現代の武力紛争における精密パラドックスと精密打撃の神話 (RUSI)

ブルームバーグ日本語版ニュースによると「ヘグセス米国防長官は22日午前、イラン核施設への攻撃について記者会見を開き、潜水艦からの巡航ミサイル『トマホーク』発射に加え、ステルス爆撃機B2によって14発の『バンカーバスター(地中貫通爆弾、MOP)』を投下したと明らかにした。会見に同席したケイン統合参謀本部議長によると、『ミッドナイト・ハンマー』と称された今回の作戦では、ミズーリ州のホワイトマン空軍基地からB2爆撃機が出撃した。また、米軍が攻撃を受けたとの報告はないとケイン氏は述べた」と報道されている。

今回の作戦の詳細は、逐次明らかにされていくことだろう。使用された兵器は正に「精密性」をキーワードとするものだと言われている。ここで紹介するのは、この「精密性」について、考えさせられる昨年5月にRUSI(英国王立防衛安全保障研究所)のサイトに掲載された論考である。「精密打撃(precision strike)」は一見魅力的な相手を屈服させる戦いの方法に思えるが、その考え方に一石を投じる内容となっている。(軍治)

現代の武力紛争における精密パラドックスと精密打撃の神話

Precision Paradox and Myths of Precision Strike in Modern Armed Conflict

Amos C Fox

8 May 2024

著者:エイモス・C・フォックス(Amos C Fox)はレディング大学の博士課程に在籍。非正規戦研究所のチーフ・ヒューマン・リソース・オフィサーでもあり、ポッドキャスト「Revolution in Military Affairs」のホストを務める。

精密打撃(precision strike)は、現代戦(modern warfare)において非常に大きな役割を担っている。第一次ドローン時代において、ドローンを使った精密打撃(precision strike)は、正確な初回必打(first-time hits)を約束する。ドローンに基づく精密打撃(drone-based precision strike)と精密打撃に基づく戦略(precision strike-based strategies)は、より文明的で無防備な戦争遂行方法(method of waging war)を提供するように見えると主張する者もいる。エイモス・C・フォックス(Amos C Fox)は、「精密パラドックス(Precision Paradox)」は精密戦略の潜在的欠点を説明するための警告的ヒューリスティックであり、それによって意思決定者が思考に適度なリアリズムを取り入れることを可能にすると主張している。「精密パラドックス(Precision Paradox)」はまた、直線的で最良のシナリオを想定した軍事思想ではなく、リアリズムと理性に根ざした軍事思想に立ち返る必要性を説くのに役立つ。

2003年4月4日、米空軍は、「ケミカル・アリ(Chemical Ali)」として知られるアリ・ハッサン・アル=マジッド(Ali Hassan Al-Majid)の自宅に、2発の統合直接打撃弾(JDAM)衛星誘導爆弾を投下した。アリ(Ali)はサダム・フセイン(Saddam Hussein)のいとこであり、サダム(Saddam)のインテリジェンス機関の長官であった。この打撃の直後、ドナルド・ラムズフェルド(Donald Rumsfeld)米国防長官は、「ケミカル・アリ(Chemical Ali)の恐怖支配は終わったと信じる」と述べた[1]。「ケミカル・アリ(Chemical Ali)」への打撃は、サダム・フセイン(Saddam Hussein)が潜伏している可能性があるとインテリジェンス機関が示唆したドーラ農場への米国の精密打撃(precision strike)のわずか数週間後に行われた。どちらの場合も、打撃は正確で、狙ったターゲットに正確に命中したが、効果はなかった。サダム・フセイン(Saddam Hussein)の場合は、打撃の間、彼は農場にいなかったので、打撃は効果がなかった。

マイケル・ゴードン(Michael Gordon)とバーナード・トレイナー(Bernard Trainor)は、これらの打撃が戦争に与えた影響について次のように述べている。「ケミカル・アリ(Chemical Ali)はまだ健在だった。サダム(Saddam)とその幹部は四散したが、彼らはまだ終わっていなかった」[2]。ダグラス・ジェール(Douglas Jehl)とエリック・シュミット(Eric Schmitt)は、2003年3月から4月にかけての米国の精密打撃のスコアカードを要約し、米国は13人のイラクの政治・軍事の幹部をターゲットにしたが、いずれも空振りに終わったと書いている[3]。さらに、サダム・フセイン(Saddam Hussein)、ケミカル・アリ(Chemical Ali)、その他のイラクの上級指導者を抹殺しようとした結果、100人以上の民間人の死という結果に終わり、精密打撃といわゆる「斬首戦略(decapitation strategies)」の魅力が誤っていたことの前兆となった[4]

2021年8月、アフガニスタンからの撤退に奔走していた米軍は、最新のドローンによる探知と打撃能力を駆使して、敵戦闘員を輸送していると思われる車を攻撃した。この打撃は正確で、車に命中し、車内の人々を殺害したが、7人の子供を含む周辺の人々を殺害したため、効果はなかった[5]。ジャーナリストのアズマット・カーン(Azmat Khan)は、この打撃で民間人が死亡したのは、紛争からの混乱した撤退の圧力の下で行われた性急な打撃の副産物ではなく、意図しない影響を生み、意図よりも多くの人々の命を奪い、より大きな破壊をもたらした、数百、あるいは数千に及ぶ精密打撃(precision strikes)のうちの1つであると正しく指摘した[6]

2019年10月、太平洋グリフィン演習中にフィリピン海で海軍攻撃ミサイルを発射するUSSガブリエル・ギフォーズ。

米海軍提供 / シャノン・レンフロー

イラクとアフガニスタンのどちらの例でも、精密打撃をめぐる単純なパターンが浮かび上がってくる。(a)正確だが効果のない打撃、(b)ターゲットに対して、場合によっては戦争全体に対して、ターゲットと設定した者が望む効果を生み出せず、(c)民間人の死傷者や巻き添え被害の増加をもたらす。このパターンは「正確だが効果のないサイクル」として理解され、(d)「精密パラドックス(Precision Paradox)」を生み出す。本稿におけるパラドックスの定義は、許容できる前提から健全な推論を行ったにもかかわらず、無分別、非論理的、あるいは受け入れがたい結果をもたらす声明や命題である。

この定義を考慮すると、「精密パラドックス(Precision Paradox)」はd=a+b+cと理解できる。この論理は、現代の武力紛争において「精密パラドックス(Precision Paradox)」が繰り返し起こることを説明する因果メカニズムであり、間違いなく、なぜこのパラドックスが将来の戦争においても関連し続けるのかを説明するものである。「精密パラドックス(Precision Paradox)」は、精密打撃理論と精密打撃イデオローグたちの熱狂的な熱意と、精密打撃の効果に関する客観的真実という事実基盤との間の不調和として要約することができる。

ここでの精度と精密打撃に関する議論は、政策、戦術、リーダーシップ、訓練、弾薬の種類や運搬システムなどを検討するものではない。本稿は、精度と精密打撃を因果関係の観点から探求するものである。そのために、本稿は、国家が精密打撃(precision strikes)を用いるのは、それが非精密打撃(non-precision strikes)よりも安全な選択肢であると認識されるからである、という受け入れ可能な仮定から出発する。この場合、「より安全な(safer)」とは、同じ状況下で従来型の打撃(conventional strikes)や非精密打撃(non-precision strikes)を行うよりも、死や破壊が少ないことを意味する。「より安全な(safer)」とは、打撃が不正確であること、つまり、ほとんど誤差なくターゲットに命中することを意味しない。

ここで問題にしているのは、精密兵器の精度ではない。本稿の「精密パラドックス(Precision Paradox)」についての考察は2つある。第一に、精密打撃という大まかな考え方は万能ではなく、したがって明示的に説明したり言及したりすべきではないという事実を認めることである。第二に、「精密パラドックス(Precision Paradox)」の検証は、精密打撃がなぜ万能ではないのかを、因果関係や意図された結果の観点から説明するための言語を構築しようとするものである。この検証の主なアウトプットは、「精密パラドックス(Precision Paradox)」という言語とコンセプトであり、政策提言や訓練の改善方法、リーダーシップに関する講義ではない。

