米陸軍の最上位の下士官が米陸軍、米海兵隊によってテスト中の「何でもできる」ゴーグルを試す

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2019年4月23日の記事で紹介したとおり、2018年3月の国防長官指示で近接戦闘致死性タスクフォース(CCLTF)の設立をさせ、米軍の地上における第一線兵士のための試作を検討させてきている。その理由は、「その最も基本的な編成である歩兵分隊における重大な能力と生存可能性の欠点に対処することに長い間放置してきた。制服部隊全体の4%である-歩兵分隊-は、第二次世界大戦以来、米国軍の戦闘による犠牲者のほぼ90%を被ってきた。第一線の歩兵兵士、海兵隊員および特殊部隊が他の軍隊よりも高い割合で死傷者を出していることは驚くことではないが、米国は、その最前線の戦士たちが国家の防衛にあって欠くことのできない役割を果たすことによってこぼれた血を最小限に抑えるために、あらゆる可能なことを実行しなければならない」というものである。(米国防総省の2018年の記事Task Force Looks at Making Infantry Squads More Lethal を参照されたい。)

米国防予算の2021年度予算では、米陸軍と米海兵隊の歩兵の致死性、生存率、およびパフォーマンスを改善および強化する近接戦闘致死性タスクフォース(CCLTF)によって提供される重要な推奨策に投資することで近接戦闘能力の大きな進歩を継続させるとしている。2021年度の予算で、一体型視覚増強システム(Integrated Visual Augmentation System:IVAS)の調達が加速され、2021年度中に最初の部隊に装備され、初期作戦能力を支援することになる。(2021年度米国防予算概観 の4₋5ページ参照)

ここで紹介するのは、試験が進む一体型視覚増強システム(IVAS)のプロトタイプを着用した米陸軍の最先任上級曹長のインタビューをもとにした記事である。このデバイスが一体どんな装備なのか、一体型視覚増強システム(IVAS)ようなデバイスを使用するためには、当然のことながらこのデバイスにクローズした機能のみに注目すればよいわけではない。いわゆる、このデバイスの能力を発揮させるための基盤(インフラストラクチャ)特にクラウド環境を有するネットワークが同時に必要となる。記事中にも出てくるが、「ブラッドハウンド(Bloodhound)」と言われるこの基盤の開発を進めているのがPEO C3T(Program Executive Office Command Control Communications-Tactical)である。2020年1月28日の記事でも紹介したが、米国防総省が推し進めている統合エンタープライズ国防インフラストラクチャ(Joint Enterprise Defense Infrastructure:JEDI)を利用する選択も考慮されている。更に一体型視覚増強システム(IVAS)が兵士に有益なものになっていくかどうかは、研究が進む人工知能などとどのように繋がれていくのかが重要になるのだろうと想像させてくれるものである。(軍治)

米陸軍の最上位の下士官が米陸軍、米海兵隊によってテスト中の「何でもできる」ゴーグルを試す – Top enlisted soldier tries ‘do-it-all’ goggle being tested by Army, Marines –

Todd South [1]

February 19

バージニア州フォートベルボアールで、一体型視覚増強システム(Integrated Visual Augmentation System:IVAS)を使用した射撃シナリオを行うマイケル・グリンストン米陸軍再先任上級曹長。

(写真:トッドサウス/ミリタリータイムズ)

バージニア州フォートベルボアール発:部屋に急いで行くと、兵士が右に犬を見て、彼の注意はすぐに腰の高さのバリケードの後ろから発砲する2人の男に変わった。彼は他の兵士と共に数フィート離れた壁の後ろに隠れた。

その後、二人は射撃したものに窮迫し、角を曲がる前にバリケードを活用する。

しばらくして、彼らは顔からゴーグルを持ち上げ、空っぽの空調の効いた部屋のカーペット敷きの床を横切って歩き、彼らの仮想部屋を掃討する行動を再度行なう。

これは、射手の名手で米陸軍の最高下士官である米陸軍最先任上級曹長のマイケル・グリンストンが今週、一体型視覚増強システム(Integrated Visual Augmentation System:IVAS)を調べてみるためにテストした大きなデモの一部である。

一体型視覚増強システム(IVAS)は開発中の「複合現実」ゴーグルであり、個々の兵士に、ナビゲーションエイドから友軍の位置、兵器の照準器表示、顔認識ソフトウェア、および訓練シナリオ用の拡張現実アバターまでの豊富な情報を提供するものである。

「この装置は、統合打撃戦闘機技術を個々の、下車兵士に適用しているものである」と、一体型視覚増強システム(IVAS)プログラムリーダーのクリス・シュナイダー米陸軍大佐は述べている。

