ミッション・コマンドが繁栄するための条件の設定 (Military Review)

ウクライナに侵略したロシア軍の指揮の特徴として指揮の膠着化を挙げる向きも見られる。一方ウクライナ軍は、米国を中心とする軍隊から学んでいると言われミッション・コマンドと言われる指揮・統制の考え方を取っているとの話も聞く。米軍は、イラク、アフガニスタンでの不正規軍との戦闘を経験しながらミッション・コマンドという指揮・統制の在り方を統合レベルで模索してきた経緯がある。当時の米統合参謀本部議長デンプシー米陸軍大将はミッション・コマンド白書を2012年4月3日付で発行し、各軍種でのミッション・コマンドの採用と統合レベルでの浸透を狙った。米陸軍では当時の米陸軍訓練ドクトリン・コマンドがミッション・コマンド検討を行い、2012年の米陸軍ドクトリン出版物「ミッション・コマンド」(ADP 6-0)の制定に繋がっている。ここで紹介するのは、ミッション・コマンドがドクトリンとして定められたにもかかわらず、米陸軍内への定着に苦慮していることを窺わせる米陸軍Military Reviewの記事である。この記事は、米陸軍訓練ドクトリン・コマンドの司令官を最後に退役したDAVID G. PERKINS大将へのインタビュー記事を含んだものである。DAVID G. PERKINS退役大将は、米陸軍が大きく関わっていたイラク侵攻作戦(イラクの自由作戦)当時の正規軍同士の戦いの最終段階に行われたバグダッド陥落としても知られるバグダッドの戦いで旅団長として従事している。この戦いに至るDAVID G. PERKINS退役大将の経験をミッション・コマンドからの視点で分析した記事となっている。ミッション・コマンドを阻むものとして文化や風土といった点で論じたところは、参考となるところがあるかもしれない。(軍治)

ミッション・コマンドが繁栄するための条件の設定

Setting the Conditions for Mission command to Flourish

Lt. Col. Marc (Dewey) Boberg, EdD, U.S. Army, Retired

Maj. Justin Cunningham, U.S. Army

Military Review July-August 2023

マーク(デューイ)ボーバーグ退役米陸軍中佐は、ニューヨーク州ウェストポイントにある米陸軍士官学校(USMA)のサイモン専門軍事倫理センターの将校職長を務めている。米陸軍士官学校(USMA)でリーダーシップ研究の理学士号、トロイ大学で経営学の修士号、ブリガム・ヤング大学で教育リーダーシップの研究学位(EdD)を取得している。彼は以前、ベネズエラのカラカスにあるベネズエラ装甲騎兵学校、米陸軍士官学校(USMA)の外国語学科(スペイン語およびラテンアメリカ研究)で交換将校、ブリガム・ヤング大学の軍事科学の教授として教えていた。彼のキャリアの間に、彼は第1騎兵師団と第2歩兵師団で装甲将校を務め、第3歩兵師団とのイラクの自由作戦を支援するために2回配備された。

ジャスティン・カニンガム(Justin Cunningham)米陸軍少佐は、ニューヨーク州ウェストポイントの米陸軍士官学校(USMA)のサイモン専門軍事倫理センターに勤務する装甲将校である。彼は米陸軍士官学校(USMA)でロシア語の理学士号を、ミズーリ大学で文学の修士号を取得している。彼は以前、英語と哲学の部門で教え、現在は米陸軍士官学校(USMA)の将校職に関する部長職の基礎課程を教えている。彼は以前、第1歩兵師団、第101空挺師団(空襲)、および第4歩兵師団で作戦任務を務め、不朽の自由作戦を支援するために配備された。

2003年4月、第3歩兵師団第2旅団「スパルタン(Spartans)」は、イラク自由作戦の一環として、市街地や郊外、農耕地帯の砂漠、人里離れたワジなど、多様な地形にわたる大規模戦闘作戦(large-scale combat operation :LSCO)を成功させた。現在では「サンダー・ラン(Thunder Run)」と呼ばれるこの作戦は、旅団がバグダッドのダウンタウンに攻め入るという複雑な都市環境で最高潮に達した。

地形も作戦も本質的に複雑なため、分権的な実行が必要だった。指揮官のデイビッド・パーキンス(David Perkins)米陸軍大佐は、このような混沌とした環境に内在する課題を認識し、このような状況下でもうまく作戦を遂行できる隷下部隊を信頼していたため、自分の旅団戦闘チームがこの混沌を利用できると評価した[1]

当時はまだ、米陸軍ドクトリン出版物(ADP)6-0「ミッション・コマンド(Mission command」が米陸軍のドクトリンとして出版されるはるか前であったが、スパルタン旅団(Spartan Brigade)は、その後、ミッション・コマンドの原則(principles of mission command)へと発展したものの多くを行使して大規模戦闘作戦(LSCO)を成功させ、指揮官の意図を達成するために、隷下部隊や個人の才能と規律ある主導性(disciplined initiative)を解き放った。

2003年4月7日にバグダッド近郊で元の旅団戦術作戦センター(TOC)へのロケット攻撃の後に急遽設置された戦術作戦センター(TOC)から闘いを導いている第3歩兵師団第2旅団のエリック・ウェズリー(Eric Wesley)米陸軍中佐。

(写真提供: エリック・ウェズリー(Eric Wesley)退役米陸軍中将)

