米陸軍を情報戦時代に適応させていく
2016年6月、当時の米国防長官アシュトンB.カーター氏が米国防総省の情報環境における作戦のための戦略(STRATEGY FOR OPERATIONS IN THE INFORMATION ENVIRONMENT)を発出し、作戦環境の認識を変えていかなければ情報技術の進展に伴って変化していく脅威に対抗していけないとの危機感を明確に表した。情報環境(Information Environment:IE)は、当時は、なかなか馴染めない用語であった。しかし、サイバースペースや電磁ペクトラムといった概念が認識されるようになってきた現在では、新たな作戦環境としての情報環境(IE)は、感覚的には分かるものになってきているのではないだろうか。
米統合参謀本部は、上記の戦略文書にある情報環境下での作戦(Operations in the Information Environment:OIE)をコンセプトとして理解するために、2018年1月に、一体化した戦役に関する統合コンセプト(Joint Concept for Integrated Campaigning:JCIC)、同年7月に情報環境における作戦に関する統合コンセプト(Joint Concept for Operations in the Information Environment:JCOIE)を続けて発出した。これらの文書は、明らかにイラクやアフガニスタンを焦点とした米国の統合作戦の認識から抜け出し、新しい敵対者を念頭に置いた統合作戦への認識へ変えることを狙いとしていたものと受け止められる。
平時から逐次状況が悪化していき、そして紛争に至り、戦力を投入して状況を安定化させ、そして民主化された統治機構を機能させていくという、いわゆるフェージングモデルが適用できない状況を前提とした軍事態勢の整備が必要となっていく。新たな敵対者は、武力紛争に至らない競争下でその国家目標を達成しようとしているとの認識である。(下図は、一体化した戦役に関する統合コンセプト(JCIC)の概要を概観した文書から作成したものである。)
このような新たな戦略的環境認識の変化がある一方で、それ以前からあるサイバースペースでの脅威が顕著になっていく中で米国として各軍種としてサイバースペースでの軍事的能力の形成を構築してきている。2009年に米国としてのサイバーコマンドを、2010年に米陸軍がサイバーコマンドを創設してきた。
ここで紹介するのは、サイバースペースでの戦いを担う任務を持つこれらのサイバーコマンドは、情報環境での作戦(Operations in the IE)の文脈での役割を再考すべきでは二かとの考えである。第4代米陸軍サイバーコマンドの司令官であるスティーブンG.フォガティ米陸軍中将は、2018年に司令官に5月に着任し、同年8月のジョージア州オーガスタで開催されたAFCEAのTechNet会議で、米陸軍サイバーコマンドの任務を「情報作戦(Information Operations:IO)」と一体化したものとして考えることを提唱している。
ここで紹介する文書は、米陸軍のサイバー・ディフェンス・レビューに掲載されたものであり、その内容は2018年当時からさらに検討が進められ、情報環境での作戦(Operations in the IE)の中で必須となる情報戦(Information Warfare:IW)が、米陸軍の戦い(warfare)の一つとして認知されていない中であるが、米陸軍サイバーコマンドが、10年間かけて計画的に変革していく必要性とその具体的なプログラムについて述べているものである。
この文書に関する記事は、「米陸軍のサイバーチーフが情報戦の10年間の計画の概要を説明」や「米陸軍サイバーコマンドの情報戦を請負う計画について」がある。(軍治)
Enabling the Army in an Era of Information Warfare:米陸軍を情報戦時代に適応させていく
サイバー・ディフェンス・レビュー 2020年夏号
スティーブンG.フォガティ米陸軍中将
ブライアン・N・スパーリング米陸軍大佐(退役)
我々は情報化時代において産業時代の陸軍になることはできない。我々はすべての産業時代の線形のプロセスをより効果的にし、我々の資源を防護し、より良い決心を行うために変革しなければならない[1]。
第40代米陸軍参謀総長 ジェームズ・C・マッコンビル米陸軍大将
著者紹介
