大規模戦闘作戦における中国の闘い方 (TRADOC)

米陸軍訓練ドクトリン・コマンド(TRADOC)が、2025年5月8日付で「大規模戦闘作戦における中国の闘い方(How China Fights in Large-Scale Combat Operations)」の論稿を公開したので紹介する。この論稿は、中国、ロシア、イラン、北朝鮮という潜在的な敵対者に焦点を当てた一連の論稿の第一弾だとしている。(軍治)

大規模戦闘作戦における中国の闘い方

How China Fights in Large-Scale Combat Operations

2025.4.30

米陸軍訓練ドクトリン・コマンド(TRADOC)

目 次

序文

エグゼクティブ・サマリー

はじめに

中国の安全保障環境に対する見方

中国の紛争へのアプローチ

人民解放軍(PLA)

統合対介入戦略(Joint Counter-Intervention Strategy)

地上部隊に焦点を置いた挿話

Conclusion:結論

付録A:大規模戦闘作戦の条件と中国

付録B:トレードクラフトと情報源

序文

米陸軍訓練ドクトリン・コマンド(TRADOC)のG-2参謀次長として、私はこのタイムリーな論文「大規模戦闘作戦における中国の闘い方(How China Fights in Large-Scale Combat Operations」をご紹介できることを嬉しく思う。本稿は、中国、ロシア、イラン、北朝鮮という潜在的な敵対者に焦点を当てた一連の論文の第一弾となる。私は『ミリタリー・レビュー』に寄稿した論文で、大規模戦闘作戦(LSCO)の勝敗は戦いの作戦レベル(operational level of warfare)で決まると主張している。中国が作戦レベルでどのように闘うかを理解することは、米陸軍がインド太平洋戦域でのいかなる紛争にも備えられるようにするための第一歩である。本稿が、中国人民解放軍(PLA)がどのように戦いに臨んでいるかについての理解における重要なギャップを埋めるものとなれば幸いである。

この文書は、米陸軍訓練ドクトリン・コマンド(TRADOC) G-2 の 2 つの重要な出版物を基礎としている。一つ目は、米陸軍訓練ドクトリン・コマンド(TRADOC) パンフレット 525-92「2024-2034 年の作戦環境:大規模戦闘作戦」であり、大規模戦闘作戦(LSCO) に存在すると評価される 12 の主要条件を取り上げ、大規模戦闘作戦(LSCO) を検討する際に米陸軍が意味する別の 5 つを追加している。もう1つは、米陸軍技術刊行物7-100.3「中国の戦術」で、中国の軍事戦略、作戦コンセプト、および将来の人民解放軍(PLA)の作戦の特徴について説明している。この新しい論文は、中国共産党(CCP)が自国の安全保障環境をどのように見ているのか、また、この認識が人民解放軍(PLA)の用兵(warfighting)へのアプローチ、特に「積極防衛(active defense)」と「システム対決(systems confrontation)」の強調をどのように形成しているのかについて光を当てている。ここに示された洞察は、単なる学術的なものではなく、われわれの訓練方法論や戦力開発構想に情報を提供するために不可欠なものである。

本稿は米陸軍、統合軍、インテリジェンス機関、そして同盟国やパートナーに広まり、中国の軍事思想と作戦慣行に対する理解を深めることになる。本稿は、陸軍の学校やセンターにおけるカリキュラムの開発を推進し、専門的な軍事教育に情報を提供し、米陸軍のドクトリンの作成を支援し、戦闘訓練センターにおける米陸軍の訓練シナリオの現実性と妥当性を高める。また、人民解放軍(PLA)の作戦ドクトリン、戦術、技術的能力を対人戦力の表現に取り入れることで、インド太平洋戦域での潜在的な紛争で直面するであろう課題に対して、兵士と指導者をよりよく準備させることができる。これは、潜在的な敵対者を知り、主要な顧客にもそれを知ってもらうという、我々の主要な使命を果たすことにつながる。

私は、米陸軍の全メンバーがこの資料に取組み、その意味を検討することを奨励する。インド太平洋における将来の紛争において、米陸軍が統合・連合・省庁間チームの一員としてどのように参加するかを可視化するためには、潜在的な敵対者を理解することから始めなければならない。本稿は、その可視化のための素晴らしい出発点を提供するものである。

     イアン・サリバン 

     米陸軍訓練ドクトリン・コマンド

     インテリジェンス(G-2)参謀長

「勝利を得るためには、敵を知らなければならない。

敵を知ることは、作戦環境から始まる」

勝利はここから始まる‼

エグゼクティブ・サマリー

大規模戦闘作戦における中国の闘い方(How China Fights in Large-Scale Combat Operations」は、中国の軍事戦略、作戦コンセプト、紛争で採用される人民解放軍(PLA)地上部隊(ground forces)の予想される特徴について詳細な評価を提供する。中国が米国の脅威の最前線に位置づけられる中、米陸軍はインド太平洋戦域における潜在的な紛争への備えを確保するため、中国が作戦レベルでどのように闘うかを理解する必要がある。この文書は、米陸軍訓練ドクトリン・コマンド(TRADOC)パンフレット525-92「作戦環境2024-2034:大規模戦闘作戦」および陸軍技術出版(ATP)7-100.3「中国の戦術」で提示された基礎資料を基に作成されている。米陸軍訓練ドクトリン・コマンド(TRADOC) パンフレット 525-92 は、当面の大規模戦闘作戦(LSCO)を定義する主要な作戦環境条件を特定し、ATP 7-100.3 は 人民解放軍(PLA) の戦術に関する洞察を提供する。ATP 7-100.3は、人民解放軍(PLA)の戦術に関する洞察を提供している。これらの資料は、人民解放軍(PLA)の紛争に対するアプローチと、それが米陸軍の訓練・教育に与える影響を理解するための包括的な基盤を提供するものである。

中国の指導部は、世界の安全保障環境はますます複雑で危険なものとなっており、米国を主要な敵対者と見なしている。中国共産党(CCP)は、中国国内の安定や経済発展など、自国の核心的利益を守ることに重点を置く一方、海外の利益にも焦点を広げている。台湾は依然として中心的な争点であり、中国はこの問題に関する外国の干渉(interference)の可能性を否定している。その結果、中国の軍事戦略は「積極防衛(active defense)」に根ざしており、戦略的な防勢態勢と攻勢的な作戦・戦術能力を兼ね備えている。この戦略により、国境を越えた戦力投射、高度な接近阻止/領域拒否能力、戦略目標への潜在的干渉(potential interference)に対抗するためのその他の近代化構想が生み出されている。

大規模戦闘作戦(LSCO)において中国は、国益を確保するために軍事力と民生能力を統合する、国家全体のアプローチを採用するだろう。このアプローチでは、多領域の統合、情報支配(information dominance)の優先、長期化する可能性のある紛争への備えを特徴とする作戦が展開される。この戦略の中心は「システム対決(systems confrontation)」であり、人民解放軍(PLA)は攻勢能力を活用して、複数の領域にわたる敵のシステムを麻痺させる。「システム対決(systems confrontation)」は、指揮・統制、インテリジェンス・ネットワーク、兵站機能、情報システム、火力支援システムなど、相互に結びついたシステムをターゲットとし、敵対者の効果的な戦争を遂行する能力(ability to wage war)を無力化することに重点を置く。

中国が全領域戦(all-domain warfare)を重視していることは、多領域統合と情報支配(information dominance)に重点を置いていることを強調している。人民解放軍(PLA)は、人工知能、サイバー能力、電子戦などの先端技術を活用し、軍種や領域を超えて連携した精密な打撃によって敵システムの脆弱性を突くことで、決定的な勝利を達成する。このコンセプトは、あらゆる領域の作戦を統合し、あらゆる軍種からの情報を融合させ、特定された敵の脆弱性に対して効果を発動する、人民解放軍(PLA)の中核的な作戦コンセプトである「多領域精密戦(Multidomain Precision Warfare)」に具現化されている。

太平洋戦域における外国軍の介入を予期して、中国は、敵部隊が戦域に全力で到着する前に抑止し、遅延させ、撃破することを狙いとした、包括的な統合対介入複合体(joint counter-intervention complex)を展開してきた。この戦役には、敵の意思決定プロセスを混乱させるための情報作戦、重要な戦域を制圧するための空の支配と海の支配の取組み、展開ルートと兵站拠点をターゲットとした統合火力打撃が含まれる。人民解放軍(PLA)の地上部隊(ground forces)は、水陸両用攻撃、空中機動(airborne maneuvers)、戦略的防御、逆襲を通じて、これらの戦役で不可欠な役割を果たす。

航空・海軍作戦が支配的な太平洋の紛争に関する議論では過小評価されがちな地上部隊(ground forces)は、中国の戦略に対抗する上で重要な役割を果たしている。人民解放軍(PLA)が水陸両用攻撃、空中作戦、戦略的反撃において地上部隊(ground forces)に依存していることは、作戦目標を達成する上で地上軍が不可欠な役割を担っていることを示している。同様に、米軍の地上部隊(ground forces)は、緊要地形(key terrain)を確保し、統合作戦を可能にし、紛争環境において敵対者のシステムを混乱させるために不可欠である。インド太平洋戦域は、その地理的条件と現代戦(modern warfare)の多領域的本質により、独特な課題を抱えているため、米陸軍は、統合部隊の他の部隊とともに効果的に活動できるよう、地上部隊(ground forces)の準備を万全にしなければならない。この準備は、侵略を抑止するためだけでなく、中国との潜在的な紛争において勝利を確保するためにも不可欠である。

はじめに

米国の国家安全保障政策は、中国を米国の脅威の最たるものとしており、2025年暫定国防戦略指針は「国防総省(DoD)はインド太平洋における中国の侵略を抑止するために緊急に行動する」[1]と強調している。したがって、米陸軍にとって中国、中国共産党(CCP)、人民解放軍(PLA)を理解することは極めて重要である。中国共産党(CCP)が地域的・世界的な利益を増進するために人民解放軍(PLA)をより積極的に活用することを選択した場合、米陸軍は将来起こりうる中国との紛争において統合軍部隊と連合部隊の一員として主導的な役割を果たす準備をしなければならない。中国の軍事力を十分に理解することは、米国の利益を守り、中国の侵略を抑止し、インド太平洋における潜在的な紛争において勝利を確保するために極めて重要である。

本稿は、米陸軍訓練ドクトリン・コマンド(TRADOC)パンフレット525-92「作戦環境2024-2034:大規模戦闘作戦」で提示された作業を基礎とするシリーズの最初のものである。同書は2024年12月に発行され、現代の大規模戦闘作戦(LSCO)における12の主要な作戦環境条件を定めた。本稿では、中国に適用されるこれらの大規模戦闘作戦(LSCO)条件を全文にわたって取り上げるとともに、重要なポイントを便利な1ページの参考資料にまとめた。さらに本稿は、中国共産党(CCP)の安全保障認識、紛争に対するアプローチと戦略、そしてあらゆる領域にわたる人民解放軍(PLA)の組織と用兵能力(warfighting capabilities)についての分析を提供する節に分かれている。

重要なのは、本稿が陸軍技術刊行物(ATP)7-100.3「中国の戦術」で発表された研究を推し進め、太平洋での紛争は主に空と海の交戦で構成され、地上部隊(ground forces)の役割はほとんどないという一般的な誤解(misconception)を覆す、地上部隊(ground forces)に焦点を当てた挿話で結ばれていることである。ATP 7-100.3は、人民解放軍(PLA)の地上部隊(ground forces)が旅団や大隊の指揮階層でどのような作戦をとるかについては説明しているが、旅団レベルより上位の指揮階層がどのような作戦をとるかについては触れていない。

これらの挿話は、太平洋における大規模戦闘作戦(LSCO)を含む作戦において、中国がどのように地上部隊(ground forces)に依存する可能性が高いかを説明する2つの異なるシナリオを示すことによって、そのギャップを埋めようとするものである。これらのシナリオは、中国が戦略目標を達成するために、どのように部隊を編成し、統合能力を統合し、作戦レベルの機動を実施するかを説明するものである。本稿は、このような詳細な挿話を提供することで、太平洋における地上部隊(ground forces)の不可欠な役割を実証し、この比類なく重要で困難な作戦地域における大規模戦闘作戦(LSCO)の複雑でマルチドメインな本質に米陸軍が備えることを狙いとしている。

この文書は、米陸軍訓練ドクトリン・コマンド(TRADOC)のアナリストが中国と人民解放軍(PLA)について継続的に研究してきた成果である。この作業はまた、米陸軍インテリジェンス・安全保障事業体全体、およびインテリジェンス機関、インド太平洋全域の同盟国やパートナーとの日常的な協力関係から生まれたものである。米陸軍訓練ドクトリン・コマンド(TRADOC)は、この取組みに対する米太平洋陸軍国家地上インテリジェンス・センター(National Ground Intelligence Center)および米陸軍大学校中国陸戦研究センター(Army War College’s China Landpower Studies Center)の支援に感謝の意を表したい。

中国の安全保障環境に対する見方

中国の指導者たちは、現在の安全保障環境を複雑で危険なものと見ている。習近平国家主席は第20回中国共産党(CCP)大会で、中国の脅威について次のように述べた。「我が国は、戦略的な機会、リスク、課題が同時に存在し、予期せぬ要因が増大する発展期に突入しており、・・・我々は・・・最悪のシナリオに備える必要がある・・・」[2]

中国の国際関係学者、中国政府の文書、国営メディアは、しばしば中国が敵対者に囲まれていると描いている。中国の主要な指導者の発言や党機関誌、ニュース・ソースは、米国が中国を封じ込めることを狙いとした「新冷戦(new cold war)」を仕掛けていると頻繁に言及している[3]

