軍事における人と機械の関わり合いの方法について

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「人と機械のチーム化」に関して、11月15日に「軍事における人と機械(自動化)の合流は如何になるのか」で、軍事組織における人と機械の一体化について触れた。その後、「軍事における人と機械をチーム化するために求められるもの」と題して、「人と機械のチーム化」に関わる、戦略・倫理・信頼についてのMick Rayn豪州陸軍中将の「The Strategy Bridge」の寄稿(2018/1/23)を先に紹介したところである。戦略・倫理などの課題を認識したうえで改めて人と機械が一体化する際にどのような形態が考えられうるのかについて論述したMick Rayn豪州陸軍中将の「The Strategy Bridge」の寄稿(2018/01/02)人間と機械の一体化(Integrating Humans and Machines)を紹介する。

人間と機械の一体化-Integrating Humans and Machines

ミック・ライアン

軍はロボット工学の能力に永続的な関心を持ち、これらの初期のロボットと人間をチーム化している。第一次世界大戦のドイツ軍による遠隔制御ボートの使用から、第二次世界大戦で使用された爆発物を伴った無人で経路を指定されたゴリアテロボット[1]、現代の爆発物処理(EOD)ロボット、無人航空機および無人陸上車両に至るまで、軍事組織は長い間、ロボット工学の能力を活用しようとしてきた。2006年のイラク戦争を最高点として、米軍は戦域に8,000を超えるロボットを展開した。

この記事は、ヒューマン・マシン・チーム化の3つの側面を考察する3つの記事のうちの2番目のものである。最初に、「7つの命題」を通じてヒューマン・マシン・チーム化の理論的根拠を考察した。この記事では、軍事組織が人間と機械をより緊密に一体化する際に適用する重要な要素について考察する。これは、将来の作戦のための競争戦略を構築するための3つの分野があると提案している。3つの分野は、背後の情報、分析、ヒューマン・マシン・チームの可能な適用を提供する。

分野I:ヒューマン・ロボット・チーム化-Area I: Human-Robot Teaming.

Peter Singerは、2009年の彼の著書「Wired for War」で、軍事作戦の普遍的な要素となるロボットのレンズを通じた戦いの未来を考察している。これは新しいビジョンではない。サイエンスフィクションの作家は、ほぼ1世紀の間のロボットと戦いについて書いてきた。確かに、「人間のオートマトン」は500年以上にわたって記述され、構築されてきた。しかし、1921年にチェコの作家Karen Capekが「ロッサムのユニバーサルロボット[2]」と呼ばれる演劇で「ロボット」という言葉を創り出した。

その時以来、科学者、作家、産業界の人々は、最も幅広い機能のロボットを構築し想像してきた。組立ライン上の自動車の組立てから、国際宇宙ステーションで機能する更に洗練されたモデルまで、初期の世代のロボットは、人間を使用するよりも安価で安全な複数の機能を想定してきた。

近年の文書に見られるように、遠隔で自動化されたシステム(武装化と非武装化)は今後20年間に激増するだろう。これらがより安価で生産しやすくなるにつれ、技術進歩したシステムは、より多くの開発途上国および非国家主体によって使用される可能性が高い。それらがより多くの機能を可能にし、人間によって頼りにされ信頼されるようになるにつれ、すべての軍種におけるそれらの利用は広範になる可能性が高い。

エンタープライズな軍全体の適用および戦場での適用-Enterprise and Battlefield Applications

ヒューマン・ロボット・チームは、軍事組織全体に幅広い適用を有する。エンタープライズ・アプローチでは、人とロボットの組合せは、一貫した訓練成果を提供するための軍事訓練施設で有用であり、人とロボットの作業分担の開発におけるベストプラクティスのためのテストベッドを提供する。日々の兵站では、車両整備、車両修理、基本的な移動作業のようなMax Bootの著書「War Made New[3]」で「鈍い汚れて危険な」と分類された作業を実行する上で、ロボットは高い実用性を発揮する。