スティーブンG.フォガティ米陸軍中将は、米陸軍サイバーコマンド(ARCYBER)の司令官である。37年以上の現役勤務で、フォガティ米陸軍中将は、米陸軍サイバー研究センター(U.S. Army Cyber Center of Excellence)の最初の司令官であり、米陸軍インテリジェンス・保全コマンド(U.S. Army Intelligence and Security Command)の司令官であった。彼の広範な統合および連合経験には、米国特殊作戦コマンド、米国中央軍、米サイバーコマンド、アフガニスタンでの3回の派兵、およびパナマでのジャスト・コーズ作戦への従事が含まれる。フォガティ米陸軍中将は、セントラルミシガン大学で管理学の修士号を、米陸軍戦争大学で戦略学の修士号を取得している。
ブライアン・N・スパーリング米陸軍大佐(退役)は、米陸軍サイバーコマンド(ARCYBER)の情報戦変革顧問として務める高度な資格を持つエキスパート(HQE)である。スパーリング米陸軍大佐は、27年間以上、現役の通信将校および情報作戦将校として務めていた。彼は2011-2015年の間、米欧州軍のJ39で情報作戦(IO)と特殊活動の責任者、および2010-2011年の間、アフガニスタンにおけるNATO軍の通信部長であった。彼は、米陸軍高度軍事研究学校(SAMS)、国防大学の統合高度用兵学校(JAWS)を卒業し、コロラド大学ボルダー校で電気通信の修士号を取得している。
ISISに対する作戦は、2018年の米国の中間選挙に干渉するロシアの試みを妨害し、最近では、中東全体の不安定性を増大させようとするイランの試みに対抗して、情報戦(Information warfare: IW)の時代の効果的な能力、ドクトリン上のコンセプト、および適切な役割を見つけるための米軍の重要な取り組みを示している。我々は敵対者が我々の前に置かれた会戦を闘わなければならない。もし、我々のドクトリン、システム、およびプロセスがその現実と一致しなければ、それは新しい思考を必要とする時である。30年におよぶほぼ絶え間ない世界規模の作戦である「情報作戦(Information Operations: IO)」は、軍隊と統合部隊が軍事作戦の不可欠な要素として情報力をどのようにコンセプト化して適用するかについての主力アプローチとして存続してきた。
進化する定義、絶えず変化する定式化、およびその重要性と有用性の両方に関する情熱的な主張にもかかわらず、情報作戦(IO)は、誤解されがちであるが、ドクトリン上の関連する軍事術(military art)の用語である。ほとんどの場合、情報作戦(IO)は戦争の戦術的次元および作戦的次元で有用であることが証明されている。より戦略的次元および政治的次元では、情報作戦(IO)の有効性はとらえどころのないままであり、文民および軍の両方の米国の指導者は、「情報力(informational power)」の潜在的可能性を効果的に実現するのに熟達していない。
米国は文民統制(civilian control)の義務、そして平時の戦略と外交における軍の支援的役割を考えると、戦略的な情報ベースの影響において、軍が戦術的情報作戦(IO)を超えて拡張された役割を果たす必要があると知覚される必要性は、限られており、しばしば論争を呼んでいる。2015年のISISの驚異的なソーシャルメディアを活用した台頭、2016年の米国大統領選挙へのロシアの干渉、イランのデジタルを使用した好戦的な事象の増加、COVID-19のパンデミックを巡る中国の偽情報は、前例のない情報戦(IW)のこの環境での制服各軍種にとって適切な役割に関する防衛機構全体の認識を上向かせ、会話に火をつけている。軍隊は、サイバースペースの米国部分と電磁スペクトラムだけでなく、より大きく、より困難な情報環境(Information Environment: IE)も防護する能力を提供すべきであろうか?[2]
統合参謀本部は、統合部隊の拡大する情報に関わる任務を説明するために「情報環境での作戦(Operations in the IE: OIE)」という用語を使用している。しかし、より広い国家安全保障コミュニティ全体で、「情報戦(Information warfare: IW)[3]」という用語は、米国とその同盟国を不安定にし、情報環境(IE)の戦略的競争の優位性を維持するための敵対的試みに対抗するための政府のアプローチ全体の一部として、米陸軍およびその他の軍種が開発している、またはおそらく開発すべきである、サイバー、電磁、および情報活動の進化する一揃いのものを暗示するためにますます採用されている。
米陸軍は現在、情報環境(IE)で拡張された米陸軍任務を説明するために、情報環境での作戦(OIE)、情報戦(IW)、または他の何らかのコンセプトが、情報作戦(IO)に取って代わるべきかどうかを評価している。同様に、米陸軍サイバーコマンド(ARCYBER)がそのミッションポートフォリオのフルスペクトラムをより正確に反映するようにその名前を変更する必要があるかどうかについても検討している。とにかく、米陸軍サイバーコマンド(ARCYBER)は継続的なイノベーションの10年間の基盤に基づいて構築されており、戦術的、作戦的、戦略的階層にわたって情報化時代の米陸軍作戦を可能にするための近代化の取り組みを加速している。機能的米陸軍構成コマンド(Army Service Component Command: ASCC)として、米陸軍サイバーコマンド(ARCYBER)は、米陸軍規制(AR)10-87に詳述されている3つの主要な機能を実行することにより、米陸軍および統合指揮官を支援している[4]。
