「認知戦」を評価する (Small Wars Journal)

衆議院の解散が報道され、選挙がほどなく行われるような状況になってきた。この選挙戦においては、国外を含む悪意ある行為主体からの情報戦が・・・・・との話も聞かれる。

一つ前に投稿したNATOの認知戦に関わるレポートに続いて、米国の米軍で勤務経験のある方の認知戦の論稿を紹介する。これは、2025年11月14日にSmall Wars Journalに掲載され、更にIrregular Warfare Initiativeに再掲載された記事である。主たる論旨は、米国の認知戦に関する取組みが不十分であり、その強化を訴えるものである。

先のNATOの認知戦に関わるレポートでも、AIの進展による認知戦の手法の変化などを加味した研究が継続されていることが報告されていた。認知戦を行使する主体の方策は常に進化していることを念頭に対応策等についての研究・検討の継続の必要性を先ずは理解することが大切だということのようだ。ちなみに論考中に日本の現状の件でKoichiro Takagi氏の論稿が引用されている。(軍治)

「認知戦」を評価する

Assessing “Cognitive Warfare”

by Frank Hoffman

 11.14.2025

フランク・ホフマン(Frank Hoffman)博士は、国防総省に46年間勤務した後、2024年に国防大学を退職した。国防総省および海軍省で上級管理職を歴任した。ロンドン大学キングス・カレッジで博士号を取得している。

中国人民解放軍によって10年以上前に導入されたにもかかわらず、認知戦に関する共通の理解は未だ確立されていない。また、人間のドメイン(human domain)や認知ドメイン(cognitive domain)の存在についても合意が得られていない。これらのコンセプトは、情報技術とそれに関連する国家運営における情報の側面を軸とした、混雑し混混乱した分野で競い合っている。米国のインテリジェンス・コミュニティは、いわゆる「認知ドメイン作戦(Cognitive Domain Operations)」に関する中国のコンセプトや研究(そしてロシアの活発な活動)の普及が進んでいることを指摘しているが、迫りくる脅威(the pacing threat)によって説明されるような、米軍における認知戦の影響についてはほとんど認識されていない。

学者たちは、意思決定者や世論に影響を与えるベクトルとしての情報技術の継続的な進化を捉えるために、数多くの用語を生み出してきた。図1にその一部を示す。近年、米国政府機関は、脅威に対処するために「外国の悪意ある影響力(Foreign Malign Influence)」または単に「影響力作戦(Influence Operations)」を用いている[1]。RAND研究所は、情報環境における競争を捉えるために、サイバーを活用した影響力作戦(cyber-enabled Influence Operations)、仮想社会戦(Virtual Societal Warfare)、次世代心理戦(Next Generation Psychological Warfare)に関する研究を発表した[2]。ロシアの偽情報に関する関連研究も一般的であり、定義は重複している。

将来の戦争は「消耗の戦争ではなく、認知の戦争」となるだろう。

現在、認知戦というコンセプトは、この混沌とし​​た空間で競い合っており、国家安全保障の課題における認知戦の意義について、共通の定義や理解は確立されていない。過去の戦争においては、情報とナラティブが戦争を形作ってきたが、現在進行中の技術開発は、この戦闘空間(battlespace)を拡大し、認知戦の潜在性(potential)と顕在性(salience)を大幅に高める極めて効率的なツールを提供している。新たなコミュニケーション・ツールは、デジタルによる歪曲の無限の可能性をもたらし、相手の心に望ましい目標を達成する道を切り開いている。独裁国家(autocratic states)の主要な競争者は、自国の国民を支配するだけでは満足せず、「アルゴリズムによる増幅(algorithmic amplification)」によってソーシャル・メディアを「兵器化(weaponized)」し、西洋社会に対抗している[3]。ある専門家の言葉を借りれば、将来の戦争は「消耗の戦争ではなく認知の戦争(wars of attrition but wars of cognition)」となるだろう[4]。統合用兵コミュニティ(joint warfighting community)はこの課題を認識しているが、国家安全保障コミュニティは効果的な監視と対応能力を低下させている。

 

プロパガンダ

(Propaganda)

仮想社会戦

(Virtual Social Warfare)

政治戦

(Political Warfare)

偽情報戦役/偽情報戦

(Disinformation Campaign/Warfare)

情報戦

(Information Warfare)

次世代心理戦

(Next-Generation Psychological Operations)

転覆(社会的、政治的、サイバー的)

(Subversion(social, political, cyber))

影響力作戦

(Influence Operations)

悪意ある外国の情報活動

(Malign Foreign Information Activities)

ナラティブ戦

(Narrative Warfare)

図1. 情報戦の種類

歴史に目を向ける者にとって、意思決定者と非戦闘員の精神をめぐる争いは戦闘空間(battlespace)を拡大するものではないが、長年信じられてきた西洋の戦争についてのコンセプトを拡大、あるいは少なくとも挑戦するものとなる[5]。クラウゼヴィッツの言うように、暴力的なビジョンを植え付けられた人々は、このコンセプトを理解するのに苦労するだろう。プロイセンの賢人の信奉者たちは、戦争の本質(the essence of war)を物理的な暴力と捉え、戦争を意志の衝突と捉えたクラウゼヴィッツの描写や、人間の紛争(human conflict)における合理的要因と非合理的要因に関する議論を見落としている。

このように、「認知戦(Cognitive Warfare)」は、クラウゼヴィッツの思想を偏愛する読者にとっては、はるかにソフトなターゲット、すなわち人間の心を狙うという点で、逆風に吹かれる。このバイアスのため、「認知戦」は米軍体制内で受け入れられるまでに、厳しい戦いを強いられる。アメリカがキネティック作戦(kinetic operations)と消耗を好む傾向は、国防体制の戦略的文化に由来する。ハード・パワーへのこの重圧は、物理的な領域(physical realm)における打撃作戦を、より非従来型のアプローチ、特に人間のドメイン(human domain)に関わるものよりも重視する、従来のアメリカの戦略・軍事文化の一部である[6]。コリン・グレイ(Colin Gray)が以前から指摘しているように、米軍文化は徹底的に従来型で、火力中心、そして技術志向である[7]

本評価では、認知戦に関する文献と研究コミュニティにおける進行中の議論をレビューする。レビュー対象の学術研究は、人民解放軍(PLA)およびその他の国際的な情報源からの関連資料を詳細に提示する。次に、本論文は米国におけるこのテーマの報道について論じる。本分析は、この枠組みをさらに発展させるための簡潔な評価で締めくくられる。

認知戦の定義

認知戦においては、メッセージこそが兵器であり、ターゲットは特定の個人(例えば、エリート、影響力のある人物、政策立案者)あるいは民主主義国家の国民全体である。これらの個人の思考を歪めることは、彼らがどう考えるか、ひいては彼らがどう振舞うかを与える前兆現象(precursor)となる。

初期の提唱者であるフランス軍将校フランソワ・デュ・クルーゼル(Francois du Cluzel)は、認知戦を「多くの場合は人間のターゲットの認知を彼らの知らないうちに、また彼らの同意なしに変える技術を使う術(the art)」と定義した[8]。この初期のコンセプトは、認知戦をサイバー紛争の攻撃的な形態として強調したが、対抗手段と予防手段が必要であることを認識していた。デュ・クルーゼル(du Cluzel)は心理作戦と認知作戦を区別したが、この区別が有効であるか価値があるかは不明である。デュ・クルーゼル(du Cluzel)にとって、心理戦はターゲットの聴衆の考え方を変えようとするが、認知戦は彼らの推論方法と結果としての振舞い(behavior)を形成することを狙いとしている。この区別は、人間の認知が中心的目標である理由の核心にある。

認知戦争(Cognitive War)とは、 認知ドメイン(cognitive domain)で位置的優位性を獲得したり、望ましい政治的、軍事的、情報的成果を獲得したりするために、ターゲット国の民間および軍事の意思決定者または一般大衆に対して、ターゲットを絞ったカスタマイズされたメッセージと非暴力的な方法を適用することである。

認知戦自体は新しいものではないが、危機的状況における意思決定者や個人の考え方をターゲットとした活動の範囲と有効性を大幅に向上させる革新的な技術が数多く存在する。これを、ソーシャル・メディアを基盤とした影響力作戦と捉える者もいる[9]。これらの技術を組み合わせることで、「認知空間(cognitive space)を評価、アクセスし、影響を与える」ことができる[10]。競争者がシステムを重視し、我々と対峙し、欺瞞する一方で、西側諸国の軍隊はハードウェア、機動プラットフォーム(maneuver platforms)、そしてキネティック作戦(kinetic operations)に重点を置いている。

認知戦は、情報領域における適切な行動に焦点を当てた明確な勝利理論を捉えるために洗練させることができる。私の認知戦争(Cognitive War)の基本的な定義は、「認知ドメイン(cognitive domain)における位置的優位性を獲得するため、あるいは望ましい政治的、軍事的、情報的成果を得るために、ターゲット国の民間人および軍事的意思決定者、あるいは一般大衆に対して、ターゲットを定めてカスタマイズされたメッセージと非暴力的手段を適用すること」である。この定義は、ソーシャル・メディアを通じた民間人操作に焦点を当てる西洋の理論家の多くと一致している。このアプローチには限界があり、それについては後ほど説明する。

