2025年4月30日付国防長官の覚書「米陸軍の変革と取得改革」

次のような内容でリリースされた「米陸軍の変革と取得改革」の米国防長官の覚書を紹介する。

ますます複雑化するグローバルな安全保障環境において、戦争を抑止し、強さによる平和を達成する陸軍の能力は、多様で新たなグローバルな脅威に迅速に適応する陸軍の能力にかかっている。 陸軍が複雑かつ進化する将来の戦場に備えるため、国防長官は陸軍長官に対し、陸軍を再建し、戦士の精神を回復し、抑止力を再確立するよう指示した。この覚書は、陸軍長官に対し、包括的な変革戦略を実施し、兵力構造を合理化し、無駄な支出を排除し、取得プロセスを改革し、非効率な防衛契約を近代化するよう指示している。

トランプ政権の政府効率化省(DOGE)の取組みは、米軍にも大きな影響を及ぼしている。(軍治)

2025年4月30日付国防総省の上級首脳部向け覚書

件名:米陸軍の変革と取得改革

MEMORANDUM FOR SENIOR PENTAGON LEADERSHIP

SUBJECT:  Army Transformation and Acquisition Reform

国防長官としての私の最大の責任は、米陸軍の致死性を確保し、わが国、米国、そしてその国民の防衛を確保することである。

大統領は我々に「強さによって平和を達成する」という明確な使命を与えた。これを達成するために、米陸軍は祖国防衛とインド太平洋地域における中国抑止を優先しなければならない。戦争を抑止し、必要であれば急速に進化する戦場で勝利するためには、肉体的にも精神的にも復元性があり、厳しい訓練を受け、最高の技術を備えた兵士が必要である。

よりスリムで致死性の高い部隊を構築するため、米陸軍は、時代遅れの冗長で非効率的な事業を切り離すとともに、司令部と取得システムを再編することにより、加速度的に変革しなければならない。同時に、米陸軍は政権の戦略に従って投資に優先順位をつけ、長距離精密火力、「米国のための黄金のドーム」を含む防空・ミサイル防衛、サイバー、電子戦、対宇宙能力を向上させるために既存の資源が優先的に投入されるようにしなければならない。

私は米陸軍長官に対し、包括的な変革戦略を実施し、戦力構造(Force Structure)を合理化し、無駄な支出を排除し、取得プロセスを改革し、非効率な防衛契約を近代化し、偏狭な利害関係を克服して米陸軍を再建し、戦士の倫理観を回復し、抑止力を再確立するよう指示する。

将来の戦いのために米陸軍は今、変革する

戦争に勝利する能力の提供を加速するため、米陸軍長官は以下を指示される。

・ 2027年までに、移動する陸上・海上ターゲットを打撃可能な長距離ミサイルを実戦配備する。

・ 2027年までに電磁波支配と沿空域(air-littoral)支配を達成する。

‐ 2026年末までに、すべての師団で無人システム(UMS)と地上/空中発射効果を実戦配備する。

‐対無人航空システム(UAS)の移動性と価格性を改善させ、2026年までに機動小隊に、2027年までに機動中隊に能力を統合する。

・ 2027年までに、戦域軍、軍団、師団の各司令部において、Al駆動の指揮・統制を可能にする。

・ 2026年までに、3D印刷や積層造形(additive manufacturing)を含む先進的製造を作戦部隊に拡大する。

・ 21世紀型の生産能力を導入することで、戦時中に国防を維持するために必要な弾薬備蓄を生産するための有機的産業基盤を近代化し、2028年までに完全な運用能力を持たせる。

・ 戦略的アクセス、基地化、上空飛行を強化するため、事前配置在庫、ローテーション配備、同盟国やパートナーとの演習を拡大することにより、インド太平洋における米陸軍の前方プレゼンスを高める。

無駄な事業や時代遅れの装備品を排除する

米陸軍長官は、効率を最大化し、近代化を加速し、既存の資源の範囲内で米陸軍の変革に資金を充てるために、適用される法律および政策に従って、次の措置を講じるものとする。

