、技術を通じて強化されることを保証することである。

機械の速度によって定義される時代において、決定的な優位は情報を最も速く処理する部隊ではなく、その情報の理解、解釈、行動の統制を保持するリーダーに帰る。軍事の効果の将来は、技術的な優位性だけでなく、リーダーが統制のない指揮(command without control)に抵抗し、あらゆる意味で指揮権を維持する能力にかかっている。

ノート

[1] ADP 6-0「指揮・統制(Command and Control)」vページ

[2] ADP 5-0「作戦プロセス(The Operations Process)」(米国GPO、2019年)、第1章

[3] 指揮・リーダーシップ部「L100:リーダーと組織の育成」(米陸軍指揮参謀大学、2025年)、8ページ

[4] ADP 6-0「指揮・統制(Command and Control)」9–15ページ

[5] エメリア・プロバスコ(Emelia Probasco)他著「軍事意思決定のためのAI:優位性の活用とリスク回避(Center for Security and Emerging Technology、2025年4月)、5ページ、https://www.doi.org/10.51593/20240028

[6] アシュリー・ルイス(Ashley Ruiz)著「戦争の将来:キル・チェーンの優位とウクライナの教訓」、Journal of Strategic Security 18巻4号(2025年):53–63、https://doi.org/10.5038/1944-0472.18.4.2592;カテリナ・ボンダル、「ウクライナの将来ビジョンとAI対応の自律戦遂行における現行能力」、戦略国際問題研究所(CSIS)、2025年3月6日、https://www.csis.org/analysis/ukraines-future-vision-and-current-capabilities-waging-ai-enabled-autonomous-warfare

[7] ドーン・ゾルディ(Dawn Zoldi)著「AI搭載のターゲット銀行戦:米イスラエルがイランの『ポップアップ』脅威を打撃するために高度なツールを用いる」Autonomy Global、2026年3月20日、https://www.autonomyglobal.co/ai-powered-target-bank-warfare-u-s-israel-use-advanced-tools-to-strike-pop-up-threats-in-iran/;カルロッタ・コズロフスキー(Carlotta Kozlowskyj)著「AI戦システムの試験場としてのイラン紛争」、ブルームズベリー情報・安全保障研究所、2026年3月24日、https://bisi.org.uk/reports/iran-conflict-as-a-testing-ground-for-ai-warfare-systems

[8] フロリアン・ガースター(Florian Gerster)他著「人工知能が軍事意思決定プロセスおよびミッション・コマンドに与える影響」、Defence Horizon Journal、2025年9月11日、https://tdhj.org/blog/post/ai-military-decision-making-2/

[9] アレクサンドル・バボシュ(Alexandru Baboş)著「軍事指導者のための意思決定ツールとしての人工知能」、Land Forces Academy Review 26巻4号(2021年):271–272、https://doi.org/10.2478/raft-2021-0034

[10] フェレンツ・ファゼカス(Ferenc Fazekas)著「ミッション・コマンドと人工知能」Land Forces Academy Review 26巻4号(2021年):69–79、https://doi.org/10.2478/raft-2023-0010

[11] ソリン・マテイ(Sorin Matei)、カイル・リード(Kyle Reed)著「AI駆動データ管理によるミッション・コマンドの非対称的優位性」、Parameters 56巻第2号(2026年夏):106、https://doi.org/10.55540/0031-1723.3370

[12] アーロン・ウィルコックス(Aaron Wilcox)とチェイス・メトカーフ(Chase Metcalf)、「AI指揮・参謀―ウォーゲームからの作戦上の証拠と洞察」、Military Strategy Magazine 10巻4号(2026年冬):4–10ページ、https://doi.org/10.64148/msm.v10i4.1

[13] エメリア・プロバスコ(Emelia Probasco)他著「軍事意思決定のためのAI:優位性の活用とリスク回避(Center for Security and Emerging Technology、2025年4月)、17–20ページ、https://www.doi.org/10.51593/20240028

[14] ADP 6-0「指揮・統制(Command and Control)」第2章

[15] ラージャ・パラスラマン(Raja Parasuraman)、ディートリッヒ・H・マンゼイ(Dietrich H. Manzey)著「自動化の人間の利用における自己満足とバイアス:注意統合」、Human Factors: The Journal of the Human Factors and Ergonomics Society 52巻第3号(2010年):381–410、https://doi.org/10.1177/0018720810376055;デイビッド・ライエル(David Lyell)とエンリコ・コイエラ(Enrico Coiera)著「自動化バイアスと検証の複雑さ:システマティック・レビュー」、Journal of the American Medical Informatics Association 24巻第2号(2017年):423–429、https://doi.org/10.1093/jamia/ocw105

[16] アントニオ・ココ(Antonio Coco)著「戦争犯罪における個人の刑事責任に対する自動化バイアスと自己満足の影響の探求」、国際刑事司法ジャーナル 21巻第5号(2023年):1077–79ページ、1087–94ページ、https://doi.org/10.1093/jicj/mqad034

[17] ジョセフ・ヒュイット(Joseph Huitt)著「リーダーシップ:意思決定における人工知能」、米陸軍、2025年7月3日、https://www.army.mil/article/286847/leadership_artificial_intelligence_in_decision_making

[18] 学術部長、「CGSCブリテン921:人工知能政策」、指揮参謀大学、2025年8月6日、5、5a、10段落

[19] エメリア・プロバスコ(Emelia Probasco)他著「軍事意思決定のためのAI:優位性の活用とリスク回避(Center for Security and Emerging Technology、2025年4月)、20–22ページ、https://www.doi.org/10.51593/20240028

[20] アルジャジーラ・スタッフ(Al Jazeera Staff)著「米軍がイランとの戦争で『高度なAIツール』の使用を確認」、Al Jazeera、2026年3月11日、https://www.aljazeera.com/news/2026/3/11/us-military-confirms-use-of-advanced-ai-tools-in-war-against-iran; ーン・ゾルディ(Dawn Zoldi)著「AI搭載のターゲット銀行戦:米イスラエルがイランの『ポップアップ』脅威に高度なツールを用いる」

[21] ジョン・リンゼイ(Jon Lindsay)著「米軍はイラン攻撃にAIを活用するが、その技術は戦争における人間の判断力の必要性を減らすわけではない」、The Conversation、2026年3月11日、https://doi.org/10.64628/AAI.j6yj3a7e4

[22] クリス・ロジャース(Chris Rogers)著「イランと人類と国防総省の紛争が保護AIの必要性を示す方法」、Just Security、2026年3月23日、https://www.justsecurity.org/134321/iran-anthropic-dod-protective-ai/、ルロッタ・コズロフスキー(Carlotta Kozlowskyj)著「AI戦システムの試験場としてのイラン紛争」

[23] ADP 6-22「陸軍のリーダーシップと職業」(US GPO、2019年7月)、1-6–1-8ページ

[24] ラミア・ファリス(Lamia Faris)著「イラン・イスラエル対立におけるアルゴリズム・ターゲティング:技術的現実、法的閾値、そして人間の管理の境界」、F1000リサーチ、2026年6月、https://f1000research.com/articles/14-1200/v3

[25] ジェラルド・マコ(Gerald Mako)著「AI駆動自律兵器の法的説明責任」、リーバー研究所(ウェストポイント)、2026年3月9日、https://lieber.westpoint.edu/legal-accountability-ai-driven-autonomous-weapons/