安全保障文献の現状

国際的な視点

このテーマについては、国際安全保障コミュニティ全体で数多くの研究論文が発表されている。NATOはデュ・クルーゼル(Du Cluzel)の研究成果を継続的に発展させている[11]。デュ・クルーゼル(Du Cluzel)はまた、神経科学の兵器化、ナノ技術、バイオ技術、遺伝子編集、コンピューター・サイエンス、情報技術、認知科学の潜在的な融合など、認知戦の重要性を高めるであろう一連の新技術を認識していた。彼の最新の研究は、認知戦を「サイバーツールを用いて敵の認知プロセスを改変し、精神的バイアスや反射的思考を悪用し、思考のバイアスを誘発し、意思決定に影響を与え、行動を妨害する、非従来型の戦いの形態(an unconventional form of warfare)であり、個人レベルと集団レベルの両方に悪影響を及ぼす」と定義している[12]

過去2年間、ヨーロッパとアジアでは、この形態の紛争への関心が急速に高まっている[13]。日本の軍関係者は人民解放軍の動向を綿密に追跡し、ウクライナにおけるロシアの取組みを分析し、情報活動の有効性を評価してきた[14]。彼らは、人民解放軍が「認知ドメイン作戦(Cognitive Domain Operations」」(後述)と呼ぶ作戦への関心は強く、高まっていると評価している。インドの軍事アナリストも、この問題に関する人民解放軍の報告書を評価している[15]

台湾はこの脅威を研究し、直面してきた。台湾の学者たちは、認知戦は中国共産党の「超限戦」戦略の一部であると誤解している。しかし、台湾の戦略家たちは、認知戦が情報の操作(information manipulation)、プロパガンダ、心理作戦を通じて人間の知覚、態度、意思決定をターゲットとし、戦略的目標の達成を狙うものであることを正しく認識している。台湾国防部(MND)は、認知戦を「対象者の意志を揺さぶり、思考を変えようとする取組みであり。心理的に、中国は精神的に混乱と混沌を引き起こし、戦意と自衛の決意を弱めようとしている」と表現している[16]。台湾国防部(MND)はまた、認知戦は「インテリジェンス戦(intelligence warfare)、心理戦(psychological warfare)、世論戦(public opinion warfare)という[分野(disciplines)]から生まれた」と評価している。台湾政府は、中国の明確なターゲットとして、中国のナラティブをそらすことをタスクとする研究センターを設立した[17]。この研究は、中国が台北に対して継続的な圧力をかけているにもかかわらず、あまり効果を上げていないと結論付けている[18]

中国と認知ドメイン作戦

米国の戦略・軍事文化とは対照的に、中国は認知ドメイン(cognitive domain)の存在を受け入れ、現代の戦い(contemporary warfare)に関する思考を拡大してきた。中国は認知空間(cognitive space)を将来の紛争においてますます中心的な位置づけと捉えている。「認知ドメイン(cognitive domain)は、陸、海、空、宇宙、電磁波、サイバーといった戦いのドメインに次ぐ新たな会戦のドメイン(battle domain)となるだろう」[19]。人民解放軍は数世代にわたり心理的衝突の重要性について議論してきたが、認知ドメイン(cognitive domain)に関する記述は2002年から始まり、2014年には急増した。初期の中国人著述家の中には、認知空間(cognitive space)を「全く新しい戦場(a brand-new battlefield)」と捉える斬新さを強調した者もいる[20] [21]

2017年にホー・フーチュー(He Fuchu)少将は「作戦圏(the sphere of operations)は物理的ドメインと情報ドメインから意識のドメイン(意识域)へと拡大され、人間の脳が新たな戦闘空間(combat space)となるだろう」と予測した[22]。そのため、将来の戦場で成功するには、「生物学的支配性(biological dominance)」(制生権)だけでなく、「精神的・認知的支配性(mental/cognitive dominance)」(制脳権)と「インテリジェンス支配性(intelligence dominance)」(制智権)を達成することが必要になる。

中国のアナリストたちは、技術の長期的な影響について深い歴史的視点から考察し、それぞれの産業革命が情報の範囲と影響力を拡大してきたと指摘している。第四次産業革命と呼ばれる現代では、AIや画像処理技術によって前時代のマルチメディアが拡張され、軍隊が敵を欺くために使用できるディープフェイクが作成されると言われている。ある中国の著者は、「技術の継続的な進化により、ますます多くのメディアが敵の思考、判断、認知に影響を与え、認知ドメイン戦闘(cognitive domain combat)の新たな形態を生み出すことができる」と述べている[23]

中国のアナリストたちは現代の紛争におけるこの側面を研究しており、政府はこのコンセプトを人民解放軍の優位性にどうつなげるかという研究を支援してきた。これは、戦わずして勝つことを「最高の兵法(the highest form of the art of warfare)」とする孫子の有名な格言と合致する。

多くの学者は、これが中国の戦略的文化の重要な特徴であり続けていると考えている。これが実効的なコンセプトであると考える根拠は、人民解放軍政治工作部の活動と「三戦(Three Warfares)」のコンセプトの普及に見ることができる[24]。これらには、1) 国内外の世論に影響を与える世論戦、2) 敵兵と民間人の士気を低下させる心理戦、3) 国際法と国内法の両方を通じて国際的な支持を得るための法律戦が含まれる。最後の要素だけが、多くの人が影響力作戦や認知戦と呼ぶものの範囲外である[25]

認知戦に関する中国の文献は、西洋における影響力作戦に関する研究と同様に散在している。このテーマに関する中国の著作は膨大であり、中国指導部がいかにこのテーマを重視し、関心を持っているかを示している[26]。最近の論文では、ソーシャル・メディアの戦場を通じた対決の価値が論じられている[27]。中国の心理戦部隊の研究者たちは、人民解放軍に対し、「ソーシャル・プラットフォームへのリアルタイム発信をターゲットとしたオンライン・プロパガンダ技術、ディープ・ラーニングなどの技術を用いた音声情報合成技術、ビッグ・データ分析を用いたネットユーザー(netizen)の感情傾向分析の研究を加速させる」よう求めている[28]

中国の研究者2人は、インテリジェンス作戦のもう一つの側面を「認知対決(cognitive confrontation)」(认知对抗)と定義した。これは、情報と認識において敵に対する決定的な優位性を獲得することを主な目標とする。彼らは、将来の作戦では「認知的主導性を握り、認知対決の速度と質に基づいて敵の認知(cognition)を損なったり妨害したりすること」で、敵の戦闘空間(battlespace)に対する知覚(perception)と理解を攻撃する必要があると予測している[29]。このような闘争は、陸、空、海といった物理的ドメインの支配を重視してきた従来の戦いのコンセプトに取って代わるだろう。これは、このコンセプトを単なるソーシャル・メディア操作から、米軍の計画担当者が懸念すべき作戦への応用へと拡張するものである。

中国はクラウゼヴィッツを熟読しており、人民解放軍のアナリストたちは「戦争は究極的には人間の意志の競争である。勝利の鍵は、自分の意志を相手に押し付ける能力である。認知ドメイン戦(cognitive domain warfare)は、人々の意志、精神、心理を対決の到達目標とし、自分の意志を強化し、敵の意志を弱める」ことを認識している[30]。彼らは、生成AIを含む現代の技術が「認知弾(cognitive ammunition)」で認知ドメインをターゲットにする能力を高めていることを認識している。ヤン・クンシェ(Yang Cunshe)は、認知干渉、混乱、阻止を通じて相手の戦場の霧を増大させ、相手が誤った判断や行動をとる可能性を高めることについて語っている。

中国人民解放軍は長年にわたり、政治心理的攻撃や転覆(subversion)を通じて相手の闘う意志(will to fight)を削ぐ手段として「敵を崩壊させる」ことを謳ってきた[31]。中国の研究者たちは、一般大衆だけでなく、主要な意思決定者に影響を与える方法の探求に関心を持っているようだ。彼らはまた、ソーシャル・メディアなどの情報システム以外にも、人間をターゲットとし、影響を与えるための様々な物理的な手段にも関心を持っている。

その証拠は、中国の軍事アナリストが認知ドメイン作戦(Cognitive Domain Operations)について書いた記事に見られる。この作戦は狭義に定義されており、軍の戦意を低下させ、摩擦と不確実性を生み出すことに重点を置いている。ある3人は次のように書いている。

認知ドメイン作戦(Cognitive Domain Operations)は、人間の脳を主な戦闘空間とし、恐怖、不安、疑念といった人間の心理的弱点を突破口として敵の戦闘意欲を打撃、弱体化、解体することに焦点を当て、ソフト・キル手法に焦点を当てて敵の中に不安、不確実性、不信感を作り出し、内部摩擦や意思決定への疑念を増大させる[32]

