我々の戦い方!-米海兵隊特殊作戦コマンドの用兵へのアプローチ (Marine Corps Gazette)
衆議院の解散によって令和8年度の予算審議・予算確定が遅れることへの是非について意見が交わされたりしている。そんな状況だが、防衛省のサイトに掲載の「防衛力抜本的強化の進捗と予算:令和8年度予算案の概要」には、「特殊作戦団(仮称)の新編」として「特殊作戦能力を強化するため、特殊作戦団(仮称)を新編」との記述がみられる。強化しなければいけない特殊作戦能力とはどのようなものになるのだろうか?
トランプ政権がベネズエラのマドゥロ大統領の拘束した際には米陸軍のDelta Forceが動いたとされる報道を耳にすると、令和8年度予算案の「特殊作戦・・・」の一文が気になるところである。
また、認知戦の研究が進むにつれて、特殊作戦は「物理領域だけで勝つ時代」から「認知・情報・心理領域で優位を取る時代」へ対応することが求められているのだろうとの推測もできる。日本では非正規戦という言葉はなかなか馴染みはないが、非正規戦(irregular warfare)という言葉が議論されることになっていくのだろうか。
今回紹介するのは、米海兵隊の機関誌「Marine Corps Gazette」の1月号に掲載された米海兵隊の特殊作戦コマンドに関する記事で、新しい変わりゆく作戦環境において特殊作戦部隊はどのような役割を期待されるのかを考えるのによい記事だと考える。
「Marine Forces Special Operations Command」は、海兵隊特殊作戦コマンドと訳している。略語表記については、「MARFORSOC」、「MARSOC」と二通りあるようだが、本文では「MARFORSOC」を使用した。「Department of War」は国防総省(Department of Defense)の別の呼称であるので、あえて「国防総省(Department of War)」とした。(軍治)
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我々の戦い方!
米海兵隊特殊作戦コマンドの用兵へのアプローチ
How We Fight!
MARSOC’s Approach to Warfighting
By: MARSOC, CD&I G-5 Staff
Marine Corps Gazette • December 15,2025
著者らは米海兵隊司令部の戦闘開発と統合(CD&I)のG-5部局の多様なチームを代表しており、現役、退役軍人、民間専門家で構成されている。彼らの経歴と経験には、特殊作戦、インテリジェンス、重要目標破壊、火力、兵站、工兵、通信、戦略、計画、評価が含まれる。本稿は2年以上にわたる研究と共同作業の集大成である。
海兵隊特殊作戦コマンド(MARFORSOC)は、永続的な課題を永続的な優位性に変える。
技術を活用する海兵隊特殊作戦コマンド(MARFORSOC)。(写真は著者提供) |
我が国が直面する最も困難な課題の世界の最前線に立つ我々は、他国が障害に翻弄されるような状況でも機会を見出している。多くの場合、パートナーと連携して行われる我々の行動は、米国の利益に資する環境を整え、競争の連続体(the competition continuum)において統合部隊(Joint Force)の優位性を生み出す。海兵隊特殊作戦部隊(MARSOF)は非正規戦(irregular warfare :IW)を積極的に展開し、敵対者が世界の安定を脅かす能力と意欲を失わせるまで、直接的および間接的なアプローチで敵対者の侵攻を阻止、阻止、混乱させ、あるいはペースと深刻な脅威の発生時期を低下させることに長けている。
戦いの性質(character of warfare)は進化してきたが、戦いの本質(nature of warfare)は変わっていない。戦いとは、継続的かつ変化する要素が複雑に絡み合うものである。かつては国家に限られていた戦いの主体は変化し続け、新たな手法を開発し、国際的に受け入れられている戦争のルールに挑戦し続けている。民間軍事会社は現在、非国家主体やテロ組織との境界を曖昧にし、重要な役割を果たしている。これらのグループは、ますますアクセスしやすい技術を用いて新たな戦術を導入し、新たな戦いのスタイル(styles of warfare)を通じて目的達成の方法を変革している。剣から核兵器に至るまで、技術は戦場を変容させ、運用者(operators)を複数のドメインに結びつけ、米国の利益と地域の安定を脅かすサイバー戦争のような新たな定義を生み出している。こうした変化と進化にかかわらず、致死性は我々の目的の基盤であり続けるだろう。
