防護装甲:北米のアクティブ防護システム(APS)が成熟 (Journal of Electromagnetic Dominance)

2022年にロシアが大量の戦車・装甲車をもってウクライナに侵攻した際に、ウクライナ軍がジャベリン等の対戦車兵器をもって対抗したのは、すでに過去のことのように思える。地上戦においては、戦車、装甲車等の装甲防護力を持った車両の有効性は疑うことはないようである。しかし、装甲防護力が有効であるからゆえに戦車、装甲車等の視点からは対戦車兵器への対抗措置を講じることは、欠かせないことであろう。また、各種ドローン等の開発と運用が進み、戦車、装甲車等は上空からの脅威にも対応していかなければいけない。このような中で進んでいる装甲車等の防護システム開発の進展状況に関する記事を紹介する。防護の手段にはパッシブ防護システムとアクティブ防護システムがあるとされ、アクティブ防護システムの持つ機能にはハード・キル型とソフト・キル型があるとされる。この記事は、電子戦関連の団体のものであり、電磁波の特性を駆使したソフト・キル型の手段を中心にその成熟の様子を述べたものになっている。(軍治)

防護装甲:北米のアクティブ防護システム(APS)が成熟

Protecting Armor: North American APS Matures

By Andrew White

Journal of Electromagnetic Dominance(JED) • July 2025

アンドリュー・ホワイト(Andrew White)は、Breaking Defense誌で英国を担当する、20年近くの経験を持つベテラン防衛ジャーナリスト。ロンドンとホノルルを拠点に、特殊作戦、破壊的技術、そして防衛・安全保障市場における新たなトレンドに関する執筆を専門。

米国は、地上車両へのアクティブ防護システム(APS)の統合の取組みにおいて、欧州諸国やイスラエルなどの国々に遅れをとっている。例えば、米陸軍はストライカー用のアクティブ防護システム(APS)を長年模索してきたにもかかわらず、いまだに購入可能なソリューションを特定できていない。| 米陸軍

ここ数年来、イスラエルの防衛企業はアクティブ防護システム(APS)の先駆者であり、国内だけでなく欧米全域の市場を支配してきた。しかし、米陸軍がエルビット・システムズ社ラファエル・アドバンスト・ディフェンス・システムズ社のような企業の能力を活用し、ごく近い将来、装甲プラットフォームを支援できる国内産業基盤を後押しすることで、北米ではアクティブ防護システム(APS)のある種のルネッサンスが起こることになる。

ロシアとウクライナの戦争が続く中、特に主力戦車(MBT)と歩兵戦闘車両(IFV)は、ロケット推進擲弾(RPG)から上面攻撃型対戦車誘導弾(ATGM)、兵器化されたドローンまで、レガシーと新興の脅威が混在する状況に直面し続けている。しかし、次の戦争がどのようなものであろうと、またどのようなときであろうと、戦闘地域の前方端から「立ちはだかる」搭乗員付きプラットフォームによって支援される、ロボット・システムと自律システムのネットワークを特徴とする可能性が高い。

ロッキード・マーチン社のビジネス開発アナリスト、ロバート・ボートライト(Robert Boatwright)氏はJEDの取材に対し、「ウクライナ紛争から得られた教訓については、米陸軍の見解に委ねたいと思う。しかし、この紛争は、進化する脅威からの防御において、先進的なアクティブ防護システム(APS)の重要性を浮き彫りにしたことは確かである。重要な教訓の一つは、変化する脅威環境に迅速に適応し、多様な脅威に対して多層的な防御を提供できるシステムの必要性である」と述べている。

また、業界筋は装甲車両が現代戦において依然として「中心的」な役割を果たし続けていることを指摘し、「これは、ロケット推進擲弾(RPG)、対戦車誘導弾(ATGM)、敵戦車、ドローン、徘徊型弾薬などの強力な防御が極めて重要であることを改めて示すものである。信頼性の高いアクティブ防護システム(APS)はもはやオプションではなく、必須である」と述べている。