中国の一部の著述家は、米国の統合ドクトリンの執筆者と同様に、マルチドメイン作戦とジレンマ創出という観点から考察している。この点に関して、ある著者は敵の意思決定拠点、指揮・統制拠点、早期警戒システムを物理的に破壊することの必要性を認めている。しかし、彼はさらに、認知的形成、誘導、介入、そして統制を通じた「ソフト・キル(soft killing)」、すなわち認知ドメイン作戦を「ハード破壊(hard destruction)」の取組みに組み込むことで非対称的優位性を生み出すことの重要性を強調している[33]

中国の研究者の中には、新興のメタバースが認知ドメイン作戦(CDO)の一連のターゲットと成功率を大幅に拡大すると考えている者もいる[34]。また、心と精神、そして対象者の感情に影響を与えるという観点から論文を執筆する者もいる[35]。より 技術志向の研究者は、ブレイン・コンピュータ・インターフェース(BCI)による認知能力向上の可能性を見出している[36]。エルサ・カニア(Elsa Kania)の報告によると、中国人は現代の情報技術の活用だけに関心を持っているわけではない。彼らの研究プログラムには、脳科学、人間強化(human enhancement)、バイオ技術、そして神経科学の軍事応用などが含まれている[37]

中国当局は、認知科学と技術の応用が敵対者に対してのみ使用されるとは考えていない。彼らは、これらの技術を自らの人間のパフォーマンス向上にも活用することを構想している。中国共産党の主要な理論誌は次のように指摘している。

脳強化とは、ニューロフィードバック技術や電磁刺激技術などを用いて人間の認知機能を強化し、人員の軍事訓練の有効性を高め、戦闘能力を向上させることである。リアルタイム・ニューロフィードバック技術は、脳を訓練・再構築することで認知機能を向上させ、認知戦闘能力を向上させることができる[38]

ロシア版

ロシアの文献には、認知戦をそのような観点から論じたものはほとんどない。しかし、間接的な戦いの形態(indirect modes of warfare)はロシアの学術研究と実践において馴染み深いものであり、 冷戦期の「転覆戦争(Subversion Wars)」(ミャテジェヴォイナ)に関する著名な著作もその一つである[39]モスクワは、サイバー攻撃や偽情報戦役といったいわゆる「積極的手段(active measures)」に加え、限定的な強制手段も用いて、何世代にもわたって自国の利益を増進してきた[40]。ロシアのインテリジェンス機関(intelligence services)は、強制行動(coercive actions)や情報ツールを用いた戦役(campaigns)の立案(designing)と実施に精通している[41]。西側のアナリストは、ロシアの実践をプロパガンダ、情報作戦、偽情報など、様々な観点から分類する傾向がある[42]

モスクワの長年の慣行における最新の問題は、ソーシャル・メディアの悪用であり、これは戦闘空間(battlespace)の延長とみなされている[43]。欧州と米国における選挙介入(election interference)もこの戦略のもう一つの側面であるが、民主的自由を守りたいのであれば、これを阻止することが極めて重要である[44]

この用語は一般的ではないかもしれないが、認知効果の追求は明確である。プーチン大統領の顧問たちは、クレムリンによる影響力戦役(influence campaigns)を公然と自慢している。「外国の政治家たちは、ロシアが世界中の選挙や国民投票に干渉していると話す」とある顧問は述べた。「しかし、実際には事態はさらに深刻だ。ロシアはあなたの脳に干渉し、あなたの良心を変えてしまう。そして、あなたには何もできないのだ[45]」。専門家た​​ちは、ロシアの悪意ある影響力の手引書(malign influence playbook)に関する一般的な理解が不足していると警告している[46]

認知戦に最も近いコンセプトは、ロシアの「反射的統制(reflexive control)」のコンセプトである。これは、「エンティティの統制から統制されたシステムへ、望ましい決心を促す動機と根拠を伝えること」と定義される。「反射的統制(reflexive control)」の到達目標は、敵に不利な決心をすることを促すことである[47]。この定義は、重要な要件として、特定のターゲットに合わせて偽の情報を調整し、ターゲットの応答や反応に影響を与える必要があることを指摘している。「反射的統制(reflexive control)」は、敵対者の情報処理だけでなく、決心が行われる感情的、心理的、文化的枠組みなど、複数のベクトルを通して意思決定をターゲットとする。「反射的統制(reflexive control)」はロシアの議論の中で発展してきたようで、現在では知覚管理(perception management)に取って代わられている[48]

2010年には早くも、影響力のあるロシアの軍事評論家たちが西側諸国の軍事力の優位性に注目し、より非対称的なアプローチの必要性を強調し始めた[49]。この考えはその後の論文で展開され、軍の指揮・統制と国家行政を混乱させる上で情報対決(information confrontation)が重要な役割を果たすとされた[50]。彼らはさらに思考を拡張し、彼らが「戦争の初期段階(Initial Period of War :IPW)」と名付けた期間における非軍事攻撃の役割を強調した。彼らは、この期間が将来の戦争において決定的な意味を持つ可能性があり、軍事作戦と連携した破壊活動、挑発行為、情報作戦、心理攻撃が含まれると主張した[51]。彼らの評価では、「軍事、経済、IT手段と効果的な心理情報戦役(psychological information campaigns)を組み合わせる」ことで成功を収めることができるとも指摘されている[52]。これらの著者たちは後に、「優位性を獲得するための情報戦と心理戦」が支配的な「新しい」形態である新世代戦(New Generation Warfare :NGW)というコンセプトを提唱した[53]。ロシアの参謀総長ヴァレリー・ゲラシモフ(Valery Gerasimov)将軍は、将来の戦いに関する有名な講演の中でこの点についてさらに詳しく述べ、「政治的・戦略的到達目標を達成するための非軍事的手段の役割は拡大しており、多くの場合、その有効性は兵器の力を超えている」とまで述べている[54]

戦争研究研究所(Institute for the Study of War :ISW)は最近、ロシアの間接的な方法と認知戦との関連性について研究成果を発表した。この研究によると、「ロシアの認知戦の主たる目標は、敵対者の意思決定に影響を与え、我々の行動意欲を削ぐことである[55]」 。この研究は、ロシアの偽情報の取組み(disinformation efforts)の多様な形態を明らかにしている。クレムリンは、ソーシャル・メディアだけでなく、会議、国際的な枠組み、外交ルート、影響力のある個人など、あらゆる情報伝達プラットフォームを認知戦の手段として利用している。戦争研究研究所(ISW)のアナリストによると、ロシア版の認知戦は単なる情報発信にとどまらず、平時、危機、戦時における物理的な活動も含んでいる。これらの物理的な手段には、軍事演習、破壊工作、サイバー攻撃、戦闘作戦、そしてロシアの軍事力や戦況の誇張などが含まれる。

これは、ロシアの戦争の方法(Russian way of war)を専門とする研究者にとっては目新しいことではなかった[56]。理論と実践の両面において、ロシア人は西側諸国のほとんどよりも広範な戦争のコンセプトを採用している[57]。これには、政治指導者や一般大衆に対する転覆の形態(forms of subversion)、そして物理的・認知的手段と効果を組み合わせたその他の敵対的手段が含まれる[58]。中国人と同様に、ロシアの著述家たちは相手の戦闘序列の消耗よりも、敵対者の知覚(perception)と意志(will)をターゲットとすることに関心を寄せている。もちろん、伝統的な軍事手段も知覚(perception)と意志(will)に影響を与える可能性があるため、見落とされてはいない。最近の研究では、人工知能がロシアの偽情報の取組み(disinformation efforts)に及ぼす潜在的な影響が強調されている[59]

米合衆国

このテーマに関する米国の最も早期の著者は、戦略国際問題研究所(CSIS)のジェームズ・ルイス(James Lewis)である。ルイス(Lewis)は2018年にサイバー紛争に関する詳細な研究を行い、いわゆる「認知効果」の生成に焦点を当てた。ルイス(Lewis)は、将来の紛争における到達目標は「(砲弾や爆弾によって達成される)キネティックな効果ではなく、認知効果、つまり情報を操作することによって思考や振舞いを変えることである。戦略的到達目標は、士気、結束、政治的安定に影響を与え、最終的には相手の対抗しようとする意志(will to counteract)を減退させることである」と結論付けている[60]。彼の見解は、ロシアや人民解放軍の考え方とよく一致する。

米国のインテリジェンス・コミュニティもこの動向を注視している。国家情報長官は、2022年と2024年の年次脅威評価において、中国の文献が心理戦からが認知ドメイン作戦(CDO)へと進化していることを詳細に取り上げた。認知ドメイン作戦(CDO)とは、心理戦とサイバー作戦を組み合わせ、敵対者の振舞いと意思決定を形作る手法であると説明されている。また、人民解放軍がディープフェイクを含む合成メディアを生成するために、生成AIを活用していることも指摘されている[61]

RAND研究所のアナリストたちは、中国がシステムと情報対決(information confrontation)にますます関心を寄せていることを指摘している[62]。RAND研究所の研究者であるネイサン・ボーチャンプ=ムスタファガ(Nathan Beauchamp-Mustafaga)は、人民解放軍の認知ドメイン作戦(Cognitive Domain Operations)の発展について広範囲に研究している[63]

