この先に乱気流? 

BY MANDY MAYFIELD National Defense 

コストに関する問題意識:F-22とF-35など異なった特性の戦闘機を複数種類取得して、様々な任務に対応しようとするフォースミックスによって、F-35Aはこの先どうなるか?

何年にもわたる浮き沈みの後、空軍のF-35Aジョイント・ストライク・ファイターには、コストや将来の配備について、そしてハイエンドの戦闘にどれだけの軍のニーズがあるのかについて疑問が浮上して再び論争が起こっている。国防総省、議会議員、および大手の防衛企業の一部では、今までずっと多くの問題に悩まされてきたこの第5世代戦闘機をこの先どうしていくのか揉めているようだ。

戦略国際問題研究所(Center for Strategic and International Studies)の航空宇宙セキュリティプロジェクトのディレクターであるトッド・ハリソン氏は、F-35関連に対する意見は、国防総省と議会両方で変化し始めていると言っている。彼はインタビューに答えて、「それでも過去7年間、F-35プログラムは、うまく行っていた方でした。特に議会に於いてはですね。」「近年、F-35の計画を妨げてきたのは、国防総省内の資金の問題であったのですが、皆が機体の運用と維持のコストに疑問を持ち始めてきて、もはや国防総省内だけの問題ではなくなってきていると思います。」と語っている。また「国防総省と国会議員は、全体的な予算制約のために航空機のコストを綿密に調査しており、無人機や第6世代の戦闘機概念などの代替案も検討し始めているところです。議会のメンバーは、F-35の計画された全数の調達に対応するために、そのコストと何らか他に犠牲にできるもの、(そして)既存機種の削減を検討しています。」とインタビューに加えて語った。

現在、空軍は全体を通して1,763機のF-35Aを調達する予定にしているが、下院軍事委員会の委員長であるアダム・スミス議員(民主党 ワシントン州選出)は、3月にF-35事業での無駄を削減する方法を見つけるように委員会メンバーに指示している。彼は「底なしの穴にお金を投げ込むのをやめたい。」とブルッキングス研究所のイベントで語っている。下院軍事委員会の戦術的空軍及び陸軍力に関する小委員会委員長であるドナルド・ノークロス議員(民主党 ニュージャージー州選出)は、4月のF-35に関する合同聴聞会で、「関連する多くの問題が解決されない限り、議会としてはこれまでのようには、これからの2022会計年度の予算案において、ジョイント・ストライク・ファイターの調達機数の増加を支持しない。」と表明している。「委員会では過去にF-35を支援してきたが、私たちが何度も言ってきたように、無限のリソースがあるわけではないので、F-35の実際の維持費と予測される維持費を、大幅に削減できない場合は他のより適正な事業に投資することになるかもしれない。」と彼は言っている。

F-35Aの運用と保守の費用は現在、飛行時間あたり約36,000ドルとなっている。関係者は、これを2025年までに25,000ドルまで削減することを目指している。戦闘機の調達コストは現在、1機あたり8000万ドル弱である。「航空機に関する全体的な適正費用の問題を考えると、私は今年の大統領の予算要求に含まれているもの以上の追加の航空機の要求を支持しないつもりです。」とノークロス議員は付け加えている。HASC(軍事小委員会)の即応力小委員会の議長であるカリフォルニア州選出、民主党のジョンガラメンディ議員も次のように批判している。「F-35は国防総省の歴史の中で最もお金のかかる事業であり、維持費は事業全体の期間に渡って1兆2000億ドルを超えると予想されています。この事業は持てる予算を超えています。 約束した戦闘能力を提供できず、任務稼働率は軍の閾値にさえ達し始めていない。」これに対して企業側は追加の資金が必要だと往々にして主張するものだが、「これ以上のお金を期待しないでもらいたい。」「大統領予算で許可されているよりも多くの機数の調達があるなど期待しないでもらいたい。」と彼は言っている。なおこのプレスへの発言の時点では、ジョー・バイデン大統領は2022会計年度の正式な予算要求を発表していなかった。

共和党議員はまた、当局が維持費を削減できなければ、事業そのものが削減対象になる懸念を表明している。共和党のダグ・ラムボーン議員(コロラド州)は、国防総省とそのステークホルダーは協力して、この問題に迅速に対処するべきだと述べている。「F-35を持つことは、計画されたその66年間のライフサイクルに渡って、重要な国家安全保障上の投資であると言えます。しかし、私はライフサイクル維持コストの想定が増加し続けることが心配です。F-35(戦闘力)の調達は国家安全保障にとって不可欠なので、将来に渡って装備できる必要がある。早く何とかしないと、機数(飛行部隊)が増えるにつれて維持費の削減はより困難になるでしょう。」と彼は言っている。