・ 時代遅れのシステムの調達を中止し、有人航空機、余剰の地上車両(HMMWVなど)、時代遅れの無人航空機(UAV)など、効果のない事業や冗長な事業を中止または縮小する。

・ 時代遅れの兵器システムや不必要な気候関連のイニシアティブなど、旧来の維持への支出を削減する。

・ 無駄な契約や過剰な出張費を排除する。

・ 戦略的要件に沿うよう、米陸軍事前配置在庫を再評価し、最適化する。

・ 任務の有効性を向上させるために言語訓練事業を近代化する。

戦力構造と労働力の最適化

戦略的即応性、効率性、および近代化を確保するため、米陸軍長官は以下を行うものとする。

部隊階層の米陸軍戦力構造の再構築

・ 本部を統合し、キネティック火力およびノン・キネティック火力、宇宙を基盤とする能力、無人システムを同期させることができる戦闘力を生み出す。

・ 有人攻撃ヘリの編成を削減・再編し、敵対者を圧倒できる安価なドローン・スウォームで増強する。

・ 全陸軍(現役、予備役、州兵)において、一部の機甲部隊や航空部隊を含む、時代遅れの編成を売却する。

・ 部隊を戦略的に再編成し、抑止力と迅速な展開を最適化する。とりわけ、米本土を防衛し、インド太平洋における中国を抑止する。

・ 冗長な司令部を縮小、統合、または閉鎖する。

‐ 米陸軍将来コマンド(AFC)と米訓練ドクトリン・コマンド(TRADOC)を1つのコマンドに結合する。

‐ 米陸軍総軍コマンド、米陸軍北方軍、米陸軍南方軍を結合し、国土防衛と西半球の同盟国との連携に焦点を置く単一の司令部にする。

‐ 統合軍需コマンドと米陸軍後方支援コマンドの統合を含め、米陸軍装備コマンド内の司令部と部隊を統合・再編することにより、後方支援事業対を再構築し、作戦効率を最適化し、支援能力を合理化する。

・ 厳選された補給所、兵器庫、施設全体の業務を見直し、統合し、防衛産業基盤への拡大を目指す商業団体とのリース機会を探す。

労働力の近代化と削減

・ 最大即応性を達成するために、戦力構造(Force Structure)を最適化する。

・ 制服軍人および民間労働力全体にわたって、今日の戦場で必要とされる長所と技能を優先させる。

・ 民間人の雇用・解雇に関する方針を見直し、国防省が人材を専門的に管理できるよう支援する。

・ 将官職を削減し、戦闘員のための指揮構造を合理化する。

所得改革と予算最適化

近代化と取得の効率化を加速するため、陸軍長官は以下を行うものとする。

・ 国防長官府(OSD)会計監査官と協力し、予算枠を統合し、重要なポートフォリオ(UAS、対UAS、EWなど)において、事業中心の資金提供から能力ベースの資金提供に移行し、迅速な技術適応を確保する。

・ 知的財産の制約により、陸軍の維持整備を実施する能力を制限され、適切な維持整備ツール、ソフトウェア、技術データにアクセスする能力が制限される場合、米国産業の知的資本を保護しながら、修理権条項に関する契約修正案を特定し、提案する。すべての既存契約に修理権条項を含めるよう努めるとともに、すべての新規契約にこれらの条項が含まれるようにする。

・ その他の取引権限契約(OTA)の利用を拡大し、ソフトウェアやソフトウェア定義ハードウェアを含む重要技術の迅速なプロトタイピングと実戦配備を可能にする。

・ 契約プロセスを改革し、効率を改善する。

‐ 無駄を省くため、パフォーマンス・ベースの契約を実施する。

‐ コスト効率が良ければ複数年調達契約を拡大する。

米陸軍が創立250周年を迎えるにあたり、我が国は米陸軍に対し、地球上のどの部隊よりも遠く、より速く、そしてより激しく闘うことを求めている。トランプ大統領と私は、この国を決して失望させることはない。

米国防長官 ピート・ヘグセス(Pete Hegseth)