中国軍が認知戦に強い関心を示しているように見える一方で、アメリカの専門軍事雑誌は比較的静かだ。しかし、専門誌への記事掲載は少ない。ある二人の海兵隊士官は、認知ドメイン作戦(CDO)が人間の意志(そしておそらく心理的混乱)を重視する機動戦(Maneuver Warfare)とどのように結びついているかについて論じ、「米国は認知戦(CW)へのアプローチを、攻撃面だけでなく防御面でも発展させなければならない」と主張した[64]

比較的最近の論文では、認知戦を戦いの閾値以下の行動、いわゆる「グレー・ゾーン(gray zone)」と結びつけている[65]。これは、中国とロシアの出版物を非常に限定的にしか読んでいないことに起因していると思われる。この論文における統合ドクトリン批判は注目に値するが、統合用兵コミュニティ(the Joint warfighting community)の即応性を強化するための一連の提言も注目に値する。このテーマは、本誌の読者にとって全く未知のものではない[66]

評価

このテーマには多種多様な定義があり、認知科学や神経科学を含む関連する技術の本質によってその複雑さはさらに増している。さらに、グレー・ゾーン戦術や影響力作戦といったより広範なコンセプトとの曖昧な関連性によって、このテーマはさらに複雑になっている。文献は散在しており、検討されている戦術や技術に関する証拠は限られている。

認知戦は、認知ドメインの発展を促進し、統合参謀本部議長が提唱する「認知効果を最大限に引き出す」のに役立つコンセプトと捉えることができる[67]。競争の激しい分野に新しい用語を導入することには多少の懸念があるものの、「認知」という用語は「情報」や「影響力」といった広義の用語よりも優れている。心理学は広範な分野であり、認知(cognition)は対象を主要な特徴に絞り込む。それはターゲットと望ましい効果に注意を向けさせる。私は「戦い(warfare)」という呼称にはあまり魅力を感じておらず、中国語の用語の方が適していると考えている。

認知戦の遂行によって期待される効果の一部は、過小評価されている「転覆(subversion)」というコンセプトの一部として捉えられる可能性があると議論の余地がある[68]。一部の学者は、我々はアルゴリズムを駆使したプロパガンダと超能力による転覆(subversion)の時代に突入したと考えている[69]。これは有効な用語だが、米軍用語では伝統的に用いられていない。約20年前のRAND研究所の調査では、この用語はせいぜい曖昧であると結論付けられた[70]。過去20年間、用語の急増を考えると、この用語は明確になってはいない。

「認知」という用語は、情報や影響力などの広い用語よりも優れている。

この分野の学者たちは、認知戦を転覆の一形態(a form of subversion)として論じてきた。このコンセプトを非軍事的勢力による非軍事的ターゲットに限定するならば、この見解は妥当だろう。しかし、人民解放軍とロシア軍による文献や取組みは、この点において異論を唱え、情報転覆(informational subversion)以上のものが関与していることを示唆している。

転覆(subversion)は、西側諸国で理解​​されているような、戦時における従来型の部隊に対する補完的あるいは構成要素とは伝統的に考えられていない。中国とロシアは、戦時においても心理的・認知的効果を利用し、軍の意思決定と戦闘効率をターゲットにしようとしていることは明らかである。軍組織とその指導者も同様にターゲットとなると予想すべきである。つまり、戦時において国家安全保障指導者や軍司令官とその幕僚に対して認知的対決を用いることは、転覆(subversion)とは相容れない。

もし米国の敵対者が国内の聴衆を操作することだけを指向しているのであれば、これを「戦い(warfare)」の一形態と分類することは問題を過度に軍事化し、問題への最善の解決策の探求を歪めているという強い主張が成り立つだろう。しかし、中国とロシアは諜報活動と軍事力の両方を活用し、政治・軍事指揮系統をターゲットにしようとしているため、転覆(subversion)よりも認知戦の方がより深く検討されるべきであるように思われる。

分析枠組み

このコンセプトの発展を促進するためには、認知ドメインの範囲と、そのドメインにおける機動(maneuver)/対決(confrontation)の適用可能性を説明する分析枠組​​みが必要となる。認知戦の潜在的可能性、特にその攻撃的活用と適切な防御的対抗手段を把握するために、多様な視点と論者を包含する、より広範な分析枠組みが考案された。この枠組みは、このコンセプトとその適用の潜在的な規模と射程範囲を定義するのに役立つ。図2は、議論を促すための最初の図解である。

この枠組みは、攻撃と防御の両方の貢献を包含する、より広範かつ包括的な認知戦のコンセプトを描いている。このマトリックスは、個人から集団に至るまで、ターゲットの連続体を横軸に沿って示している。縦軸は、人間の認知(human cognition)を低下させる行動と技術(マトリックスの下半分全体)と、個人の意思決定を強化するもの(左上)、そして社会的結束力(social cohesions)と復元性(resilience)を高めることで認知戦に対抗するもの(右上象限)を区別している。この縦の連続体において、政治的意思決定プロセスと軍事指揮はマトリックスの中央に位置している。

図2. 認知戦/認知ドメイン作戦(CDO)の分析枠組み

文献レビューに見られるように、研究の大部分は認知能力の低下、特にターゲットとする社会に対するソーシャル・メディア操作(右下象限)に焦点を当てている。人民解放軍の著者の大多数はマトリクスの下半分に位置し、高度で大規模な競争者に対して情報対決(information confrontation)を効果的に適用する必要があると予測されていることを強調している。しかし、彼らは人間のパフォーマンス向上や市民社会の強化についても論じている。全体として、中国の軍事研究者はソーシャル・メディア操作に注目する西側諸国のアナリストとは対照的に、すべての象限に触れている。

最も興味深い象限は個人ブロックであり、これは将来の指導者が戦役をデザインおよび実施し、敵対者の認知ドメイン戦役(Cognitive Domain campaigns)を検出して逸らすことができるようにどのように準備するかを扱うものである。この象限では、機械学習とさまざまな種類のブレイン・コンピュータ・インターフェース(BCI)を通じて、神経科学とAI対応エージェントを応用し、軍の指揮官と参謀の認知機能を強化することを想定できる[71]。ブレイン・コンピュータ・インターフェース(BCI)技術には、意思決定者と戦闘要員(warfighting operators)が状況の文脈を理解し、タイムリーな意思決定を行う能力を拡張する可能性のある進歩がある[72]。米国防高等研究計画局(DARPA)は、SCEPTER(Strategic Chaos Engine for Planning, Tactics, Experimentation and Resiliency:計画策定、戦術、実験、復元性のための戦略的カオス・エンジン)研究を通じて人間の認知(human cognition)を強化する方法を調べるプロジェクトに資金を提供している[73]。マトリックスのこの部分には、強化された意思決定強化を対象とする投資と、神経兵器(neurological weapons)や技術を阻止するための防御策が表されている。この作業の法的、道徳的、倫理的枠組みをまず確立する必要がある。

AIと神経科学の融合した役割は指揮・統制に影響を与え、敵対者の認知ドメイン作戦(CDO)を検出して逸らす能力も含まれるようになるはずだ[74]

改訂された定義

この枠組みを受け入れるには、認知戦の定義に若干の修正が必要となる。認知戦の範囲には、ターゲットを操作したり貶めたりするだけでなく、個人レベルと集団レベルの両方で認知的優位性を築き、獲得するための取組み、そして認知ドメイン作戦(cognitive domain operations)の検知と防御も組み込む必要がある。

このことから、私の当初の定義は次のように修正される。 「情報環境における位置的優位性を獲得し、特定の政治目標を達成するために、情報科学と認知科学を応用し、政治・軍事指導者、そして民間社会の意思決定プロセスとその結果としての振舞いを強化または低下させること」。これは簡潔な最初の試みであり、今後精緻化していくことができる。最終的な答えではないが、攻撃と防御、あるいは強化と低下の連続性を他のものよりも的確に捉えている。

情報作戦の見直し

このコンセプトを推進することは、情報戦(information warfare)における既存の用語の氾濫という困難な戦い(an uphill battle)に直面することになるだろう。既存の統合情報作戦分類法に基づいて認知ドメイン作戦(Cognitive Domain Operations :CDO)を位置づけるコンセプト図(conceptual schema)を図3に示す。この提案図には、いくつかの適応が組み込まれている。これは、作戦上のセキュリティと欺瞞を健全な作戦計画策定に内在するものとして意図的に除外している。国内外の聴衆に向けたメディアの関与を​​含めることも検討できるだろう。認知ドメイン作戦(CDO)と軍事的情報支援作戦(MISO)のインターフェースについては、分担に関してさらなる研究が必要である。統合ドクトリンへの認知ドメイン作戦(CDO)の組み込みは、軍による認知ドメイン作戦(CDO)の使用または防御にのみ関係するものであり、国内の状況への適用を示唆するものではない。