我々は、パートナーの復元性を強化し、信頼に基づいた関係の醸成を通じて能力を構築することで、敵対者を抑止する。この信頼は、専門家としての継続的な存在と信頼できる行動を通じて獲得・開発され、レイダーズ(Raiders)が致死性の熟練専門家であり、好ましいパートナーであるという評判を生み出している。我々は動的な環境を感知し、理解し、敵対者の意図の根底にあるものを明らかにし、特徴づける。我々は、あらゆるセンサーをあらゆるシューターにリンクさせることで、最大の効果を達成するための態勢を整える。競争が危機にエスカレートした場合、我々の形成した作戦は、非対称、間接的、かつ帰属不可能なオプションを提供し、センサー・トゥ・シューター(sensor-to-shooter)の比率を拡大した状況を設定することで、付随的損害を最小限に抑え、敵によるさらなるエスカレーションを抑止する。抑止が失敗した場合、我々の取組みは、紛争における戦術的、作戦的、戦略的優位性のための条件を作り出し、敵対者に永遠の後悔をもたらし、我々の決意に挑戦しようと企む者を抑止する。
海兵隊特殊作戦コマンド(MARFORSOC)の戦略、作戦コンセプト、および部隊デザインは、米国とその同盟国およびパートナーに優位性を生み出す環境を形成する。
海兵隊特殊作戦部隊(MARSOF)の形成した作戦が成熟し、タスクが他の統合部隊または多国籍軍に移行すると、海兵隊特殊作戦部隊(MARSOF)は大規模戦闘作戦(large-scale combat operations)で統合部隊を支援する決定的な行動の提供に重点を移す。特殊作戦タスク・フォース(SOTF)、海兵隊特殊作戦中隊(MSOC)、海兵隊特殊作戦チーム(MSOT)などの統合モジュール型特殊作戦部隊(SOF)編成は、動的な世界的課題に対応し、地域の安定を維持し、環境整備を通じて大規模紛争作戦(large-scale conflict operations)を予防し、戦争に勝利するために必要な機敏性を発揮する。統合部隊をハイエンド紛争に備える実行可能な解決策を生み出すには、戦術的、作戦的、戦略的なレベルで創造的な解決策が不可欠である。海兵隊特殊作戦部隊は、あらゆるレベルの戦い(all levels of warfare)において、各ドメインにわたって影響を及ぼす敵対者や敵の能力を阻止、阻害、打ち負かすという無視できないジレンマを生み出す。
図1. 海兵隊特殊作戦部隊:我々はどのように競争の連続体全体で闘っているのか。(図は著者提供) |
任務、価値提案、指揮官の意図
任務
海兵隊特殊作戦コマンド(MARFORSOC)は、米国特殊作戦コマンド(USSOCOM)の指揮官または地域的戦闘軍指揮官(GCC)が戦域特殊作戦コマンド(TSOC)を通じて割り当てた特殊作戦任務を遂行するために、世界中でタスク編成され、拡張可能な遠征型の海兵隊特殊作戦部隊(MARSOF)を募集、組織、訓練、装備、展開する。
価値提案
海兵隊特殊作戦コマンド(MARFORSOC)は、紛争を通じた競争において統合部隊の優位性をもたらす重要な作戦上の問題を解決するための特殊作戦能力を提供する[1]。
指揮官の意図
海兵隊特殊作戦コマンド(MARFORSOC)は、地域的戦闘軍指揮官(GCC)および戦域特殊作戦コマンド(TSOC)の優先事項と要件を達成するために、特殊作戦部隊(SOF)と従来型の部隊の会戦空間の交差点に統合された部隊を展開し、相互運用性と相互依存性を備えた能力を提供する。海兵隊特殊作戦部隊(MSOC)は、特殊作戦部隊(SOF)特有の能力を備えて前方展開し、独自のスキルと専門知識を活用して、迫りくる脅威(pacing threats)や深刻な課題(acute challenges)に対処し、統合部隊の優位性を確保する。
海兵隊特殊作戦コマンド(MARFORSOC):「我々の戦い方(How We Fight)」
- 知らされた脅威
- あらゆるドメインおよび戦いの形態に対応可能な 特殊作戦部隊(SOF)特有の作戦、活動、投資
- 戦争のスピードで進化する作戦環境に適応する。
- 海兵隊のスタンド・イン・フォース(SIF)を強化するための特殊作戦能力を提供する。
- 特別な作戦、活動、投資の効果を最大化するための戦役アプローチ。
- 海兵隊特殊作戦コマンド(MARFORSOC)の近代化と運用を同期させるための構成部隊のコンセプトが通知された。
脅威と課題
我が国の敵対者や敵は、過去40年間、西側諸国の民主主義のあり方を研究してきた。彼らは、あらゆるドメインと環境において我々が紛争に勝利するのを目の当たりにしてきた。彼らは、我々の文化的規範や自由で民主的な統治スタイルを逆手に取り、我々が知覚している隙間(gaps)や弱点(weaknesses)を突くため、競争の連続体(competition continuum)全体にわたって独自の戦いのスタイル(styles of warfare)を構築し、駆使している。