「精密パラドックス(Precision Paradox)」と精密打撃理論との関係を考察してみると、4つのポイントや基本的な考え方が浮かび上がってくる。

第一に、理論家やその他の精密擁護者は、精密打撃理論、およびその派生コンセプト、ドクトリン、フォース・デザインを、欠陥のある論理の上に構築した。精密打撃理論の欠陥のある論理は、政治指導部、軍の上級司令官、あるいは司令部をターゲットにした精密打撃(precision strikes)が、敵対する国家、その軍隊、あるいはその軍事作戦を、一戦交えることなく(nary a fight)崩壊させるのに十分な認知的混乱を引き起こすことができるという仮定(この考え方が導入されて以来、ほとんどすべてのコンセプトで無効であることが証明されている)に基づいている[7]。この仮定が無効であることは歴史が証明しており、せいぜい空想にすぎない。

第二に、正確な打撃と効果的な打撃はイコールではない。モスルの会戦(battle for Mosul)(2016年10月~2017年7月)における作戦が明確に示しているように、正確な打撃が効果的でない場合、精密な打撃に基づく用兵(precision-based warfighting)には、追加的な打撃が必要となり、精密な打撃の欠点を相殺するために、陸上部隊の活動が必要となる。

第三に、精密打撃(precision strikes)の精度は高いが効果がないことが多く、最初の精密打撃で意図した効果を生み出すためには、追加の打撃や陸上作戦が必要であるとすれば、精密戦略は紛争地における民間人の犠牲や巻き添え被害を減少させることはない。それどころか、モスルの包囲(siege of Mosul)のような会戦は、精密打撃の正確だが効果のない打撃が周期的に繰り返されることで、民間人の死傷者や巻き添え被害が増加することを物語っている[8]。これに対応して、「精密パラドックス(Precision Paradox)」は、正確だが効果のない攻撃が蓄積されるにつれて、民間人の死傷者や巻き添え被害も増加することを示している。

第四に、歴史上、精密打撃が戦争の終結を早めた例はまだ一つもない。一方、精密打撃戦略によって引き起こされた消耗の戦争(wars of attrition)は、歴史にぎっしりと記録されている。別の言い方をすれば、「精密パラドックス(Precision Paradox)」は、打撃は正確だが効果がないことが多い精密戦(precision warfare)が消耗の戦争(wars of attrition)を引き起こすことを示している。

これら4つの仮説を総合的に見ると、「精密パラドックス理論(Precision Paradox theory)」の基礎となるものである。これら4つの原則と「精密パラドックス(Precision Paradox)」を総称して、現代あるいは将来の武力紛争における精密戦(precision warfare)の提唱や研究に関心を持つ学者、政策立案者、実務家の出発点とすべきである。

理論家やその他の精密打撃擁護者たちは、精密打撃理論、およびその派生コンセプト、ドクトリン、フォース・デザインを、欠陥のある論理の上に構築した。

本稿は次のような流れで進む。

第一に、精密戦(precision warfare)が20世紀の軍事戦略・作戦の頂点とされるに至った経緯を明らかにするため、精密打撃理論の進化の背景を説明する。そのために本稿では、ナポレオン・ボナパルト(Napoleon Bonaparte)のアウステルリッツ作戦(政治的・軍事的手腕の頂点)から今日の精密打撃戦(precision strike warfare)までの緩やかな系譜を提示する。この2つのコンセプトの関連性は、政治も軍事も同様に、政治的・軍事的な決定的勝利を常に追い求めているということである。今日の手段はボナパルト(Bonaparte)のそれとは変わったが、迅速かつ決定的な勝利の追求は相変わらず飽くことを知らない。

第二に、本稿では3つのケース・スタディを使って、「精密パラドックス(Precision Paradox)」を説明する。このケース・スタディは、「精密パラドックス(Precision Paradox)」に関する本稿の4つの主要なポイントそれぞれを説明するために用いられている。

(1)正確な打撃が必ずしも効果的な打撃に直結しない。(2)軍の上級指導者を排除しても、精密打撃理論が想定するような作戦への影響はない。(3) 精密戦(precision warfare)はしばしば民間人の死傷者や巻き添え被害を増加させる。(4) 精密戦(precision warfare)は消耗の戦争(wars of attrition)を助長する。

本稿では、ロシア・ウクライナ戦争を題材に、精密打撃理論(precision strike theory)や精密愛好家(precision enthusiasts)が信じているような、軍の上級指導部や司令部への精密打撃(precision strikes)は、認知の崩壊を早め、迅速な決定的作戦(decisive operations)を加速させるものではないことを描く。次に、シリア内戦のラッカの会戦(Battle of Raqqa)と生来の決意作戦(Operation Inherent Resolve)のモスルの包囲(siege of Mosul)を検証し、正確な打撃が効果的な打撃につながらないことを確認する。ラッカとモスルでは、精密戦(precision warfare)が民間人の犠牲や巻き添え被害を多く出す戦略であり、消耗の戦争(wars of attrition)をもたらすものであることが示されている。

第三に、本稿でも明らかなように、「精密パラドックス(Precision Paradox)」はある程度決定論的である。「精密パラドックス(Precision Paradox)」の決定論的力学の結果、消耗がパラドックスの特徴となっている。ほとんどの政策立案者や実務家が消耗(attrition)を悪者扱いしていることを考慮すると、本稿は精密打撃(precision strike)が理論、戦略提言、軍事ドクトリン、作戦計画において果たしうる役割を評価する際に反省しなければならない考察で結ばれている。

方法と限界

「精密パラドックス(Precision Paradox)」とは、武力紛争研究に対する帰納的アプローチから派生した理論である。この理論は、精密戦理論(precision warfare theory)と現代(そして未来)の武力紛争に対する一般的な理解をつなぐ架け橋となるものである。本稿では、「精密パラドックス(Precision Paradox)」を単純な方程式で要約する。以下の場合、e=a+b+c+dである。

e = 精密パラドックス

a = 正確な打撃は効果的な打撃につながらない

b = 効果はないが、正確な打撃は望ましい効果を生み出さない

c = 効果のなさを克服するために、追加打撃や作戦が実施される

d = 追加の打撃は、民間人の犠牲と巻き添え被害を増加させる

「精密パラドックス(Precision Paradox)」は、精密打撃(precision strikes)が実際に一度目の成功を収め、つまり、特定のターゲットに対して追加的な武力行使を必要とせず、打撃が意図した目的を達成した場合には現れない。「精密パラドックス(Precision Paradox)」の方程式を考えると、変数aまたはbが存在しない場合、「精密パラドックス(Precision Paradox)」は純粋に理論的な考察となる。

本稿は、「精密パラドックス(Precision Paradox)」の信憑性を裏付けるために、オープンソース情報に依拠している。国家に基づく精密打撃(state-based precision strikes)に関する定量化可能なデータのほとんどは機密扱いであるか、実証的に文書化されていないため、オープンソース情報が主な情報手段である。それにもかかわらず、本稿は「精密パラドックス(Precision Paradox)」理論を支える論拠を支持するために、定性的な推論に依拠している。

本稿には2つの限界がある。

第一に、米国の精密理論および使用法に過度に依存していることである。この過度の依存は、現代戦(modern warfare)におけるドローン戦(drone warfare)と精密誘導弾(PGM)使用における米国の包括的なリードによるものであり、米国に有利なバイアスによるものではない。

第二に、本稿は定量的な分析では裏付けられない理論に基づいたヒューリスティック(精密パラドックス)を提供している。例えば、ラッカやモスルのような会戦を巻き戻し、精密弾薬の使用を無誘導弾薬に置き換えて、2つのアプローチの差異を比較することはできない。このような理由から、「精密パラドックス(Precision Paradox)」は戦いにおける法則ではなくヒューリスティックと呼ばれている。

精密戦:背景情報

アントワーヌ・ブスケ(Antoine Bousquet)は、精密打撃の魅力は、戦争は敵対者の上級指導部を一握りの誘導弾で排除するだけで、安価かつ迅速に勝利できるという信念で、政治と軍事の指導者たちを酔わせ続けていると指摘する[9]。ジェームズ・ロジャーズ(James Rogers)は、この熱病は第一次世界大戦の初期から米国を襲っていたと指摘する。ロジャーズ(Rogers)は、二次世界大戦の間の時期、米国の空軍理論家は、ヨーロッパの同業者の多くとは異なり、「敵への無差別・不均衡な爆撃を避けようとし……勝利を確保しつつ、民間人と米国軍人の両方の犠牲を減らそうという動機を核心に置いていた」と主張する[10]

