米陸軍、サイバー電磁活動(CEMA)を現場の兵士に届ける (crows.org)

サイバー電磁活動(CEMA)という用語はなかなか聞かれない言葉であろう。MILTERMでは2023年「ありふれた風景の中に潜む (Military Review)」で、情報の優位性(IA)を獲得するための活動としてサイバー電磁活動(CEMA)を紹介している。サイバースペースの作戦、電子戦(EW)はそれぞれに理解はされてきてると認識するが、この記事では、サイバー電磁活動(CEMA)を「サイバースペースと電磁スペクトラムの両方において敵対者や敵に対して優位に立ち、それを保持し、利用するために活用される活動」とFM3-38「Cyber Electromagnetic Activities」から引用している。ここでは、サイバー電磁活動(CEMA)について技術的・論理的に説明しないが、米陸軍がサイバー電磁活動(CEMA)に力を入れ、マルチドメイン作戦のコンセプトを実証検証を続ける中でその能力を高め、装備品の研究開発を続けていることが分かる。いずれにしても戦術的レベルでの、つまり、現場の部隊、兵士レベルでのサイバー対処能力や電子戦対処能力を高める重要性を認識することが出来る。(軍治)

米陸軍、サイバー電磁活動(CEMA)を現場の兵士に届ける

US Army Delivers CEMA to Soldiers in the Field

By John Haystead

Journal of Electromagnetic Dominance • April 2025

ロッキード・マーチンは、ストライカー(上)や陸軍多目的車両AMPVなど、さまざまな地上車両に搭載可能な旅団戦闘チーム用地上レイヤー・システム(TLS BCT)を開発している。| ロッキード・マーチン

サイバー電磁活動(CEMA)のコンセプトが米陸軍のFM3-38「Cyber Electromagnetic Activities」で初めて定義されてから、ちょうど10年以上が経過した。「サイバースペースと電磁スペクトラムの両方において敵対者や敵に対して優位に立ち、それを保持し、利用するために活用される活動であり、同時に敵対者や敵の電磁スペクトラム利用を拒否し、劣化させ、ミッション・コマンド・システムを防護するものである。サイバースペース作戦(Cyberspace Operations: CO)、電子戦(Electronic Warfare: EW)、スペクトラム管理作戦(SMO)で構成される」。

それは大きな要求だった。そして実際、米陸軍のサイバー電磁活動(CEMA)能力開発の取組みの範囲は、米陸軍全体の多数の技術、事業、開発事務所を包含している。この作業と関係者はすべて、作戦・計画・訓練担当の米陸軍参謀次長(G-3/5/7)を通じて、多数の能力管理者(CM)の支援を受けながら同期化されている。電子戦(EW)、SIGINT、インテリジェンス、火力の共同体、その他はすべてサイバー電磁活動(CEMA)で役割を持っており、それは多くの異なる装備品ソリューションを求める様々な要件があることを意味する。しかし、ここに到達するまでには時間がかかったが、米陸軍は現在、サイバー電磁活動(CEMA)要件の広範なリストに対する開発の取組みを、完全に機能するシステムや能力の実際の実戦配備へと転換しつつある。

サイバー電磁活動(CEMA)任務の4つの側面

FM 3-38「Cyber Electromagnetic Activities」は、作戦の観点からサイバー電磁活動(CEMA)の4つの包括的な到達目標を挙げている。ネットワークの構築、運用、防御、敵および敵対者のシステムの攻撃と搾取、状況の理解の獲得、そして個人とプラットフォームの防護である。

まず、ネットワークに関しては、この文書で指摘されているように、「ネット対応能力への依存度が高まったことで、統一した陸上作戦は、ミッション・コマンド・システムや情報の機密性と完全性を危険にさらす可能性のあるサイバースペースや電子戦(EW)の脅威に非常に敏感になっている」。米陸軍のネット対応能力は、国防総省情報ネットワーク(DODIN)の米陸軍の一部である「LandWarNet」によってサポートされている。そのため、「ネットワークの運用には、異常なネットワーク活動の監視、検出、分析、対応によってネットワークを防衛する(サイバーと電子戦(EW))行動が内在している」。