中国の核心的利益は、正確に定義されているわけではないが、主に経済発展、国内の安定、国家主権、領土保全を包含している[4]。これらの核心的利益を守るため、中国はその焦点を海外の利益にも広げてきた。この拡大は2013年の国防白書でも指摘されており、リビアから自国民を避難させた際、人民解放軍海軍(PLA Navy)と人民解放軍空軍(PLA Air Force)が地域的に連携した部隊を展開し、3万5860人の中国人を避難させたことに見られるように、グローバルな軍事的リーチを確立しようとする中国の取組みに表れている[5]

中国の領土主権の解釈は広範で、17カ国との領土紛争を引き起こしている(図1参照)。その中でも台湾とその係争状態は、中国共産党(CCP)にとって特に懸念すべきものである。中国の指導者たちは、台湾問題、民主化、人権、そして中国を世界的な経済大国、地政学的大国として確立したいという願望について、外国からの干渉(foreign interference)を拒絶している[6]

図1:中国の領土問題(出典:TRADOC G-2)

中国の紛争へのアプローチ

中国の紛争に対するアプローチは、外交的関与(diplomatic engagement)から全面的な戦い(full-scale warfare)に至るまで、連続した戦略によって特徴付けられ、優位に立つために利用可能なあらゆる手段を活用する[7]。この国家を挙げてのアプローチには、影響力、干渉(interference)、インテリジェンス活動を融合させた中国の統一戦線活動や、武力紛争に頼らずに国益を増進させるために用いられる「三戦(Three Warfares)」(心理戦、世論戦、法戦)、さらには中国の「積極防衛(active defense)」の軍事コンセプトなど、幅広い活動が含まれる。

軍事戦略: 「積極防衛(active defense)」

中国の「積極防衛(active defense)」コンセプトは軍事戦略の要であり、作戦的・戦術的攻勢能力を備えた戦略的防勢態勢を重視している[8]。これにより中国は、相互に関連する3つの条件(量(mass)、十分な弾薬在庫(magazine depth)、内線(interior lines))を最大限に活用することができ、これらの条件が組み合わさることで、自国の脆弱性の多くを緩和すると同時に、相手に自国の脆弱性を露呈させることになる。この戦略は、毛沢東の「敵を深く誘い込む(luring the enemy in deep)」というコンセプトに端を発しているが、現在では、中国の主権と国益を守るために、抑止力、情報支配(information dominance)、統合作戦の要素を取り入れている[9]

さらに、「積極防衛(active defense)」の範囲は過去15年間で拡大し、純粋に防勢的なスタンスから、中国の国境を越えて戦力を投射できるものへと変化してきた[10]。この進化には、接近阻止(antiaccess)能力の開発、海上軍事闘争の重視、「情報化戦(informationized warfare)」「知能化戦(intelligentized warfare)」aへの準備などが含まれる。

a. 人民解放軍(PLA)の情報化戦(informationized warfare)のコンセプトは、デジタル・ネットワーク、情報システム、データを軍事作戦に導入している。情報化戦(informationized warfare)は、指揮・統制(C2)、インテリジェンス・監視・偵察(ISR)、サイバー作戦に適用される。2019年以降、人民解放軍(PLA)は同時に、人工知能、量子コンピューティング、ビッグ・データ、仮想現実、拡張現実、クラウド・コンピューティング、自律システム、モノのインターネット(IoT)などの開発技術を取り入れ、迅速な意思決定をサポートする知能化戦(intelligentized warfare)を追求し始めた。

この戦略は「現代人民戦争(Modern People’s War)」のコンセプトを統合したもので、中国共産党(CCP)は、外国の侵略に立ち向かったり、国家の団結を守ったりするための社会の大動員と定義している[11]。このコンセプトは中国の内戦に端を発するが、中国の戦略家は、このコンセプトは現代社会の現実を考慮して進化してきたものであり、イデオロギー的にも健全で、現代戦(modern warfare)にふさわしいものであると指摘している[12]。人民戦争というコンセプトは、平和と戦争、後方地域と前線、民間人と戦闘員の間の伝統的な境界がますます曖昧になる状況において適切である。このような状況においては、紛争の経済的・技術的側面への配慮がより強く求められる。

中国の「能動的防衛戦略(active defense strategy)」の重要な信条は、「戦争統制(war control)」あるいは「効果的統制(effective control)」、つまり競争、危機、紛争時に中国がどのように活動を管理するかである。戦争統制は、リスクを最小限に抑えつつ、特定の目標を達成するために紛争を管理し、封じ込めることを重視する。

それは、3つの主要な要素を持っていると理解できる[13]

・ 態勢の確立(establishing postureは、平時/競争の間に非暴力的手段を用いて潜在的弱点に対処し、安定を維持する。

・ 危機の予防と統制(crisis prevention and controlは、あらゆる国家権力と国家全体の能力を駆使して、エスカレートを防ぐと同時に、利益を増進する機会をつかむ。

・ 戦況(war situationの統制は、激しさと範囲の拡大を抑えながら、最小限のコストで迅速な勝利を目指す。

軍民融合(military-civil fusion)

中国は「軍民融合(military-civil fusion)」、すなわち国家統合戦略システムと能力のコンセプトを、戦略的競争と紛争における重要なイネーブラーとして捉えている。中国の軍事力は統合され、迅速な展開と長期的な後方支援のための国民全体の支援に依存している。中国政府関係者は、現代の紛争は閾値が低くなり、戦争と平和の境界線が曖昧になっているため、文民と軍事の領域の結びつきがますます重要になっていると認識している[14]

2015年、習近平は軍民融合(military-civil fusion)のコンセプトを導入したが、これは中国共産党(CCP)の軍への民生支援のコンセプトをさらに洗練させたものである。2017年、中国共産党(CCP)はその融合を監督する「軍民融合発展中央委員会」を設立した[15]。後に「国家統合戦略システム・能力」と改称されたこのシステムは、中国がその重要な民生経済力、科学技術部門、民生インフラを最適に活用して軍事発展を支援し、共生的に軍事研究・開発・能力を社会的利益のために活用するために採用された。

中国は、世界的な競争の帰趨は、国家があらゆる能力を効果的に活用できるかどうかで決まると考えており、この到達目標を達成するためには軍民融合(military-civil fusion)が不可欠である[16]

中国は軍民融合(military-civil fusion)の名の下、社会のあらゆる分野でイニシアチブを展開しているが、これはその戦略的・作戦的能力に重要な意味を持つ。その例は社会のあらゆる分野に見られる。

・ 中国の2016年国防運輸法は、国有企業に国防活動を支援するための建設と訓練を指示し、戦時中に車両、施設、資材を徴発する国の権限を拡大している[17]。人民解放軍(PLA)は定期的に、民間の輸送機関、兵站施設、自治体を巻き込んだ大規模な演習を実施している。中国の民生用と軍事用の研究開発エコシステム間の相乗効果により、人民解放軍(PLA)は宇宙から光学に至る分野の最先端技術にアクセスすることができる。

・ ウクライナ紛争で強調されたように、国家経済の回復力は、戦闘能力を維持するためのカギとなる。この回復力には、紛争中に経済活動を継続する能力、中断されたサプライチェーンの影響を緩和する能力、制裁を回避する能力、ターゲットとされたときに兵站ノードやその他の拠点を再建する能力などが含まれる。中国は、SWIFT銀行システムを補完するために独自の決済システムを構築し、エネルギーと食糧の独立性を高め、戦略的石油備蓄を創設するなど、この分野で数多くの取組みを行ってきた。

・ 中国共産党(CCP)には、影響力作戦(influence operations)を担当する多くの民間局や機関があり、サイバー攻撃やオンライン影響力活動を行う民間企業の巨大なエコシステムによってますます支援されている。

システム対決(Systems Confrontation)

中国は、米国とその同盟国に対する現代戦(modern warfare)を、伝統的な武力対武力、あるいはプラットフォーム対プラットフォームの戦いではなく、「システム対決(systems confrontation)」としてコンセプト化している。中国の著作では、「システム対決(system confrontation)」とは、対立する国家の防衛戦略、システム、民軍シナジーを互いに戦わせる行為である[18]。このアプローチは、複数の領域にまたがる敵の作戦システムを麻痺させることを狙いとしている。中国の作戦的システム・オブ・システムズ(operational system of systems)は、5つの重要な構成要素からなる。

・ 指揮システム(command systemは、各構成システムをネットワークで結ぶ指揮・統制(C2)リンクに重点を置いている。敵の指揮システムを麻痺させるため、人民解放軍(PLA)はネットワークをターゲットとし、状況認識を低下させ、意思決定を遅らせる。

・ この火力攻撃システム(firepower-strike systemは、空、海、陸を含む複数の領域にわたってキネティック火力を提供するようにデザインされている。

・ 情報戦(対決)システム(information warfare (confrontation) systemは、情報支配(information dominance)の達成を狙いとしており、電子戦やサイバー作戦を含む幅広い情報能力が含まれる。

・ 偵察インテリジェンス・システム(reconnaissance intelligence system)は、人民解放軍(PLA)部隊のインテリジェンスの収集と状況認識の構築を担っている。

・ 支援システム(support systemは、兵站やその他の重要な機能を含む他のシステムを包括的に支援する。

中国は、敵の相互接続されたシステムをターゲットとし、混乱させることで、敵の効果的な機能、戦力投射、戦争遂行能力を無力化できると考えている。この多領域戦略は、中国の進化する軍事ドクトリンを反映したものであり、戦略目標を達成するために、相手の複雑な作戦ネットワーク内の重要なノードを無力化することの重要性を強調している。中国のテキストでは、ノードとは、その劣化または破壊が他の敵の戦場システムの性能に影響を与えるあらゆるターゲット可能な能力のことである[19]

作戦・戦術レベルでは、敵のシステム・オブ・システムズ(system of systems)を麻痺させるために、指揮・統制(C2)ノードと主要支援機能に対する高強度の、できれば同時攻撃によって成功が達成される。中国の文献は、敵のシステムに衝撃を与えるために、多領域にわたる致死性・非致死性な同時火力の重要性を強調している。

大陸間弾道ミサイル(ICBM)、弾道ミサイル搭載潜水艦(SSBN)、戦略爆撃機(ICBM搭載)

図2:システム対決戦における指揮階層別ターゲットの種類(出典:TRADOC G-2)

多領域精密戦(MDPW)

2021年、中国のシステム・アプローチを可能にするため、人民解放軍(PLA)は多領域精密戦(Multidomain Precision Warfare :MDPW)を中核作戦コンセプトとして採用した[20]。このコンセプトは「システム対決(systems confrontation)」を可能にし、全領域にわたる作戦の統合を支援する。多領域精密戦(MDPW)は、中国の軍事文書で確認された新たな領域に基づいており、認知の次元と電磁スペクトラムを、より確立された陸、海、空、宇宙、およびサイバーの領域と同等に高めている。

多領域精密戦(MDPW)は、特定された敵の脆弱性に対する攻撃を開始するために、軍種や領域を超えて情報を融合させることを狙いとしている。このコンセプトは、軍種、領域、社会圏を超えて、利用可能なすべての能力を活用することを強調している。多領域精密戦(MDPW)の作戦コンセプトの下で、人民解放軍(PLA)が関与する将来の紛争は、おそらく次のような重要な特徴を特徴とするだろう。

・ 統合多領域統合(Joint Multidomain Integration。中国は、省庁間および国家全体の力に支えられた統合作戦の重要性を認識しているため、すべての領域にわたる取組みを統合するよう努め、統合部隊として闘う。人民解放軍(PLA)の軍事文書は、強力な敵部隊を撃破するのに十分なイニシアチブを獲得するためには、各軍の戦力を柔軟に活用する能力が不可欠であることを強調している。作戦レベルでは、人民解放軍(PLA)は近接作戦と縦深作戦で敵部隊を解体するための8つの重要な信条を掲げている。すなわち、すべての戦場空間を包括的に使用すること、複数の作戦形態と戦闘方法を包括的に使用すること、作戦の各段階について全体的な計画と段取りを立てること、敵の指揮システムを破壊すること、敵のハイテク兵器システムのリンクを破壊すること、敵の支援システムを破壊すること、敵の士気を破壊することである[21]

・ 「システム対決(systems confrontation)」。中国は、統合された統合作戦、ネットワーク化された能力、全領域にわたる高度な兵器システムを活用することによって「システム対決(systems confrontation)」を実行し、「拡大された戦争空間(expanded warspace)」の中で「圧縮された戦場空間(compressed battlespace)」を実現する。その意図は、敵の闘う能力を低下させ、中国問題への介入を思いとどまらせることにある。

・ 情報の支配(Information Dominance。中国にとって、情報支配(information dominance)は現代戦(modern warfare)において不可欠である。中国は、心理作戦とサイバー戦(cyber warfare)を駆使して敵対者の意思決定者を動かし、振舞いを形成する多面的な情報支配戦役(information dominance campaign)によって、認知領域(cognitive domain)に影響を与えようとするだろう[22]

・ 知能化戦(Intelligentized Warfare。知能化戦(intelligentized warfare)は、人工知能(AI)、量子コンピューティング、ロボット工学、ビッグ・データ分析、極超音速システムなどの先進技術やイノベーションを活用し、意思決定を改善し、迅速な情報処理を支援し、領域を超えた人間と機械の連携を強化する。さらに、これらの技術は、敵の状況認識や戦場を効果的に把握する能力を混乱させるために使用される。

・ 総合的な勝利のために小さな会戦に勝つ(Winning Small Battles for Total Victory。中国は、重要な時と場所での質量ともに優勢な小戦闘を好み、総合的な勝利に導く[23]。戦術レベルでは、中国軍事科学アカデミーの学者たちは、質の低い戦力を結集して優勢な敵に打ち勝つことを重視し、小さな会戦に勝つことが完全な勝利につながるという。しかし、中国が「新しい戦闘能力を備えた新領域の部隊」をより多く投入し、統合一体化が進むにつれて、質を克服するための質量の集約への依存の重要性は低下していくだろう。