1. 作戦を遂行する–米陸軍サイバーコマンド(ARCYBER)の指揮官は、統合部隊司令部の指揮官とサイバー(米陸軍)指揮官として二つの職を併せ持ち、そして指定された地理的戦闘軍としての米サイバーコマンド(US Cyber Command: USCC)、および米陸軍の支援の下で、フルスペクトラムサイバー作戦(運営、防御、攻撃)、電子戦(Electronic Warfare: EW)、および情報作戦(IO)任務を計画し、一体化し、実行する。
2. 部隊を提供する– 米陸軍サイバーコマンド(ARCYBER)は、米陸軍サイバー部隊で米サイバーコマンド(USCC)を支援し、調整されたサイバー、情報作戦(IO)部隊、および電子戦(EW)部隊で米陸軍の作戦指揮官を支援する。米陸軍サイバーコマンド(ARCYBER)は、米合衆国法典「第10軍隊 組織、訓練、装備」の米陸軍長官が特定した特別の部隊形態の司令部である。
3. 米陸軍の情報収束(information convergence)を加速する– 米陸軍サイバーコマンド(ARCYBER)は、米陸軍および統合の作戦任務を支援する作戦的サイバー、情報作戦(IO)、電子戦(EW)、およびその他の情報能力のニーズを特定し、同期し、および提唱するための中心的な焦点である。
これらすべての機能の中心は、米陸軍ネットワークである。地球規模で、情報化時代、地上部隊の基盤となる兵器システムとして、米陸軍ネットワークは、指定された6つの米陸軍近代化優先事項の1つである[5]。今日、米軍は世界中で同時の競争と紛争に絶えず関わっている。我々の敵対者は我々の編成がデータと接続性に大きく依存していることを認識しているため、我々のネットワークには重大な脆弱性を提示している。米陸軍サイバーコマンド(ARCYBER)は、国防総省(DoD)情報ネットワークの米陸軍部門(DODIN-A)の構築者、運営者、および防護者である。ネットワーク、データ、相互接続された兵器のプラットフォームを敵対者の攻撃からうまく防御する米陸軍サイバーコマンド(ARCYBER)の実力(ability)は、すべての米陸軍作戦および統合作戦の成功にとって重要な前提条件である。
米陸軍サイバーコマンド(ARCYBER)内およびこの記事では、「情報戦(IW)」とは、サイバー作戦(Cyber Operation: CO)部隊、電子戦(EW)部隊、および情報作戦(IO)部隊の収束された適用と、米陸軍作戦および統合作戦を支援する能力を指す。米陸軍とより広範な国家安全保障システムのより広範な変革要件を認めて、ここで情報戦(IW)は、任務に基づきデザインされた組織、実験、革新、およびシステマティックな学習を通じて、割り当てられた米陸軍サイバーコマンド(ARCYBER)部隊の有効性を高めることを指す。収束された情報戦(IW)編成を日常的に展開および適用することにより、米陸軍サイバーコマンド(ARCYBER)は、より大きな米陸軍の学習戦役の一環として、「設定と反復(sets and reps)」を通じて知識と経験を獲得する。
米陸軍サイバーコマンド(ARCYBER)の変革長期計画:THE ARCYBER TRANSFORMATION CAMPAIGN
米陸軍サイバーコマンド(ARCYBER)は、AR 10-87の責任の全範囲を満たすために、指定されたものと黙示的なものの両方を備え、技術の進歩の加速によってもたらされる新たな要件を見込んでいる。米陸軍サイバーコマンド(ARCYBER)の変革は10年以上続くと想定されており、米陸軍の進化するマルチドメイン作戦(Multi-Domain Operations: MDO)コンセプトの支援に焦点を当てている。意図的な反復により、米陸軍サイバーコマンド(ARCYBER)は、情報環境(IE)内で作戦し、そして情報環境(IE)を通じて作戦上の優位性を達成するために米陸軍全体の能力容量(capacity)と技能の中で重要な役割を演じる。
統合の情報環境での作戦(OIE)効果に寄与する米陸軍の行動には、主要な敵対者の計算される決心と振舞いに影響を与えるための米陸軍の場所、能力、意図について継続的に態勢を示し、巧みに通信する(または不明瞭にする)ことが含まれる。この作業には、従来型の地上部隊と情報およびサイバースペース機能の一体化された適用が含まれ、まだ開発されていない連合情報兵器技術によって同期される。米陸軍サイバーコマンド(ARCYBER)は、作戦上の米陸軍が敵対者よりも迅速に感知し、理解し、決心し、行動し、評価できるようにし、米陸軍指揮官と統合指揮官の実力(ability)が決心の優位性を達成できるようにしなければならない。