2003年4月7日の「サンダー・ラン(Thunder Run)」の成功は、前夜の純粋な、または巧妙な計画策定行動によるものではない。むしろ、積極的なリーダーシップ、訓練で培った総合能力(competence)、そして大きな作戦目的の共有された理解と集団理解に基づく信頼という指揮の風土(command climate)を1年以上かけて醸成してきた集大成であった[2]

ミッション・コマンド(mission command)は、指揮・統制に関する米陸軍の現行ドクトリンである。指揮官が、その参謀に支えられ、指揮・統制の術と学(art and science)を一体化し、部隊を任務達成に導く方法を説明している。

ミッション・コマンド(mission command)は、適切に行使されれば、上級指揮の意図と目的の範囲内で、「状況に応じて適切な意思決定と分権的な実行を部下に与える」ものである[3]。最終的には、指揮官の意図に示された洗練された目的を達成するために、組織の才能と能力を最大限に発揮させ、規律ある主導性(disciplined initiative)を発揮させるのである。

現実には、指揮官がただ部隊に現れて、ミッション・コマンドの原則(principles of mission command)を使うと宣言することはできない。最終的に部隊がどのような状況下でも活躍できるような条件を整えるプロセスが必要である。

指揮官をはじめとする組織全体が、ミッション・コマンドの原則(principles of mission command)を受け入れ、育成する必要がある。効果的に行われると、結果は活躍する組織であり、成功のより高いレベルに到達し、困難な状況下でも成長し、指数関数的に成長することができる。

部隊も個人も、その能力と才能をフルに発揮して、期待に応え、期待を上回ることができる。さらに重要なことは、指揮官が予想していなかったような予期せぬ状況下でも、部下が好結果を上げることができるということである。なぜなら、指揮階層における部下は、指揮官が見ることのできないような状況に適応しているからである。ミッション・コマンド(mission command)は、安定したリターンを生み出す401(k)のようなものである[4]

2002年5月にジョージア州フォートスチュワートで海外展開の準備をするレッド・クラウド戦車演習場の第64機甲連隊第1大隊

(写真提供:アンディ・ヒルメス(Andy Hilmes)退役米陸軍准将)

指導者たちが権限移譲(empowerment)の利点を活用する前に、信頼を築き、積極的な組織風土(organizational climate)を醸成し、結束力のあるチームを作らなければならない。多くの点で、権限移譲(empowerment)につながる原則を順序立てて継続的に適用することが重要である。相互信頼の風土(climate of mutual trust)は一度に築かれるものではなく、継続的なプロセスであり、日々強まったり弱まったりするものである。

ミッション・コマンドの原則(principles of mission command)を適用することで花開く組織風土(organizational climate)は、3つの重要なステップ-チーム構築(building teams)、伝達しあう(communicating)、権限移譲(empowerment)-を通じてそれを発展させる。

チーム構築

・総合能力(competence)

・相互信頼(mutual trust)

伝達しあう(Communicate)

・共有された理解

・指揮官の意図

・ミッション・オーダー

権限移譲(empowerment)

・規律ある主導性(disciplined initiative)

・リスクの許容[5]

ミッション・コマンドの原則(mission command principles)を効果的に用いることで、スティーブン・コヴィー(Stephen Covey)博士が言うところの「創造的興奮(creative excitement)」がもたらされる[6]。重苦しい統制の束縛を緩め、チームが明示された基準の遵守を超える力を与え、ミッション・ステートメントに概説された目的を達成するための最善の方法を模索することを可能にする。

ミッション・コマンドの原則(mission command principles)に基づく組織文化の中で働く、信頼できる個人から成る結束力のある部隊は、指揮官の意図を達成するために、その才能を発揮する用意がある。ミッション・コマンドの原則(mission command principles)の適用は、究極的には信頼とプロフェッショナリズムに基づく権限移譲(empowerment)であるため、あらゆるレベルの部下に多くを要求する[7]

このような組織を構築するには、中央で情報や意思決定を統制するのではなく、部下が主導性(initiative)を取ることを奨励する部隊の信頼文化が必要である。ミッション・コマンドを効果的に用いれば、文字通り、指揮官の意図する範囲内で正しい決断を下すよう、最下層に至るまで権限を与えられ、信頼されるチームとなり、学習する組織風土(learning organizational climate)が生まれる。

指導者たちは、信頼性(trustworthiness)に基づく風土を醸成することで、全体的な文化に影響を与える。指揮官は、部隊が何をするか、あるいは何をしないかについて、依然として責任を負っているが、ミッション・コマンドの原則(principles of mission command)に基づく部隊の風土を適切に作り上げれば、「目を離さず、手を離さず」という考え方や機能性を持つ統制者ではなく、促進者になる。

チェスの名人のように、組織の一挙手一投足を意図的に統制しながら指揮を執ろうとする誘惑は、細部に至るまで指揮を執るのではなく、作物が育つような条件を整えるという農夫のようなアプローチに道を譲らなければならない[8]

イラクの自由作戦が始まる前の2003年3月、クウェートのウダリ山脈複合演習場で訓練を行う第3歩兵師団の兵士

(写真提供:第3歩兵師団)

あるいは、ミッション・コマンド(mission command)がなければ、指導者たちは要求に圧倒され、自分の判断だけに頼ることになる。つまり、彼らの編成にいる全員の感覚と判断力の拡張された能力容量(extended capacity)を活用することができない。スパルタン旅団(Spartan Brigade)の場合、パーキンス(Perkins)は自分の頭脳と観察力だけでなく、5千人の頭脳と感覚を戦場に解き放つことができた[9]