アドバンスト・リアルタイム・インフォメーション・システムズ(ARTIS)社

アクティブ防護システム(APS)の国内デザインと製造を追求するプライム企業の数は世界中で増え続けているが、北米でこの技術に注力する企業の数は、すでにエルビット者とラファエル斜がそれぞれブラッドレー歩兵戦闘車両(IFV)とエイブラムス主力戦車(MBT)にアイアン・フィスト・アクティブ防護システム(APS)トロフィー・アクティブ防護システム(APS)を装備する契約を結んでいる米陸軍の要求を考えると、驚くほど少ない。

RTX社はJEDに対し、同社の「クイック・キル」ソリューションが「現在アクティブなプログラムではない」ことを確認し、代わりにすべての質問を陸軍に先送りした。そのほか、BAEシステムズ社はソフト・キル対抗処置ーの開発を続け、アドバンスト・リアルタイム・インフォメーション・システムズ(ARTIS)社は「Sentinel 2.0」アクティブ防護システム(APS)の開発を進めている。ARTIS社のキース・ブレンドリー(Keith Brendley)最高経営責任者(CEO)によると、ウクライナ紛争で明確なメッセージがあったとすれば、それは装甲車を現在よりもはるかに優れた方法で防護しなければならないということだ。

「殺人ドローンだけでなく、対戦車ミサイルの普及、戦場の透明化、戦場での革新のスピードなど、すべてが現代の技術が戦争をどこに連れて行こうとしているのかを指し示している。現在起きていることを理解するだけでなく、これらすべてがどこへ向かっているのか、そのベクトルを見極めることが重要だ。車両防護にとって、それが意味するのは、我々のシステムは、進化するにつれて変化する脅威に適応するために、迅速に調整可能である必要があるということである。将来の戦争を想定してシステムをデザインし、実戦配備して、そのまま闘うという時代は終わった。最も早く適応するシステムが生き残る」と彼はJEDに語った。

ブレンドリー(Brendley)によると、北米のアクティブ防護システム(APS)市場は、特に世界の他の地域と比べると、発展が遅れている。しかし、彼は現在、「……今後数年で急速に動く態勢が整っている」と付け加えた。イスラエル国防軍(IDF)がアクティブ防護システム(APS)技術を早くから導入しているのは明らかで、この点ではロシアに後れをとっている。しかし、米国市場の進化は遅いかもしれないが、技術開発はそうではない」と彼は説明し、ARTIS社が「最近リリースした」「Sentinel 2.0」アクティブ防護システム(APS)について説明した。

ブレンドリー(Brendley)によれば、「Sentinel 2.0」は第3世代の全脅威型アクティブ防護システム(APS)で、「……進化する脅威に迅速に対応するため、ソフトウェアで定義され、高度にモジュール化されている」と彼は付け加えた。ブレンドリー(Brendley)は、競争上の機微に触れるため、この技術の具体的な要素について詳しく説明することはできなかった。しかし、彼はJEDとビデオ映像を共有することができた。その映像では、「Sentinel 2.0」が 「至近距離(close range)」でロケット推進手榴弾(ロケット推進擲弾(RPG))弾を破壊することに成功していた。(参考:https://youtu.be/n_yz_ONZltA

ARTIS社のSentinel 2.0 アクティブ防護システム(APS)は、「DARPA、米陸軍、そして民間投資家の支援を受けた長年の機密作業」に基づいている。| ARTIS

モジュール式の「Sentinel 2.0」は、接近するターゲットを「高速追跡(high speed tracking)」できるようにデザインされた光学カメラとアクティブ・レーダーを用いて接近する脅威を検知するとブレンドリー(Brendley)は説明し、装甲車両の典型的な装備には、車両の各コーナーにレーダーと一対の光学センサーが含まれることを確認した。さらに、サボ弾(sabot round)1や爆発成形弾など、射程4~5メートル以内の脅威に対処するようにデザインされたハード・キル対抗手段は、顧客の好みに応じて車両の前面、側面、または後面に統合できるとブレンドリー(Brendley)は付け加えた。