内部的には、米陸軍サイバーコマンド(ARCYBER)は、収束されたサイバー、影響力、電磁の能力が諸兵科連合チームに情報能力を組み込み、機動する指揮官に即時の状況を変える情報戦闘力をもたらすために展開する。外部的には、米陸軍サイバーコマンド(ARCYBER)は米陸軍訓練ドクトリンコマンド(Training and Doctrine Command: TRADOC)およびより広範な制度的米陸軍を協力して、情報環境(IE)のリテラシーを将校及び下士官の訓練とカリキュラムに構築する。我々は、これにより、時間を超越した暴力の強制力を増幅し力を与えるために増大する情報とコミュニケーションの戦力を活用した新しい21世紀の作戦術を集合的に育成する。
同時並行的な取り組み-米陸軍の内部再編成と変革、米陸軍の情報近代化の取り組み全体に対する外部の関与と支援、米陸軍の作戦と割り当てられた統合任務の遂行における持続的な実験と革新-は、米陸軍サイバーコマンド(ARCYBER)に、現代の軍事作戦での地上力を効果あるものに改善するための強力な重心を提供できるようになる。我々の成功の鍵は、米陸軍予備役(U.S. Army Reserve)、米陸軍州兵(Army National Guard)のサイバー、情報部隊と効果的に提携する実力(ability)である。
近代化の第1フェーズは、すでに順調に進んでおり、2021年の夏までにフルスペクトラムの一体化した情報戦(IW)能力に向けて不可逆的な勢いを達成することを狙いとしている。2021年半ばから2018年のフェーズ2は、作戦上の機会を満足し当たらにおきる技術によって現れる課題のために実験と革新を継続する。米陸軍の作戦的側面と制度的側面の特有の結びつきにある米陸軍サイバーコマンド(ARCYBER)は、学界、産業、および米陸軍の調達を進行中の作戦に直接接続し、最先端の解決策を作戦部隊に迅速に一体化する。
2028年以降、フェーズ3では、情報戦(IW)がマルチドメイン作戦(MDO)を支援できるように調整された、情報戦(IW)機能と編成の資源配分と装備化が見られる。米陸軍サイバーコマンド(ARCYBER)の展開可能な機能は、米陸軍が武力紛争に至らない競争環境を支配し、抑止が失敗したら米陸軍が勝つための条件を設定することを可能にするといった、編成を機動的にするためにますます有機的にすることによって、情報能力を増強する。
米陸軍サイバーコマンド(ARCYBER)の変革は、米陸軍予備役と米陸軍州兵サイバー、および情報戦の能力と部隊の考え抜かれた一体化がなければ、それほど成功しない。
米陸軍サイバーコマンドのプログラムと取り組み:ARCYBER PROGRAMS AND INITIATIVES
フェーズ1-2021年半ばまで、不可逆的な勢いを達成:複数のプログラムと新しい編成がすでに米陸軍サイバーコマンド(ARCYBER)の能力範囲と効果を拡大している。これらは次のとおりである。
- 米陸軍サイバーコマンド(ARCYBER)司令部は、バージニア州フォートベルボアからジョージア州フォートゴードンに移転する。5年以上の準備として、2020年には、米陸軍サイバーコマンド(ARCYBER)の司令官と司令部の参謀が国家安全保障局と共存する最先端の施設に移転し、米陸軍サイバーコマンド(ARCYBER)の中核となる防御、攻撃、およびネットワーク作戦任務を可能にする重要なインフラストラクチャへのシームレスなアクセスを最適化する予定である。初めて、米陸軍の作戦上および制度上のサイバー部隊は、単一の情報力投射プラットフォームから作戦することにより、これまでにない相乗効果を享受する。
- サイバー防護旅団(Cyber Protection Brigade: CPB)— 2014年にフォートゴードンで発足したサイバー防護旅団(CPB)は、主要なサイバースペース地形を防御するために、特定のサイバー防護チーム(Cyber Protection Teams: CPT)を訓練および配置する。サイバー防護チーム(CPT)は、米陸軍およびパートナーのネットワーク、システム、および国防総省情報ネットワーク(DODIN)の米陸軍部分内のデータに対する高度な永続的なサイバー脅威に対する高度な評価と防御を提供するために、支援されている部隊ネットワーク防御実力(ability)を増強する。サイバー防護旅団(CPB)は、脅威データ、傾向、科学捜査、分析支援、および能力要件の独自の集中分析も米陸軍に提供する。サイバー防護旅団(CPB)の2つの大隊は、米陸軍作戦部隊と統合作戦部隊を支援する20個のサイバー防護チーム(CPT)を提供する。重要性が増していることは、米陸軍予備役と米陸軍州兵がさらに21個のサイバー防護チーム(CPT)を配備していることである。これらのコンポーネント2(米陸軍州兵)とコンポーネント3(米陸軍予備役)の部隊は、現役のカウンターパートの部隊と同じ訓練基準を満たし、すでに作戦に貢献している。