図3. 情報作戦と認知ドメイン作戦の関係

明日の認知的対決

紛争における物理的力(physical forces)と道徳的力(moral forces)の収束は、今世紀も続くだろう。神経科学、脳科学、計算技術、AIを活用したモデルの進歩は戦略環境を変えており、紛争の捉え方や準備の仕方も変えるべきである。これらの進歩は、競争者の「外国の敵対者が認知操作を用いて利用できる攻撃対象領域(attack surface)を拡大する」能力を高めた[75]。汎用人工知能(artificial general intelligence :AGI)と機械学習の技術進歩がより実用化されるにつれて、低コストだが影響力の大きい形態の影響力を用いて大規模な混乱を引き起こすことができるようになる。短期的には、実物と製造された製品を区別することは、不可能ではないにしても、より困難になるだろう。このように、人間の振舞いや意思決定に変化をもたらすための物理的手段と認知的手段の調整は、認知科学と神経科学の進歩とともに加速するだろう。汎用人工知能(AGI)の最終的な開発は、認知戦における最悪の事態を引き起こす可能性を秘めている。2022年に行われた親中国的な影響力作戦では、AI技術を用いてAIが生成した架空の「人物(people)」をニュースキャスターとして起用した動画コンテンツが利用された。今後、競争者はAI技術の実験を続け、より説得力のある、検知や検証が困難なメディアを制作していくだろう[76]

一部の国は、これらの技術が自由で開かれた西側社会において分裂を煽り、国民の支持を弱めるのに特に適していると考えるだろう。生成AIの継続的な進歩は、間違いなくディープフェイクの蔓延を促進するだろう[77]

ロシアや中国などの権威主義国家がこれらの技術を活用するにつれ、影響力作戦や認知作戦をめぐる世界的競争は激化していくだろう。研究によれば、ロシアと中国による外国の情報操作(information manipulation)と干渉作戦(interference operations)には、手法にはばらつきがあるものの、ナラティブは一致していることが明らかになっている[78]。ベテランのインテリジェンスの専門家は、米国が認知的優位性をめぐる戦いに負けつつあると考えている[79]。しかし、米国政府は外国の悪意ある情報の取組みを阻止するために設立されたインテリジェンス機関や法執行機関を閉鎖した[80]。この課題を客観的に評価すると、誤った方向に進んでおり、再考する必要があることが示唆される。権威主義的影響力作戦に対処するための、認知戦を含む戦略を開発する必要がある[81]。我々の特殊作戦要員(special operations personnel)は、サイバーおよび情報の専門家と相まって、この分野に多くの貢献をしている[82]。コンセプト的な課題を受け入れ、能力に対処することが、この拡大するギャップを逆転させる第一歩である。

結論

情報戦は紛争において長い歴史的基盤を持っている。このコンセプトは、戦争の根本的本質と、その重要な要素である人間の意志に関する理解と結びついている。新たな技術と手法は、情報や信念を操作して意志とその根底にある信念に影響を与える方法を変え、今日の戦争の進化する性質に変化をもたらしている。これらの技術はまた、重要な意思決定プロセスを強化または低下させ、人間の専門知識がもたらす重要な貢献に影響を与える可能性がある。

何と呼ぶにせよ、この分野における敵対者を無視することは国家を危険にさらす。米国は現在、情報空間(information space)への侵入に対抗する準備が不十分であり、この問題を認識し、より包括的な対抗策を考案するまでは、この状況は続くだろう。認知ドメインにおける機会と脆弱性を掌握することは、21世紀における戦略的成功にとってますます重要となるだろう 。

ノート

[1] 例えば、国家情報長官室にはかつて、外部からの民主主義と米国の国益への脅威を軽減することに焦点を当てた外国悪意ある影響センターが設置されていた。

[2] マイケル・J・マザール(Michael J. Mazarr)、ライアン・バウアー(Ryan Bauer)、アビゲイル・ケイシー(Abigail Casey)、サラ・ハインツ(Sarah Heintz)、ルーク・J・マシューズ(Luke J. Matthews)共著「仮想社会戦の新たなリスク:変化する情報環境における社会的操作」(サンタモニカ、カリフォルニア州:RAND、2019年);エリーナ・トレイガー(Elina Treyger)、ジョー・チェラヴィッチ(Joe Cheravitch)、ラファエル・コーエン(Raphael Cohen)共著「ソーシャル・メディアにおけるロシアの偽情報の取組み(disinformation efforts)」(サンタモニカ、カリフォルニア州:RAND、2022年);ネイサン・ビューアチャンプ=ムスタファガ(Nathan Beuachamp-Mustafaga)共著「中国の次世代心理戦:新興技術の軍事応用と米国への影響」(サンタモニカ、カリフォルニア州:RAND、2023年6月)。

[3] マシュー・イングラム(Matthew Ingram)著「アルゴリズムによる偽情報の増幅に対して私たちは何をすべきか?」コロンビア・ジャーナリズム・レビュー、2021年3月11日、https://www.cjr.org/the_media_today/what-should-we-do-about-the-algorithmic-amplification-of-disinformation.php

[4] ジェームズ・ジョルダーノ(James Giordano)著「神経科学は戦争の将来か?」ディフェンスIQ 、2019年4月17日、https://www.defenceiq.com/defence-technology/articles/neuroscience-and-future-warfare-1

[5] 紛争におけるソーシャル・メディアの兵器化については、ピーター・シンガー(Peter Singer)とエマーソン・T・ブルッキング(Emerson T. Brooking)著「「いいね!」戦争兵器化するソーシャルメディア(LikeWar: The Weaponization of Social Media(ニューヨーク:ホートン・ミフリン・ハーコート、2018年)、デビッド・パトリカラコス(David Patrikarakos)著「140文字の戦争:21世紀の社会メディアが紛争をどのように再形成しているか(War in 140 Characters, How Social Media is Reshaping Conflict in the Twenty-F​​irst Century」(ニューヨーク:ベーシックブックス、2017年)に最もよくまとめられている。

[6] 特筆すべき例外としては、トッド・シュミット(Todd Schmidt)著「戦争の欠落領域:明日の戦場で認知的優位を達成する」現代戦争研究所、2020年4月7日、https://mwi.westpoint.edu/missing-domain-war-achieving-cognitive-overmatch-tomorrows-battlefield/を参照。

[7] コリン・グレイ(Colin Gray)著「非正規の敵と戦略の本質:アメリカの戦争方法は適応できるか?」戦略研究所、カーライル兵舎、ペンシルバニア州、2014年。

[8] フランソワ・デュ・クルーゼル(François du Cluzel)著「認知戦:脳をめぐる戦い」NATO連合軍変革司令部、バージニア州ノーフォーク、2018年。

[9] アンドリュー・ラディン(Andrew Radin)著「サイバー対応のソーシャル・メディアベースの影響力作戦」(サンタモニカ、カリフォルニア州:RAND、2024年)、https://www.rand.org/pubs/research_reports/RRA2679-1.html

[10] ロバート・“ジェイク”・ベッバー(Robert “Jake” Bebber)著「認知的競争、紛争、戦争:存在論的アプローチ」、ハドソン研究所、2024年、12ページ。

[11] ベルナール・クラヴェリー(Bernard Claverie)とフランソワ・デュ・クルーゼル(François du Cluzel)著「認知戦のコンセプト」、NATOイノベーションハブ(2020年)、https://www.innovationhub-act.org/sites/default/files/2022-02/CW%20article%20Claverie%20du%20Cluzel%20final_0.pdf

[12] ベルナール・クラヴェリー(Bernard Claverie)とフランソワ・デュ・クルーゼル(François du Cluzel)著 「認知戦」: 戦争分野における「認知」コンセプトの到来」、ベルナール・クラヴェリー(Bernard Claverie)、バティスト・プレボ(Baptiste Prébot)、ノルボウ・ブクラー(Norbou Buchler)、フランソワ・デュ・クルーゼル(François du Cluzel)編、「認知戦:認知支配の将来」、NATO 協力支援室、2022年、2–1。

[13] 研究の幅広さについては、以下を参照。オルガ・キリアック(Olga Chiriac)著「認知科学の軍事応用:認知戦、知覚と知覚のミスの問題」、国際科学会議、戦略 XXI ブカレスト(2022)、474-484頁。ジャン=マルク・リックリ(Jean-Marc Rickli)、フェデリコ・マンテラッシ(Federico Mantellassi)、グウィン・グラッサー(Gwyn Glasser)著「心の平安:21世紀における認知戦と転覆のガバナンス」、ジュネーブ安全保障政策センター、政策概要第9号、 2023年8月。ジャン・ローグロワ=ベルトロ(Jean Lauglois-Berthelot)とディディエ・バザルゲット(Didier Bazalgette)著「中国軍の認知戦:次の作戦方向への課題」、2023年、https://hal.science/hal-04253095v1。アイリーン・プジョル・チカ(Irene Pujol Chica)とクイン・ディン・ダ・スアン(Quynh Dinh Da Xuan)著「心の戦い:認知戦とその実現技術の理解と対処」、IEガバナンス・オブ・チェンジセンター、2024年4月、https://static.ie.edu/CGC/CGC_TheBattleofTheMind_2024.pdf

