接触下の変革:陸軍は今、無人システム・コマンドを必要としている (smallwarsjournal.com)
MILTERMでは、米陸軍の変革に関わる取組みを紹介してきている。中でも「Transforming in Contact」という用語が示すように、戦いながらでも向き合っている戦いに勝つためには、そのような状況下でも変革を進めていくという態度が必要ということであろう。ここで紹介するのは、ウクライナでの教訓に基づいて、無人機に関わる指揮・統制についての変革に関する意見を述べたsmallwarsjournal.comの記事である。(軍治)
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接触下の変革:陸軍は今、無人システム・コマンドを必要としている
Transforming in Contact: The Army Needs an Unmanned Systems Command Now
04.14.2026
smallwarsjournal.com
ジェームズ・M・ピーターソン(James M. Peterson)大尉は、第82空挺師団第1旅団に所属する軍事インテリジェンス将校。ジョージ・メイソン大学で国際関係学および国際安全保障の学士号を取得している。アリゾナ州フォート・ワチュカの軍事インテリジェンス大尉キャリア・コース(MICCC)第26-001期、およびワシントンの国家地理空間インテリジェンス局(NGA)の画像インテリジェンス将校コースを修了している。軍歴は、第101空挺師団(空中強襲)や第82空挺師団など、第18空挺軍団の複数の部隊に及び、ワシントン軍管区(MDW)でも勤務経験がある。中尉時代には、「トライデント・レディ作戦(Operation Trident Ready)」の一環として、欧州コマンド(EUCOM)戦域に派遣され、ウクライナ合同多国籍訓練グループ(JMTG-U)を支援した。彼が現在関心を寄せているのは、ロシア・ウクライナ戦争から得られた教訓、特に小型無人航空機システム(SUAS)とAIデータ・プラットフォームを従来の軍事部隊に統合することである。この記事で表明されている見解は著者のものであり、米国陸軍、米国陸軍省、または米国政府の公式の方針や立場を反映するものではない。
記念撮影に応じるウクライナ無人システム部隊の第412連隊「ネメシス(Nemesis)」(爆撃ドローンを専門とする部隊)の隊員たち |
概要:米国陸軍は、同等またはそれに近い脅威に対する大規模戦闘作戦に備えるため、「接触における変革」イニシアチブを進めている。陸軍長官は、無人航空システム(UAS)をあらゆる部隊に統合することを優先事項としている。ウクライナ無人システム部隊(USF)の教訓と、連隊の無人システム能力を開発したウクライナ特殊作戦部隊チームへのインタビューから得られた知見に基づき、米国陸軍無人システム・コマンド(USAUSC)を直ちに設立することが不可欠である。陸軍は複数の短距離偵察用無人航空システム(UAS)を試験運用しているが、現在の配備ペースでは、次の紛争前に適切な訓練と統合を行うには不十分である。これに対処するため、陸軍は3つの根本的な課題に取り組む必要がある。すなわち、各大隊が任務遂行に不可欠なタスクに沿ったシステムを調達できるように、ボトムアップのアプローチで無人航空機システムの調達を加速すること、各大隊に専門家集団とイノベーション・ラボを設置すること、そして陸軍インテリジェンス・データ・プラットフォーム(AIDP)を使用して、あらゆる階層でミッション・コマンド(mission command)、インテリジェンス、およびターゲティングを同期させる統一アーキテクチャを構築することである。
序文
戦争の未来は進化を遂げた。ロシア・ウクライナ戦争勃発時、ロシア軍はより高価な装備、より大規模な兵力、そして暗闇での戦闘能力において優位に立っていた。しかし、これはロシア軍の勝利を決定づけるものではなかった。ウクライナ軍は、より大規模で装備の整ったロシア軍に対抗するため、数千機のドローンを投入した。未来の戦争は、小規模地上部隊の戦闘力増強手段として機能し、主導権を握り、敵の能力を徐々に弱体化させる、手頃な価格で半自動化された長時間の飛行が可能なシステムを特徴とするだろう。米陸軍は、現在の能力を強化し、大国間競争で優位に立つための革新を行うため、米国陸軍無人システム・コマンド(USAUSC)を設立する必要がある。
ウクライナからの教訓
ロシア・ウクライナ戦争は、無人システムが現代の戦術に不可欠であり、指揮官が対策を講じる必要のあるアセットであることを示した。ウクライナ軍は2014年以来、主に2,000米ドルのDJI Mavicなどの市販のドローンを情報収集、監視、偵察(ISR)および戦術レベルのターゲット設定に使用してきた。2024年9月、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、ウクライナ軍の独立した部門としてウクライナ無人システム部隊(USF)を設立する法案に署名した。
