ウクライナの教訓を太平洋戦域へ活かす (Australian Army Occasional Paper)
「ロシア・ウクライナ戦争」は将来の戦い方に多くの教訓を見出せるとする意見は、そうなのだろうと納得させられる。日本でも国家安全保障戦略を含むいわゆる3文書の前倒しの見直しが論じられているが、その前倒しをしなければいけないとの理由に「ロシア・ウクライナ戦争」での戦い方の変化があげられている。3文書見直しの理由としてはあまりにも安直ではとの専門家の方々の意見もあろうが、一般的にはそのように受け止められていると理解できる。MILTERMでも教訓についての論稿をいくつか紹介してきている。そしてその教訓を東アジア地域に適用した場合の論稿もみられる。ここで紹介するのは、オーストラリア陸軍に35年間在籍し2022年に退役したミック・ライアン(Mick Ryan)中将が、東欧地域と太平洋地域の特性等をフィルターとして教訓を実際の安全保障の構想の中に取り入れるためのアイデアを示したものである。論稿の中では、ロシアは当然のことであるが、中国もこの戦争から得られる情報を大掛かりに分析し、弱点を見出しながら次につながる教訓としていることが述べられている。本論稿の視点と分析の手法等は大いに参考になると考える。(軍治)
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ウクライナの教訓を太平洋戦域へ活かす
Translating Ukraine Lessons for the Pacific Theatre
Mick Ryan
Australian Army Occasional Paper No. 33
19 Aug 2025
SERVING THE NATION
ARMY.GOV.AU
著者について
ミック・ライアン(Mick Ryan)はオーストラリア陸軍に35年間在籍し、分隊、中隊、連隊、タスク部隊、旅団の各レベルで指揮を執った。東ティモール、イラク、アフガニスタンで従軍経験を持つ。2022年以降に3冊の著書を出版:『変容する戦争(War Transformed)』(2022年)、『白き太陽の戦争:台湾戦役(White Sun War: The Campaign for Taiwan)』(2023年)、『ウクライナ戦争:戦下の戦略と適応(The War for Ukraine: Strategy and Adaptation Under Fire)』(2024年) (2024年)である。現在は複数の企業の戦略顧問を務めており、米国のドローン企業スカイディオ、ワシントンD.C.拠点の特別競争研究プロジェクト、オーストラリアの防衛系ベンチャーキャピタル企業ビートン・ゾーン、ユーティル・フィクション社、英国拠点のジェーンズ社などが含まれる。ミック(Mick)はシドニーのローウィ研究所における初代軍事研究上級研究員であり、ワシントンD.C.の戦略国際問題研究所の客員研究員でもある。
エグゼクティブ・サマリー
2014年のロシアによる侵攻に端を発し、2022年2月の本格侵攻を経て大幅にエスカレートしたウクライナでの紛争は、世界の安全保障の力学と将来の戦争の行方に深刻な影響を与えている。2025年までに平和的解決が達成される可能性は依然として低いものの、この戦争は現代の戦い、特に先進技術の応用、抑止戦略、そして国家資源の動員といった分野において、貴重な洞察をもたらした。
日本、台湾、米国などの国々は、ウクライナから得られた教訓を安全保障政策や調達戦略に統合することで積極的な姿勢を示している。これに対し、オーストラリアの2024年国家防衛戦略(NDS)[1]とその実施は、特に搭乗員無しのシステム(uncrewed systems)、対無人航空機(UAV)技術、長距離打撃(long-range strike)の分野において、これらの教訓への適応が不十分であることを示している。
本稿は、オーストラリアとその同盟国が関与する太平洋地域における想定しうるほとんどの軍事シナリオが、ウクライナから得られた洞察から恩恵を受け得ることを提唱する。しかしながら同時に、太平洋戦域の政治的・地理的・戦略的特性が独特であることを踏まえ、これらの教訓は文脈に応じて解釈されねばならない。
本報告書はウクライナ紛争の主要な傾向を分析し、オープンソース・センサー、ソーシャル・メディア・プラットフォーム、メディアによる戦場作戦へのアクセスがもたらした前例のない可視性を強調する。この可視性は紛争の展開経路や革新的技術の活用に関する理解を深める一方で、内在する「戦争の霧(fog of war)」は依然として多くの側面を覆い隠している。この紛争の特定要素は、今後数年にわたり未知のままであるか、あるいは曖昧さに包まれたままとなる可能性が予想される。
本稿は、ウクライナから得られた教訓を太平洋地域の文脈に合わせた戦略へと転換することを狙った提言を示すことで結論付ける。太平洋地域と東欧を区別する特定の要因を特定することで、オーストラリア国防軍(ADF)を含む軍事機関は、太平洋地域における中国軍活動(ロシアおよび北朝鮮の同盟国による活動を含む)の激化の中で、抑止能力と軍事部隊の作戦効果を高めるために、これらの教訓をより効果的に適応させることができると論じている。
ウクライナにおける教訓を将来の太平洋軍事作戦の文脈で検証するこの取組みは、その過程における第一歩と捉えるべきである。
ウクライナから得られる教訓は本稿で網羅しきれないほど多いが、提示した教訓は現時点で最も関連性が高いと評価される。ウクライナ・ロシア紛争から教訓を引き続き導き出すにはさらなる研究が必要であり、太平洋戦域内の個別国家や小地域(sub-regions)への関連性を確認するにはより詳細な分析が求められる。
はじめに
2014年以降、ロシアによるウクライナへの残忍な侵略により、同国民は悲惨な悲劇に見舞われている。欧州諸国、米国、その他の国々がウクライナを支援し和平合意を達成しようとする取組みにもかかわらず、2025年における闘いの停止(a cessation of the fighting)の見通しは依然として暗い。
それにもかかわらず、ウクライナでの戦争(the war in Ukraine)は、世界中の政府や軍事機関が、近代的で高度な技術を用いた戦いに関する自らの概念に疑問を投げかける機会も提供した。また、抑止力、強制力、そして資源の統合的かつ国家全体を挙げての動員に関する新たな、あるいは進化した考え方に示唆を与えている。
ウクライナでの戦争、特に2022年2月のロシアによる全面侵攻以降に得られた洞察と並行して、中国共産党(CCP)は太平洋地域全体で軍事活動と挑発行為のレベルを強化している。その最も顕著な表れは台湾周辺での大規模統合演習の大幅な拡大であるが、日本、フィリピン、オーストラリア周辺でも中国の軍事活動が増加している。
オーストラリアの対応は2024年国家防衛戦略(NDS)に集約された。同戦略はオーストラリアの関心領域における中国の侵略を阻止することに焦点を当てつつ、ウクライナでの戦争からの教訓を驚くほど学んでいないことを示した。
対照的に、日本、台湾、米国などの諸国は、安全保障政策文書や調達計画においてより高度な教訓を活かしている。太平洋地域では、オーストラリアとその同盟国・安全保障パートナーが軍事的関与を迫られる可能性のある多様なシナリオが存在する。オーストラリアが直面しうるほぼ全ての軍事的緊急事態は、ウクライナでの戦争が示す現代戦の教訓から恩恵を受け得る。重要な課題は、正しい教訓を学ぶことである。
本稿の狙いは、ウクライナから得られた教訓と、それがオーストラリア、その安全保障パートナー、同盟国にとって太平洋戦域に適用可能かどうかを探ることである。軍事紛争からの教訓は、地理的要因、政治的要因、各紛争の戦略的状況により、必ずしも他国が模倣すべきテンプレートを提供しない。しかし、ウクライナでの戦争からの洞察を、異なる戦域における主要な特性を定義し、ウクライナの教訓をそのフィルターにかけることができれば、転用することは可能である。
ウクライナでの戦争の教訓を検討するだけでなく、本稿は太平洋戦域と東欧戦線を区別する要因の一覧を提供する。その後、これらの要因(すなわち翻訳フィルター)を用いて、ウクライナの教訓が太平洋戦域における軍事作戦にどのように(そして適用可能かどうか)適用されるかを明らかにする。
最後に、ウクライナから得られた洞察と、それらを太平洋地域の特有の政治的・技術的・地理的環境に適用することを踏まえ、本稿は、太平洋地域で活動するオーストラリア国防軍(ADF)やその他の西側軍事機関がウクライナからの教訓を効果的に吸収するための指針となる提言を提供する。
I. ウクライナ戦争からの10個の大きな教訓
ウクライナでの戦争が継続する中、我々の傾向の理解は進化してきた。ソーシャル・メディア上のコメンテーターの増加や、ウクライナとロシアの行動を追跡するオープンソース・センサーの活用により、戦争の多くは外部観察者にとって非常に可視化されている。ウクライナは概してメディアの戦場訪問を許可しており、これが戦争の全体像、その展開、そして革新的な技術の応用に関する理解を深める一助となっている。
しかしウクライナ国外から戦争の可視性が高まったからといって、戦争が観察者にとって完全に透明化しているわけではない。あらゆる戦争と同様に、作戦の展開速度、双方が敵対者を欺こうとする意図的な取組み、そしてクラウゼヴィッツが「戦争の霧(the fog of war)」と表現した古くからの課題によって、なお多くの事象が隠されたままである。
第二次世界大戦における意思決定への電子戦とシギント(signals intelligence)の影響が明らかになるまでに数十年を要したように[2]、この戦争の側面もまた、長い間謎に包まれたまま、あるいは全く知られずに残るだろう。
しかしながら、世界と国際安全保障環境は急速に変化している。軍事機関は、西側諸国の戦力デザイン、戦略、訓練その他の軍事活動に組み込むべき教訓についてより確かな見通しを得るために、戦争の終結を待つ余裕はない。
したがって、主要な傾向の評価は継続的な取組みであり、軍事機関は現在入手可能な最善の知識に基づいて学び、適応していかなければならない。
本報告書のこの節では、西側軍事機関にとって最も関連性の高い10の教訓を提案する。この戦争から得られる洞察は他にも数多くあるだろうが、政府や軍事組織が今対応すべき最も重要な教訓はこれらである。
これらの10の教訓は、以下の内容に関連している。
- 量と国家的動員
- 認知戦と社会間紛争
- 人
- メッシュ化された商用・軍事用センサー・ネットワーク
- 偏在する搭乗員無しのシステム
- より安価で、アクセス可能な精密長距離打撃
- 同盟国および安全保障パートナー
- 急速に拡大する適応戦争
- 奇襲
- リーダーシップ
教訓その1. 量と国家的動員
個人情報の大量収集・分析手法の革新、影響力作戦(高度なアルゴリズムを含む)の広範な活用、そして陸・海・空・宇宙ドメインにわたり搭乗員無しのシステムの大量配備が相まって、ウクライナでは新たな大量戦(mass warfare)の時代が到来した。
同時に、我々は、高烈度作戦に多数の従来型の部隊(conventional forces)が同時に投入され、野戦砲や精密兵器が広範に使用され、ロシア軍とウクライナ軍の双方が大規模な大量長距離打撃を実施したのを目撃した。
ウクライナの技術セクターと「カム・バック・アライブ(Come Back Alive)[3]」や「ブレイブ1(Brave1)[4]」といったクラウドファンディング組織は、戦争下における国家的能力容量および社会的能力容量の動員において重要な役割を果たしてきた。こうした機関は軍と市民社会の架け橋となり、軍の上級指揮官の技術リテラシー向上を支援し、市民が戦場で起きている事態を理解する手助けをしてきた。
産業界、政府、軍隊の連携が強化され、ウクライナの防衛生産は大幅に増加した。最前線の兵士たちは今や産業界と直接連携し、アイデアや教訓を共有できるようになった[5]。
大量の影響力作戦(influence operation)もまた、この環境の一部となっている。影響力活動は人類の紛争や競争において時代を超えた要素ではあるが、その高度化が進んだことで現代の作戦環境における重要な要素となった。アルゴリズム、機械学習、そして膨大なデータセットは、軍事組織や政府機関が広範かつ精密にターゲットを絞った影響力作戦を実施する上で、実際に支援し得るものである。
ウクライナ戦争における技術的イノベーションの結果、軍事機関は今や分岐点に立たされている。十分な戦力を生み出すためには、困難な選択を行い、機会費用を評価する必要がある。検討事項には、高価なプラットフォームと、様々な任務に適応しやすく、より広く利用可能な安価で小型の自律システムとの間で、最適なバランスをどう実現するかが含まれる。
搭乗員有りのシステム(crewed system)、自律能力、影響力活動を通じて量を生み出すこれらの新たな形態のバランスの取れた部隊構造は、21世紀の新たな用兵コンセプトと戦略によって補完されなければならない。
この新たな量の時代の最終的な次元は、人的要素である。少なくとも短期的には、多くの西側民主主義国[6]が好む完全志願兵制モデルを用いて、大規模な軍事能力を確保することは困難だろう。ウクライナ軍は、職業軍人(professionals soldiers)と動員兵(mobilised soldiers)のバランス変化によって変貌を遂げた。
ウクライナのプロフェッショナルな部隊は2022年の大規模戦闘で深刻な消耗を被った。したがって、現在従軍しているウクライナ(およびロシア)軍人の大部分は、戦争開始以降に動員された者たちである[7]。
ロシア軍は地上部隊へのロシア人兵士の募集能力を強化した。2022年末に30万人を動員し、2023年にはさらに約30万人を募集した。2024年の攻勢開始までに、ロシアはウクライナ駐留部隊を前年比10万人以上増強していた。
2025年4月の評価において、米国政府機関はロシアが月間3万人の新規兵員募集率を維持できると推定し、2024年通年で約44万人の人員を募集したと評価した[8]。
このようにして、ロシアはウクライナに対して人的優位性と兵力展開上の優位性を生み出した。そしてこの優位性を活用し、ウクライナ前線陣地への継続的な圧力をかけ続けている。この絶え間ない圧力と、ロシアがウクライナよりも損失を補充しやすい能力こそが、ロシア軍の漸進的な戦果の主因である。
これらの観察結果に基づき、西側軍事組織は、将来の紛争を抑止するのに十分な量を構築し、抑止できない場合には勝利の可能性を最大化するための大規模な戦力を提供するための動員体制を必要とする可能性がある[9]。
動員は国家的な取組みでなければならず、産業的要素や戦略的優先順位付け・調整の必要性など、過去の時代との連続性を持つ。しかし21世紀の動員には、産業・人材・アイデアという三つの柱からなる国家的努力が求められる。
それぞれが独立した重要な構成要素であり、これらは社会の期待、国家資源、そして各国の望む国家安全保障目標に沿うよう調整されなければならない。最後に、ウクライナで見たように、動員は単なる軍事の能力容量構築プロジェクトではない。
動員に必要な戦略的手段、資源、リーダーシップは、国家インフラの構築、民間防衛、社会的結束、そして総合的な戦略的復元性の強化にも活用できる。
教訓その2 認知戦と社会間紛争
先進的な新技術は、より遠距離における軍事力の致死性を高めた。また、これまで不可能だった方法で様々な集団をターゲットにし、影響を与える技術的手段も提供している。
ロシアによる影響力活動は戦争に影響を与えた。ソーシャル・メディア、およびそれに伴うインフルエンサーやポッドキャスターは、2024年の米国議会におけるウクライナ戦争支援に関する議論と、2024年米国大統領選挙に影響を及ぼした[10]。ウクライナでの戦争はまた、戦略的影響力が専制政権によって完全に支配されているわけではないことを示している。
ウクライナ侵攻前の2月24日、米インテリジェンス機関は機密情報源と報告を活用し、ロシアの作戦を察知するとともに先制的に阻止する取組みを行った[11]。戦争が始まると、ゼレンスキー大統領はソーシャル・メディアを活用し、自国が西側諸国から軍事・経済・インテリジェンス・政治・人道支援を受けられるよう確保した。
生成AIはウクライナでの戦争の様々な側面に影響を及ぼしつつある[12]。ディープフェイク技術は、信頼できるスポークスパーソンを装ったフェイク・ニュースやフェイク動画を生成するために利用されており、政治家や政府が提供する戦争についての情報への信頼を損なうことを狙いとしている。
同時に、ディープフェイクは「嘘つきの配当(liar’s dividend)[13]」を引き起こす可能性がある。権力乱用や腐敗の証拠を突きつけられた者が「それはフェイクだ(It’s fake)[14]」と主張することで、不確実性を撒き散らし、責任追及を回避できる。
大量の精密打撃自律システムとメッシュ化された商用・軍事用センサー・ネットワークは、現代戦争における重要な構成要素である。しかし、戦略的影響力を生み出し、あらゆるレベルでの意思決定を形作る能力容量も、国家の用兵能力(warfighting capabilities)にとって極めて重要だ。この現象は「認知戦(cognitive warfare)」と称されることが増えており、神経科学、集団力学、ソーシャル・メディア操作といった側面を含む。
最近、NATO同盟軍変革司令部は認知戦のコンセプトを策定し、認知戦を「優位性を獲得するために、個人および集団の認知に影響を与え、保護し、あるいは混乱させることで態度や行動に影響を与えるため、他の力の手段と同期して実施される活動」[15]と定義した。
ロシアとウクライナは戦争中、戦略的影響力への投資を行ってきた。重要な洞察は、国家は戦争そのものと戦争のナラティブ(narrative)の両方を同時に勝ち取る能力を持たねばならないという点である。
ウクライナでの戦争はまた、インターネットとソーシャル・メディアが敵対者の国民間の直接的なつながりを拡大する基盤を提供していることを示した。接触する「社会の接触面(societal surface areas)」は現代技術によって拡大される[16]。社会の接触面同士の接触が増えれば増えるほど、国家や社会の復元性(national and societal resilience)の不足が大きくなるほど、認知戦(cognitive warfare)を実践する者たちがターゲット可能な脆弱性は大きくなる[17]。
教訓その3 人
前の教訓では、動員という文脈における人について考察した。これは戦争における人の量的側面である。本教訓では、特に軍人の募集・育成・配置における質的要素を探求する。
2022年2月のロシアによる全面侵攻後、早期に明らかになった特徴の一つは、ウクライナ兵とロシア兵の質的差異であった。欧州安全保障防衛評議会(European Security and Defence)の報告書が指摘するように、「ロシア軍司令部は計画策定段階で敵を過小評価し、自軍の戦力を過大評価し、未確認情報に依存するという誤りを犯した[18]」。ロシアの計画策定・訓練におけるこの質的問題は2025年まで継続しており、戦争研究所による2025年5月の評価では次のように記述されている。
新兵の訓練が不十分なため、ロシアは「肉(meat)」攻撃(防衛側を圧倒するためにデザインされた、多数の死傷者を伴う大量の攻撃の繰り返しの波)以外の作戦を実行する能力が制限されており、ロシア軍司令部には新兵を適切に訓練する時間が十分にないため、ロシアは大きな損失を被っている[19]。
ロシアの地上部隊の質にも大きなばらつきがある。チャタム・ハウス(Chatham House)の報告書は次のように指摘している。
ロシア軍は現在、多様な構成部隊を抱えている。これには第1軍団と第2軍団が含まれる—これらは以前、ロシアの傀儡政権であるルハーンシク人民共和国とドネツク人民共和国の一部であった……さらに国軍戦闘予備隊(BARS)の予備部隊、志願兵大隊、受刑者で構成されるストームZ部隊とストームV部隊、そして様々な準軍事組織も存在する。その一部はロシア軍インテリジェンス機関であるロシア連邦軍参謀本部情報総局(GRU)の傘下で活動している。
部隊間のこの格差は、ドクトリンと組織における標準化の欠如をもたらし、また、訓練が最も不十分な部隊向けの「肉弾戦術(meat tactics)」を含む異なる戦術を必要とする結果となった[20]。