にもかかわらず、精密打撃と短期決戦の熱狂的な支持者たちは、それに反する証拠を避け、精密弾薬による選択的なターゲティングが敵対者の戦略的麻痺と戦意喪失を引き起こすと仮定し、その糸を紡ぎ続けている。麻痺と戦意喪失は、敵対者の支配体制の崩壊を引き起こし、その軍隊がほとんど戦闘(combat)を行わずに兵営に戻ることを引き起こす可能性がある、という理論である[11]

精度の追求とは、簡単に言えば正確さの追求である。正確さの重要性はそれ自体が最終目的ではなく、財政的な慎重さのために追求される[12]。限られた資源は、すべての国家・非国家主体を制約し、その資源が慎重に管理されなければ、その結末を早めてしまう。例えば、アンドリュー・クレピネビッチ(Andrew Krepinevich)は、効率重視の設備、組織、運営方法は有限の手段を反映していると断言している[13]

精密理論では、正確な兵器システムとスタンドオフからの作戦により、ターゲットを殺傷または破壊するのに必要な弾数が減少すると主張する[14]。さらに、正確な兵器は理論上、巧みな戦術行動を呼び起こし、その結果、戦場での勝利を早める[15]。理論家は同様に、正確な兵器は行為主体の後方支援部隊の負担を軽減すると主張する[16]

しかし、ここ数十年、ヒューマニズムの視点は、戦いにおいて財政保守主義と同等、いやそれ以上に重要視されるようになった。国際社会が戦いにおける比例性、軍事的必要性、差別、過度の苦痛の防止を支持するのは、このような態度の変化を反映している[17]。さらに、国際人道法(IHL)を取り入れたドクトリン、技術、訓練の適用は、このコミットメントの目に見える実証である。精密主義理論のヒューマニズム的な傾向は、国際人道法(IHL)との緊密な連携を維持することに関心のある各国政府にアピールするものである。

米国とその同盟国を含む現代の精密戦略は、このような戦争の文脈の中にある。第一次ドローン時代(ドローン愛好家が湾岸戦争後を指す言葉)の現代の精密戦略は、国際人道法(IHL)と資源を考慮した長距離・近距離精密兵器システムを使用する[18]。さらに、行動主体は、発見されにくく、交戦をより困難にするために、スタンドオフや小規模な陸上戦力を使用する。

ブスケ(Bousquet)は、今日の政策立案者、学者、実務家の多くが、ドローン戦(drone warfare)、精密誘導弾(PGM)、精密打撃戦略(precision strike strategy)が現在、そして将来の武力紛争に勝利するための関連性について、同じような宣言をしていると指摘する[19]。1991年の湾岸戦争は、米国とその同盟国が、無気力なイラク軍を撃退したものであり、現代の精密打撃(precision strike)が最初に試されたものであった[20]。湾岸戦争中、精密誘導弾(PGM)は使用された弾薬の約8%を占めたが、その「魔法(magic)」は西側諸国の注目を集めた[21]

湾岸戦争後の西側諸国の軍事思想と軍事調達は、イラクにおける精密誘導弾(PGM)の正確さに関するイメージとナラティブ(narratives)で飾られ、精密打撃(precision strike)がゲームを変える可能性があるという主張に支配される時代を生み出した[22]。第一次ドローン時代を通じて、西側の軍事的思考は、敵対者の重心(centre of gravity)を攻撃することで、長距離かつスタンドオフの精密誘導弾(PGM)が陸上兵力の使用を完全に回避し、その結果、敵が心理的麻痺に陥るという信念に傾倒した[23]

ジョン・ウォーデン(John Warden)米空軍大佐などの軍事戦略家は、心理的麻痺によって敵対者が効果的な軍事対応を展開する能力が阻害され、血なまぐさい、費用のかかる、政治的に危険な会戦の混乱や大規模な部隊展開を伴わずに、米軍司令官に独自のアウステルリッツをもたらすことができると主張した[24]。精密戦略はさらに、米国とその同盟国の双方に利益をもたらす新鮮な「軍事分野での革命(revolution in military affairs)」を促すだろう[25]。この時期の精密さへの熱狂は、その後、急速支配、並列戦(parallel warfare)、効果に基づく作戦(effects-based operations)、衝撃と畏怖(shock and awe)など、いくつかの用兵コンセプト(warfighting concepts)の動機となった。

現代の紛争は、ドローン、PGM、精密戦略が戦いの道徳的・物理的殺戮に対する解毒剤ではないことを示している。

予想通り、精密誘導弾(PGM)は1990年代初頭のニッチな能力から、1990年代後半には上品で洗練されたな新用兵戦略(chic warfighting stratagems)へと変貌を遂げた。1998年のコソボ戦争で、NATOの欧州連合最高司令官ウェズリー・クラーク(Wesley Clark)米大将は、当時の政治的な敏感さから陸上作戦は問題外であり、代わりにNATOはコソボで航空中心の精密戦略を戦うことになったと回想している[26]。ほぼ全面的に航空からの戦いとなった戦役のコソボ戦争における米軍とNATOの精密誘導弾(PGM)使用率は29%で、湾岸戦争の8%を上回った[27]

陸上作戦から航空中心の精密用兵(precision warfighting)へと後退する傾向は、その間に加速した。2001年の米国のアフガニスタン侵攻では60%の精密誘導弾(PGM)が使用され、2003年の米国のイラク侵攻では68%の精密誘導弾(PGM)が使用された[28]。武装ドローンと精密技術はその後数年の間に改善され、安価になった。このことが精密用兵技術(precision warfighting technology)の普及とドローンを多用する精密指向戦略(drone-heavy precision-oriented strategy)の発展をさらに促進した[29]

加えて、現代の紛争は、ドローン、精密誘導弾(PGM)、精密戦略が戦いの道徳的・物理的殺戮に対する解毒剤ではないことを示している。ハーラン・ウルマン(Harlan Ullman)らのような精密戦略擁護論者の、精密戦略は戦争に迅速に勝利する、陸上部隊間の会戦を回避する、精密戦略は他の用兵アプローチ(warfighting approaches)より破壊的でないという主張を裏付ける証拠はほとんどない[30]。また、精密戦略は無誘導のオプションよりも、より少ない一斉射撃(salvo)、より少ない弾薬を必要とし、より兵站の負担を軽減するという主張も、事実が裏付けていない[31]。それにもかかわらず、9.11以後の情勢には、精密戦理論(precision warfare theory)の願望と経験的な証拠との間の緊張が浸透しており、「精密パラドックス(Precision Paradox)」をさらに加速させている。

「精密パラドックス(Precision Paradox)」は、第一次ドローン時代の精密誘導弾(PGM)を基盤とする戦略と、無誘導弾に依存する戦略による巻き添え被害、物理的破壊、戦場での死が相応のものであることを明らかにしている。「精密パラドックス(Precision Paradox)」はさらに、精密誘導弾(PGM)の精度が本質的に有効性を生み出すわけではないことを示している。つまり、打撃は意図したターゲットに命中するかもしれないが、先制命中の精度にもかかわらず、打撃はターゲットに意図した効果をもたらさない可能性も同様に高い。正確だが効果のない打撃というこのダイナミズムは、意図した結果をもたらすために、打撃を少なくするのではなく、より多くの打撃を誘発する。

正確だが効果のないサイクル、すなわち「精密パラドックスの躍動(Precision Paradox’s élan vital)」は、戦いをより破壊的で長期化させる。これは精密理論が宣言する無害な戦いや戦争の迅速化とは矛盾する。最後に、「精密パラドックス(Precision Paradox)」の正確だが非効果的なダイナミズムは、精密戦略が精密誘導弾(PGM)の在庫を急速にすり減らし、産業基盤の生産量を上回り、生産が追いつくように戦役(campaigns)を遅らせたり、戦闘員が生産ギャップを埋めるために無誘導弾を使用したりする状況を生み出す。この問題は、ウクライナだけでなく、イラク、シリア、フィリピンでのイスラム国に対する米国主導の戦役(campaigns)でも現れている[32]。とはいえ、「精密パラドックス(Precision Paradox)」は、現実が戦いの実践に与える影響によって精密理論が根底から覆されるというもので、その結果、ドローン戦(drone warfare)や精密を基盤とする戦争は、ゆっくりとした消耗戦の性質(character of slow attritional grinds)を帯びることになる。