ウクライナ無人システム部隊(USF)はボトムアップ方式で誕生し、最終的には最前線で戦闘に従事するエンド・ユーザー主導で設立された。ウクライナ無人システム部隊(USF)設立以前は、オペレーター同士が直接連絡を取り合い、これらのシステムを戦闘で活用するための最適な戦術、技術、手順(TTP)を策定していた。しかし、このシステムでは部隊全体で共通理解が得られず、戦場の共通作戦状況図や情報状況図が不十分でした。こうした共通理解と状況認識の欠如は、戦場全体で多くの兵士の命を奪うことにつながっている。
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図1:ウクライナのドローン戦闘空間における3つのゾーンすべてにおける無人航空システム(UAS)アーキテクチャの例。ゾーンごとのアセットと戦術的作戦センター(TOC)/統合作戦センター(JOC)への接続媒体を一覧表示。ピーターソン(Peterson)大尉と米陸軍特殊作戦部隊(UA SOF)将校が作成した図。 |
ウクライナ無人システム部隊(USF)は、戦場全体の状況認識を得るために、火力チームから国家機関まであらゆる階層で無人航空システム(UAS)の統合を可能にした。この統合は、共通の作戦状況図と情報状況図を作成する上で不可欠である。無人航空システム(UAS)の作戦戦闘空間には、ゾーン1:戦術ゾーン、ゾーン2:作戦ゾーン、ゾーン3:戦略ゾーンの3つのゾーンがある。ゾーン0は、戦略レベルのアセットのための大型地上局の聖域エリアで、前線部隊の後方に位置している。各ゾーンには、そのエリアでの有効性を最大化するために特別に最適化および構成された独自のアセット・エコシステムがある。3つのゾーンすべてが、共通作戦状況図(COP)、共通インテリジェンス状況図(CIP)、およびターゲティング・システムを自動的に更新する1つの統合ネットワークにデータを供給する。人工知能(AI)が各フィードをスクリーニングしてターゲットを検出した後、人間のオペレーターは、AIがフラグを付けたターゲットを評価および検証してから、自動的にオーバーレイとターゲット・リストに配置する。この手順は、自律プロセスの誤用を防ぎ、作戦エリアで任務を遂行するオペレーターにターゲットの確認済み位置を知らせるのに役立つ(図1)。
図2:ウクライナ特殊作戦部隊将校がゾーン2での攻撃のために単独の攻撃用無人航空機プラットフォームを準備している様子(ウクライナ特殊作戦部隊将校の個人コレクションより) |
無人航空システム(UAS)オペレーターは通常、少なくとも2機の機体で構成されるチームで運用し、1機は観測プラットフォームとして、もう1機は攻勢的打撃能力として機能する。これは規則ではなく、より良い機会のターゲットが現れた場合、攻撃機は単独で行動することができる(図2)。中隊レベル以下の人員は、特別に訓練された4~5名のクルーで構成されている。大隊レベル以上では、ファームウェアの更新、新しい機器の配備、回収作業の実施、エンド・ユーザーが遭遇する可能性のある問題のトラブル・シューティングのための専門知識の提供に重点を置く小規模な研究開発セクションがある(図3)。上級リーダーは、各中隊から最も優秀なオペレーターを選抜し、大隊レベルで専門家として勤務させる。
図3:ウクライナ特殊作戦部隊将校がゾーン2でレケカ(コウノトリ)無人航空機を回収している様子(ウクライナ特殊作戦部隊将校の個人コレクションより) |
The 2026 Readiness Gap:2026年の即応性のギャップ
陸軍は小型無人航空機システム(SUAS)の調達においてトップダウン方式を採用しており、第18空挺軍団とその隷下部隊でシステムの試験を実施している。得られたデータは、任務内容と部隊全体への展開に最適なシステムを決定するための情報となる。このプロセスには時間と複数回の試験が必要であり、最適なプラットフォームを決定する必要がある。現在、陸軍はクワッドコプターやその他の垂直離着陸可能な無人航空システム(UAS)の配備を検討しているが、これは試験結果に基づいて変更される可能性がある。
これは、陸軍が小規模部隊に無人航空システム(UAS)を配備する初めての試みではない。陸軍は2018年に分隊レベルのセンサーとしてホーネット小型無人航空機システム(SUAS)を配備した。ただし、このシステムは継続的な監視ではなく、近接戦闘会戦作戦(close-quarters battle operations)向けにデザインされている。2025年6月現在、陸軍は第101空挺師団第2旅団や第10山岳師団第3旅団などの接触旅団での変革で短距離偵察(SRR) 無人航空システム(UAS)の試験を 開始している。航空部門が現在短距離偵察(SRR)プログラムを管理している。ただし、これらの短距離偵察(SRR)プラットフォームは、グレイ・イーグル(Grey Eagle)などの大型固定翼ISRプラットフォームとは大きく異なり、階層に基づいて異なる任務を実行する。