[14] 高木耕一郎(Koichiro Takagi)著「新技術、新コンセプト:中国のAIと認知戦計画」、War on the Rocks、2022年4月13日;高木耕一郎(Koichiro Takagi)著「中国の認知戦の将来:ウクライナ戦争からの教訓」、War on the Rocks、2022年7月22日;西川太郎(Taro Nishikawa)著心は戦場:日本の認知戦に関する安全保障政策からの教訓」、49Security、2023年2月22日、https://fourninesecurity.de/en/authors/taro-nishikawa

[15] プラスン・K・セングプタ(Prasun K. Sengupta)著「すべては心の中に:中国は実際の対立を必要とせずに認識やナラティブを支配するための青写真を開発した」、フォース・インディア、オンライン、2025年4月25日、https://forceindia.net/feature-report/all-in-the-mind/

[16] ジェレミー(エン・ミン)チェン(Jeremy (Yen-ming) Chen)中華民国海軍司令官「認知戦における台湾の課題と米台関係への影響」「インド太平洋問題ジャーナル」(2025年春号):89-102ページ。

[17] チェン・リーチュン(Chien Li-chung)、ジェイソン・パン(Jason Pan)「認知戦に対抗するための研究センターを設立」台北タイムズ、2024年1月19日、 https://www.taipeitimes.com/News/front/archives/2024/01/19/2003812310

[18] ツ・チエ・ホン(Tzu-Chieh Hung)、ツーウェイ・ホン(Tzu-Wei Hung)著「中国の認知戦の仕組み:台湾の反偽情報戦争の最前線からの視点」「グローバル安全保障研究」第7巻第4号(2022年12月):1-18。

[19] ヤン・ウェンジョー(Yang Wenzhe)著 「何が変更され、何が変更されていないのかを分析することで、インテリジェント化された戦争に勝つ方法」 (与不 智能化争制之道 ) Jiefangjun Bao、2019年10月22日。

[20] 人民解放軍(PLA)の著作の詳細な分析は、ジョシュ・バウマン(Josh Baughman)著「人民解放軍が心と技術の結びつきで認知戦場を形成する」ニコラス・ライト(Nicholas Wright)、マイケル・ミカラウシック(Michael Mikalaucic)、トッド・ヴィージー(Todd Veazie)編「人間、機械、戦争 心と技術の結びつきが将来の戦争にどう勝つか」(マクスウェル、アラバマ州:エア大学出版、2025年3月)に記載されている。

[21] Wang Honyou [汪洪友]、「Fight Cross-Domain 非対称戦」、[打好跨域非对称作战]、人民解放軍日報、2019年8月29日、http://www.81.cn/jfjbmap/content/2019-08/29/content_242008.htm

[22] ホー・フーチュー(He Fuchu)、「軍事問題における新世界革命の将来の方向性」[世界新军事革命将来走向]、 参考ニュース、2017年8月24日、https://web.archive.org/web/20190823210313/で入手可能http://www.xinhuanet.com/politics/2017-08/24/c_129687890.htm。この情報源を特定してくれた Elsa Kania に感謝する。

[23] グオ・ユンフェイ(Guo Yunfei)著「認知戦は脳制御をめぐる戦闘の時代に入った」求是雑誌、2020年6月2日。http ://www.qstheory.cn/llwx/2020-06/02/c_1126063647.htm

[24] サンクク・リー(Sangkuk Lee)著「中国の「三戦」:起源、応用、組織」「戦略研究ジャーナル」 37巻2号(2014年):198-221頁;ステファン・ハルパー(Stefan Halper)著「中国:三戦」ワシントンD.C.:国防総省、2013年。

[25] ピーター・マティス(Peter Mattis)著「中国の三戦の展望」、War on the Rocks、2018年1月30日。

[26] 認知戦またはが認知ドメイン作戦(CDO)に関する中国語の解説のサンプルについては、リー・ミンハイ(Li Minghai)の「認知ドメインが主戦場になりつつある」 (认知領域正成は将来智能化混合战争主战场) 環球時報を参照してください。2022年3月16日、https://opinion.huanqiu.com/article/47DoZ45dMzV; スン・チヨウ(Sun Zhiyou)およびスン・ハイタオ(Sun Haitao)著「認知ドメイン操作で勝利する方法の探索」[探寻认知域作战制胜之道] PLA Daily 2022年9月1日、http://www.81.cn/jfjbmap/content/2022- 09/01/content_323230.htm。 チャン・グアンション(Zhang Guangsheng)、リ・ヨングリ(Li Yongli)、ワン・ハオシュエン(Wang Haoxian)著「認知ドメイン操作の基本の簡単な分析」、[浅分析认知領域作品战の基本要义] PLA Daily 2022年9月8日、  http://www.81.cn/jfjbmap/content/2022-09/08/content_ 323692.htm ; Liu Haijiang、「認知ドメイン操作の研究を正確に深化させる鍵」、[ハンドル深化认知領域作战研究的关键]、人民解放軍日報、2023年4月25日。 Li Xiaoyang、「インテリジェント コミュニケーション: 認知ドメイン操作の重要な分野」[智能传播:认知領域作战的重要场領域]、人民解放軍日報、2023年4月18日。 Huang Yanlong、Wu Qiong、Jiang Rile、「Intelligent Algorithms: A Decisive Weapon in Cognitive Domain Operations」([智能算法:认知域作战的制胜利器)]、人民解放軍日報、2023年3月21日。http://www.81.cn/jfjbmap/content/2023-03/21/ content_ 335982.htm

[27] Duan Wenling と Liu Jiali、「ソーシャル メディア戦場における認知的対立」[社交メディア战场上の认知对抗PLA Daily、2023年2月2日、http://www.mod.gov.cn/gfbw/jmsd/4931739.html

[28] リウ・ホイイェン(Liu Huiyan)、ション・ウー(Xiong Wu)、ウー・シエンリャン(Wu Xianliang)、およびメイ・シュンリャン(Mei Shunliang)著「オムニメディア環境のための認知ドメイン操作機器の構築の促進に関するいくつかの考え」[「全メディア环境下推进认知域作战装备公開展的几点思考」]、National Defense Technology [国防科技] 39、no. 5(2018年10月)。ウィリアム・マルチェリーノ(William Marcellino)、ネイサン・ボーチャンプ=ムスタファガ(Nathan Beauchamp-Mustafaga)、アマンダ・ケリガン(Amanda Kerrigan)、レフ・ナヴァール・チャオ(Lev Navarre Chao)、ジャクソン・スミス(Jackson Smith)著「生成AI台頭とソーシャル・メディア操作3.0時代の到来(The Rise of Generative AI and the Coming Era of Social Media Manipulation 3.0)」(カリフォルニア州サンタモニカ:RAND、2023年9月)、16で引用。

[29] ブレント・イーストウッド(Brent Eastwood)著「よりスマートな戦場?:人民解放軍の「インテリジェント作戦」構想が具体化し始める(A Smarter Battlefield?: PLA Concepts for ‘Intelligent Operations’ Begin to Take Shape)」 ジェームズタウン財団、2019年2月15日。

[30] ヤン・クンシェ(Yang Cunshe)著「準認知ドメイン戦闘、認知ドメイン作戦の特徴と発展傾向の探求」軍事フォーラム、2022年8月16日。http://www.81.cn/jfjbmap/content/ 2022-08/16/content_322064.htm。 PLAアナリストが生成AIの影響をどのように見ているかについては、チェン・ドンホン(Chen Dongheng)とシュ・イエン(Xu Yan)著「Generative AI: A New Weapon for Cognitive Confrontation」[生成式AI: 认知对抗的新兵器]、PLA Daily、2023年4月4日を参照。チャン・グアンション(Zhang Guangsheng)とティエン・リン(Tian Ling)著「生成式AIがどう影響响将来战争」、「生成式AIがどう影響响将来战争」、人民解放軍日報、2023年4月18日。

[31] ジャクリーン・N・ディール「敵の崩壊:人民解放軍の情報メッセージ」「パラメータ」第50巻第3号(2020年秋):5-16頁;エヴァン・モンゴメリーとトシ・ヨシハラ「他の手段による台湾征服:中国の拡大する強制的選択肢」「ワシントン・クォータリー」第48巻第1号(2025年):143-163頁。

[32] チャン・グアンション(Zhang Guangsheng)、リ・ヨングリ(Li Yongli)、およびワン・ハオシュエン(Wang Haoxian)、「認知ドメイン作戦の基本の簡単な分析」、[浅析认知領域作战の基本要义]、人民解放軍日報、2022年9月8日、  http://www.81.cn/jfjbmap/content/2022-09/08/content_ 323692.htm

[33]  ヤン・ロンシー(Yang Longxi)著「将来の戦争を目指し、認知的「五仗」を戦う」(「瞄準将来战争打好」」)人民解放軍日報、2022年8月23日。  http://www.81.cn/jfjbmap/content/2022-08/23/content_322554.htm

[34] チェン・ドンヘン(Chen Dongheng)、ザイ・チャン(Zhai Chan)、フォン・ヤールー(Feng Yaru)著「メタバース:将来の認知戦の新たな高地」人民解放軍報、2022年3月3日、http://www.81.cn/jfjbmap/content/2022-03/03/content_310602.htm