・ 長引く紛争(Protracted Conflict。中国は迅速な勝利を望むが、紛争が長期化する可能性を認識し、それに備えている[24]

人民解放軍(PLA)

人民解放軍(PLA)は、すべての用兵領域(warfighting domains)にわたって堅牢な能力を有している。中国の陸軍と空軍は近代的で強力であり、海軍は急速に成長し、ブルー・ウォーター能力と遠征能力を拡大している。人民解放軍海軍(PLA Navy)は、1,200隻以上の船舶を運用する中国海警局によってさらに増強されている[25]。中国の海警局は、第一列島線と南シナ海を積極的にパトロールし、しばしば中国の領有権を侵害していると認識する外国船に対して嫌がらせを行っている。

サイバー領域では、中国の国家が支援するサイバー・アクターが、米国とその同盟国をターゲットに、大規模かつ巧妙なサイバースパイ戦役を展開している[26]。これらの作戦は、機密データや知的財産の窃盗、新技術の獲得、個人識別情報の取得を狙いとしている。

中国は、数十年にわたり宇宙開発に多大な投資を行い、堅牢で多面的な宇宙プログラムを発展させてきた。人民解放軍(PLA)は、インテリジェンス収集、通信、航行支援など、さまざまな目的で宇宙アセットを利用している。さらに、人民解放軍(PLA)は、宇宙を基盤とする通信、レーダ、ナビゲーション・システムを妨害するための対宇宙能力を開発・採用している。中国の防衛研究は、衛星を基盤とするのセンサーを一時的に盲目にしたり、衛星のコンポーネントを破壊する可能性のある指向性エネルギー兵器技術を発展させている[27]。作戦的には、これらの能力は、潜在的な紛争において情報支配(information dominance)と宇宙優越(space superiority)を達成するための中国の広範な戦略の一環として採用されることになる。

歴史的にみて、人民解放軍(PLA)の作戦は地上部隊(ground force)である人民解放軍陸軍(PLA Army)に大きく依存してきた。人民解放軍陸軍(PLA Army)の規模は大きく、人民解放軍(PLA)の現役兵力の約51%を占める。しかし、人民解放軍海軍(PLA Navy)、人民解放軍空軍(PLA Air Force)、人民解放軍ロケット部隊(PLA Rocket Force)を含む中国の他の部隊の急速な成長と近代化により、中国の統合戦闘力は著しく向上している。人民解放軍海軍(PLA Navy)と人民解放軍空軍(PLA Air Force)は、人民解放軍海軍陸戦隊(PLA Navy Marine Corps)と人民解放軍空軍空降兵(PLA Air Force Airborne Corps)を含む機動部隊(maneuver forces)を拡大・近代化し、現在では中国により大きな戦力投射能力を提供している。

各軍種は戦闘力を構築し、サイバー空間部隊、情報支援部隊、軍事航天部隊、統合後方支援部隊といった他のイネーブラーによって支えられている。

・ サイバー空間部隊(Cyberspace Forceは、攻勢的・防勢的サイバー作戦、国家サイバー国境防衛、統合偵察・攻撃・防衛を担当する。脆弱性の悪用や第三者による侵害など、高度な技術と戦術を駆使し、ステルス性の高い機敏な作戦を遂行する。同部隊は、人民解放軍(PLA)の他の部門や軍種と連携し、ネットワーク情報システムの協調的な開発と適用を確保している。

・ 情報支援部隊(Information Support Forceは、ネットワーク情報システムの開発と応用、サイバー戦や電子戦争からの軍事情報の保護、軍事作戦へのAIの統合を担当している。情報支援部隊は、中国の現代戦(modern warfare)における情報化と知能化を反映し、他の人民解放軍(PLA)軍と連携して、統合戦闘能力と多領域作戦の情報支援を強化している[28],[29]

・ 軍事航天部隊(Military Aerospace Forceは、中国の宇宙へのアクセス、利用、管理を確保する責任を負っている。中国のすべての軍事衛星を管理し、中国の宇宙パワーを強化し、宇宙領域の優位性を達成するために、ドクトリン、宇宙特有の文化、訓練、能力を開発することをタスクとしている[30]

・ 統合兵站支援部隊(Joint Logistics Support Forceは、戦略レベルで統合兵站部隊を統合するようにデザインしており、軍民統合を含む統合作戦、統合訓練、統合支援能力の向上に重点を置いている。また、危機や紛争における基本的な補給クラスの重要な供給者としての役割を果たし、ハイテンポな統合戦闘作戦に精密な兵站支援を提供し、統合された統合兵站指揮システムを通じて戦略的な取組みの統一(unity of effort)を達成する[31]

さらに、人民武装警察や民兵など、人民解放軍(PLA)アーキテクチャの外側に位置するイネーブラーは、社会全体の動員の取組み(mobilization efforts)において重要な役割を果たす。これらのイネーブラーは、戦闘作戦を支援するための動員をよりよく可能にするため、大幅な近代化と再編成が進められており、中国が紛争時に展開しうる包括的な作戦システム・オブ・システムズ(operational system of systems)を形成している[32],[33],[34]

中央軍事委員会(CMC)は、習近平が率いる中国軍(Chinese armed forces)の最高意思決定機関であり、通常、2人の副委員長を含む6人の人民解放軍(PLA)の制服組で構成される。北京にある中央軍事委員会(CMC)統合作戦司令部(JOCC)を通じて、中央軍事委員会(CMC)は「人民解放軍(PLA)に対する全体的な指導力と集中的で統一的な指揮」を行使する[35]。独立した中央軍事委員会統合参謀部が、すべての軍事計画の策定において中心的な役割を果たしている。しかし、核打撃(nuclear strikes)などの特定の作戦は、最高司令部の承認を必要とする。最高司令部は、権威ある情報源では明確に定義されていないが、習近平や政治局常務委員会など中国共産党(CCP)の最高レベルであると理解されている[36]

図3:中国軍(Chinese armed forces)の組織と階層(出典:TRADOC G-2)

統合作戦は統合作戦司令部(JOCC)によって調整され、中国の5つの統合戦域軍はそれぞれ独自の統合作戦司令部(JOCC)を持ち、統合作戦チームで戦域司令官を支援する。統合作戦司令部(JOCC)にはインテリジェンス・センターがあり、連隊レベルまで指揮階層を越えて指揮所に配置されている。

人民解放軍(PLA)の指揮・統制(C2)アーキテクチャに関する記述は、特に核、宇宙、サイバー作戦などの戦略的部隊について、作戦統制と作戦調整を区別した上で、統一性を強調している[37]。戦域レベルの統合作戦司令部(JOCC)は、領域別の作戦副司令部を通じて他の軍種に対する統制力を行使し、より低いレベルでの協調的な指揮を確保する。

中央軍事委員会(CMC)の中央集権的で統一された指揮系統は、統合作戦司令部(JOCC)の統合された統合作戦能力と相まって、中国が複雑な軍事作戦を効率的に調整することを可能にしている。この体制は、特に核打撃などの重要なシナリオにおいて、迅速な意思決定と実行を可能にするようデザインされており、中国の軍事力を協調的かつ強力なものにしている。

統合戦域軍(Joint Theater Commands)

中国の統合戦域軍は、それぞれの戦略的責任領域内で唯一かつ最高レベルの統合作戦指揮組織として機能する。これらの戦域軍は地域ごとに組織されている。

・ 東部戦域軍(Eastern Theater Commandは、人口が密集し経済的に重要な中国の東部を管轄し、台湾海峡と東シナ海に関わる作戦を担当する。

・ 南部戦域軍(Southern Theater Commandは、ビルマとの不安定な国境を含む中国の最南端の陸上・海上国境と、近隣諸国との定期的な緊張関係につながる南シナ海の複雑な領有権主張の網を担当している。

・ 西部戦域軍(Western Theater Commandは、チベット高原や新疆ウイグル自治区を含む中国の国土のほぼ3分の1を占める。中国の他の地域よりも人口が少ないが、インドとの国境紛争や、分離主義運動やイスラム過激派の懸念があるため、重要な地域である。この地域には、新疆軍司令部、南疆軍司令部、西蔵(チベット)軍司令部などの下部組織があり、これらの敏感な省に対する指揮・統制(C2)を提供している。

・ 北部戦域軍(Northern Theater Commandは、モンゴル、ロシア、北朝鮮との国境を含む中国中北部と北東部の広い範囲を担当している。黄海に突き出た山東半島も含まれており、朝鮮半島有事の際には、ここに駐留する統合部隊が大きな役割を果たすことになる。

・ 中部戦域軍(Central Theater Commandは、渤海湾から中国内陸部までを管轄し、首都防衛や有事における他の戦域軍の予備部隊としての役割を担う。

図4:人民解放軍(PLA)戦域軍(出典:TRADOC G-2)

各戦域軍は、戦闘に関連する問題のみに焦点を当て、統合訓練と指揮を通じて統合作戦能力を強化するようにデザインされている。これらの司令部は、統合作戦を計画策定し、戦闘能力と支援能力を評価し、戦略的範囲内で脅威と闘うために必要な軍事力を配分する責任を負う[38]

戦域統合作戦指揮司令部(Theater Joint Operations Command Centers)

人民解放軍(PLA)は、紛争の規模と要件に応じてタスク編成された統合部隊で闘う[39]。大規模作戦とは、2つ以上の戦域軍が担当するものであり、中規模作戦とは、1つの戦域が担当するものであり、小規模作戦とは、少数または単一の軍団の指揮階層単位部隊のみが担当するものである[40]

人民解放軍(PLA)の戦時指揮・統制(C2)構造は、統合の編成を組織し、作戦を実行し、下位レベルでの指揮を促進する、戦域統合作戦指揮司令部(T-JOCC)を中心に構成されている[41]。戦域統合作戦指揮司令部(T-JOCC)は、作戦副司令部を通じて、他の部隊を統制する。戦域統合作戦指揮司令部(T-JOCC)の構造には、陸上作戦、海上作戦、航空作戦、通常ミサイル作戦、統合兵站作戦、多領域作戦の6つの副司令部がある。

戦時においては、人民解放軍海軍陸戦隊(PLA Navy Marine Corps)や人民解放軍空軍空降兵(PLA Air Force Airborne Corps)のように、平時には中央軍事委員会に従属する地上部隊(ground forces)を有する各軍種は、その部隊の一部を戦域レベルの陸上作戦副司令部に所属させることになるだろう[42]。この配置により、統合地上部隊(joint ground forces)をより効果的に活用できる。同様に、人民武装警察、海警局、民兵も、他の作戦副司令部と同様、調整メカニズムの下で活動し、利用可能な兵力の統合を確保することになろう。戦時組織の重要な側面は、指揮の統一である。その結果、いくつかの例外を除いて、戦域軍司令部(陸軍、海軍、空軍など)は戦時中に作戦統制を保持できない可能性が高くなる。このような指揮の中央集権化(centralization of command)は、統合作戦能力を向上させ、戦闘状況での意思決定を合理化するという人民解放軍(PLA)の到達目標に沿うものである。

図5:人民解放軍(PLA)の戦時指揮・統制(出典:TRADOC G-2)

統合作戦における地上部隊

統合作戦では、人民解放軍(PLA) は、特に 人民解放軍陸軍(PLA Army)、人民解放軍海軍陸戦隊(PLA Navy Marine Corps)、人民解放軍空軍空降兵(PLA Air Force Airborne Corps)など、さまざまな兵科・部隊のさまざまな機動部隊(maneuver forces)を採用する。地上機動部隊(ground maneuver forces)の主な責任は、地上戦闘作戦の実行、統合作戦の支援、戦略目標達成のための他部隊との統合である。地上機動部隊(ground maneuver forces)は、統合作戦の支援において、主に2つの作戦上の役割を担う。第一に、地上部隊(ground forces)は、水陸両用強襲作戦と陸上作戦を指揮する。特に、島嶼奪取に重点を置いた上陸戦役(landing campaign)や、陸上を基盤とする作戦を支援する海上封鎖と航空封鎖を含む統合封鎖戦役(joint blockade campaign)などのシナリオにおいてである。第2に、地上部隊(ground forces)は戦略的防勢作戦を実施した後、反撃に転じ、主導権を回復する。

中国の地上部隊(ground forces)は、構造化され統合された枠組みの中で活動することになる。5つの統合戦域軍にはそれぞれ、2~3個の中国陸軍集団軍があり、複数の中国空軍航空基地、海軍艦隊(3つの沿岸戦域軍の場合)、および必要に応じて配置される統合兵站支援部隊の下に統合部隊が存在する。

各戦域陸軍には、長距離ロケット旅団、インテリジェンス偵察旅団、浮橋旅団(pontoon bridge brigade)、情報支援旅団、電子対策旅団もある。南部戦域軍は7個、東部戦域軍は4個の沿岸防衛旅団を統括している。

戦時には、人民解放軍海軍陸戦隊(PLA Navy Marine Corps)、人民解放軍空軍空降兵(PLA Air Force Airborne Corps)、人民解放軍(PLA)ロケット部隊の付属部隊も含まれる。これらの部隊はさらに、統合兵站部隊、サイバー部隊、航空宇宙部隊、情報支援部隊、および予備役、人民武装警察(海警局を含む)、民兵部隊(海上民兵部隊を含む)によって作戦を遂行することができる。

地上部隊(ground forces)はおそらく、米陸軍のタスク編成コンセプトに似た作戦集団に編成されるだろう[43]。これらの集団は、大規模な統合作戦や戦役を支援するための特定のタスクや任務を担当することになろう[44]