- 第915サイバー戦大隊(Cyber Warfare Battalion: CWB)-2019年にフォートゴードンで発足した第915サイバー戦大隊(CWB)は、軍団と軍団以下の編成部隊を増強するために遠征サイバーチーム(Expeditionary Cyber Teams: ECT)を訓練し配備する。遠征サイバーチーム(ECT)は、攻撃的なサイバー、情報作戦(IO)、および電子戦(EW)能力を提供するが、戦術部隊には配備されていない。完全な作戦能力では、12個の遠征サイバーチーム(ECT)のそれぞれが、有機的なサイバー開発能力、ネットワーク支援、および独立して作戦するために能力を有するか、または支援されている部隊の本部に一体化される。
- 第1 情報作戦コマンド(Information Operations Command: IOC)-1994年以来、米陸軍の唯一の作戦上の現役情報作戦(IO)旅団は、利用可能な情報作戦(IO)野戦支援チーム(FST)の数を増やすために旅団を再編成する戦力デザインアップデート(FDU)を開始し、従来型の作戦部隊と特殊作戦部隊の双方を支援するためにリーチ・バック能力とソーシャルメディア能力を拡大しその能力容量を追加している。2020年後半までに、第1 情報作戦コマンド(1st IOC)も直接米陸軍サイバーコマンド(ARCYBER)に割り当てられ、作戦保全(Operations Security: OPSEC)、軍事的欺瞞(Military Deception: MILDEC)、および情報作戦(IO)の中核的な同期機能および一体化機能を含む専門の情報戦(IW)計画策定支援を引き続き提供する。
- 攻撃的サイバー作戦(Offensive Cyber Operations: OCO)通信大隊— 米陸軍サイバーコマンド(ARCYBER)は、2021年後半にフォートゴードンで長く必要とされていた攻撃的サイバー作戦(OCO)通信大隊を立ち上げることを承認した。この部隊は、米陸軍サイバー部隊と統合作戦任務に重要で専用の支援を提供することになる。攻撃的サイバー作戦(OCO)大隊は、以前は米陸軍州兵のサイバー部隊が「タスクフォースエコー」として実施していた重要な任務を反映した複数のコンポーネント組織になる。
フェーズ2-2021年〜2027年、実験と革新:フォートゴードンで完全な作戦能力を収束して達成すると、米陸軍サイバーコマンド(ARCYBER)の変革は、フェーズ1で確立された複数の新しい能力によって可能になる新たな利用可能な作戦能力の適用と発見に焦点を当てる。米陸軍の各指揮官が情報能力を持続的な作戦に一体化する増加した「設定と反復(sets and reps)」を獲得することで、米陸軍サイバーコマンド(ARCYBER)は、米陸軍訓練ドクトリンコマンド(TRADOC)および米陸軍将来コマンド(Army Futures Command: AFC)と連携して、情報環境(IE)における21世紀の新たな用兵術(warfighting art)に関する米陸軍の重要な知識収集者としての役割を果たすことになる。このフェーズでの重要な取り組みには、次のものが含まれる。
- 情報戦作戦センター(Information Warfare Operations Center: IWOC)— 米陸軍サイバーコマンドのサイバー作戦・インテリジェンスセンター(ARCYBER’s Cyber Operations and Intelligence Center: ACOIC)は、フルスペクトラム情報戦作戦センター(IWOC)になるための変革を継続する。情報戦作戦センター(IWOC)は、学際的で地域に焦点を合わせた機能横断型チームを特色とし、米陸軍のすべてのネットワークトラフィックを一元的に可視化する能力を活用することによって、すべての米陸軍構成コマンド(ASCC)の作戦上の優先事項への24時間365日の接続により、地球規模の情報環境(IE)を感知し理解する、これまでにないリアルタイムの実力(ability)を米陸軍サイバーコマンド(ARCYBER)指揮官に与える。このユニークな視点により、米陸軍サイバーコマンド(ARCYBER)は新たに出現する地球規模の情報環境(IE)の状況を感知、理解、決心、対応することができ、米陸軍の上級指導者と地域の米陸軍指揮官および統合指揮官に比類のないスピードで選択肢を提供し、戦略的決心の優位性を実現する。