部隊の質の問題はロシアに限ったことではない。ウクライナでは、2022年の志願兵急増期以降、十分な人員を確保するのに苦慮している。その結果、現在の新規入隊者のうち志願兵はわずか約12%に留まり、ウクライナ陸軍の兵士の平均年齢も上昇を続けている(現在は約43歳)[21]。
兵員募集の不足は、訓練中の兵士を前線に早期投入する圧力にもつながり、訓練期間の短縮によって新兵および専門兵の訓練品質を低下させている。訓練上の課題の例としては、2023年のウクライナ反攻作戦に先立つ旅団編成と訓練の混乱、さらに最近では第152旅団および第155旅団に関連する訓練とリーダーシップ上の課題が挙げられる[22]。
ウクライナ旅団の訓練不足と戦力生成の不備は、2023年のウクライナ反攻作戦が失敗した一因である[23]。さらに事態を悪化させているのは、高い人的損失と脱走が、ウクライナの作戦継続能力に課題をもたらしていることだ[24]。
こうした課題にもかかわらず、ウクライナ軍要員は概して平均的な質が高く、自国への存亡の危機による強い動機付けを有しており、戦場においてより一貫した革新性を示してきた。ロシア軍が主導性と適応の能力容量を示した場合でさえ、ウクライナ軍は概してロシアの革新に対抗するために学び適応することができた。
結局のところ、ロシアとウクライナの人員の質におけるこの格差は、2024年初頭以降、はるかに大規模なロシア軍が前進する際に直面してきた困難として顕在化している。マイケル・コフマン(Michael Kofman)が以下のように指摘している。
ロシア軍は攻勢作戦において決定的な優位性を確立するのに苦戦した。戦力の質に関する根本的な問題が持続し、攻勢は主に小規模部隊の行動、あるいは突破口を開けなかった高コストの機械化攻撃に限定された[25]。
ウクライナは、人員の質が重要であることを示した。しかしロシアが示したように、十分な量的格差を生み出せる軍隊であれば、こうした質的劣勢は縮小あるいは解消され得る。ロシアの場合、ヨリス・ファン・ブラデル(Joris Van Bladel)によれば、この量は、損失・犠牲・苦痛を受け入れ報いる軍事文化と結びついている[26]。この文化と規模の組み合わせは、適切な目標に焦点を当てれば、より質が高いが小規模な組織を圧倒しうる強力な軍事能力を生み出す可能性がある[27]。
教訓その4 メッシュ化された商用・軍事用センサー・ネットワーク
スターリンク(Starlink)などの商用センシング・通信ネットワークは、ウクライナでの戦争の戦況に重要な影響を及ぼしている。地上・宇宙・空中・海上の各種商用センサーが活用され、軍事作戦に資するほぼリアルタイムのデータを提供している。商用通信ネットワークは、分析官や指揮官が使用するセンサー・データの伝送と統合に利用されている。
ウクライナで使用される数々のセンサーはドローンの大規模な活用によって拡充された一方、米航空宇宙局(NASA)の火力情報・資源管理システム[28]など、オンラインで自由に利用できる商用センサーも役割を果たしている。
さらに、音響センサーや地震センサー[29]、および商用合成開口レーダー(SAR)衛星センサー[30]が、既存の軍事センサーと分析プロセスによって生成されるインテリジェンスに統合され、状況認識能力の向上を図っている。
スターリンク(Starlink)のような重要な通信コンステレーションの商業的所有権は、軍事組織にとってもマイナス面がある。2022年にクリミア半島のロシア軍に対するウクライナの攻撃を阻止するためにスターリンク(Starlink)を遮断したイーロン・マスク(Elon Musk)の行動は、商業用と軍事用のセンサーおよび通信ネットワークが混在することで生じる課題の一例である。将来の軍事紛争に備えて、こうした課題は解決される必要がある[31]。
宇宙ベースのセンサーと通信の役割は、この新たな商業用と軍事用センサー・ネットワークの統合において中核をなす。マルチスペクトル能力容量を有する衛星(民間所有および政府所有)は、双方に状況認識を提供する上で不可欠な機能を果たしている。
ロシアは独自の衛星コンステレーションを保有しており、中国から衛星収集情報を入手する可能性がある。一方、ウクライナは衛星をほとんど保有しておらず、そのニーズを満たすために米国および欧州の政府・民間衛星に依存している。
民間企業が所有する衛星は、軍事的に有用な情報を提供しており、後述する安価な精密縦深打撃能力の拡散に寄与している。またロシアによる防護施設や民間人へのターゲティング、戦争犯罪の実行に関する情報も提供している[32]。
これは、戦闘員と国家的リーダーの双方が、自軍部隊の行動に対して責任を問われることを保証する不可欠な機能である。戦略的影響力作戦の基盤を提供し、敵対者が自らの行動や目標について流布する誤った情報に対抗するものである。
人工知能は、いわゆる「シグネチャ戦(signature battle)」においてますます重要な役割を果たしている[33]。カテリーナ・ボンダル(Kateryna Bondar)がこのテーマに関する報告書で述べたように、2022年以前の状況認識やドローン向けAI開発が基盤となり、ウクライナはその後AIを拡大する機能の数に応用するに至った。これにはオープンソースのインテリジェンス、状況認識の強化、指揮・統制の効率化が含まれる[34]。
双方の探知能力が向上したことで、人的・物的・部隊的な探知能力容量が継続的なシグネチャ会戦(signature battle)を生んでいる[35]。戦場におけるターゲットの探知から破壊までの時間が絶えず短縮され、ウクライナ東部戦線では地上戦がほぼ膠着状態に陥っている。
防勢作戦は現在、攻勢作戦よりもはるかに容易に実施できる。将来、軍隊が合理的なコストで攻勢作戦を実施するためには、コンセプト的・技術的・組織的なイノベーションが差し迫った課題となっている。
教訓その5 偏在する搭乗員無しのシステム(Uncrewed Systems)
第二次世界大戦中に遠隔操作システムが開発・運用されたものの[36]、9.11事件に端を発した戦争以降、新たなシステムでは多くの進展があった。しかし過去3年間は、人類史上最も集中的かつ大規模な搭乗員無しのシステムの開発と運用が行われた[37]。
主な進展には、ドローンの海上・陸上[38]ドメインへの拡散、検知や妨害が困難な光ファイバー制御ドローンの開発、ドローン同士の戦闘技術の開発、大型ドローンが小型偵察ドローンと打撃ドローンを背負う新技術の確立、そして「ウクライナ式ドローンの壁(Ukrainian drone wall)[39]」の開発が含まれる。
より広範には、こうした拡散によりウクライナ、ロシアその他の軍事組織が戦場内外で精密ドローンの大量配備能力を展開するに至った。ドローンによる戦場の変容は、マイケル・ホロウィッツ(Michael Horowitz)が以下のように描写する状況を生み出した。
現代の戦いの時代は、量と精密、規模と高度化という二項対立を崩壊させつつある。これを「精密な大量(precise mass)」の時代と呼ぼう。軍隊は新たな時代に直面している。そこではますます多くの主体が搭乗員無しのシステムやミサイルを動員し、安価な衛星や最先端の市販の利用可能な技術にアクセスできるようになったのである[40]。
ドローンの適応は、オレクサンドラ・モロイ(Oleksandra Molloy)が過去3年半にわたるウクライナ軍の「生存に不可欠(integral to the survival)」と評するものであり[41]、電子戦(EW)の発展と並行して進められてきた。電子戦(EW)は敵ドローンの検知、妨害、偽装、ならびにその航法システムの機能低下やドローン作戦司令部の発見において極めて重要であった[42]。
多くの点で、ドローンと電子戦は共進化の道を辿っている。電子戦耐性を持つ光ファイバー・ドローン(使用されているドローン全体の中では依然としてわずかな割合に過ぎない)の影響にもかかわらず、ドローンと電子戦の適応におけるこの関連性は、ウクライナでの戦争のみならず、その後の戦争においても特徴として残る可能性が高い[43]。戦術環境におけるドローンと電子戦の飽和状態は、打破するのが難しいだけでなく、戦争の性質をさらに変容させる可能性もある。
ロシア・ウクライナ戦争における最近の進展として、対自律システムが著しく進歩している。ウクライナ側の取組みには、戦場の搭乗員無しのシステムや長距離シャヘド・ドローンを撃墜するためのドローン迎撃機[44]やAI制御のロボット機関銃[45]が含まれる。こうしたウクライナの取組みは、敵ドローンを撃墜するより安価な手段を開発する米国、欧州、その他の諸国の取組みによって補完されている[46]。
教訓その6 より安価で、アクセス可能な精密長距離打撃
長距離打撃は、2022年以降ウクライナ軍にとって極めて重要な発展を遂げた。2022年初頭、ウクライナはロシアの戦略的ターゲットを攻撃する能力容量をほぼ有していなかった。その後、同国は高価な兵器と低コスト兵器を組み合わせ、外国製と国産ソリューションを融合させた長距離打撃アプローチを確立した。
さらに、ウクライナの長距離打撃能力は、地上配備型ロケット発射装置、武装ドローン、巡航ミサイル、搭乗員無しの海上打撃艇を組み合わせることで構築されてきた。しかしこの長距離打撃能力は単なる軍事能力ではない。敵対者を軍事的に弱体化させ、支援を提供する同盟国やパートナーに成果を示すことは、政治的な必要性なのである。
ウクライナのインテリジェンス機関と縦深打撃能力は、戦争の進展に伴い、ますます統合され、能力を高めた戦略システムへと発展してきた。数多くの事例が挙げられるが、2025年6月1日にウクライナ軍がロシアの爆撃機基地に対して行った打撃は、ウクライナの縦深打撃複合体(deep strike complex)の創造性と高度さを示す好例である。これにより、インテリジェンスと縦深打撃競争は戦争において最も動的な要素の一つとなり、主権的抑止力と長距離打撃能力を求める国々が研究すべき対象となる。
ウクライナによる低コスト長距離打撃能力の開発[47]は、搭乗員無しの兵器の入手可能性とコスト、および前述の軍事・商業センサー・ネットワークの融合といった技術的影響によって支えられてきた。ウクライナは現在、複数の軍事組織および国家インテリジェンス機関による統合した計画策定を活用し、最大2,000キロメートルまでの射程で打撃を実施できる[48]。将来の敵対者は、より多様な長距離システムを入手可能となるだろう。
長距離打撃の能力容量の低コスト化と普及拡大は、かつて安全と想定されていた基地や重要インフラの防衛について、軍事組織に新たな思考を迫るものである。安価で精密な長距離兵器の入手可能性が高まることは、軍事部隊構造において長距離打撃能力と近接戦闘能力のバランスを再考する必要性を意味する。
長距離打撃能力は軍事組織の兵器体系において重要な要素ではあるが、万能薬ではない。こうした能力は近接戦闘、情報作戦(information operations)、そして重要なことに同盟国の貢献と統合されなければならない。
教訓その7 同盟国および安全保障パートナー:負担を分かち合う
同盟と安全保障パートナーシップの重要性は、戦争によってさらに強調された。ウクライナは、1997年に確立されその後強化されてきたNATOとの安全保障関係を通じて、戦争の取組み、経済、国際外交を維持することができた。
ウクライナのNATO加盟については、2023年ヴィリニュス・サミットの声明など一部で提唱されているものの[49]、短期的には実現しない見込みである。ただしウクライナは、英国[50]、EU、米国[51]を含む20カ国以上の欧州諸国[52]と複数の二国間安全保障協定を締結している。
ウクライナは(まだ)NATO同盟の加盟国ではないにもかかわらず、NATOの装備やプロセス(統合ターゲティング・プロセスなど)を採用している。共通のドクトリン、手順、訓練の採用、すなわち「相互運用性」は、平時の演習や個別の訓練課程を通じて、また戦時の戦略策定や訓練支援を通じて発展させるものであり、これはNATOによるウクライナ支援の重要な要素である[53]。また、中国の侵略を阻止し、将来の台湾に対する封鎖、打撃、侵攻を撃退するための戦略的に結束した連合を構築する上で、極めて重要な役割を果たすことになる。
全体として、NATOの支援はウクライナの総合戦略において極めて重要な要素となっている。2020年代初頭には機能不全に陥っていた同盟は、2022年2月のロシアによる全面侵攻を契機に新たな目的を持って変貌を遂げた。NATOの2022年7月の戦略構想は、NATOの現代的かつ将来的な役割を強化するとともに、ウクライナがロシアを打ち負かすための支援に焦点を当てた[54]。2023年のNATO首脳会議は、同盟によるウクライナへの継続的な支援を再確認した。公式コミュニケは、NATOが引き続き以下の立場にあることを明記した。
ウクライナが国際的に認められた国境内で独立、主権、領土保全を守り続ける中、我々は政治的・実践的な支援をさらに強化するという確固たる決意を堅持し、必要な限り支援を継続する[55]。
同盟の重要性、そしてウクライナの対外パートナーシップは、軍事・インテリジェンス・訓練分野を超えた意義を持つ。戦争開始以来の対ロシア経済制裁の調整は、ウクライナの外交関係における重要な要素である。2022年2月以降、ロシア、ロシアの民間企業・国有企業、ロシア国民に対して適用されてきた制裁は、複雑な様相を呈している。
制裁には、ロシアの物品・資源の移動制限、ならびにロシアへの物品・資源の販売制限が含まれている。また、資本移動の制限、ロシアのサービス提供制限、個人・企業の資産取引制限、渡航禁止措置も含まれている[56]。
これらの経済制裁の影響については、学界やシンクタンク、そして戦争に関する幅広い論評の中でかなりの議論が巻き起こっている。ほとんどの専門家は、ロシアに課された経済制裁がロシア経済の成長と戦争物資を生産する能力に影響を与えていると見ている。
しかし、制裁に関する大半の分析では、ロシアが継続的なエネルギー輸出を巧みに活用して代替経済パートナーへと軸足を移し、戦争経済の進展を最大限に利用して西側諸国の経済制裁による最悪の影響を緩和していることも明らかになっている[57]。
経済制裁はロシアの侵略に対抗する有用な手段を提供してきたが、ウクライナ防衛と東欧におけるロシアの拡張主義的傾向への抵抗というより広範な戦略の一部に過ぎない。
教訓その8 急速に拡大する適応戦争
適応(adaptation)とは、学習と変化のプロセスであり、敵の優位性を絶えず打ち消しながら、軍事的優位性を継続的に構築するのに寄与する。体系的で優れた指導力による適応文化を保持することは、国家とその軍事組織に、平時と戦時においてより大きな戦闘力をもたらしうるものである。
ウクライナとロシアの両国は戦争を通じて学び適応してきた。両軍の戦術的学習(会戦に勝つことに資する学習)と戦略的学習・適応(国家の戦争遂行能力向上を支える学習)が進行中である。両システムは不可欠であり、相互補完的に連携させねばならない。また両国は過去3年間で学習能力の向上も遂げた。革新性には欠けるが、迅速な追随者としての役割を果たしている。
ウクライナとロシアの軍事機関では、この適応の会戦(adaptation battle)[58]が複数のレベルで繰り広げられている。この適応は、機関の単一レベルで起こる単独のプロセスではない。いかなる軍事組織においても、常に複数の適応事例が同時に発生しており、これらは一般的に(脅威に応じて)異なる地理的領域で、また軍事力の階層構造内の異なるレベルで生じている。技術と戦術における適応は、今やほとんどの西側政治家や防衛官僚にはおそらく理解しがたい速度で進んでいる。
ウクライナとロシアの適応のケース・スタディとして、ドローンの活用が挙げられる。技術と戦術が急速に進化しているだけでなく、この能力を支える組織構造も同様に変化している。旅団レベルでは、ドローン中隊からドローン大隊への移行が進んでいる。ウクライナ無人システム部隊は、重要な組織的適応の一例である。
この独立した軍種は現在、ドローンの作戦、ドクトリン、学習、提唱活動、組織運営における中枢神経系と表現するのが最も適切な機能を提供している。その管轄範囲は、戦場作戦、作戦指揮・統制、訓練、ドクトリン及び教訓、さらに戦略的軍事・産業・政府関連業務にまで及ぶ。
しかし、適応とは単に新しく改良された技術を適用すること以上の意味を持つ。多様な人的介入なしに、いかなる新技術も影響力を発揮することはできない。こうした介入は一般的に、以下の三つの類型の一つまたは複数に分類される:新たな発想、新たな(そして進化した)組織形態、そして訓練である。
制度的適応プロセスは、新技術と新たな運用形態との間の時間的隔たりを埋める必要もある。新技術の導入と、それを最大限に活用する新たな理論や制度の導入との間には、ほぼ常に時間的遅れが生じる。
ドローン以外にも、戦争中の適応に関する多くの事例研究があり、以下に示すように、適応の非技術的側面を浮き彫りにしている。
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ウクライナにおける適応策 |
ロシアにおける適応策 |
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ウクライナとロシアによる非技術的適応策
ついにウクライナ戦争の適応競争は世界規模の適応戦争へと拡大した。ロシアは現在、イラン、北朝鮮、中国と共に活発な学習共同体を形成している。この「学習・適応ブロック」では、参加国が戦場の教訓を共有し、技術開発や制裁回避で協力する一方、強制・破壊工作・誤った情報の手法についても共有・協力を進め、もちろん学習と適応も行う[59]。2025年米国インテリジェンス・コミュニティ年次脅威評価報告書はこの状況を次のように記述している。
二国間関係は、主に安全保障・防衛分野において、米国を脅かし危害を加える個別的・集団的能力を強化するとともに、米国や西側諸国による活動の抑制または活動の抑止の取組みに対する復元性(resilience)を向上させている[60]。
教訓その9 奇襲
ウクライナがロシアの爆撃機基地に対して行った6月の攻撃[61](コードネーム「スパイダーウェブ」作戦)や、2025年6月初旬にイラン核施設破壊作戦の一環としてイスラエルがイラン防空システムに対して行ったドローン攻撃[62]は、ウクライナでの戦争の間—そしてそれ以降—に繰り広げられた一連の奇襲の最新事例に過ぎない。戦場の透明性を主張する者もいるが、現代戦においても敵対者を欺き、奇襲、衝撃を与えることは依然として可能である。2024年の記事で以下のように述べた。
「透明な戦場(transparent battlefield)」という表現はウクライナでの戦争の描写で多用されてきた。これは不適切な用語である。現代の戦場では軍事機関がより多くの情報を把握できるかもしれないが、可視性の向上は知恵の増大とは同義ではない。いかなる衛星、スパイ機、ドローンも指揮官の思考や戦闘員の心情を透視し、士気を評価することはできない[63]。
通常、奇襲とは敵対者が準備していない場所、時間、または方法で攻撃を仕掛けることを指す。ウクライナでの戦争は過去40か月間に多くの奇襲をもたらした。これには、ロシアがドンバス地域のみに侵攻すると予想していたウクライナの当初の奇襲、そして2022年2月の侵攻時にウクライナ政府と軍が示した抵抗に対するロシアの大きな奇襲が含まれる。
ウクライナ戦争におけるその他の奇襲には、2022年のハルキウ攻勢、2023年10月のケルチ橋攻撃、2023年のウクライナ攻勢の失敗、そして2024年のウクライナ軍クルスク攻勢が含まれる。
インテリジェンス機関や軍隊が採用する先進技術は、敵対者の発見能力容量と意図の予測能力容量を飛躍的に向上させた。しかしウクライナでの戦争を通じて、人間の主体性と敵(時に友軍さえも)に対する奇襲を成し遂げようとする欲望が、いかに重要であるかが示されている。
奇襲は戦争における不変の要素である。これは新たな教訓ではないが、ウクライナにおける過去3年間の紛争は、政府や軍事組織が奇襲戦術に注意を払い、適応と優れたリーダーシップをもって対応する必要性を浮き彫りにした。
教訓その10 リーダーシップ
ウクライナでの戦争から得られた最も重要かつ永続的な教訓は、戦時におけるリーダーシップの重要性である。この戦争は、国家レベルと戦術レベルの両方におけるリーダーシップについて、良い面も悪い面も含めた多様な示唆を与えてきた。
あらゆる組織において最も重要な人的能力は、効果的なリーダーシップである。市民社会や商業組織における成功に不可欠である一方、軍事分野における優れたリーダーシップの価値は、文字通り生死を分ける差となり得る。国家、軍隊、国家安全保障機関を率いる者、あるいは作戦において軍人を直接指揮する者は、指導し、影響を与え、鼓舞する能力を備えていなければならない。