※1 サボ弾(sabot round)は、翼安定徹甲弾(APFSDS)を指す言葉で、発射後に装弾筒(サボット)が分離して砲弾が目標に到達する、高威力で貫通力の高い弾種

「光学センサーが重労働を担っている。このように非常に近い敵を仕留めるには、サンプル速度、つまり脅威をどれだけ速くサンプリングし、火力統制システムをどれだけ速く処理するかが、近距離システムを機能させる上で極めて重要である」と彼は述べ、「Sentinel 2.0」をトロフィー・アクティブ防護システム(APS)アイアン・フィスト・アクティブ防護システム(APS)といった「射撃後(shoot-out)」型システムと比較した。

「1年か2年ごとに、市場は新しい処理チップを発表する。しかし、FPGA※2より速いものはない。FPGAは、脅威を識別し、検出し、妨害するためのすべての計算を担当する。我々の処理に打ち勝つほど速く動くものはない」と彼は主張する。

※2 FPGA(英: field-programmable gate array)は、製造後に購入者や設計者が構成を設定できる集積回路であり、広義にはPLD(プログラマブル・ロジック・デバイス)の一種である。現場でプログラム可能なゲートアレイであることから、このように呼ばれている。(引用:https://ja.wikipedia.org/wiki/FPGA

ブレンドリー(Brendley)によると、「Sentinel 2.0」はレーダーにとらわれず、合計6つのソリューションがすでに「Sentinel アクティブ防護システム(APS)」に統合されている。「レーダーが妥当な距離で脅威を視認し、妥当な速度で出力できる限り、「Sentinel 2.0」は動作可能である。我々は、この分野のほとんどすべての人と協力してきた。現在、われわれは米国製レーダー(アラバマ州ハンツビルのTSEがデザイン)を使用している。

ブレンドリー(Brendley)は、TSEレーダーが当初航空機用にデザインされ、その後サイズ、重量、そして最も重要なコストが削減された経緯を説明し、次のように付け加えた。「我々がこのレーダーを気に入っているのは、まさにこの理由からである。多くのレーダーは主に「射撃後(shoot-out)」システム用にデザインされている。レーダーは往々にして非常に高出力で高価であり、実際に必要とされる以上の能力を備えていることが多い」

TSEのレーダーはトップ・アタックの脅威も検知できることを示唆し、ブレンドリー(Brendley)は、ARTIS社がハード・キル対策に限定されていないことを説明した。同氏は、「Sentinel 2.0」がソフトウェア定義のソリューションであることを確認した上で、ARTIS社が「ソフト・キル機能を「Sentinel 2.0」に統合するために外部のパートナー」と協力していることを認めたが、競争上の機微に触れるため、これ以上の詳細は明らかにできなかった。「それは良い方法である。「ハード・キルは十分に難しいが、ソフト・キルは別の分野だ。電子戦(EW)だ。だから、我々はベストと思われるものを選び、彼らとチームを組む」。統合は車両の火力統制システムの内部で行われる。

「「Sentinel 2.0」はすべてのソフト・キル・システムと併用するのに理想的だ。「「Sentinel 2.0」は、ソフト・キルにその役割をさせ、ミサイルが我々に命中するのを防ごうとする。しかし、それらが失敗した場合、「Sentinel 2.0」のハード・キル能力は、車両に近づいてくるものをすべて殺すつもりだ」。さらにブレンドリー(Brendley)は、「ソフト・キルは弾頭を無力化できるが、車両に命中するまで効果は確認できない」と警告する。つまり、ソフト・キルとハード・キルの間に衝突回避は不要である。ソフト・キルは「射撃時(shoot-in)」の技術であるのに対し、「射撃後(shoot-out)」の技術はソフト・キルと干渉する可能性があるためだ。