複数の敵対者が、米国の国家安全保障を直接脅かす大国間の競争に巻き込まれている。安全保障上の問題をさらに複雑にしているのは、より広範な国々が主権と国内安全保障の脅威に直面していることである。敵対者によるこうした執拗な脅威と悪意ある活動は、地域的な圧力を高め、不安定性と不確実性を生み出し、現状を揺るがし、同盟国やパートナー国の国境、国際貿易、そして数十億人の生活を脅かしている。
「100年マラソン(100 Year Marathon)」を通じた中国の計画(agenda)は、米国に取って代わって世界のリーダーとなり、世界規模で自国の利益への尊重を確保することを意図している。
中国共産党(CCP)は、自らの評判と正当性への挑戦を先取りし、米国の影響力を弱め、同盟関係やパートナーシップを分断し、自らの権威主義体制に有利な国際規範を変えようと企てるだろう。差し迫った脅威として、中華人民共和国(PRC)は台湾に対し統一を迫るだろう。この試みは、南シナ海だけでなく、世界全体において地政学的な課題を生み出すことになるだろう。
図2. 脅威と課題、世界の指導者、影響力のある地域の図解。(図は著者提供) |
中華人民共和国(PRC)は、経済的影響力と軍事力の増強を融合させ、外交的・技術的優位性を確立することで、中国共産党の支配を強化するという壮大な戦略を推し進め、自国の主権領土と見なす地域を拡大しようとしている。中国は、2035年までに軍の近代化を全面的に進め、2049年までに人民解放軍(PLA)を世界クラスの軍隊へと開発し、世界の覇権国となるという目標を達成しようとしている。
ますます高性能化し、脅威を増す宇宙システムに象徴される中国の宇宙支配の追求は、米国の国家安全保障を脅かしている。中国は、米国政府、民間部門、そして重要インフラ・ネットワークにとって、依然として重大かつ持続的なサイバー脅威となっている。中国のサイバー・スパイ活動と監視・情報通信技術の輸出は、米国に対する攻撃的なサイバー作戦の脅威を増大させ、サイバー空間における情報の自由な流れを阻害することで戦略的不安定性を生み出すリスクを伴う。
ロシアもまた、別の形で、地域的および世界的に影響力を行使するために米国を直接脅迫している。ロシアによるウクライナ侵攻は、想像を絶する破壊をもたらした。ロシアは、あらゆるドメインにおいて、米国、西側諸国の同盟国、そしてパートナーシップを弱体化させるために、世界規模で利益と影響力を行使しようとする、強靭で有能な敵対者であり続けるだろう。ロシアは、米国本土およびはるか遠く離れた海外において不安定さを生じさせることで、西側諸国の脅威となっている米国の世界的な地位を分断し続けるであろう。
ロシアは、追加的な国際制裁と輸出規制の影響、国内の宇宙部門の問題、そしてロシア国内におけるプログラム資源をめぐる競争の激化といった困難に直面しているにもかかわらず、依然として主要な宇宙競争相手であり続けるだろう。
イランは、中東における米国の利益、同盟国、そして影響力を脅かし続け、政権への脅威と直接的な軍事紛争のリスクを最小限に抑えながら、地域大国としての台頭する地位を確固たるものにしようと企んでいる。イランは、ガザ紛争後も、イスラエルと、この地域における米国の同盟国および利益にとって脅威であり続けるだろう。イランは、米国を脅かすために同盟国への武器供給と支援を継続するだろうし、イスラエルとパレスチナ間の和平合意を妨害しようとするハマスなどの非国家主体を支援し続けるだろう。
イランは現在、試験可能な核兵器の製造に必要な主要な核兵器開発活動を行っていない。しかしながら、2020年以降、イラン政府は包括的共同行動計画(JIPAP)のいかなる制約にも縛られていないと表明しており、核開発計画を大幅に拡大し、国際原子力機関(IAEA)による監視体制を縮小し、核兵器を製造したいという意思があれば容易に製造できる体制を整える活動を展開してきた。2025年6月、イランのフォルドゥ、ナタンズ、エスファハーンの核施設は、米国の戦略攻撃によって著しく劣化した。
戦略