部隊が現在利用している解決策の一つにチーム認識キット(TAK:Team Awareness Kit)があるが、これは複雑な問題セットに対する部分的な解決策にすぎない。このシステムの統合は、地上の戦闘員にリアルタイムの状況認識を提供するために不可欠であるが、上位部隊に情報を提供するために必要なデータ量を処理する帯域幅が限られている。リアルタイム・データを迅速に送信、処理、分析する能力は、共通作戦状況図を作成するために不可欠である。米陸軍は現在、これらのプラットフォーム上のこれらのセンサーからのすべてのデータとビデオ・フィードを統合する統一アーキテクチャを持っていない。これは、戦術作戦センター、統合作戦センター、統合情報作戦センター、または同様の指揮所の状況認識を制限し、補助部隊と全体的な任務の両方に悪影響を及ぼす。各メーカーは、オペレーターへのビデオの制御と送信のための独自のシステムと方法を持っており、これらはケースバイケースでアーキテクチャに統合する必要がある。提案されている米国陸軍無人システム・コマンド(USAUSC)は、これらのプラットフォームに対する責任を負い、既存の枠組みと連携する統一的な指揮系統に統合し、作戦を効率化するための明確な指揮系統を確立する。
今後の可能性
米国陸軍無人システム・コマンド(USAUSC)を設立し、2030年以降の近代化目標を達成するためには、陸軍は3つの根本的な課題に取り組む必要がある。陸軍が現在直面している最初の課題は、地上のオペレーターが新しい無人航空システム(UAS)システムを現場に投入し、テストするスピードである。無人航空システム(UAS)プラットフォームの取得とテストには、ボトムアップのアプローチを採用することが不可欠である。このアプローチでは、各戦闘部隊大隊が任務遂行に必要なタスクリスト(METL)に沿ったシステムを購入するための予算を確保することで、各部隊が小型無人航空機システム(SUAS)について独自の決定を下せるようにし、権限を与える。最下層がこれらの決定を下し、必要に応じて迅速に方向転換できるようにすることで、絶えず変化する戦場において、より効果的で、個々のニーズに合わせた、長期的な解決策が実現する。
2つ目の課題は、戦術レベルにおける無人航空システム(UAS)運用に関する専門家の不足である。この問題を解決するには、各大隊に専門家チームとイノベーション・ラボを設置し、戦術・技法・手順(TTP)、ハードウェア、ファームウェアの改善、新システムのテストに取り組む必要がある。無人航空システム(UAS)の運用者や整備員、通信部門の要員、情報部門の要員から専門家を採用することで、イノベーションが促進され、有効性が向上する。
3つ目の課題は、現在のアーキテクチャでは全階層にわたる包括的な状況認識が欠如していることである。ミッション・コマンド(mission command)、インテリジェンス、およびターゲティングを同期させる統合アーキテクチャが不可欠である。陸軍は、これらの機能をサポートし、データをシームレスに転送するための単一の標準オペレーティング・システムを特定する必要がある。陸軍インテリジェンス・データ・プラットフォーム(AIDP)は、これらの任務遂行上重要なコンポーネントを融合するための基盤構造となるべきである。上位階層はこのフレームワークを確立し、モジュール型ソフトウェアが最下層に展開可能であることを保証して、上位への情報フローを促進する必要がある。米陸軍は、ウクライナのゾーンモデルと同様の構造を実装し、米国の作戦ニーズに合わせてゾーンを調整することができる。このモデルにより、米陸軍は階層全体にわたる状況認識を強化し、既存のデータシステムを統合してシームレスな作戦を実現できる。このアプローチを米陸軍のより大規模な部隊構造に対応できるように拡張することで、高度なAIと自動化を活用してミッション・コマンド(mission command)、インテリジェンス、およびターゲティング・データを効率的に統合する一貫性のある戦略が確保される。
2030年の軍隊を実現する
陸軍がこれらの問題に対処し、ウクライナで得た教訓を活かせば、2030年以降の陸軍へと発展していく中で、同等またはそれに近い脅威に対抗する上で、はるかに有利な立場に立てるだろう。中国やロシアのような敵対国は既にこの道を歩み始めており、今こそ米国が主導権を握り、あらゆる無人航空機システム(UAS)分野で世界的な支配力となるべき時である。しかし、敵対国は米国の無人航空機システム(UAS)技術の進歩に対抗する手段を開発するかもしれない。彼らは電子戦能力を強化して無人航空機システム(UAS)の通信や制御を妨害したり、対ドローン技術を展開して無人航空機システム(UAS)の運用を無力化したりする可能性がある。中央集権的なドローン部隊は、分権化され連携が取れていない地上レベルのイノベーションよりも、これらの課題に対する解決策をはるかに迅速に生み出すだろう。これらの潜在的な適応策は、米国陸軍無人システム・コマンド(USAUSC)の設立が包括的な解決策ではないものの、大国間競争における優位性を維持するための必要な第一歩であることを強調している。



