ドローンはゲームを変えるが、陸上戦争の本質的な課題に対する答えではない(Small Wars Journal)

MILTERMではドローンについての記事をいくつも紹介してきている。中でも「ウクライナの効果に基づく精密誘導弾打撃: その意味するもの Forbes」では、今年6月1日の「クモの巣作戦(Operation Spider Web)」を取り扱っている。この作戦はかなり衝撃的に報道され、多くの論評がネットにあふれたが、ロシア・ウクライナ戦争の行く末を大きく変えることはなかったとも論じられている。ゲーム・チェンジング技術を追求する装備品開発の取組みが当たり前の状況になっているが、果たしてその効果はどの程度のものだろうという疑問を持っても不思議なことではないだろう。ここで紹介するのは、Small Wars Journalに掲載されていたもので、「ゲーム・チェンジャー」のひとつとして取り上げられることの多いドローンに焦点を当てて、特に陸上での戦争(Land War)にどのような貢献を期待できるのかを戦争の理論から分析したものである。

著者の結論は「ドローンが戦争におけるゲームをチェンジする能力」があることを示しつつも「陸地を支配し、陸上戦争の重要な要件と条件を達成することができないドローンとドローン戦は、戦略的に無関係である」と戦略的には決定的なものではないとしている。つまり、ドローンやドローン戦がもたらす局所の戦闘や戦術的効果を、作戦術(Operational Art)として生かす取組みが必要であり、作戦をデザインする中で、適切にアレンジすることが必要なのだろうと推察する。(軍治)

ドローンはゲームを変えるが、陸上戦争の本質的な課題に対する答えではない

Drones Are Game-Changing, But They Are Not the Answer to the Inherent Challenges of Land war

by Amos Fox

08.06.2025

Small Wars Journal

エイモスCフォックス(Amos C. Fox)博士は、アリゾナ州立大学フューチャー・セキュリティ・イニシアチブ教授。Small Wars Journal誌の編集長。また、戦争、戦略、国際情勢、技術が戦争に与える影響に焦点を当てたポッドキャスト「Revolution in Military Affairs」のホストを務める。2024年、エイモス(Amos)は「紛争の現実主義:戦争と戦いの因果関係を理解する(Conflict Realism: Understanding the Causal Logic of War and Warfare)」を出版。今後1年間に出版される本は、「機動は終わった:21世紀の陸上戦(Maneuver is Dead: Land warfare in the 21st Century)」(ブルームズベリー)と「マルチドメイン作戦:21世紀の戦場支配の追求(Multidomain Operations: The Pursuit of Battlefield Dominance in the 21st Century」(ハウゲート社)。エイモス(Amos)はレディング大学で国際関係学の博士号を、高等軍事研究大学院(SAMS)とボール州立大学で修士号を、インディアナ大学インディアナポリス校で学士号を取得している。また、エイモス(Amos)は退役米陸軍中佐でもある。

はじめに

ドローンは戦争の闘い方を変えているのか?もしそうなら、その変化は戦闘員の戦争の勝ち負けにどのように貢献するのか、あるいは奪うのか?この2つの疑問が、本稿が答えようとする中心的な考え方である。これらの問いを考えるのは難しい。というのも、このテーマに関するオープンソースの情報には、興奮や組織的なバイアスが渦巻いており、そこから報道を切り離すのはしばしば困難だからである。同様に、ドローンがゲーム・チェンジャーであるとか、軍事における新たな革命に拍車をかけているといったドローンに関する一般的な記述と、その文脈上の関連性を切り離すことも同様に難しい。この記事の場合、その文脈上の関連性とは、陸上戦争に対するドローンとドローン戦の貢献度を特定することである。なぜ陸上戦争なのか?学者のクリストファー・タック(Christopher Tuck)が書いている通りである。

陸上戦(land warfare)の基本は、陸上そのものの影響があるゆえに、しばしば他の環境と異なる。陸上は…その上で闘うために必要な方法に強力な影響を及ぼす。陸上戦の成功は重要である。人間は陸上で生活しているため、陸上の占領や防衛に成功すれば、政治的に決定的な影響を与えることができる。

タック(Tuck)はまた、陸上戦争(land wars)における技術や死傷者数は、空、宇宙、海上など他のドメインにおけるそれとは大きく異なると指摘する。したがって、ドローンのような技術が特定のドメインに与える影響や、ドローン戦のようにそれがどのように採用されるかを理解しようとすると、ドメイン固有の戦争理論が必要となる。同様に、理論家のカール・フォン・クラウゼヴィッツ(Carl von Clausewitz)は、重心(centers of gravity)とは戦闘員の力が最も集中するすべての力のハブであると主張している。クラウゼヴィッツ(Clausewitz)は、重心はしばしば戦闘相手の軍隊、資本、および/または同盟に存在すると述べることで、この主張を修飾している。

19世紀の戦争と戦いに巻き込まれた理論家の立場から書いてはいるが、クラウゼヴィッツ(Clausewitz)の修飾の妥当性は依然として妥当である。というのも、陸上戦争(land war)と、政策立案者が必要とする戦争における意思決定を促す結果との間には、重要なつながりがあるからである。したがって、戦闘員は、クラウゼヴィッツの重心のうち、政策立案者を有益な戦略的結果と有利な戦争終結の道へと最も前進させる要素に最大限の注意を払い、圧力をかけなければならない。しかし、戦闘員は同時に、敵対者に対してそのアプローチを否定しなければならない。

ドローンやドローン戦が戦争に与える革命的、あるいは進化的な影響について語られるインクに惑わされるのは簡単だ。しかし、戦争におけるそれぞれの政策の狙いに積極的に貢献する勝利条件を生み出すために必要な要件を達成するドローンの能力に対してバランスの取れた実際的な評価を見つけるのはかなり難しい。とはいえ、本稿はそうした障壁を突破しようと試みる。そうすることで、本稿は、その評価を行い、陸上戦におけるドローンとドローン戦のゲーム・チェンジ的な有用性を判断するための有用な理論を提供する。