兵士達、米海兵隊、米特殊作戦部隊はすべて、このデバイスについての部隊テストとデバイスに関するフィードバックを提供するすべてのものの一部である。。

バージニア州フォートベルボアール:一体型視覚増強システム(Integrated Visual Augmentation System :IVAS)を使用してターゲット機能を試すマイケル・グリンストン米陸軍再先任上級曹長。

(写真:米陸軍コートニーベーコン)

グリンストン米陸軍最先任上級曹長は、アーミータイムズに、ゴーグル使用の訓練だけで多くの時間を節約できると語った。

毎年何万人もの新しい兵士が米陸軍部隊に入隊するため、このゴーグルは分隊長(squad leader)に新しい兵士を部隊に入れて、小部隊を最低限のレベルの能力に維持するための戦闘訓練を実行する機会を与える。

「戦いの半分は、他の分隊員が何をしようとしているのかを知っていることである」とグリンストン米陸軍最先任上級曹長は言った。 「1週間でそれらを一体化することを想像してみて欲しい。かつては、分隊で実弾が出るまで待たなければならなかったのです」

7月下旬、米陸軍は3回目の兵士達による実装テストを始める。これは、昨年、個人として、二人または小さな火力チームでゴーグルをテストした84人の米陸軍兵士と海兵隊をはるかに超えるものである。

計画では、フォートピケットで実弾射撃と複数の戦術分隊の戦術訓練を実行するために、米陸軍歩兵中隊、海兵隊小隊、支援小隊および対抗部隊の小隊が必要である。 2週間にわたるこのテストは、72時間連続の訓練で最高潮に達する。

グリンストン米陸軍最先任上級曹長は、人工知能とソフトウェアが訓練のリアリティを上げるために改善されると、ゴーグルの使用者、訓練教官、訓練観察者はさまざまなシナリオを作成できるようになり、システム内のアバターは自分の振舞いを調整できるようになり、現実世界の敵が、我々兵士の戦術から学び取るように学習できるようになると指摘した。

「あなたが部屋に入る回数が増えると、あなたは学習しているだけでなく、彼らが学習しているのである」とグリンストン米陸軍最先任上級曹長は言った。「それは実際に戦闘と同じである」

米陸軍は、ここの建物全体のほとんどを一体型視覚増強システム(IVAS)プログラム専用にしている。昨年バージニア州フォートピケットで2回の「兵士の実装テスト」を行い、今年の夏に別の予定を立てた。

現在、このデバイスの重量は2.5ポンドで、米陸軍の最新の双眼型拡張ナイトビジョンゴーグルと同じである。「重量は同じであるが、ゴーグルは拡張ゴーグルよりも顔の近くに保持されるため、一体型視覚増強システム(IVAS)のデザインはネックトルクを下げる」と、兵士用装備に関する計画担当官(Program Executive Office-Soldier)の責任者である米陸軍准将アンソニー・ポッツが述べた。

バージニア州フォートベルボアール:一体型視覚増強システム(IVAS)の機能を試すマイケル・グリンストン米陸軍再先任上級曹長。

(写真:米陸軍コートニーベーコン)

研究者は、次のバージョンでその重量を2ポンドに削減し、デバイスの総重量を1.8ポンドにすることを期待していると当局者は述べた。

ただし、ゴーグルは単独では使用できない。戦術的な攻撃キットを使用し、それは現在のところ、サムソンのアンドロイド・スマートフォン、と適合性のあるバッテリーと無線である。「すべてのアプリケーションで実行すると、一体型視覚増強システム(IVAS)システムのバッテリーは連続動作で8時間持続する」と、当局者は述べている。

初期バージョンのゴーグルは兵士達の視野を混乱させていた。地図、敵、友軍の場所、コンパス見出し、その他のデータが一緒に詰まっていた。

シュナイダー米陸軍大佐によると、兵士がデバイスをテストしたときに初めて、開発者は視界(view)を明瞭にして個々のアイテムを視界の脇に置く必要があることに気づいた。こうすることで、兵士は頭をどちらの方向に向けるか、または単に上を向いてコンパスの方向を見ることができ、脅威を特定するために前方のエリアを明瞭にしておける。

この視界(view)は、兵士や分隊長の好みに合わせて調整でき、特定の任務に必要な情報を提供するが、思考の混乱(confuse)や方向の混乱(disorient)を招く可能性のある過剰なデータは省略する。

データを記録および共有することにより、利用者は、以前にそこで活動していた部隊によって生成された情報を使用して、特定の地理的場所への展開の準備から学習できる。

「あなたはその新しい情報、“我々がそこで見ているものはここにある”と捉え、それをホームステーションでのシナリオに取り入れる」とグリンストン米陸軍再先任上級曹長は言った。「あなたはそれを取り上げると、そこはこれから我々が行く町であり、あなたは、通りを歩き、左を見て右を見ることができる。それは、これまで経験したことはないものである」