しかし同時に、同様に重要なこととして、FM3-38「Cyber Electromagnetic Activities」は「敵または敵対者のネットワークやシステムを攻撃し、混乱させ、行動の自由を奪う必要がある」と述べている。ここでサイバースペース作戦(CO)は、サーバー、ブリッジ、ファイアウォール、センサー、プロトコル、オペレーティング・システム、コンピューターやプロセッサーに関連するハードウェアなど、さまざまなネットワーク・ノードを介し、調整されたコンピューター・コードなどの能力を用いるサイバースペース攻撃で、主要な役割を果たすことになる。

敵システムに対する電子的攻撃と搾取の任務には、電磁波侵入、ジャミング、電磁パルス(EMP)、電子プロービングなど、多くのアプローチが含まれる。最後に、スペクトラム管理作戦(SMO)におけるサイバー電磁活動(CEMA)能力は、作戦環境の状況認識と理解を大幅に強化する。スペクトラム管理作戦(SMO)はまた、友軍の電子戦(EW)使用による電磁干渉(EMI)などの要因を緩和することによって残存性を高める。

サイバー電磁活動(CEMA)システムと能力

サイバー電磁活動(CEMA)の4つの基本領域は、多かれ少なかれ、電子戦支援(ES)、電子攻撃(EA)、電子防護(EP)の電子戦(EW)または電磁支配(ED)の要素と一致している。そのため、サイバー電磁活動(CEMA)の到達目標を実現し、サイバー電磁活動(CEMA)を実現するために必要なシステムを実戦配備するための特に中心的な組織は、メリーランド州アバディーン実験場に本部を置く「インテリジェンス・電子戦およびセンサー事業執行室(PEO-IEW&S)」の一部門である「電子戦およびサイバー事業管理室(PM EW&C)」である。

「電子戦およびサイバー事業管理室(PM EW&C)」のサイバー電磁活動(CEMA)ポートフォリオは非常に幅広く、サイバー電磁活動(CEMA)事業のすべてとは言わないまでも、そのほとんどが組み込まれている。「電子戦およびサイバー事業管理室(PM EW&C)」のプロジェクト・マネージャのケン・ストレイヤー(Ken Strayer)は言う。「事業の数え方にもよるが、現在進行中の取り組みや新たな取り組みが20数個あり、そのすべてが全領域のスペクトラム支配、つまりFM 3-38「Cyber Electromagnetic Activities」で定義されている米陸軍の優先事項に沿ったサイバー電磁活動(CEMA)の最終目標に焦点を当てている。ストレイヤー(Strayer)は、個々の事業を個別のサイバー電磁活動(CEMA)分野に結びつけることはできないと言う。「それが大きな論点だ。この問題に対する多層的でマルチドメイン的なアプローチなしには、どの問題にも到達できない。スペクトラム支配の全ドメイン的な側面だ」。それでも彼は、現在実現しつつある数々の特徴的な事業を指摘する。そのひとつが、地上レイヤー・システム(TLS)事業である。

地上レイヤー・システム(TLS)

地上レイヤー・システム(TLS)は3つの主要コンポーネントで構成されている。「旅団戦闘チーム用地上レイヤー・システム(TLS BCT)」、「旅団以上の部隊用地上レイヤー・システム(TLS EAB)」、そして旅団戦闘チーム用地上レイヤー・システム(TLS BCT)からスピンアウトした「旅団戦闘チーム用地上レイヤー・システム携帯無線機(TLS BCT Manpack)」である。

「旅団戦闘チーム用地上レイヤー・システム(TLS BCT)」は、米陸軍の「次世代戦術SIGINT、電子戦(EW)、サイバースペース作戦(CO)オーバーマッチ・システムであり、統合全ドメイン作戦(JADO)部隊に能力を提供する」ものである。説明されているように、旅団戦闘チーム用地上レイヤー・システム(TLS BCT)は、電子攻撃(EA)と攻撃的なサイバー作戦を実施する能力だけでなく、優れたスペクトラム認識を旅団戦闘チーム(BCT)指揮官に提供する。モジュール式のオープンシステム・アーキテクチャで構築されているため、複数の構成で配備することができ、変化するほぼ対等な脅威やマルチドメインの能力格差に対する能力を提供する。