これらの疑問を厳密に検証するため、本稿では、ベン・コナブル(Ben Connable)やクリストファー・タック(Christopher Tuck)など多くの学者が最も一般的な戦争形態であると読者に思い起こさせるように、陸上戦争(land war)と地上戦闘(ground combat)というレンズを通して、ドローンとドローン戦の有効性の問題を精査する。そうすることで、この記事は2つの主要なアイデアを提起する。つまり、ドローンはゲームをチェンジするということである。軍事指導者たちが戦場で取り組むべき新たな問題を生み出し、それが新たな技術、戦略、ドクトリン、戦力構造に拍車をかけている。しかし、ドローンとドローン戦は、少なくとも陸上戦争においては、戦略的な意味で戦いに革命をもたらしているわけではない。

つまり、ドローンとドローン戦は、それ自体で戦争に勝利をもたらすものではなく、我々が期待するよりも早く、また根本的に安いコストで実現するものでもないのだ。その第一の理由は、多くの脅威を排除することに長けているにもかかわらず、ドローンには地上を統制する能力がないからである。この第二の理由は、統制のコンセプトを直接裏付けるものだが、ドローンとドローン戦は一般的に、陸上戦争で成功するために部隊が実現しなければならない基本的な要件を達成することができないからである。これらの要件には、土地の奪取と奪還、領土の保持、困難な地形からの敵対的脅威の排除、国境の統制と境界の封鎖、住民の保護などが含まれる。

この仮説を裏付けるために、私は陸上戦争の理論を導入し、統制、陸上戦争、陸上戦争の要件のコンセプトを実践的な論理に結びつける。次に、ドローンとドローン戦を陸上戦争の要件と照らし合わせ、それぞれが2つの支持条件から構成され、ドローンが達成できるタスクとできないタスクを明らかにする。そして、これらの結果を総合的に検証し、ドローンが戦闘員の戦争の闘い方、特に陸上戦争の闘い方を変えた一方で、ドローンとドローン戦は地上を支配できないことを実証する。確かに、ドローンとドローン戦は、陸上戦争が領土の支配を通じて勝利するという事実を根本的に変えたわけではない。

この点について、歴史家のローレンス・フリードマン(Lawrence Freedman)は、「戦争に勝つためには領土を支配する必要があり、そのためには常に地上部隊支援する必要がある」と述べている。領土の支配は、これまでも、そしてこれからも、どちらの側の戦争終結基準にも関連して、政策立案者が利用できる選択肢、あるいは利用できない選択肢に直接影響を与える、最も重大な因果関係である。その結果、ドローンとドローン戦のように、土地の支配を重視しない、あるいは軽視するような戦争技術や戦争へのアプローチは、長く、致命的で、破壊的で、非常にコストのかかる戦争の一因となっている。これらの知見に基づき、本稿は一連の政策提言で締めくくる。提言は、政策立案者がドローンの戦争への貢献をどのように理解するか、また、政策立案者や軍の上級指導者が、今後どのように部隊の編成、装備、運用に取り組むべきかを左右する一助となることを意図している。

陸上戦争の理論

国家や非国家主体は様々な理由から陸上戦争を闘う。チャールズ・ティリー(Charles Tilly)、スタティス・カリヴァス(Stathis Kalyvas)、カール・シュミット(Carl Schmitt)などは、これらの戦争に共通するテーマとして、主権(sovereignty)、領土支配(territorial control)、住民、社会、市場、政治制度の支配(domination)(または排除)、抑圧された社会の解放(liberation)反乱を起こす、反乱の排除などを挙げている。支配(control)は、戦争を正当化するそれぞれの指針である。確かに、スティーブン・ビドル(Stephen Biddle)は、土地、住民、市場、政治を支配することが、行為主体がなぜ陸上戦争に関与するのかを根底から支える中心的テーマであると述べている。別の言い方をすれば、支配(control)こそが陸上戦争の原因メカニズムなのである。

というのも、支配することで、戦争終結を成功させるためのさまざまな戦略的選択肢を政策決定者に提供するために必要な政治的決定空間を開く戦場の結果を、行為者が生み出すことができるからである。逆に、領土、住民、および競合する軍隊を支配できない場合、政策立案者が保有する交渉材料は少なくなり、その結果、戦争終結の交渉(そこまでするのに十分な利益がある場合)は、弱さと依存の立場から行われることになる。

ドローンは戦術的には効果的だが、戦略的には決定的ではない。地形を支配(control)することも、戦争に勝つことも、有利な条件で紛争を終結させるために必要な政治的成果を生み出すこともできない。

ビドル(Biddle)は、陸上戦争において軍隊が支配(control)を獲得するためには、(1)自軍の戦闘力を守りつつ敵対的部隊を撃破すること、(2)地上を占領して保持すること、(3)敵対的部隊を撃破するための時間を維持すること、が必要であるとしている。ビドル(Biddle)の指摘はもっともだが、支配獲得(gaining control)の要素を強調するあまり、支配(control)を維持するために必要な行動の範囲を十分に考慮していないため、やや的外れである。そのため、より幅広い要件が必要である。

陸上戦争における支配(control)を獲得し、維持するためには、陸上部隊は、増加の一途をたどる統合やマルチドメインの能力によって補強されながら、支配(control)を達成し、軍事作戦の効果を最大化し、戦争終結に向けて有益に前進するために、6つの基本要件を達成しなければならない。これらの要件は、以下に詳述するが、従来型の戦争(conventional wars)だけに限定されるものではなく、小規模な戦争、反乱、対反乱にも同様に適用できるものである。

このように、これらの要件は、国家と非国家を問わず、軍隊が政治制度を支援するための軍事作戦を実施する際の、さまざまな戦争にまたがるものである。また、これらの要件は、軍隊が順次完了しなければならない行動のチェックリストではなく、むしろ状況的な必要性によって決定されることを強調することも重要である。統制が陸上戦争の根源にある原因メカニズムであることを認識し、したがって、陸上戦争の6つの要件とそれに付随する条件を検討することが賢明である。