ブレンドリー(Brendley)によると、ARTIS社はこれまで米陸軍とのプラットフォーム統合作業をあまり行っておらず、その代わりに「Sentinel 2.0」の実射テストのために「スタンド上のリグ」を採用することに注力してきた。実際、最初の車両統合は、数年前にストライカー歩兵戦闘車両に搭載して完了した。「我々は統合に向けた取り組みを進めている。しかし、これまではスタンドでのデモンストレーションにとどまっている」と彼は述べ、2026年か2027年に米陸軍のプラットフォームに搭載する可能性があることを強調した。

TERRA RAVEN

北米では、ニューハンプシャー州ナシュアにあるBAEシステムズ社が、米陸軍に代わって現在遂行中のマルチクラス・ソフト・キル・システム(MCSKS)契約の一環として、ソフト・キル・カウンターメジャー・システムに引き続き注力している。

BAEシステムズ社の「TERRA RAVEN」システムは、レーザーベースの電気光学/赤外線(EO/IR)対抗措置を提供する。| BAEシステムズ社

米陸軍は同プログラムの現状についてコメントできず、BAEシステムズ社もアクティブ防護システム(APS)市場に関連する作戦上および競争上の配慮のため、詳細については明らかにできなかった。しかし、2024年11月、BAEシステムズ社は、マルチクラス・ソフト・キル・システム(MCSKS)対策をさらに開発するための後続契約を陸軍から受注した。マルチクラス・ソフト・キル・システム(MCSKS)は、「誘導ミサイルと隣接する脅威を防御し、車両の残存性と任務の成功を向上させる」ことができるもので、「Stormcrow」と「TERRA RAVEN」の2つの対策から構成されている。

「これらの先進システムは脅威に効果的に対抗し、搭乗員がキネティックな対抗手段を温存することを可能にする」と、BAEシステムズ社の統合残存性ソリューション担当ディレクター、ジャレッド・ベリンスキー(Jared Belinsky)は声明で述べ、さらに「今日の戦闘車両には、現代の脅威に迅速かつ効率的に対抗できるアクティブ防護システム(APS)が必要である。ミサイル対抗手段は、電磁戦に対する当社のフルスペクトラム・アプローチの一環である。我々はお客様のプラットフォームの周囲に「イントレピッド・シールド(Intrepid Shield)」を構築し、戦場での有効性を向上させている」と付け加えた。

同様のソリューションが海上プラットフォームの防護にも採用される可能性があることを確認するため、BAEシステムズ社の文書では、詳細はまだ不明だが、マルチクラス・ソフト・キル・システム(MCSKS)ソリューションが電気光学/赤外線(EO/IR)と無線周波数(RF)スペクトラム技術を活用する方法について説明している。「このシステムは、小型、モジュール式、軽量、頑丈でコスト効率に優れている。多機能センサー、インテリジェント処理、電磁エミッターを使用し、あらゆる天候や照明条件、困難な地形や複雑な戦場において、状況認識と脅威への対応を強化する」と同社の説明は説明している。

ラファエルUSA社のトロフィーアクティブ防護システム(APS)が米陸軍M1A2エイブラムスMBT 330両以上に採用された。| 米陸軍

「マルチクラス・ソフト・キル・システム(MCSKS)の契約は、幾つかの能力デモンストレーションの成功を含む、同社のアドバンスト・レイヤー・ソフト・キル・システム(ALSKS)とレイヤード・ソフト・キル・システム(LSKS)開発プログラムの成功の上に成り立っている。「現代の戦場には脅威があふれ、状況は急速に変化している。だからこそ、今日の戦闘車両は、脅威となる状況下で迅速かつ効果的に対応するアクティブ車両防護システム・スイートを装備しなければならない。

当社の車両防護システム一式の構成要素である「TERRA RAVEN」対策システムは、現行および次世代の戦闘車両に容易に組み込むことができる重層的防御・対応アプローチの一部である。航空機の防御を応用したノン・キネティックな赤外線対策を使用して、対戦車ミサイルから地上車両を防護し、任務の成功と残存性を高める。