ストライカー旅団戦闘チーム(BCT)、装甲旅団戦闘チーム(BCT)、歩兵旅団戦闘チーム(BCT)への配備が計画されているこの能力は、今年の4月から5月にかけてストライカー・プラットフォームで一通りのテストを受ける予定である。これは、約1年半前に実施された運用実証に続くものである。ストレイヤー(Strayer)の説明によれば、「そのデモンストレーションから、我々は闘いをどのように組織する必要があるのか、装備はどのように作動する必要があるのか、という点で多くの教訓を得た。我々はこの1年半をその調整に費やしてきた」。

ストレイヤー(Strayer)は、このデモンストレーションから学んだ最大の教訓の一つは、電子戦(EW)とSIGINTの統合は、必ずしも物理的なオンボードの観点ではなく、機能的な観点から見る必要があるということだと言う。「電子戦(EW)とSIGINTのオペレーターを同じプラットフォームに乗せることは、指揮官が操作する方法を制限することになる。電子戦(EW)とSIGINTのオペレーターが同じプラットフォームにいることで、指揮官が必要とする操作方法が制限されていたのだ。非常に似た機器を使用しているが、アプローチと構成が異なるため、現在はそれらの取組みを分離している」。

2023年4月、米陸軍はロッキード・マーチン(Lockheed Martin)社に旅団戦闘チーム用地上レイヤー・システム(TLS BCT)事業で7280万ドルの契約を発注した。その内訳は、ストライカーに搭載される旅団戦闘チーム用地上レイヤー・システム(TLS BCT)システム調達のための3540万ドルと、陸軍多目的車両(AMPV)に搭載される旅団戦闘チーム用地上レイヤー・システム(TLS BCT)の運用実証と初期デザインを支援するための研究開発資金3740万ドルである。

ストレイヤー(Strayer)によると、4月にテストされるシステムは、主にSIGINTと電子戦支援(ES)の要件に焦点を当て、電子攻撃(EA)テストはそれ以降の日程で計画されている。「これらのテストの結果を待って、米陸軍はどこに行きたいかについて決定を下すだろう。旅団編成における戦闘プラットフォームに関して米陸軍が何を必要としているかについては、まだ多くの疑問があり、それはすべて、今後の道のりをマッピングすることに関与するだろう」。現状では、旅団戦闘チーム用地上レイヤー・システム(TLS BCT)の迅速な実戦配備移行または主要能力獲得(MCA)、および2025-2026会計年度での初号機発出が予測されている。

旅団戦闘チーム用地上レイヤー・システム携帯無線機(TLS BCT Manpack)

最近最も注目されている地上レイヤー・システム(TLS)のバージョンは、「旅団戦闘チーム用地上レイヤー・システム携帯無線機(TLS BCT Manpack)」である。これは、政府が管理するCOTS(市販品)能力を、今年中に実戦配備されたシステムに迅速に移行し、実戦配備するというものである。旅団戦闘チーム用地上レイヤー・システム携帯無線機(TLS BCT Manpack)は、完全な旅団戦闘チーム用地上レイヤー・システム(TLS BCT)に比べれば確かに性能は劣るが、無線周波数(RF)調査、信号収集、方向探知(DF)のほか、電子攻撃(EA)、部隊防護、電磁スペクトラム(EMS)の可視化、スキャン/調査作業を行うことができる。

各地上レイヤー・システム携帯無線機(TLS Manpack)システムは、兵士が装着する4つのノードで構成され、この装置を完全に操作するには4人の兵士が必要である。電子戦(EW)製品自体はCACI社のマストドン(バージニア州レストン)から提供され、2024年7月に1億ドルの調達と実戦配備契約を獲得した。この4つのノードには、軽量で兵士が装着する電子戦(EW)センス・アンド・アタック・サブシステム「Beast+」が2つと、複数の「Beast」無線を4チャンネル構成にしてより多くの帯域幅と処理能力を提供する「Kraken」システムが1つ含まれている。この追加機能により、チームは重量を犠牲にすることなく、より多くの作戦オプションを得ることができる。4つ目のノードは見通し外無線で、すでに内部通信が可能な2つの「Beast」システムと「Kraken」が、電子戦計画策定管理ツール(EWPMT)や旅団の指揮・統制(C2)および火力ネットワークにデータや報告をプッシュバックできるようになっている。

CACI社はMastodonシステムをベースとした旅団戦闘チーム用地上レイヤー・システム携帯無線機(TLS BCT Manpack)システムを納入している。上の写真では、第11サイバー大隊ブラボー中隊(バンディッツ)が、1月と2月に行われたナショナル・トレーニング・センター25-03ローテーションで旅団戦闘チーム用地上レイヤー・システム携帯無線機(TLS BCT Manpack)システムを使用している。|米陸軍