これまで、開発者はMicrosoft HoloLens 2のバージョンまたはゲームと拡張現実ゴーグルの修正バージョンを使用していた。

夏のテストでは、最初の軍事用フォームファクター、「屋外の各種要素」と「訓練なのか実際の活動なのかという混乱」に耐えるように作られた高耐久化バージョンを使用する。

公式文書によると、9月までに、当局は、プロトタイプが開発タイムラインのどこにあるかに応じて、最も早い時期に装備化を決定する。初期の運用テストと評価は2021年3月に予定されている。

このデバイスは、大規模なネットワークとクラウドコンピューティングを使用してより多くの情報を取り込むように装備されるものであるが、接続なしで完全に機能することもできる。ゴーグルは、「ブラッドハウンド(bloodhound)」と呼ばれる中隊レベルのクラウドと同期することもできる。これは、ゴーグルによって収集されたデータを処理し、新しい情報を更新する。ブラッドハウンド(bloodhound)は、アクセス可能な場合、より大きなネットワークまたはクラウドと接続してデータを共有するために使用される。

デザイナーはすでに、ゴーグルのナビゲーション、道路探索(wayfinding)、迅速な標的獲得(target acquisition)、昼間機能及び夜間機能をテストに成功している。

また、彼らは、合成訓練環境(Synthetic Training Environment:STE)パッケージで、個人および分隊レベルの兵士が訓練パッケージ、戦闘訓練、任務準備、計画策定、および報告を行う限定した仕事を行ったが、STEはこの夏、更に多くのテストを行う予定である。

後々、反復使用の一部となる舞台裏作業の中には、兵士のパフォーマンス指標の取得、そのデータの訓練への適用、兵士の職務遂行の評価が含まれる。

現在、開発者はできるだけ多くの変数をプラグインして、パフォーマンスの測定と予測に役立てている。それらには、特に、兵士がいる地形、兵士が直面している脅威、天候、兵士が取った睡眠時間など多くの者が含まれる。

最終的に、ゴーグルはそのデータを収集するだけでなく、兵士にリアルタイムのパフォーマンスインジケーターを提供し、訓練イベントや任務での行動を評価するのに役立つことになる。

兵士は、最近配備された兵士搭載センサーであるFLIR[2]「ブラックホーネット(Black Hornet[3])」ポケットサイズの小型ヘリコプタードローンを使用して、地形データを記録する10分間の飛行を実行できる。約8分で、データを3Dマップに転送して、ゴーグル利用者がビューで確認したり、ズームインやズームアウトしたり、さまざまな視点を確認したり、パトロールを計画するときに建物や障害物の高さ、幅、距離を測定したりできる。

軍隊はシールドAI社とも協力しており、シールドAIは自動化された無人機スキャン技術を開発しており、建物の掃討作戦前のほんの数分で建物を内部地図化することができる、とポッツ米陸軍准将は言った。

ゴーグルが各指揮官をどのように助けることができるかについて米陸軍全体の見方に戻ると、グリンストン米陸軍再先任上級曹長は、部隊に手渡されるまでにその問いを越えることを望んでいると指摘した。

部隊からのデータをまとめることにより、リーダーは軍種全体で対処する必要がある傾向を見つけることができる。ある師団での開発は、まったく異なる別の師団内の分隊によって学ぶことができると彼は言った。

「私が第101空挺師団に取って代わる第1歩兵師団であり、彼らが見ているデータを取得し、ロードすることを想像してください」と彼は言った。「そして今、私がそこに着くと、私たちは時間とともに、常に改善し続けている」

米陸軍の2021年予算要求では、今後5年間で40,219台のIVASの購入が求められている[4]

ノート

[1] トッド・サウスは、海兵隊でイラク戦争を経験している。彼は2004年以来、複数の出版物の犯罪、裁判所、政府、軍事問題の記事を執筆している。2014年、彼はギャング刑事事件の目撃者の問題について共同執筆したプロジェクトの現地報告でピューリッツァー賞のファイナリストに選ばれている。トッドは、ミリタリータイムズでは地上戦闘を担当している。

[2] 【訳者註】FLIR:前方監視型赤外線(forward looking infra-red)装置

[3] 【訳者註】参考:https://www.army.mil/article/210155/army_to_purchase_additional_soldier_borne_sensor_systems

[4] 【訳者註】:Army FY 2021 Budget Overview (https://www.asafm.army.mil/Portals/72/Documents/BudgetMaterial/2021/pbr/Overview%20and%20Highlights/Army_FY_2021_Budget_Overview.pdf)の15,16ページを参照、Army FY 2021 President’s Budget Highlights (https://www.asafm.army.mil/Portals/72/Documents/BudgetMaterial/2021/pbr/Overview%20and%20Highlights/Army_FY_2021_Budget_Highlights.pdf)の28ページ参照