航空自衛隊のF-2後継機の周辺-2(日米が中国に対抗するために協力すべき4つの技術)

4月18日の産経電子版[1]で、政府が航空自衛隊のF2戦闘機の後継となる次期戦闘機の開発に向け、日米両国の企業で構成する作業部会(ワーキンググループ)を設置する方針を固めた事が報じられました。

先月、3月6日の日経新聞電子版[2]の記事が、「次期戦闘機、日米で共同開発、英国は技術協力のみ。政府は航空自衛隊が2030年代半ばに導入する「次期戦闘機」(いわゆるF-2後継機)の開発に関し、日米共同で取り組む方向で調整に入った。」ことと、この記事に関連した「Japan Needs More Fifth-Generation Jets」というAirForceMagazineの記事[3]を航空自衛隊のF-2後継機の周辺」[4]で紹介しましたが、F-2後継機に関する日米共同開発は、具体的なスタートを切ったようです。

此に呼応するかのように、4月16日のC4ISRNETでは、「日米が中国に対抗するために協力すべき4つの技術」と題して、大西洋評議会でのレポートを引用して、F-2後継機の問題について報じています。

記事の中では、「F-3の共同開発にプログラムで日米の協力への道筋を明確に定義することで、F-3を同盟構築の防衛装備品の調達協力の目玉にできる可能性があり、これに失敗すると、防衛能力開発における将来の協力の見通しを損なう可能性がある。」と日米共同開発の日米同盟上の重要性や「極超音速ミサイルの共同開発のような特に挑発的なプログラムはエスカレーションと見なされ、それはおそらく中国、ロシア、北朝鮮からの反応を生み出し、北東アジアを越えて他の貿易や地政学的な利益を複雑にする可能性がある。」と共同開発上の課題について報じています。

航空自衛隊のF-2後継機の問題を含めて、日米の取り組むべき技術的な側面からこのレポートが興味ある内容でしたので、以下に紹介したいと思います。(黒豆芝)


Four technologies Japan and the US should team on to counter China
日米が中国に対抗するために協力すべき4つの技術
April.17.2020 By Aaron Mehta

軍が将来使用する可能性のあるドローンの群れを示す空軍研究所のコンセプトアート。(AFRL)

ワシントン—米国の大西洋評議会が金曜日に発表した新しいレポートによると、米国と日本は、中国の台頭に対抗するのに役立つ4つの技術に明確な焦点を当てて、将来の防衛技術に関する協力を拡大する必要があるとしている。

レポートは又、長年にわたり両国間の産業協力を左右する可能性のある「ハイリスク-ハイリターン」なきわどい場面にある日本の次期国産戦闘機プログラムに、米国が関与することについて議論を展開中であることを強調している。

「防衛力に関する協力の最も重要な要素は、新たな技術や能力における直接的な連携とコラボレーションである。」特定の無人システム、超音速/超高速ミサイル、及びAIの防衛アプリケーションなどを米国と日本が協力して取り組み始める必要がある3つの主要分野としてタテ・ナーキン氏と日向亮氏、山口氏が記している。

「これらの3つの分野は、激化する米中軍事技術競争の中心にある。

それらは、軍事的バランスに挑戦または維持し、主要なドメイン領域の競争-対空中及びミサイル防衛又は海面下での攻撃-著者らは、地域的および長期的には、グローバルセキュリティは、少なくともある程度はそれに基盤を有していると述べている。

具体的に著者は、米国の戦略と日本の地域の利益の両方に適合し、同時に産業能力をも調和する4つのプロジェクト領域を特定している。

  • スウオーミング(群)技術と忠実なウィングマン:
    国防総省は数年にわたり、1人のパイロットによって制御される「忠実なウィングマン」を提供し、戦闘機に従属できるドローンの開発に研究開発資金を投資してきた。
    ドローンの群れは、多額の投資が必要なもう1つの分野である。どちらの概念も日本に適合し、2016年まで遡ると、防衛省は両方の概念に関心を示していた。
  • 無人潜水艦と対潜戦能力:
    中国は過去10年間、有人・無人両方の潜水艦に多額の投資を行ってきた。米国もUUV機能への投資を始めていた。しかし、日本のIHIは国内のUUVを開発したにも関わらず、防衛省はまだその機能を全面的に活用していない。
    著者は、それがコラボレーションの必然的な領域であると述べている。
  • AI対応の総合トレーニング環境:
    米国と日本は2016年に共同総合訓練演習を実施したが、著者は将来的に開発が拡大することを望んでいる。
    「両国のトレーニングを加速する必要性、機械学習と仮想現実と拡張現実での共通の能力、高度に破壊されたシミュレーションとトレーニング市場を考えると、米軍と日本軍が対応しなければならない特定の作戦時の緊急事態を強調するために、総合的なシミュレーションと訓練能力を開発するための共同プログラムの可能性がある。」と彼らは記している。
  • 対無人システム:
    世界全体が無人システムに対抗するための武器に投資しているようだが、著者は2つの国が一緒に実用的な技術を見つけるための確かなスポットを見つけている。
    日本の調達グループは現在、このミッションのために「高出力マイクロ波発生システム」をテストしているところである。