米国の2022年国家防衛戦略(NDS)は、中華人民共和国(PRC)の悪意ある活動と影響力に対抗し、貴重な同盟国とパートナーシップを強化することに重点を置いた戦略を推進している。国家防衛戦略(NDS)は、米国本土を防衛し、安定した開かれた国際システムを強化しながら、中華人民共和国(PRC)による主要地域の支配を阻止することを目指している。2022年国家安全保障戦略と一致して、国家防衛戦略(NDS)の主要目標は、中華人民共和国(PRC)が米国の重要な国益を脅かす目標を推進するための実行可能な手段として侵略を検討することを思いとどまらせることである。中華人民共和国(PRC)との紛争は不可避でも望ましいものでもない。海兵隊特殊作戦コマンド(MARFORSOC)は、戦略的競争における協調を通じて環境を形成し準備することにより、その意図を最もよく支援できる。この態勢と形成は、抑止力が失敗し紛争に移行した場合にも、統合部隊を紛争に最もよく備えさせることになる。米国の優先事項は、政府全体が我が国の利益に有利な形で中華人民共和国(PRC)と関わり、国力のあらゆる要素を活用して戦略的立場から競争する選択肢を持つことを求めている。
統合抑止(Integrated deterrence)とは、特定の地域規範と競争相手の利益に合わせて、政策と活動を調整し、競争力を維持・強化していくことである。強固で強靭な世界規模の同盟とパートナーシップは、我々の最大の戦略的優位性であり、我々のアプローチの重心(the center of gravity)である。我々は、同盟国やパートナーと共に、補完的な貢献、共同作戦と戦力計画策定、インテリジェンスと情報共有の強化、新たな作戦コンセプト、そして統合部隊を世界規模で持続的に展開する能力に基づき、主要な地域安全保障体制を強化していく。
海兵隊特殊作戦コマンド(MARFORSOC)は、統合部隊の機能、態勢、能力、そして既存および新興のネットワークを活用し、敵対者の影響と移動の自由を阻止することで、統合抑止を支援する。海兵隊特殊作戦コマンド(MARFORSOC)の優先事項は、中華人民共和国(PRC)がターゲットとする可能性のある米国のプラットフォームとシステムの致死性と残存性を向上させることである。我々は、中華人民共和国(PRC)の侵略に対抗するためにデザインされた統合用兵能力に関連し、それを支援する作戦コンセプトを採用・開発する。多国間演習および二国間訓練イベントで実証された統合能力を通じて、同盟関係とパートナーシップが強化・拡大される。用兵技術、インテリジェンス、情報共有の共同開発、そして共通の抑止課題に対する共同計画はすべて、地域の現状維持を守る統合抑止の要素を支える。
海兵隊特殊作戦コマンド(MARFORSOC)は、世界規模の前方のプレゼンスと重要なパートナーとの強固な関係を通じて、無制限とハイブリッドの戦いの形態(unrestricted and hybrid forms of warfare)に対抗し、彼らのテンポを上回り、彼らの関心領域での機動の自由を否定することで、彼らの影響力と能力を否定する。
海兵隊特殊作戦コマンド(MARFORSOC)は、統合部隊の一部として統合抑止を支援し、統合部隊の能力を戦役アプローチ(campaign approach)に活用することで軍事的優位性を獲得する。戦役遂行(campaigning)とは、戦略に整合した目標を長期的に達成するために、論理的に連携した軍事活動を実施し、段階的に進めることである。戦役遂行(campaigning)は、米国とその同盟国およびパートナー諸国に利益をもたらすように環境を変革すると同時に、悪意のある競争相手の活動を阻止・阻害する。
非正規戦
戦争の性質と形態は絶えず変化しているものの、その本質は変わらない。大国間の競争は依然として国家安全保障上の課題であり、20年以上にわたる暴力的過激主義組織との継続的な紛争から脱却し、対テロ能力の習得は依然として求められている。過去20年間の経験を維持しながら、大国間の競争(great-power competition)と、動的かつ複雑な紛争を含む現代戦(modern warfare)に必要な追加能力を強化していく。
非正規戦(irregular warfare)とは、国家および非国家主体が、間接的、帰属不能、または非対称的な活動を通じて、国家またはその他の集団を強制または脅迫するために、主要なアプローチとして、あるいは従来型の戦い(conventional warfare)と連携して戦役する戦いの形態(form of warfare)である。「非正規」という用語は、ジレンマを作り出し、リスクを高め、敵対者にコストを負わせることで優位性の立場を獲得しようとするこの戦いの形態(form of warfare)の特徴を強調している。非正規戦(IW)では、敵対者に対する優位を確保するために、抑止力や強制力を目的として、組織的な武装暴力の脅威または行使が用いられる場合がある。国家および非国家主体は、非軍事活動や従来型の戦い(conventional warfare)では戦略目標を達成できない場合に、非正規戦(IW)を実施する場合がある。