各旅団戦闘チーム(BCT)には合計6つのマンパックシステム(24ノード)が計画されている。当初、このうち3システム(12ノード)は電子戦(EW)兵が運用し、残り3システム(12ノード)はインテリジェンス兵が運用する予定だったが、ストレイヤー(Strayer)の説明によれば、「インテリジェンス兵力構成は現在、師団レベルに移行する過程にあるため、旅団ごとに6基を配備することに変わりはないが、電子戦(EW)システム3基だけが旅団に配備され、残りの3基は師団のSIGINT兵が運用することになる」。

地上レイヤー・システム携帯無線機(TLS Manpack)の迅速な実戦配備の成功は、電子戦担当陸軍能力マネージャー(ACM EW)、インテリジェンス・センサー担当陸軍能力マネージャー(ACM IS)、陸軍試験評価センター、および複数の作戦部隊、特に米陸軍の新しいトランスフォーミング・イン・コンタクト(TIC)部隊の電子戦将校(EWO)を含む、米陸軍の複数の組織間の多大な協力と調整の結果である。

※ トランスフォーミング・イン・コンタクト(TIC)は、現代の戦場での戦闘能力を向上させるために新しい技術と組織構造を実験する米陸軍の取組み。

トランスフォーミング・イン・コンタクト(TIC)部隊とは、まだ開発サイクルにある最新・最良の装備を受け取り、近代化プロセスに直接フィードバックを提供するために指定された特定の作戦部隊である。この取り組みの第一段階は、2024年度に第101空挺師団第2旅団戦闘団、第10山岳師団第3旅団戦闘チーム(BCT)、第25歩兵師団第2旅団戦闘チーム(BCT)の3つの旅団戦闘チーム(BCT)で実施された。

陸軍電子戦(ACM EW)責任者のレスリー・ゴーマン(Leslie Gorman)大佐の説明によると、「トランスフォーミング・イン・コンタクト(TIC)部隊を使用することで、電子戦(EW)兵士からの運用上のフィードバック機会を利用した没入型実験を実施することが可能になった。電子戦(EW)の戦闘員は現在、任務を達成するためのシステム・デザインに直接関与している。このような絶え間ないフィードバックは、文書化された要件を検証するのに役立つだけでなく、事業執行室事業管理室(PEO PM)のスタッフが将来の電子戦(EW)システム・アップグレードのために同じフィードバックを受けることを可能にする。トランスフォーミング・イン・コンタクト(TIC)は、迅速なプロトタイピングと、得られた運用知識に基づく部隊への実戦投入に本当に役立っていると思う」。

ストレイヤー(Strayer)は、「旅団戦闘チーム用地上レイヤー・システム携帯無線機(TLS BCT Manpack)のほぼ記録的な納期は、迅速に能力を実現するための中間層取得(MTA)の取得経路の有用性を強調している。我々は現在、米陸軍が必要とする携帯無線機を旅団戦闘チーム(BCT)に装備する過程にあり、現在、第4旅団を構築中である」。ストレイヤー(Strayer)は、今年は毎月1旅団に装備し、来年は毎月2旅団に加速することを期待している。「到達目標は、今後3年間ですべての旅団に装備させることだ」。

旅団以上の部隊用地上レイヤー・システム(TLS EAB)

一方、「電子戦およびサイバー事業管理室(PM EW&C)」は、旅団より上位の部隊階層(すなわち、師団、軍団、およびマルチドメイン・タスク部隊(MDTF))のための部隊用地上レイヤー・システム(TLS)能力のバージョン(「旅団以上の部隊用地上レイヤー・システム(TLS EAB)」)にも取り組んでいる。「旅団以上の部隊用地上レイヤー・システム(TLS EAB)」はまた、C5ISR/EW Modular Open Suite of Standards (CMOSS) に沿ったモジュラー・オープン・システム・アーキテクチャを用いて構築されたラピッド・プロトタイピング事業である。

2023年6月、米陸軍はロッキード・マーチン社と、サイバースペースにおける指揮・統制・通信のためのコンソーシアム(C5)を通じて、フェーズ2のプロトタイプの構築と実証を支援するためのその他の取引権限(OTA)契約を締結した。フェーズ2契約は21ヶ月の履行期間で総額3,670万ドルであった。