精密パラドックスにおけるケース・スタディ

「精密パラドックス(Precision Paradox)」とは、精密戦戦略(precision warfare strategies)に関連した、最適とは言えない意図しない結果の現れである[33]。「精密パラドックス(Precision Paradox)」における最適でない結果は、願望的で非現実的な精密戦理論(precision warfare theories)と武力紛争の実践との不調和から生じる。このような状況は、精密思考がその発展過程において直線的で最適なシナリオに大きく依存する一方で、戦争の真の状況や、敵対者は窮地に追い込まれている間に動機付けられ、資源を調達し、学習し、適応するという受容を説明できないために現れている。「精密パラドックス(Precision Paradox)」には、いくつかのユニークな特徴がある。しかし本稿では、民間人の犠牲と巻き添え被害、そして精密戦略の財政的コストに焦点を絞る。

精密爆撃擁護派がよく口にするのは、精密戦略や精密誘導弾(PGM)の使用は民間人の犠牲を減らし、民間インフラへの被害を抑えるというものである[34]。この定型句は、従来型の紛争よりも対テロ状況において、より事実に忠実である傾向がある。アビゲイル・ワトソン(Abigail Watson)とアラスデア・マッケイ(Alasdair McKay)は、精密性理論の正統性に異議を唱え、長射程かつ空中プラットフォームから投下される精密誘導弾(PGM)の使用は、攻撃する部隊が有用かつ効果的な民間人保護メカニズムを実施する能力を妨げると主張している[35]。その結果、ドローンや長距離火力、その他の遠隔攻撃システムの使用によって、民間人の死亡やインフラへの被害は減少するどころか、逆説的に増加している。

精密誘導弾(PGM)の使用は無誘導弾の使用よりも経済的であり、精密誘導弾(PGM)の使用は戦争の終結(end of war)を早める、と精密兵器愛好家は主張する[36]。第一次ドローン時代における武力衝突は、この主張を裏付けるものではない。たとえば、ラッカとモスルでの「生来の決意作戦(Operation Inherent Resolve」の会戦で、米国は精密打撃技術をかなり使用したにもかかわらず、それぞれ終結までに数カ月を要した。ラッカでは5カ月間、モスルでは10カ月近くイラク北部を水浸しにした。モスルの会戦期間を歴史的な文脈で捉えると、第一次世界大戦の有名な会戦の一つであるベルダンの会戦(Battle of Verdun)も約10か月続き、その時代特有の精密打撃能力(precision strike capability)、つまり観測による間接火力が主流であった。

以下のケース・スタディは、「精密パラドックス(Precision Paradox)」と精密誘導弾(PGM)に関連する課題を示している。本稿のケース・スタディは、「精密パラドックス(Precision Paradox)」の適用可能性を補強する因果メカニズムを浮き彫りにしている。ケース・スタディはまた、「精密さが暴走(precision goes wild)」し、その理論的裏付けに従って行動しない場合に何が起こり得るかを示しているため、注意喚起の物語にもなっている。

ラッカの会戦(2017年6月~10月)

ラッカでは、イスラム国は市民の中で活動していた。敵から身を守るため、イスラム国はラッカの住民を人間の盾として利用した。イスラム国はまた、街のインフラを保護、拠点、指揮・統制のために利用した[37]。ラッカにおけるイスラム国の戦略は成功し、同市とその住民に対するイスラム国の支配を排除しようとする米国、連合軍、米国の代理人たちの取組みを鈍らせた。

2017年5月、ジム・マティス(Jim Mattis)米国防長官は、シリアにおける米国の戦術変更を力説した。イスラム国に対抗して作戦する米軍は、もはや消耗戦術を用いず、代わりに殲滅戦術を用い、ラッカから始まる「ISIS(イラクとシリアのイスラム国)のカリフ制国家を解体する」ことで、イスラム国の戦闘員がラッカから逃亡する機会を失わせるというのだ[38]。実際的には、マティス(Mattis)の指示は、米軍がシリアで作戦するイスラム国のメンバーを狩り、排除することを意味していた。マティス(Mattis)は、交戦規則(rules of engagement)に変更はなく、米国は依然として国際人道法(IHL)を容易に遵守すると述べたが、彼の発言は、米国がラッカでイスラム国をより冷酷に追及することを暗示していた[39]

米国と連合軍がイスラム国と密接に接触している代理人を使っても、ターゲットの特定プロセスは改善されなかった。

米国の戦略と戦術の変更は、シリアにおける米軍の増派にはつながらなかった。その代わりに米国は、イスラム国に対する戦闘作戦の代理人としてシリア民主軍(SDF)に頼った[40]。米国は、会戦の間中、長距離精密火力、武装ドローン、攻撃航空、戦闘機、戦闘アドバイザーなどで、その代理部隊を支援した[41]。陸上戦闘を代理部隊に委託する一方で、ターゲティングとインテリジェンスを支援する十分なアドバイザーを維持することで、米国は国際人道法(IHL)に関する考慮と責任の大部分をシリア民主軍(SDF)隊に負わせた。

米国とその連合軍および代理軍は、2017年6月にラッカの会戦(Battle of Raqqa)を本格的に開始した。イスラム国は、ラッカの市民の中で作戦することで、センシング、ターゲティング、精密打撃(precision strike)における米国の優位性を相殺しようとした。イスラム国はラッカの住民を人間の盾として利用し、米軍の打撃能力を惑わせ弱体化させ、米軍の民間人保護能力を挫折させた。イスラム国はまた、民間インフラを保護、拠点、維持、指揮・統制のために利用した[42]。イスラム国が民間インフラを利用したことで、当然のことながら、市内での巻き添え被害や民間人の犠牲が拡大した。

イスラム国の戦略は理にかなっていた。それは、遠隔監視、精密打撃(precision strike)、そして戦闘員と民間人を見分ける米国の能力を混乱させることによる人的資本の損失において、米国の大きな優位性を克服する方法を組織に提供した[43]。イスラム国の戦略と戦術は、驚くべきものではない。マイケル・シュミット(Michael Schmitt)は、「戦場で精度の高い能力を不平等に保有する場合、その結果生じる非対称性によって、不利な側が国際人道法の最も基本的な原則に違反する戦術に訴える可能性がある」と主張している[44]。イスラム国は、イラク自由化作戦の初期にイラクで米軍が経験したような方法で活動し、国際人道法を遵守しようとする米国と連合軍の試みを混乱させた。

さらに、米国と連合軍がイスラム国と密接に接触している代理人を利用しても、ターゲットの特定プロセスは改善されず、民間人の死傷者やインフラへの被害を減らすどころか、増やすという二次的効果をもたらした。米国のシンクタンクであるランド研究所もこの評価に賛成しており、「非常に限定された地上部隊と自衛隊への依存度を高くしてラッカ作戦を実施することを選択したことで、米国は事実上、リスクを米軍関係者からラッカの民間人に転嫁した」と指摘している[45]。その結果、精密誘導弾(PGM)の使用は会戦中の民間人被害を最小限に抑えることはほとんどできなかった。

ラッカの破壊は完了した。会戦後、ヤン・エーゲランド(Jan Egeland)国連顧問はラッカについてこう述べた。「今、地球上でこれ以上悪い場所はない」[46]。シリアとイラクでの紛争は、戦いの歴史上最も精密な爆撃戦役(bombing campaigns)であったという米国政府高官の主張と照らし合わせると、この発言の皮肉を感じることができる[47]。紛争前の同市の人口は約20万人。会戦終結までに市内に残った民間人はおよそ1万8000人で、市内での闘いでラッカの24地区のうち14地区が破壊された[48]。カーン(Khan)は、その数は不確かだが、米軍の精密打撃(precision strikes)はしばしば罪のない市民や民間インフラを敵対的なターゲットとして誤認させ、会戦中に民間人が大量に死亡することに大きく貢献したと指摘している[49]