- ミリタリーインテリジェンス旅団— 情報戦作戦センター(IWOC)の成功と決心の優位性にとって重要なのは、米陸軍サイバーコマンド(ARCYBER)に特化した特別な軍事インテリジェンス(Military Intelligence: MI)旅団の設立であり、サイバースペースや電磁スペクトラムを含む情報環境(IE)に焦点を当てることである。この資源がまだ提供されていない旅団は、従来の全資源インテリジェンスと商用脅威データおよびオープンソース情報を組み合わせることによって膨大なデータセットを分析するために、インテリジェンス・コミュニティ、米陸軍将来コマンド(AFC)、業界、学界と提携して、最先端の技術(人工知能[AI]、拡張現実、ヒューマンマシン・インターフェース)を継続的に開発し、試験し、適用する。
- ネットワークコマンド(NETCOM)の近代化—完全な作戦能力を達成するために、米陸軍サイバーコマンド(ARCYBER)情報戦作戦センター(IWOC)が現在の機能の多くを他の組織に移す必要がある。国防総省情報ネットワークの米陸軍部分(DODIN-A)を安全にし、形態管理し、運用し、拡張し、維持し、支えている長年の戦略的米陸軍通信コマンドであるネットワークコマンド(NETCOM)は、米陸軍サイバーコマンド(ARCYBER)の米陸軍サイバーコマンドのサイバー作戦・インテリジェンスセンター(ACOIC)によって現在実行されている防御的サイバー作戦(Defensive Cyber Operations: DCO)機能を引き継ぐように近代化されている。
- 統合サイバー部隊司令部の米陸軍部分(JFHQ-C(A))-米陸軍サイバーコマンド(ARCYBER)が情報戦(IW)能力を開発および収束することで、(フォートゴードンの米陸軍サイバーコマンド(ARCYBER)司令部と同じ場所に配置されると)統合サイバー部隊司令部の米陸軍部分(JFHQ-C(A))は、すぐに利益をもたらし、米アフリカ軍、米中央軍、米北方軍、およびその他の任務を支援する米サイバーコマンド(USCC)の任務に強化した能力を提供する。
- 第780軍事インテリジェンス旅団(サイバー)— 第780軍事インテリジェンス旅団(サイバー)は、米サイバーコマンド(USCYBERCOM)に対する米陸軍の攻撃的なサイバースペース作戦の貢献であり、国家および戦闘軍(Combatant Command)の要件を支援する21個のチームを提供している。さらに、サイバースペース作戦インフラストラクチャの米陸軍部分を維持し、攻撃と防御の両方のサイバースペース作戦を可能にする技能を持つ熟練したプログラマー(coders)である米陸軍の能力開発者を所有している。これらの国家任務チームと戦闘任務チームは、サイバースペース内およびサイバースペースを介してターゲットを破壊、能力劣化、妨害、拒否、および操作することに焦点当てることに効果がある。情報戦(IW)が成熟するにつれて、これらのチームに割り当てられた任務は、特にサイバースペースの作戦とマルチドメイン作戦(MDO)を有効にするために他のすべてのドメインの収束した中での作戦として情報環境の形成に向けてシフトする。
- 作戦上の実験—フェーズ2での主な焦点は、新興の戦闘編成に対する米陸軍サイバーコマンド(ARCYBER)の支援である。米陸軍全体がマルチドメイン作戦(MDO)を可能にする能力を開発するための実験として、新しく革新的な編成が出現する。すでに2020年に、米陸軍サイバーコマンド(ARCYBER)は次の3つの任務固有の編成の支援を提供している。
– マルチドメイン任務部隊(MDTF)— 火力研究センター(Fires Center of Excellence: FCoE)によって開発されたマルチドメイン任務部隊(MDTF)は、戦域レベルの指揮官に前例のない長距離火力能力を提供する。米陸軍サイバーコマンド(ARCYBER)は、長距離のターゲッティングを可能にする情報能力のスペクトラムを一体化した最初のマルチドメイン任務部隊(MDTF)の有機的インテリジェンス、情報、サイバー、電子戦、宇宙大隊(Intelligence, Information, Cyber, Electronic-Warfare, and Space Battalion: I2CEWS BN)の訓練と即応性支援を援助している。