2019年、BAEシステムズ社は「TERRA RAVEN」の旧型を米陸軍M2ブラッドレー歩兵戦闘車両(IFV)に搭載することに成功した。同社はまた、現代の戦場における脅威を「検知-追跡-撃破(detect-track-defeat)」する統合車両防護システムを宣伝する概略図も公開した。

図によると、360MVPセンサー(高解像度の長波長赤外線(LWIR)ビジョンと処理コンポーネントを搭載)は、対戦車誘導弾(ATGM)の発射を検知し、脅威の発生源に向かって「TERRA RAVEN」対抗策を旋回させ、「脅威の信頼度、範囲、必要な効果に基づいて」最適な赤外線(IR)妨害技術を適用する受動的キューイング・ソリューションで、「搭乗員に脅威を自動的に警告し、認知的作業負荷を軽減する」と説明し、「搭乗員またはウィングマンは、脅威と交戦または回避するために機動することができる」と付け加えた。

BAEシステムズ社は、レーザーベースの「Stormcrow」システムに関する背景情報を提供することはできなかったが、同社の資料には、上空に飛来する脅威を標的とする車両搭載型レーザーの画像が掲載されている。

イスラエル技術の恩恵

ロッキード・マーチン社のボートライト(Boatwright)が説明したように、北米市場はイスラエルでデザイン・開発された多くのアクティブ防護システム(APS)技術を基盤としている。その多くは、直近で進行中のガザ紛争を含む中東で積極的に作戦上の役割を果たしてきた。

アイアン・ソード作戦(Operation Iron Sword)を支援する「トロフィー」は、過去数年間の展示会で発表されたビデオ映像によると、20~50メートルの距離で向かってくるロケット推進擲弾(RPG)と交戦する様子が映し出されている。ラファエル社のトロフィー・アクティブ防護システム(APS)は、ロシア製、ウクライナ製、そしておそらくトルコ製を除く、唯一の真の運用可能なアクティブ防護システム(APS)であると主張し、同社の子会社であるラファエルUSA社が北米全域でプロモーションを行っている。

「「トロフィー」は、世界で唯一運用可能なアクティブ防護システム(APS)であり、10年以上にわたって国防総省に配備され、成功を収めてきた。「トロフィー」は、実戦で実証された最初で唯一のアクティブ防護システム(APS)であり、対戦車誘導弾(ATGM)やロケット推進擲弾(RPG)、その他の直射弾を含む様々な脅威に対して比類のない防御を提供する」と、同社の広報担当者はJEDに伝えた。

「「トロフィー」の実証された能力は、プラットフォームの残存性を確保し、地上の軍事ユニットの任務を成功に導く、重要な戦力増強剤となる。「トロフィー」は、特に激戦地におけるメルカバ戦車のような装甲車両の防護において、人命救助システムとしての有効性を一貫して実証してきた」と広報担当者は続け、その「リアルタイムの脅威遮断・無力化能力」に言及し、これにより軍部隊は人員や装備品へのリスクを最小限に抑えながら作戦を継続することができ、戦場戦術を「根本的に変革」することができたとしている。

「「トロフィー」は、部隊の生存能力を高め、脅威の多い環境でも勢いを維持できるようにすることで、陸上作戦を可能にする役割を果たす。襲ってくる脅威がプラットフォームに到達する前に迎撃し、無力化する能力により、部隊は自由かつ自信を持って移動することができる」と広報担当者は付け加えた。

ラファエル社によると、「トロフィー」の統合的アプローチは、レーダー・システムと高度なアルゴリズムおよび迎撃機能を組み合わせ、可能な限り早い段階で脅威を検知、追跡、無力化する。「他のアクティブ防護システム(APS)とは異なり、「トロフィー」はリアルタイムで作動し、人間の介入を必要とせず、飛来する弾丸に自動的に反応する。