モスルの会戦

生来の決意作戦(Operation Inherent Resolveのモスルの会戦は、大規模な戦闘作戦におけるドローンを駆使した精密戦略が、いかに「精密パラドックス(Precision Paradox)」を誘発するかについて、示唆に富む例を示している。2016年10月から2017年7月にかけて、一方では米国とその連合軍、イラク人、他方ではイスラム国との戦闘(combat)が複合的に作用し、モスル市は破壊された。統計によれば、この会戦によって200万人いた同市の人口は70万人に減少し、90万人の国際避難民(IDP)が生まれた。すべての側が生き残りと勝利の両方を求めたこの会戦で、4万戸以上の家屋が破壊され、1000万トン以上の瓦礫が発生し、イラクには20億ドルの復興法案が残された[50]。今にして思えば、この9ヶ月に及ぶ会戦は、ハイテクを駆使した現代戦よりも、第二次世界大戦における市街用兵(urban warfighting)の苦難を彷彿とさせる。

米国防総省は、会戦中の民間人の死者は320人から1,400人の間であると示唆している。一方、いくつかの非政府組織(NGO)は、民間人の死者数は10,000人から11,000人の間であるとしている[51]。これらの非政府組織(NGO)の多くは、民間人の死者数の計算は、連合軍とイラク軍の打撃による直接的なものであり、すべての戦闘員の活動が複合的に影響した結果ではないとしている[52]。たとえば、ニューヨーク・タイムズ紙は、2021年の暴露記事で、この会戦の死者数の多さについて解説している。カーン(Khan)は、乏しいインテリジェンス、性急なターゲティング、そして何よりも結果を求めることが、モスルにおける米国のドローン主導の精密打撃戦略(drone-dominated precision strike strategy)を、民間人の多数の死傷者、大量の国内避難民、インフラへの甚大な被害という運命に追いやった、と正しくコメントしている。

一歩引いて考えてみると、なぜ米国の精密戦略は、そのコンセプトの理論的約束を果たすことができなかったのだろうか?イスラム国の基本的な「生き残りたい」という願望が第一の要因である。基本的なシステム理論を考慮し、現実主義者の目を紛争研究に応用すれば、生き残りたいという願望は驚くべきことではない。フランスの軍人であり学者であるアーダン・デュ・ピック(Ardant du Picq)は、「会戦における人間とは……ある瞬間、自己保存の本能が他のすべての感情を支配する存在である」と主張している[53]。ロシアの軍事理論家、アレクサンドル・スヴェチン(Alexander Svechin)もデュ・ピック(du Picq)に共鳴し、戦いにおける第一の原則は、敵の迅速かつ決定的な打撃から身を守ることであるとしている[54]

イスラム国は、ラッカで使ったようなさまざまな戦術を使い、自己保存を追求した。イスラム国の最優先戦術は、米軍、連合軍、イラク軍の偵察システムを回避し、ターゲティング・プロセスを混乱させることだった[55]。モスルで構造物から構造物へとトンネルを掘るのは、イスラム国の戦闘員が偵察とターゲティングから逃れようとした方法のひとつだった。精密誘導弾(PGM)打撃は正確であったが失敗した場合、イスラム国の戦闘員は移動し続け、被害を受けた建造物から周辺の他の建物へと逃亡した[56]。イスラム国の再配置は、新たなターゲティング・サイクルとさらなる精密打撃(precision strikes)を推進した[57]

イスラム国と対テロ部隊の戦闘の反復的性質(iterative character of combat)は、古典的な「課題と対応のサイクル(challenge–response cycle)」の形をとっていた。「課題と対応のサイクル(challenge–response cycle)」は、敵対的な状況における戦闘(combat)を現実主義的に反映したものであり、精密理論を支配するようなモノクロームの直線的理論から脱却し、戦いの真の闘争(true struggle of warfare)を示すものである。「課題と対応のサイクル(challenge–response cycle)」は、ミクロレベル(個別的な人間活動のレベル)、マクロレベル(戦略的行為主体間の相互作用のレベル)、そしてその間にある社会組織のあらゆるレベルで発生する。どのような場合でも、「課題と対応のサイクル(challenge–response cycle)」は、ある行為主体が目標を達成するか、あるいは競争を続けることができなくなり、紛争から身を引くまで続く。

理論から実践に移ると、モスルでは、米国と連合軍がイラクの陸上部隊を支援するため、絶え間ない精密誘導弾(PGM)打撃でイスラム国を理路整然と追撃したことで、「課題と対応のサイクル(challenge–response cycle)」が目に見える形で現れた。米軍と連合軍の善意にもかかわらず、圧倒的不利な状況の中で生き残り、勝利しようとするイスラム国の熱意は、米軍と連合軍の精密誘導弾(PGM)とイラク陸上部隊の作戦を連動させ、イスラム国を追いかけながらモスルを引き裂く結果となった[58]

イスラム国による人間の盾の使用や、戦場のホットスポットへの民間人の強制移動は、「課題と対応のサイクル(challenge–response cycle)」が精密打撃の有効性(precision strike effectiveness)を損ない、「精密パラドックス(Precision Paradox)」を助長するもう一つの例である。近接と密集の原則は、戦場に民間人の割合が高ければ、使用される戦術や弾薬にかかわらず、それに比例して民間人の死傷者や巻き添え被害の割合も高くなることを規定している[59]。総合的に見れば、イスラム国による人間の盾の使用と強制移転(対テロ部隊が提供した課題への対応)は、モスルにおける民間人の犠牲と巻き添え被害を加速させた。

「士気高揚打撃(morale strikes)」や「ルーフ・ノッキング(Roof knocking)」のような悪質な戦術は、挑戦と対応のサイクルの破壊的効果を悪化させ、「精密パラドックス(Precision Paradox)」の一因ともなった。たとえば、イラク治安部隊は、イスラム国の強固な抵抗に直面しながらも、前進しようとしない姿勢を見せた。米軍と連合軍は、イラク人を鼓舞して前進を続けさせるために、「士気高揚打撃(morale strikes)」(航空支援の存在を示すための重要でない物への攻撃)を行った[60]。モスルでの民間人の死傷や巻き添え被害に対する「士気高揚打撃(morale strikes)」の貢献度は不明だが、市街地を襲った非効率と破壊の波に貢献したことは間違いない[61]

「ルーフ・ノッキング(Roof knocking)」とは、精密誘導弾(PGM)をターゲット上空で発射し、頭上で爆発させることである。このエアバーストは「ノック」を意図したもので、建物の住民に施設からの退去を促すものとされている[62]。ノックの直後に精密誘導弾(PGM)の一斉射撃が行われ、ターゲットを排除する。モスルでの「ルーフ・ノッキング(Roof knocking)」は、その狙いが外れ、必要な弾薬が少ないときに多くの弾薬を使用し、過度の損害をもたらしたため、効果がなく、無駄で破壊的であることが証明された[63]

このケース・スタディの結論として、オープンソースの情報には、モスルにおける相当数の民間人犠牲者と巻き添え被害の責任をどの行為主体が負うのか、その真の区別を解析するための忠実さが欠けている[64]。とはいえ、米国が大々的に宣伝した精密戦略(precision strategy)と精密打撃能力(precision strike capabilities)は、モスルではその宣伝文句に応えることができなかった。「課題と対応のサイクル(challenge–response cycle)」、簡単かつ迅速に敗北することを望まないイスラム国、戦闘(combat)で前進することに消極的なイラク治安部隊、疑問の残る米軍と連合軍の戦術、これらすべてが、モスルにおける米軍と連合軍の直線的精密戦略を頓挫させる一因となった。この戦略は逆説的な効果を生み、精密打撃(precision strike)がモスルにおける漸進的な消耗の波に大きく貢献し、モスルの人命と人工建造物を一度に一つずつ破壊していった。

米陸軍はモスルでの精密戦略の限界を、やや意外にも認めている。米陸軍のモスル研究グループは、会戦から学んだ教訓を抽出するために米陸軍訓練ドクトリン・コマンド(TRADOC)によって集めた小さな組織だが、次のように主張している。