[35] チャン・チーウェイ(Zhang Zhiwei)著「インテリジェンスの観点から見た認知ドメイン操作: 感情的葛藤が認知ドメイン操作の顕著な属性になる」[智能化視阈下の认知領域作战:情感冲突成為认知領域作战突出属性] PLA Daily、2022年12月8日。

[36] リー・ユエ(Li Yue)、リュウ・ガン(Liu Gang)著「脳コンピュータインターフェース技術は新たな進歩を遂げた」、[脑机接口技术又有新进展]、国防部ネットワーク、2023年8月8日、http://www.81.cn/szb_223187/szbxq/index.html?paperName=jfjb&paperDate=2023-08-18&paperNumber=11&articleid=912797、Josh Baugham、252に引用;スタッフ、「脳コンピュータインターフェース技術は中国で急速に進化し、新たな質の高い生産力を形成すると予想される」、Global Times、2024年3月14日、https://www.globaltimes.cn/page/202403/1308834.shtml

[37] エルサ・B・カニア(Elsa B. Kania)著「Minds at War: China’s Pursuit of Military Advantage through Cognitive Science and Biotechnology」、 PRISM 8巻3号(2018年):83-101。

[38] 「認知ドメイン戦争は脳支配をめぐる闘争の時代に入った」「求是」誌、 2020年6月2日、https://chinascope.org/archives/32555

[39] メスナー(Messner)の転覆戦争(Subversion War)のコンセプトについては、オフェル・フリードマン(Ofer Fridman)著「ロシアの「ハイブリッド戦」:復活と政治化」(ロンドン:ハースト、2018年)、57-73ページを参照。

[40] アメリカ国内でのロシアの活動の証拠については、クリント・ワッツ(Clint Watts)著「偽情報:ロシアの積極的手段と影響力戦役の入門書」上院情報特別委員会向け声明(2017年3月30日)を参照。https : //www.intelligence.senate.gov/sites/default/files/documents/os-cwatts-033017.pdf、トーマス・リッド(Thomas Rid)著「偽情報:ロシアの積極的措置と影響力戦役入門」、米国上院情報特別委員会公聴会、2017年3月30日。また、米国務省「 クレムリンが資金提供するメディア:ロシアの偽情報・プロパガンダ・エコシステムにおけるRTとスプートニクの役割」特別報告書(ワシントンD.C.:グローバル・エンゲージメント・センター、2022年1月)  https://www.state.gov/report-rt-and-sputniks-role-in-russias-disinformation-and-propaganda-ecosystemも参照。

[41] ロシアの偽情報の取組み(disinformation efforts)に関する文献は豊富である。ティモシー・トーマス(Timothy Thomas)著「ロシアの情報戦戦略:国家は将来の紛争に対処できるか?」Journal of Slavic Military Studies 27, no. 1 (2014): 101–30; キール・ジャイルズ(Keir Giles)他著「ロシアの挑戦」(ロンドン:チャタムハウスレポート、2015年6月); Martin KraghとSebastian Asberg著「ロシアの広報外交と積極的手段による影響力戦略:スウェーデンの事例」Journal of Strategic Studies 40, no. 6 (2017): 773–816を参照。ロシアの手法に関する包括的な研究については、トーマス・リド(Thomas Rid)著「積極的手段偽情報と政治戦の秘密の歴史」(ニューヨーク:Farrar, Strauss & Giroux、2020年)を参照。

[42] クリストファー・ポール(Christopher Paul)、ミリアム・マシューズ(Miriam Matthews)著  「ロシアの虚偽の消防ホースプロパガンダモデル」  (サンタモニカ、カリフォルニア州:RAND 2016)、  https://www.rand.org/pubs/perspectives/PE198.htm;キール・ジャイルズ(Keir Giles)著「ロシアのサイバー情報戦の実践」、チャタム・ハウス、2023年12月14日、https://www.chathamhouse.org/2023/12/russian-cyber-and-information-warfare-practice

[43] 米軍からの有益な洞察については、T.Sアレン(T. S. Allen)とA.Jムーア(A. J. Moore)著「犠牲のない勝利:ロシアの情報作戦」、パラメータ48、第1号(2018年春)、59-71ページ、ブッディカ・B・ジャヤマハー(Buddhika B. Jayamahaa)とジャハラ・マティセク(Jahara Matisek)著「ソーシャル・メディアの戦士:新たな戦闘空間を活用する」、パラメータ48、第4号(2018-2019年冬)、11-23ページを参照。

[44] オリバー・バックス(Oliver Backes)とアンドリュー・スワブ(Andrew Swab)著「認知戦:バルト諸国における選挙の完全性に対するロシアの脅威」、ベルファー科学国際問題センター、2019年11月;米国上院情報特別委員会の報告書、2016年米国選挙におけるロシアの積極的措置戦役と干渉について、ワシントンD.C.(2020年)、http://www.intelligence.senate.gov/sites/default/files/documents/report_volume5.pdf

[45] ウラジスラフ・スルコフ(Vladislav Surkov)は、ヘザー・コンリー(Heather Conley)他著「プレイブック2:イネーブラー」戦略国際問題研究所(2019年)第1巻第3号で引用されている。

[46] ヘザー・コンリー(Heather Conley)、ジェームズ・ミンツ(James Minz)、ルスラン・ステファノフ(Ruslan Stefanov)、マルティム・ウラジミロフ(Martim Vladimirov)著「クレムリンのプレイブック:  中央・東ヨーロッパにおけるロシアの影響を理解する」、戦略国際問題研究所(2016年10月13日)。

[47] 反射的統制の評価については、ティモシー・L・トーマス(Timothy L. Thomas)著「ロシアの反射的統制理論と軍隊」  「スラヴ軍事研究ジャーナル」  17(2004年):237-256を参照。また、ティモシー・L・トーマス(Timothy L. Thomas)著「ロシアの軍事思想:コンセプトと要素」マクリーン、バージニア州:MITRE、2019年8月、https://www.mitre.org/sites/default/files/2021-11/prs-19-1004-russian-military-thought-concepts-elements.pdfで更新

[48] 反射的統制(reflexive control)の進化に関する洞察については、キール・ジャイルズ(Keir Giles)、ジェームズ・シェール(James Sherr)、アンソニー・シーボイヤー(Anthony Seaboyer)著「ロシアの反射的統制(Russian Reflexive Control)」(カナダ王立軍事大学、2018年10月、5ページ)を参照。

[49] このセクションは、以下のセクションについてティム・トーマス(Timothy Thomas)の研究に大きく依存している。ティモシー・トーマス(Timothy Thomas)著「チェキノフ=ボグダノフ論評 2010-2017: ロシアの新しい戦争方法について彼らは何を教えてくれたのか?」、バージニア州マクリーン、マイターコーポレーション、2020年11月を参照。

[50] S.Gチェキノフ(S. G. Chekinov)とS.Aボグダノフ(S. A. Bogdanov)著「ロシアの軍事的安全保障を維持するための非対称行動」、軍事思想誌第 3号(2010年)、6頁;S.Gチェキノフ(S. G. Chekinov)とS.Aボグダノフ(S. A. Bogdanov)著「間接的アプローチが現代戦争の性質に与える影響」、軍事思想第6号(2011年)、6頁。

[51] S.Gチェキノフ(S. G. Chekinov)とS.Aボグダノフ(S. A. Bogdanov)著「戦争の初期段階とそれが国の将来の戦争への準備に与える影響」「軍事思想」第11号(2012年):24-25。

[52] トーマス(Thomas)著「チェキノフ=ボグダノフ評論」27頁より引用。

[53] S.Gチェキノフ(S. G. Chekinov)とS.Aボグダノフ(S. A. Bogdanov)著「新世代の戦争の性質と内容について」「軍事思想」第10号(2013年):22。

[54] ヴァレリー・ゲラシモフ(Valery Gerasimov)著「科学の価値は先見性にある:新たな課題は戦闘作戦遂行の形態と方法の再考を要求する」ミリタリー・レビュー(2016年1/2月号:23-29ページ。チャールズ・バーテルズ(Charles Bartels)による翻訳では、ゲラシモフ(Gerasimov)は非軍事的手段への依存度を高めた「新しいタイプの戦争」を予測している。

[55] ナタリア・ブガヨワ(Nataliya Bugayova)とカテリーナ・ステパネンコ(Kateryna Stepanenko)著「ロシアの認知戦入門」戦争研究研究所、2025年6月30日。

[56] ロシアによる様々な転覆の形態(forms of subversion)については、アンドレアス・クリーク(Andreas Krieg)著「転覆(subversion):ナラティブの戦略的兵器化」(ワシントンD.C.:ジョージタウン大学出版局、2023年)、119-145ページを参照。

[57] ロシア軍の思考と戦略指針の永続的な要素の包括的な評価については、マイケル・コフマン(Michael Kofman)他著「ロシアの軍事戦略の中核理念と作戦コンセプト」(CNA、2021年8月)を参照。

[58] ベン・コナブル(Ben Connable)、ステファニー・ヤング(Stephanie Young)、ステファニー・ペザード(Stephanie Pezard)、アンドリュー・ラディン(Andrew Radin)、ラファエル・S・コーエン(Raphael S. Cohen)、カティア・ミガチェヴァ(Katya Migacheva)、ジェームズ・スラッデン(James Sladden)著「ロシアの敵対的措置」(サンタモニカ、カリフォルニア州:RAND、2020年)。

[59] クラウディア・ウォールナー(Claudia Wallner)、サイモン・コープランド(Simon Copeland)、アントニオ・ジュストッツィ(Antonio Giustozzi)共著「ロシア、AI、そして偽情報戦争の将来」、英国王立安全保障研究所、2025年6月。

[60] ジェームズ・ルイス(James Lewis)著「サイバースペースにおける認知効果と国家紛争」戦略国際問題研究所、2018年、20ページ、https://www.csis.org/analysis/cognitive-effect-and-state-conflict-cyberspace

[61] Office of the Director of National Intelligence, The US Intelligence Community Threat Assessment, 2024, 37–38.