図6:戦域軍地上部隊(出典:TRADOC G-2)

 

図7:中国の地上機動部隊(出典:TRADOC G-2)b

海軍陸戦隊(Marine Corps)や空軍空降兵(Airborne Corps)を含め、人民解放軍(PLA)の陸上機動部隊のほとんどは、旅団-大隊の構造を採用している。大隊は主要な機動の単位部隊(unit of maneuver)として機能するが、旅団は24時間365日の作戦能力を持つ最下位の指揮階層部隊である。各旅団は通常、4個機動大隊(maneuver battalions)のほか、砲兵、防空、偵察、戦闘支援、後方支援などの機能を担う支援大隊で構成される。

b. シンボルの説明については、FM 1-02.2「Military Symbols」(https://Armypubs.Army.mil/ProductMaps/PubForm/Details.aspx?PUB_ID=1030416)を参照のこと。

統合対介入戦略(Joint Counter-Intervention Strategy)

人民解放軍(PLA)は、軍事作戦を妨害しようとする「強敵(strong enemy)」によるいかなる介入も撃退するため、あらゆる領域で包括的な対介入戦略(counter-intervention strategy)を採用するc。中国の戦略的目標は、敵部隊が予定通り、かつ全力で到着するのを阻止することである。アジアにおける中国の軍事行動を含む様々なシナリオにおける米国の介入を予期して、中国は、インド太平洋における米軍を体系的にターゲットとし、無力化するようにデザインされた攻勢的軍事アーキテクチャを開発し、同時に、機動性を実現する主要な技術的手段を混乱させた。対介入はまた、米西海岸や中国に近い同盟国の基地からの増援を遅らせたり破壊したりすることを狙いとしており、広大なインド太平洋作戦地域によってもたらされる戦略的縦深の中で、米国の機動(U.S. maneuver)と争うことになる。

c.中国の軍事ドクトリンは「強敵(strong enemy)」[強敌]を主要な戦略的焦点として明確に特定しており、この用語は米国を指すと広く解釈されている。

統合対介入戦略(joint counter-intervention strategy)の主なタスクには、敵の介入を阻止または反撃すること、敵の戦闘力増強能力を封じ込め制限すること、敵の介入の影響を軽減すること、中国共産党(CCP)の戦略の実行と統合作戦の円滑な実施を確保することが含まれる。対介入戦略(counter-intervention strategy)は、大きく3つの段階に分けられる。

第1段階:戦略的政治行動や非致死性火力を含む、太平洋地域全体および米国本土に影響を及ぼす行動。

第2段階:東部および中部太平洋の米軍および同盟軍に対する軍事作戦。

第3段階:米国の介入目標またはその近くで発生する戦術的交戦。

図8:コンセプト上の西太平洋の対介入作戦コンセプト(出典:TRADOC G-2)

情報支配戦役(Information Dominance Campaign)

情報支配(information dominance)は中国の反介入戦略(counter-intervention strategy)の重要な要素であり、紛争前と紛争中に戦場を形成するようにデザインされている。中国の情報支配戦役(information dominance campaign)は、心理作戦、サイバー戦、インテリジェンス収集を統合し、敵対者の意思決定と振舞いに影響を与える。中国は、高度なAIを駆使したプロパガンダやターゲットを絞った偽情報を通じて、認知領域(cognitive domain)dを通じて軍や民間の指導者の認識を操作し、重要な意思決定プロセスにおける躊躇や麻痺を引き起こすことを狙いとしている。これらの作戦は、介入してくる敵の軍事・市民活動を収集し、情報を得て早期警告を提供する中国のグローバルなインテリジェンス組織によって支えられている。中国の広範なインテリジェンス収集能力には、人工衛星、高高度気球、無人航空機システム、HUMINTのアセット、OSINT活動が含まれる。

d.認知領域作戦とは、”国家安全保障の戦略的目的を達成するために、軍事、政治、経済、世論、心理、法戦、その他の物語的手段を用い、ターゲットの認知に影響を与え、その意思決定や振舞いを変化させるもの “と説明されている。趙秀娟[ࡵ秀娟]、「優位を演じる: 軍事紛争報道における世論誘導の質と効率の向上-ロシア・ウクライナ紛争報道における世界軍事雑誌の継続的世論誘導に関する予備的研究」 [发挥优势: 在军事冲突报道中提升舆论引导质效-《世界军事》杂志在俄乌冲突报道中的持续舆论引导初探], 27 September 2022. https://www.81.cn/jsjz/2022-09/27/content_10187697.htm.

情報支配(information dominance)を達成するため、中国の航天部隊(aerospace forces)は、敵の通信、測位、航法、タイミング、インテリジェンス・監視・偵察(ISR)アセットに対するサイバー、キネティック、指向性エネルギーの対空間作戦を開始し、敵の通信、航法、敵の意図を理解する能力を否定する。同時に、中国のサイバー空間部隊、国家レベルのサイバー・アクター、民間ハッカーは、指揮・統制・通信・コンピュータ・ネットワーク、輸送ノード、その他の重要インフラに対するネットワーク攻撃を実施し、外国軍の意思決定と戦域への展開を混乱させ、遅らせる可能性が高い。

この戦役の最終的な到達目標は、情報空間を支配し、認知領域(cognitive domain)を統制することである。影響力、サイバー、インテリジェンス能力を融合させることで、中国は、敵が紛争に関与する機会を得る前に介入を抑止し、敵の決意を弱めることを狙いとしている。

航空支配戦役(Air Dominance Campaign)

人民解放軍(PLA)の航空支配(air dominance)のコンセプトは、米国の航空優勢(air superiority)のコンセプトとは異なる。人民解放軍(PLA)は、航空優勢(air superiority)を確保することよりも、敵に航空優勢(air superiority)を与えないことに重点を置いている。中国全軍の航空機は、早期警戒機、電子戦機、ステルス機、巡航ミサイル、給油タンカーを優先順位の高い順にターゲットとし、責任領域における敵部隊の聖域と航空戦力の大量投入能力を否定する。航空支配(air dominance)のターゲッティングには、敵の航空システムを支援する基地や施設への攻撃も含まれる。

固定翼機は、人民解放軍(PLA)の広範な混乱の取組みの一環として、対空、海上、陸上打撃作戦を実施する[45]。固定翼機の航空作戦は、人民解放軍(PLA)の広範な防空システムに統合され、敵の航空作戦を複雑にするため、地上防衛と並行して機能する。空母から運用される人民解放軍海軍(PLA Navy)の航空機は、艦隊防衛と対空の両方の役割を果たす。要塞化された島の飛行場は、近代的な打撃戦闘機の約1個飛行隊を支援することができ、それらは作戦範囲を広げるために一時的にそこに配備される。この配備戦略は、人民解放軍空軍(PLA Air Force)が対介入戦役(counter-intervention campaign)で用いるアプローチを反映したものであると思われる。

回転翼機は、迅速な輸送と補給のプラットフォームとして重要な役割を果たしている。この能力は、人民解放軍(PLA)が輸送ヘリコプターの近代化に多額の投資を行っていることによって強化されている[46]。水上艦船と輸送機は、海上の後方連絡線(lines of communication)を遮断し、新たに占領した地形で地上部隊(ground forces)を孤立させようとする人民解放軍(PLA)にとって、最優先のターゲットとなる可能性が高い。

攻撃航空は、接触している地上部隊(ground forces)への直接支援と、近接する敵の水上艦艇や水陸両用プラットフォームをターゲッティングすることで、作戦を支援する[47]。人民解放軍(PLA)は、攻撃航空能力を移動性の高い火力予備軍とみなしている。人民解放軍海軍(PLA Navy)の回転翼プラットフォームは、対潜水艦および海上パトロール作戦を実施し、地域の対潜水艦および海上監視活動に貢献する。中国の要塞化された島々には、常設の駐留部隊が駐留し、前方展開によって補完される、広範な回転翼支援施設がある。

地上防空は、敵の空域の自由な使用を拒否するという人民解放軍(PLA)の最優先事項を反映し、対介入取組み(counter-intervention effort)にとって最も重要な要素の一つである。人民解放軍(PLA)は地上防空を重視しており、それはHQ-9地対空ミサイル(SAM)システムを人民解放軍(PLA)の要塞島に戦略的に配備していることからも明らかである[48]。長距離地対空ミサイル(SAM)は、対精密誘導ミサイル能力を含む可能性のある中距離ミサイルを基盤とする地域防御システムと、無人航空機システム(UAS)やヘリコプターのような低空で低速のターゲットや低高度の貫通弾をターゲットとする短距離砲ミサイル・システムの両方によって防御される。

このような人民解放軍(PLA)の防空網を総合すると、介入部隊にとって手ごわい連合兵科(combined-arms)の問題であり、これを無力化するには多大な資源と多大なリスクが必要となる。

海上支配戦役(Sea Dominance Campaign)

同様に、人民解放軍(PLA)は、敵に海上を封鎖することを狙いとしている。人民解放軍(PLA)の海軍とロケット部隊は、敵の主要港と脆弱な海上ノードをターゲットとし、戦域への部隊の移動を阻止する。海上民兵艇のような人民解放軍(PLA)以外の戦力は、海軍の火力や状況把握を助けるために監視を行うだけでなく、部隊の到着を遅らせるために船舶に嫌がらせをしたり、妨害したりすることが予想される。

空母群を含む水上艦艇は、長距離対空ミサイルや対艦ミサイル、打撃機で接近する敵艦に対処する。人民解放軍海軍(PLA Navy)の艦船はまた、中国本土と遠方の作戦地域との間の海上後方連絡線(lines of communication)を維持する対潜作戦を実施し、小型艦船は補給船や輸送船の護衛任務を行う。

潜水艦は主に対水上艦艇戦に重点を置き、特に第一列島線内と東太平洋に広がる敵水上艦艇をターゲティングしている。海軍航空隊と連携し、固定翼機と回転翼機の両方の海上哨戒機を含む海軍の潜水艦部隊は、対潜水艦戦で重要な役割を果たしている。潜水艦はインテリジェンスを収集し、外部からの情報を利用して、搭載センサーの範囲を超えたターゲットを識別・分類する。この取組みは、人民解放軍(PLA)内の情報化を強化し、潜水艦がより遠距離や遠隔地でもより効果的に活動できるようにするための、より大きな構想の一部である[49]

統合火力打撃戦役(Joint Firepower Strike Campaign)

統合火力打撃戦役(joint firepower strike campaign)は、米国のドクトリンでいうところの「統合ターゲティング(joint targeting)」に近い。中国のドクトリンでは、統合火力打撃戦役(joint firepower strike campaign)とは、長距離目標をターゲットとした、すべての軍種からの調整された打撃と定義されている。その到達目標は、敵の闘う意志(will to fight)を削ぎ、その指導者に作戦の放棄や変更を迫ることである[50]。これらの能力は、集中的な初期段階の一部として、あるいは他の作戦を支援するために、他の作戦への拡張可能な支援を提供する。戦域統合作戦指揮司令部(T-JOCC)には火力調整統制センターが設置され、ターゲットの調整と優先順位付けを行う。

水上火力は、統合火力打撃戦役(joint firepower strike campaign)の重要な要素である。陸上または海上を拠点とする野戦砲、ロケット、ミサイルで構成され、いずれもスタンドオフと対水陸両用の役割で配備される。人民解放軍(PLA)のドクトリンでは、島嶼封鎖を支援する弾道ミサイル火力の重要性が明記されているが、その規模、支援要件、脆弱性から、弾道ミサイル部隊が前方に配備される可能性は低い[51]。弾道ミサイル火力は、本土の発射地点(launch points)から作戦を支援するかもしれない。しかし、人民解放軍(PLA)の水陸両用戦役に計画されている大規模な弾幕によって、後の段階での弾道ミサイルの運用が妨げられる可能性がある。その前には、主に弾道ミサイル・システムを中心とした大規模な統合火力打撃戦役(joint firepower strike campaign)がほぼ確実に実施される。オープンソースの情報では、人民解放軍(PLA) の十分な弾薬在庫(magazine depth)と、後の段階でのこれらの火力を維持する能力を判断するには不十分だが、相当なものであると思われる[52]

人民解放軍陸軍(PLA Army)の連合兵科(combined-arms)旅団と砲兵旅団は、長距離精密火力と地域火力で弾道ミサイルを補完するため、砲身砲(tube artillery)とロケット砲(rocket artillery)の両方を提供する。島嶼防衛の一環として、人民解放軍(PLA)軍は沿岸防衛砲を使用する。なぜなら、沿岸防衛砲はあらゆる地上交戦に実質的な火力支援と反撃を提供するからである。人民解放軍(PLA)軍は、必要であれば、この火力支援活動を海上領域にまで拡大することができるかもしれない。しかし、伝統的な砲兵の規模と後方支援に必要な多大な経費は、人民解放軍(PLA) の部隊配備・維持能力にとって難題である。

弾道ミサイル弾薬の不足は、短距離巡航ミサイル、特に陸上配備型対艦ミサイルでも補うことができる[53]。人民解放軍海軍(PLA Navy)の沿岸防衛ミサイル部隊が運用するこれらのミサイルは、シンプルで軽量、展開可能なシステムであり、ほぼすべての海岸線に沿って容易に配置することができる[54]。敵の水陸両用部隊に直接対抗できるほか、より遠くのターゲットに対処する水上艦艇の十分な弾薬在庫(magazine depth)を高めることもできる。最も単純な陸上対艦巡航ミサイル(ASCM)は、ポイント・アンド・シュートに過ぎず、レーダの水平線に制限され、データリンクの支援もない。より高度な重対艦巡航ミサイル(ASCM)は、水上艦船、有人航空機、無人航空システム(UAS)、または衛星によって支援される協力的なオーバー・ザ・ホライズン交戦を支援する。どちらも、小型で移動性があり、致死性が高いため、敵の海軍や水陸両用部隊にとって重大な挑戦となる。陸上対艦巡航ミサイル(ASCM)は要塞化された島嶼に広範囲に配備されており、島嶼封鎖の一環として前方に配備されることはほぼ確実である。