海兵隊特殊作戦コマンド(MARFORSOC)は、特殊作戦特有の作戦・活動を通じて非正規戦(IW)アプローチを支援している。これは、海兵隊独自の非正規戦(IW)能力をスタンド・イン・フォース(SIF)の一部として結集する軍種のアプローチを通じて最も効果的に達成される。
特殊作戦部隊(SOF)の支援を受ける非正規戦(IW)は、無制限戦(unrestricted warfare)やハイブリッド戦(hybrid warfare)といった敵対的な形態に対抗する。この近代化されたアプローチは、競争の連続体全体に適用され、海兵隊特殊作戦部隊(MARSOF)は協調して環境を整備し、同盟関係やパートナーシップを強化しながら、地域における経験を積み重ねていく。必要に応じて、海兵隊特殊作戦部隊(MARSOF)は、長年にわたる地域活動を通じてのみ得られるターゲティングの専門知識と、環境と脅威に関する徹底的な理解に基づき、あらゆる用兵機能の致死性と残存性を高めることで、統合部隊の紛争への移行を支援する態勢を整えている。
現代戦と作戦環境
世界規模の動的で国際的な関係は進化を続けている。今日の戦いは、かつてないほどの複雑さとテンポで行われている。技術は、主導権を獲得し維持するために管理しなければならない、一連の重大な優位性と脅威を生み出している。今後数年間は、過去の戦争と同様に、国家間の誤算とコミュニケーション不足によって紛争が発生するだろう。希少な天然資源、経済的優位性、そしてイデオロギーの違いをめぐる競争が、国家間の力と影響力の衝突を招き、ひいては紛争へと発展する。改良されたセンサー、自動化、人工知能と、極超音速兵器などの先進技術を組み合わせることで、より正確で、より連携性に優れ、より高速で、より長距離で、より破壊力の高い兵器が生み出されるだろう。これらの兵器は、主に既存の敵対者が利用可能となる一方で、小国や非国家主体にも射程圏内に入るものも出てくる。こうした能力の拡散と分散は、我々の大切な同盟国やパートナーに脆弱性をもたらすと同時に、祖国を脅かす。こうした環境は、戦略的緊張とエスカレーションのリスクを高める。
図3. 世界の武力紛争の発生場所と発生状況のデータ。(図は著者提供) |
戦略的奇襲(Strategic surprise)は常に重要な懸念事項である。敵にとって最も危険な行動は、あらゆるドメインにわたる近代兵器による壊滅的な一斉射撃によって開始される現代の紛争である。敵は、我々が反撃を行う前に、我が国の軍事力だけでなく、重要なインフラにつながる民間システムや拠点も同時に攻撃するだろう。近代兵器の射程距離と精度の高さから、敵は事前に広範な戦力配置を明らかにする必要がなく、戦略的警告がほとんど、あるいは全くない状態で攻撃する機会を与えることになる。
高速かつ極めて高精度な致死兵器の拡散は、迅速な交換が困難な高価で高価値なプラットフォームや兵器システムの残存性を疑問視させるだろう。潜在的な緩和戦略の一つとして、分散型部隊と作戦のさらなる開発と実装が挙げられる。これは、特殊作戦部隊(SOF)を適切に運用することで、敵が統合部隊を攻撃する前に、これらの脅威となる兵器システムの指揮統制、維持、移動能力を阻害し、統合プラットフォームへの脅威を軽減できる分野である。
脅威国家は、非正規空間において、否認可能な代理勢力(deniable proxies)や民間軍事会社を活用した無制限戦(unrestricted warfare)やハイブリッド戦(hybrid warfare)といった戦略を用いて、今後も活動を続けるだろう。代理勢力の活用(the use of proxies)自体は目新しいものではないが、あらゆるドメインにおいて代理勢力が統制され、運用されるには複雑な解決策が必要であり、政治的に敏感で不確実な環境で活動する特殊作戦部隊(SOF)向けにカスタマイズされることが多い。
代理勢力や否認可能な勢力による実際の戦闘作戦に加え、この種の紛争には、海底光ファイバーケーブルへの攻撃、サイバー作戦、GPS妨害・スプーフィング、情報作戦など、単独で、あるいは従来型の軍事構成部隊の支援を受けて実施可能な、様々なノン・キネティックな行動が含まれる。
最終的には、新技術の選択と戦闘コンセプトの開発は、個々の主体の独自の脅威認識、強み、そして脆弱性に依存する可能性が高い。潜在的な主体は、大国や地域大国から、反乱軍やテロリスト集団などの非国家主体まで多岐にわたる。国家文化や組織文化、そして内部の力学は、敵対者が新技術をどのように採用し、活用するかに影響を与えるだろう。
海兵隊の従来型の作戦と特殊作戦
我が国の脅威を抑止し、撃退するために、海兵隊は従来型の部隊と特殊作戦部隊(SOF)の能力と能力を相乗的に活用する必要がある。この相乗効果は、敵対者の競争における影響力行使能力、そして米国、同盟国、そして紛争パートナーに対する機動し、感知し、ターゲットにする敵の能力容量をターゲットとすべきである。