国家情報長官室「米国インテリジェンス・コミュニティの脅威評価」2024年、37-38ページ。

[62] エドマンド・バーク(Edmund Burke)、クリステン・ガンネス(Kristen Gunness)、コルテス・クーパー(Cortez Cooper)、マーク・コザド(Mark Cozad)共著「人民解放軍の作戦コンセプト」(サンタモニカ、カリフォルニア州:RAND、2020年);マーク・コザド(Mark Cozad)他共著「システム戦争での勝利:米中軍事バランスに関する中国の視点」(サンタモニカ、カリフォルニア州:RAND、2023年)を参照。

[63] 初期の例外的な分析については、ネイサン・ボーチャンプ=ムスタファガ(Nathan Beauchamp-Mustafaga)著「認知ドメイン作戦:人民解放軍の影響力作戦のための新たな包括的コンセプト」、Jamestown Foundation、China Brief 19、no. 16(2019年)、ネイサン・ボーチャンプ=ムスタファガ(Nathan Beauchamp-Mustafaga)著「中国の次世代心理戦:新興技術の軍事応用と米国への影響」(サンタモニカ、カリフォルニア州:RAND、2023年)、https://www.rand.org/pubs/research_reports/RRA853-1.htmlを参照

[64] アンドリュー・マクドナルド(Andrew MacDonald)米海兵隊少佐とライアン・ラトクリフ(Ryan Ratcliffe)米海兵隊少佐著「認知戦:人間的側面における機動性」海軍研究所紀要 2023年4月)。

[65] マイケル・J・チータム(Michael J. Cheatham)、アンジェリーク・M・ガイヤー(Angelique M. Geyer)、プリセラ・A・ノール(Priscella A. Nohle)、ジョナサン・E・バスケス(Jonathan E. Vazquez)「認知戦:デジタル・グレー・ゾーンにおける灰白質をめぐる戦い」、ジョイントフォースクォータリー114(第3四半期、2024年)、83-91。

[66] R. マクライト(R. McCreight)著「神経認知戦:ノン・キネティックな脅威による戦略的影響の付与」、Small Wars Journal、2022年9月16日、ダグラス・ウィルバー(Douglas Wilbur)著「AI強化認知戦の課題:認知防衛のための武装の呼びかけ」、Small Wars Journal 2025年1月22日を参照。

[67] アンドリュー・ホワイト(Andrew White)著「ケイン議長は米国勝利のためのアルゴリズムを持っている」、Breaking Defense、2025年5月8日、https://breakingdefense.com/2025/05/joint-chiefs-chairman-caine-has-an-algorithm-for-us-winning/

[68] セントアンドリュースのヒュー・ストラチャン(Hew Strachan)教授とライデン大学のルーカス・ミレフスキー(Lukas Milevski)博士もこの点を指摘している。

[69] ジル・カストナー(Jill Kastner)とウィリアム・C・ウォルフォース(William C. Wohlforth)著「戦争に至らない手段:大国による転覆の復活」「フォーリン・アフェアーズ」(2021年7/8月号);ジョシュ・A・ゴールドスタイン(Josh A. Goldstein)とギリッシュ・サストリー(Girish Sastry)著「AIを活用したプロパガンダの到来」「フォーリン・アフェアーズ」 2023年4月号、https://www.foreignaffairs.com/united-states/coming-age-ai-powered-propaganda;レナート・マッシュマイヤー(Lennart Maschmeyer)著「新しくより良い静かな選択肢?転覆とサイバー紛争の戦略」「戦略研究ジャーナル」 46巻3号(2023年):570-594。

[70] ウィリアム・ローゼナウ(Willian Rosenau)著「Subversion and Insurgency(サンタモニカ、カリフォルニア州:RAND、2007年)。

[71] アニカ・ビンネンダイク(Anika Binnendijk)、ティモシー・マーラー(Timothy Marler)、エリザベス・M・バーテルズ(Elizabeth M Bartels)著「脳コンピュータインターフェース、米国の軍事的応用と影響」、サンタモニカ、カリフォルニア州:RAND 2020年;ピーター・ボベット・エマニュエル(Peter Bovet Emanuel)著「カメレオンの作り方:テクノ型のソフトウェア定義特殊作戦アセンブリ」、ジェームズ・D・キラス(James D. Kiras)とマーティン・キッツェン(Martijn Kitzen)編「虚空へ:テロ戦争後の特殊作戦」(ロンドン:ハースト、2024年);アンナ・ギーラス(Anna Gielas)著「槍の先端、心の端:特殊作戦の将来におけるニューロテクノロジーの役割」、SOF支援財団、2025年5月、https://sofsupport.org/tip-of-the-spear-edge-of-the-mind-neurotechnologys-roles-in-the-future-of-special-operations/

[72] アイデアについては、ニコラス・ライト(Nicholas Wright)著「マインドテック・ネクサスにおける人間の強化」およびティモシー・グレイソン(Timothy Grayson)著「OODAループの打破:複雑性を管理し、決定的な用兵上の優位性として意思決定を加速するための人間機械共生」、ニコラス・ライト(Nicholas Wright)、マイケル・ミクラウチッチ(Michael Miklaucic)、トッド・ヴィージー(Todd Veazie)編「人間、機械、戦争:マインドテック・ネクサスが将来の戦争にどう勝つか」(マクスウェル、アラバマ州:航空大学出版局、2025年)を参照。

[73] SCEPTERは、計画策定、戦術、実験、復元性のための戦略的カオス・エンジンの略である。ジョー・フェラン(Joe Phelan)著「DARPAは戦場での意思決定を支援するAIに資金提供」Live Science、2023年9月19日、https ://www.livescience.com/technology/artificial-intelligence/darpa-is-funding-ai-to-help-make-battlefield-decisions

[74] クリント・ハイノート(Clint Hinote)米空軍中将(退役)「人間と機械のチームワークによる指揮・統制の再考」、特殊能力研究プロジェクト、国防政策文書、2024年。

[75] ベバー(Bebber)、9ページ。

[76] 中国におけるディープフェイクの開発に関する洞察については、グラフィカ(Graphika)著「ディープフェイクで成功する:親中派俳優がオンライン影響力作戦で架空の人物のAI生成ビデオ映像を宣伝」、2023年2月、https://www.graphika.com/reports/deepfake-it-till-you-make-it参照。

[77] アダム・サタリアノ(Adam Satariano)とポール・モズール(Paul Mozur)著「ディープフェイク動画がどのように偽情報を拡散するために使用されているか」、ニューヨーク・タイムズ(2023年2月7日)、https://www.nytimes.com/2023/02/07/technology/artificial-intelligence-training-deepfake.html ; ティファニー・シュー(Tiffany Hsu)とスチュアート・A・トンプソン(Stuart A. Thompson)著「AIの欺瞞の容易さが警鐘を鳴らす」、ニューヨーク・タイムズ、 2023年2月9日、A1、A22。

[78] タマス・マトゥラ(Tamás Matura)著「海外の情報の操作と干渉における中露の収束:米国とその同盟国に対する世界的な脅威」欧州政策分析センター、2025年6月30日。

[79] レニー・プルノー・ノヴァコフ(Renee Pruneau Novakoff)著「なぜアメリカは認知的競争に負けているのか」、Cipher Brief、2025年10月16日。

[80] 米国政府は国内検閲を削減するため、FBIと国務省のセンターを縮小した。デイビッド・シマン=トフ(David Siman-Tov)著「トランプ政権による外国干渉との闘いからの撤退――戦略的影響」、INSSインサイト第2006号、テルアビブ大学国家安全保障研究所、2025年7月7日、https://www.inss.org.il/publication/trump-influence/

[81] 中国のアプローチとそれに対抗するアイデアに関する実質的な洞察については、トーマス・G・マーンケン(Thomas G. Mahnken)、ロス・バベッジ(Ross Babbage)、トシ・ヨシハラ(Toshi Yoshihara)著「包括的強制への対抗:権威主義的政治戦争に対する競争戦略」  (ワシントンD.C.:戦略予算評価センター、2018年)を参照。

[82] ジェレミア・ランピー・ルンバコ(Jeremiah “Lumpy” Lumbaco)、「敵対者の現実を支配し再定義するための認知戦」、統合特殊作戦大学出版局、特別報告書25-23、2025年9月30日。