チームの構築:Build Teams

最初のステップである「チーム構築(Build Teams)」では、信頼に基づいた前向きな指揮の風土(command climate)の醸成が重要である。リーダーシップとは、単に何をすべきかを指示する以上のものであり、任務に対する理解と信念を他者に鼓舞し、その信念が現実のものとなるようにすることである。

米陸軍ドクトリン出版物ADP6-22「米陸軍のリーダーシップと専門職(Army Leadership and the Profession」は、リーダーシップを「任務を達成し、組織を改善するために、目的、方向性、動機(motivation)を与えることによって、人々に影響を与える活動」と定義している[10]

部隊の指導者たちは、風土をどのように発展させ、育てていくかに大きな影響力を持つ。直接的で統制的なアプローチをとり、あらゆる場面で強制される特定の一連の期待に厳格に従うようにすることもできるし、プレイヤーが一挙手一投足を完全に統制するボード・ゲームをプレイするのとは違って、学習する組織(learning organization)を確立するための条件を作り出すこともできる。

学習する組織(learning organization)を構築するためには、指導者たちもまた、部下が快適な領域(comfort zones)から抜け出し、リスクを冒し、失敗から学び成長し、新たな高みを目指すことを促すような信頼感と心理的安全感を醸成しなければならない。この種の組織は、より良い収穫を求めて畑を耕す農夫のように、育成に時間がかかる。正しく行われれば、信頼されていると感じ、信頼を拡大するために自ら責任を負うチームを生み出すことができる。

指揮官は、中隊、大隊、旅団、そしてそれ以上と、あらゆるレベルの組織の風土に最終的な責任を負っている。米陸軍人事戦略(Army People Strategyでは、米陸軍文化を「組織の社会環境を動かす基礎となる価値観、信念、振舞いであり、任務達成に重要な役割を果たす」と定義している[11]

米陸軍リーダーシップ・センターは、部隊の風土と文化の違いについて説明している。米陸軍の文化とは、組織のより大きな、戦略レベルの信念、慣習、規範、シンボル、伝統、言語、および人工物であり、非常に長続きし、変えるのが難しい、一方、風土はもっと局地的で、組織の指導者たちやメンバーによって影響を受ける[12]

学習する組織(learning organization)内の相互信頼の風土では、指導者たちと部下は、複雑な課題を解決するために、適応し、革新し、創造性を発揮しやすくなる。これは、指導者たちが部下の判断を信頼するようになり、部下も指導者たちが自分の判断を支持してくれると確信するようになったからである。

やがて、この相互信頼の雰囲気は、部下がリスクを冒し、新鮮で独創的なアイデアを実行に移すことを促す。これこそ、ミッション・コマンドの適用(application of mission command)の潜在的な力である。しかし、指導者たちと部隊は、パフォーマンスを継続的に向上させるための学習プロセスの一環として、「正直な(honest)」失敗を犯すことを許されなければならない。

組織風土(organizational climate)は、その組織に関するメンバーの認識や態度を反映するものであり、組織の日常的な運営や機能に由来するものである。風土は、チーム・メンバーの士気、結束力(cohesion)、コミットメント、主導性(initiative)、信頼、動機(motivation)、そして最終的にはパフォーマンスに影響を与える。一般的に、風土は現在の人的ネットワークに基づいてより好意的になり、指導者たちの出入りに応じて変化することがある。

積極的な組織風土(organizational climate)の創造は、指導者の中核的能力である。組織の風土は、全体的な文化のサブセットであり、現在の指導者によって大きな影響を受け、最終的にはより大きな組織文化に影響を与えることになる[13]

信頼(trust)の定義について悩むとき、信用性(credibility)、信念(belief)、委任(delegation)、権限移譲(empowerment)、信任(confidence)など、いくつかの用語が思い浮かぶ。信頼(trust)は単純に「信任(confidence)」と定義することができ、その反対語は「疑念(suspicion)」や「疑い(doubt)」である[14]。誰か(あるいはチーム)に対する信頼(trust)があれば、その人の能力と特定の成果を達成するためのコミットメントに対する信頼がある。

誰かや何かに対する信頼(trust)が欠けているとき、我々はその人が何かを成し遂げる能力(ability)に対して疑心暗鬼(suspicious or doubtful)になる。より広い言葉で言えば、信頼(trust)とは、誰かや何かの信頼性(reliability)、能力(ability)、能力(capability)、信用性(credibility)を信じることである。相互信頼は、部隊全体の能力(capability)、信頼性(reliability)、信用性(credibility)、に対する信任(confidence)を生む。

信頼を鼓舞すること(inspiring trust)は成功に不可欠である。なぜなら、信頼を鼓舞することで、ある人(または部隊)が積極的な結果を達成できるという信頼(trust)や信任(confidence)を抱かせる積極的な振舞いが育まれるからである。我々はこれを「信頼性(trustworthiness)」と定義している。他人は我々の振舞いしか見ていないため、我々個人は、自分の選択と振舞いによって、信頼されるに値するかどうかを統制することができる。