– 戦域情報コマンド(Theater Information Command: TIC)—この米陸軍将来コマンド(AFC)のコンセプトは、競争、武力紛争、集約作戦全体で、戦域指揮官に永続的な影響能力を提供する2つ星の将軍の前方配置のコマンドのためのものである。情報戦(IW)旅団の同様のコンセプトは、地域の収集、分析、情報効果生成編成のために米陸軍訓練ドクトリンコマンド(TRADOC)から現れ、米陸軍構成コマンド(ASCC)と統合指揮官の情報環境(IE)にすべて焦点を置いたものである。米陸軍サイバーコマンド(ARCYBER)は、統合戦闘評価(Joint Warfighting Assessments: JWS)とDEFENDER演習中にこれらの編成での実験を強力に支援する。
– 情報戦タスクフォース-アフガニスタン(IWTF-A)—米陸軍特殊作戦コミュニティは、戦闘作戦中の情報戦タスクフォース-アフガニスタン(IWTF-A)開発を主導してきた。情報戦タスクフォース-アフガニスタン(IWTF-A)は戦域で結成され、第1 情報作戦(IO)コマンドからの革命的な作戦的アプローチを中心に強化され、機動部隊と情報活動の同期のとれた適用を通じて認知的効果を達成することに焦点を当てている。情報戦タスクフォース(IWTF)は敵対的な火力ゾーンを活用して、非常に効果的な影響メッセージングを提供するために、軍事情報支援作戦(Military Information Support Operations: MISO)、ソーシャルメディア・コレクション、データ分析能力、最先端のデジタル広告技術を適用する。
- 米陸軍戦術部隊の近代化— 米陸軍サイバーコマンド(ARCYBER)は、米陸軍構成コマンド(ASCC)と米陸軍構成コマンド(ASCC)以下の編成に適切で手頃な情報戦(IW)機能を組み込むために、進行中の近代化の取り組みに積極的に取り組んでいる。フェーズ2を通じて、現在のサイバー電磁活動(CEMA)セルは、情報作戦(IO)、心理作戦(PSYOP)、広報担当者の増加、そして戦術的な指揮官の情報能力を改善するためのアップグレードした能力パッケージを含んで拡張された。米陸軍サイバーコマンド(ARCYBER)は、最新のフルスペクトラム情報戦(IW)能力を備えた機動指揮官を増強するために、任務に合わせた連合の情報力チームを構築する。
- 予備役構成の最適化—従来型の部隊を支援するために調整された圧倒的多数の情報能力は、予備役構成の中に見出される。これらには、サイバー、情報作戦(IO)、民事、心理作戦(PSYOP)、広報の編成が含まれる。フェーズ2を通じて、米陸軍サイバーコマンド(ARCYBER)は、従来型の部隊指揮官が競争中に敵対者を訓練して影響を与えるための適切な能力を持つことを確実にするために、コンポーネント2(米陸軍州兵)とコンポーネント3(米陸軍予備役)の部隊の部隊構造、構成、動員を最適化するために働く。
フェーズ3-2028年以降-マルチドメイン対応:2028年までに、2020年とその年以前に特定された複数の能力と編成が部隊全体でオンラインになり、マルチドメイン作戦(MDO)の一部として情報環境(IE)で作戦する米陸軍指揮官の実力(ability)が大幅に強化される。敵対者の知覚と行動に効果的に影響を与える活動をコンセプト化し、デザインし、そして実行する実力は、特にますます重要性を増し決して容赦のない競争環境では、マルチドメイン作戦(MDO)対応の米陸軍の重要な側面になる。マルチドメイン作戦(MDO)のコンセプトは、今後10年間進化し続けるであろう。TRADOC Pamphlet 525-3-1はすでに、マルチドメイン作戦(MDO)中に米陸軍部隊が行う3つの「競争行動[6]」にとって、情報と影響力が重要であることを十分に示している。
1. 情報戦(IW)と非従来型戦(Unconventional Warfare)の撃破を可能にする—米陸軍は、情報環境での作戦(OIE)によって敵対者の情報戦(IW)[7]を打ち負かす。
2. インテリジェンスと敵対者偵察への対抗の実施—このタスクは基本的に情報と分析に基づいており、敵対者の軍事能力の習得、市民ネットワークを含む作戦環境(Operational Environment)の収集と分析、および欺瞞の遂行が求められる。
3. 信頼できる抑止力を示す—抑止力にはコミュニケーションが必要である。敵対者は明らかに、彼らが知らない我々が持っている能力によって抑止されない。米陸軍は、指揮・統制メカニズムを確立し、相互運用性を確実にし、抑止力を達成する前線配備部隊(サイバー防護および情報防護を含む)を防護しなければならない。
統合部隊の一部として、米陸軍はマルチドメイン作戦(MDO)対応になるためにマルチドメイン作戦(MDO)が「積極的な関与(active engagement)[8]」と呼ぶものを通じて、これらの不可欠な競争行動を習得しなければならない。米陸軍が敵対者内の望ましい認知効果や振舞いを達成することに焦点を合わせた機動能力と情報能力の収束された適用を通じて積極的な関与を行う実力(ability)をよりよく開発するため、各重要なタスクにおいて、米陸軍サイバーコマンド(ARCYBER)は重要な支援の役割を果たす。