「事業が3年目を迎えるにあたり、多くの教訓が得られた」とストレイヤー(Strayer)は言う。そのひとつは、範囲拡張型旅団以上の部隊用地上レイヤー・システム(TLS EAB)と呼ばれる構成で、軍団の部隊階層用にデザインされた能力である。「確かに可搬性はあるが、軍団レベルの能力やマルチドメイン・タスク部隊(MDTF)は世界のどの地域にあるかによって少し異なるが)に必要な、いくつかの拡張範囲開口部での高度な処理を提供するために、より大きく、より堅牢な能力を持っている」。

太平洋戦域の師団レベルや一部のタスク部隊では、もっと軽量なものが必要だったとストレイヤー(Strayer)は言う。「そのため、「範囲拡張型旅団以上の部隊用地上レイヤー・システム(TLS EAB Extended Range)」とは別に、旅団以上の部隊用地上レイヤー・システム(TLS EAB)と呼ぶ第二のコンポーネントを開発中だ。「範囲拡張型旅団以上の部隊用地上レイヤー・システム(TLS EAB Extended Range)」とは対照的に、旅団以上の部隊用地上レイヤー・システム(TLS EAB)と呼んでいる。これは、より小型で、よりコンパクトな処理能力を持ち、部隊に有機的な軽量車両で簡単に輸送できるものだ。また、遠隔センサーを大いに活用することになるだろう」。

ストレイヤー(Strayer)によれば、SIGINT用と電子戦(EW)用というように、両構成には複数の種類があるという。「両者には若干異なる要件があり、確かに分類レベルも異なる。SIGINT能力については、SIGINTが開発した「TOP SECRET」の機密能力をすべて活用することができるが、電子戦(EW)については、「SECRET」、「SENSITIVE」、あるいは機密区分無しレベルなど、より低いレベルの機密で作業する必要がある」。

「電子戦およびサイバー事業管理室(PM EW&C)」は、この夏からさまざまな構成項目のデモンストレーションを開始し、4月にアバディーンで開催される「Project Convergence Capstone 5」では、軽量化能力の一部をデモンストレーションする予定である。また、今年の夏には、より大規模な射程延長能力の一部をデモンストレーションし、演習場に持ち出して実際のターゲットに対してテストを行い、兵士からのフィードバックを得る予定である。その到達目標は、2026/27会計年度に一部の主要部隊に前方展開される初期プロトタイプのより厳密な運用評価を行うことである」。

空中サイバー電磁活動(CEMA)

空のドメインに対応するため、「多機能電子戦-エア・ラージ(MFEW-AL)」事業は、旅団戦闘チーム(BCT)指揮官に、部隊に特有な空中攻撃型サイバー電磁活動(CEMA)能力を提供する。このシステムはソフトウェア定義無線(SDR)/デジタル無線周波数メモリ(DRFM)アーキテクチャに基づいており、米陸軍のMQ-1C「グレイ・イーグル無人航空機システム(Gray Eagle UAS)」に搭載される自己完結型ポッドに収められている。デジタル無線周波数メモリ(DRFM)は、あらかじめプログラムされた信号特性情報とリアルタイムの戦場情報の両方を活用し、遠隔操作と動的なタスクをサポートする。

ロッキード・マーチンが開発した多機能電子戦-エア・ラージ(MFEW-AL)は、米陸軍のMQ-1Cグレイ・イーグルに搭載されている。このシステムは今年後半に開発試験が行われる。| 米陸軍

ストレイヤー(Strayer)によれば、「多機能電子戦-エア・ラージ(MFEW-AL)」は今年、限定的なユーザーテストを行うことを目標に、耐空/開発テストに向かっている。「非常に厳しいテスト環境で性能を検証する必要があり、現在そのテストを計画しているところである」。「多機能電子戦(MFEW)」は実際にはプラットフォームにとらわれないが、主に「グレイ・イーグル無人航空機システム(Gray Eagle UAS)」やそのクラスのプラットフォーム向けにデザインされている。「この機体は、我々が現在耐空性を追求している機体であり、来年にはこの能力を兵士の手に届けたいと考えているが、最終的な耐空性試験の結果次第だ」とストレイヤー(Strayer)は言う。