効果的なリーダーとなるためには、厳しい状況や危険な状況下で、非常に困難なことを他者に実行させる説得力のあるスキルと対人アプローチを身につけなければならない。優れたリーダーシップの重要な要素については、以下の段落で考察する。
優れたリーダーは優れた戦略を練る。過去3年間の実績は、戦略(およびその基礎となる前提)を正しく設定することが、効果的な軍事作戦にとって極めて重要であることを示している。ロシアが戦争初期に示したように、誤った戦略や戦略上の想定は、軍事組織が不明確あるいは達成不可能な政治目標の追求に利用され、資源が不足し、指揮が不適切になるという結果をもたらす。最終的に、誤った戦略は戦場と国際舞台で罰せられることになる。
優れた政治リーダーは、効果的な民軍力学を促進する。民軍関係理論(civil-military relations theory)は、文民当局が軍事問題に対して権力を行使する方法を説明する上で極めて重要である。この関係は、エリオット・コーエン(Eliot Cohen)が「不平等な対話(unequal dialog)」と表現したものである[64]。戦争中においても文民の権威は解除されず、むしろ軍事活動が政治的成果と整合し、国家資源が軍事問題を超えた多様な成果を支えることが一層重要となる。
ウクライナでの戦争において、ロシアとウクライナ双方が民軍危機(civil-military crises)を経験している。ロシアでは2023年半ば、ワグネル・グループのリーダーのエフゲニー・プリゴジン(Yevgeny Prigozhin)による短命な反乱が発生した[65]。ウクライナでは2023年末、大統領と最高司令官ザルジニー将軍との関係に亀裂が生じた[66]。これらの事例はいずれも、民主主義国家における安定した効果的な民軍関係モデルの構築に向けた示唆を与えるものである[67]。
リーダーは統合を促進する。1999年の著書『無制限戦(Unrestricted Warfare)』は「戦争の新たな原則」について以下のように述べている。
(戦争の新たな原則はもはや)「武力を行使して敵を自らの意志に従わせる」ことではなく、「武力・非武力を含むあらゆる手段、軍事的・非軍事的手段、致死性・非致死性手段を用いて敵に自らの利益を受け入れさせる」ことである[68]。
この統合された国家的な戦争の取組みはウクライナ戦争の重要な要素であり、リーダーシップの機能である。国家的な取組みの統合は、戦略の計画策定、実行、発展における意図的な取組みである。私が『ウクライナ戦争(The War for Ukraine)』で以下のように指摘している。
これは単に国家が資源を効率的に使用する必要があるからだけではなく、より強靭な戦略を可能にし、敵対者にターゲットや悪用される弱点や隙を少なくするからでもある[69]。
ロシアとウクライナは2022年以降、ますます効果的な統合的な国家アプローチを発展させてきた。これには組織の進化、学習と適応、産業における研究開発と製造が含まれる。
リーダーは学習と適応を育む。ウクライナにおける技術、戦術、戦略的要請の継続的な進化が、学習と適応を促進している。戦場の教訓は分析され、産業界、訓練、その他の組織的取組みに普及されなければならない。戦闘のリーダーは生き残るために学び適応しなければならないが、戦略的リーダーの学習要件は異なる。彼らは戦争前に軍事組織に学習文化を確立させねばならない。それは戦時中の学習と適応のための基盤となる。いかなるレベルでの適応も自然に起こるものではなく、リードされねばならない[70]。
リーダーは目的を提供する。リーダーは、なぜ物事が起きているのか、なぜ特定の行動が必要なのかを明確に説明する対話を市民と持続できなければならない。これは現代、特に情報が飽和状態にある環境では困難である。しかしウクライナが主に実践してきたように、これを適切に行えば国家や軍事組織を結束させることができる。
それはまた国家意志の基盤でもある。ウクライナ戦争から得られた重要な洞察は、国家の生存には国家意志が決定的に重要だということだ。さらに、自国を守る意志を示さない国家を他国が支援する可能性は低い[71]。国家意志は効果的な戦略的抑止体制の中核でもある。
リーダーは目的を伝える。この意志のコンセプト(concept of will)と関連するのは、自国民や外国の支援者に対し、自国が戦争でいかに勝利を収めるか、そして国家としての勝利の理論がどのようなものになるかを説明する能力容量である[72]。リーダーは目的を示す方法を通じて、戦争における行動規範への期待を設定する。
ウクライナ大統領は繰り返し、ウクライナがルールに従って闘うことを強調してきた。この姿勢は、自国軍によるロシア人への非倫理的行為を減らしただけでなく[73]、ウクライナへの国際的な支援を持続させることにもつながった。これは優れたリーダーシップであり、優れた戦略である。
ウクライナでの戦争は、優れたリーダーシップが重要であるという古くからの教訓を改めて浮き彫りにした。この戦争において成功が収められた事例では、リーダーの力量が成功の基盤を提供している。優れたリーダーの発掘と育成は、あらゆる効果的な現代組織の中核であり続ける。
II. ウクライナの教訓を太平洋戦域のために翻訳する
ウクライナにおける3年以上にわたる戦争から得られた洞察は、防衛計画立案者に対し、部隊構造・戦備態勢(preparedness)・訓練とリーダーシップの進化を検討する上で無数の機会と課題を提示している。しかしながら、ウクライナにおける現代戦争の教訓を太平洋地域の軍事力にとって有用な洞察へと転換する際には、欧州戦域と太平洋戦域の差異を考慮しなければならない。
東欧と西太平洋地域では、文化、地理、政治、インフラ、気候に差異があるため、ウクライナでの戦争から得られた洞察を他地域での適用に最適化するためには、これらの教訓を転用する手法が必要である。
先に進む前に、太平洋戦域を定義する必要がある。本稿では、太平洋戦域を第二次世界大戦中に太平洋地域(北太平洋地域、南西太平洋地域、中部太平洋地域、南太平洋地域)が包含していた領域と定義する。
ここにはまた、世界で最も活力ある経済圏、最大の軍事力、そして紛争に発展する可能性が最も高い軍事的対立(米国と中国の間、大韓民国と北朝鮮の間)が存在している。
太平洋はまた、ウクライナから得られる教訓を世界の他の地域に応用するためのフィルターを開発するテスト・ケースとして活用できる、ユニークな地理的領域でもある。
太平洋戦域作戦境界線、第二次世界大戦出典:米国陸軍軍事史センター[74] |
ウクライナの教訓に太平洋のフィルターをかける
ウクライナでの戦争から世界の他の地域が得るべき教訓は、複数の観点から捉えることができる。結局のところ、東欧と世界の他の地域との主な相違点は、以下の広範な領域に集約される:政治的差異、地理的・環境的差異、そして関与する可能性のある軍事力の能力の差異である。
したがって、本稿ではウクライナの教訓を地域で活用するために適用可能な四つの「太平洋フィルター」を提案する。これらは以下の通りである。
- 地理と距離
- 地形、植生、天候
- 政治的・文化的環境
- 潜在的な敵対者の能力
本報告書の第I節におけるウクライナ戦争の教訓は、これらのフィルターに照らして評価され、ウクライナからの洞察の関連性が判断される。当然ながら、太平洋地域の軍事・国家安全保障計画担当者にとって有用な洞察が数多く導き出されている[75]。
これらの洞察の多くはウクライナと太平洋地域の差異を浮き彫りにしているが、両地域で非常に類似した応用が可能な教訓も存在する。以下に述べる洞察は太平洋戦域に適用されるものであるが、太平洋戦域内の個別国についても同様の分析成果を開発することは可能であろう。
太平洋のフィルターその1:地理と距離
太平洋について考えるとき、最初に思い浮かぶのは、ハワイとグアム、あるいはオーストラリアと日本といった場所間の広大な距離である。
ハワイからグアムまでの距離は約6,400キロメートルである。アメリカ合衆国西海岸(ロサンゼルス)から日本までの距離は約9,000キロメートル、オーストラリアまでは12,000キロメートルである。これらの地点間を移動する海域の大部分は公海であり、航路沿いにはわずかな島々しか存在しない。
広大な距離は太平洋の核心的な特徴である。この距離がもたらす様々な影響を克服することが、同地域における軍事作戦の計画策定と実行を支配している。
しかし、この地域には軍事戦役が展開される距離がはるかに短い地域が数多く存在する。朝鮮半島、中国と台湾、ジャワ島やニューギニア島といった大型島嶼、あるいはフィリピンなどがそれにあたる。ウクライナでの教訓を太平洋地域に適用する際には、戦略的距離と地域内の短距離双方を考慮する必要がある。
太平洋諸国の多くが島嶼国であることによる地理的距離の影響は、一部の地域において、特に港湾、飛行場、兵站拠点、通信・データ伝送網といった民間インフラ・ネットワークが、東ヨーロッパよりも分散していることを意味する。
南太平洋および南西太平洋地域は、民間インフラが分散している地域の例である。一方、台湾西部、中国、日本南部などの太平洋の他の地域では、民間インフラが密集しており、軍事作戦を支援する能力が非常に高い。
太平洋には多くの島や島国が存在する一方で、大陸も含まれている。ユーラシア大陸、オーストラリア、南北アメリカ大陸が太平洋戦域を囲んでいる(南には南極大陸がある)。これらの大陸で大規模な戦闘が発生する可能性は低いかもしれないが、それらは太平洋戦域における戦略的競争や戦闘を繰り広げる国家にとって、政治的・産業的・軍事的な戦略的基盤を提供している。これらの考慮事項は軍事活動において重要であり、ウクライナの教訓を太平洋地域への適用に翻訳する際には考慮される必要がある。
ウクライナでの戦争の教訓を踏まえ、太平洋地域の地理的条件と距離を考慮すると、最大の影響は以下のような分野で生じると考えられる(第I節より抜粋)。
・ 量と動員。ベトナムと韓国を除き、太平洋戦域のどの国も、最も可能性の高い敵対者と陸上の国境を接していない。また、これら二カ国では大規模な陸上機動が可能である一方、他の国々ではその可能性がはるかに低いため、能力開発において異なる選択が可能となる。ウクライナでの作戦は空・陸・海・宇宙作戦を特徴としているが、この戦争は主に陸上で戦われている。太平洋におけるいかなる紛争も、陸上・海上・航空作戦のバランスが異なる。太平洋作戦は、地理的条件や距離的制約、そして海洋環境への重点的関与から、本質的に統合的な性質を持つ。したがって、太平洋紛争に関与する諸国は、ウクライナ軍の部隊構造とは異なる部隊構造と環境対応能力のバランスを必要とする。
さらに、太平洋における広大な距離を考慮すると、この戦域内での兵力集結はウクライナとは異なる課題をもたらす。例えば、戦域内の多くの異なる地域で小規模な部隊による「兵力の節約(economy of force)」作戦を実施し、敵対者に真の主作戦の取組みを誤認させることが可能となる。これは、はるかに狭い地理的領域であるウクライナでは現在不可能な手法である。同時に、より大規模な部隊を編成することは(残存性の問題に加え)、第二次世界大戦中の太平洋戦役(Pacific campaigns)と同様に、重大な輸送・兵站上の課題をもたらすだろう。
技術は助けとなるが、距離と時間という課題は1945年当時と変わらない。同時に、太平洋域内のどこへでも大規模な部隊を移動させるには、ウクライナでの場合よりもはるかに長い時間を要し、潜在的に大きなリスクを伴う。これは作戦テンポの創出に累積的な影響を与える。また、増援部隊の展開、補給、敵の行動への対応、負傷兵や修理が必要な損傷装備・プラットフォームの後方搬送の取組みも遅延させる。第二次世界大戦中の太平洋戦域における戦役の教訓が示すように、太平洋地域ではウクライナと比較して、はるかに大規模かつ多様な航空・陸上・海上輸送システム(搭乗員有り・搭乗員無しを含む)が必要とされる。
・ メッシュ型センサー・ネットワーク。太平洋戦域の分散的な本質上、軍事作戦の統合状況把握(ウクライナとロシアが1,200キロに及ぶ前線で実現しているような)はより困難となる。また、航空・海上・陸上・宇宙センサーシステムの異なる組み合わせが必要となる。広大な太平洋をカバーするには、単独国家ではなく同盟の任務として取り組む必要があり、技術統合、信頼構築、情報共有のさらなる努力が求められる。
しかしウクライナでの戦争におけるオープンソース・インテリジェンス(OSINT)の進展は、オープンソース情報リポジトリが太平洋地域の同盟国や安全保障パートナーにとって共通基盤となり得ることを示している。ウクライナ情勢とは異なり、将来の太平洋での戦争における潜在的な交戦国双方は、通信・観測・精密航法・測位機能のための膨大な衛星コンステレーションを保有している。そして、これらの機能があらゆるインテリジェンス及び軍事作戦において中核的であることから、交戦国双方が敵対者の宇宙をベースとする能力容量を低下させるための対宇宙作戦を実施する可能性が高い。
将来の太平洋における緊急事態において宇宙空間での戦闘が発生する可能性は、ウクライナでの戦争と太平洋での戦争との根本的な相違点の一つである。太平洋の広大な規模と、地上戦力がこれほど広大な領域をカバーできないという特性から、衛星能力は東ウクライナよりも太平洋においてはるかに重要となるだろう。軌道上の宇宙機、地上局、およびそれらを接続する通信回線を保護できる国—さらに敵対者によって破壊されたシステム構成要素を迅速に代替できる国—は、将来の紛争において大きな優位性を得るだろう。地球表面の広大な領域にわたる認識構築と、その過程で多様な情報源を統合する取組みは、AIがもたらしうる貢献の潜在性を浮き彫りにする。
ウクライナにおけるAIの応用や他地域での同技術の実験を踏まえると、AIは画像分析、全軍事機能にわたる計画策定の迅速化、ターゲティング・プロセスの加速化、適切な弾薬使用の優先順位付け、戦域全体の兵站、通信セキュリティ、装備・人員の配分、誤った情報の対策など、幅広い分野で応用が可能である。
・ 偏在する搭乗員無しのシステム。東部ウクライナのような自律システムの飽和状態は、太平洋作戦地域では達成がより困難となる。台湾海峡など戦域の一部では達成可能だが、飽和状態の領域間にはかなりの距離が生じる可能性が高い。したがって、軍隊は特定の地域・時間帯における集中的なドローン作戦と、非連続的な飽和作戦の両方のコンセプトを必要とする。これにはウクライナが構築中の全長1,000キロに及ぶ防衛用「ドローンの壁(drone wall)」の太平洋版が含まれる可能性がある。
監視および敵のターゲット攻撃のためのドローンの長期・高密度集中運用は、台湾海峡における米国の「ヘルスケープ(Hellscape)[76]」コンセプトに現れるが、太平洋戦域全体で搭乗員無しのシステムに依存する無数の攻防作戦が展開される可能性もある。搭乗員無しのシステムは、太平洋地域における兵站作戦がカバーしなければならない地球規模の広大な領域に対して有用な解決策を提供し得る。しかしながら、現代の軍事力において太平洋全域で利用可能な軍事輸送システムの数量は、いかなる大規模紛争の要求にも十分とは言えない。
民間船舶は他の現代紛争と同様に解決策の一部となるが、いかなる戦争においても、軍事・民間の海上・航空兵站は中国、ロシアその他の勢力にとって優先的なターゲットとなる可能性が高い。これにより民間船舶・航空機運航事業者には膨大な保険負担が生じ、おそらく後方作戦にのみ使用されることになるだろう。ハワイ前方における兵站においては、搭乗員無しのシステムが最も残存性が高く効果的な解決策となるだろう。同盟国の兵站の到達範囲、能力容量、分散化を拡大するには、搭乗員無しの航空システムおよび搭乗員無しの海上システムが必要となる。
このニーズに対応するために開発が進められているプロジェクトの一例が、米国の「ナイトトレイン」構想である。これは、標準的な輸送コンテナを運ぶ半潜水型の搭乗員無しの船を活用し、兵站ネットワークの復元性(resilience)を高めることを目指すものである[77]。搭乗員無しの母船ドローンの開発—空のドメインと海のドメインにおける—は、太平洋における広大な距離をカバーするのに役立つ可能性がある。ウクライナは黒海において海上プラットフォームから航空監視ドローンと打撃ドローンを発射しており、2025年5月には長距離航空母船を用いて、ロシア国内数百キロメートル奥深くのターゲットに短距離打撃ドローンを届けた[78]。
しかし、次の節で考察されるように、太平洋における長距離ドローンと短距離ドローンの比率はウクライナとは異なる。これはコスト面で制約をもたらすだろう。最後に、中国はあらゆる紛争で運用される様々な搭乗員無しのシステムを開発中である。中国が独自の「ヘルスケープ」を開発している明確な兆候はないものの、過去20年間に第一列島線から多層防衛構造を構築する取組みを進めてきたことを踏まえると、台湾東部やその他の地域で同様の取組みが行われる可能性は否定できない。
太平洋における広大な距離を考慮すると、対ドローン防衛はより広範な地域—特に前線補給路—およびより分散した多数の地点で必要となる。これにはオーストラリア、フィリピン、日本、ハワイなどの国々における母基地の立地も含まれる。これは作戦上の優先順位付けに加え、数百、場合によっては数千に及ぶ対ドローン防御ユニットの維持・補給においても課題となるだろう。
・ より安価で入手しやすい精密長距離打撃。太平洋戦域では長距離打撃能力が前面に出る。一部の地域では近接戦闘が依然必要となるものの、紛争初期段階では戦闘員は長距離打撃作戦を優先する傾向にある。これは交戦国が遠隔から重要拠点を攻撃する手段となるだけでなく、紛争の早期政治的解決に影響を与える方法ともなる。
しかしウクライナ戦争の最初の数年間が示したように、長距離ミサイルやドローンの保有数が限られているため、こうした打撃はしばしば断続的に実施される。これらの兵器の生産拡大には時間を要する。しかしながら、ロシアとウクライナの両国が示したように、こうした弾薬は戦時生産の最優先事項であり、現在では毎日数百発が使用されている。中国と米国はいずれも、ロシアとウクライナが紛争開始時に投入した量よりも多くのミサイルを初期段階で投入するだろうことを踏まえ、太平洋地域での紛争においても同様の展開が予想される。
太平洋における長距離打撃の軍事的有用性から、ウクライナでの教訓は、日本[79]、米国、フィリピンなどの国々における部隊構造の発展にますます組み込まれている[80]。長距離打撃の実施における最近の傾向として、短距離攻撃能力を敵の国土に浸透させ、その発射プラットフォームをターゲットの近くに配置し、敵の防衛システムの内部から打撃を実行することが挙げられる。ウクライナの「スパイダーウェブ作戦」とイスラエルによるイラン防空システムへの第一波打撃(いずれも2025年6月)は、長距離襲撃と長距離打撃を組み合わせたこの種の作戦の初期の事例である。
この非連続型打撃のスタイルは、おそらく太平洋作戦にさらに適している。海洋環境は、戦略的ターゲットと作戦的ターゲットに対し複数の軸からステルス接近を可能とし、その後プラットフォームが短距離兵器や弾薬をターゲットに向けて発射できる。これらの短距離システムはドローンに限定されない。ロケットや搭乗員無しの地上や搭乗員無しの海上システムで構成される可能性もある。この作戦手法は従来の長距離打撃ミサイルやドローンに取って代わるものではないが、今後紛争時の打撃作戦においてより大きな割合を占めるようになる[81]。ウクライナとロシアにおける長距離打撃は、純粋に技術的な取組みではない。
こうした打撃には、ターゲット情報パッケージの作成に寄与する情報を収集するため、また打撃の実施や打撃の成功(あるいは失敗)の評価を支援するため、現地に人間オペレーターを配置することがしばしば必要となる。ロシアはウクライナやその他の国々と陸上の国境を接しており、人間による作戦要員(主に特殊部隊)の投入が可能であるのとは異なり、太平洋はこうした投入を行うにははるかに連続性の低い戦域である。したがって、異なる方法とより長い準備期間が必要となる。
・ 迅速な適応戦争。距離は戦争前と戦争中に異なる解決策を促す。通信、兵站、指揮・統制方法/構造における学習と適応が、太平洋戦域で最大の影響をもたらす可能性が高い。さらに、個々の国家および潜在的な用兵連合には確立された学習・適応システムが必要であるが、現存するのはその一部に過ぎない。太平洋戦域では距離の問題から教訓の共有がより困難となる可能性がある。友軍部隊は常に隣接部隊と連携できるとは限らないため、通信手段への依存度が高まる。しかし太平洋地域において、既存の通信手段が敵対者による妨害を受けないと想定することは許されない。このリスクは作戦上の学びの共有と適応の取組みを複雑化し、ウクライナで顕著に見られる迅速な学習と比較してその速度を低下させる恐れがある。