第一に、陸上部隊は敵部隊または敵対的脅威から物理的地形を支配しなければならない(第1要件)。この2つの条件には、占領している陸上部隊を撃破すること(条件1a)と、紛争地形を支配すること(条件1b)が含まれる。第二に、陸上部隊は、敵部隊または敵対的脅威から物理的地形の支配権を奪還しなければならない(要件 2)。第1要件と同様、第2要件の条件には、占領している陸上部隊を撃破すること(第2要件 a)と、地形を支配すること(第2要件 b)が含まれる。

第三に、陸上部隊は、森林密集地、山岳地帯、さらに重要なのは市街地などの困難な地形から脅威部隊を排除しなければならない(第3要件)。この要件の条件には、紛争地形から敵対的な陸上部隊を排除すること(条件3a)と、その地形を支配すること(条件3b)が含まれる。第四に、陸上部隊は、迫り来る反撃を阻止するための手段、能力、能力容量を備えることを含め、敵部隊または敵対的脅威から地形を物理的に支配し、または支配し続けなければならない(第4要件)。

第4要件に関連する条件には、反撃の撃破(条件4a)および争奪地形の支配(条件4b)が含まれる。第五に、陸上部隊は、指定された地理的関心地域の物理的境界線および/または国境線を封鎖しなければならない(第5要件)。この要件に関連する条件は、紛争の結節点における領土の支配(条件5a)と、その結節点におけるパワーバランス(balance of power)を覆そうとする敵の反撃の撃破(条件5b)である。

第六に、陸上部隊は、紛争地域の民間人の住民を危害から守らなければならない(第6要件)。そうでなければ、支配しようとする土地の内部統制を失う危険がある。この要件に必要な条件には、紛争地域の支配を維持しながら(条件6b)、民間人への危害を防止し、巻き添え被害を最小限に抑えること(条件6a)が含まれる。この論理を総合すると、陸上戦争の理論が形成される(表1参照)。

表1陸上戦争の理論
# 要件 条件
1 領土を奪う a) 占領軍を撃破する

b) 争っている土地を支配する

2 領土を奪還する a) 占領している陸上部隊を撃破する

b) 争っている領土を支配する

3 領土からの脅威の除去 a) 敵対的部隊の排除する

b) 争っている土地を支配する

4 領土を保持する a) 反撃を撃破する

b) 争っている土地を支配する

5 境界を封鎖する a) 争っている土地の接点で領土を支配する

b) 反撃を撃破する

6 住民を保護する a) 民間人の被害と巻き添え被害を防ぐ

b) 争っている土地を支配する

ドローンと陸上戦争の理論

陸上戦争の理論が正しいとすれば、現代の陸上戦争におけるドローンとドローン戦の真の影響を理解するためには、その理論に関連したドローンの能力とドローン戦の能力を体系的に評価しなければならない。しかも、このフィードバックは、21世紀の陸上戦争の将来におけるドローンの潜在的な影響を測定するためにも使用できる予測を提供する。この評価を実施するためには、ドローンとドローン戦は、理論の6つの要件と各要件の2つの条件の両方を達成する能力について評価されなければならない。その評価から得られた知見は、ドローンの真の可能性を照らし出し、さらなる軍事的革新(military innovation)のための政策提言を後押しするのに役立つだろう。

この評価は単純な2段階のプロセスを実行する。第一段階は、ドローンが理論の各要件の裏付け条件を達成できるかどうかを評価することである。第二段階は、それらの評価結果を基本理論に照らし合わせてバランスをとることである。この理論では、要件全体が達成されるためには、要件の2つの条件がそれぞれ満たされなければならないと仮定する。もし条件が1つしか満たされないか、1つも満たされない場合、要件は達成されない(表2を参照)。

表2:理論試験
  評価ツール
1) 条件A=「はい」+条件B=「はい」の場合、要件=「はい」
2) 条件A=「はい」+条件B=「いいえ」の場合、要件=「いいえ」
3) 条件A=「いいえ」+条件B=「はい」の場合、要件=「いいえ」
4) 条件A=「いいえ」+条件B=「いいえ」の場合、要件=「いいえ」

最後のステップは、要件の得点化をまとめて分析し、それが理論の原因メカニズム(すなわち支配)にどのように寄与するかを評価することである。理論の要件のどれかが達成されない場合、それは陸上戦争におけるドローンとドローン戦の重要性と位置づけについていくつかのことを暗示する。第一に、ドローンが陸上戦争の要件を達成できない場合、ドローンとドローン戦は陸上戦争において直接的に支配権を獲得したり維持したりすることはないということになる。従って、その貢献は、陸上戦争における陸上部隊の支配権獲得・維持能力をその機能がどのように支援するかとの関係において、文脈的に位置づけられなければならない。

第二に、もしドローンが陸上戦争の理論で規定された要件を達成しないのであれば、ドローンの貢献は陸上部隊の貢献の補助的なものであるということになる。すなわち、ドローンおよびドローン戦の機能は、陸上戦争において陸上部隊が状況に応じた統制を獲得し、維持することを支援および/または可能にするものである。第三に、ドローンが陸上戦争の要件を達成できない場合、もう一つの含意は、ドローンおよびドローン戦の実現機能が、攻撃的能力であるか防御的能力であるかにかかわらず、諸兵科連合、統合、および/またはマルチドメイン能力のより大きな集団の中で重要な触媒となる可能性があるということである。この評価から得られた知見は、継続的な軍事的革新(military innovation)と戦略展開のための一連の政策提言を提供するために使用される。

ドローンは地形を奪えるのか、奪還できるのか?