作戦上、ヒューマン・ロボット・チームの使用は、小規模な軍隊にとっての最も永続的な課題の1つ、すなわち大量の建物への解決策を提供する。潜在的に、各人は展開された部隊の能力が指数関数的な増加を提供する地上システムと航空システムの艦隊を統制する。同時に、現代軍事組織に期待されるような効果を生み出すために、戦闘部隊や戦闘支援部隊に求められる人がどのくらい必要かを再評価する機会を提供する。これにより、部隊内の人員の数を大幅に削減される可能性がある。翻って、これは、人による情報(またはHUMINT収集)、情報分析、訓練と教育、計画作成、そして最も重要なこととして、指揮とリーダーシップという、戦争の術が要求する人の分野への再配置のために人を解放するかもしれない。

分野II:人間とAIのチーム化-Area II: Human-AI Teaming.

1899年、ハーグでは、世界をリードする軍隊の外交官が集まり、平和会議を開催した。会議の成果の1つは、航空機の攻撃的軍事使用に関する5年間の禁止であった。後で禁止を永久的にすることが意図されていたにもかかわらず、一旦、各国が航空戦の魅力的な可能性を見いだすと、それは1907年の第2回ハーグ会議で放棄された。航空宇宙技術は、最終的に軍事力とほぼ同義になった。最近のBelfer Centerの研究によると、人工知能(AI)の適用が最終的に同様の経路をたどる可能性が高いことを見出している。彼らは競争的な選択肢がないのでビジネスでは機械学習を選ぶのと同じように、軍や情報機関も軍事AI適用の使用を拡大するための競争的圧力を感じるだろう。

部分的に自律的で知的なシステムは、少なくとも第二次世界大戦以来、軍事組織によって使用されてきた。しかし、機械学習やAIの進歩は、戦いにおける自動化の利用の転換点を示している。ロボットの様に、今後10年間以上の急速な進歩は、戦争における計画作成、情報収集と分析、兵站と戦略開発をどのように遂行するかについて再考する機会を軍事組織に提供する分野である。

戦いにおけるAIを使用を駆動させる鍵は、多数の高度なセンサーの統合、広範な通信リンク、および情報の流れが拡大し続けていることである。情報の量が増え続けるにつれて、それを取り扱う人間の能力は、それに比例して増加しない。意思決定の最も遅い要素が人間の意思決定者になりつつある。戦争の競争環境では、レースは本当に迅速に行われる。

AIを特徴とする自動化システムは、このプロセスにおいてある程度の救済策を提供する可能性を秘めている。意味のある情報を照合し提示することの出来るAIと人間の意思決定者をチーム化することによって、軍事指導者は、敵対者が同様のシステムを使用していないと仮定すれば、敵対者よりも優位性を確立することができる。しかし、人間とAIの適切な結婚があっても、AIが開発するスピードは、人間の理解力を超えてますます多くの機能が移動することを意味し、必然的に自律システムに委任される必要がある。

エンタープライズな軍全体の適用および戦場での適用-Enterprise and Battlefield Applications

ヒューマン・ロボット・チームが軍事組織に広く適用されるように、ヒューマン・AI・チームも同様である。エンタープライズ・アプローチでは、人間とAIの組合せは、戦略的分析と意思決定のサポートを提供するのに役立つ。最近、米国国防副長官によって設立されたアルゴリズム戦の機能横断的チームがこれを認めている[4]。しかし、人材管理、兵站管理、人事管理を含んだその他の戦略機能の範囲はヒューマン・AI・チームの開発を通じて、大幅に改善される可能性もある。

作戦上、ビッグ・データ分析を使用した高度に洗練された意思決定支援の準備は、異なる次元の司令部における疲労した計画者を支援する可能性を持っている。また、定期的な再補給、ネットワーク管理、移動スケジュールのような機能を自動化する可能性もある。重要なことに、自律型および準自律型のシステムに組み込まれたAIは、敵対者の行動に迅速に対応する機会を提供する。

最終的には、自律システムが動作する速度が、指揮系統の更なる上位の人間を強化する。 Adams(2001)[5]が指摘しているように、戦術的戦いは機械の行う業務となり、人がすべて充当することは無くなるようになる。しかし、戦争の性質が持続しているならば、たとえ高度なAIとチーム化していても、人間は政策、戦略、および戦役においてまだ役割を果たすことになる。

