ヨーロッパのドローン・ウォール:空域脅威の新時代に向けた新たな戦略 (D-Fend Solutions)

2026年2月28日、米国が「Operation Epic Fury(壮絶な怒り作戦)」と名付けたイスラエルとの大規模な共同作戦を開始し、両国にとっては多大な成果を上げているとされているようだ。しかし、イランのシャヘド・ドローンによる米側のレーダー・サイトなどへの攻撃にも手を焼いているようにも報道されている。

そして、米国はイランのドローンによる被害が続く中で、ウクライナに対し、同国がロシアとの戦争を戦いながら構築していったドローン対処の方策を念頭に支援を求めているとの報道もある。

今回紹介するのは、ヨーロッパの国々が、ウクライナ軍が成功を収めているとされる「ドローン・ウォール(Drone Wall)」にヒントを得た対無人航空システム(C-UAS)の構想に関するD Fend Solutions | Advanced Counter Drone Technologyに掲載の記事である。

皮肉にもウクライナがロシアに多大な被害をもたらしたとされる「スパイダ―ウェブ(Spiderweb)」作戦がヨーロッパ諸国に無人航空システム(UAS)の脅威を認識させ、対無人航空システム(C-UAS)の構想の確立に一役買ったとも受け止められるものである。

多種多様な無人機の防空には単一の手段・技術では対応が難しいとされ、その解決策は大いに参考となると思う。(軍治)

ヨーロッパのドローン・ウォール:空域脅威の新時代に向けた新たな戦略

Europe’s Drone Wall: A New Strategy for a New Era of Airspace Threats

January 26, 2026 | Lior Mishan

リオール・ミシャン(Lior Mishan)はD-Fend Solutionsでプロダクト・マーケティングを率い、ディープテック・イノベーションと実際の導入を橋渡ししている。新興技術分野で15年以上の経験を持つリオール(Lior)は、複雑なソリューションの市場ストーリーを推進し、グローバルな組織が重要な技術変革を乗り越え、リードするのを支援することを専門としている。

ヨーロッパは空域の新たな不安定な時代に突入した。ここ数年で敵対的なドローン活動が急増し、政府や防衛組織は長年の防空仮定の多くがもはや当てはまらないことを認めざるを得なくなった。スカンジナビアの空港はドローン目撃情報を受けて一時的に閉鎖された。ロシアが運用するドローンはポーランドやバルト三国で国境を越えたと報告されている。ドイツは主要空港付近で複数の警報を受けている。このような事件の世界的な規模を理解するための有用なリソースは、D-Fend SolutionsWorldwide Drone Incident Trackerで、脅威の拡散の速度と広範囲を示している。

問題は明白である。ヨーロッパの防空態勢は戦闘機や爆撃機の時代のために構築されており、今日の数千から数万ドルの小型無人機のためには作られていない。旧システムと新しい脅威との経済的・作戦上の不一致は持続不可能となっている。このギャップを認識することで、ヨーロッパのドローン・ウォールという無人時代に特化した大陸規模の対無人航空機システム(UAS)フレームワークの舞台が整った。

I. 計画の背景と引き金

2024年と2025年にかけて、ロシアと関連した可能性のある一連のドローン侵入が、ヨーロッパの伝統的な防空モデルに重大な脆弱性を露呈させた。最も顕著な例は2025年9月、約20機のロシア製ゲラン(シャヘド)型ドローンがポーランド領空に侵入したことである。NATOは大規模かつ高コストな作戦で応じた。F-16とF-35戦闘機が迎撃に急いで動いた。パトリオット・ミサイル・システムが起動された。AIM-9サイドワインダー・ミサイル(それぞれ40万ドル以上)がその価格の一部に相当するドローンに発射された。ヨーロッパは低コストのドローンに対抗するために非常に高コストの緊急資源を投入せざるを得ず、その結果、大きなシステム的不均衡が生じた。

しかし、小型ドローンが戦略的脅威となっているという認識は、2025年6月の「スパイダーウェブ作戦(Operation Spiderweb)」の際にさらに早かった。この協調攻撃では、100機以上の小型商用ドローンが敵の領域内深くに侵入し、戦略爆撃機やインフラに損害を与えた。これにより、安価で低空飛行するスウォームが戦略的なキネティックな影響の効果をもたらし、従来のレーダー防御を無力化できることが証明された。