我々が信頼性(trustworthiness)に関連する振舞いを示すとき、我々は他者から信頼を寄せられる機会を提供する。我々は、他者も含めて我々を信頼できることを示し、望ましい結果や指揮官の意図を達成するための我々の能力(our ability)とコミットメントに自信を持つよう、他者を招いている。我々は信頼できるというメッセージを発信しているのだ。

信頼性(trustworthiness)は専門家の自律性の前提条件であるが、我々はしばしば信頼の多次元的な本質について考えることはない。信頼のレベルは、委託者の信頼傾向や受託者の性格、総合能力(competence)、コミットメント、思いやりによって左右される。簡単に言えば、たとえ信頼に値する人であっても、その人が信頼されているとは限らないということである。

コーチのジョン・ウッデン(John Wooden)は、エイブラハム・リンカーン(Abraham Lincoln)の言葉をよく使っていた。「信頼すれば、ときどき失望するが、不信すれば、いつも惨めな思いをすることになる」[15]。確かに、他人に力を与える(信頼する)と、自分がやったかもしれないのと同じようには仕事を成し遂げられないかもしれない。また、彼らがまったく仕事を成し遂げない可能性があることも事実である。

しかし、リンカーン(Lincoln)の言葉が示すように、不信感を抱けば、自分がすべてをやらなければならない、少なくともプロセスのすべての段階を統制しなければならないと思い込んでしまい、いつも惨めな思いをすることになる。信頼には、コーチングを受けられる謙虚さと、説明責任を果たそうとする意欲、そして他者の可能性を認めようとする意欲が必要である。

信頼の文化(culture of trust)とは、我々がお互いにフィードバックを提供し合い、それが我々の改善をサポートするものだと考えることができることを意味する。我々は自らの過ちを認め、プロセスを改善するための計画を立て、その教訓を生かすことで、より良いパフォーマンスを実現し、真の学習する組織(learning organization)となる。

このような風土を作り出すために、スパルタン旅団(Spartan Brigade)は直面する課題の複雑さを理解しようと数カ月を費やした。指導者と部隊は、互い、環境、敵を理解することを学ばなければならない。多くの異なる視点を取り入れ、仮定に挑戦し、アイデアや解決策をストレステストする必要がある。

「サンダー・ラン(Thunder Run)」に先立ち、スパルタン旅団(Spartan Brigade)のメンバーは、フォート・スチュワートとナショナル・トレーニング・センター(NTC)で1年以上にわたる猛訓練を行い、その後、クウェートの砂漠で数カ月にわたる実戦訓練を経て、出発線(line of departure)を越えた[16]

訓練を繰り返すたびに、指導者たちは移動中の指揮・統制の新しい方法を模索し、試し、さまざまな機動隊形を使い、資源を活用する革新的な方法を見出した。多くの点で、訓練とは敵が何をしうるか、それに対応する選択肢は何かを視覚化する方法である。

パーキンス(Perkins)は、「戦術作戦センター(TOC)の構成から、各自のロードプラン、そして出発線(line of departure)を越える直前にボルトオンされたブルー・フォース・トラッカー(Blue Force Tracker)の活用方法まで、あらゆることにどれだけの訓練、分析、そして自己検討を重ねたかは、いくら言っても言い過ぎではない。このすべての訓練の間に、自分自身と自分の部隊を知るという重要な「秘伝のタレ(secret sauce)」を作り続けているのだ」[17]

毎食時と毎晩、指導者たちは集まって非公式なウォーゲームを行い、遭遇する可能性のある状況について、可能なシナリオや「もしも(what if)」のシナリオを検討した。どんな議論やアイデアも禁止されることはなかった。その後、部隊は何度も訓練で新しいアイデアをテストした、あるものは決勝に進み、あるものはすぐに破棄された。

その狙いは、敵に複数のジレンマを提示するために、常に改善し、複数の選択肢を開発することだった。絶え間ない対話は、問題を徹底的に理解し、最も下級の兵士に至るまで説明するための鍵である。それはまた、信頼を築くための重要な要素でもある。パーキンス(Perkins)は言った。「上官や部下を信頼していない部隊を示せ、対話がうまくいっていない部隊を示そう」[18]

「サンダー・ラン(Thunder Runs)」での指揮官であった第64機甲連隊第4大隊A中隊のアンドリュー・ヒルメス(Andrew Hilmes)准将(退役)が後に語ったように、「我々の成功は信頼の文化から生まれたものであり、砂漠での訓練経験がそれを強化した」のである[19]

組織の風土は、メンバーが日々考え、感じている、共有された認識や態度から発せられる。風土の現状は、部隊メンバーの普段の振舞いを通じて示され、最終的には彼らのパフォーマンスによって示される。ADP 6-22によると、組織内の全員が風土に貢献しており、積極的で信頼される風土を求めるのであれば、彼らの振舞いやパフォーマンスも風土の一部である[20]

指導者の最も重要な役割は、人々に活力を与え、励まし、つながりのある人間関係と優れたチームワークを育み、人々に力を与え、成長させ、組織の望ましい成果を達成する機会を提供するような、積極的な風土(positive climate)を作り出すことである。

組織風土(organizational climate)は期待や信念を動かし、それが振舞いを促す。人格、総合能力(competence)、コミットメントを示す振舞いは、組織の信頼につながる。指導者には、部下に何を考えるべきかを教える代わりに、部下がどのように考え、革新性と創造性を発揮するかを学ぶ手助けをすることが求められる。