ドローンは領土の物理的支配権を奪取・奪還できるのか?同様に、ドローンは占領軍を破り(条件1a、2a)、争奪地域を支配できるのか(条件1b、2b)。これら2つの要件は、一致する条件を含んでいるため、同時に評価される。

現在、無人航空システム(UAS)ドローンは領土を物理的に支配することはできない。彼らは地上に上陸して占領部隊を撃破し、戦場での物理的な存在を通じて敗北した敵にその土地の支配権を与えることを拒否することはできない。将来的に無人航空システム(UAS)ができるようになる可能性がないとは言わないが、現在のところ無人航空システム(UAS)が達成できる仕事ではない。しかもそれは、今後ドローン戦がさらに発展する可能性のある角度でもある。

戦場におけるドローンのゲームをチェンジする役割は大きく変わるが、ドローンは陸上戦争の基本的な要件である土地の奪取、土地奪還、土地の保持、国境の封鎖、住民の保護には対応できない。

無人地上車(UGV)もドローンである。無人地上車(UGV)は無人航空システム(UAS)ほど普及していないが、ロシア・ウクライナ戦争での報告にあるように、陸上戦争への関与が増加している。無人地上車(UGV)の到達目標は、将来的に戦争による人間への要求をさらに減らすことだ。現在のところ、無人地上車(UGV)は補給物資の管理に使われることが多く、直接戦闘には使われていない。しかし、米陸軍と米海兵隊は、従来は歩兵部隊や装甲部隊に限定されていた役割で無人地上車(UGV)の実験を行なっている。このように、無人航空システム(UAS)も無人地上車(UGV)も、戦場における領土の奪取や奪還には直接関与していない。同様に、ドローンとドローン戦も地形を支配することはできない。

ドローンが少なくとも一時的に陸上部隊を撃破できるケースもある(条件1a、2a)。第2次ナゴルノ・カラバフ戦争(2020年)は、この考えを裏付ける事例としてよく取り上げられる。そう、アゼリの無人偵察機、とりわけTB-2バイラクタルは、あの紛争で、位置も装備も不十分なアルメニア軍を巧みに排除した。しかし、いくつかの注意すべき点がある。第一に、戦域、または戦争の舞台となった地域は、およそ200キロ、つまり120マイルという信じられないほど小さなものだった。

これはニューヨークからフィラデルフィアまでの距離とほぼ同じだ。私はこのことを、別の場所で「金魚鉢の中で戦争を闘う」と表現したことがある。つまり、ある技術が狭い地域に及ぼす潜在的な効果は、同じ能力が広い地域に適用される場合よりも大きいということだ。したがって、無人航空システム(UAS)ドローンが険しい山岳地帯の装備の整わない、動きの遅い陸上部隊を支配する可能性は大きい。その結果、ハイテク軍隊が装備の不十分な軍隊と、金魚鉢の中で戦う戦争の結果が、驚きとなることはほとんどないだろう。

同様に、アゼルバイジャンの勝利が実際に示しているのは、ドローンとドローン戦の優位性ではなく、諸兵科連合の原則(the principles of combined arms)が存続していることである。具体的には、ジョナサン・ハウス(Jonathan House)は、軍隊が信頼性を維持するためには、敵の軍事的脆弱性を利用するツールを適用したり、自軍の優位性を強調するツールを適用したり、いずれの場合も自軍の非対称的優位性を高める方法でツールを適用したりできる能力を保有していなければならないと強調している。アゼルバイジャンの場合、これら3つの要件をすべて達成したのに対し、アルメニアは達成できなかった。

とはいえ、アゼルバイジャンの戦力構造の傾向を単純に模倣し、同じような戦場とそれに伴う政治的決断力に期待するのは愚の骨頂である。アゼルバイジャンと同様の成果を達成するには、同程度の諸兵科連合(combined arms)の優越(overmatch)を生み出す必要がある。その比率の優越(overmatch)を作り出すことは状況次第である。つまり、戦場の地形、脅威の戦力構造、その地形内での脅威の配置に左右されるのだ。したがって、ドローンとドローン戦の優位性に焦点を当てるのではなく、戦場においてドローンがどのように軍の諸兵科連合、統合、マルチドメインな関係性の非対称性に貢献するかに重点と重要な洞察を置くべきである。したがって、ドローンを大量生産することだけが答えではない。

条件1aと2aに関して、ロシア・ウクライナ戦争は、ドローンが同様に軍隊を撃破することができないことを示している。ウクライナがドローンを多用したことで、ソーシャル・メディア上では素晴らしいコンテンツが生まれたが、戦争における軍事的、政治的バランスをキーウに有利にシフトさせることはほとんどできなかった。確かに、ウクライナのドローン生産にまつわる誇大広告や、一人称視点(FPV)ドローンの戦術的な腕前、ウクライナのドローンが提供する偵察・打撃能力の多様性にもかかわらず、キーウのドローンはロシアの陸上部隊からウクライナの領土を奪取したり奪還したりはしていないし、ウクライナの陸上部隊が利用できる機会の火種も提供していない

それどころか、マイケル・コフマン(Michael Kofman)や他のアナリストは、ロシアがウクライナで徐々に地歩を固め続けていることを強調している。さらに、ウクライナとロシア双方のドローンによる戦闘は、前線を凍りつかせ、消耗を加速させ、紛争を長期化させ続けている。同様に、ロシアのドローン使用も、現時点ではウクライナのそれとよく似ているが、同様にキーウの防衛を重視する軍隊を撃破することはできない。

ドローンは戦術的、作戦的にゲームをチェンジする能力を提供し、戦場に革新的な技術をもたらしたにもかかわらず、戦闘を消耗戦(attritional warfare)や陣地戦(positional warfare)へと急がせた。ドローンとドローン戦は、軍隊が本来持っている戦術的・作戦的移動力を奪うことでそうさせてきた。そうすることで、ドローンとドローン戦は、移動的な陸上部隊とそれに付随する火力を、視界の外や地下に追いやった。常に存在するドローンの脅威は、ドローン恐怖症(dronephobiaと呼ばれる心理状態を生み出した。その結果、戦場は静止戦線(static front)と化している。ここで重要なことがある。

軍隊の機能は、戦略的目標に沿った状況制御を得るために会戦を闘い勝利することである。一方、ドローンの機能は、マイクロ交戦(micro-engagements)を闘い、勝利することであり、多くの場合、ドローン1機が1つのターゲットを排除するだけで、地上の支配権を獲得したり、維持したりすることには何の関心も能力もない。事実上、ドローンのマイクロ交戦(micro-engagements)は戦略的目標にほとんど貢献しない。別の言い方をすれば、こうしたミクロの交戦とその成果や効果は、戦略レーダー上の単なる一瞥に過ぎず、政治的決定を生み出すために必要な戦略的圧力を生み出すことには貢献しない。ここで、ドローン戦の「壮大な(spectacular)」応用について簡単に触れておく必要がある。