分野III:人間の増強-Area III: Human Augmentation

この分野は人間と機械の革命の究極の表現であり、潜在的に最も挑戦的な次元かもしれない。これ[人間の増強]は、人々が道具や機械を使用してより速く、より強く、より賢明になるよう努めた何世紀にも及ぶ人間の努力の延長上にあるものである。我々は基本的な道具を使って洞窟人を振り返る一方で、未来に向かって前進する前に、現代の人間の増強の取組みを見ていくことはより有用である。

米軍はこの分野に大きな投資をしており、人間の戦闘能力を最適化しようとする様々な研究プロジェクトを導いている。例えば、DARPAの加速学習プログラムは、神経科学と統計モデルによって示されるように、学習のベストプラクティスを適用しようとしている。人間の身体的および認知的能力を高めるために、民間および軍事機関によって様々な努力がなされている。現在の人間の増強は、機械的および移植可能の2つのカテゴリーの増強に分けることができる。

機械的増強-Mechanical Augmentation

人間は何世紀もの間、人工四肢のような単純な機械的増強を使用してきた。しかし、この分野は、過去18年間にイラクとアフガニスタンの軍事作戦から復帰した多数の切断手術を受けた人達とともに、再び注目を集めている。このことは、ますます洗練された人工四肢の開発の促進を駆動した。同時に、これは外部外骨格のようなシステムとのより複雑な機械的増強への関心を高めている。

人間の強さと持久力を高めるために複数の研究機関が外骨格を開発している。軍事用途では、Lockheed MartinのHULC(Human Universal Load Carier)、RaytheonのXOS、カリフォルニア大学バークレー校のBLEEX(Berkeley Lower Extremity Exoskeleton)などの3つの例がある。民生用や軍事用に研究されているこれらの外部外骨格は、展開した部隊だけでなく、制度上の米陸軍全体に対して複数の機能の範囲を提供する可能性が高い。米陸軍は、これらのシステムに長年の関心を持ち、これらの能力の複数の探求に資金を提供しており、将来的には米陸軍部隊デザインや我々の潜在的な人間の増強プログラムに役立つ教訓を得るだろう。

移植可能な増強-Implantable Augmentation

インプラントは、人間が体内に埋め込むことができる小型のデバイスで、すでに複数の機能が利用可能である。人工内耳(Cochlear implant)は、十年以上にわたり、聴力障害者から聴覚を戻すために利用されてきた。心臓ペースメーカー(Cardiac pacemaker)は、医療上の理由から人体に小型機械を移植することに対する長年にわたる人間の受け入れのもう一つの例である。医療技術は引き続きこの分野で重要な駆動者となるが、利便性も駆動を促進している。

初期の研究では、脳波は思考制御運動のような単純な機能についての機械を用いて解釈できることが分かった。この研究を応用することにより、AIはより複雑な増強の機会を提供する。その一例は、米国国防総省先進研究プロジェクト庁(DARPA)であり、最近、ヘッドアップディスプレイを人間の視覚野を介して投影できる技術の検討が開始された。人々が人生を延長するために移植可能な技術を受け入れた歴史がある。将来的には、技術が利用可能な場合、軍事要員は身体的および認知的機能を高める移植増強を受けるであろうということは、受け入れるための大きな飛躍ではない。

エンタープライズな軍全体の適用および戦場での適用-Enterprise and Battlefield Applications

これらの分野のそれぞれが今後の数年間で継続した開発を見るだろうというのは明らかである。しかしながら、移植可能な増強の究極的な開発は、人間の脳の移植増強であると仮定してもよい。情報の迅速かつ効率的な回収、選択肢の分析、失われた能力の取替え(兵士が脳傷害を被った可能性がある場合)、潜在的には精神的回復性やPTSDの予防への強化など、望ましい理由の範囲がある。