「スパイダーウェブ(Spiderweb)」は軍事アセットへのキネティックな危険を浮き彫りにしたが、民間分野でも同様の危機が発生した。スカンジナビアでも、コペンハーゲンやオスロ近郊でドローンが空港の一時閉鎖を余儀なくされるなど、同様の混乱に直面した。ドイツではフランクフルト空港や他の敏感地域付近で繰り返し目撃され、安価なドローンが市民的・経済的に大きな影響を及ぼす可能性を示した。これらの出来事は、ヨーロッパの高コストな航空警察モデル、特にジェット機やミサイル迎撃機を中心に、数千ドルから数万ドルの費用を要求するドローンには決してデザインされていないことを示した。

ロシア側は、無作為に行動していたわけではないとされている。すべてのドローン侵入はNATOの反応時間、通信リンク、国境を越えた調整のインテリジェンスを提供できた。モスクワはほぼ無コストでヨーロッパの防衛を試すことができ、ヨーロッパは対応するたびに大きな代償を払った。この不均衡と事件の頻度増加が相まって、欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン(Ursula von der Leyen)委員長は2025年9月の一般教書演説で新たなビジョンを発表した。それはEU東部国境にまたがる「ドローン・ウォール(Drone Wall)」である。

II. 計画とその達成のための意図

ドローン・ウォールは物理的な構造物ではない。これは非常に大規模で多層的な協力的な防御エコシステムで、北はフィンランドから南はルーマニアまで広がるだろう。全長4,000キロメートルを超えるこの計画は、現代ヨーロッパ史上最も野心的な防空計画の一つである。その目的は、スクランブル戦闘機よりもはるかに効率的にドローンに対処するための連続的な探知(detection)、追跡(tracking)、軽減(mitigation)能力を提供することである。

このアーキテクチャは、多様な探知、追跡、識別(DTI)技術を組み合わせる予定である。これにはレーダー・システム、無線周波数(RF)センサー、音響アレイ、光学または赤外線ツールが含まれる。軽減層にはジャマー、指向性エネルギー兵器、迎撃ドローン、必要に応じてミサイルや砲などの攻撃的なキネティックな効果器も組み込まれ、より強化されたシステムに対応できる。指揮・統制は国境を越えて共有され、フィンランド、エストニア、ラトビア、リトアニア、ポーランド、ルーマニアがシステムの初期の基盤を形成した。ドイツ、デンマーク、スウェーデン、ノルウェー、ウクライナ、モルドバも計画の進展に伴い枠組みに加わる可能性がある。

欧州当局は2026年までに早期能力を達成する見込みで、初期のレーダーやセンサーの配備と軽度の軽減インフラに限定される見込みである。技術的複雑さ、国境を越えた調整、調達サイクルの関係により、成熟し完全に相互運用可能なドローン・ウォールは2030年をターゲットに大幅に時間がかかる。予算見積もりはまだ最終的ではないが、初期の評価では、ヨーロッパはレーダー、電子戦システム、ソフトウェア・プラットフォーム、軽減技術の大規模な調達を含む数十億ユーロ規模の取り組みに直面している可能性が示唆されている。欧州の防衛産業や非EUパートナーがこれらの要件を満たす上で重要な役割を果たすと期待されている。

III. ドローン・ウォールを形作る重要な洞察

異なるドローン脅威は異なるC-UASアプローチを必要とする

効果的なドローン・ウォールをデザインするには、ヨーロッパが根本的に異なる2つのドローン脅威カテゴリーに直面しており、それぞれ異なる任務や振舞いを持つため、異なる対無人航空システム(counter-UAS)アーキテクチャが必要であることを認識する必要がある。それらを単一の問題として扱うと、非効率的または不必要にコストがかかるシステムのリスクがある。

軍用ドローン対策 – 米国防総省(DoD)グループ3以上(NATOクラスII、III)

このカテゴリーは、通常、戦争地域での作戦や国家主体に関連するドローンで構成されている。これらのプラットフォームはより長距離で運用され、より大きなペイロードを搭載し、自律航法(autonomous navigation)や自律した任務遂行(autonomous mission execution)をますます取り入れている。例としては、シャヘド・ドローンや空域侵入、防御を圧倒、戦略的ターゲットへの打撃のためにデザインされた中大型無人航空機(UAV)が挙げられる。