ウクライナの「スパイダー・ウェブ作戦(Operation Spider Web)」のようなドローン戦の壮大な応用は、この点を強調している。ウクライナの攻撃は、武力の誇示としてドローンを使用し、ウクライナに対してスタンドオフ戦(stand-off warfare)を適用するロシアの作戦的・戦略的能力と能力を排除し、クレムリンを罰した。たしかに、この種の作戦は、将来の戦争でドローン戦がどのように使われるかという革新的な方法を照らし出す可能性はあるが、作戦がどのように戦略をサポートするかという点についての理解の断絶を強調するものでもある。

この作戦は、ロシアウクライナの双方にとって重要な勝利条件であるウクライナの国土の支配に関する戦略的・作戦的パワーバランス(balance of power)には影響を与えなかった。加えて、この作戦が将来の戦争の前触れであるという議論は、作戦の成果(すなわち、飛行場で燃えた航空機の数々)を指摘するだけで、作戦が陸上戦争の要件にどのように適合するか、また、領土の支配にどのような影響を与えたか、あるいは与えなかったかについては言及しない。

ドローンは領土から敵対的脅威を排除できるか?

無人偵察機は、紛争地から敵対的部隊を排除するという要件を満たす2つの条件を満たさなければならない。第一に、ドローンは困難な地形から敵対的部隊を排除しなければならない(条件3a)。第二に、ドローンは紛争地を支配できなければならない(条件3b)。本稿では、ドローンが紛争地形を支配できないことをすでに立証したので、焦点は紛争地形から脅威を除去することに移る。

除去とは2つの意味がある。第一に、除去とは、特定の地理的地域内のすべての脅威を排除(すなわち、殺害または破壊)することである。第二に、除去とは、脅威の軍事的・政治的指導者がその地理的地域からの撤退を指示するような、残存する合理的理由を完全に最適化しないような十分な損失を脅威に与えることである。学者のアントゥリオ・エチェバリア(Antulio Echevarria)は、スタンドオフ戦(stand-off warfare)(すなわち、直接の火器が届かない場所での戦闘や、しばしば空からの戦闘)では、防御側は複雑な地形に避難することが多いと主張する。

エチェバリア(Echevarria)の発見は、システム理論家のドネラ・メドウズ(Donella Meadows)、ルートヴィヒ・フォン・ベルタランフィ(Ludwig von Bertalanffy)、ラース・スカイットナー(Ludwig von Bertalanffy)の一般システム理論や複雑で開放的かつ動的なシステムの内部構造に関する研究と呼応している。彼らは、軍事部隊(military forces)のようなオープン・システムは、生存を迫られると、日常的な動作の仕組みを適応させ、生き残り、秩序を再構築するための代替手段を模索することを発見した。軍事作戦の場合、攻撃を受けると、防衛側は生き残るために、自然に隠蔽、隠蔽、欺瞞作戦を模索する

同様に、上空からの攻撃は、戦術上または作戦上の軍事的問題を解決する上で決定的な意味を持つことはまれである。ランド研究所(RAND Corporation)の報告書が強調しているように、上空からの攻撃は、防衛側が自らを守り、生存を確保するために、さらなる偽装、隠蔽、欺瞞的手段を求めることを余儀なくさせ、陸上戦争における問題を拡大させる。これは戦争において目新しいことではない。例えば、20世紀初頭に書かれた理論家アレクサンダー・スヴェーチン(Alexander Svechin)は、戦争における第一のルールは、彼が「決定的な一撃(decisive blows)」と考えるものから身を守ることだと説いている。

歴史書やその他の出版物には、大規模な空爆や精密打撃戦役(砲兵であれ航空戦力であれ)が、地形保持に固執する軍隊を追い出すのにほとんど役立たなかったという記述散見されるヴェルダン(Verdun)パッシェンデール(Passchendale)グッドウッド作戦(Operation Goodwood)メス(Metz)ホーチミンの道(Ho Chi Mihn Trail)などは、戦史に残るこの現象の典型例である。このような軍事状況では、歩兵やその他の陸上部隊がその地形に進入し、敵対的部隊を物理的に排除する必要があった。ビドル(Biddle)カルロ・デステ(Carlo D’Este)がこの現象の良い例を示している。二人はそれぞれ、第二次世界大戦のグッドウッド作戦における地上戦の「前段階の空中戦(aerial prelude)」の際、ドイツ軍の守備隊は身を守り、生存を確保するために、地下に潜むか、砲撃を受けている地域を立ち退いたと書いている。

砲撃が弱まると、航空攻撃でほとんど損害を被らなかったドイツ軍は守備陣地を再占領した。その後、英国の陸上部隊が前進して攻撃すると、ドイツ軍の堅固な守備にぶつかり、そうしなければドイツ軍を完全に支配できたはずの英軍を打ちのめす結果となった。これらの例が示すように、航空攻撃はその精度にかかわらず、陸上戦争において軍隊を支援し、可能にする役割を果たす。というのも、戦闘員が他の戦闘員を攻撃するとき、攻撃された部隊は保護と生存を求め、その結果、脅威を無力化、または破壊するための攻撃部隊の後続攻撃をより困難にするからである。

理論はひとまず置いておいて、現代の例を見ることは有益である。ドローンの使用と脅威への対応は、今日でも似たようなパターンを辿っている。ドローンはガザでイスラエル国防軍(IDF)の補助的な役割を果たしている。ハマスに対してドローンでかなりの優位に立っていたにもかかわらず、イスラエル国防軍はガザに進入し、ハマスの戦闘員を排除しなければならなかった。なぜなら、イスラエル国防軍のドローンやその他のスタンドオフ戦(stand-off warfare)のツールでは、市街地で、また市街地から活動するハマスの戦闘員を排除することができなかったからだ。その結果、地上戦闘作戦とドローン打撃(さらに統合航空打撃)の組み合わせは、ガザ全域で大規模巻き添え被害民間人被害を煽った。