・ 奇襲。太平洋作戦における奇襲の可能性は、ウクライナ戦争よりもはるかに大きい。その理由は、膨大な距離が関与していることと、軍事力が利用する可能性のある監視の隙間が生じうる点にある。太平洋地域は、商用・軍事監視網と分析ネットワークが網の目のように張り巡らされているため、太平洋戦争時よりも厳重な監視下に置かれているとはいえ、戦術・作戦・戦略の各レベルで軍事指揮官を奇襲する巧妙な作戦手法は依然として可能である。距離は太平洋戦域における戦略的・作戦的欺瞞の機会を増大させる。
太平洋における最も可能性の高い敵対者は、欺瞞と偽装を国家・軍事態勢の一部として採用しており、西側軍事部隊による欺瞞の識別と対抗に注力するであろうことから、これには適応的な対応が求められる可能性が高い。太平洋戦争では、距離を利用して欺瞞と奇襲を成功させることが可能であることが実証された(真珠湾攻撃、ミッドウェー海戦、1944年のマリアナ諸島上陸作戦に先立つ千島列島上陸を日本軍に誤認させる連合軍のウェドロック作戦など[82])。
しかし中国とロシアが展開する現代のセンサー・ネットワークは、欺瞞をより困難にするだろう。しかし、2022年のハルキウ作戦や2024年のクルスク作戦が示すように、現代の戦場においても欺瞞と奇襲は依然として可能である。
・ リーダーシップ。太平洋地域、特に西太平洋の地理的条件は、ウクライナの地理的条件とは重要な相違点がある。習近平と中国共産党は、ウクライナ戦争から時間的優位性の活用に関する教訓を学んだと確信しているだろう。これに対し、中国は台湾に関する緊急対応計画の精緻化を進める。その中には、米国と欧州の関与を可能な限り遅らせるための注意散漫化策も含まれる。さらに、台湾や西太平洋諸国に対する行動計画も検討されるだろう。
その目的は、米国とその同盟国を地域内の意思決定の難題に縛り付けることにある。台湾は支援可能な最寄りの国から遠く離れている。中国人民解放軍(PLA)は、この島国に対するいかなる侵略においても、間違いなくこの地理的弱点を悪用するだろう。解放軍は、台湾を屈服させるには電撃作戦が最善策だと考えるかもしれないが、それが失敗した場合、焦る西側諸国を待たせるという予備計画も想定している可能性がある。中国の学者らは、米国の技術的優位性は紛争の長期化によって緩和できると考えている。
これは米国の防衛産業基盤の限界に関する現行分析を利用するものだ[83]。王(Wang)とザックハイム(Zakheim)は、この問題に関する中国の議論について次のように記している。
米国、西側諸国、およびその代理勢力はロシア軍に対して明らかな技術的優位性を有していたが、戦争の進展に伴いこの優位性を次第に失っていった…高い人的犠牲を払って戦争を長期化させることで、勝利の決定的要因が近代化のレベルから防衛産業基盤の能力容量と国防総動員へと移行する可能性がある[84]。
太平洋戦域の広大さは、あらゆる軍事部隊においてより集権化しない指揮形態を必然とする。距離が軍事部隊における通信障害(ほぼ確実に発生する)の影響を増幅させるだけでなく、部隊が展開する可能性のある環境の多様性そのものが、現地知識と現地指揮官の権限委譲(empowerment)をウクライナでの事例以上に重要にする。分散した軍事のリーダーが関与する必要のある文化・言語・政府の多様性が、このミッション・コマンドの必要性をさらに増幅させるのである。
太平洋のフィルターその2:地形、植生、天候
太平洋の地形、植生、気候条件はウクライナのものとは大きく異なる。地形はウクライナと太平洋地域の最初の大きな相違点である。ウクライナには都市、農村人口、山岳地帯と平原、海岸線と河川網が存在するが、太平洋地域はこれらをすべてより多く有するだけでなく、ウクライナのように陸のドメインが支配的ではない。太平洋地域では外洋と沿岸域が極めて重要であり、ウクライナでは見られない形で軍事作戦の遂行に不可欠である。
さらに、台湾東部やパプアニューギニア(PNG)など太平洋地域には山岳地帯が存在し、軍事作戦の潜在的な実施場所となり得る。ウクライナではこうした状況は概ね見られなかった。植生も大きく異なる。例えば、太平洋地域の多くの地域では植生被覆率が最大90%に達する一方、ウクライナでは約17%と大幅に低い[85]。例えば、台湾では国土の60%が森林で覆われ[86]、フィリピンでは63%が森林被覆率であり[87]、ソロモン諸島の森林被覆率は85%である[88]。パプアニューギニア(PNG)の国土面積の88%が天然林に覆われ[89]、全体の樹木被覆率は92%である。また、マヌス島(太平洋作戦における同盟国基地候補地でありパプアニューギニア(PNG)の一部)の植生被覆率は88%である[90]。
太平洋地域の多くの地域では、年間降水量がウクライナよりも著しく多く、湿度と気温もはるかに高い。こうした環境条件は、通信、火力、医療支援、自律型兵器(特に航空・地上システム)の使用など、軍事戦役の多くの要素に影響を及ぼすだろう。
最後に、ウクライナの冬季と泥濘期が作戦に影響を与える一方で、毎年春と秋[91]に約1か月間続く西太平洋のサイクロン・台風シーズンは、軍事作戦にさらに大きな影響を及ぼす可能性がある。日本の台風シーズンは5月から10月、台湾は5月から11月、フィリピンは6月から11月まで続く。パプアニューギニアとソロモン諸島のサイクロン・シーズンは11月から4月までである。
これらの極めて破壊的な熱帯暴風雨は、大量の民間インフラを破壊するだけでなく、軍事作戦にも重大な影響を及ぼし得る。例えば第二次世界大戦中、ハルゼー提督の第3艦隊は西太平洋作戦中に2つの台風(1944年12月の「コブラ」と1945年6月の「バイパー」)に見舞われ、艦船が沈没し、数十隻が損傷を受け、航空作戦にも影響が生じた[92]。ベトナム戦争においても気象は軍事作戦に悪影響を及ぼした。マンゲシュ・サワント(Mangesh Sawant)が2023年の記事『気象:戦における唯一の定数(Weather: The Only Constant in Warfare)』で以下のように述べている。
ベトナムの気象条件はベトナム戦争を長期化させ、ベトコンの持久戦戦略に寄与した。気象は米空軍の作戦行動やベトナム国内の重要なターゲットへの航空打撃(air strikes)を著しく阻害し、その問題はリンドン・B・ジョンソン(Lyndon B. Johnson)大統領を含む米国政府の最高レベルにまで達した。
さらに、天候が偵察活動や地対空ミサイル(SAM)基地の監視を妨げることも多かった。米陸軍は通常、装備を8年ごとに更新していたが、ベトナム戦争中はこれが2年に短縮された[93]。
最後に、気候や植生、地形の違いも熱帯病による死傷者数に影響を及ぼす。ウクライナでの戦争から得られた負傷者救護(および医療作戦における「命の鎖(live chain)」と呼ばれるもの)の教訓は、太平洋地域における医療搬送と治療体制に活かされるだろうが、重要な相違点を一つ指摘しておく必要がある。
歴史的経験に基づけば、地形、植生、気象を含む様々な環境要因により、太平洋戦域における疾病発生率は欧州戦域よりも高い。この点に関する最良のデータ源は米国陸軍である。同軍は1941年から1945年にかけて両戦域に部隊の大規模な集中を維持し、正確な記録を残した数少ない軍事組織の一つである。
第二次世界大戦における米陸軍の医療統計によれば、南西太平洋戦線の兵士の疾病による死亡率は欧州戦線の兵士の2倍であった[94]。南西太平洋戦線ではマラリアや伝染性肝炎を含む疾病の発生率が最も高く、赤痢および下痢性疾患の診断数は欧州戦線の約400%に達した[95]。
ウクライナにおける主要な教訓を踏まえ、この現実を考察するにあたり、地形、植生、天候の要素が以下に最も大きな影響を及ぼす。
・ 人。第二次世界大戦中の欧州戦線と太平洋戦線における疾病発生率の格差を考慮すると、現代の太平洋戦線作戦ではウクライナでの作戦と比較して、感染および疾病リスクが高まる可能性が高い。これは予防的健康対策の重要性を浮き彫りにしている。さらに、地形の特徴や島々間の距離、作戦区域間の距離を考慮すると、負傷者搬送はウクライナでの状況よりも複雑で時間がかかる可能性がある。
・ メッシュ化された商用・軍事用センサー・ネットワーク。ウクライナ戦場における最重要センサー形態の一つが搭乗員無しの航空システムである。東部戦線の低木被覆に支えられ、これらは遍在する存在となった。しかし、太平洋地域のほとんどの地域における高い植生被覆は、ドローンセンサーの性能を低下させるだろう。
2024年の研究が明らかにしたように、「葉被覆率(露出した葉面積の垂直投影が土壌表面を覆う面積として定義される)は、植生環境における無人航空機(UAV)ベースの物体検出において主要な制約要因となる」[96]。要するに、樹木や葉の被覆はドローンの性能とセンサーの透過性を低下させる。これは決して新しい軍事的課題ではない。西太平洋の密生した植生環境は、第二次世界大戦、マレー半島非常事態、ベトナム戦争において、監視と偵察に重大な課題を突きつけてきた。
レーダー、ライダー、合成開口レーダーなどの技術は植生を透過して観測する能力容量を向上させており、これらのセンサーは太平洋戦域に配備される搭乗員無し(および搭乗員有り)監視システムにおいて、いずれも不可欠な搭載機器となる。最近の進歩としては、ドローン・スウォームを用いた空中光学断層撮影技術が挙げられる。
単一区域に複数のドローンを投入し、植生下の状況を多方向からスキャンして立体像を構築する手法である[97]。ドローン向け合成開口レーダーの小型化技術が進展したことで、こうしたアプローチが可能となった[98]。ターゲティングの新アルゴリズム[99]と組み合わせることで、太平洋戦域の広範な地域において、植生を貫通する軍事の能力容量を大幅に向上させる潜在性を有する。
・ 偏在する搭乗員無しのシステム。太平洋地域のほとんどの地域でほぼ一年中見られる気候の特徴である降水、雲による視界不良、高温は、ドローンの運用に影響を与える[100]。雨はドローンの電子機器に水害をもたらし、故障の原因となる可能性がある。また強風はドローンをコースから外れさせ、精密な航行を維持することを困難にする。
悪天候はウクライナにおけるほとんどの種類の搭乗員無しの航空機の運用に悪影響を及ぼすことが判明しており[101]、この影響は太平洋地域におけるドローンの運用にはさらに大きな影響を与えると予想される。同時に、太平洋における平均気温の上昇は、ドローンのバッテリー・エネルギーを低下させ、劣化を加速させる可能性が高い。これにより、欧州ネットワークに比べて太平洋でははるかに疎らになる可能性が高い兵站ネットワークにおいて、より頻繁な補給が必要となるだろう。
太平洋地域のもう一つの特徴である高湿度も、電子戦の実施を含むドローン運用に必要な通信を妨げる可能性がある。この信号減衰は降雨時における衛星通信でも発生し、通信リンクの強度と品質を低下させる。長距離が常態化している地域において、これはウクライナとの主要な差異であり、対処すべき課題である。この点と距離の制約が相まって、自律システム(特に航空システム)の集中展開と飽和作戦はウクライナよりも困難となるだろう。
・ より安価で入手可能な精密長距離打撃。太平洋地域では短距離ドローンの性能が気候条件によって低下する可能性があり、また距離が遠くなることによる影響も考慮すると、軍事機関は長距離・短距離の搭乗員有の打撃システムと搭乗員無しの打撃システムを異なる組み合わせで必要とするだろう。
ウクライナは現在年間400万機のドローンを生産しているが、そのうち長距離型はわずか3万機程度である[102]。この短距離型と長距離型の比率では太平洋地域では通用しない。航空機型であれ海上型であれ、はるかに高い割合の長距離ドローンが必要となるだろう。これは、太平洋地域での活動を見込む者にとって、過去3年間にウクライナが採用してきたものとは異なる製造上の優先順位と戦略が必要となることを意味する。
・ 適応戦争。太平洋戦域の異なる気象条件、植生、地形は、ウクライナとは異なる解決策を太平洋における作戦上の問題に導くだろう。気象、植生、地形の影響を回避するだけでなく、その利点を活用する能力(特に友軍の作戦の隠蔽や欺瞞のため)は、各ドメインにおける作戦コンセプトへの適応を大きく異ならせる可能性がある。これは、太平洋戦域での作戦実施を想定する軍事機関における通信、兵站、技術、訓練に影響を与えるだろう。
・ 奇襲。地理、気象、植生はいずれも太平洋において戦術的、さらには作戦レベルの奇襲に大きな機会を提供する。ウクライナでも同様の機会は存在し(そして戦争を通じて確実に活用されてきた)、太平洋における潜在的可能性ははるかに広範である。しかしながら、核心的な問題は、太平洋の孤立した地域における戦術的奇襲の達成が、想定される紛争における主要な戦役に実際に影響を与えるかどうかである。こうした戦役には、認知戦、長距離打撃、作戦テンポの創出、戦役兵站(campaign logistics)および人員増強などが含まれる可能性がある。
太平洋のフィルターその3:政治的・文化的環境
西太平洋地域の政治・文化的環境は、欧州とは大きく異なる。EUに相当する組織は存在せず、アジア版NATOも存在しない(今後も生まれる見込みは薄い)。中国共産党の戦略には、自国の利益に悪影響を及ぼすと見なすあらゆる地域的な多国間協定や同盟関係を腐食させる取組みが含まれている。アジア諸国間の軍事・経済関係、および域外諸国との関係は、東欧における関係とは大きく異なる。これはウクライナから戦略的教訓を導き出す際に重要な考慮事項である。なぜなら、異なる同盟構造は、太平洋地域における抑止方法や戦闘手法、戦闘支援の在り方に影響を与えるからである。
ウクライナから得られた重要な教訓とこの要素を比較検討した結果、以下の洞察が得られる。
・ 量と動員。ウクライナと多くの太平洋諸国では脅威の認識が異なる。この認識の相違は、ウクライナのように戦争状態にあり存亡の危機に瀕している国にとって望ましい、あるいは可能なものとは異なる、部隊構造、即応性構造、政府の国家安全保障政策をもたらす。したがって、太平洋諸国における脅威認識の違いは、国防のための国家資源の配分にも差異を生じさせる。
しかしながら、この認識は各国が少なくとも国民・産業・思想の国家的動員計画策定への投資を妨げるべきではない。こうした措置は国家の抑止戦略に貢献するだけでなく、太平洋で戦争が勃発し、限定的あるいは全面的な動員が必要となった場合に、冷たいスタートよりもわずかに良い状態を提供すべきである。
・ 認知戦争と社会間紛争。ロシアは2022年2月の全面侵攻開始以前から、広範な誤情報戦役(misinformation campaign)を展開してきた。これらの作戦は複数のソーシャル・メディア・プラットフォームを通じて偽情報を拡散し、ウクライナ政府(及び主権)の正当性と、それに対する西側諸国の支援を弱体化させることにある。
プーチンの戦略は、ソマリアやアフガニスタン、イラクなどで見られるように、西側の政治家や市民には長期の戦争への忍耐力が欠けているという前提を包含している。この評価には一定の根拠がある。したがって、2022年後半以降のプーチンの戦略は、西側が最終的にウクライナへの関心を失うという考えに基づいている。
習近平と中国共産党は、台湾に対するいかなる行動にも同様の状況が当てはまると判断している可能性が高い。中国軍は迅速かつ決定的な勝利を追求するかもしれないが、中国指導部はより長期的な戦略に回帰せざるを得ないかもしれない。米国、欧州、日本などの政治家や市民が、将来中国との戦争を遂行する見通しに耐えられなくなることを期待してのことだ。
欧州と太平洋地域には多様な民族・言語集団が存在し、認知戦への異なるアプローチが求められる。にもかかわらず、ロシアは戦略的影響力と認知戦を用いて、ウクライナの外国支援者間の関係を断ち切り、不和を煽ろうとしている[103]。
2022年以降、ロシアはウクライナ政府の信用失墜に焦点を当て、欧州とグローバル・サウスにおける戦争に関する国際的なナラティブ(narrative)形成に注力する取組みを拡大してきた[104]。オダルチェンコ(Odarchenko)とダヴリカノワ(Davlikanova)によれば、ターゲットとする国に影響を与えるため、ロシアは以下の手段を講じている。
欧州と北米の経済問題を強調すると同時に、アイデンティティ政治や少数派の権利といった問題に対する西側諸国における国民の不満の高まりを主張しようとした。一方、ロシアは伝統的な家族価値観の砦としての立場を打ち出している[105]。
中国はすでに太平洋地域で活発に活動し、関係や伝統的な安全保障同盟を崩そうとしている。この動きは欧州では同規模で起きていない。国際戦略研究所の研究が以下のように指摘する。
中国は偽情報作戦(disinformation operations)を用いて政治リーダーの信用を傷つけ、台湾が法的な独立を宣言することを支持する可能性のある台湾有権者を抑止している。フィリピンでは、中国は自国が地域における積極的な役割を担う存在であるというナラティブ(narrative)を押し進め、米国の指導部への疑念を煽ることで米比関係に亀裂を生じさせようとしている[106]。
中国はまた、クック諸島などの小国にもその取組みに重点を置き、影響力を拡大するとともに、これらの太平洋諸国の伝統的な関係や米国・オーストラリアに対する見解を転換させ、中国にとってより有利な姿勢へと導こうとしている[107]。太平洋地域で紛争が発生すれば、こうした中国の取組みは拡大するだろう。これは過去3年間にロシアが拡大してきた戦略的影響力作戦と類似している。
・ 同盟。ロシアは欧州に同盟国や支持国が少ない一方、中国は太平洋を跨いで関係網を構築しており、これはロシアが欧州で成し得なかった手法である。中国は高官訪問、演習、警察協力、プロフェッショナルな軍事教育活動を通じて軍事的連携を構築し、経済的結びつきを強化している[108]。
こうした連携構築に加え、これは太平洋地域における米国の同盟・安全保障体制を解体する戦略の一環でもある。ロシアはウクライナの支持国(米国を除く可能性はあるが)に対してはこれを達成できていない。トランプ大統領就任以降の展開はこうした取組みを加速させている。戦略国際問題研究所(CSIS)の最近の報告書が以下のように指摘する。
中国はまた、米国が同地域における信頼性を失っていると見なす不確実な時期を利用している可能性が高い。これにより中小国に対し、中国が同地域に及ぼし得る経済的・軍事的力を改めて認識させている。米国が海外開発援助をほぼ全面的に撤回または凍結し、トランプ政権が世界的な外交拠点縮小を検討する中、これは「関心を失った信頼できない世界大国」というナラティブ(narrative)を直接助長する結果となっている[109]。
2025年のランド研究所報告書は、「中国共産党は米国の同盟関係を脆弱なターゲットと見なしている」と、より率直に述べている[110]。
ウクライナは再び、連合軍の用兵において相互運用性が重要であることを示した。共通のドクトリン、訓練、参謀プロセス、そして共有された学習・適応システムは、同盟や軍事連合における共同作業の中核要素である。
この相互運用性を実現するシステムはNATOの不可欠な要素であるが、太平洋地域におけるこれらのシステムは、米国の同盟網および地域の安全保障パートナーシップによって支えられる。オーストラリア、米国、日本、フィリピンは過去数年間で相互運用性に向けて顕著な進展を遂げてきた(共同訓練・個別訓練および大規模な統合演習を通じて)。一方、台湾は長年にわたり外国パートナーとの大規模な統合演習に参加できていない。
この状況がすぐに変わる可能性は低いため、台湾は非同盟間の相互運用性枠組みに依存し、2022年以降のウクライナとロシアの経験から教訓を引き出さねばならない。これにより学習はより困難になるが、克服不可能な課題ではない。
・ 適応戦争。最近、戦略国際問題研究所(CSIS)の複数の専門家が、ウクライナでの戦争に関する中国の文献を調査した。その結果は、当然ながら、中国がこの戦争を非常に注意深く研究していることを示している。国家レベルから戦術的作戦に至るまで、用兵のあらゆる側面が、中国の様々な学者や軍事理論家によって検証されている[111]。