従来型の海兵隊部隊と海兵隊特殊作戦部隊(MARSOF)は、戦闘指揮官を支援する独自の能力を提供する。従来型の作戦と特殊作戦の相互依存性は、指揮官の作戦デザインと優先順位によって支えられている。海兵隊独自の戦力構成である海兵隊空地タスク・フォース(MAGTF)と特殊作戦部隊(SOF)は、フォース・デザインを活用し、作戦の有効性を高める作戦の計画策定、調整、同期化のための、復元性と能力に優れたプラットフォームを提供する。
従来型の部隊と特殊作戦部隊(SOF)の相乗効果を高めるには相互運用性が求められ、任務の成功を確実にするために海兵隊のプロセス、能力、部隊の統合が必須となる。
スタンド・イン・フォース(SIF)は、海兵隊特殊作戦部隊(MARSOF)作戦の成功を最大限に活用するための理想的な構造である。海兵隊特殊作戦部隊(MARSOF)を含むスタンド・イン・フォース(SIF)は、小規模で、致死性が高く、低シグネチャで、機動性があり、分散型の行動部隊であり、係争の地域(contested areas)における競争の連続体(competition continuum)全体にわたって作戦し、潜在的または現実の敵対者の計画を意図的に妨害するためにデザインされた海の縦深の防御(maritime defense-in-depth)の最前線として機能する。
状況に応じて、スタンド・イン・フォース(SIF)は海兵隊、海軍、沿岸警備隊、特殊作戦部隊(SOF)、各省庁、同盟国、パートナーからの要素から構成される。
海のドメインはあらゆるドメインの結節点であり、海上部隊と陸上部隊の融合により、敵対者を継続的に撃破するために粘り強く戦役する能力と能力容量が確保される。スタンド・イン・フォース(SIF)の一員として、海上特殊作戦部隊(MARSOF)は海のドメインで作戦し、特殊作戦部隊(SOF)の中核活動を実施している。このデザイン・コンセプトは、統合部隊と統合部隊全体を同期させ、脅威と課題による不利な状況に打ち勝つために不可欠である。海兵隊特殊作戦部隊(MARSOF)は、我が国の資源と多国間同盟およびパートナーシップを結びつけることで、特殊作戦部隊の戦力増強に貢献することを証明してきた。
海兵隊特殊作戦コマンド(MARFORSOC)は、適切な権限、方針、および許可手続きを通じて作戦的効果を達成する。国防総省(Department of War)が発行する特殊作戦部隊(SOF)の活動に関する指示書および覚書は、変化する要件に基づいて継続的に発展・成熟していく。この視点に基づき、海兵隊特殊作戦コマンド(MARFORSOC)は特殊部隊特有の作戦と活動を最大限に活用する。
承認および許可プロセスを理解することは、海兵隊特殊作戦コマンド(MARFORSOC)が戦略形成・偵察(SSR)およびマルチドメイン直接行動(MD2A)関連の作戦を遂行する上で極めて重要である。あらゆる任務には、国防総省(Department of War)の具体的な指針、作戦上の権限、および許可を伴う適切な法定および財政上の権限が必要である。
指揮関係: 米国本土にいる間、特殊作戦部隊(SOF)は米特殊作戦コマンド(USSOCOM)指揮官の戦闘指揮権限(the combatant command authority)の下にある。指示があった場合、米特殊作戦コマンド(USSOCOM)は米国に拠点を置く特殊作戦部隊(SOF)を地域的戦闘軍指揮官(GCC)に提供する。地域的戦闘軍指揮官(GCC)は通常、割り当てられた特殊作戦部隊(SOF)の戦闘指揮管理統制(combatant command administrative control)と、戦域特殊作戦コマンド(TSOC)を通じて配属された特殊作戦部隊(SOF)の作戦統制(OPCON)を行使する。
海兵隊特殊作戦部隊(MARSOF)は、米特殊作戦コマンド(USSOCOM)を通じて世界規模の戦力管理プロセス(Global Force Management process)で明確にされた統合参謀本部の指針に従って展開する。展開された海兵隊特殊作戦部隊(MARSOF)は指定された期間移転され、それぞれの戦域特殊作戦コマンド(TSOC)を通じて作戦統制(OPCON)を行使して特殊作戦部隊(SOF)を運用している地域的戦闘軍指揮官(GCC)を支援する。作戦統制(operational control)と戦術統制(tactical control)は、統合部隊指揮官が部隊の指揮統制を行使する主要な正式な指揮関係である。海兵隊特殊作戦コマンド(MARFORSOC)の指揮官は、展開された海兵隊特殊作戦部隊(MARSOF)の運営統制(administrative control)を保持する。