同様にウクライナでも、ドローン打撃はインフラへの壮大な攻撃には成功したものの、その効果のほとんどは戦術的なピンポイント攻撃に過ぎない。その結果、ロシア軍もウクライナ軍も、ドローンによる作戦が他国軍を静止線から排除することに成功したとは証明されていない。その代わりに、これらの作戦は、非常に小規模な戦術的陸上作戦塹壕、掩蔽壕哨所のネットワークの拡大、都市地形での、あるいは都市地形からの作戦の重視など、防衛手段における補完的な発展を引き起こしている。このことは、戦争に参加する両陣営にとって、相手軍を打撃し、破壊する機会がさらに少なくなることを意味する。このことは、この記事で以前に強調したように、カール・フォン・クラウゼヴィッツの戦略的重心の3大要素の1つである。

次の陸上戦争で勝利するのは、ドローン戦を完成させた側ではなく、地形に接近し、支配することができる、頑丈で復元性があり、移動性のある陸上部隊である。

多くの論者は、ドローンとドローン戦は、ドクトリン、軍事組織、戦術、調達に革命的な変化をもたらし、戦争を再定義したという立場を熱狂的に受け入れている。しかし、その革命的な変化にもかかわらず、ドローンとドローン戦は、困難な地形から敵対的な陸上部隊を排除するという要求を無効化したわけではなく、これまでのところ、そのタスクにはまったく不十分であることが証明されている。

さらなる論評は、ドローンが伝統的な戦争を時代遅れにしたのかという疑問を提起している。ドローンが戦争に与える影響についての疑問は当面続くだろうが、ドローンが現在のところ、困難な地形から敵対的部隊を排除することができないという事実は変わらない。さらに、ドローンとドローン戦が、「沿空域(air-ground littoral)」を現在支配しているために、敵対的部隊を地形から排除する作業をさらに複雑にしているという、同様に妥当な議論も成り立つ。とはいえ、ドローンは現在のところ、攻撃されたときにしばしば退却するような、凹んで固くなった地形から脅威を除去することはできない。

ドローンは地形を保持できるか?

地形を保持するためには、部隊は反撃を撃破し(条件4a)、争奪された地形を支配する能力がなければならない(条件4b)。本稿では、ドローンが地形を支配できないことをすでに立証した。しかし、ドローンは反撃を撃破することができるのだろうか?この質問に対する短い答えはイエスだ。しかし、この立場を完全に裏付ける事例研究が不十分であるため、現時点では理論的な見解にとどまっている。

理論的には、ドローンは反撃を撃破する可能性を持っているが、それには3つの資格が伴う。反撃を撃破するには、ドローンの能力と能力の範囲に合わせてドローンをスケールアップさせるか、諸兵科連合チーム(combined arms teams)の一部として十分に連動させるか、反撃部隊が自らを効果的に守る能力を上回るテンポで運用しなければならない。このような例は現在進行中の紛争に存在するかもしれないが、理論的な確認以上のものとするには十分な報告がない。

とはいえ、公平を期すため、本稿ではドローンは反撃を撃破する能力を有していると仮定する。しかし、総合的に見ると、ドローンは地形を保持する能力がない。なぜなら、理論的には反撃を撃退できるものの、その後、反撃が撃退された地形を支配することはできないからである。

ドローンは国境を封鎖できるか?

国境と境界線の支配は、自軍が保有する地形を支配し、その地形の支配権を奪おうとする反撃を撃破する部隊の能力にかかっている。この文脈では、地形を支配することは、破壊的な個人や集団を含む敵対的行為者による小規模な侵入、浸透、侵入から地域を隔離することを含む。標準的な政治地図からこの問題を見ると単純に見えるかもしれないが、境界線、国境の長さ、そしてそれらが置かれている物理的な地理を考慮すると、問題ははるかに複雑になる。

したがって、この要件の因果メカニズムは、反撃の撃破(条件5b)と連携した地形の支配(条件5a)である。重要なのは、ドローンは紛争地の結節点に位置する領土を支配できるのか、ということである。ドローンが領土を支配できないこと(条件1a、2a、3a、4a)をすでに立証した以上、敵対する2つの軍隊がまたがっている地点の領土を支配することはできないと論じて差し支えないだろう。前項で、ドローンは理論的には反撃を撃破することが可能であることを明らかにした。しかし、ドローンは反撃には勝てても、地形を支配することはできないからだ。

ドローンは住民を保護できるか?

陸上戦争の理論の最後の要件は、住民の保護であり、具体的には、紛争地形内の住民の保護である。特にこの要件は、この理論が従来型の陸上戦(land warfare)に限定して適用されるだけでなく、従来型の戦い(conventional warfare)から非正規戦(irregular warfare)、小規模戦争、反乱、対反乱に至るまで、紛争のあらゆる範囲に適用できるようにするものである。住民の保護は、民間人の被害や巻き添え被害の防止(条件6a)と、紛争地形の支配(条件6b)という2つの条件からなる。すでに本稿で述べたように、ドローンは地形を支配できないので、ドローンが民間人被害や巻き添え被害を防ぐかどうかを検証しなければならない。

ドローンは戦闘員(combatant)の統合防空・ミサイル防衛(IAMD)ネットワークの一部として運用されることが多いため、民間人の被害や巻き添え被害を保護するための評価は複雑だ。ここでも、ロシア・ウクライナ戦争が参考になる。

2025年初頭の報道によると、ウクライナはドローンを驚異的な規模で生産している。推定では、ウクライナは月に20万機のドローンを生産している。ウクライナのヴォロディミル・ゼレンスキー(Volodymyr Zelenskyy)大統領によれば、ウクライナの到達目標は年間450万機のドローンを生産することであり、同時に「ウクライナは今やドローン戦の世界的リーダーである」と述べている