人民解放軍空軍(PLA Air Force)は、J-20ステルス戦闘機、JH-7戦闘爆撃機、H-6K爆撃機など多数の航空機から発射可能な空中発射巡航ミサイル(air-launched cruise missiles)や誘導弾、無誘導弾を使用した統合火力打撃を強化するための訓練を行う[55]。このような戦術機の数々によって、人民解放軍空軍(PLA Air Force)は中国本土から第一列島線内のほとんどの作戦を支援できるようになる。長距離の任務については、南シナ海の人工島に滑走路を設けることで、前進基地の選択肢を提供することができる。

大量破壊兵器(Weapons of Mass Destruction)

確立された戦役ではないが、中国は対介入戦略(counter-intervention strategy)の一環として大量破壊兵器(WMD)の使用を模索する可能性がある。中国は大量破壊兵器を、大規模戦闘作戦(LSCO)における米国の作戦に多大な影響を与える非対称的優位性と見なしている。核兵器の歴史的な「先制不使用」ドクトリンからの転換として、中国は「早期警戒による反撃(early warning counterstrike)」と呼ばれる、警告に基づく発射態勢を採用している。中国の核作戦に関する権威ある文献はほとんどないが、中国が「統合核反撃(joint nuclear counterattack)」と呼ぶ、敵の行動によって核の閾値が越えられたと中国指導者が認識した場合に使用する可能性のある反撃についての記述がある[56]。さらに、対介入戦略(counter-intervention strategy)には化学兵器や生物兵器の使用も含まれる可能性がある。米国インテリジェンス機関の2025年年次脅威評価(Annual Threat Assessment of the U.S. Intelligence Community)によれば、「中国は、米軍、同盟国軍、パートナー国軍、および民間人に脅威を与える化学・生物兵器に関連する能力を保有している可能性が高い」という。中国には化学兵器プログラムは確認されていないが、フェンタニルとその前駆体を含む化学物質の生産では世界的リーダーである。米国政府の調査では、中国は兵器として使用する毒素、細菌、ウイルスの開発の可能性を含め、デュアル・ユース適用(dual-use applications)の生物学的研究に従事していると結論づけている[57]。その結果、太平洋における中国との潜在的紛争を含む軍事不測事態対応計画策定は、大量破壊兵器(WMD)の兵力防護に関する問題を考慮すべきである。

地上部隊に焦点を置いた挿話

以下の挿話は、人民解放軍(PLA)の地上部隊(ground forces)が大きな比重を占める2つの異なるシナリオにおける中国の能力と戦略を示している。そのため、中国の敵も同様の地上部隊(ground force)を投入する必要がある。中国は近代的な作戦環境において大規模な戦闘作戦を実施していないため、同規模の紛争における実際のパフォーマンスは未検証のままである。

最初の挿話は、中国が1つまたは複数の島を迅速に占領・確保しようとする攻勢作戦である統合島嶼上陸戦役について検討したものである。この作戦には、水陸両用攻撃、空挺・空襲作戦、海上民兵や法執行艦による支援など、人民解放軍(PLA)の統合部隊全体にわたる協調的な取組みが含まれる。地上部隊(ground forces)は、最初の宿営の後、地形を固める上で決定的な役割を果たすだろう。

第二の挿話は、人民解放軍(PLA)が外部の脅威から島を守ることを狙いとした防勢作戦である、統合対上陸戦役(joint antilanding campaign)について検討したものである。この作戦には、包括的な封鎖、統合火力打撃、敵の介入能力を弱めるための陸・空・海の統合防衛が含まれる。地形を保持するためには、海・空・地上の沿岸防衛システムを統合する必要があり、陸上部隊は領土支配を確保する上で不可欠な役割を果たす。

どちらのタイプの作戦も、上記のような統合対介入作戦(joint counter-intervention operation)によって支援されることになる。これらの挿話は、中国がどのように統合作戦に臨むか、また、これらの作戦における地上部隊(ground forces)の役割を具体的に取り上げるかを理解しやすくするために、人民解放軍(PLA)の作戦ドクトリンに関する洞察を提供するものである。

図9:コンセプト上の戦役を支援する戦域部隊編成(出典:TRADOC G-2)e

e. シンボルの説明については、FM 1-02.2「Military Symbols」(https://Armypubs.Army.mil/ProductMaps/PubForm/Details.aspx?PUB_ID=1030416)を参照のこと。

統合島嶼上陸戦役(Joint Island Landing Campaign)

統合島嶼上陸戦役(joint island landing campaign)は、占領された島を占領し確保する中国の戦略を包含する。人民解放軍(PLA)は、島の大きさ、中国本土からの距離、防衛軍の強さに基づいて統合部隊を編成する。人民解放軍(PLA)の文書によると、水陸両用作戦は以下のコンセプトを採用する。

・ 作戦は統合司令部(戦域統合作戦指揮司令部(T-JOCC)の可能性が高い)によって統制され、部隊は海上部隊と陸上部隊に編成される。

・ 航空戦力が作戦を守る。

・ 艦砲火力(naval gunfire)と長距離野戦砲(long-range artillery)が沿岸防衛をターゲットにする。

・ 航空機動部隊と空軍空降兵(Airborne Corps)を含む三次元作戦は、敵の後方地域に展開し、指揮・統制(C2)ノードを打撃し、緊要地形(key terrain)を占領する。

・ 特殊な上陸用舟艇が地上部隊(ground forces)を輸送し、指定された海岸に送り届ける。

・ この作戦には、敵と接近し、防衛線を突破し、内陸の目標を確保し、防御上の強点を確立するための突撃部隊と予備兵力が混在する[58]

この種の作戦では、地上部隊は特定のタスクのために集団が組織される。想定される集団とタスクには、次のようなものがある[59]

・ 前方攻撃集団(forward-attack groupsは、第一梯隊と第二梯隊からなる敵の前方と主防御陣地を攻撃する。

・ 縦深攻撃集団(deep-attack groupは、敵の綿密な防御陣地を攻撃する。

・ 空挺・空襲集団(Airborne and air assault groupsは、敵後方地域の要衝を占領・制圧するか、前線から攻撃する主力部隊と連携して敵部隊を後方から攻撃する。

・ 強襲攻撃集団(storming attack groupは、敵の要塞化された陣地、強力な地点、防御された建物、または地下施設を攻撃する。

・ 強襲上陸集団(Assault landing groupsは通常、第一次部隊と第二次部隊に分かれ、敵沿岸の防御陣地を攻撃し、占領する責任を負う。

・ 障壁破壊・除去分遣隊(barrier breaching and clearing detachmentは、障害物を除去し、攻撃する地上部隊(ground forces)のために啓開する。

情報支配作戦(Information Dominance Operations)

水陸両用作戦(Amphibious operations)は、敵の通信網の作戦効果を低下させることに重点を置いた情報支配作戦(information dominance operations)から始まる。中国の軍事ドクトリンは、敵の指揮・統制(C2)能力を混乱させることによって、特に個々のノードの有効性を損なうことによって、敵対者に対して優位性を確保することの重要性を強調している[60]

図 10: 統合島嶼上陸戦役の 7 つの連続した重複する要素(出典:TRADOC G-2)

予備作戦: 離島の確保と本攻撃の準備

統合島嶼上陸戦役の初期には、人民解放軍(PLA)は離島を占領して主要なターゲットに通じる海路と空路を確保しようとする。この段階での主な行動は以下の通り。

・ 包括的統合火力(Comprehensive Joint Fires。人民解放軍(PLA)は、野戦砲、ミサイル、艦砲火力、戦術機を使って、軍司令部、兵舎、長距離野戦砲(long-range artillery)、防空施設、通信施設や発電施設などの重要なインフラを含む敵の重要施設をターゲットとした広範囲な打撃を行う。

・ 水陸両用作戦および航空攻撃作戦(Amphibious and Air Assault Operations。砲撃が続く間、水陸両用強襲部隊が離島の海岸を襲撃する。これらの部隊は、人民解放軍陸軍(PLA Army)と人民解放軍海軍(PLA Navy)の上陸用舟艇のほか、民間のロールオン/ロールオフ船やその他の民間輸送船からも展開される。同時に、人民解放軍陸軍(PLA Army)と空軍空降兵(Airborne Corps)の空襲部隊と特殊部隊が、内陸部の戦略的拠点を確保するため、空路で展開する。

・ 偵察と妨害工作(Reconnaissance and Sabotage Operations。外島作戦と同時に、人民解放軍(PLA)の特殊作戦部隊が空と海から第一目標に投入され、通信網、発電施設、飛行場、レーダ基地、指揮・統制(C2)施設、弾薬庫を含む補給基地などの重要インフラに焦点を当てた偵察・破壊工作を行う[61]

支援の取組み: 統合火力打撃作戦(joint firepower strike operation)

中国は、ターゲットとする島の軍事能力を低下させるため、包括的な一連の致死性・非致死性射撃を開始する。

・ 致死性火力(Lethal Fires。中国は、巡航ミサイルや弾道ミサイル、ロケット砲、空対地弾などを用いて、陸、海、空から大規模な打撃を仕掛ける。中国のドクトリンによれば、「直接火力弾幕と障害物の統合破壊は、通常、各上陸部隊の展開に先立って実施され、先行火力弾幕に密接に続く」[62]。これらの打撃は、指揮・統制(C2)センター、沿岸砲兵、海軍アセット、防空、飛行場などの重要な敵施設をターゲットにする。

・ 非致死性火力(Nonlethal Fires。同時に、人民解放軍(PLA)はサイバー、電子、心理戦による攻撃を行い、敵のデジタル・ネットワーク、電子システム、部隊の士気を破壊、混乱、低下させる。

統合火力打撃作戦の目標は、敵の人民解放軍(PLA)水陸両用艦船をターゲットとする能力を低下させ、人民解放軍空軍(PLA Air Force)の航空優勢(air superiority)と人民解放軍陸軍(PLA Army)航空の移動の自由(freedom of movement)を可能にするために防空を抑制し、情報支配(information dominance)を獲得することである。望まれる最終状態は、ターゲットの島を、侵攻が迫っていることがわからず、通信ができず、人民解放軍(PLA)侵攻軍に抵抗する十分な火力を欠いた状態にすることである。

主たる取組み:水陸両用攻撃と空挺攻撃

地上部隊(ground force)が主要な島を攻撃する早い時間帯に、人民解放軍(PLA)は政府と軍の通信を遮断し、予備部隊(reserve forces)の集結と展開の能力を制限するために交通の要衝を統制しようとするだろう。人民解放軍(PLA)は、後続部隊と装備の上陸を可能にするため、飛行場と港を占領する。

最終段階では、海岸堡を確保し、戦略目標を捕捉し、分離した部隊を連携させるために、内陸部への離脱のための兵力を増強する。中国はおそらく、首都やその他の政治的・軍事的中心地の近くへの上陸を優先して、複数のターゲットの島の浜辺で同時に水陸両用攻撃を実施する。人民解放軍(PLA)は、人民解放軍海軍(PLA Navy)の限られた水陸両用揚陸艦を増強するため、民間のロールオン/ロールオフ・フェリーを改造して水陸両用戦闘車両を発進させる[63]。突撃部隊は、人民解放軍(PLA)の航空・海軍アセットと、射程内にあれば本土に拠点を置くロケット部隊からの砲撃で支援される。当面の目標は以下の通り。

・ 残存する沿岸砲台と防空拠点を排除することで、沿岸防衛(coastal defenses)を無力化する。

・ 部隊や装備の移動を容易にするため、重要な道路や鉄道路線を支配し、後方連絡線(lines of communication)を確保する。

水陸両用上陸作戦と連動して、空軍空降兵(Airborne Corps)と航空攻撃部隊が本島の複数の降下・上陸地点に投入される。そのタスクには以下が含まれる[64]

・ 後続部隊と装備の上陸を可能にするため、航空基地と港湾(air bases and ports)を占領するf

・ 通信センター(communication centersを破壊し、予備部隊(reserve forces)の集結・展開能力を制限する。

・ 道路、鉄道、その他の戦略上重要な場所などの重要なインフラ(key infrastructure)を統制する。

・ 人民解放軍(PLA)の前進を妨げる可能性のある、高いペイオフのターゲット(high-payoff targets)を打撃する。

f. 2025年1月、中国は潜在的な水陸両用攻撃時の陸上兵站を支援するためにデザインされた3隻の特殊なはしけを進水させた。これらの自走式ジャッキアップ台船は、3隻を連結して820メートルの移設可能な桟橋を作る伸縮橋を備えている。このシステムにより、未改良地域や損傷した港を含む大量の機材や物資を効率的に運搬することができる。ロールオン/ロールオフ船用の5つのドッキング・ポイントを備え、毎時数百台の車両を陸上へ移動させることができる。https://digital-commons.usnwc.edu/cmsi-notes/14/.