彼らの調査結果の中で、おそらく最も重要な教訓は、西側諸国が戦争に関する意思決定をどのように行うかということだろう。中国のリーダーは、米国大統領(当時はバイデン)、米国の国家安全保障機関、そしてNATO同盟がウクライナでの戦争に関する政策決定をどのように行うかを注視してきたはずだ。中国共産党は、ロシアの政策と行動が西側の戦争に関する意思決定にどのように影響を与えたかという複雑な仕組みを精査しているだろう。
中国共産党は、政治家が意思決定を行う過程だけでなく、欧米メディアがそうした意思決定にどのように影響を与えたり反応したりするか、また市民が政府の決定にどのように影響を与えるかについても観察してきた。これらの各グループは、中国が現在影響を与えようとしている変数、あるいは将来の緊急事態において影響を与えたいと考える可能性のある変数として認識されるだろう。
しかしながら、確立されたNATO同盟が存在しウクライナを支援してきた欧州とは異なり、太平洋地域には包括的な同盟枠組みが存在しない。太平洋における同盟枠組みは、米国と日本、フィリピン、オーストラリア、ニュージーランドとの同盟関係、および米国とその他多くの国々との安全保障パートナーシップに基づいている。
これはNATOの正式な同盟構造と比較すると弱点と言えるかもしれないが、平時・戦時を問わず合意に基づく意思決定に依存しない、より柔軟な枠組みでもある。中国が米国の太平洋における関係性の脆弱性を指摘しているにもかかわらず、太平洋枠組みに内在する高い柔軟性は、将来の太平洋紛争において優位性となり得る。
・ リーダーシップ。ウクライナから得られたリーダーシップの教訓の核心は、普遍的に適用可能である。太平洋地域にとってウクライナから得られる最も適用可能な教訓は、国家的リーダーが自国を結束させ、外部からの支持を得る重要性だろう。ゼレンスキー大統領はこの3年半でこれを成し遂げた。
中国のリーダーは、台湾の大統領がそのような影響力を生み出すのをどう防ぐか考えを巡らせているだろう。中国共産党と人民解放軍は、台湾に対する西側諸国の軍事支援やその他の支援を防ぐ方法を検討している。
政治指導部は重要だが、下位層のリーダーシップも同様に重要である。ロシアが認識したように、中国もまた中国共産党の軍事部門におけるリーダーシップに弱点があると認識している。習近平国家主席は過去数年にわたり、人民解放軍(PLA)の腐敗を一掃し政治的信頼性を高めるため、上級将校に対する粛清を継続的に実施している[112]。
国家レベルでの有能なリーダーシップは、用兵の能力容量(warfighting capacity)と戦略的抑止体制の不可欠な要素である。しかし同様に、あらゆるレベルでの効果的な軍事のリーダーシップも重要だ。ウクライナから得られたこの教訓は、東欧と同様に太平洋地域にも当てはまる。
上述した中国の弱点を踏まえると、これらの要素はロシア軍と同様に中国軍にも存在するターゲット可能な脆弱性を構成する。こうしたターゲット可能な脆弱性は、米国、オーストラリア及び地域内の同盟国における軍事部隊の計画策定と訓練の焦点とすべきである。
太平洋のフィルターその4:潜在的な敵対者の能力
ロシアはウクライナに対して存亡の危機をもたらす脅威であり、欧州の他の地域に対しても極めて深刻な脅威を呈しているが、その軍事の能力容量と規模は核兵器の保有量を除けばほぼあらゆる面で中国を下回る。中国は世界最大の海軍を有し、あらゆるドメインで重要な能力を備えている。西太平洋においては、自国を拠点とした戦役を闘うことになるだろう。
北朝鮮(ウクライナ戦争における共同交戦国)とロシアは太平洋地域に重要な存在感を示している。ロシアと中国は太平洋で複数回の統合戦略爆撃機哨戒を実施し、2024年には太平洋での統合海軍演習も実施している。これは欧州諸国が直面する敵対者よりも複雑で危険かつ入り組んだ構図である。この要素をウクライナから得られた主要な教訓と照らし合わせて考察すると、以下の洞察が得られる。
・ 量と動員。中国と北朝鮮はいずれも大規模な常備軍を有しており、これは地域の多くの国々とは対照的である。中国はまた、長期化した紛争が発生した場合に兵員を動員できる人口がロシアよりもはるかに多く、防衛産業部門へ転用可能な労働力もより豊富である。
中国は巨大な製造の能力容量と先進的な防衛産業を有しており、戦争時にはさらに拡大が可能である。過去20年間の人民解放軍の大規模な拡大に牽引され、中国の防衛製造の能力容量はロシアを大幅に上回り、戦争発生時の戦力再建においてはるかに高い出発点を示している[113]。この製造基盤はサイバー兵器の生産や、将来の用兵を支援する数多くのアルゴリズム開発にも及んでいる[114]。
少なくとも当初は、これらの国々と対立する側は、数的な優位性以外の追加的な優位性の源泉を見出す必要がある。欧州は、中国軍よりも規模が小さく潜在的に能力が劣るロシア軍に対処するため、防衛支出と防衛産業の能力容量の拡大を約束している。
したがって、太平洋地域の西側志向の国々、特に日本、韓国、オーストラリアは、太平洋戦域における中国によるより深刻な軍事的侵略を抑止しようとするならば、支出と生産を大幅に増やす必要があるだろう。
・ 認知戦争と社会間紛争。ロシアも中国も戦略目標達成のため情報作戦(information operations)を重視している。中国は太平洋作戦において、ロシアがウクライナに対して用いるのと同様の手法を採用する可能性が高い。海軍分析センター報告書が以下のように指摘する。
ロシアと中国には、自国の主張を宣伝するのに役立つ国営メディア企業がある…最近、北京とモスクワの両政府は、消費者が国営メディアをプロパガンダとして退ける可能性のある国々で、自らのメッセージを押し通すための新たな戦術を試みている。両国が採用した戦術の一つは、中国やロシア在住の西洋人ブロガー(動画ブロガー)を活用することである[115]。
しかしながら、戦略的メッセージの拡散と認知戦の遂行において、中国の手法とそのターゲットに対する理解はロシアとは異なる。外交政策研究所の報告書が以下のように指摘する。
ロシアの情報作戦(information operations)は、米国文化、地域的差異、政治的派閥に対する理解度が全体的に高く、その結果、ターゲットの聴衆に響きやすい効果的なコンテンツが生み出されている。現時点では、中国はロシアほど米国文化への精通度や深い理解を持っていないようで、これが彼らの戦役の効果をさらに阻害している。
さらに、中国はロシアが支配する寡頭メディアネットワークと同様の形態を保有しておらず、代わりに国営メディア機関を利用することを好む。しかし中国は、地域および地方のメディア機関を活用して自らのメッセージを発信しようとする取組みを通じて、このアプローチを進化させつつある[116]。こうしたアプローチと理解の相違を分析することで、中国の認知戦および戦略的影響力戦役におけるターゲット可能な脆弱性が明らかになる可能性がある。
・ 人。中国はロシアと同様、軍人の質に課題を抱えている。しかし中国国家主席はこうした問題を公に認識している。習近平主席は第20回党大会演説で、人民解放軍の人材育成には「緊迫感(sense of urgency)」が必要だと述べた[117]。柔軟な思考ができる(そして許される)軍事リーダーの育成は、依然として制度的な問題である。
この問題は、コーベット(Corbett)、シュウ(Xiu)、シンガー(Singer)による優れた論文で検討されており、彼らは次のように説明している。
近年、より質が高く教育水準の高い志願兵の募集で一定の成果を上げているにもかかわらず、中国人民解放軍(PLA)は徴兵制からの脱却に失敗している。現在、約66万人の2年間の徴兵兵士を必要としており、その多くは高校教育すら一部受けていない。人民解放軍(PLA)は兵士への政治教育を重視しており、中国の徴兵兵士は幼い頃から台湾を「解放」する必要性を信じ込むように育てられてきた。それでもなお、自軍と少なくとも幾分似た徴兵制軍隊がこれほど不振であることに、人民解放軍は確かに懸念を抱きながら注視している。そして、より多くの、できればより質の高い志願兵を募集するキャンペーン(campaign)をさらに強化するだろう[118]。
ウクライナから中国軍が得る教訓は、軍事訓練と教育の質を高めるため、人民解放軍の改革を加速させる必要性である。中国人民解放軍と交戦する可能性のある西側軍隊が得る教訓は、中国の質的不足が利用可能な弱点となり得るということだ。
しかしもう一つの教訓は、ロシアと同様に中国もおそらく人員の質的不足を量で補おうとするだろうということだ。実際、ロシア以上に中国は、直面しうるいかなる西側の敵対者と比べても、戦場や産業上の課題に投入できるほぼ無尽蔵の人材供給源を有している。したがって、ウクライナから得られる人員の量と質に関する教訓は、太平洋戦域にとって極めて重要な意味を持つ。
・ メッシュ化された商用・軍事用センサー・ネットワーク。中国は少なくとも第一列島線まで、おそらくそれをはるかに超える範囲に、極めて高度で強固な監視ネットワークを構築している。これは、ハワイやオーストラリアからさらに前進しようとするいかなる取組みも、戦時シナリオにおいては検知・監視され、攻撃を受ける可能性があることを意味する。このセンサー・ネットワークには、技術的に高度な宇宙・海洋システムに加え、中国主要なスパイ機関である国家安全部の活動も含まれる。同部は現在、おそらく世界最大のインテリジェンス機関である。
この太平洋監視システムは、太平洋諸島における警察訓練プログラムの活動と外交官の活動によって補完されている[119]。これは少なくともロシアが欧州に展開する監視ネットワークと同等、おそらくそれ以上の堅牢性を有する監視網である。この状況は軍事作戦上の機密保持を維持する上で多くの課題を提起している。
・ より安価で入手可能な精密長距離打撃。2025年6月のウクライナによるロシア爆撃機基地への打撃は、戦略的軍事のターゲットと民間のターゲットに対する縦深打撃の能力容量がウクライナとロシア双方で拡大していることを明確に示した。ロシアと同様、中国も高度な長距離打撃兵器を保有している。戦略予算分析センター(CSBA)の報告書が以下のように指摘する。
過去20年間、中国とロシアは米国とその同盟国の優れた従来型の能力に対抗するため、先進的な軍事システムに多額の投資を行ってきた。両国が構築するいわゆる「接近阻止・領域拒否(A2/AD)」システム—統合防空システム(IADS)、長距離精密打撃プラットフォーム、その他の先進兵器の複合体—は、自国周辺地域への軍事力投射を試みる米国や他国に対し、そのコストを上昇させるようにデザインしている[120]。
ロシアと同様に、中国も戦略兵器の一部として、また潜在的な地域的な緊急事態に備えて核兵器を維持している。中国の核兵器保有数はロシアよりはるかに少ないが、増加傾向にある。さらに、太平洋地域では北朝鮮とロシアの両方が、戦略的打撃任務と作戦的打撃任務のために核弾頭を保有している。
中国は信頼できる戦略的抑止力を提供できる十分な核弾頭(増強中の備蓄)を保有している。また、台湾、日本列島、およびそれ以上のターゲットを攻撃可能な地上発射型、潜水艦発射型、航空機発射型の弾道ミサイル及び巡航ミサイルを合わせて1,250基以上開発している[121]。
中国の従来型のミサイル兵器は相当な規模である[122]。しかし、中国のミサイルはロシアが欧州で懸念する範囲よりもはるかに広大な地球表面で運用する必要がある。この状況は部隊を分散する機会に有利に働く一方、重要軍事施設や民間インフラのターゲットに対する高度なミサイル防衛能力の必要性を一層強めている。
中国の長距離打撃の能力容量は、ターゲティングを支援する宇宙ベースの様々なセンサーの拡充と、極めて高い対衛星能力によって強化されている[123]。またウクライナは、ロシアが(現時点では)攻撃対象としていない同盟国の衛星コンステレーションからのデータを主に活用しているため、受動的な宇宙防衛の能力容量を有している。太平洋地域では状況が異なる。
中国の高度かつ拡大を続ける対宇宙能力は、地上ベースの宇宙研究開発機関とインフラからなる大規模なエコシステムに支えられており、太平洋戦域における紛争ではほぼ確実に復元性を発揮し、米国とその同盟国に対して積極的に行使されるだろう[124]。中国は紛争で破壊された衛星を補充する能力容量も有している。2024年9月までの1年間で、中国は200基の衛星を軌道上に投入した[125]。
長距離打撃の準備と実施における人的要素は、ウクライナと太平洋戦域の重要な相違点である。
ロシアとウクライナは陸上の国境を接しており[126]、これが潜入を容易にする一方、民族的・言語的特性が人間の工作員の偽装工作を維持するのに役立つ。しかし、太平洋地域における中国とのいかなる紛争においても、このような状況は存在しない。
西側諸国の工作員が戦略的打撃作戦の情報収集や実行支援のために中国本土に潜入する必要が生じた場合、より深いレベルの文化的・民族的・言語的準備が求められる。実際、こうした紛争において中国系と見られない工作員は、早期に正体が露見する可能性が高い。
さらに困難を増しているのは、中国政権が国内の情報環境に対して極めて厳格な統制を行使している点である。これには渡航制限、生体認証チェックポイント、至る所に設置された高度な監視カメラ・ネットワーク、そして中国国家安全部が実施する非常に積極的な対インテリジェンス作戦が含まれる。
こうした措置により、将来の太平洋地域におけるいかなる緊急事態においても、中国国内での特殊作戦活動の実施は、ウクライナがロシア国内で実施した活動よりもはるかに困難になる可能性が高い[127]。
・ 同盟。ウクライナはロシアに対する防衛戦争において、軍事・経済・インテリジェンス・訓練支援など多岐にわたる支援パッケージを得るため、NATOだけでなく個別国家との安全保障パートナーシップに依存してきた。太平洋地域におけるほぼあらゆる想定可能な軍事シナリオにおいて、友軍部隊は中国・ロシア・北朝鮮の侵略を撃退するため、同盟ネットワークを必要とするだろう。
これには国内の飛行場、港湾その他のインフラへのアクセスが必要となり、また、いかなる軍事的緊急事態が発生するよりずっと前に、軍隊地位協定の締結ならびに訓練及び軍事演習の実施が求められる。しかし、ダニエル・バイマン(Daniel Byman)が執筆した2025年5月の報告書は次のように指摘している。
米国の作戦計画の大半は、同盟国やパートナー国に重要な役割を割り当てており、基地提供、アクセス権、事前展開、兵站、連合軍作戦を規定している。同盟国の領土と住民の保護も、多くのシナリオにおいて米国の重要な任務となるだろう。[しかし]同盟国が口先では歓迎されても、実際には後回しにされることが少なくない[128]。
太平洋戦域では、米国とその太平洋地域の同盟国に対する三つの主要な軍事的脅威——ロシア、中国、北朝鮮——の相互作用と潜在的な連携も生じている。実際、2025年米国防インテリジェンス局世界脅威評価報告書は「北京、モスクワ、テヘラン、平壌のリーダーたちは、米国とその同盟国の影響力を弱体化させる動きの中で、自国間の連携を強化するだろう」と指摘している[129]。
北朝鮮がロシアと共にウクライナ軍と闘うために部隊を派遣したかもしれないが、全体としては小規模な関与に過ぎない。太平洋戦域における中国・ロシア・北朝鮮の協力関係は、はるかに重要な意味を持つ可能性がある。中国とロシアは既に統合海上演習[130]を実施しており、過去1年間にも複数の統合爆撃機哨戒飛行を実施している[131]。
中国の軍事の能力容量の拡大と、2025年5月にプーチンと習近平が合意した中露関係の発展を踏まえると、太平洋における中露共同軍事作戦の遂行能力は著しく強化されている。
ウクライナでの戦争と太平洋地域における潜在的な紛争との最も根本的な相違点の一つは、ロシアと中国の経済の能力容量および潜在力の格差である。ロシアの経済規模はイタリアと同程度の大規模なものだが、中国は今や世界第2位の経済大国となっている。
中国はまた、世界各国とより広範な経済関係を築いており、将来の米国との紛争において、貿易相手国に中立を保たせ、あるいは支持さえさせる経済的影響力を有している。
最後に、中国の生産の能力容量はロシアや米国よりもはるかに大きい。過去3年間が示すように、中国はロシアとの両用物品貿易を拡大し、エネルギー製品の取引を強化し[132]、さらに北朝鮮と共に21世紀の「権威主義国家の武器庫」の基盤を築く能力容量と意思を実証してきた。
この枠組みにおけるウクライナと太平洋地域の決定的な差異は、ロシアが既に産業基盤を動員しているのに対し、中国はそうしていない点にある。中国が既に優れた研究・開発・製造能力を動員することを選択した場合、現在存在するものよりもさらに強大な産業同盟を権威主義国家間で形成することになるだろう。
・ 適応戦争。中国が紛争においてロシアが2022年に示したような緩慢な学習・適応を開始する可能性は低い。中国はフォークランド紛争以来、現代戦争の積極的な学習者であり、現在進行中の軍事変革の多くは1991年の湾岸戦争の観察に端を発している[133]。チャールズ・フーパー(Charles Hooper)は以下のように述べている。
中国人民解放軍は現代戦、特に米国の戦争手法を注意深く綿密に研究している。彼らは公開情報だけでなく、非常に積極的なインテリジェンスの取組みによって得られるあらゆる情報を貪欲に収集している[134]。
中国は他国の戦争を研究し学ぶ能力容量を発展させてきた。これは一部、必要性に迫られた結果である。中国は1979年のベトナム侵攻という惨事以来、大規模な戦争に関与していない。この戦争における人民解放軍の不十分なパフォーマンスを、中国のリーダーである鄧小平は、中国軍の近代化を支持する人民解放軍の指導部の抵抗を克服するために利用した。
しかし中国はその後、他国の戦争研究を基に人民解放軍(PLA)の変革を進めてきた。ウクライナにおける最近の従来型の戦争(conventional war)は、中国が研究してきた他の戦争と同様、数多くの教訓を提供している。中国軍にとって再確認された教訓の一つは、航空・陸上・海上・ロケット・宇宙・情報活動の統合強化の必要性である。
統合戦域司令部の発展と、中国人民解放軍ロケット軍およびその宇宙・情報・サイバー活動における指揮関係の精緻化は、この分野における彼らの学習の成果を象徴している[135]。
しかしウクライナは、中国の学習の取組みにおける単なる一つのデータ・ポイントに過ぎない。進行中の軍事変革プログラムの多くは2022年よりずっと前から始まっていた。ウクライナは中国にいくつかの教訓を与える一方で、進行中のプログラムの正当性を裏付ける証拠も提供している。
数十年にわたり、中国人は学習と適応の文化を育んできた。この文化は、いかなる紛争が発生するはるか以前から実践されてきた能力である。この文化はあらゆる戦争において彼らに有利に働くであろう。そしてウクライナにおける過去3年半で急速化した適応のペースは、太平洋戦域においてはさらに加速する可能性が高い。
・ 奇襲。技術的ブレークスルーは、太平洋における中国がウクライナにおけるロシアよりも大きな能力容量の奇襲をもたらす可能性のある分野の一つである。中国はロシア(あるいは世界の他のいかなる権威主義国家よりも)はるかに広範かつ高度な研究開発の能力容量を有しており、太平洋におけるいかなる紛争の前段階および紛争中に、この能力を活用するだろう。
太平洋地域においても政治的な奇襲の可能性が存在する。中国による台湾占領の戦役が失敗した場合、中国共産党の指導部交代が起こりうる。これにより、中国の国家安全保障目標に関する理解が一時的に混乱する可能性がある。このような状況は、中国と太平洋地域の他国との関係において誤算が生じる余地を増大させるだろう。
・ リーダーシップ。中国人民解放軍(PLA)は、将来の戦争における「中核」となる下士官の人事改革に注力している。習近平主席は2022年7月、人民解放軍兵士の管理に関する一連の新たな規則を承認し、公布し、下士官の募集、訓練、昇進、福利厚生、復員の取組みを改善した。中国軍が自ら認める弱点としては、指揮とリーダーシップ、戦闘経験、現代戦争を闘うことと勝利すること、プロフェッショナルな軍事教育などが挙げられる[136]。
ウクライナから正しい教訓を学ぶ
本報告書のこの節では、ウクライナでの戦争から得られた教訓を、世界の様々な戦域における有用性という観点から分析する方法を考察してきた。特に太平洋戦域に焦点を当てたものの、この検討を通じて、世界の異なる地域の国や軍事機関がウクライナから適切な教訓を学ぶために、様々な分析的「フィルター」を適用する方法が示された。後続の分析製品におけるフィルタリングのレベルは、本稿で実施した内容よりもより具体的である可能性がある。これには、ウクライナの教訓を翻訳し、個々の国における特定の軍種への適用性を確保することが含まれるかもしれない。