我々が求めているのは、『スター・ウォーズ(Star Wars』に登場するクローン軍ではない。マルチドメイン作戦の戦場で刻々と変化する要求に応えるため、信頼され、適応力のある組織なのだ。

指導者たちは、信頼に基づく積極的な風土(positive climate)を一日で築くことはできない。それはむしろ、ミッション・コマンドの原則(principles of mission command)が適用され、組織が才能を解き放ち、偉大さを達成するために必要な規律ある主導性(disciplined initiative)を発揮できるような場所を作るには、準備し、種をまき、餌をやり、草取りをし、耕さなければならない、庭や農家の畑のようなものだ。

小さな種に秘められた可能性を理解している指導者たちは、望ましい収穫を得るためには多大な取組みと忍耐が必要であることを理解している。しかし、条件を整え、その種に栄養を与え続ければ、その種は花を咲かせ、成長し、偉大な業績を達成することができるのだ。

伝達しあう:Communicate

指揮官は作戦プロセスを用いて、ステップ2の「伝達しあう」を効果的に達成する。指揮官は効果的な計画策定プロセスを推進し、作戦環境を理解、視覚化、説明し、部隊にその意図を明確に伝える[21]

このプロセスとミッション・オーダー(mission orders)の使用を通じて、指揮官は目的の明確化、資源の調整、ビジョンと最終状態を伝達しあうことを促進する[22]。指揮官がミッション・コマンドの伝達しあう要素(communicate elements mission command)を効果的にこなすことができなければ、たとえ優れたチームを育てたとしても、その才能を発揮させることは不可能に近い。なぜなら、組織が力を発揮するために必要な共有された理解(shared understanding)を持つことができないからである。

ジョージ・S・パットン(George S. Patton)元帥はかつてこう言った、「物事のやり方を人に教えてはならない。そうすれば、彼らはその創意工夫であなたを驚かせるだろう」[23]。しかし、米陸軍にはより厳格な指揮・統制の伝統があり、しばしば厳格な服従を強調する。

多くの指揮官は、組織に「自分のやり方(their way)」で作戦を遂行させようとするため、非常に支配的である。このような支配的なリーダーシップのスタイルは、ほぼ即座に結果をもたらすが、その代償は?統制された組織風土(controlling organizational climate)では、その組織のメンバーは、言われたこと以外は何もしないという習慣に陥りがちである。

イラクの自由作戦が始まる前の2003年3月にクウェートの砂漠で食事をする第3歩兵師団の兵士

(写真提供:第3歩兵師団)

彼らは指揮官の期待には応じるが、それ以上のことをする信頼も権限も与えられていないため、それを超えることはめったにない。彼らは新しい機会を求め、それを利用するよりも、コンプライアンスを守り、失敗を避けることに集中する。さらに、おそらくもっと重要なことだが、状況が変わっても、調整し適応するための筋肉の記憶や認識された権限を持っていない[24]

ミッション・コマンドの原則(principles of mission command)は、互いに積み重なるものである。ミッション・コマンド(mission command)には、有能な指導者、参謀、そして、共有された理解(shared understanding)と相互信頼の環境の中で活動するチームが必要である。それは、指揮官の意図の範囲内で、部下が機会を捉え、リスクを軽減することを期待される風土の中で、非常に効果的なチームが機能するかどうかにかかっている。

信頼(trust)と権限移譲(empowerment)、さらにはひらめきに基づく組織風土を実現するには、チーム・メンバーが期待に応えるだけでなく、それ以上の成果を上げるために革新的で創造的であることが必要であり、リスクを喜んで受け入れ、部下の組織が革新を求めることを認める指揮官が必要である。その結果、時には理想的とは言えない結果を招くこともある。

改善の道筋にあるこうした失敗を、その部隊に対する黒星としてではなく、学習の機会としてとらえることができれば、以前のパフォーマンスや明示された期待を常に上回ろうとする学習する組織(learning organization)を育成するのに役立つ。

部隊が学ぶにつれて、より高い総合能力(competence)と理解を得る。メンバーは、ただ従うだけでなく、協力的に期待を超えることを追求し、その過程で互いに責任を負い、やがて心からのコミットメントが創造的な興奮につながり、パフォーマンスが飛躍的に向上する[25]

スパルタン旅団(Spartan Brigade)がイラクで大規模戦闘作戦(LSCO)を成功させたことに話を戻すと、パーキンス(Perkins)と大隊長、大隊の上級曹長、中隊長で構成される指揮チームは、バグダッドへの最終攻撃に先立ち、2年近く一緒に行動していたことを認識しなければならない。

この間、旅団はジョージア州フォート・スチュワートで大規模な訓練を受け、フォート・アーウィンのナショナル・トレーニング・センター(NTC)で高強度(現在は大規模戦闘作戦(LSCO))のローテーションを完了し、イラク自由作戦の出発線(line of departure)を越える前にはクウェートの砂漠で数カ月にわたって一緒に訓練を受けた。

イラクの自由作戦が始まる前の2003年3月にクウェートのウダリ複合演習場で射撃する第3歩兵師団M1A1戦車。

(写真提供:第3歩兵師団)

パーキンス(Perkins)がフォート・スチュワートで指揮官を務めていた初期、彼は「中隊レーン(company lanes)」という、中隊レベルの部隊階層とそのスキル・セットや要件に焦点を当てた訓練イベントを実施した。この訓練で指揮官と旅団参謀は、任務達成をほぼ不可能にする課題が埋め込まれた「レーン(lane)」を開発した。