水上艦船もまた、地上紛争の近くで活動することになる。これらの艦船は、防衛線の脆弱な部分を迅速に補強できる、移動可能な長距離対空・対艦ミサイル・プラットフォームとして機能する。

水陸両用作戦と航空攻撃作戦の成功に続き、人民解放軍(PLA)は、島の重要な空と海のインフラを確保することで、獲得したものを統合し、島を孤立させる。人民解放軍(PLA)は直ちに、輸送機と海上艦艇による増援作戦を開始し、後続部隊と重装備を輸送し、海岸堡を安定させる。島を孤立させ、外部からの介入を防ぐため、人民解放軍海軍(PLA Navy)は水上戦闘機と潜水艦を配備し、重要なシー・レーン沿いに重層的な防衛を確立し、敵の陣地強化の取組みを妨害する。同時に、人民解放軍空軍(PLA Air Force)の戦闘機が戦闘空中哨戒を継続し、敵機を抑止・無力化し、航空優勢(air superiority)を確保する。

重要な優位性と課題

中国は、インド太平洋諸国が複数の侵略拠点に対応する能力を緊張させるような優位性を持っている。

・ 部隊の規模(Force Size。人民解放軍(PLA)の規模の優位性は、複数の場所で同時攻撃を行うことによって敵の防御を圧倒する重要な役割を果たす。人民解放軍陸軍(PLA Army)だけでも100万人近い兵士を擁し、予備軍や準軍事部隊を含めた人民解放軍(PLA)の総兵力は300万人を超え、台湾の総兵力約180万人をはるかに上回る[65]。さらに重要なのは、台湾の機動旅団(maneuver brigades)の80%近くが予備役であることで、事前通告が限られている状況下では迅速な出動が制限される可能性がある[66]

・ 動員妨害(Mobilization Disruption。人民解放軍(PLA)の成功の鍵は、敵の予備役の動員を妨げる能力にある。これは、偽の上陸地点での準備射撃、誤解を招くような電子活動、真の上陸地点について敵を混乱させるための「欺瞞的フェリー演習」などの欺瞞手段を含む、さまざまな戦術によって達成される[67]

・ スピードの重視(Emphasis on Speed。スピードは、人民解放軍(PLA)が統合島嶼上陸戦役を展開する上で極めて重要な要素である。迅速かつ継続的な攻撃は、防御可能な海岸堡を迅速に確立するために極めて重要である。このスピードは、05式水陸両用車のような高速水陸両用車の開発や、空軍空降兵(Airborne Corps)の機械化機動・突撃能力の向上によって可能になる。[68],[69]

このような優位性があるにもかかわらず、中国は統合島嶼上陸戦役においていくつかの難題に直面することになる。

・ 限られた海上輸送能力(Limited Sealift Capacity。人民解放軍(PLA)は、大量の車両や兵員を輸送する能力に限界があるため、最初の突撃作戦の規模が制約される可能性が高い[70]。しかし、ひとたび港が確保されれば、民間のロールオン/ロールオフ船が援軍や追加装甲車の輸送に使用されることになる。

・ 信頼できる後方支援(Reliable Sustainment。海岸攻撃や密集した都市地形で典型的なように、集中的な戦闘作戦は資源を非常に消費する。このような状況を改善するための実験が行われた形跡はあるが、人民解放軍(PLA)の各軍と統合兵站支援部隊は、敵の攻撃や地理的条件によって悪化する兵站の「ラスト・ワンマイル(final mile)」問題に苦戦することになるだろう。

・ 予測不可能な天候と海上の状況(Unpredictable Weather and Maritime Conditions)。人民解放軍(PLA) の水陸両用上陸作戦は、予測不可能な天候、潮汐、海流によって複雑になる可能性が高い。

・ 防御陣地と各種障害物(Defensive Positions and Obstacles。いくつかの統合島嶼上陸作戦では、中国はおそらく防御陣地や障害物を準備した防御部隊に直面し、水陸両用上陸作戦を困難にし、多くの死傷者を出す可能性がある。

・ 統合作戦経験(Joint Operations Experience。中国は、人民解放軍(PLA)と特殊作戦部隊の異なる部門間で作戦を調整した経験が乏しいため、複雑な統合島嶼上陸戦役では困難を伴う。

統合対上陸戦役(Joint Antilanding Campaign)

統合対上陸戦役(joint antilanding campaign)は、島や沿岸地域を攻撃してくる敵から守り抜くための中国の戦略を包含する。この種の作戦では、地上部隊は特定のタスクごとに集団として組織される。想定される集団とタスクには、次のようなものがある[71]

・ 前方防衛集団(forward defense groupは、前線の陣地を守り、通常、主防衛集団(primary)と第2次防衛集団(secondary defense groups)に分かれる。

・ 縦深防衛集団(forward defense groupは、敵の侵入や包囲作戦から縦深陣地を防衛する責任を負う。

・ 移動殲滅集団(mobile annihilation groupは、敵部隊、特に包囲や侵入を試みる部隊を排除するための移動攻撃を行う。

・ 掩護集団(Covering groupsは敵の偵察を妨害し、敵の前進を遅らせ、あるいは敵の早期展開を余儀なくさせるために使用される。

・ 偵察・破壊工作急襲チーム(Reconnaissance and sabotage raid teamsは、敵の攻勢意図を見極め、高いペイオフのターゲットを打撃し、敵の前進を妨害または遅延させるために、偵察と急襲を行う。

統合対上陸戦役(joint antilanding campaign)は通常、4つの段階からなる。統合対介入(joint counter-intervention)、陣地防御(positional defense)、逆襲(counterattack)、獲得したものを統合強化(consolidate gains。これらの各段階について、以下に詳述する。

第1段階:統合対介入作戦(Joint Counter-Intervention Operation)

防衛の準備

初期段階では、人民解放軍(PLA)は、防衛対象の海岸線や島に敵が接近するのを遅らせ、混乱させ、破壊することを狙いとする。この取組みには、あらゆる領域からの堅牢な偵察と監視が含まれる。到達目標は、敵の位置を特定し、致死性・非致死性火力を適用し、敵の移動を混乱させ、敵の到着を遅らせ、敵の能力を低下させることである。対介入戦役(counter-intervention campaign)が成功すれば、防御部隊が直接・間接砲火で敵を撃破するための舞台が整う。

主防衛の支援として、前方防衛集団は敵部隊に対する攻勢行動をとることにより、敵上陸に積極的に抵抗する。航空戦力は敵戦力の航空優勢(air superiority)を奪取し続け、海軍戦力は潜水艦発射魚雷と沿岸防衛ミサイル打撃で水上艦をターゲットにする。陸上では、地上部隊(ground forces)は、地形を最大限に活用して部隊の掩蔽と隠蔽を行い、物理的に防御を強化する対空急襲戦役を実施する。

中国陸軍の水陸両用連合兵科旅団(amphibious combined-arms brigade :ACAB)の能力は、上陸作戦の要件に適している。特に、水陸両用連合兵科旅団(ACAB)の短距離火力(約10キロメートルまでの直接・間接火力システム)の集中の利点は、任務と地形の影響により増幅される。直接火器システムには、装甲突撃砲や歩兵戦闘車(IFV)の主砲、地表攻撃の役割で使用される自走高射砲、多種多様な対戦車誘導弾、人型携帯防空システム(MANPADS)、乗員支給機関銃、小火器が含まれる。間接火力システムは、軽自走砲と重・中型自動迫撃砲を大量に混合し、極めて高密度の近距離火力支援ネットワークを構築する。水陸両用連合兵科旅団(ACAB)の専用砲兵大隊からは、さらに長距離火力システムも利用できる。

図11:人民解放軍の統合対介入作戦(出典:TRADOC G-2)g

g. シンボルの説明については、FM 1-02.2「Military Symbols」(https://Armypubs.Army.mil/ProductMaps/PubForm/Details.aspx?PUB_ID=1030416)を参照のこと。

第2段階:陣地防御(Positional Defense)

封鎖の貫通

主防衛の支援として、防御集団は敵部隊に対して攻勢行動をとることで、敵の攻撃に積極的に抵抗する。防衛に不可欠なものとして、人民解放軍(PLA)は、空と海の優勢を維持すると同時に、敵の艦船、上陸用舟艇、地上部隊(ground forces)が陸に到着すると、それらをターゲットとする統合火力打撃戦役(joint firepower strike campaign)を実施する。敵は、水陸両用強襲、空挺作戦、ヘリコプター投入の混乱が生じた直後が最も脆弱である。人民解放軍(PLA)の地上部隊(ground forces)は、自然および人工の隠れ家や隠蔽を利用し、堅固で偽装された位置から対空襲作戦を展開する。

海上優勢作戦には、人民解放軍海軍(PLA Navy)、海警局、海上民兵のボートが機雷を設置し、小型船で上陸路を塞ぎ、敵部隊が岸に到達するのを妨害する。一方、中国陸軍の工兵部隊は、民兵部隊の支援を受け、海岸に障害物を設置し、敵の進軍を遅らせ、地形を封鎖し、上陸部隊を指定されたキル・ゾーンに誘導する。

軽歩兵部隊はおそらく前方防衛集団として展開し、侵攻海岸や主要な進入路の防御の主力線を形成する。可能な限り、これらの部隊は自らを強化し、より重い火力プラットフォームを統合する。縦深防御集団として活動する軽装甲車と歩兵戦闘車(IFV)は、移動的な予備部隊と逆襲部隊を提供する。制約の多い地形と、敵の攻撃を受けているときの孤立を想定して、これらの集団は、非常に低い指揮階層で連合兵科チーム(combined-arms teams)に編成される可能性が高い。人民解放軍(PLA)の地上部隊(ground force)の戦略は、集中火力で敵の陣形を混乱させ、敵を定位置に固定した後、決定的な近距離反撃を開始し、敵の侵入を撃破するか、敵の陣形を孤立させることである。

人民武装警察と民兵に支援された縦深防御集団は、側面と後方地域を偵察することによって包囲網を混乱させる。対空・対上陸作戦では、人民武装警察を大いに活用し、侵入部隊に嫌がらせをし、混乱させ、遅らせる。移動殲滅部隊は、人民解放軍(PLA)軍の陣形を包囲しようとする敵部隊を攻撃し、破壊する。

第3段階:逆襲(Counterattack)

敵の撃破

敵の攻撃が成功裏に阻止されると、人民解放軍(PLA)の統合防衛ドクトリンは攻撃への移行を要求する。この状況では、移動殲滅集団が反撃を指揮し、残存する敵戦力を一掃し、今後の作戦を支援する準備をする。人民解放軍(PLA)は引き続き統合火力を採用し、高いペイオフのターゲットを攻撃し、敵に接近して撃破する機動部隊(maneuver forces)を支援する。

第4段階:獲得したものを統合強化する(Consolidate Gains)

防衛の準備

防衛に成功した後、人民解放軍(PLA)部隊は速やかに獲得物を統合し、後続作戦の準備を行う。人民解放軍(PLA)は補給を行い、海や空から増援部隊を送り込む。土着の土木設備、建設機械、資材は、防御陣地を固め、強化するために使用される。

図12:統合対上陸戦役の4つの連続した重複する段階(出典:TRADOC G-2)h

h. シンボルの説明については、FM 1-02.2「Military Symbols」(https://Armypubs.Army.mil/ProductMaps/PubForm/Details.aspx?PUB_ID=1030416)を参照のこと。

重要な優位性と課題

中国は、統合対上陸戦役に有利となる優位性を享受している。

・ 本土への接近(Proximity to the Mainland。最も可能性の高い沿岸防衛シナリオは、中国本土か、中国本土から1,000マイル以内の第一列島線内で発生する。比較的短い後方連絡線(lines of communication)は、補給、増援、統合火力支援を助ける。

・ 人民解放軍海軍(PLA Navyと海警局(Coast Guard。人民解放軍(PLA)は、140隻以上の主力水上戦闘艦を含む370隻以上の艦船を擁する世界最大の海軍を持つことから恩恵を受ける[72]。さらに、中国海警局は150隻以上の大型艦艇(1隻の総排気量が1,000トンを超える艦艇)を保有しており、その多くは76ミリ艦砲や20ミリから30ミリの野戦砲を装備している。中国の総合的な海軍力は、海上から接近してくる敵部隊に大混乱をもたらすだろう。

さらに、人民解放軍海軍(PLA Navy)と空軍の戦術機と地上防空システムにより、空からの接近も同様に危険となる。

このような優位性があるにもかかわらず、中国は統合対上陸戦役(joint antilanding campaign)中にいくつかの難題に直面することになる。

・ 限られた準備期間(Limited Time To Prepare。中国が近隣の島を侵略するシナリオでは、人民解放軍(PLA)が外国の介入の可能性に直面する前に防御陣地を準備する時間は限られている。

・ シー・レーン(Sea Lanes)と空中回廊(Air Corridors)の維持。南シナ海を含む第一列島線内では、中国は、同盟を形成し、中国占領軍を孤立させ、重要な補給路を遮断するために働く可能性のある多数の潜在的敵対者を考慮しなければならない。

・ 統合作戦の経験(Joint Operations Experience。中国は、1979年の中越戦争以来、外国で戦闘行為を行ったことがない。

Conclusion:結論

この評価は、米陸軍訓練ドクトリン・コマンド(TRADOC)パンフレット525-92「作戦環境2024-2034:大規模戦闘作戦」、特に作戦環境(OE)の複雑さと現代の大規模戦闘作戦(LSCO)のマルチドメイン性に関して提示された判断と一致し、それを拡大したものである。勝利を達成するためには、米陸軍は敵を知らなければならない。敵を知ることは作戦環境(OE)から始まる。

経済力、技術力、そして壮大な戦略的ビジョンという中国の強力な組み合わせが、インド太平洋における米国とその同盟国にとって重大な挑戦となる軍事的近代化を推進している。中国共産党(CCP)の指導者たちは、台湾の奪取などの戦略的目標を達成するために、増大する軍事力を行使しようとしているが、その際、人民解放軍(PLA)の地上部隊(ground forces)はさまざまな重要な役割を担うことになる。本稿で紹介する分析は、潜在的なインド太平洋紛争における地上部隊(ground forces)の重要性を強調するものであり、そのような交戦は主に空と海の領域能力に依存するという誤解(misconception)を覆すものである。