III. 何をなすべきか?
ウクライナの教訓を太平洋地域に最適化する
本稿はウクライナでの戦争から得られた主要な教訓の探求から始まった。重要な注意点として、これらの教訓は公開情報のみを用いて導き出されたものである。また、戦争が継続する中でこれらの教訓は進化し、新たな教訓が出現し、各教訓の相対的な重要性は変化する可能性がある点も強調すべきである。
安全保障環境の変化のペースは、いかなる軍事機関や政府も、この戦争から最終的かつ最も確かな教訓を導き出すために何年も待つ余裕がないほど速い。彼らは、今まさに必要な洞察を見出すために、迅速かつ適切な判断をもって行動しなければならない。
本論文の第II節では、翻訳演習を実施し、一連のフィルターを適用することで、太平洋戦域における軍事・国家安全保障問題に関してウクライナから得られる最も関連性の高い洞察を特定した。
その節が指摘するように、ウクライナから得られる教訓の一部は太平洋地域に直接関連し、ほとんど、あるいは全く修正を加えずに適用できる可能性がある。しかし、他の教訓については、太平洋地域での適用に際し、相当な分析とさらなる発展が必要となるかもしれない。最終的な問いは「何をすべきか?」である。
権威主義的な学習・適応コミュニティは、政治的・戦略的・戦場における教訓を共有している。これにより適応戦争が推進されており、西側諸国は緊急に対応せねばならない。本報告書は、直ちに対応すべき五つの行動を提言する。これらの行動は、太平洋地域で中国・北朝鮮・ロシアと競争し、場合によっては戦闘を交える国々が、より優れた戦略的抑止力と強化された国家の用兵能力(warfighting capabilities)を構築する上で寄与するであろう。
提言1:謙虚さ―他者から学べることを受け入れる。
上級の政治・軍事リーダーは、ウクライナでの戦争から得られる教訓の広範さ—政治レベルから戦術レベルに至るまで—を認識しなければならない。
これらの教訓には、政治的、軍事的、経済的そして認知戦に関する教訓が含まれており、現代戦争を理解する出発点となる。同時に、政治・軍事リーダーはウクライナから得られる教訓に謙虚に耳を傾ける必要がある一方で、ウクライナの教訓のすべてが太平洋戦域に適用可能とは限らない点も認識すべきである。ウクライナ戦争から得られた洞察、および東欧における過去3年半にわたる戦争によって明らかになった戦争の傾向は、戦争の将来像として捉えられるべきではない。
むしろ、これらは将来の紛争の多くの要素を形作る教訓である。あらゆる戦争は異なる文脈を持つため、ウクライナから得られた教訓のすべてが太平洋戦域に直接適用可能であるとは限らず、全く適用できない場合もある。とはいえ、筆者が過去3年半に検証した教訓の大部分は、太平洋戦域の軍事機関や政府にとって何らかの関連性を保持している。
提言2:ウクライナとロシアがどのように学んでいるかを学ぶ
ウクライナでの戦争から得られる洞察は、太平洋地域における既存の問題解決策への洞察を提供するだけではない。この戦争は、問題解決メカニズムをいかに構築するか、あるいは「学び方を学ぶ(learn to learn)」ことでより良く適応する方法を示す。太平洋地域の政府や軍事組織は、ウクライナとロシアの軍事組織がいかに学習しているかを学ぶことに投資しなければならない。
「学び方を学ぶこと(learning how to learn)」は重要な制度的機能である。なぜならそれは、現代の学習と適応にとって最も効果的なプロセスや文化に関する新たな洞察を掘り起こすからである。過去3年間の戦争は、西洋の軍事機関が個人レベルおよび組織レベルで学習と適応の能力容量をいかに強化できるかについて、決定的な洞察を提供している。学習と適応に関する教訓には、ウクライナとロシアの防衛産業がどのように進化しているかも含めなければならない。
提言3:各軍種、各国家、同盟は、ウクライナから得た教訓を反映した独自の翻訳フィルターを構築する必要がある。
ウクライナから得られる教訓の適用可能性は、その教訓を検討する各国の戦略的展望、地理的条件、資源、政治状況によって異なる。各国の教訓適用性を評価するために必要なフィルターは、本論文第II節で提案されたものとほぼ一致するだろう—ただし太平洋を越えた地域においても同様の分析が必要となる点に留意すべきである。しかしながら、これらのフィルターが各軍種、国家、同盟に及ぼす影響は著しく異なる可能性がある。
提言4:軍事適応の三形態、すなわち平時適応、戦時移行適応、戦時適応の違いを理解すること。
軍事適応の様々な文脈における差異を理解することは重要である。なぜならウクライナの適応は戦争下で進行中だからだ。太平洋地域の適応が現在行われる場合、それは平時下で行われることになる。平時下の適応は他の形態の適応よりも資源制約が大きく、実験と分析に充てられる時間はより多く、しばしばより大きな官僚的障害に直面する。
戦時適応には実存的な必然性があり、通常より速いペースで進む。しかし、戦争で発生する事象の幅は平時を大きく上回る可能性があり、これはリーダーが拡大した戦時責任の一環として、学習と適応に一層注意を払う必要があることを意味する。
最後に、平和から戦争への移行はまた別の適応形態である。これはより短期間の、主に認知的なプロセスであり、一夜にして思考様式が劇的に変化することを伴う。メイア・フィンケル(Meir Finkel)が『軍事的機敏性(Military Agility)』で以下のように記している。
成功した移行は、通常「即応性(readiness)」という用語で包括される多くの変数に依存する。しかし平和から戦争への移行を成功させるには、認知的・精神的柔軟性といった即応性(readiness)のより「ソフトな(softer)」側面に対処しなければならない[137]。
各適応形態は独立した存在として理解されなければならず、それぞれが微妙に異なる制度的枠組みとリーダーシップ哲学を必要とする。
提言5:政治・軍事リーダーは戦略的・作戦上のリスクを承知の上で行動し、適応策を組織文化に定着させなければならない。
ウィリアムソン・マレー(Williamson Murray)とピーター・マンスール(Peter Mansoor)は、著書『軍事組織の文化(The Culture of Military Organisations)』の中で次のように述べている。
たとえ軍が実験に前向きであっても…その文化的偏見が抜本的な変革を阻むことが多い。しかし革新を受け入れ、適度なリスクテイクを許容する文化に支えられ、変革を遂げる軍事組織も存在する[138]。
政府及び軍事機関の最上位のリーダーは、ウクライナを含む他国の戦争から得られた教訓を観察し、リスクを冒し、積極的に学び、迅速に変化できる能力を個人やチームに促す組織文化を育む必要がある。この文化は、指導部がリスクや新たなアイデアに対して示す許容度を明確に表明することで可能となる。リーダーは、軍事活動の戦闘的側面と非戦闘的側面に関する教訓を、どのように観察し、収集し、共有すべきかを明確に定義し、広く周知しなければならない。
提言6:適応策は「傾向に基づく」のではなく「問題中心」のものとする。
ウクライナでの戦争からは多くの教訓が得られる。しかし、これらの教訓は将来のあらゆる紛争に適用できるテンプレートではない。本報告書の前の節で示したフィルターが示すように、ウクライナでの洞察を世界の異なる地域の他国に適用する際には、様々な要因が影響を及ぼしうる。太平洋地域におけるウクライナの教訓の適用が示唆するのは、ウクライナで使用された技術が太平洋地域で採用される可能性から生じる、一連の作戦上の問題が存在することである。
太平洋地域で発生する可能性が高いこれらの作戦上の問題は、ウクライナでの戦争において既に明らかになっている。各問題は独立しているが、多くの場合相互に関連性も生じる。例えば、問題1の解決策は他の全ての作戦上の問題の解決策に影響を与えるだろう。太平洋戦域における主要な作戦上の問題には、以下のようなものが含まれる可能性が高い。
・ 問題1:敵の戦闘空間認識能力を低下させる。見えるものは殺せる。かつては軍事組織の理想の到達目標であったが、今や軍事上の常識である。陸・空・海のドメインにおける軍事部隊の位置、司令部及び支援ネットワークの位置を敵対者が発見・特定する能力容量を低下させることは、現代の軍事作戦において極めて重要である。
これを達成するには、人的介入と技術的介入が必要となる可能性が高い。分散した作戦、高度な対偵察作戦、強化された欺瞞・対欺瞞活動といった人的介入が求められる。対宇宙能力、敵のセンサー・ネットワークを飽和させる搭乗員無しのシステムの大量投入、高度な電子戦といった技術的介入も、必要となる潜在的能力に含まれる。
・ 問題2:攻勢作戦の回復。軍事組織は、戦闘力の大部分を維持した状態で集結し、敵対者に接近する能力を必要とする。ローレンス・フリードマン(Lawrence Freedman)は最近、「問題はウクライナ軍がまともな攻勢を展開できずロシア軍が展開できることではなく、双方とも攻勢が困難であることだ。防御側がより強力なのである」と述べた[139]。現代の戦闘部隊は、目標との間の戦術的空間を横断する際に、より迅速で、より低シグネチャ(探知されにくい)、そしてより残存性の高い新たな手法を必要としている。
友軍部隊と敵対者との距離を縮めるというこの課題は、作戦上かつ戦略上の問題でもある。太平洋と大西洋の連合軍は、敵と交戦するために広大な海域を残存可能な方法で横断しなければならない。これを達成するには新たなコンセプト、技術、組織構造が必要である。核心的な問題は「絶え間ない監視下にある遮断空間を、細部まで破壊されることなく横断すること」である。
・ 問題3:ミサイルやドローンに対する防御コストの削減。これは配備された軍事部隊にとって現代的な根本的課題であり、重要インフラや主要な軍事・兵站施設を保護する国家的な問題である。過去数十年にわたり遠隔操作型、自律型、半自律型の搭乗員無しのシステム開発に巨額の投資がなされてきた一方で、それらに対抗する能力は—少なくとも初期段階では—投資が追いついていなかった。ロシア・ウクライナ戦争の開始以降、この状況は変化したものの、搭乗員無しのシステムとそれを対抗する能力との間には依然として格差が残っている。
・ 問題4:大量化と分散化の苦境への対応。商業用と軍事用センサーの連携により、軍事装備、要員、国家インフラのシグネチャをより正確かつ迅速に検知できる環境が生まれた。精密誘導ドローンや兵器と連携することで、現代の軍事部隊と重要インフラは攻撃に対してより脆弱になっている。
いかなるドメインにおいても軍事力を集中させることは高リスクとなった。また、決定的局面に向けて部隊を集中させる際に、ハードキル・ソフトキル両方の手段を駆使して部隊を防護する手段が用意されていたとしても、その存在はほぼ確実に察知されるため、奇襲を成功させることは困難である。
・ 問題5:敵支配地域及び本土への侵入。長距離打撃の成功は、敵の防空・ミサイル防衛能力領域への侵入に依存しており、これによりターゲット品質データの収集、打撃実施及び打撃後の分析支援が可能となる。しかしながら、この侵入課題は長距離打撃のみに関わるものではない。
権威主義国家に対するヒューミント(human intelligence)収集および破壊工作・妨害活動の遂行には、ターゲット地点へ向かう途上で外国に潜入する秘密工作部隊の能力も必要となる。中国、ロシア、北朝鮮などの国々では、数々の内部監視・保安システムがほぼ遍在している現状を踏まえ、人的手段と技術的解決策の組み合わせが求められる。
・ 問題6:持続可能な兵站の展開。前述の課題がすべて解決されたとしても、戦術レベルから戦略レベルに至る軍事作戦を持続させる効果的な手段がなければ、すべて無駄になる。残念ながら、軍事兵站・補給部隊、兵站基地、兵站ネットワークは、戦場およびより広範な戦域において最も目立つ要素の一部である。
提言7:ウクライナからの教訓の評価と吸収を優先する。
上記の問題に対処し、ウクライナの教訓を太平洋地域に適用するには、新たな技術、思想、組織を迅速に吸収することが求められる。マイケル・ホロウィッツ(Michael Horowitz)は『軍事力の拡散(The Diffusion of Military Power)』において、新技術や新思想を軍事組織に吸収する難しさを論じ、軍事(及びその他の)組織には変化を吸収する能力容量に限界があると指摘している[140]。したがって軍事組織は、ウクライナから得られた教訓のうち、資源が投入されれば最大の軍事的優位性を生み出す可能性が最も高いものを優先的に評価・適用しなければならない。
結論:ウクライナから太平洋戦域に向けた正しい教訓を吸収する
本稿の狙いは、ウクライナでの戦争から得た重要な教訓を明らかにし、それらを太平洋地域に適用可能な形で解釈し、政府及び軍事機関による行動の提言を提示することにある。これらの組織は、太平洋地域における喫緊の軍事的問題解決のため、ウクライナの事例から学ぶ必要がある。具体的には、新しい技術・新しい考え・新しい組織の迅速な導入が求められる。
中国、ロシア、北朝鮮、イラン間の対話と協力の深化は、太平洋諸国にとって重大な課題であり、ウクライナでの戦争から得られた教訓の実施にも影響を及ぼす。新たな権威主義的学習・適応ブロックは今後数年間で活動を活発化させる見込みであり、これにより太平洋諸国の安全保障、外交、情報、経済分野における学習と適応は複雑化するだろう。
ウクライナの戦場から世界の安全保障環境に至るこの新たな適応戦争は、今後しばらくの間、太平洋地域の防衛・経済・安全保障情勢を決定づける重要な要素となるだろう。
各国はウクライナ戦争の教訓について、軍事、民間防衛、国家的復元性(national resilience)、民軍分野(civil-military affairs)、産業、戦略、同盟関係の各側面を検討しなければならない。本稿では、ウクライナでの戦争の教訓と太平洋戦域への適用可能性について概観するアプローチを採用した。しかしながら、この戦域に属する、あるいは同戦域での活動を見込む全ての国家は、自国の「翻訳フィルター(translation filters)」を通じてウクライナの教訓を検証する必要がある。このフィルターには、軍事・国家文化、地理的条件、利用可能な資源などが含まれうる。
結局のところ、太平洋地域に関連するウクライナの教訓を迅速に吸収するには、優れたリーダーシップが成功の鍵となる。あらゆるレベルのリーダーは新たな洞察に開かれ、創造的な解決策を育み、学習と迅速な適応を促す文化を構築しなければならない。これが、ウクライナでの3年以上にわたる戦争から得られる学びの機会が、太平洋地域の政治・軍事リーダーたちによって無駄にされないための、不可欠な翻訳ツールとなるだろう。
ノート
[1]オーストラリア政府『2024年国家防衛戦略』(オーストラリア連邦、2024年)、参照先:https://www.defence.gov.au/about/strategic-planning/2024-national-defence-strategy-2024-integrated-investment-program
[2] 第二次世界大戦における電子戦と暗号解読の影響に関する暴露は、戦後30年を経て、1974年に出版された。FW・ウィンターボサム(FW Winterbotham)著『超秘密(The Ultra Secret)』(ニューヨーク:ハーパー・アンド・ロウ社、1974年)である。また、ハロルド・ドイチュ著「超秘密暴露の歴史的影響」『Parameters』第7巻第1号(1977年)、16~32ページも参照。
[3] カム・バック・アライブ(Come Back Alive)はウクライナのシンクタンク兼技術インキュベーターであり、ウクライナ総参謀部と連携し、ウクライナ軍の課題に対する技術的・訓練的解決策を創出している。詳細は https://savelife.in.ua/en/ を参照。
[4] Brave1はウクライナのデジタル変革省内に設置された技術インキュベーターであり、ウクライナ総参謀部と連携し、戦場で有用な技術の評価を行っている。詳細はhttps://brave1.gov.ua/en/を参照。
[5] B ヴォロディミル、「デルタ・システム、メーカーと軍の情報交換用チャットを導入」、『ミリタルヌイ』誌、2025年5月13日付、参照:https://militarnyi.com/en/news/delta-system-has-a-chat-for-information-exchange-between-manufacturers-and-the-military/#google_vignette
[6] ジェイソン・デンプシーとギル・バーンドラー、「全志願兵制軍は危機にある」、『ザ・アトランティック』、2023年7月3日、https://www.theatlantic.com/ideas/archive/2023/07/all-volunteer-force-crisis/674603/。この問題はオーストラリアの文脈においてもメリッサ・ジョージによって考察されている。「オーストラリア国防軍における人材定着」『オーストラリア議会』、2023年6月20日、https://www.aph.gov.au/About_Parliament/Parliamentary_departments/Parliamentary_Library/Research/FlagPost/2023/June/ADF-Retention。
[7] オレクサンドル・V・ダニリュク『ウクライナ動員体制の現状と兵員募集強化策』ロイヤル・ユナイテッド・サービス機構、2024年8月8日、https://www.rusi.org/explore-our-research/publications/commentary/current-state-ukrainian-mobilisation-and-ways-boost-recruitment#%3A~% 3Atext%3Dただし、戦闘効果性に関する寄稿者はこちらで確認可能; ジャック・ワトリング「ウクライナでロシアが優位を拡大し始めている」、王立連合サービス協会、2024年5月14日、https://www.rusi.org/explore-our-research/publications/commentary/ukraine-russia-beginning-compound-advantages#%3A~% 3Atext%3DMobilising%20personnel%20for%20these%20new%2Cneeds%20to%20regain%20the%20initiative.