パーキンス(Perkins)は任務の達成にはあまり関心がなく、意思決定のための環境整備に関心があった。彼は、指揮官たちがコンプライアンスよりも、機敏に評価し、決断する能力のほうに関心があった。この訓練で、彼はミッション・コマンドの種(seeds of mission command)を蒔き、水を与えた[26]

マーティン・ルーサー・キング・ジュニア(Martin Luther King Jr)博士はかつて、「人間の究極の尺度は、快適で便利な時にどこに立っているかではなく、挑戦と論争の時にどこに立っているかである」と言った[27]。指導者として重要なのは、チーム・メンバーがどのように振舞い、その振舞いが我々の価値観や指揮の風土(command climate)を反映しているかを理解することである。

だからといって、誰も失敗したり問題を起こしたりしないのだろうか?いや、こうしたことはどの組織でも起こることだ。信頼され、学習する部隊風土(learning unit climate)を発展させる鍵は、指導者たちがこれらの経験にどう反応するかということである。ほとんどの場合、部隊の風土は、我々が困難にどう対応するかによって真に定義される。これこそが、パーキンス(Perkins)が「中隊レーン演習(company lanes exercise)」で行っていたことなのだ。

このような訓練経験は、訓練部隊にとって常に完璧な実行と目的達成のためのハイタッチだったわけではない。スパルタン旅団(Spartan Brigade)のメンバーは、他の部隊と同様、定期的にパフォーマンスの成功と失敗を繰り返していた。

しかし、訓練の本当の成功は、組織の風土によるものだった。個人も部隊もこれらの経験から学び、調整し、リスクを受け入れ、部下に新しいことに挑戦する力を与え、そしてまたパフォーマンスを見直すことを厭わなかった(もっと重要なのは、力を与えられた)。

同様に、スパルタン旅団(Spartan Brigade)のナショナル・トレーニング・センター(NTC)ローテーションは、最終的な成績ではなく、適応力のある敵に対して、自軍で学んだことをユニークな環境で適用する機会としてとらえられた。しかし、その結果は必ずしも芳しいものではなかった。訓練を重ねるにつれて、彼らは適応し、再挑戦し、関係や結果が改善されるにつれて、より大きな信頼を築いていった[28]

その一例として、パーキンス(Perkins)はナショナル・トレーニング・センター(NTC)の各作戦で独自の指揮・統制方法を行おうとした。ひとつは、固定的で静的な指揮・統制を重視したもの;もうひとつは、すべての能力を欠いた無駄のない機敏な指揮所での活動に重点を置いたもの;3つ目は、地上指揮所と対になった回転翼機内の指揮所で、空からの取り組みを分担した。

ここで重要なのは、彼が目標よりも、教訓や戦場の環境変化にどう適応するのが最善かを重視していたことだ。ナショナル・トレーニング・センター(NTC)でのこのアプローチが、後のバグダッドでの効果的な指揮・統制インフラにつながったのである[29]

旅団の戦術作戦センター(TOC)でさえ、ミッション・コマンドの原則(principles of mission command)を適用した学習する組織(learning organization)だった。当初は、テントと車両を組み合わせた大規模で複雑なものだった。彼らはナショナル・トレーニング・センター(NTC)での実験的学習を通じて、また後にクウェートの砂漠で学習し、適応した。

戦闘作戦が開始されるまでに、主要な戦術作戦センター(TOC)は3機の装甲M577指揮所運搬車3機のHMMWVで構成されてい。これは、時間の許す限り、戦術作戦センター(TOC)の大規模なインフラストラクチャーが後に続く、より機敏な指揮センターだった。

これにより、現在の戦闘における機動大隊に関連した旅団の戦術作戦センター(TOC)が可能になり、隷下部隊に必要なリソースを提供できるようになった。ここは、4月7日の「サンダー・ラン(Thunder Run)」攻撃の朝にミサイル攻撃を受けるであろう、そして旅団副指揮官エリック・ウェスリー(Eric Wesley)米陸軍中佐の指揮の下、迅速に適応し再編成する必要がある旅団戦術作戦センター(TOC)でもある[30]

これらの経験は互いに積み重ねられ、その結果、総合能力(competence)の向上、相互信頼、共有された理解(shared understanding)、リスクを受け入れる意欲が生まれる。ミッション・コマンド(mission command)が効果的に採用されるためには、指揮官、ひいては組織全体が条件を整えなければならない。

スパルタン旅団(Spartan Brigade)の指導者たちは、大規模戦闘作戦(LSCO)を開始するために出発線(line of departure)を越えるとき、信頼を築こうとしても遅すぎることを認識していた。信頼はその時点より前に築かれなければならない。「倫理と同じで、信頼を急騰させることはできない」[31]

イラク自由作戦開始前のクウェート滞在中、第15歩兵連隊第3大隊の最上級曹長ロバート・ギャラガー(Robert Gallagher)は、ソマリアのモガディシュでの作戦のベテランで、毎日のようにパーキンス(Perkins)と交わり、「もうモガディシュはごめんだ!」と懇願していた。

ギャラガー(Gallagher)を信頼していたパーキンス(Perkins)は、クウェートの砂漠にコーネックスのコンテナで作られた都市型訓練場を設計・建設し、旅団の各部隊がこの模擬環境でさまざまな戦闘訓練を行えるようにする権限も与えた。