これらの脅威に対抗するには、早期警戒(長距離)探知と広範囲および複数の高度帯にわたる持続的な追跡が優先される。これにより、高高度での追跡連続性を維持しつつ、敵対者が地形隠蔽に利用する可能性のある低高度通路をカバーできる特殊な長距離レーダー・システムの必要性が高まる。重要なのは、遠隔の高高度のターゲットに最適化されたレーダーは、小型または低空飛行のプロファイルに対して本質的に効果的ではなく、異なるレーダー構成や信号処理の最適化が必要であり、画一的なアプローチではないということである。衛星ベースのインテリジェンスと監視は、特に発射探知において一部のグループ3以上の脅威に対する戦略的早期警戒を支援する。

グループ3以上の脅威に対する軽減策は異なる論理に従っている。これらのドローンは高い結果をもたらすターゲットであり、倒す1回のコストは速度、確実性、リーチの次に優先される。したがって、この層はミサイル、迎撃ドローン、高エネルギー・レーザー、高出力マイクロ波システムなどのハードキルかつ高出力のソリューションに依存しており、より高い交戦コストを伴っても迅速かつ決定的な交戦を実現できるようデザインされている。

商用およびDIY(自作)ドローンへの対抗 – DoDグループ1および2(NATO クラスI)

小型の商用およびDIY(自作)ドローンは通常、短距離プラットフォームで搭載量も小さいが、「スパイダーウェブ(Spiderweb)」が示すように、現在では戦略的な脅威となっている。空港、重要インフラ、国境、公共施設、軍事基地に影響を与える事案で、はるかに多く見られる。これらのドローンは多くの場合、標準的な通信プロトコルとリンクを用いて無線周波数は統制されている(RF-controlled。個別には安価だが、入手可能性、拡張性、民間生活や必須サービスの妨害能力から大きな課題を抱えている。

したがって、このカテゴリーに対抗するには根本的に異なる最適化が必要である。非戦争地域の環境では、安全性精密さ作戦の継続性コスト効率に優先順位が移る。空港、発電所、都市インフラは落下する破片や爆風の影響、広範囲の電磁的混乱に耐えられない。この能力のギャップは、ペンタゴンの対ドローン・タスク部隊のロス(Ross)少将によって2025年末に次のように指摘された。グループ3のドローンを撃破するための多くの防衛システムが存在する一方で、小型ドローン(グループ1および2)による脅威から軍人や一般市民を守るためにはまだ多くの課題が残っている[1]」。これは、最近米国の対ドローン部隊指揮官が強調したように、「単一の技術がすべてのドローン脅威を打ち破ることはできない」という現実を強化している[2]

これらの要求、特に付随的被害ゼロと運用干渉最小限を満たすために、対無人航空システム(counter-UAS)のシステムはRF-Cyber(無線周波数で行うサイバー攻撃機能)の中核能力によって支えられるのが最適である。これにより、ほとんどのドローンの探知、識別、追跡、制御された乗っ取り軽減が可能になる。ドローンの制御を引き継ぎ安全な着陸へ誘導することで、RF-Cyberのアプローチは破壊的な迎撃を回避し、人やインフラのリスクを減らし、ほぼゼロの損失コストと実質的に無制限の弾薬庫深度を提供する。ジャミングはRF-Cyberの届かないドローンに対するバックアップの第2軽減層として機能する可能性がある。

横断的洞察:センサー融合、人工知能(AI)、ソフトウェア、指揮・統制(C2)統合

ドローン・ウォールの核心的なアーキテクチャ的洞察は、グループ1-2およびグループ3以上の異なる対無人航空システム(counter-UAS)のシステムは指揮・統制(C2)レベルでのみ接続されるべきだということである。すべてのドローン脅威を単一の戦術的解決策で対処しようとすると、不要な複雑さが増し、効果が低下し、コストが増加する。正しい収束点は指揮・統制(C2)層であり、複数の対無人航空システム(counter-UAS)のシステムからのデータを統合して統一された防空状況にまとめる。このレベルでは、ドローンの脅威を航空機やミサイル防衛アセットと連携・管理し、国内および国境を越えた意思決定の調整が可能となる。このアプローチは、各対無人航空システム(counter-UAS)のスタックの任務最適化を維持しつつ、包括的な空域防衛を支援する。

各スタック内では、信頼性の高い探知と追跡を確保するためにマルチセンサー融合が不可欠である。単一のセンサーがすべての条件下で効果的に機能するわけではない。レーダー、無線周波数(RF)、電気光学、赤外線、音響センサーはそれぞれ、距離、高度、天候、雑音、プラットフォームの振舞いなど、固有の強みと限界を持っている。これらのセンサーを融合させることで、あるモダリティが別のモダリティ(ある種別のセンサーのデータが別種のセンサーのデータ)の盲点を補い、より一貫性が高く信頼できる運用状況を生み出す。