この目的のための取組み既に進行中である。SpaceXとテスラのCEO、Elon MuskはNeuralinkと呼ばれる脳とコンピュータのインターフェース・ベンチャーを支援している。新生の会社は、人類がソフトウェアと融合し、人工知能の進歩に歩調を合わせるのを助ける意図をもって、人間の脳に埋め込むことができるデバイスのデザインと構築を目指している。これらの強化は、メモリを潜在的に改善したり、コンピューティング・デバイスとのより直接的なインターフェースを可能にすることが出来る。

結論:Conclusion

この記事で議論している人間と機械の一体化の形は、軍事要員が作戦やホームステーションでの訓練をする際に、彼らの仕事をより安全で簡単にする可能性を提供する。機械的強化および化学的強化は、軍隊での役割を長い間演じてきた。しかし、新しいロボットやAIの能力、そして増強の可能性は、軍隊がどのように訓練し、計画し、戦うかに潜在的な革命的変化を提供する。

社会はまだIsaac AsimovとPhillip K. Dickによって記述されたロボットの技術的習得には達していない。人類は、Kubrickの傑作「2001年宇宙の旅(2001 A Space Odyssey)[6]」や、「老人と宇宙 (Old Man’s War[7]」でJohn Scalziが書いた認知的機能強化など、多くの映画に見られる人工知能のレベルを達成していない。しかし、歴史的な技術開発は、指数関数的な開発パターンがムーアの法則を超えていることを示している。ワイヤレス容量は9ヶ月ごとに2倍になっている。インターネットの帯域幅のバックボーンは、およそ12ヶ月ごとに倍増している。1年にマッピングされるヒト遺伝子の数は18ヶ月ごとに倍増している。脳スキャンの解像度は、12ヶ月ごとに2倍になっている。

ロボット工学、AI、および増強が能力の成長において同様の道を描くことを示唆するのに十分な証拠がある。我々は、ロボットの能力、機械学習、人間のためのさまざまな増強において同様の指数関数的な成長があると仮定することができ、また仮定しなければならない。これらの進歩は、将来の敵対者の能力を大幅に強化するために使用される可能性が高い。西側の軍事組織は、同じ選択をするしかない。しかし、これらの進歩を計画し実装するには、多くの課題がある。それは、ヒューマン・マシン・チーム化に関するこのシリーズの3番目で最後の記事の話題である。

[1]【訳者註】ゴリアテ(Goliath)とは、第二次世界大戦でドイツ国防軍が使用した遠隔操作式の軽爆薬運搬車輌の通称(https://ja.wikipedia.org/wiki/ゴリアテ_(兵器))

[2] 【参照】R.U.R.(原題: チェコ語: Rossumovi univerzální roboti、ロッサム万能ロボット会社)は、チェコの作家カレル・チャペックによる戯曲。1920年に発表された。この劇の発表によって「ロボット」という言葉を創り出した、歴史的作品である。 Rossum’s Universal Robots (https://ja.wikipedia.org/wiki/R.U.R.)

[3] 【訳者註】War Made New: Technology, Warfare, and the Course of History, 1500 to Today ( http://maxboot.net/books/war-made-new-technology-warfare-and-the-course-of-history-1500-to-today-2006/)

[4] 【参照】アルゴリズム戦の機能横断的チームAlgorithmic Warfare Cross-Functional Team(AWCFT):)国防総省(DoD)は、人工知能と機械学習をより効果的に統合して、ますます能力のある敵対者等に優位性を維持するためのプロジェクトで、ロバート・ワーク前国防副長官によって設立された。(https://www.govexec.com/media/gbc/docs/pdfs_edit/establishment_of_the_awcft_project_maven.pdf)

[5] 【参照】THOMAS K. ADAMS著「将来の戦いと人間による意思決定の衰退」 Future Warfare and the Decline of Human Decisionmaking – (http://strategicstudiesinstitute.army.mil/pubs/parameters/Articles/01winter/adams.pdf)

[6] 【参照】https://en.wikipedia.org/wiki/2001:_A_Space_Odyssey_(film)

[7] 【参照】https://en.wikipedia.org/wiki/Old_Man%27s_War