[8] アンドルー・ボーエン、「ロシア軍の戦力と展望」(議会調査局、2025年5月28日)、https://news.usni.org/2025/05/29/report-to-congress-on-russian-military-performance。
[9] この主題に関する最近の有用な研究には、ピーター・レイトン『戦争下の国家動員:過去の知見と将来の可能性』(キャンベラ:オーストラリア国立大学、2020年)およびジョアン・ニコルソン他『防衛動員計画の比較:海外計画の検証』(サンタモニカ:RANDコーポレーション、2021年)が含まれる。
[10] カーティス・ネルソン、ダレル・ウェスト「2024年選挙における外国の影響力作戦」ブルッキングス研究所、2024年9月12日、https://www.brookings.edu/articles/foreign-influence-operations-in-the-2024-elections/; キャサリン・ベルトン、ジョセフ・メン『クレムリン文書が示す、ウクライナ支援への米国内のロシア系ネット工作員による標的化』ワシントン・ポスト、2024年4月8日、https://www.washingtonpost.com/world/2024/04/08/russia-propaganda-us-ukraine/; ジュリアン・バーンズ、デイヴィッド・サンガー「米大統領選前にロシアがウクライナへのオンライン攻撃を強化」『ニューヨーク・タイムズ』2024年3月27日付、https://www.nytimes.com/2024/03/27/us/politics/russian-ukraine-us-interference.html
[11] ジェシカ・ブラント「プーチン先制阻止:ワシントンの情報開示キャンペーンがウクライナ計画を複雑化させる」 ブルッキングス研究所、2022年2月18日、https://www.brookings.edu/blog/order-from-chaos/2022/02/18/preempting-putin-washingtons-campaign-of-intelligence-disclosures-is-complicating-moscows-plans-for-ukraine/ 侵攻後の情報による先制攻撃については、シャノン・クロフォード『先制的な米国の公開攻撃がロシアとの情報戦に勝利: 分析」『ABCニュース』2022年4月15日付、https://abcnews.go.com/Politics/preemptive-public-us-strikes-winning-intelligence-war-russia/story?id=84015518; ダグラス・ロンドン「インテリジェンスがロシアとの想像を絶する戦争を制する鍵となる方法」、『ザ・ヒル』、2022年3月30日、https://thehill.com/opinion/national-security/600293-how-intelligence-is-helping-to-win-the-unthinkable-war-with-russia/。
[12] ファニー・ポトキン「ロシア、生成AIで偽情報拡散を加速とウクライナ大臣」ロイター通信、2024年10月16日、https://www.reuters.com/technology/artificial-intelligence/russia-using-generative-ai-ramp-up-disinformation-says-ukraine-minister-2024-10-16/
[13] ジョシュ・A・ゴールドスタイン、アンドルー・ローン、「ディープフェイク、選挙、そして嘘つきの配当の縮小」、ブレナン司法センター、2024年1月23日、https://www.brennancenter.org/our-work/research-reports/deepfakes-elections-and-shrinking-liars-dividend。
[14] ダニエル・バイマン、ダニエル・リンナ、V・S・スブラマニアン「民主主義政府はディープフェイクを利用すべきか?」『Lawfare』、2024年5月9日、https://www.lawfaremedia.org/article/should-democratic-governments-use-deepfakes
[15] 『認知戦:心の強化と防衛』、NATO同盟軍変革司令部、2023年4月5日、参照先:https://www.act.nato.int/article/cognitive-warfare-strengthening-and-defending-the-mind/
[16] この接触する社会的表面積の拡大というコンセプトとその含意については、ミック・ライアン著『ウクライナ戦争:戦下の戦略と適応』(海軍研究所出版局、2024年)で考察されている。
[17] 同上、p. 42。
[18] レオニード・ネルシヤン、サムヴェル・モヴシヤン、ヴァンサン・ソーヴ『ウクライナから見るロシアの陸上戦教訓の分析』『欧州安全保障防衛』2024年10月7日、https://euro-sd.com/2024/10/articles/40667/unpacking-russias-land-warfare-lessons-from-ukraine/
[19] テティアナ・トラフ、カテリーナ・ステパネンコ、ジョージ・バロス、ジェニー・オルムステッド、ジェシカ・ソビエスキ共著『ロシア軍の戦力生成と技術的適応 2025年5月30日更新版』 戦争研究所、2025年5月30日、https://www.understandingwar.org/backgrounder/russian-force-generation-and-technological-adaptations-update-may-30-2025
[20] マチュー・ブレグほか、「ロシアの軍事再生計画の評価」、チャタム・ハウス、2024年7月9日、参照先:https://www.chathamhouse.org/2024/07/assessing-russian-plans-military-regeneration/03-ground-forces
[21] ギル・バーンドラー「縦深打撃回避:ウクライナ戦争における火力と兵力」『War on the Rocks』2025年2月26日、https://warontherocks.com/2025/02/the-deep-strike-dodge-firepower-and-manpower-in-ukraines-war/
[22] ユリ・クラヴィリエとマイケル・イェルスタッド「戦闘損失と人的資源の課題がウクライナにおける『量』の重要性を浮き彫りにする」、『ミリタリー・バランス』ブログ、国際戦略研究所(IISS)、 2025年2月10日、https://www.iiss.org/online-analysis/military-balance/2025/02/combat-losses-and-manpower-challenges-underscore-the-importance-of-mass-in-ukraine/
[23] ジャック・ワトリング、オレクサンドル・V・ダニリュク、ニック・レイノルズ『ウクライナ攻勢作戦からの予備的教訓、2022–23年』(王立連合サービス協会、2024年)、https://static.rusi.org/lessons-learned-ukraine-offensive-2022-23.pdf
[24] アンドルー・ボーエン、ウクライナの軍事力とその見通し(議会調査局、2025年6月13日)、https://www.congress.gov/crs-product/IF12150。
[25] マイケル・コフマン、「2023年のロシア軍適応の評価」(カーネギー国際平和財団、2024年10月)、https://carnegieendowment.org/research/2024/10/assessing-russian-military-adaptation-in-2023?lang=en
[26] ヨリス・ファン・ブラデル「量が重要である:ロシアの軍事行動とその脅威を理解する」、エグモント王立国際問題研究所、2024年3月14日、https://www.egmontinstitute.be/mass-matters-understanding-russias-military-conduct-and-the-threat-it-poses/
[27] クラヴィリエとイェルスタッド、「戦闘損失と人的資源の課題がウクライナにおける『量』の重要性を浮き彫りにする」
[28] NASAの契約企業は、そのウェブサイトで確認できる: https://firms.modaps.eosdis.nasa.gov/。
[29] オードリー・デッカー「ウクライナの安価なセンサーがロシアのドローン攻撃を撃退する兵士を支援」、Defense One、 2024年7月20日、https://www.defenseone.com/defense-systems/2024/07/ukraines-cheap-sensors-are-helping-troops-fight-waves-russian-drones/398204/
[30] 日本の企業iQPSは、現代の商業衛星SARプロバイダーの一例である。
[31] ブラッド・ドレス「マスク氏、昨年ウクライナ軍によるロシア軍攻撃時にスターリンクのインターネット接続を遮断したことを認める」ザ・ヒル、 2023年9月8日、https://thehill.com/policy/defense/4193788-musk-acknowledges-he-turned-off-starlink-internet-access-last-year-during-ukraine-attack-on-russia-military/
[32] モリー・ハム「プラネット社のグローバル監視における独自のアプローチが防衛アナリストの新たな基準を確立する」『プラネット・パルス』2025年1月31日、https://www.planet.com/pulse/how-planets-distinctive-approach-to-global-monitoring-sets-a-new-standard-for-defense-analysts/; ケビン・ホールデン・プラット「プラネットの奇襲的な衛星画像がウクライナにおけるロシアの戦争犯罪を可視化」『フォーブス』2024年9月30日、https://www.forbes.com/sites/kevinholdenplatt/2024/09/30/planets-astounding-satellite-images-map-russian-war-crimes-in-ukraine/.
[33] ダン・スキナー「加速化戦争におけるシグネチャー管理」『ザ・コーヴ』2020年1月29日、https://cove.army.gov.au/article/signature-management-accelerated-warfare-close-combat-21st-century; ライアン『ウクライナ戦争』pp. 155–157.
[34] カテリーナ・ボンダル「ウクライナの軍事AIエコシステムを理解する」(戦略国際問題研究所、2024年11月)、https://www.csis.org/analysis/understanding-military-ai-ecosystem-ukraine
[35] あらゆる軍事装備品は複数のシグネチャを有する。これらは視覚的、聴覚的、あるいは電磁スペクトラム上のものとなり得る。
[36] 軍事部隊も、様々なレベルで特徴的な行動パターン(シグネチャー)を持つ。これには作戦行動のパターンや演習スケジュール、差し迫った軍事活動の兆候などが含まれる。個々の兵士も視認・聴取・嗅覚で感知可能である。上級軍事リーダーは通常、より顕著な特徴を示す。通信ネットワークの集中配置や、戦術的意思決定における特有のスタイルさえもその例である。
[37] 太平洋戦争中、アメリカ海軍は主にインターステートTDR-1攻撃ドローンを配備した。これらのドローンは改造されたTBMアベンジャーに搭載されたテレビカメラを介して遠隔操作された。運用上の課題と、より安価な従来型兵器の成功により、この計画は中止された。ヨーロッパ戦線では、アメリカ陸軍航空隊が爆発物を満載した旧式B-17爆撃機を遠隔操作し、フランスにあるナチス潜水艦基地を攻撃した。
[38] デイビッド・キリチェンコ「ドローンの超大国:ウクライナの戦時イノベーションがNATOに与える教訓」、アトランティック・カウンシル、2025年5月13日、https://www.atlanticcouncil.org/blogs/ukrainealert/drone-superpower-ukrainian-wartime-innovation-offers-lessons-for-nato/; ステファン・コルシャク「ドローン壁の実戦投入、爆風と爆弾、失効した協定、エストニア、そしてユーモア」『キエフ・ポスト』2025年4月29日、https://www.kyivpost.com/opinion/51701#articles-sub-title-1.
[39] 2025年までに、ウクライナ軍は各旅団に搭乗員無しの地上車両中隊を編成する見込みである。
[40] ドミトロ・シュムリアンスキー、「ヴィリイ創設者がウクライナとロシアの光ファイバードローンの精度を比較」、ミリタルヌイ、2025年4月27日、https://militarnyi.com/en/news/vyriy-founder-compares-accuracy-of-ukrainian-and-russian-fiber-optic-drones/; デイヴィッド・キリチェンコ「ウクライナのドローン部隊、ロシアの春季攻勢に備える」『ザ・ナショナル・インタレスト』2025年4月23日、https://nationalinterest.org/feature/ukraines-drone-forces-are-ready-for-russias-spring-offensive; 「ウクライナ、地上ドローンとFPVドローンのみでロシア陣地を攻撃するのは初めて」、『キエフ・インディペンデント』、2024年12月21日、https://kyivindependent.com/for-first-time-ukraine-attacks-russian-positions-using-solely-ground-fpv-drones/
[41] マイケル・ホロウィッツ「精密大量破壊兵器をめぐる戦い」、『フォーリン・アフェアーズ』、2024年10月22日、https://www.foreignaffairs.com/world/battles-precise-mass-technology-war-horowitz?check_logged_in=1
[42] オレクサンドラ・モロイ『現代戦争におけるドローン:ウクライナ戦争から得た教訓』オーストラリア陸軍臨時論文第29号(キャンベラ:オーストラリア陸軍研究センター、2024年)、 p. 64, at: https://researchcentre.army.gov.au/sites/default/files/241104-Occasional-Paper-29-Lessons-Learnt-from-Ukraine.pdf.pdf.
[43] ジャック・ワトリング、ノア・シルビア『現代陸上作戦における競争的電子戦』(王立連合サービス研究所、2025年)、https://static.rusi.org/competitive-electronic-warfare-in-land-operations_1.pdf
[44] ウクライナのアンウェーブが「パテルニャ」を提供: 敵ドローンに圧力をかける新型歩兵用電子戦システム」、『Tech Ukraine』、2025年5月14日、https://techukraine.org/2025/05/14/ukraines-unwave-serves-up-patelnya-the-new-infantry-ew-system-turning-up-the-heat-on-enemy-drones/; テレザ・プルタロヴァ『自衛のためウクライナが電子戦を再考』IEEE Spectrum、2025年5月18日、https://spectrum.ieee.org/ukraine-air-defense
[45] カム・バック・アライブのドローンフォール作戦はその一例である。現在、最前線部隊によって広く展開されている。オレナ・フラズダン「カム・バック・アライブ、6500万ドル相当のロシア製ドローンを撃墜した『ドローンフォール』作戦を発表」『キエフ・ポスト』2025年3月22日付、https://www.kyivpost.com/post/49369
[46] デイヴィッド・ハンブリング「ウクライナ、ロシア製シャヘド無人機阻止にAI制御銃を導入」『フォーブス』2025年5月27日付、https://www.forbes.com/sites/davidhambling/2025/05/27/ukraine-turns-to-ai-controlled-guns-to-stop-russian-shahed-drones/
[47] ジョー・ラクダン、「統合小型無人航空機対策室がドローン・スウォーム対策実証を成功裏に実施」、米国陸軍(ウェブサイト)、2024年7月26日、https://www.army.mil/article/278404/joint_counter_small_uas_office_conducts_successful_counter_drone_swarm_demonstration; 「国防総省、無人システム対策戦略を発表」、米国防総省、2024年12月5日、参照先:https://www.defense.gov/News/Releases/Release/Article/3986597/dod-announces-strategy-for-countering-unmanned-systems/。Anduril(https://www.anduril.com/capability/counter-uas/) やAIM Defence(https://www.aimdefence.com/) など、多くの企業が対ドローン技術を開発しているが、これらはまだ実戦テストを受けていない。
[48] ロマン・ロマニュク「ロシア縦深のターゲットを炎上させた:第14無人航空機連隊の知られざる物語」『ウクラインスカ・プラウダ』2025年3月17日付、https://www.pravda.com.ua/eng/articles/2025/03/17/7503165/
[49] ピーター・ディキンソン「ウクライナ、ロシア縦深への打撃用長距離兵器を拡充中」アトランティック・カウンシル、2024年12月10日、https://www.atlanticcouncil.org/blogs/ukrainealert/ukraine-is-expanding-its-long-range-arsenal-for-deep-strikes-inside-russia/
[50] 北大西洋条約機構(NATO)『ヴィリニュス・サミット共同声明:2023年7月11日、ヴィリニュスで開催されたNATOサミットにおいて国家元首・政府首脳により採択』https://www.nato.int/cps/en/natohq/official_texts_217320.htm
[51] ミハイロ・ソルダテンコ「ウクライナの安全保障協定を正しく構築する」カーネギー国際平和財団、2024年7月8日、https://carnegieendowment.org/research/2024/07/getting-ukraines-security-agreements-right?lang=en
[52] 英国は2025年1月、ウクライナと100年間の安全保障パートナーシップを締結した。『英国とウクライナ、安全保障関係の深化と将来世代のためのパートナーシップ強化に向け画期的な100年パートナーシップに署名』プレスリリース、首相府、2025年1月16日、以下参照: https://www.gov.uk/government/news/uk-and-ukraine-sign-landmark-100-year-partnership-to-deepen-security-ties-and-strengthen-partnership-for-future-generations#%3A~%3Atext%3DPress%20release-%2CUK%20and%20Ukraine%20sign%20landmark%20100%20Year%20Partnership%20to%20deepen%2Cstrengthen%20partnership%20for%20future%20generations%26text%3DThe%20UK%20and%20Ukraine%20will%2Ccountry%20to%20meet%20President%20Zelenskyy
[53] 「ファクトシート:米国・ウクライナ二国間安全保障協定」、ホワイトハウス(アーカイブサイト)、2024年6月13日、参照先:https://bidenwhitehouse.archives.gov/briefing-room/statements-releases/2024/06/13/fact-sheet-u-s-ukraine-bilateral-security-agreement/
[54] NATOはウクライナ向け包括的支援パッケージを実施しており、これにはウクライナとNATOの相互運用性ロードマップおよびNATO-ウクライナ共同分析・訓練・教育センター(JATEC)が含まれる。「ウクライナ向け包括的支援パッケージ(CAP)」、NATO(ウェブサイト)、https://www.nato.int/cps/en/natohq/topics_231639.htm(2025年6月13日アクセス)。
[55] 北大西洋条約機構(NATO)2022年戦略構想:2022年6月29日マドリードで開催されたNATO首脳会議において国家元首・政府首脳により採択。参照:https://www.nato.int/strategic-concept/
[56] 北大西洋条約機構(NATO)『ヴィリニュス・サミットコミュニケ』。ロシアに対する制裁体制に関する有用な説明には、オーストラリア政府『スナップショット: ロシア/ウクライナ制裁制度」、外務貿易省(ウェブサイト)、2025年8月11日アクセス、https://www.dfat.gov.au/international-relations/security/sanctions/guidance/export-sanctioned-goods-russia-and-specified-regions-ukraine および「ウクライナとロシアに対する制裁」、 米国国務省、https://www.state.gov/division-for-counter-threat-finance-and-sanctions/ukraine-and-russia-sanctions (2025年6月23日アクセス)。
[57] この問題を検討した報告書は多数存在する。主な報告書には以下が含まれる:レベッカ・ネルソン『ロシア制裁の経済的影響』(議会調査局、2025年2月20日)、https://www.congress.gov/crs-product/IF12092; 「ウクライナ戦争3年:対ロシア制裁は効果を上げているか?」、外交問題評議会、2025年5月21日、https://www.cfr.org/in-brief/three-years-war-ukraine-are-sanctions-against-russia-making-difference; 世界銀行、Prosperity Data360 Finance、競争力とイノベーション国別概要:ロシア連邦(2025年1月)、https://documents.worldbank.org/en/publication/documents-reports/documentdetail/099753401212538317; ガブリエル・フェルバーマイヤー他『ロシア制裁の効果について:新たなデータと新たな証拠』、経済政策研究センター、2025年3月12日、参照:https://cepr.org/voxeu/columns/effectiveness-sanctions-russia-new-data-and-new-evidence; フィリップ・ラック「制裁がロシアの将来を再構築した方法」、戦略国際問題研究所、2025年2月24日、https://www.csis.org/analysis/how-sanctions-have-reshaped-russias-future。
[58] 「適応会戦(adaptation battle)」とは、2022年2月以降、ウクライナ軍とロシア軍の相互作用の中で継続的に行われてきた学習と適応を指す。この用語は、2022年に刊行した著書『変容する戦争』およびその後ウクライナ戦争について執筆した多くの論文において定義・使用されてきた。ミック・ライアン『変容する戦争:21世紀の大国間競争と紛争の将来』(Naval Institute Press、2022年)、p. 157.
[59] マシュー・ジョンソン、「中国とロシア、戦略的パートナーシップを運用開始」、ジェームズタウン財団、2025年5月14日、https://jamestown.org/program/prc-and-russia-operationalize-strategic-partnership/ ロシア政府および中国政府、「国際法の権威の保護における協力の一層の強化に関する共同声明」、2025年5月9日、https://www.fmprc.gov.cn/eng/wjb/zzjg_663340/tyfls_665260/tfsxw_665262/202505/t20250509_11617838.html; および Karolina Hird および Kitaneh Fitzpatrick、The Russia-Iran Coalition Deepens (The Institute for the Study of War、2025年1月)、https://www.understandingwar.org/backgrounder/russia-iran-coalition-deepens。
[60] 米国インテリジェンス・コミュニティによる2025年年次脅威評価(国家情報長官室、2025年3月)、p. 29、参照先:https://www.dni.gov/files/ODNI/documents/assessments/ATA-2025-Unclassified-Report.pdf
[61] ローラ・ゴジラ「ウクライナがロシア爆撃機に敢行した大胆な蜘蛛の巣作戦」BBC、2025年6月2日、https://www.bbc.com/news/articles/cq69qnvj6nlo
[62]ダグ・リバモア「インテリジェンスと特殊作戦の融合によるイスラエルのイラン攻撃は戦略的奇襲の教訓である」アトランティック・カウンシル、 2023年6月14日、https://www.atlanticcouncil.org/blogs/new-atlanticist/by-fusing-intelligence-and-special-operations-israels-strikes-on-iran-are-a-lesson-in-strategic-surprise/
[63] ミック・ライアン「奇襲と現代戦争」、『The Interpreter』、ローウィ研究所、2024年8月21日、https://www.lowyinstitute.org/the-interpreter/surprise-modern-war
[64] エリオット・コーエン『最高司令官:戦時下の兵士、政治家、指導者たち』(フリープレス、2002年)、225頁。
[65] ジョシュア・ヤファ「ワーグナー・グループの武装蜂起の内幕」『ニューヨーカー』2023年7月31日掲載、https://www.newyorker.com/magazine/2023/08/07/inside-the-wagner-uprising
[66] マリタ・モローニー「ゼレンスキー大統領、ウクライナ軍最高司令官ヴァレリー・ザルジニーを解任」BBCニュース、2024年2月9日、https://www.bbc.com/news/world-europe-68244813
[67] ミック・ライアン「オーストラリア特有の文民統制へのアプローチ」『The Interpreter』ローウィー研究所、2025年4月28日、https://www.lowyinstitute.org/the-interpreter/distinctly-australian-approach-civil-military-relations
[68] 喬良・王湘穗著『非対称戦争』(北京:中国人民解放軍出版社、1999年2月)、xxxi-xxii頁。
[69] ライアン『ウクライナ戦争』p. 101.