とはいえ、ウクライナのドローンは、その膨大なドローン生産量とドローン戦の世界的リーダーとしての地位にもかかわらず、長距離ミサイル打撃や長距離自爆ドローン打撃を含むロシアのスタンドオフ戦(stand-off warfare)からウクライナの住民を効果的に守ることができていない。例えば、2025年6月29日、ロシアは477機のドローンと60発のミサイルでウクライナの都市を攻撃した。報告によれば、ウクライナの防護能力はこれらの空中からの脅威のうち249を排除したという。

2025年7月5日、ロシアは7時間にわたって550機の無人偵察機でウクライナの複数の都市を攻撃した。その2日後の2025年7月7日、ロシアは728機のドローンと12発のミサイルでウクライナの民間人地域を攻撃した。さらに2025年7月31日には、ロシアによる別の空爆でウクライナの民間人31人が死亡、159人が負傷した。本稿執筆時点では、2025年7月だけでも、ロシアによるウクライナ民間人居住区への攻撃で170人以上の民間人が死亡、さらに850人が負傷している

一方、ロシアの陸上部隊は、スタンドオフ打撃による広範な保護の下で、少しずつ領土を獲得する消耗戦略(attritional strategy)を徐々に一貫して押し続けている。ウクライナがこうした打撃から国民とインフラを守れないことは、ドローンが統合防空・ミサイル防衛(IAMD)の重要な一部であるとはいえ、国民と民間インフラを十分に守れないことを示している。

ドローン戦の世界的リーダーを自称する国が、より大規模な統合防衛システムの一部としてでさえ、ドローンで自国民を守っている苦労と抗争を考えれば、他の戦闘員(combatants)もウクライナよりさらにひどい防護態勢をとっているだろうと推測するのが適切である。したがって、ドローンでは民間人の被害や巻き添え被害を十分に防ぐことはできないという推論は適切である。ドローンは領土を支配できないという事実と合わせて考えれば、ドローンは住民を保護できないと述べることも同様に妥当である。

ドローンの可能性と陸上戦争の理論との合成

前節の分析は、ドローンが戦争におけるドクトリン、軍事組織、戦術、調達モデルを変えたとはいえ、陸上戦争の理論を満たすために必要な要件を満たしていないという事実を指摘している。すなわち、ドローンは領土を奪取、奪還、保持することはできない。都市部やトンネル、掩蔽壕網のような困難な地形から敵部隊を排除することもできない。同様に、ドローンは国境や境界線を封鎖することも、住民を適切に保護することもできない(表3参照)。したがって、ドローンとドローン戦は、ゲームをチェンジして革命的かもしれないが、その成果そのものは、戦闘員の戦争終結基準にプラスに寄与する戦略的に適切な成果を生み出すことに直接転用できるものではない。

表3: 合成-陸上戦争の理論
# 要件 条件 ドローン リクエスト
1 領土を奪う a) 占領軍を撃破する No
b) 紛争地域を支配する X
2 領土を奪還する a) 占領陸上部隊を撃破する No
b) 紛争地域を支配する X
3 領土からの脅威の除去 a) 敵対的部隊を困難な地形から排除する X No
b) 紛争地域を支配する X
4 領土を保持する a) 反撃を撃破する No
b) 紛争地域を支配する X
5 境界を封鎖する a) 係争地との接点における支配領土 X No
b) 反撃を撃破する
6 住民を保護する a) 民間人の被害と巻き添え被害を防ぐ X No
b) 紛争地域を支配する X
注:

リクエストと記載されている欄は、ドローンがその欄の冒頭に注釈されている要件を達成できるかどうかという質問に対する答えを示している。

この考えをもうひとつ考えるなら、ドローンとドローン戦は戦闘員の戦争を闘う方法に革命をもたらすかもしれないが、ドローンは戦闘員の戦争の終わらせ方に革命をもたらすものではないということだ。つまり、ドローンは戦術的には効果的だが、戦略的には決定的ではない。戦略的疲弊政治的・国内的意思軍隊の分裂、首都の占領、同盟の分裂という長年にわたる継続が、戦争における戦略的勝利への暗黒の道であることに変わりはない。

戦略的に決定的でないドローンは、2つの重要な点で戦争に悪影響を及ぼしている。第一に、ドローンは戦争をこれまでと同じように、いやそれ以上に致命的で破壊的なものにしている。もちろん、これは相対的なものだ。20世紀の2つの世界大戦の死と破壊を超えることは難しい。しかし、ウクライナが天文学的規模でドローンを大量生産できるようになったことで、戦略的敗北(strategic defeat)を食い止めることができた。ロシアは推定100万人以上の兵士と数千台の戦闘システムと戦闘支援車両を失い、ウクライナは数千人の兵士と民間人を失った。

第二に、100万人以上の死傷者を出し、戦場のあらゆる地点に手を伸ばして触れることができるにもかかわらず、ドローンは戦争終結基準に積極的に貢献する戦果を上げることができないことが証明されている。キーウにとっては、ドローン戦の世界的リーダーであるにもかかわらず、陸上部隊の不在が戦略の足かせとなっている。一方、歩兵をはじめとする陸上部隊で大きな優位性を持つモスクワにとって、ウクライナから奪った土地を保持し、その領土を奪還するためのウクライナの反撃を撃破し、その争奪地形に沿って新たに造成された国境線を強化し続けることで、彼らの戦略は段階的に前進する。この観点からすれば、戦略的意義はドローンではなく陸上部隊にある。したがって、陸上部隊の追加動員を犠牲にしてまでドローンを重視することは、ウクライナを助けるどころか、傷つけていることになる。一方、ロシアにとっては、ドローン戦と消耗の戦略の組み合わせが、徐々にロシアを従順な政策結果へと導いている。

結論

本稿の評価は、ドローンが戦争におけるゲームをチェンジする能力であることを示している。しかし、陸地を支配し、陸上戦争の重要な要件と条件を達成することができないドローンとドローン戦は、戦略的に無関係である。ドローンとドローン戦は、土地の奪取、奪還、整地、保持に焦点を当てた作戦を伴うことなく、また、境界線と国境を封鎖し、住民を保護することなく、戦争のホワイト・ノイズ、つまり、戦略との真の関連性を欠いた戦術である。