モスルでは、物理的な地形の破壊が、人員や通信ノードに対する同等の効果と必ずしも一致しなかった。モスルにおける弾薬の選択は、都市の構造密度によって増幅され、敵に対する意図された効果に必ずしも比例せず、交戦規則(rules of engagement)への配慮と組み合わさると、巻き添え被害にも影響した。これらの弾丸の過圧や爆風波を考慮しても、ISIS(イラクとシリアのイスラム国)の戦闘員は爆風効果よりもむしろ、榴散弾や直接火器システムによって防御陣地から追い出された[65]

ロシア・ウクライナ戦争

ロシア・ウクライナ戦争は、ラッカやモスルとは異なり、ある国家主体が別の国家主体に対して行った「精密パラドックス(Precision Paradox)」の例である。ロシアによる精密誘導弾(PGM)の使用は、無誘導弾の使用方法とほとんど変わらない。ウクライナにおけるロシアの軍事戦術は、都市を平らにし、市民を恐怖に陥れるものであるように見える[66]。マリウポルの産科病院への打撃(2022年3月9日)、クラマトルスクの繁華な駅への攻撃(2022年4月8日)、クレメンチュクの満員のショッピングモールへの打撃(2022年6月27日)、オデサのホテルとアパートへの打撃(2022年7月1日)は、ロシアが民間人を恐怖に陥れるために精密さを利用したいくつかの例である[67]

ロシアの情け容赦ない包囲戦術と国際人道法(IHL)への無関心は、2022年半ばの時点で、5,000人以上の民間人の死亡を含む、紛争による11,000人の民間人犠牲者の原因となっている。国際人道法(IHL)を無視するロシアはまた、700万人の国内避難民と600万人近い難民を生み出した[68]。精密誘導弾(PGM)によって行われたロシアの残虐行為により、多くの世界の指導者や非政府組織(NGO)が、ウクライナにおけるロシアの行動を戦争犯罪に分類しようとしている[69]

精密誘導弾(PGM)の消費は、この紛争から浮かび上がったもうひとつの考察であり、シリア、イラク、フィリピンにおけるイスラム国に対する米国の戦役(campaigns)から得られた同様の知見と一致している。要するに、精密誘導弾(PGM)の使用は、積極的・消極的なすべての参加国、そしてそれぞれの戦争在庫と産業基盤に大混乱を引き起こしているということだ[70]。ウクライナの精密弾薬の供給は、西側諸国からの拠出金によって大幅に強化され、膨大な速度で生産されている[71]。この問題は、ウクライナの初期の成功からロシア軍が適応するにつれて顕著になった。キーウとハルキウでは、ドローン発射の精密誘導弾(PGM)戦車が勝利への道を突き進んだ結果だった[72]

紛争の反対側では、残忍な作戦とテロ戦術がロシアの精密誘導弾(PGM)供給を侵食している[73]。経済制裁は、ロシアが精密誘導弾(PGM)を生産するのに必要な部品を輸入する能力を低下させ、戦場での支出を代替するモスクワの能力を困難にした[74]。2022年春にウクライナで発生したロシア兵による洗濯機やその他の国産品の窃盗事件は、こうした制裁が精密誘導弾(PGM)生産に与える影響の兆候である[75]。窃盗された製品はロシアに送り返され、ロシア産業が精密誘導弾(PGM)生産を阻害する材料不足を相殺するのに役立った[76]

ロシアの状況は2022年の夏には非常に悲惨なものとなり、ウラジミール・プーチン(Vladimir Putin)大統領は精密誘導弾(PGM)不足を克服するためにイランに支援を求めた[77]。ダグラス・バリー(Douglas Barrie)は、「ウクライナ紛争の激しさと期間、そしてロシアの明らかな備蓄問題は、他の防衛省が精密兵器の備蓄とそれを補充する産業能力に関する自らの仮定を再評価する際に、精密戦略によってもたらされる「精密パラドックス(Precision Paradox)」に関連する課題を提起している」と述べている[78]

紛争はまだ終わってはいないが、ロシア・ウクライナ戦争は「精密パラドックス(Precision Paradox)」の国家対国家の例を提供し、パラドックスが国家対非国家の例とどのように共鳴するかを示している。例えば、アレックス・ヴァーシーニン(Alex Vershinin)は、ロシア・ウクライナ戦争が、特に大規模な戦闘作戦に関連する精密打撃(precision strike)の「一撃必殺(one shot, one kill)」仮説を台無しにしたと仮定している。

現代の軍隊は、一度の決定的な打撃で敗北するような脆弱な存在ではない。現代の軍隊は、武力紛争において、自己保存と自己利益の両方を追求する、国家の適応力、堅牢性、冗長性を反映したシステムである。現代国家の冗長性と復元性を考慮すると、今日の武力紛争における戦略的勝利には、膨大な(そして未知の)戦争物資と人的資本が必要である[79]

分析

非効率は精密戦理論(precision warfare theories)に内在する欠陥であり、その結果、非効率は「精密パラドックス(Precision Paradox)」の原動力の一つとなっている。精密戦理論(Precision warfare’s theory)は「一撃必殺(one shot, one kill)」の方法論の上に成り立っている。しかし、カール・フォン・クラウゼヴィッツ(Carl von Clausewitz)は、第一次ドローン時代の挑戦が始まるはるか以前から、「人間とその事柄は、しかし、常に完璧にはほど遠く、絶対的な最良を達成することは決してない」と述べて、このような非現実的で直線的な思考に警鐘を鳴らしていた[80]

クラウゼヴィッツ(Clausewitz)は、精密戦理論(precision warfare theory)が信奉するような理想主義的な完全性の追求は、常に非効率によって不安定になると正しく指摘している。ほとんどの精密理論や戦略は、正確さと効率を混同しているため、その思考に重大な落とし穴を埋め込んでいる。しかし現実には、高い命中率(正確さ)が高い成功率(効率)を保証するわけではない。

非効率な打撃は逆効果である。モスルで見られた「課題と対応のサイクル(challenge–response cycle)」を思い起こせば、ターゲットを破壊しない正確な打撃や、望ましい効果を達成できない打撃は、侵略者が望ましい結果を達成するまで、再交戦を引き起こす可能性がある。このサイクルが続くと、各打撃の破壊力によって影響を受ける地域と人々が拡大する。マクロレベルでは、「精密パラドックス(Precision Paradox)」は、正確だが効果のない打撃が複数の接点と複数の前線で同時に繰り返されることでピークに達し、民間人の死傷者数、巻き添え被害、精密誘導弾(PGM)の消費量が加速する。

次に、精密戦略擁護派は、精密戦略は戦争期間を早め、ひいては精密主義者の経済的ストレスと用兵(warfighting)への負担を軽減すると主張する[81]。しかし、生存本能と利己的な行動は、精密理論の「一撃必殺(one strike, one kill)」の方法論を解きほぐし、その結果、弾薬消費と関連する兵站コストは下がるどころか、高くなる[82]

非効率は精密戦理論に内在する欠陥である

たとえば、湾岸戦争のアナリストは、イラクで1トンの精密誘導弾(PGM)を使用することで、12~20トンの無誘導弾に取って代わり、精密誘導弾(PGM)1トンあたり40トンの燃料を節約できたと分析している[83]。しかし、湾岸戦争は精密戦時代(precision warfare era)のひとつのデータ・ポイントにすぎない。湾岸戦争後の時代には、精密誘導弾(PGM)の使用量が定量的に増加しており、この時期は、高い先制打撃の命中率が効果的な打撃とイコールでないこと、また高い先制打撃の命中率が財政的に責任のある用兵戦略(warfighting strategies)と相関関係がないことを示している[84]

ランド研究所のアナリスト・チームも同様の結論に達し、こうした「精密パラドックス(Precision Paradox)」に関連する課題を改善するために4つの提言を行った。第一に、西側諸国はターゲティング・プロセスをより効率的なものに見直さなければならない。第二に、西側諸国は需要の高い(精密誘導弾(PGM))アセットの割り当て方法を修正しなければならない。第三に、西側諸国は精密誘導弾(PGM)の枯渇を相殺するために無誘導弾を取り入れる有用な方法を開発しなければならない。最後に、西側諸国は、市街地での精密誘導弾(PGM)使用に適したドクトリンを開発しなければならない[85]