計画策定と管理

サイバー電磁活動(CEMA)を支援するすべての電子戦(EW)およびサイバー・リソースのバックボーンおよび能力管理リソースとして機能するのが、電子戦計画策定管理ツール(EWPMT)である。電子戦(EW)計画管理ツールは、複数のセンサー・ソースからのデータを統合することにより、電子戦支援(ES)および電子攻撃(EA)のマルチドメイン作戦を計画、同期化、実行する能力を提供し、戦場の指揮官に詳細な状況認識を提供するソフトウェア・スイートである。

レイセオン社が開発した電子戦計画策定管理ツール(EWPMT)ソフトウェアは、現在アーキテクチャの更新中で、次期電子戦計画策定管理ツール(EWPMT-X)となり、米陸軍のタクティカル・アサルト・キット(TAK)フレームワークと統合される予定である。| 米陸軍

レイセオン(Raytheon)が行った電子戦計画策定管理ツール(EWPMT)の開発は、米陸軍のサイバー電磁活動(CEMA)目標を実現するという点で、まさに最前線に立っている。すでにソフトウェアの「増分1(Increment 1)」のもとで完全に装備化されている電子戦計画策定管理ツール(EWPMT)は、サイバーと電磁気の両方の活動を可能にし、全体のミッション・コマンド・オペレーション・ピクチャ(COP)のためのデータを提供する。「現在、世界中に複数のチームがあり、部隊に装備と訓練を施し、ミッション・プランニングを行い、重要な国家データベースに接続する電子戦(EW)センサーの状況認識を行い、指揮官にスペクトラムの詳細な評価を与えている」とストレイヤー(Strayer)は言う。

同時に、プロジェクト・マネージャは「電子戦計画策定管理ツール(EWPMT)」のアーキテクチャを 「次期電子戦計画策定管理ツール(EWPMT-X)」と呼ぶものに更新中である。ストレイヤー(Strayer)は言う。「Xは、ツールセットの基本的なアーキテクチャとデータ構造を、タクティカル・アサルト・キット・フレームワーク(TAK-X)に置き換えることに由来している」。「次期電子戦計画策定管理ツール(EWPMT-X)」は、米陸軍の次世代指揮・統制(NGC2)アプローチをサポートすることを意図しており、指揮官がより多く、より速く、より優れた意思決定を行い、最終的にセンサーからエフェクター/シューターまでのタイムラインを短縮するために、電子戦(EW)と情報データを融合させた新しいデータ中心アーキテクチャとなっている。

ストレイヤー(Strayer)によると、「次期電子戦計画策定管理ツール(EWPMT-X)」はタクティカル・アサルト・キット(TAK)フレームワークに収束し、米陸軍全体でタクティカル・アサルト・キット(TAK)がすでに広く使用されているため、システムをより広く使用できるようになるという。「タクティカル・アサルト・キット・フレームワーク(TAK-X)は成熟したソフトウェア・フレームワークであり、他の陸軍指揮・統制(C2)システムで多くの勢いがある。タクティカル・アサルト・キット・フレームワーク(TAK-X)は、他の陸軍指揮・統制(C2)システムで大きな勢いを持つ成熟したソフトウェア・フレームワークである。この基本アーキテクチャに移行することで、将来的に運用機能をより迅速に追加することが可能になり、全体的な維持コストを削減することができる。最も重要なことは、米陸軍や統合コミュニティにおける次世代指揮・統制(C2)や統合全ドメイン指揮・統制(JADC2)構想、特に指揮・統制(C2)システムに対するデータ中心アプローチへの移行方法との直接的な連携と結びつきを我々に提供することである」。

ストレイヤー(Strayer)によると、昨年行われたトランスフォーミング・イン・コンタクト(TIC)部隊による「次期電子戦計画策定管理ツール(EWPMT-X)」の試験的デモンストレーションは非常に好評で、現在、2026年度にXフレームワークの最小実行可能製品を提供することを目標に、機能の成熟と追加機能の実証を進めている。「その時点では、旧バージョンの電子戦計画策定管理ツール(EWPMT)から、ユーザー・インターフェースに若干の違いがあるものの、新しい電子戦計画策定管理ツール(EWPMT)に切り替わるだけだ。主な変更点は、アーキテクチャを正しくすることと、データ中心のアプローチでソフトウェアを管理する方法について、我々が行ったいくつかの進歩を前進させることだ」。