それは全て理論上では良さそうだと著者たちは認めているが、両国間の技術開発を高めるには非常に現実的な課題がある。

日本の近代化の優先事項は、島国を保護するために設計された防御というレンズを通して最もよく見える。これは、この地域での軍事力の投射により向かう傾向のあるアメリカの姿勢とは対照的である。更に、日本は米国に比して、宇宙軍やサイバー作戦で遅れているため、複数の分野でクロス・ドメインでの協力が課題となっている。

これらの交渉はまた、「共同技術研究の特質に対する異なる認識」の影響も受けていると著者らは述べている。「米国の防衛当局は、「協力の基礎として作戦の概念と能力要件を強調している」一方、日本の当局は「技術開発と産業基盤の利益に引き続き焦点を合わせている」。」

 

その他の課題には、日本の防衛支出に対するGDPの1%の上限や、日本の防衛産業の状態がある。これは、2014年までは完全に日本政府のニーズへの対応に焦点が当てられていた。
業界は技術的に非常に優秀だが、比較的小規模で、輸出経験も限られている。-東京は有利な契約でその業界を保護することに関心を持っている。

2020年1月14日、ワシントンDCのペンタゴンで、マークエスパー国防長官と日本の河野太郎国防大臣の共同記者会見。(写真:国防総省、海軍二等兵曹、ジェームズK.リークラス)

一方、米国企業は「収益の損失、機微技術の移転の可能性、重要なサプライチェーンにおける米国企業の日本企業への置き換えの可能性」について懸念を抱いていると著者らは述べている。
これらの問題のいくつかは、進行中の日本の戦闘機開発プログラムにおいてアメリカ企業が果たすことができる役割についての進行中の議論において最前線に立っている。

日本は最近、ロッキードマーティンによるF-22 / F-35ハイブリッド設計の提案を拒否し、「既存の戦闘機から派生したものの開発は、日本主導の開発の観点からは候補になり得ない。」と明言している。

F-3の合意を正しく得ることは、両国がどのようにして戦闘能力を共同で開発するかについて長期的な意味を持つと著者らは警告し、防衛アナリストのグレッグ・ルビンスタイン氏は次のように述べていると語った。「このプログラムで日米の協力への道筋を明確に定義することで、F-3を同盟構築の防衛装備品の調達協力の目玉にできる可能性がある。」これに失敗すると、「防衛戦力開発における将来の協力の将来性を損なう可能性がある。」

内部の問題はさておき、日米間の協力は、北京、そしてそれほどではないがソウルで見られるレンズを通して検討する必要がある。

「認識のわずかな違いでさえ、軍事戦力の日米共同開発における調整の範囲に制限を生み出す。特に、極超音速ミサイルの共同開発のような挑発的なプログラムは、エスカレーションと見なされ、それはおそらく中国、ロシア、北朝鮮からの反応を生み出し、北東アジアを越えて他の貿易や地政学的な利益を複雑にする可能性がある。」と著者らは警告し、中国はカウンターウェイトとしてASEAN諸国にもっと圧力をかけようとするかもしれないと指摘した。

更に、韓国は「敵対的なレンズを通してではなく、歴史的及び認識上の問題から生じる緊張した関係のレンズを通して重要な日米協力と見る可能性が高く、日米韓の三国間協力をさらに複雑にするものと考えられる。」

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[1] https://www.sankei.com/politics/news/200418/plt2004180010-n1.html
[2] https://www.nikkei.com/article/DGXMZO56436030V00C20A3PP8000/
[3] https://www.airforcemag.com/article/japan-needs-more-fifth-generation-jets/
[4] https://milterm.com/archives/1117