自動化とAI支援処理は、センサー入力の相関、誤報の減少、脅威の優先順位付け、探知(detection)から軽減(mitigation)への移行を加速させることで、この融合を支えている。これは、複数の拠点や重複する脅威ベクトルを管理しなければならない高速なシナリオや環境において特に重要である。

最後に、ソフトウェア中心のデザインがドローン・ウォールの長期的な実用性を支えている。ドローン技術や作戦コンセプトは、特に商業およびDIY(自作)分野で進化し続けている。固定されたハードウェア・ロジックではなく適応可能なソフトウェアに依存するシステムは、新しい探知シグネチャを取り入れ、軽減ワークフローを更新し、時間とともに融合ルールを調整できる。これにより、脅威が変化しても両対無人航空システム(counter-UAS)のスタックが効果的であり続け、物理的なアップグレードを常に必要とする。まとめると、ドローン・ウォールは2つの任務最適化型対無人航空システム(counter-UAS)のスタックに依存しており、これらはより高い指揮・統制(C2)レベルで統合され、センサー融合、自動化、ソフトウェアの機敏性によって支えられている。このアーキテクチャは、防御能力を現実の脅威の振舞い(threat behavior)と整合させつつ、安全性、持続可能性、作戦上の効率を維持する。

IV. 政治的課題

2025年9月にウルズラ・フォン・デア・ライエン(Ursula von der Leyen)がこの計画を発表してからわずか数週間で、主要なEU諸国から抵抗が現れた。2025年10月のサミットで、フランスのエマニュエル・マクロン(Emmanuel Macron)大統領はこの提案を「提案よりも洗練され、複雑すぎる」と一蹴し、ドイツのフリードリヒ・メルツ(Friedrich Merz)首相は権限をEU主導の中央集権的な防衛構造に移すことに反対した。その結果、ドローン・ウォールは政治的な意見の相違、資金の不確実性、組織の複雑さに制約された状態で初期段階に入る[3]

プログラム名自体は「ドローン・ウォール(Drone Wall)」から「欧州ドローン防衛イニシアチブ(EDDI:European Drone Defence Initiative)」に更新され、技術的性質と政治的範囲の両方をよりよく反映している[4]。元の用語は誤解を招くものと見なされ、多層的で相互運用可能な対ドローン・システムではなく物理的な障壁を示唆し、EUの東部国境に限定された焦点を示唆した。改訂された名称は大陸全体で360度防御的なアプローチを強調し、フランスやドイツが提起した政治的懸念に対処し、このイニシアチブに関するより広範な合意形成を支援するものである。

V. 結論

ヨーロッパの空は急速に変化しており、防衛もそれに応じて適応しなければならない。ドローン・ウォールは現在ヨーロッパ・ドローン防衛イニシアチブ(EDDI)として知られており、ドローン時代における柔軟で知的かつ持続可能な空域防護への大きな転換を示している。しかし、正しく構築するには「スパイダーウェブ(Spiderweb)」の厳しい教訓を受け入れる必要がある。つまり、画一的な防御は通用しないということである。真の安全保障には二分のアプローチが必要である。高高度の軍事脅威には従来の防衛が不可欠だが、小規模なドローン侵入の戦略的現実にはRF-Cyberに根ざした専用のソリューションが必要である。この技術だけが小型ドローン防衛のギャップを埋め、安価なスウォームが国家インフラを停止させる時代において安全と継続性を確保することができる。これら異なる任務最適化型対無人航空システム(C-UAS)システムをグループ1-2およびグループ3以上層の指揮・統制レベルで統合することで、ヨーロッパは政治的なためらいを超え、将来の非対称脅威に真に対応可能なシールドを築くことができる。

RF-Cyberの引継ぎ、統合AI融合、そしてこれらの要件に適合する指揮・統制(C2)対応のカウンター・ドローン・システムについて詳しく知りたい方は、D-Fend Solutionsのウェブサイトを参照されたい。

ノート

[1] ペンタゴンの対ドローン対策タスクフォース計画 ゴールデンドームリンク

[2] 単一の技術がすべてのドローン脅威を打ち破ることはできないと、新たな米対ドローン部隊司令官が述べている

[3] EUによる反ロシア「ドローン壁」の争奪が政治的・技術的障害に直面

[4] 『ドローンの壁』とは呼ばないでください。