結論

「精密パラドックス(Precision Paradox)」は、教訓であると同時に自己修正メカニズムでもある。「精密パラドックス(Precision Paradox)」は、軍事的思考が、技術と戦いに関する、証明されていない、歴史的に不正確な仮説に対する空想的な信念を超えなければならないことを教えてくれる。ジェームズ・ロジャーズ(James Rogers)のような現代のドローン愛好家も注目している。ロジャーズ(Rogers)は、米国がドローンと精度の両方の覇権国としての地位を失うにつれ、ドローンによる残虐行為が増加する可能性が高いと警告している[86]

「精密パラドックス(Precision Paradox)」は、精密の理論や精密戦略に必要なリアリズムが欠けていることから生じる。アントワーヌ・ジョミニ(Antoine Jomini)の著作は、これが戦いの実践における新たな課題ではないことを浮き彫りにしている。「正しい理論が、正しい原則に基づき、実際の戦争の出来事によって支えられ、正確な戦史に加えられることで、将軍のための真の指導教育機関が形成される」[87]

JFC フラー(Fuller)はジョミニ(Jomini)の言葉を引用し、「方法がドクトリンを生み、共通のドクトリンは軍隊を一つにまとめるセメントである。…我々は最良のセメントを求めるが、戦争を科学的に分析し、その価値を発見しない限り、決してそれを得ることはできないだろう」と述べている[88]。クラウゼヴィッツ(Clausewitz)は、戦いは人間の営みであり、その結果、霧、摩擦、偶然が最も綿密な計画にさえ常に影響を及ぼすと仮定し、軍事思想における現実主義について、おそらく最もふさわしい、そしてよく知られた議論を展開している[89]

将来戦(future warfare)において「精密パラドックス(Precision Paradox)」を克服するためには、コンセプト的な作業からドクトリン、政策や戦略、戦術計画に至るまで、実践的で経験的な情報が軍事的思考の礎とならなければならない。

軍事的思考は、非現実的な精密戦略によって現代に匹敵する「決定的会戦(decisive battle)」を追求することから脱却しなければならない。ダイナミックなシステムによって具現化された現代の行為主体は、そのようなアプローチが機能するには、あまりにも冗長で頑強である。その代わりに、現在および将来の軍事的思考は、戦争と戦いに関する現実主義的な真実を持ち、「課題と対応のサイクル(challenge–response cycle)」を考慮し、一撃必殺の理論が真に実行可能であるという非現実的な信念を超えていかなければならない。そうしなければ、「精密パラドックス(Precision Paradox)」とその壊滅的な戦場への影響を永続させることになる。

ノート

[1] ABC News, ‘Iraq Missile Attacks Missed Real Targets’, 30 August 2004.

[2] Michael Gordon and Bernard Trainor, Cobra II: The Inside Story of the Invasion and Occupation of Iraq (New York, NY: Vintage Books, 2007), p. 523.

[3] Douglas Jehl and Eric Schmitt, ‘The Struggle for Iraq: Intelligence; Errors are Seen in Early Attacks on Iraqi Leaders’, New York Times, 13 June 2004.

[4] ABC News, ‘Iraq Missile Attacks Missed Real Targets’.

[5] Azmat Khan, ‘Military Investigation Reveals How the US Botched a Drone Strike in Kabul’, New York Times, 6 January 2023.

[6] Azmat Khan, ‘The Civilian Casualty Files: Hidden Pentagon Records Reveal Patterns of Failure in Deadly Strikes’, New York Times, 18 December 2021.

[7] Antoine Bousquet, Scientific Way of Warfare: Order and Chaos on the Battlefields of Modernity, 2nd Edition (London: Hurst and Company, 2022), pp. 202–04.

[8] Becca Wasser et al., The Air War Against the Islamic State: The Role of Airpower in Operation Inherent Resolve (Santa Monica, CA: RAND Corporation, 2021), pp. 168–76.

[9] Bousquet, Scientific Way of Warfare, pp. 202–04.

[10] James Rogers, Precision: A History of American Warfare (Manchester: Manchester University Press, 2023), p. 9.

[11] Christopher Tuck, Understanding Land Warfare (London: Routledge, 2022), pp. 50–53.

[12] Herbert Van Tuyll and Jurgen Brauer, Castles, Battles, and Bombs (Chicago, IL: University of Chicago Press, 2008), pp. 122–32.

[13] Andrew F Krepinevich Jr, ‘The Military-Technical Revolution: A Preliminary Assessment’, Center for Strategic Budgetary Assessments, 2001, pp. 34–38.

[14] James Blaker, ‘The American RMA Force: An Alternative to the QDR’, Strategic Review (Vol. 25, 1997), pp. 21–30.

[15] David Deptula, Effects-Based Operations: Change in the Nature of Warfare (Arlington, VA: Aerospace Education Foundation, 2001), pp. 11–13.

[16] Blaker, ‘The American RMA Force’, pp. 23–24.

[17] Michael Schmitt, ‘Precision Attack and International Humanitarian Law’, International Review of the Red Cross (Vol. 87, No. 859, 2005), pp. 462–66.

[18] Barry Watts, ‘The Evolution of Precision Strike’, Center for Budgetary Analysis, 2013, pp. 3–4.

[19] Bousquet, Scientific Way of Warfare, p. 117.

[20] Malcom Brown, ‘Intervention That Shaped the Gulf War: The Laser-Guided Bomb’, New York Times, 26 February 1991.

[21] Thomas Mahnken, ‘Weapons: The Growth and Spread of the Precision Strike Regime’, Daedalus (Vol. 140, No. 3, 2011), p. 49.

[22] Ibid., p. 49.

[23] John Warden, ‘The Enemy as a System’, Airpower Journal (Vol. 9, No. 1, 1995), pp. 41–55.

[24] Ibid.

[25] Blaker, ‘The American RMA Force’.

[26] Wesley Clark, Waging Modern War (New York, NY: PublicAffairs, 2001), p. 116.

[27] Mahnken, ‘Weapons’, p. 51.

[28] Ibid., p. 51.

[29] Peter Bergen, Melissa Salyk-Virk and David Sterman, ‘World of Drones’, New America, 30 July 2020,< https://www.newamerica.org/future-security/reports/world-drones/introduction-how-we-became-a-world-of-drones/>, accessed 1 August 2023.

[30] Harlan Ullman et al., ‘Shock and Awe: Achieving Rapid Dominance’, National Defense University, 1996, p. 8.

[31] Wasser et al., The Air War Against the Islamic State, pp. 305–06.

[32] Ibid., pp. 305–06; Doug Cameron, ‘US Struggles to Replenish Munition Stockpiles as Ukraine War Drags On’, Wall Street Journal, 29 April 2023.

[33] Amos C Fox, ‘The Mosul Study Group and the Lessons of the Battle of Mosul’, Association of the United States Army, Land Warfare Paper 130 (February 2020), pp. 1–13.

[34] US Air Force, ‘Global Vigilance, Global Reach, Global Power for America’, Air & Space Power Journal (Vol. 28, No. 2, March/April 2014), <https://www.af.mil/Portals/1/images/airpower/GV_GR_GP_300DPI.pdf>, accessed 30 July 2022.

[35] Abigail Watson and Alasdair McKay, ‘Remote Warfare: An Introduction’, E-International Relations, 11 February 2021, <https://www.e-ir.info/2021/02/11/remote-warfare-a-critical-introduction/ >, accessed 12 February 2021.

[36] William Perry, ‘Perry on Precision Strike’, Air and Space Forces Magazine, 1 April 1997, <https://www.airforcemag.com/ article/0497perry>, accessed 30 August 2023.

[37] Michael McNerney et al., Understanding Civilian Harm in Raqqa and Its Implications for Future Conflicts (Santa Monica, CA: RAND Corporation, 2022), pp. 47–50.

[38] Jim Garamone, ‘Defeat-ISIS “Annihilation” Campaign Accelerating, Mattis Says’, US Department of Defense, 28 May 2017, <https://www.defense.gov/News/News-Stories/Article/Article/1196114/defeat-isis-annihilation-campaign-accelerating-  mattis-says/>, accessed 31 August 2023.