米陸軍

スペクトラム状況認識

サイバー電磁活動(CEMA)を支援する新規開始事業という点では、特に重要な取り組みの1つがスペクトラム状況認識システム(S2AS)である。これは、指揮官が部隊自身のスペクトラムでの放射を確認し、敵の電子戦(EW)やSIGINTセンサーからどの程度見えるかを示す能力を与えるようにデザインされている。ロシアとウクライナの戦争は、軍事ユニットが電磁スペクトラム(EMS)での放射を利用してどのように位置を特定し、標的にすることができるかを明確に照らし出した。

今年中にプロトタイプ段階を開始することが期待され、スペクトラム状況認識システム(S2AS)は、電子戦計画策定管理ツール(EWPMT)と統合して電磁スペクトラム(EMS)の状況認識を提供し、次世代指揮・統制(NGC2)の指揮官の意思決定強化に貢献するCOTSソリューションとして、今年中に試作段階を開始する予定である。ストレイヤー(Strayer)は、「スペクトラムの中で自分たちがどのように見えるかを見ることができることで、指揮官は電磁スペクトラム(EMS)のシグネチャを制限するために自分たちの能力を再配置したり、マスクしたりすることができるようになる」と説明する。指揮官は、通信能力を維持しながら、その能力に影響を与える可能性のある環境における敵の活動を感知することができる」。

スペクトラム状況認識システム(S2AS)は現在、承認された要件を持っているが、事業の開始はFY25の予算待ちである。「しかし、我々は、多くの試作前活動と市場調査を行っており、その実行可能性を確信している」とストレイヤー(Strayer)は言う。

ありふれた風景の中に隠れる

「電子戦およびサイバー事業管理室(PM EW&C)」の電子戦(EW)の3つの要素(電子支援(ES)、電子攻撃(EA)、電子防護(EP)) にわたる活動について議論する中で、ストレイヤー(Strayer)は、彼の事業管理室は実際には電子防護(EP)の業務を行っていないと指摘している。「電子防護(EP)は我々の任務ではないし、電子戦(EW)資産で電子防護(EP)を行うこともない。電子防護(EP)は一般的に、それ自体を防護するために個々の電子機器や通信機器に組み込まれているものだ。我々は電子支援(ES)と電子攻撃(EA)の攻撃要素に重点を置いている」。

しかし、FM 3-38「Cyber Electromagnetic Activities」 に記載されているように、電子戦(EW)の電子防護(EP) 要素の広範な範囲には「電磁波対策と電磁波欺瞞」などの能力も含まれる。電磁ハードニング、電子マスキング、放射統制(Emission Control)、電磁スペクトラム管理、戦時予備モード、電磁両立性などである。このように、「電子戦およびサイバー事業管理室(PM EW&C)」の中には、規則の例外であることが証明されるかもしれない1つの事業がある:モジュラー電磁スペクトラム・システム(MEMSS)である。

「モジュラー電磁スペクトラム・システム(MEMSS)は奇妙なハイブリッド領域にある。たしかに電子防護(EP)に貢献しているが、積極的に攻撃しているわけではないものの、どちらかといえば電子攻撃(EA)側に近い」とストレイヤー(Strayer)が述べた。モジュラー電磁スペクトラム・システム(MEMSS)の正確な目的と方法論は分類されていないからだ。公表されているのは、この取組みが指揮所の残存性に関連しており、敵対者を混乱させ、欺くテクニックを採用する可能性があるということだ。ストレイヤー(Strayer)が言いたいのは、モジュラー電磁スペクトラム・システム(MEMSS)は「戦場で様々な信号を提供し、部隊が隠れるのを助け、スペクトラムの中で機動の自由(freedom-of-maneuver)を提供する」ということだ。

モジュラー電磁スペクトラム・システム(MEMSS)は2026年度に新たにスタートすることが提案されている。「現在は計画策定段階であり、要件は最終決定のために陸軍要件監督評議会(AROC)に向かっている」とストレイヤー(Strayer)は言う。

米陸軍

自律型プラットフォームの活用

今月末、AOC(Association of Old Crows)はアバディーン試験場でサイバー電磁活動(CEMA)2025会議を開催する。今年のテーマは「縦深の闘いの支援での全ドメイン作戦(All Domain Operations in Support of the Deep Fight)」で、その大きな部分が自律型プラットフォームの活用能力であることを強調している。