第二次ナゴルノ・カラバフ戦争は、しばしば戦争の将来として指摘されるが、戦争における異常値であり、将来への道標ではない。一方、ウクライナとガザでの戦争は、ドローン戦の限界と、陸上戦争の理論と論理の連続性を明確に示している。正しく理解すれば、軍隊が将来の戦争にどう備えるべきかについて、有益な洞察を与えてくれる。

ロシア・ウクライナ戦争もイスラエル・ハマス戦争も、ドローンが諸兵科連合作戦、統合作戦、マルチドメイン作戦の優れた補助装置であることを示している。しかし、ウクライナは、陸上戦争に勝つために必要な要件を達成するための陸上部隊が不足していれば、ドローン戦の世界的リーダーであっても何の意味もないことを示している。このように、ドローンはレガシー・システムの代替品ではないし、有用なレガシー・システムを保持することは、戦争と戦いに対する後ろ向きなアプローチを反映するものでもない。

むしろ、野戦砲兵、工兵、地上偵察、機械化・装甲化されたプラットフォームや編成のようなレガシー・システムや編成を保持することは、長い戦争の歴史の中で陸上戦争の論理が果たす現実を認識することになる。米陸軍将校のビル・マーレー(Bill Murray)やアナリストのマイケル・コフマン(Michael Kofman)ジャスティン・ブロンク(Justin Bronk)その他の者が評価するように、ドローンは砲兵のようなシステムに取って代わることはできない。なぜなら、地上を基盤とするレガシー・システムは、ドローンには備わっていない方法で、戦術上・作戦上の問題に対して24時間・全天候型の解決策を提供してくれるからだ。24時間、全天候型の選択肢がなければ、軍隊はますます脆弱になり、その結果、奇襲や衝撃を受けやすくなり、完全に圧倒されてしまう。

したがって、政策立案者、戦略家、上級軍事指導者は、軍事的革新(military innovation)と変革のイニシアチブ(transformation initiatives)を思案する際、陸上戦争の理論を頭の片隅に置いておくことが賢明である。流行や過去の戦争の非歴史的解釈、現代の武力紛争の読み違えに焦点を当てた革新や変革は誤りである。このような指導者たちは、陸上部隊を、そして、陸上部隊が積極的な政治決断を促すために必要な戦略的成果を生み出すために何を成し遂げなければならないかを、最優先事項として念頭に置かなければならない。

そのためには、ある目的(敵対的部隊、地形や地盤の一部、あるいは2つ以上の相手国の間の蝶番など)に移動し、その目的に対して適切な行動を反復的に適用し、戦略的バランスを有利に進めるために必要な状況に関連した条件を作り出すために、終結することなくそれを実行できる、頑丈で冗長で、復元力のある陸上部隊が軍隊には必要である。そうすることで、陸上部隊は有利な立場から戦争終結に向けて積極的な一歩を踏み出す。

このような諸兵科連合(combined arms)、統合、マルチドメインの軍隊を作り上げるための技術革新は必須である。このことを考える上で、政策立案者にとって重要なことは、敵対する国もまた、技術的能力を革新し、軍隊を変革していることを念頭に置くことである。現代の紛争に対する間違った解釈のためにレガシー・システムを投げ出したり、流行に流されないために自軍の大部分を売り払ったりすることが、悪い政策であり、悪い戦略であり、戦術的自殺行為であるのと同じように。

最後に、政策立案者は、革新と変革の優先順位を「沿空域(air-ground littoral)」に集中させなければならない。「沿空域(air-ground littoral)」は、今や、陸上戦争の要件と条件を達成することが可能であり、達成しようとする陸上部隊の作戦的・戦術的移動性を維持するための要である。革新と変革戦略は、「沿空域(air-ground littoral)」で活動する陸上部隊の打撃力を可能にする防護シールドとして、ドローンと機動短距離防空を考慮しなければならない。革新と変革のイニシアチブを進める政策立案者や軍の上級指導者は、ドローンや長距離打撃によるスタンドオフ戦(stand-off warfare)を重視してはならない。むしろ、政策立案者や上級軍事指導者が戦略的に適切な戦場での成果を生み出すことに真に関心があるのであれば、敵の重心(脅威の軍隊、「資本(capital)」、および/または同盟関係)を保護し、移動し、打撃する能力を持ち、地形を支配できる諸兵科連合部隊、統合部隊、およびマルチドメイン部隊を重視すべきである。

結論として、次の陸上戦争で勝利するのは、ドローンと機動戦(maneuver warfare)を完璧に融合させた側からは生まれない。次の陸上戦争に勝つためには、5つの取り組みを積極的に進める必要がある。第一に、軍隊は、自軍の陸上部隊の移動の自由を可能にするために、「沿空域(air-ground littoral)」を十分に開放しておかなければならない。第二に、移動の自由(freedom of movement)を実現した上で、軍隊は移動性、堅牢性、復元力、冗長性を備えた陸上部隊を用いて、脅威の重心まで前進しなければならない。第三に、目標に接近した後、移動性、靭性、復元性、および冗長性を備えた陸上部隊は、紛争の舞台となる地形を支配するまで、脅威の重心に対して十分な火力を継続的に投入しなければならない。

第四に、地勢を掌握した軍隊は、「沿空域(air-ground littoral)」の支配を維持し、反撃を撃退し、地域住民を保護し、国境と境界線を封鎖することによって、その成功を強化し、獲得した利益を強固にしなければならない。第五に、軍隊は、経済的・軍事的資源に加え、政治的・国内的意思を持ち、相手側の上級軍事指導者や政策立案者が戦略的選択肢を徐々に失うまで、戦術的・作戦的圧力を維持するための戦術的・作戦的・戦略的奥行きを持たなければならない。ドローンはこのプロセスにおいて重要な役割を果たし、そのような条件を整える手助けをするだろうが、革命的でゲームをチェンジする技術であるにもかかわらず、それだけでは決定的な結果をもたらすことはない。