米陸軍にとって、人民解放軍(PLA)が重視する「積極防衛(active defense)」と、戦いの全領域にわたる「システム対決(systems confrontation)」を理解することの重要性は、いくら強調してもしすぎることはない。中国の戦略は、敵の重要な作戦システムを打ち負かすことを狙いとしており、米軍のアプローチとよく似ており、情報支配(information dominance)、協調的かつ集中的な多領域火力(concerted and concentrated multidomain fires)、統合作戦を活用している。米陸軍は、前例のない複雑性、透明性、致死性を特徴とする戦場に備えなければならない。そこでは、従来の安全な隠れ家や領域の優位性はもはや想定できない。

本稿では、人民解放軍(PLA) の統合反介入戦略(joint counter-intervention strategy)について、米軍が戦域にアクセスし、その後、戦域内を移動することが困難であることを強調している。同様に、挿話は、インド太平洋における人民解放軍(PLA)の地上部隊(ground forces)の潜在的な運用を照らし出し、こうした作戦に対抗する上で米陸軍の役割が不可欠であることを強調している。これらのシナリオは、インド太平洋戦域特有の課題に対応するため、ドクトリン、兵力構成、装備資材(materiel)、訓練に関する決定を下す際に、中国の紛争へのアプローチを考慮する米陸軍の必要性を強調している。

米陸軍は、インド太平洋地域の安全保障ネットワークとインフラを整備する重要な構成要素として、統合部隊の要であり続けている。太平洋戦域における米陸軍の大規模戦闘作戦(LSCO)への即応態勢は、この地域の平和と安定を維持するための効果的な抑止力として機能する一方で、紛争発生時には極めて重要である。中国の軍事能力を十分に理解することは、米国の利益を守り、中国の侵略を抑止し、インド太平洋の潜在的な紛争において勝利を確保するために極めて重要である。

付録A:大規模戦闘作戦の条件と中国

中国は、米国と同様、当分の間、大規模戦闘作戦(LSCO)を規定する作戦環境条件と戦わなければならない。本節では、米陸軍訓練ドクトリン・コマンド(TRADOC)パンフレット525-92「2024-2034年作戦環境:大規模戦闘作戦」で特定された12の条件が、中国の大規模戦闘作戦(LSCO)における作戦能力をどのように形成するかを詳述する。

全領域での競争と戦い(All-domain Competition and Warfare: 人民解放軍(PLA)は、陸・海・空における相手の移動の自由(freedom of movement)を低下させるだけでなく、宇宙を基盤とする能力も低下させることができる。

量対精密度(Mass vs. Precision: 中国は、広範囲に及ぶ範囲効果兵器の備蓄を補完するために精密誘導兵器の備蓄を急速に増強しており、大量の火力の柔軟性を維持しながら多領域精密打撃を実施する能力を強化している。

非搭乗型システムの普及(Proliferation of Uncrewed Systems: 中国は、非搭乗型システムの開発を急速に拡大している。非搭乗型システムは、人民解放軍(PLA)の空海制圧作戦において重要な役割を果たすと同時に、地上戦闘の致死性と後方支援の支援にも貢献している。

十分な弾薬在庫と範囲(Magazine Depth and Range: 中国の国内製造拠点は、膨大な量の軍事装備品や物資を生産することができ、特にインド太平洋地域内では、人民解放軍(PLA)に大きな優位性をもたらす。

透明な戦場(Transparent Battlefield: 特にインド太平洋地域内において、あらゆる領域にわたって情報を収集し、結びつける中国の能力は、敵対者が隠蔽を維持し、移動や作戦を偽装する能力を制限する。

致死性の向上(Increased Lethality: 人民解放軍(PLA)の大量の高性能精密誘導弾と長距離兵器は、全領域のインテリジェンス・監視・偵察(ISR)に支えられており、広範囲に致命的な効果を与え、維持することを可能にしている。

接近阻止/領域拒否(Antiaccess/Area Denial: 人民解放軍(PLA)の集中的な多領域精密火力は、中国の対介入戦略(counter-intervention strategy)の中核をなす接近阻止/領域拒否能力に不可欠である。

係争化した兵站(Contested Logistics :中国の長距離の致死性火力能力と非致死性能力は、敵対者の本国や後方連絡線(lines of communication)全体における兵站を混乱させ、兵力や装備、物資がインド太平洋戦域に到達することを困難にする。

本土防衛(Homeland Defense: 中国の広範なインテリジェンス収集と従来型の戦い、ハイブリッド戦、非正規戦の能力は、米国にとって前例のない国土防衛の課題を生み出している。

密集市街戦(Dense Urban Warfare: 人民解放軍(PLA)は一貫して、人口密度の高い都市部での作戦を想定した訓練を行っており、インド、台湾、ベトナムなど、紛争地域をめぐる地域主体との紛争では、このような地域が大きな特徴となる可能性が高い。

情報の優位性(Information Advantage: 中国は、少なくとも火力や機動力と同様に重要であると考えている情報支配(information dominance)を確立することにドクトリン上コミットしているため、情報の状況を迅速に形成し、敵対者の情報の優位性獲得能力に挑戦することができる。

大量破壊兵器(Weapons of Mass Destruction: 中国は核戦力の近代化を急ピッチで進めており、2030年までに核弾頭数を1,000個以上に増やし、陸・海・空の三位一体による包括的な核戦力の開発によって残存性を高めることを目標としている。

付録B:トレードクラフトと情報源

※ トレードクラフト(tradecraft)とは、米国防総省の辞書によると「インテリジェンス機関の組織と活動で使用される特殊な方法と装備、特にエージェントとの通信を処理するための技術と方法。

分析の前提条件と注意点

中国は軍事ドクトリンと戦術を公表していないため、この評価の大部分は、それぞれ中国のドクトリンのコンセプト化と人民解放軍(PLA)の上級将校の教育を主導していると理解されている中国軍事科学院と国防大学による出版物に依拠している。人民解放軍(PLA)の能力は急速に進化しているため、これらの出版物の永続的な有用性については不確実性があるが、現代の権威ある他の中国メディアの報道とレトリックが引き続き類似しているため、その重要性の継続については中程度の確信を持っている。演習に関する中国の軍事メディアの報道は、国内および外部の聴衆と効果を意図したものであるが、この一連の報道は、おそらく実際の活動、戦術、技術、手順を大まかに代表するものであろう。

用語に関する注意事項

中英翻訳の性質や、中国の国防白書のような権威ある情報源で使用される用語の違いは、翻訳の混乱や議論の相違につながる可能性がある。以下は、これらの用語についての説明である。

・ 本稿では、いくつかの重要な理由から、一般的に「中国(China)」と「人民解放軍(PLA)」を区別している。人民解放軍は中国軍(China’s Armed Forces)の一部門に過ぎず、人民武装警察や民兵を含む他の部門も含んでいる。中国との大規模戦闘作戦(LSCO)には、こうした他の部隊の支援を受けた統合作戦が含まれる。中国」を使うことで、人民解放軍(PLA)だけでなく、軍事的、政府的、社会的側面を含む、潜在的な紛争の全容を認識することができる[73]

・ 人民解放軍陸軍(People’s Liberation Army Army)は地上部隊(ground force)を指す正式名称である。[解放军陆军]は文字通り「PLA Ground Army」であるため、英語では「ground force」を使う資料もあるが、本稿では公式資料との整合性のために「PLA Army」を使う。

・ 中国が「統合(joint)」という言葉を使うのは、2つ以上の軍や部隊が一緒に行動することを意味するのに対し、「連合(combined)」という言葉を使うのは、同じ軍の複数の部門を意味する。

・ 中国はまた、師団級の部隊には「分遣隊」または「船団」(ローマ字でzhidui [支队]と表記されることもある)を、連隊級または大隊級の部隊には「集団」(ローマ字でDadui [大队]と表記されることもある)を使用する[74]

ノート

[1] U.S. Department of Defense. 2025 Interim National Defense Strategic Guidance. Washington D.C.

[2] Xi Jinping, “Hold High the Great Banner of Socialism with Chinese Characteristics and Strive in Unity to Build a Modern Socialist Country in All Respects Report to the 20th National Congress of the Communist Party of China,” Xinhua (PRC State Media), 25 October 2022. http://www.gov.cn/xinwen/2022-10/25/content_5721685.htm.

[3] Houghton, Scott. 2024. “US-China Relations Frigid but Not a New Cold War.” Asia Times. June 12, 2024. https://asiatimes.com/2024/06/us-china-relations-frigid-but-not-a-new-cold-war/.

[4] Xinhua News. 2018. “Xi Urges Breaking New Ground in Major Country Diplomacy with Chinese Characteristics – Xinhua| English.news.cn.” Xinhuanet.com. 2018. http://www.xinhuanet.com/english/2018-06/24/c_137276269.htm.

[5] Information Office of the State Council. 2013. “The Diversified Employment of China’s Armed Forces.” English.www.gov.cn. April 2013. http://english.www.gov.cn/archive/white_ paper/2014/08/23/content_281474982986506.htm.

[6] PRC Ministry of Foreign Affairs. 2024. Xi Jinping Spoke with US President Biden at a Conference in Lima [习近平同美国总统拜登在利马举行会晤], 17 November 2024. https://www.mfa.gov.cn/chn/gxh/tyb/zyxw/202411/t20241117_11527702.html.

[7] China Aerospace Studies Institute. “Chinese Views of the Spectrum of Conflict: Theory and Action.” Air University, June 20, 2022. https://www.airuniversity.af.edu/CASI/Display/Article/3052393/chinese-views-of-the-spectrum-of-conflict-theory-and-action/.

[8] Office of the Secretary of Defense. “Military and Security Developments Involving the People’s Republic of China 2023.” Annual Report to Congress, October 19, 2023. https://media.defense.gov/2023/Oct/19/2003323409/-1/-1/1/2023-MILITARY- AND-SECURITY-DEVELOPMENTS-INVOLVING-THE-PEOPLES- REPUBLIC-OF-CHINA.PDF.

[9] Tosi, Scott J. “Active Defense: Explaining the People’s Liberation Army Reforms.” Military Review, September- October 2023. https://www.armyupress.army.mil/Journals/Military-Review/English-Edition-Archives/September-October-2023/Active-Defense/.

[10] Tosi, Scott J. “Active Defense: Explaining the People’s Liberation Army Reforms.” Military Review, September- October 2023. https://www.armyupress.army.mil/Journals/Military-Review/English-Edition-Archives/September-October-2023/Active-Defense/.

[11] Wortzel, Larry M. 2020. “Military Mobilization in Communist China.” AUSA. December 18, 2020. https://www.ausa.org/publications/military-mobilization-communist-china.

[12] Shao Tianliang [肖天亮 ], Ed., Science of Military Strategy [战略学], Beijing: National Defense University Press, 2020. https://www.airuniversity.af.edu/Portals/10/CASI/documents/Translations/2022-01-26%202020%20Science%20of%20Military%20Strategy.pdf, 42-43.

[13] Shats, D. (2022). Chinese Views of Effective Control: Theory and Action. China Aerospace Studies Institute. https://www.airuniversity.af.edu/Portals/10/CASI/documents/Research/Other-Topics/2022-10-03%20Effective%20Control.pdf; Schobell, A., Wortzel, L., & Henley, L. D. (2006). War Control: Shaping China’s security environment: The Role of the People’s Liberation Army. Strategic Studies Institute, US Army War College. Retrieved December 18, 2024, from http://www.jstor.com/stable/resrep11961.8.

[14] Bitzinger, Richard A. 2021. “China’s Shift from Civil-Military Integration to Military-Civil Fusion.” Asia Policy 28 (1): 5–24. https://www.rsis.edu.sg/wp-content/uploads/2022/05/Asia-Policy-16.1-Jan-2021-Richard-Bitzinger.pdf.

[15] Licata, Nicholas R. 2023. “China’s Military-Civil Fusion Strategy: A Blueprint for Technological Superiority.” Foreign Policy Research Institute, December 19, 2023. https://www.fpri.org/article/2023/12/chinas-military-civil-fusion-strategy-a-blueprint-for-technological-superiority.

[16] Stone, Alex, and Peter Wood. 2020. “China’s Military-Civil Fusion Strategy, a View from Chinese Strategists.” China Airpower Studies Institute. Air University. June 2020. https://www.airuniversity.af.edu/Portals/10/CASI/documents/Research/Other-Topics/2020-06-15%20CASI_China_Military_Civil_Fusion_Strategy.pdf.

[17] National Defense Transportation Law of the PRC [中华人民共和国国防交通法], National People’s Congress, 3 September 2016. https://web.archive.org/web/20201205145837/http://npc.people.com.cn/n1/2016/0906/c14576-28693956.html.

[18] Cozad, Mark, Jeffrey Engstrom, Scott Harold, Timothy Heath, Edmund Burke, Julia Brackup, and Derek Grossman. 2023. “Gaining Victory in Systems Warfare Research Report.” https://www.rand.org/content/dam/rand/pubs/research_reports/RRA1500/RRA1535-1/RAND_RRA1535-1.pdf.

[19] Ibid.

[20] U.S. Department of Defense. 2022. “Military and Security Developments Involving the People’s Republic of China,” DOD, 29 November 2022. https://media.defense.gov/2022/Nov/29/2003122279/-1/-1/1/2022-MILITARY-AND-SECURITY-DEVELOPMENTS-INVOLVING-THE-PEOPLES-REPUBLIC-OF-CHINA.PDF, 39.

[21] Ji Rongren [纪荣仁], ed., Services & Arms in Joint Operations [联合作战中军兵种运用] (Shenyang: Baishan Press, 2010), https://www.airuniversity.af.edu/Portals/10/CASI/documents/Translations/2021-11-01%20Services%20and%20Arms%20Application%20in%20Joint%20Operations.pdf, 17

[22] U.S. Department of Defense. 2024. Review of Military and Security Developments Involving the People’s Republic of China. U.S. Department of Defense. https://media.defense.gov/2024/Dec/18/2003615520/-1/-1/0/MILITARY-AND-SECURITY-DEVELOPMENTS-INVOLVING-THE-PEOPLES-REPUBLIC-OF-CHINA-2024.PDF.