支援を受ける者と支援を受ける者との関係は、柔軟性と適応性を促進する手段となる。多くの場合、複数の指揮官が同時に支援を受け、支援を受けることになり、共通の上位指揮官による明確な優先順位付けを必要とする相互支援関係となる。支援関係は多くの状況で馴染み深く望ましいものとなるかもしれないが、統合部隊の作戦を支援する上で最適な取組みの統一(unity of effort)と指揮の統一(unity of command)を実現するためには、詳細な任務分析に基づいた作戦統制権(OPCON)と戦術統制(tactical control)関係の適用を、適切な場合には慎重に検討する必要がある。
海兵隊特殊作戦コマンド(MARFORSOC)戦役計画
戦役計画(Campaign Plan)
海兵隊特殊作戦コマンド(MARFORSOC)は、その作戦コンセプトの開発と実装を継続する中で、困難で不確実な作戦環境における海兵隊特殊作戦コマンド(MARFORSOC)の影響力を加速し、拡大することを目指している。このフレームワークは、特殊作戦部隊(SOF)組織全体にわたる効果的な相互運用性と、統合部隊との意図的な統合を求めている。この戦役計画は、部隊の組織的責任と作戦責任を、今後5年間の海兵隊特殊作戦コマンド(MARFORSOC)の全体的目標を導く単一のフレームワークに統合する。この指針は、あらゆる階層の海兵隊特殊作戦部隊(MARSOF)に権限を与え、情報を提供し、米国特殊作戦コマンド(USSOCOM)構成要素およびより大規模な統合部隊との効果的なやり取りを可能にする。最終目的(ends)(なぜ)、方法(ways)(どのように)、手段(means)(何を)という包括的な指針は、海兵隊特殊作戦コマンド(MARFORSOC)におけるすべての参謀の行動と決定を形作る。具体的には、このフレームワークは、取組みを統一するための4つの取組みの目標(LOE)(能力開発、配置、統合、相互運用性、相互依存性、戦術的致死性および残存性)を詳述している。
最終目的(Ends)
「なぜ(Why)」。特殊作戦部隊(SOF)と従来型の部隊の会戦空間における完全な相互運用性を確保し、統合部隊のための統一された行動(unified action)を最大限に達成することで、好ましい成果を追求すること。
- 統合部隊の致死性の向上
- 統合部隊の残存性の向上
- 情報/影響力の支配性
- 敵の作戦遂行能力の低下
- 敵の遂行能力の低下
- 指揮・統制
方法(Ways)
「どのように(How)」。これは、海兵隊特殊作戦コマンド(MARFORSOC)が作戦的アプローチを実現する方法論である。
- 統合用兵機能
- 特殊作戦部隊(SOF)の世界規模の配置
- 特殊作戦部隊(SOF)のアクセスと配置
- 従来型の部隊と特殊作戦部隊(SOF)の統合、相互運用性、相互依存
- フォース・デザイン
- マルチドメイン・アプローチ
- 戦略形成・偵察(SSR)
- マルチドメイン直接行動(MD2A)
手段(Means)
「何を(What)」。海兵隊特殊作戦コマンド(MARFORSOC)は、望ましい結果を達成するために資源投資を優先する。
- 統合火力ネットワーク
- 加速された近代化
- 同盟とパートナーシップ
- スタンド・イン・フォース(SIF)
- 二国間海上移動性
- 自律型ロボット戦闘システムと遠隔操縦無人システム
- 特殊作戦部隊(SOF)戦術的センサー・アレイ
- 分散型兵站
取組みの目標その1(LOE 1):能力開発
進化する要件に対応しながら、統合部隊の目標をサポートする機能を開発および統合する。
取組みの目標その2(LOE 2):位置決め
地域的/世界規模の統合部隊の目標をサポートする海兵隊特殊作戦部隊(MARSOF)の継続的な前方展開。これにより、位置的優位性を通じて継続的な抑止と迅速な対応が可能になる。
取組みの目標その3(LOE 3):統合、相互運用性、相互依存性
統合会戦空間全体にわたる統一された行動(unified action)を実現するため、軍種及びその他の統合戦闘軍、並びに軍種のパートナーとの強固な連携を構築・促進する。米国特殊部隊(USSOCOM)及び同盟国、そしてパートナー特殊部隊の特殊作戦部隊(SOF)全体にわたる補完的効果を生み出すため、強力で相互運用可能な能力と統合された関係を構築・促進する。
取組みの目標その4(LOE 4):戦術的致死性と残存性