信頼の風土は、部下が率先して行動する機会を与え、部隊全体の総合能力(competence)を高める力を与え、最終的には総合能力(competence)、結束力(cohesion)、信頼性(trustworthiness)にプラスの影響を与えた[32]

権限委譲:Empowerment

第3のステップである「権限移譲(empowerment)」は、部下が規律ある主導性(disciplined initiative)を発揮し、指揮官が進んでリスクを受け入れることを含むもので、最初の2つのステップが達成された後に初めて可能となる。

効果的なチーム構築には、相互信頼の指揮の風土(command climate)と、作戦プロセスにおける指揮官の役割を活用し、指揮官の意図を洗練された目的とリソースの調整によって効果的に伝えるコミュニケーションが含まれる。

これにより、組織は状況と望ましい最終状態(desired end state)について共有された理解(shared understanding)を得ることができ、ミッション・オーダー(mission orders)を採用して柔軟性を持たせ、部下に定義された最終状態を達成するために必要なことをさせることができる。

重要なのは、信頼は「確実性(certainty)」とは違うということだ。結果が確実である場合には、信頼の主張は成り立たない。不確実な結果における意思決定(部下と上司の双方)に対する信頼こそが、真の指標であり、信頼なのである。

このことは、信頼する者はリスクの要素があることを知っていることを意味する。指導者たちも部下も、信頼環境では結果が不確実であるためにリスクを負うが、確立された人間関係や以前に実証された総合能力(competence)に基づいて信頼を選択する。

権限を与えられれば、組織はそれを実現できるという信念がある。最後に、このことの意味するところは、信頼が拡大されたとき、理解された相互関係が侵害されなければ、指揮官が想定されるリスクを引き受けるという期待である。リスクは信頼に内在する[33]

「サンダー・ラン(Thunder Run)」が成功したのは、第5軍団と第3歩兵師団の指揮官が明確な指揮官の意図を確立し、第2旅団にそれを達成するための主導性を取る権限を与えたからである。

パーキンス(Perkins)はこのように表現している。「これらの「サンダー・ラン(Thunder Runs)」が成功したのは、軍団や師団レベルの指揮官が命令で明確な意図を示し、流動的で複雑な問題に対して規律ある主導性(disciplined initiative)を発揮する部下の判断力と能力を信頼し、彼らが冒すリスクを引き受けたからである[34]

旅団内でも、パーキンス(Perkins)が同様のパターンをとったのは、自分の意図をうまく達成させるために隷下部隊を信頼していたからである。このようなことが可能だったのは、次のような時間と取組みがあったからである。

・効果的で有能なチームと、相互信頼の指揮の風土(command climate)を育成する。

・作戦プロセスを用いて指揮官の意図を発展させ、ミッション・オーダー(mission orders)を通じてその高い目的と指揮官が思い描く最終状態を伝達しあうことで相互理解を図る。

・リスクを受け入れ、自分の意図の範囲内で規律ある主導性(disciplined initiative)を発揮させることで、部下に権限を与える。

簡単に言えば、指揮官の役割は、組織全体の信頼を鼓舞し、目的を明確にし、望ましい最終状態(desired end state)を説明し、その意図を達成するためにシステムを調整し、そしてそれを達成するためにチームの革新性と創造性を解き放つことである。

市中心部への第2次「サンダー・ラン(Thunder Run)」を注意深く分析すると、パーキンス(Perkins)が自分のレベルで決定したのはほんの一握りで、残りは部下の指導者に委任していた[35]。彼がこのようなことができたのは、部隊内に信頼という文化が存在していたからである。

彼は、目的を明確にし、システムを整え、最終状態(end state)のビジョンを示し、自分のレベルにとどめようとする数少ない重要な決定を伝えることによって、自分の意図を伝えようとし、そして、任務を達成するために隷下部隊の才能を解き放った。彼は、自分の意図の相互理解を確保した後、「旅団に関連する(brigade relevant)」重要な決定を下す必要があると想定される場所に物理的に立ち会うことを求めた。

4月7日の行動が展開されるにつれ、隷下の部隊や個人にさえ、物事を起こす権限が与えられた。新たな試練が展開されるたびに、誰かが、あるいは部隊が、指揮系統(chain of command)からの命令を待つことはなかった。むしろ、彼らは規律ある主導性(disciplined initiative)をとって、困難を克服した。

将校、下士官、兵士が大惨事を回避するために積極的に反応したのは、自分たちの組織にとっての大きな目的や必要な役割など、指揮官の意図を理解し、規律ある主導性(disciplined initiative)を発揮してそれを実現したからである。

文字通り何百もの行動が旅団の指導部が知る必要のない隷下部隊内で発生し、最終的には任務の達成につながった。これは、彼らが「パフォーマンスが向上した」からではなく、意図の枠組みに基づいて音声を作成したため、部隊全体をより良くする調整を行う権限を与えられたからである。

結論:Conclusion

一つ一つ、一日一日

文化は一日にして成らず。

成功は一日にして成らず。

マインドセットは一日にして成らず。

習慣は一日にして成らず。

偉大さは一日にして成らず。

基礎は一日にして成らず。

土台は1日1日で築かれる。現れ続ける。仕事をし続ける。

ケビン・デシャゾ(Kevin DeShazo)[36]