[70] ミック・ライアン「ウクライナから学ぶリーダーシップの教訓」、『フューチュラ・ドクトリーナ』、2024年6月27日、https://mickryan.substack.com/p/leadership-lessons-from-ukraine?utm_source=publication-search
[71] ミック・ライアン「ウクライナ戦争からオーストラリアが学ぶべき政治的教訓」、『The Interpreter』、ローウィ研究所、2025年2月19日、https://www.lowyinstitute.org/the-interpreter/political-lessons-australia-war-ukraine
[72] ミック・ライアン「21世紀の紛争における勝利」『The Interpreter』ローウィ研究所、2024年11月4日、https://www.lowyinstitute.org/the-interpreter/victory-21st-century-conflict-0 ベアトリス・ホイザー「勝利、平和、正義:見過ごされてきた三位一体」『ジョイント・フォース・クォータリー』69号(2013年):11頁。
[73] 捕虜の待遇は、1949年に採択された捕虜の待遇に関するジュネーブ条約によって規定されている。詳細はhttps://www.ohchr.org/en/instruments-mechanisms/instruments/geneva-convention-relative-treatment-prisoners-war を参照のこと。
[74] リチャード・レイトン、ロバート・コークリー著『グローバル・ロジスティクスと戦略 1940–1943』(軍事史センター、1995年)、 p. 175, at: https://history.army.mil/Portals/143/Images/Publications/Publication%20By%20Title%20Images/G%20Pdf/CMH_Pub_1-5.pdf?ver=vlmIDfBf9n4kmrxubJk1pA%3d%3d
[75] このプロセスの例の一つが、モロイの『現代戦争におけるドローン』である。
[76] カーター・ジョンストン「米海軍の『地獄絵図』を詳細に分析」『Naval News』2024年6月16日付、https://www.navalnews.com/naval-news/2024/06/breaking-down-the-u-s-navys-hellscape-in-detail/#; チェ・ソンヒョン『米海軍、台湾海峡における人民解放軍対策用ドローン「地獄の光景」計画が順調に進展中と確認』サウスチャイナ・モーニング・ポスト、 2025年1月30日、https://www.scmp.com/news/china/military/article/3296808/us-navy-confirms-drone-hellscape-use-against-pla-taiwan-strait-track; スコット・ヒューム「無人地獄戦場には21世紀のヘファイストスが必要だ」、CIMSEC、2025年4月15日、https://cimsec.org/hellscape-needs-a-21st-century-hephaestus/。
[77] トッド・グリーン、「夜間列車:太平洋作戦の持続のための無人遠征兵站」、CIMSEC、2023年6月8日、https://cimsec.org/the-nighttrain-unmanned-expeditionary-logistics-for-sustaining-pacific-operations/。
[78] デイヴィッド・ハンブリング「ウクライナのドローン運搬機が初の長距離自律攻撃を実施」『フォーブス』2025年5月26日、https://www.forbes.com/sites/davidhambling/2025/05/26/ukraine-drone-carriers-launch-first-long-range-autonomous-strikes/
[79] 防衛省『防衛白書2024』https://www.mod.go.jp/en/publ/w_paper/wp2024/DOJ2024_EN_Full.pdf 39~50ページにウクライナからの教訓に関する議論を掲載。237ページではスタンドオフ兵器を最優先の戦力整備能力と位置付けている。
[80] フィリピンはインド製ブラモス長距離ミサイルシステムを調達済みであり、米国製タイフーン長距離システムも調達する予定である。「フィリピン、米タイフーンミサイルシステム取得を表明、中国から警告」CBSニュース、2024年12月23日、https://www.cbsnews.com/news/philippines-us-typhon-missile-system-warnings-from-china/; ボイコ・ニコロフ「フィリピン、インドのゲームチェンジャー級ブラモスミサイルシステムを受領」、BulgarianMilitary.com、 2025年4月21日、https://bulgarianmilitary.com/2025/04/21/philippines-receives-indias-game-changing-brahmos-missile-system/#google_vignette.
[81] カテリーナ・ボンダル「ウクライナの作戦『蜘蛛の巣』が非対称戦争を再定義する」戦略国際問題研究所、2025年6月2日、https://www.csis.org/analysis/how-ukraines-spider-web-operation-redefines-asymmetric-warfare; ゴジラ『ウクライナがロシア爆撃機に敢行した大胆な蜘蛛の巣作戦』;リバモア『情報と特殊作戦の融合によるイスラエルのイラン攻撃は戦略的奇襲の教訓』
[82] ピーター・ダーマン『第二次世界大戦の欺瞞戦術』(メトロブックス、2017年)、pp. 192–212.
[83] セス・ジョーンズ、アレクサンダー・パーマー『民主主義の兵器庫の再構築:大国の競争時代における米国と中国の防衛産業基盤』(ワシントン DC:戦略国際問題研究所、2025 年)、https://www.csis.org/analysis/china-outpacing-us-defense-industrial-base。
[84] ハワード・ワンとブレット・ザックハイム『ロシア・ウクライナ戦争から中国が得た教訓:認識された新たな戦略的機会と台頭するハイブリッド戦争のモデル』(ランド社、2025年)、34ページ。
[85] ウクライナの国土の約29%を自然および半自然植生が占めており、その大部分は森林(国土の15.9%)、草原、湿原、ステップ、塩性生息地で構成されている。『ウクライナ―国別概要』、生物多様性条約、参照:https://www.cbd.int/countries/profile?country=ua
[86] 「はじめに」、林務局、農林水産省、台湾:https://www.forest.gov.tw/EN/0004367 (2023年11月13日時点の正確な情報)。
[87] 「フィリピン」、『グローバル・フォレスト・ウォッチ』、2020年、参照先:https://www.globalforestwatch.org/dashboards/country/PHL/?category=land-cover&location=WyJjb3VudHJ5IiwiUEhMIl0%3D
[88] 「ソロモン諸島」, グローバル・フォレスト・ウォッチ, 2020年, 参照: https://www.globalforestwatch.org/dashboards/country/SLB/?category=undefined.
[89] 「パプアニューギニア」、『グローバル・フォレスト・ウォッチ』、2020年、参照先:https://www.globalforestwatch.org/dashboards/country/PNG/
[90] 「マヌス島」、グローバル・フォレスト・ウォッチ、2020年、参照先:https://www.globalforestwatch.org/dashboards/country/PNG/12/?category=land-cover&map=eyJjYW5Cb3VuZCI6dHJ1ZX0%3D
[91] フランク・ホフマン「ウクライナ反攻作戦:泥濘の季節はいつ終わるのか?」、DW.com、2023年4月1日、https://www.dw.com/en/countdown-to-counteroffensive-when-will-mud-season-end-in-ukraine/a-65204612
[92] トーマス・マッケルヴィー・クリーバー『津波』(オスプレイ出版、2018年)、83–91頁、252–256頁。
[93] マンゲシュ・サワント、「天候:戦争における唯一の定数」、海兵隊大学、2023年1月23日、https://www.usmcu.edu/Outreach/Marine-Corps-University-Press/Expeditions-with-MCUP-digital-journal/Weather/。
[94] アメリカ陸軍、第二次世界大戦における医療統計(陸軍省軍医総監部、1975年)、32ページ。
[95] 同上、42ページ。
[96] ジャスパー・バウアー、カイル・デューイ、ガブリエル・スタインバーグ、フランク・ニッチェ、「無人航空機ベースの物体検出に対する植生被覆の影響のモデル化: 地雷原環境における研究」、リモートセンシング 16 (2024) https://www.mdpi.com/2072-4292/16/12/2046
[97] オリバー・ビンバー「ドローン・スウォームで森林を見通す」、Springer Nature Research Communities、2023年8月3日、https://communities.springernature.com/posts/seeing-through-forest-with-drone-swarms
[98] 「無人航空機(UAV)向け高性能合成開口レーダー(SAR)」、Unmanned Systems Technology、URL: https://www.unmannedsystemstechnology.com/company/imsar/
[99] モロイ『現代戦争におけるドローン』79–81頁。
[100] 「ドローンは雨の中で飛行できるのか? 気象がドローン運用に与える影響」Climavision, 掲載先: https://climavision.com/blog/navigating-the-skies-how-weather-impacts-uav-operations/.
[101] シネイド・ベイカー「ウクライナのドローンは寒冷な冬の天候下で携帯電話と同じ問題を抱え、パイロットの狩猟時間が減少している」『ビジネスインサイダー』2024年1月20日付、https://www.businessinsider.com/ukraine-winter-conditions-limiting-drone-warfare-draining-batteries-2024-1
[102] ティム・ザドロージニー「ウクライナ、2025年に450万台のFPVドローンを購入へ」『キエフ・インディペンデント』2025年3月10日付、https://kyivindependent.com/ukraine-to-buy-4-5-million-fpv-drones-in-2025/
[103] 米国インテリジェンス・コミュニティによる2025年年次脅威評価、p. 20.
[104] ライアン『ウクライナ戦争』pp.29–31; ドミニク・プレスル「ロシアはグローバル情報戦争で勝利しつつある」、王立連合サービス研究所、2024年5月7日、https://www.rusi.org/explore-our-research/publications/commentary/russia-winning-global-information-war
[105] カテリーナ・オダルチェンコ、エレナ・ダヴリカノワ「ロシアの進化する情報戦争が西側諸国に及ぼす脅威の増大」アトランティック・カウンシル、2024年11月26日、https://www.atlanticcouncil.org/blogs/ukrainealert/russias-evolving-information-war-poses-a-growing-threat-to-the-west/#%3A~%3Atext%3D西側諸国全体におけるソーシャルメディアの先駆的な活用。
[106] ジュリア・ヴー「分断を煽る:アジア太平洋地域における中国の偽情報戦役」、『国際戦略研究所 アジア太平洋地域安全保障評価2024: 主要な開発と傾向(IIS、2024年5月)、https://www.iiss.org/publications/strategic-dossiers/asia-pacific-regional-security-assessment-2024/chapter-5/
[107] チャールズ・エーデル、キャスリン・ペイク「太平洋を跨ぐ中国のパワープレイ」、戦略国際問題研究所、2025年4月8日、https://www.csis.org/analysis/chinas-power-play-across-pacific
[108] 米国防総省『中華人民共和国に関連する軍事・安全保障上の動向 2024:議会への年次報告書』(2024年)、 pp. 138–140, at: https://media.defense.gov/2024/Dec/18/2003615520/-1/-1/0/MILITARY-AND-SECURITY-DEVELOPMENTS-INVOLVING-THE-PEOPLES-REPUBLIC-OF-CHINA-2024.PDF
[109] エーデルとペイク『太平洋を跨ぐ中国のパワープレイ』
[110] 王(Wang)とザックハイム、ロシア・ウクライナ戦争から中国が学ぶ教訓
[111] エヴァン・メデイロス、ブライアン・ハート、エリザベス・ウィッシュニック、ジョセフ・ウェブスター『ウクライナ戦争2年後の中国の評価』戦略国際問題研究所(CSIS)、2024年6月11日、https://interpret.csis.org/chinese-assessments-of-the-war-in-ukraine-2-years-on/
[112] ジョエル・ワスノウ「習近平が自国の軍隊を信頼しない理由」、『フォーリン・アフェアーズ』、2023年9月26日、https://www.foreignaffairs.com/china/why-xi-jinping-doesnt-trust-his-own-military
[113] ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)兵器産業データベース、https://www.sipri.org/databases/armsindustry; 「中国の兵器産業はどの程度発展しているか?」、ChinaPower、2021年2月18日、2021年2月25日更新、https://chinapower.csis.org/arms-companies/ (2025年6月12日アクセス); Cortney Weinbaum 他、「中国防衛産業基盤の体系的強みと脆弱性の評価」、RAND、2022年2月11日、https://www.rand.org/pubs/research_briefs/RBA930-1.html。
[114] 空軍省態勢声明書 2026会計年度:合衆国上院及び下院委員会・小委員会への提出文書 第1会期、第119議会(2026年)、以下参照:https://www.armed-services.senate.gov/imo/media/doc/meink_opening_statement.pdf
[115] CNAコミュニケーションチーム「中国とロシアが情報作戦を用いて米国と競争する方法」、海軍分析センター、2023年6月30日、https://www.cna.org/our-media/indepth/2023/06/how-china-and-russia-use-information-operations-to-compete-with-the-us#%3A~%3Atext%3D 制限のないパートナーシップ、自国メディア、または公式発言を考慮すると。
[116] ジョー・ストラディンガー「ナラティブ・インテリジェンス:NATOの結束を乱す中国・ロシアの情報作戦を検知する」, 外交政策研究所, 2024年11月5日, 参照: https://www.fpri.org/article/2024/11/intelligence-china-russia-information-operations-against-nato/.
[117] 中国共産党第20回全国代表大会への報告書全文は、https://english.www.gov.cn/news/topnews/202210/25/content_WS6357df20c6d0a757729e1bfc.html で閲覧可能。
[118] トーマス・コーベット、マ・シウ、ピーター・シンガー「中国はウクライナ戦争から何を学んでいるのか?」『ディフェンス・ワン』2022年4月3日、https://www.defenseone.com/ideas/2022/04/what-lessons-china-taking-ukraine-war/363915/
[119] ピーター・コノリー「太平洋諸島における中国の警察保安活動」アジア研究国家局、2024年5月30日、https://www.nbr.org/publication/chinas-police-security-in-the-pacific-islands/
[120] カール・レーバーグとハーバート・ケンプ、『ファランクス強化』(戦略予算評価センター、2023年)、以下参照:https://csbaonline.org/uploads/documents/CSBA8371_(Strengthening_the_Phalanx_Report)_FINAL_web_1-17-24.pdf.
[121] 同上
[122] 米国情報コミュニティ2025年年次脅威評価報告書、p. 10;米国防総省『中華人民共和国に関連する軍事・安全保障上の動向 2024年版』
[123] 国防情報局、2025年世界脅威評価(米国国防情報局、2025年5月)、9ページ、参照先:https://armedservices.house.gov/uploadedfiles/2025_dia_statement_for_the_record.pdf
[124] クレイトン・スウォープ、カリ・ビンゲン、マケナ・ヤング、ケンドラ・ラフェイヴ『宇宙脅威評価2025』(戦略国際問題研究所、2025年4月)、https://csis-website-prod.s3.amazonaws.com/s3fs-public/2025-04/250425_Swope_Space_Threat.pdf?VersionId=orhySgjISemJLjhdQKKes2OVb35jwkU5.
[125] グレッグ・ハドリー「米宇宙軍情報部長:中国は現在1000基の衛星を軌道上に保有」『エア・アンド・スペース・フォース・マガジン』2024年9月16日、https://www.airandspaceforces.com/ussf-intel-boss-china-1000-satellites-space-domain-awareness/
[126] ダグ・リバモア「ウクライナ特殊作戦部隊がロシアに破壊をもたらす」、欧州政策分析センター、2024年8月23日、https://cepa.org/article/ukraines-special-operations-troops-sow-destruction-in-russia/
[127] カイル・カニンフ、『情報化時代におけるハードターゲット諜報活動:第二の古い職業が直面する新たな課題』、『インテリジェンス・アンド・ナショナル・セキュリティ』第36巻第7号(2021年): 1018–1034頁、https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/02684527.2021.1947555#abstract.
[128] ダニエル・バイマン、「アジアにおける同盟国およびパートナー国との協力関係の改善」、戦略国際問題研究所、2025年5月20日、https://www.csis.org/analysis/improving-cooperation-allies-and-partners-asia。
[129] 国防情報局、2025年世界脅威評価、p. 5.
[130] ネクター・ガン「トランプが西側同盟を揺るがす中、イラン・中国・ロシアが年次合同海軍演習を開始」CNN、2025年3月10日、https://edition.cnn.com/2025/03/10/asia/iran-china-russia-joint-navy-drills-intl-hnk/index.html
[131] ヘザー・ウィリアムズ、カリ・A・ビンゲン、ラクラン・マッケンジー「なぜ中国とロシアはアラスカ近海で共同爆撃機演習を実施したのか?」戦略国際問題研究所(CSIS)、2024年7月30日、https://www.csis.org/analysis/why-did-china-and-russia-stage-joint-bomber-exercise-near-alaska
[132] クララ・フォンド、リンジー・メイズランド「中国とロシア:二つの権威主義大国間の絆を探る」、外交問題評議会、2024年3月20日、https://www.cfr.org/backgrounder/china-russia-relationship-xi-putin-taiwan-ukraine この拡大する関係に関する数値データは『中国・ロシア関係ダッシュボード:事実と数字で見る特別な関係』メルカトル中国研究所にて参照可能:https://merics.org/en/china-russia-dashboard-facts-and-figures-special-relationship.
[133] マイケル・ダム「中国の砂漠の嵐教育」、『プロシーディングス』第147巻第1417号(2021年)、https://www.usni.org/magazines/proceedings/2021/march/chinas-desert-storm-education
[134] エヴァン・A・フェイゲンバウム、チャールズ・フーパー「中国軍がロシアのウクライナ戦争から学んでいること」、カーネギー国際平和財団、2022年7月21日、https://carnegieendowment.org/posts/2022/07/what-the-chinese-army-is-learning-from-russias-ukraine-war?lang=en
[135] これは米国防総省の中国に関する年次報告書において複数回にわたり記録されており、最新版である2024年版にも含まれている。米国防総省『中華人民共和国に関連する軍事・安全保障上の動向 2024年版』pp.44-72。
[136] ボニー・リン、ジョエル・ウースノウ「中国の強固な表層の裏にある弱点」『フォーリン・アフェアーズ』2022年11月10日、https://www.foreignaffairs.com/china/weakness-behind-china-strong-facade; スティーブ・サックス「中国軍には隠れた弱点がある」『ザ・ディプロマット』2021年4月20日、https://thediplomat.com/2021/04/chinas-military-has-a-hidden-weakness/.
[137] メイア・フィンケル『軍事的機敏性:平和から戦争への迅速かつ効果的な移行の確保』(ケンタッキー大学出版局、2020年)、pp. 4–5.
[138] ウィリアムソン・マレー、ピーター・マンスール(編)、『軍事組織の文化』(ケンブリッジ大学出版局、2019年)、454~456ページ。
[139] ローレンス・フリードマン「暗雲の向こうのウクライナ」、『コメント・イズ・フリード』2024年1月23日掲載、URL: https://samf.substack.com/p/ukraine-through-the-gloom?utm_source=%2Fsearch%2Fcomment%2520freed&utm_medium=reader2
[140] マイケル・ホロウィッツ『軍事力の拡散:国際政治への影響とその帰結』(プリンストン大学出版局、2010年)、15頁。