[39] Ibid.

[40] Louisa Loveluck and Thomas Gibbons-Neff, ‘The Islamic State is “Fighting to the Death” as Civilians Flee Raqqa’, Washington Post, 8 August 2017.

[41] Center for Civilians in Conflict, ‘Recommendations to Anti-ISIS Coalition on Operations in Syria’, 20 June 2017, pp. 1–2, <https://civiliansinconflict.org/publications/research/recommendations-anti-isis-coalition-operations-syria/>, accessed 31 December 2023.

[42] McNerney et al., Understanding Civilian Harm in Raqqa and Its Implications for Future Conflicts, pp. 47–50.

[43] Ibid., p. 91.

[44] Schmitt, ‘Precision Attack and International Humanitarian Law’, p. 466.

[45] McNerney et al., Understanding Civilian Harm in Raqqa and Its Implications for Future Conflicts, p. 91.

[46] UN News, ‘No “Worse Place on Earth” Than Syria’s Raqqa, Says Senior UN Adviser Urging Pause in Fighting’, 24 August 2017, <https://news.un.org/en/story/2017/08/563802-no-worse-place-earth-syrias-raqqa-says-senior-un-adviser-urging-pause-fighting>, accessed 31 August 2023.

[47] Khan, ‘Hidden Pentagon Records Reveal Patterns of Failure in Deadly Airstrikes’.

[48] Loveluck and Gibbons-Neff, ‘The Islamic State is “Fighting to the Death” as Civilians Flee Raqqa’.

[49] Khan, ‘The Civilian Casualty Files: Hidden Pentagon Records Reveal Patterns of Failure in Deadly Airstrikes’.

[50] Raya Jalabi and Michael Georgy, ‘This Man is Trying to Rebuild Mosul. He Needs Help – Lots of It’, Reuters, 21 March 2018.

[51] Amnesty International, ‘Iraq: New Report Places Mosul Civilian Death Toll at More Than Ten Times Official Estimates’, Amnesty International, 20 December 2017.

[52] Ibid.

[53] Ardant du Picq, ‘Battle Studies: Ancient and Modern Battle’, in JN Greely and RC Cotton (translators), Roots of Strategy: Book 2 (Harrisburg, PA: Stackpole Books, 1987), p. 77.

[54] Alexander Svechin, Strategy (Minneapolis, MN: East View Information Services, 1991), p. 248.

[55] Henry Flood, ‘From Caliphate to Caves: The Islamic State’s Asymmetric War in Northern Iraq’, CTC Sentinel (Vol. 11, No. 8, 2018), pp. 30–34.

[56] Dan Lamonthe et al., ‘Battle of Mosul: How Iraqi Forces Defeated the Islamic State’, Washington Post, 10 July 2017.

[57] Wasser et al., The Air War Against the Islamic State.

[58] Lamonthe et al., ‘Battle of Mosul: How Iraqi Forces Defeated the Islamic State’.

[59] Cathal Nolan, The Allure of Battle: A History of How Wars Have Been Won and Lost (Oxford: Oxford University Press, 2017), p. 370.

[60] Wasser et al., The Air War Against the Islamic State, pp. 92–109.

[61] Fox, ‘The Mosul Study Group and the Lessons of the Battle of Mosul’, p. 8.

[62] Wasser et al., The Air War Against the Islamic State, pp. 231–32.

[63] Adam Taylor, ‘Israel’s Controversial “Roof Knocking” Tactic Appears in Iraq. And This Time, It’s the US Doing It’, Washington Post, 27 April 2016.

[64] Wasser et al., The Air War Against the Islamic State, p. 169.

[65] Mosul Study Group, ‘What the Battle for Mosul Teaches the Force’, Association of the United States Army, 2017, p. 57.

[66] John Ismay, ‘Russian Guided Weapons Miss the Mark, US Defense Officials Say’, New York Times, 9 May 2022.

[67] Daniel Victor and Ivan Nechepurenko, ‘Russia Repeatedly Strikes Ukraine’s Civilians. There’s Always an Excuse’, New York Times, 15 July 2022.

[68] Human Rights Watch, ‘Ukraine: Apparent War Crimes in Russia-Controlled Areas’, 3 March 2022, <https://www.hrw.org/ news/2022/04/03/ukraine-apparent-war-crimes-russia-controlled-areas>, accessed 31 August 2023.

[69] Ibid.; Office of the Commissioner United Nations Human Rights, ‘Situation of Human Rights in Ukraine in the Context of the Attack by the Russian Federation: 24 February 2022 – 15 May 2022’, 29 June 2022, <https://www.ohchr.org/sites/default/files/documents/countries/ua/2022-06-29/2022-06-UkraineArmedAttack-EN.pdf>, accessed 31 August 2023; Nandita Bose, ‘Biden Urges Putin War Crimes Trial After Bucha Killings’, Reuters, 4 April 2022.

[70] Jeffrey Sonnenfeld et al., ‘Business Retreats and Sanctions are Crippling the Russian Economy’, SSRN, 20 July 2022, <https://papers.ssrn.com/sol3/papers.cfm?abstract_id=4167193>, accessed 31 August 2023.

[71] Eric Schmitt and Julian Barnes, ‘Ukraine’s Demands for More Weapons Clashes with US Concerns’, New York Times, 12 July 2022.

[72] Jack Watling, ‘Ukraine War Update: Dr. Jack Watling’, Doomsday Watch, 20 July 2022, <https://podcasts.apple.com/gb/ podcast/war-update-dr-jack-watling/id1593634121?i=1000570572578>, accessed 31 August 2023.

[73] Anne Applebaum, ‘Russia’s War Against Ukraine Has Turned into Terrorism’, The Atlantic, 13 July 2022, <https://www. theatlantic.com/ideas/archive/2022/07/russia-war-crimes-terrorism-definition/670500/>, accessed 31 August 2023.

[74] James Byrne et al., ‘Silicon Lifeline: Western Electronics at the Heart of Russia’s War Machine’, RUSI, 8 August 2022, p. 5.

[75] Jack Detsch, ‘Ukraine Has Ground Down Russia’s Arms Business’, Foreign Policy, 21 July 2022.

[76] Byrne et al., ‘Silicon Lifeline’, pp. 15–18.

[77] Nasser Karimi and Vladimir Isachenkov, ‘Putin, in Tehran, Gets Strong Supporting Iran Over Ukraine’, Associated Press, 19 July 2022, <https://apnews.com/article/russia-ukraine-putin-syria-iran-289c3422c8980e7650dbde2c326d248a >, accessed 31 August 2023.

[78] Douglas Barrie and Joseph Dempsey, ‘Russia’s Missile Inventories: KITCHEN Use Points to Dwindling Stocks’, IISS, 11 July 2022.

[79] Alex Vershinin, ‘The Return of Industrial Warfare’, RUSI Commentary, 17 June 2022.

[80] Carl von Clausewitz, On War (Princeton, NJ: Princeton University Press, 1984), p. 78.

[81] Perry, ‘Perry on Precision Strike’.

[82] Blaker, ‘The American RMA Force’, pp. 23–24.

[83] Office of the Secretary of Defense for Acquisition and Technology, ‘Report of the Defense Science Board Task Force on Tactical Air Warfare’, November 1993, p. 17, <https://apps.dtic.mil/sti/tr/pdf/ADA275347.pdf>, accessed 29 January 2024.

[84] Michael Pietrucha, ‘The Five Ring Circus: How Airpower Enthusiasts Forgot About Interdiction’, War on the Rocks, 29 September 2015 .

[85] Wasser et al., The Air War Against the Islamic State, pp. 306–07.

[86] James Rogers, ‘Drone Warfare: The Death of Precision’, Bulletin of the Atomic Scientists, 12 May 2017.

[87] Antoine Jomini, ‘The Art of War’, in JD Hittle (ed.), Roots of Strategy: Book 2 (Harrisburg, PA: Stackpole Books, 1997), p. 556.

[88] JFC Fuller, The Foundations of the Science of War (London: Hutchinson and Company, 1926), p. 35.

[89] Clausewitz, On War, p. 101.