月7日の第3歩兵師団第2旅団の「サンダー・ラン(Thunder Run)」の成功は、4月6日夜の計画策定と準備だけによるものではない。約2年間にわたる相互信頼に基づく前向きな指揮の風土(command climate)の醸成が主因であった[37]

4月7日にバグダッドのダウンタウンに一晩留まるという決定は、軽率な判断ではなかった。この決定には第3歩兵師団指揮グループと軍団指揮官の同意が必要だったが、最終的には2年近くにわたる訓練とチーム構築の集大成として実現した。

信頼は多方向に波及していった。上方には師団や軍団へ、横方向には他の旅団へ、そして下方には大隊や中隊、さらには新米の下士官まで。「指揮の風土(command climate)を正しくすれば……どんな米陸軍部隊でもこれができる」[38]

2003年4月7日、バグダッド市街地に転進する第3歩兵師団第64機甲連隊第1大隊チャーリー中隊

(写真:ブラント・サンダーリン、アトランタ・ジャーナル・コンポジション紙)

一貫して期待を上回る活躍をする部隊を育てるには、ミッション・コマンドの原則(principles of mission command)を順序立てて継続的に適用することである。それらはチーム構築(team building)、コミュニケーション(communication)、権限移譲(empowerment)としてパッケージ化することができる。

ミッション・コマンドの利点(benefits of mission command)を活用し始める前に、信頼関係を築き、積極的な指揮の風土(positive command climate)を作り、団結力のあるチームを作らなければならない。そうして初めて、ミッション・コマンドの要素(elements of mission command)をまとめ始めることができる。信頼(trust)と指揮の風土(command climate)は一日にして成らず、継続的なプロセスであり、日々、強化されたり弱まったりするものである。

チームを作り、積極的な指揮の風土(positive command climate)を作るだけでは、仕事を成し遂げることはできない。そのような風土が確立されるには、指揮官が作戦プロセスに関与し、指揮官の意図を相互に理解し、目的を洗練させ、リソースを調整し、隷下組織を鼓舞するために絶えずコミュニケーションをとることが必要である[39]

ノート

[1] David Zucchino, Thunder Run: The Armored Strike to Capture Baghdad (New York: Grove Press, 2004), 70–72.

[2] David Perkins, interview by Marc Boberg, 25 January 2023.

[3] Army Doctrine Publication (ADP) 6-0, Mission Command: Command and Control of Army Forces (Washington, DC: U.S. Government Publishing office [GPO], 2019), 1-3.

[4] Perkins, interview.【訳者註】401(k)とは、米国で導入されている確定拠出年金制度のひとつ

[5] ADP 6-0, Mission Command, 1-7–1-14.

[6] Stephen R. Covey, The 8th Habit: From Effectiveness to Greatness (New York: Free Press, 2004), 22–24.

[7] Perkins, interview.

[8] Stephen R. Covey, Trust and Inspire: How Truly Great Leaders Unleash Greatness in Others (New York: Simon & Schuster, 2022), 290.

[9] Eric Wesley, interview by Marc Boberg, 25 January 2023.

[10] ADP 6-22, Army Leadership and the Profession (Washington, DC: U.S. GPO, 2019), Glossary-2.

[11] The Army People Strategy, Army.mil, October 2019, 11, accessed 1 May 2023, https://www.army.mil/e2/downloads/rv7/the_army_people_strategy_2019_10_11_signed_final.pdf.

[12] Center for the Army Leadership (CAL), Building and Maintaining a Positive Climate Handbook (Fort Leavenworth, KS: CAL, 2020), 5–6, accessed 1 May 2023, https://capl.army.mil/Developing-Leaders/command-climate-navigator/climate-handbook.php.

[13] Ibid., 3–4.

[14] Covey, The 8th Habit, 181.

[15] John Wooden and Steve Jamison, Wooden: A Lifetime of Observations and Reflections On and Off the Court (New York: Simon & Schuster,1997), 16.

[16] Perkins, interview.

[17] David Perkins, ail to Marc Boberg, 15 March 2023.

[18] Ibid.

[19] Andy Hilmes, interview published in Davis Winkle, “The Stars Born on Highway 8,” Army Times (website), 17 March 2023, accessed 16 May 2023, https://www.armytimes.com/news/your-army/2023/03/17/the-stars-born-on-highway-8/.

[20] ADP 6-22, Army Leadership and the Profession, 6-5.

[21] ADP 6-0, Mission Command, 2-13–2-15.

[22] Ibid.

[23] George S. Patton, “Reflections and Suggestions,” in War As I Knew It (New York: Houghton Mifflin Company, 1947) , 357.

[24] Wesley, interview.

[25] Covey, The 8th Habit, 22–23.

[26] Wesley, interview.

[27] Martin Luther King Jr., Strength to Love (Philadelphia: Fortress Press, 1963), 25.

[28] Wesley, interview.

[29] Ibid.

[30] Ibid.

[31] Perkins, interview.

[32] Ibid.

[33] Wesley, interview.

[34] David G. Perkins, “Mission Command: Reflections from the Combined Arms Commander,” Army Magazine, June 2012, 32.

[35] Zucchino, Thunder Run, 83–84.

[36] Kevin DeShazo, ail to Marc Boberg, 15 February 2023.

[37] Perkins, interview.

[38] Ibid.

[39] Ibid.