海兵隊特殊作戦コマンド(MARFORSOC)は、不利な状況や紛争の渦中で生活し、残存し、闘い、繁栄するための戦術的致死性と残存性に重点を置いている。海兵隊特殊作戦コマンド(MARFORSOC)は、ウクライナ、イスラエル、カラバフ、そして米特殊作戦部隊(USSOF)の組織が最近および現在進行中の作戦から得た教訓を活用し、現代の作戦環境で闘うために必要な特性を特定する。海兵隊特殊作戦中隊(MSOC)レベルに焦点を当てつつ、特殊作戦タスク・フォース(SOTF)に影響を与える側面にも対処する。海兵隊特殊作戦中隊(MSOC)(強化型)は引き続き行動の基本単位であり続けるが、特殊作戦タスク・フォース(SOTF)に影響を与える側面は軽視される。
海兵隊特殊作戦コマンド(MARFORSOC)の作戦コンセプト
海兵隊の文化に特有であり、競争の連続体(the competition continuum)を通して統合部隊を支援できる特殊作戦能力をデザインするには、国家の要件、作戦環境、そして脅威に応じて部隊の開発と運用を管理するコンセプトの開発が必要である。現在、海兵隊特殊作戦コマンド(MARFORSOC)は、競争の連続体(the competition continuum)を通して特殊作戦特有の効果をもたらすために、2つのコンセプトを維持している。
戦略的形成と偵察(Strategic shaping and reconnaissance :SSR)は、協調(cooperation)、競争(competition)、紛争(conflict)において特殊作戦部隊が実施する活動を連携させ、敵対者の意図と能力を把握することで、敵対者のリスクを抑止、撹乱、阻止、または増大させることを目的としている。戦略的形成と偵察は、形成と影響力を発揮するために、幅広いスキルと装備を網羅している。これらの効果は、特殊作戦およびインテリジェンス作戦、直接・間接行動、そして同盟国およびパートナーとの関係の継続的な発展を通じて適用される、厳選された特殊作戦部隊(SOF)の中核活動とプログラムを組み合わせたハイブリッドなアプローチによって達成される。
戦略形成・偵察(SSR)の運用コンセプトは、戦略形成・偵察(SSR)を実施する海兵隊特殊作戦部隊(MARSOF)部隊の調整と同期を図り、競争の連続体(the competition continuum)の中で作戦する能力と、抑止が失敗した場合に紛争に移行する能力を備えることである。これらの部隊は、競争および紛争におけるネットワークに対してターゲット分析を提供する能力を活用する。戦略的移動ターゲット、重要なノード、およびインフラを発見、追跡、捕捉する自信に重点が置かれている。これには、大量破壊兵器関連のネットワークおよびノードの評価が含まれ、意図を判断し、特定のネットワーク、施設、または個人に対する最新かつ詳細な情報収集を支援指揮官に提供する。
戦略策定および偵察には、気象、水路、地理、サイバー、宇宙、特定地域の特性といった、クロスドメインの活動や環境に関する情報収集が含まれる場合がある。また、国家の利益に対する重大な脅威の評価も戦略策定および偵察に含まれる場合がある。
マルチドメイン直接行動(Multi-Domain Direct Action :MD2A)は、海兵隊特殊作戦コマンド(MARFORSOC)がサイバー活動、ノン・キネティックな妨害、そして精密な致死性を統合した複数のドメインにわたる統合火力や破壊工作技術の適用を通じて、効果を調整し、発揮する能力を表す。このアプローチにより、危機や紛争において小規模な攻撃を調整し、価値の高い効果を発揮することが可能になる。マルチドメイン直接行動(MD2A)は、迅速かつターゲットとされた行動の選択肢を提供することで、統合部隊が優位性を維持することを保証する。
図4. 任意のセンサーを任意のシューターに接続する図。(図は著者提供) |
結論:海兵隊特殊作戦コマンド(MARFORSOC)の成功の理論
結論として、海兵隊特殊作戦コマンド(MARFORSOC)の成功理論は、敵対者が国家目標を達成するために対処しなければならない複数の複雑な問題を提示することで、敵対者にインパクトを与えることに重点を置いている。このアプローチは、敵対者に戦略的な疑念(strategic doubt)と作戦上の摩擦(operational friction)を生み出すと同時に、我々の貴重な同盟国やパートナー国を強化する。「我々の戦い方」は、無視できない重大な課題を提示することで、敵対者にコストを課す。海兵隊特殊作戦部隊(MARSOF)の継続的な世界規模の運用を活用し、政治的に敏感で不確実な環境で作戦する低シグネチャ部隊は、敵対者の移動の自由と影響力を奪う。競争の中で組織を構築し、準備することで、統合部隊の致死性と残存性が向上し、紛争における勝利が確実になる。
ノート
[1] 主要な作戦上の問題とは、望ましい軍事目標の達成を妨げる重大な欠陥または課題を特定する簡潔な説明である。