[23] Tan Song [檀松], Mu Yongpeng [穆永朋], Eds., Science of Joint Tactics [联合站数学], Beijing, Military Science Press [军事科学出版社], 2014, 105, 265.

[24] Wood, Peter. 2023. “New Domain Forces and Combat Capabilities in Chinese Military Thinking – FMSO.” Foreign Military Studies Office. February 2023. https://fmso.tradoc.army.mil/2023/new-domain-forces-and-combat-capabilities-in-chinese-military-thinking/.

[25] Sharma, Ritu. 2024. “Led By World’s Largest 10,000-Ton Patrol Vessel, China’s Coast Guards Threaten Neighbors In ‘Gray Zone’.” The Eurasian Times. March 11. https://www.eurasiantimes.com/led-by-worlds-largest-10000-ton-patrol-vessel-chinas/.

[26] Benjamin Jensen, “How the Chinese Communist Party Uses Cyber Espionage to Undermine the American Economy,” Center for Strategic and International Studies, July 13, 2023, https://www.csis.org/analysis/how-chinese-communist-party-uses-cyber-espionage-undermine-american-economy.

[27] Defense Intelligence Agency. 2022. “Space Reliance in an Era of Competition and Expansion.” https://www.dia.mil/Portals/110/Documents/News/Military_Power_Publications/Challenges_Security_Space_2022.pdf.

[28] Brendan S. Mulvaney, “The PLA’s New Information Support Force,” China Aerospace Studies Institute, Air University, April 22, 2024, https://www.airuniversity.af.edu/CASI/Display/Article/3749754/the-plas-new-information-support-force/.

[29] Clark, Colin. 2024. “China Creates New Information Support Force, Scraps Strategic Support Force in ‘Major’ Shakeup.” Breaking Defense. April 22, 2024. https://breakingdefense.com/2024/04/in-major-shakeup-china-creates-new- information-support-force-scraps-strategic-support-force/.

[30] Rao, TH Anand. 2024. “China’s Military Reorganisation and the Emergence of an Aerospace Force.” CAPS India. May 2024. https://capsindia.org/chinas-military-reorganisation-and-the-emergence-of-an-aerospace-force.

[31] Luce, LeighAnn , and Erin Richter. 2019. “Handling Logistics in a Reformed PLA: The Long March toward Joint Logistics.” National Defense University Press. February 4, 2019. https://ndupress.ndu.edu/Media/News/News-Article-View/Article/1748004/handling-logistics-in-a-reformed-pla-the-long-march-toward-joint-logistics.

[32] McCauley, Kevin. 2020. “People’s Liberation Army: Army Campaign Doctrine in Transition.” Apan.org. October 8, 2020. https://community.apan.org/wg/tradoc-g2/fmso/m/fmso-monographs/351019.

[33] Xi Jinping. 2022. “Hold High the Great Banner of Socialism with Chinese Characteristics and Strive in Unity to Build a Modern Socialist Country in All Respects Report to the 20th National Congress of the Communist Party of China.” [高举中国特色社会主义伟大旗帜 为全面建设社会主义现代化国家而团结奋斗—在中国共产党第二十次全国代表大会上的报告], Xinhua (PRC State Media), 25 October 2022. http://www.gov.cn/xinwen/2022-10/25/content_5721685.htm.

[34] Law of the People’s Republic of China on Reserve Personnel [中华人民共和国预备役人员法], adopted Dec. 30, 2022, effective Mar. 1, 2023, https://zh.wikisource.org/.

[35] CCP. 2019. “China’s National Defense in the New Era” [新时代的中国国防], State Council Information Office [国务院新闻办公室] 24 July 2019, http://www.xinhuanet.com/politics/2019-07/24/c_1124792450.htm.

[36] Wood, Peter; Alex Stone, and Thomas Corbett. 2024. “Chinese Nuclear Command, Control and Communications” China Aerospace Studies Institute, 11 March 2024, https://www.airuniversity.af.edu/Portals/10/CASI/documents/Research/PLARF/2024-03-11%20Chinese%20Nuclear%20Command%20and%20Control.pdf, 24.

[37] Zhang Peigao [张培高], “Lectures on Joint Campaign Command” [联合战役指挥教程], Military Science Press. 2012, 95.

[38] Xinhua News. 2016. “Chinese President Xi Jinping Confers Military Flags to Five Newly-Established Theater Commands of the People’s Liberation Army.” Xinhua, 1 February, 2016, http://newyork.china-consulate.gov.cn/eng/xw/201602/t20160202_4715284.htm.

[39] Ji Rongren [纪荣仁], ed., “Services & Arms in Joint Operations” [联合作战中军兵种运用] (Shenyang: Baishan Press, 2010), https://www.airuniversity.af.edu/Portals/10/CASI/documents/Translations/2021-11-01%20Services%20and%20Arms%20Application%20in%20Joint%20Operations.pdf., 10

[40] Services & Arms in Joint Operations, 11.

[41] Shatzer, George R, Roger D Cliff, Kenneth W Allen, Joshua Arostegui, Justin Boggess, Travis Dolney, Matthew P Funaiole, et al. 2022. PLA Logistics and Sustainment: PLA Conference 2022. USAWC Press. U.S. Army War College Press. https://press.armywarcollege.edu/monographs/958.

[42] Roderick Lee, “The PLA Airborne Corps in a Taiwan Scenario” Joel Wuthnow et. al, Eds. Crossing the Strait China’s Military Prepares for War with Taiwan, National Defense University 2022. https://ndupress.ndu.edu/Portals/68/Documents/Books/crossing-the-strait/crossing-the-strait.pdf, 196.

[43] Department of the Army. 2021“ATP 7-100.3—Chinese Tactics”

[44] Marvel, Brad, ‘People’s Liberation Army Operations and Tactics in the Land Domain: Informationized to Intelligentized Warfare’, in Mikael Weissmann, and Niklas Nilsson (eds), Advanced Land Warfare: Tactics and Operations (Oxford, 2023; online edn, Oxford Academic, 20 Apr. 2023), https://doi.org/10.1093/oso/9780192857422.003.0013, accessed 16 Dec. 2024.

[45] “PLA Aerospace Power: A Primer on Trends in China’s Military Air, Space, and Missile Forces.” CASI. 15 Aug 2022. https://www.airuniversity.af.edu/Portals/10/CASI/documents/Research/Other-Topics/2022-08-15%20PLA%20Primer%203rd%20edition.pdf.

[46] Tom Fox. “China Maritime Report No. 17: The PLA Army’s New Helicopters: An “Easy Button” for Crossing the Taiwan Strait?” (2021). CMSI China Maritime Reports. https://digital-commons.usnwc.edu/cmsi-maritime-reports/17.

[47] Liu Xuanzun. “PLA attack, transport helicopters spotted near Taiwan for 1st time, ‘provide more tactical options’.” Global Times. 27 Oct 2021. https://www.globaltimes.cn/page/202110/1237475.shtml.

[48] Timothy R. Heath. “Beijing Ups the Ante in South China Sea Dispute with HQ-9 Deployment.” RAND Corporation. 29 March 2016. https://www.rand.org/pubs/commentary/2016/03/beijing-ups-the-ante-in-south-china-sea-dispute-with.html.

[49] Christopher Sharman, Terry Hess. “China Maritime Report No. 34: PLAN Submarine Training in the “New Era”. U.S. Naval War College. 10 Jan, 2024.

[50] Dang Chongmin and Zhang Yu, Science of Joint Operations (Beijing: PLA Press, 2009), 173–74

[51] Science of Military Strategy, p. 23

[52] Mihal, Christopher. 2021. “Understanding the People’s Liberation Army Rocket Force Strategy, Armament, and Disposition.” Army University Press. September 2021. https://www.armyupress.army.mil/Journals/Military-Review/English-Edition-Archives/China-Reader-Special-Edition-September-2021/Mihal-PLA-Rocket-Force/.

[53] Sam LaGrone. “China Defends Deployment of Anti-Ship Missiles to South China Sea Island.” USNI News. 30 March 2016. https://news.usni.org/2016/03/30/china-defends-deployment-of-anti-ship-missiles-to-south-china-sea-island.

[54] Rice, Daniel. 2024. “The PLA Navy Coastal Defense Missile Force.” Air University. China Aerospace Studies Institute. https://www.airuniversity.af.edu/Portals/10/CASI/documents/Research/PLAN/2024-04-081%20PLA%20Navy%20Coastal%20Defense%20Guided%20Missile%20Force.pdf.

[55] China Aerospace Studies Institute. PLA Aerospace Power: A Primer on Trends in China’s Military Air, Space, and Missile Forces 4th Edition. China Aerospace Studies Institute. July 22, 2024.

[56] Wortzel, Larry. 2007. “China’s Nuclear Forces: Operations, Training, Doctrine, Command, Control, and Campaign Planning.” US Army War College Press, https://press.armywarcollege.edu/cgi/viewcontent.cgi?article=1680&context=monographs.

[57] U.S. Department of Homeland Security. 2024. “Report on Reducing the Risks at the Intersection of Artificial Intelligence and Chemical, Biological, Radiological, and Nuclear Threats.” https://www.dhs.gov/sites/default/files/2024-06/24_0620_cwmd-dhs-cbrn-ai-eo-report-04262024-public-release.pdf.

[58] Zhang Yuliang [张玉良], Ed. Science of Campaigns [战役学], National Defense University Press, 2006. https://www.airuniversity.af.edu/Portals/10/CASI/documents/Translations/2020-12-02%20In%20Their%20Own%20Words-%20Science%20of%20Campaigns%20(2006).pdf.

[59] Kevin McCauley. People’s Liberation Army: Army Campaign Doctrine in Transition. FMSO. Jan 2023.

[60] Zhang Yuliang [张玉良], Ed. Science of Campaigns [战役学], National Defense University Press, 2006. https://www.airuniversity.af.edu/Portals/10/CASI/documents/Translations/2020-12-02%20In%20Their%20Own%20Words-%20Science%20of%20Campaigns%20(2006).pdf.

[61] Zhang Yuliang [张玉良], Ed. Science of Campaigns [战役学], National Defense University Press, 2006. https://www.airuniversity.af.edu/Portals/10/CASI/documents/Translations/2020-12-02%20In%20Their%20Own%20Words-%20Science%20of%20Campaigns%20(2006).pdf.

[62] (Service and Arms Application in Joint Operations, 2010)

[63] Kennedy, Conor. 2023. “RO-RO Ferries and the Expansion of the PLA’s Landing Ship Fleet.” CIMSEC. 27 March 2023. https://cimsec.org/ro-ro-ferries-and-the-expansion-of-the-plas-landing-ship-fleet/.

[64] Fu, Daniel. 2023. “PLA Airborne Capabilities and Paratrooper Doctrine for Taiwan” China Brief, 23 June 2023. https://jamestown.org/program/pla-airborne-capabilities-and-paratrooper-doctrine-for-taiwan/.

[65] U.S. Department of Defense. 2024. Review of Military and Security Developments Involving the People’s Republic of China. U.S. Department of Defense. https://media.defense.gov/2024/Dec/18/2003615520/-1/-1/0/MILITARY-AND-SECURITY-DEVELOPMENTS-INVOLVING-THE-PEOPLES-REPUBLIC-OF-CHINA-2024.PDF.

[66] The International Institute for Strategic Studies. 2024. The Military Balance 2024. Taylor & Francis.

[67] Zhang Yuliang [张玉良], Ed. Science of Campaigns [战役学], National Defense University Press, 2006. https://www.airuniversity.af.edu/Portals/10/CASI/documents/Translations/2020-12-02%20In%20Their%20Own%20Words-%20Science%20of%20Campaigns%20(2006).pdf.

[68] Haver, Zoe. 2024. “Speeding Toward Taiwan: China’s Amphibious Armored Vehicles Development, Recorded Future.” 15 August 2024. https://go.recordedfuture.com/hubfs/reports/ta-2024-0815.pdf.

[69] Garafola, Cristina L., “China Maritime Report No. 19: The PLA Airborne Corps in a Joint Island Landing Campaign” (2022). CMSI China Maritime Reports. 19. https://digital-commons.usnwc.edu/cmsi-maritime-reports/19.

[70] Haver, Zoe. 2024. “Speeding Toward Taiwan: China’s Amphibious Armored Vehicles Development, Recorded Future.” 15 August 2024. https://go.recordedfuture.com/hubfs/reports/ta-2024-0815.pdf.

[71] McCauley, Kevin. 2023. “People’s Liberation Army: Army Campaign Doctrine in Transition.” FMSO. Jan 2023.

[72] U.S. Department of Defense. 2024. “DOD Report to Congress on Military & Security Developments Involving the PRC.” 2024, DOD, 18 December 2024. VII.

[73] Xi Jinping. 2022. “Hold High the Great Banner of Socialism with Chinese Characteristics and Strive in Unity to Build a Modern Socialist Country in All Respects Report to the 20th National Congress of the Communist Party of China,” Xinhua (PRC State Media), 25 October 2022. http://www.gov.cn/xinwen/2022-10/25/content_5721685.htm.

[74] Chinese People’s Liberation Army Military Terms [中国解放军军语], Beijing: Military Science Press, 2011, 329. Dahm, J. Michael and Zhao, Alison, “China Maritime Report No. 28: Bitterness Ends, Sweetness Begins: Organizational Changes to the PLAN Submarine Force Since 2015” (2023). CMSI China Maritime Reports. 28. https://digital-commons.usnwc.edu/cmsi-maritime-reports/28.