統合作戦コンセプト:JOINT OPERATIONAL CONCEPTS
統合部隊は、情報環境における作戦に関する統合コンセプト(JCOIE)、一体化した戦役に関する統合コンセプト(JCIC)、軍事作戦の人間の側面に関する統合コンセプト(JC-HAMO)などの統合コンセプトの出版物を通じて、作戦環境(Operational Environment)の変化に適応し続けている[9]。これらの強力なコンセプトはそれぞれ、さまざまな情報のダイナミクスに取り組み、軍事作戦のデザインと実行、および新たな作戦環境における軍事力の使用にどのように影響するかを示している。
これらの統合コンセプトは、米陸軍が情報環境(OIE)での統合作戦を支援できるようにする、より優れた米陸軍のコンセプト、能力、および要件を駆動している。たとえば、2020年初頭に米陸軍サイバー研究センター(Cyber Center of Excellence: CCOE)は情報環境での作戦(OIE)の部隊近代化評価(Force Modernization Assessment: FMA)を完了した。これは、米陸軍の情報環境(IE)能力で特定されたギャップを軽減するための33のDOTMLPF-P[10]勧告を生み出した。2021年に、米陸軍サイバー研究センター(CCOE)は米陸軍将来コマンド(AFC)指示する情報機能コンセプトを作成する。これは、情報を軍事コンセプトと見なし、米陸軍が将来の競争と紛争で勝つための態勢を整えるためのドクトリン上の改善を駆動するための、長期に渡る理論的基盤を明確に示すものである。
結論:CONCLUSION
マルチドメイン作戦(MDO)対応の部隊として振り返ると、2020年は米陸軍サイバースペース、電子戦(EW)、および情報作戦(IO)部隊にとって極めて重要な年として際立つであろう。何十年にもわたる戦術的情報作戦(IO)の取り組みの後、米陸軍は一連の強力な近代化の取り組みに着手し、米陸軍サイバーコマンド(ARCYBER)を劇的に変革し、米陸軍全体の指揮官が、我々の競争者や敵対者よりも迅速に感知、理解、決定、行動、評価できるようになり、情報戦(IW)の時代における重大な決心の優位性を獲得することになる。
ノート
[1] 第40代米陸軍参謀総長ジェームズ・C・マッコンビル米陸軍大将の着任の辞https://www.army.mil/article/225605/40th_chief_of_staff_of_the_army_initial_message_to_the_army_team.
[2] 統合出版物JP 3-13「情報作戦」2014年版では、情報環境(Information Environment)を「情報を収集、処理、配布、または行動する個人、組織、およびシステムの集合体」と定義している。
[3] 情報戦(Information Warfare)は、ドクトリン的に定義された用語ではない。さらに、DOD内の頭字語「IW」は、通常、不規則戦(Irregular Warfare)を意味する。この記事では、「IW」は本文で説明されている情報戦(Information Warfare)のコンセプトのみを指す。
[4] 米陸軍規則(AR)10-87、「米陸軍コマンド、米陸軍構成コマンド、および直属の部隊」ワシントンDC2188:政府印刷局、2017年版、14-2、17項、に、3つの主要な機能を明確にするためにここにグループ化されている10の指定されたタスクを詳述している。
[5] 「米陸軍近代化戦略」https://www.army.mil/standto/archive_2019-10-17/.
[6] 米陸軍訓練ドクトリンコマンド小冊子525-3-1「マルチドメイン作戦における米陸軍2028」27ページ、https://adminpubs.tradoc.army.mil/pamphlets.html
[7] MDOコンセプトでは、情報戦(IW)を敵の活動として内部的に定義している。GL-6ページ:「敵を混乱させ、最小のコストで戦略的目標を達成するためにデザインされたインテリジェンス組織の行動によって支援された意図的な偽情報戦役での情報能力の適用」
[8] 米陸軍訓練ドクトリンコマンド小冊子525-3-1「マルチドメイン作戦における米陸軍2028」27ページ、段落3-5b
[9] 統合コンセプト一覧https://www.jcs.mil/Doctrine/Joint-Concepts/Joint-Concepts/
[10] ドクトリン、組織、訓練、装備、リーダーシップ、教育、人事、施設、政策のこと、http://acqnotes. com/acqnote/acquisitions/dotmlpf-analysis.