この点に関して、ゴーマン(Gorman)大佐は次のように述べている。「電子戦(EW)はクロスドメインの火力を実現するシェーピングであり、非致死性効果をいかにして致死性火力と同期させ統合させるかが、距離とタイミングの専制が紛争の主要な変数となる将来の作戦環境での成功にとって極めて重要である。したがって、電子戦(EW)能力は、効果発生と提供のための動的な再プログラミングを可能にするシームレスな統合を備えたシステム・オブ・システムとして機能しなければならない。このアプローチは、今後の自律的な電子戦(EW)作戦の基礎となるものである」。

ストレイヤー(Strayer)は、このコンセプトへの彼のプロジェクト・マネージャの貢献はセンサーとペイロードにあると言う。「我々は師団、軍団、マルチドメイン・タスク部隊(MDTF)を対象とした旅団以上の部隊用地上レイヤー・システム(TLS EAB)事業を通じてこれに取り組んでいる」。ストレイヤー(Strayer)はこれを、旅団以上の部隊用地上レイヤー・システム(TLS EAB)が要求する射程距離の延長と関連づけている。「射程距離を伸ばす重要な方法のひとつは、センサーを必要な場所まで前進させることだ。そのためには、小型で持ち運びができ、オプションで攻撃可能なセンサーが必要だ」。サイズ・重量・力(SWAP)の課題は異なるが、同じセンサーが有人システムにも使用可能であることを指摘した上で、「我々は無人システムそのものに特化して研究しているのではなく、使用できる可能性のある検知器やエフェクターに特化して研究している。これらの無人システムに関するいくつかの事業では、米陸軍の実験がまだたくさん行われている。我々は、無人システムを使用したり、センサーを戦場で必要な場所まで運んでもらったりすることの利点を、間違いなく理解している」と付け加えた。

戦場で団結する

サイバー電磁活動(CEMA)の規模と範囲は、おそらく、その名称が、その権能の範囲内のすべての目標、任務、機能を包含するために、非常に一般的な言葉「活動(activities)」を使用している理由を説明する。「電子戦およびサイバー事業管理室(PM EW&C)」のストレイヤー(Strayer)は、装備品の観点から仕事をしていると説明する。「この観点から、あなたが望むものは、これを実現するために必要なすべての装備品のための明確なロードマップを示すマスター戦略とマスタープランである。米陸軍はこの分野ではまだ旅の途中だ。イラクとアフガニスタンの前に真の電子戦(EW)を実施したときから多くのことが変わり、我々はまだ学習モードにある。そのため、我々は多くのラピッド・プロトタイピングを行っており、ヨーロッパで起こっていること、さらには今日太平洋で起こっていることから学んだ多くの教訓を集めている」。

しかし、ストレイヤー(Strayer)はサイバー電磁活動(CEMA)が単なる装備品以上のものであることを強調する。「「FM 3-38「Cyber Electromagnetic Activities」から明らかなように、サイバー電磁活動(CEMA)にはドクトリン、組織、部隊構造、訓練、能力開発、その他その背後にあるものすべてが含まれる。各部隊階層は、インテリジェンス、作戦、G-6、ネットワーク通信、火力の各領域の代表者で構成される独自のサイバー電磁活動(CEMA)セルを持ち、サイバー電磁活動(CEMA)活動を時間的にも空間的にも同期させる」。

ストレイヤー(Strayer)は、電子戦担当陸軍能力マネージャー(ACM EW)が、調整された取得経路を通じてこのプロセスを加速する上で重要な役割を果たしていると指摘する。「陸軍能力マネージャー(ACM)は、要件の優先順位付けのために陸軍と作戦部隊を代表し、非常に重要な直接部隊と兵士のフィードバックを調整するのを助けてくれる。なぜなら、我々は学ばなければならないし、それらの要件は複雑なサイクルを通じて知らされなければならないからである。陸軍能力マネージャー(ACM)は、すべてのデータを収集し、ドクトリン、組織、訓練、装備、リーダーシップ、教育、人材、施設(DOTMLPF)の全プレーヤーにわたって装備品の要件を得る責任を負う。このような全ドメインの優位性という側面から、我々は現在、複数の事業に対する能力の開発から実戦配備へと移行している。我々の背後には多くの勢いがあり、米陸軍が次の闘いに備えるための真の危機感を持っている」。