エルビット社のアイアン・フィストは、未公開のブラッドレーIFVに搭載される。| 米陸軍

「トロフィー」は、イスラエル国防軍のメルカバ主力戦車(MBT)以外にも、米陸軍のエイブラムス、イギリス陸軍のチャレンジャー3、ドイツとノルウェーのレオパルド2主力戦車(MBT)にも搭載されている。システム・コンポーネントには、電気光学(EO)センサーやレーダー・センサー、殺傷能力の高い対抗措置、6km先まで脅威と交戦可能な無線周波数ジャマーなどが含まれると、ある業界関係者はJEDに伝えた。

アクティブ防護システム(APS)ソリューションを提供するもう1つのイスラエル企業、エルビット・システムズも米陸軍と契約している。2023年から2024年にかけて、エルビット社は米国の元請け企業であるジェネラル・ダイナミクス・ランド・システムズ社から、ブラッドレー歩兵戦闘車両(IFV)に統合するためのアイアン・フィスト・アクティブ防護システム(APS)を米陸軍に非公開の数で納入する複数の契約を獲得した。

エルビット社は北米市場における「アイアン・フィスト」の現状についてコメントすることはできなかった。しかし、ある業界関係者はJEDの取材に対し、北米市場が「……成長する可能性と、現代の戦場におけるアクティブ防護ソリューションの重要なニーズに対する明確な理解」を示し続けていることを説明した。この1年で特筆すべき例はほとんどない」と、この情報筋は11月のジェネラル・ダイナミクス社とのブラッドレー歩兵戦闘車両(IFV)用「アイアン・フィスト」提供契約に言及している。

「今後数年のうちに、米陸軍のプラットフォームにも同様のシステムが装備されることになるだろう。現代の多くの軍隊は、アクティブ防護システム(APS)の戦略的重要性を認識している。世界的な需要が高まっており、各国が新たな脅威に対応するために先進的なアクティブ防護システム(APS)技術の統合を優先していることは明らかである。エルビット社は、米海兵隊における同様の要件の動向を注視している。

北米のアクティブ防護システム(APS)市場の将来

北米におけるアクティブ防護システム(APS)市場の将来について、ARTIS社のブレンドリー(Brendley)は次のように語っている。「装甲車の時代は終わり、少なくともアクティブ防護の要素がなければ装甲車だけでは生き残れない。防護車両の時代へようこそ。そこでは技術的な前線は適応のスピードである。米国の技術企業ほどこの分野に長けている企業はない。

「Sentinel 2.0」は順調で、多くの関心を集めている。しかし、アクティブ防護システム(APS)をドローンに組み込むという新しい技術にも取り組んでいる。我々はドローン事業に参入するのではなく、ドローンをペイロードの運搬に使用することで、ドローンが建物や車両の前を飛行し、部隊をほとんどあらゆるものから守ることができる。これにより、ほとんどすべての脅威に対処できる。これは、長年にわたって「Sentinel 2.0」を導いてきた包括的な要件であり、我々が達成したものだ。

また、ロッキード・マーチン社のボートライト(Boatwright)は、技術の進歩や米陸軍とその同盟国の新たなニーズに後押しされ、今後5年から10年の北米市場は「急速な進化」を続けると予測している。市場の成熟が進むにつれて、焦点は個々のプラットフォーム防護から、フォーメーション・ベースのレイヤード・プロテクション(FBLP)のような、より統合的でレイヤー化されたアプローチに移っていくと予測している。そのためには、新たな技術や能力の開発、さらには業界パートナーと米陸軍との協力関係の強化が必要になる」と述べた。

ある業界関係者はJEDの取材に対し、今後10年以上にわたって装甲車両が現代戦で重要な役割を果たし続け、無人プラットフォームがますます戦場に加わることになるという独自の将来像を語っている。「有人システムも無人システムも、脅威が飽和した環境で効果的に活動するためには、高度な防護が必要になる。アクティブ防護は、残存性と任務の成功の鍵となるものであり、これらのシステムに対する需要は増加し続け、それに応じて進化していくものと思われる。