「F-35の維持:F-35のアフォーダビリティに対する注目と監視の強化が必要」というタイトルの米国会計検査院(GAO)の4月のレポートによると、空軍は2036年までに推定コストを1機あたり年間370万ドル削減する必要があり、そうしないと単年度で充てることができる額を超えた44億ドルの費用が発生することになる。「F-35の維持:F-35のアフォーダビリティに対する注目と監視の強化が必要」というタイトルの政府監査院(GAO)の4月のレポートによると、空軍は2036年までに推定コストを1機あたり年間370万ドル削減する必要があり、そうしないと単年度で充てることができる額を超えた44億ドルの費用が発生することになる。「空軍当局者は、F-35Aの維持費を大幅に削減しない限り、空軍は調達を計画している1,763機分の維持費は出せないだろうと語っている。」とGAOの報告書は述べている。

今までにライフサイクルコストが削減できたのは、プライム契約者であるロッキードマーチン社が約4億ドルを投資した成果であると、同社の航空担当エグゼクティブ・バイス・プレジデントであるグレッグ・ウルマー氏は述べている。同社は、人件費と材料費の削減に焦点を当てた、運用と支援の費用削減に取り組んでいると彼は聴聞会で語っている。また「RPA(Robotic Process Automation)とDX(デジタル・トランスフォーメーション)、フライトラインの運用の合理化、維持の賃金率を20%以上削減するための財務構造の確立により、F-35のサポートと保守に必要な人員を削減。また分析と予測に基づいてメンテナンスの予測精度を改善しているため、コスト削減が促進されています。」と語っている。なおロッキードマーチンは、パートナーと顧客の努力なしには、費用削減の目標を達成できないとも強調している。F-35のO&S(運用及び維持)コスト全体の約 39%はロッキードが担当し、残りは政府と航空機のエンジン メーカーであるプラット & ホイットニー (Pratt & Whitney) が担当しているとのことである。「ロッキードマーチンは、パートナーとして顧客と一緒になって、機数を拡大しつつ、事業全体に渡ってのアフォーダビリティを確保する準備ができている。」、そして「これらの成果を達成するための最も効果的な方法は、煩わしい年間契約プロセスを排除し、長期投資の安定性を高める長期的な維持パートナーシップを確立することだ。」と、ウルマー氏は指摘している。プラット・アンド・ホイットニーの軍用エンジン部門の社長であるマシュー・ブロムバーグ氏も、アフォーダビリティが最も差し迫った課題であると認識しており、削減に取り組んでいると語っている。また「エンジンコストを50%削減するというコストとの闘いで勝利することは、生産数に対する逆風を克服するための未来図を提供する。」とも、聴聞会で述べている。そして「維持費の削減は、他のプログラムでの経験を活用することで達成できるでしょう。…特に、F119 [エンジン]での知見をまとめたプレーブックは、ヘルスモニタリング、修理開発、およびデポの生産性向上活動を通じて、エンジンのメンテナンスコストを50%削減するのに役立っています。」と語っている。

一方、空軍参謀総長チャールズ ”CQ” ブラウンは、空軍の将来の戦術航空戦力の構成について様々なオプションの検討を始めている。それには安価な第4世代戦闘機、次世代エア・ドミナンス・プログラム(NGAD) として期待される第6世代プラットフォームやドローンなどが含まれている。これに関してブラウン参謀総長は2月に、空軍が将来の戦闘に必要な航空機の適切な組み合わせを決定するための”Tactical Air Study”を実施すると発表した。「このためのモデリング・アンド・シミュレーション(M&S)、分析を、今後数か月にわたって空軍で行う予定である」と、ブラウン参謀総長は記者団に語っている。なお空軍のF-35統合オフィスのディレクターであるデビッド・アバ空軍中将は、「たしかに空軍はその選択肢を模索しているが、F-35は今後数十年の間、軍の要となる戦闘機であり続ける。ジェット機は、既に相手が急速に進んだ能力を展開している高度な競合環境の中で、空軍の作戦能力を確保するものです。私たちが達成するべき任務のために、F-35を他の戦闘機部隊の戦力構成にどのように適合させるかが検討されなければならない。軍が下すすべての決定は一連の事実と仮定に基づいており、空軍は時間の経過とともに、その決定を支える考えが変わっていないかを確認する必要がある」と、National Defense誌のインタビューに答えた。「それは事実上、ファイター・フォース・スタディで行っていることです」とアバ中将は付け加えた。「購入し易いように、空軍の航空機のいろいろな購入価格は、軍が望む値の設定となっています。F-35Aの量産機は8000万ドルより下です。」と彼は述べている。ところが維持費に関しては、航空機を運用する軍の実際の費用と、議会が空軍に割り当てる資金との間には隔たりがあります。このギャップは部隊の即応性に影響を与え、それは飛行時間の削減と任務遂行率(mission capability)の低下につながります。これに対処するために、F-35統合オフィスは合同プログラムオフィスや他のステークホルダーと定期的な話し合いを持っているところです。海軍、海兵隊、および国際パートナーもF-35シリーズを購入しています。いろいろな種類のジェット機を購入しています。結局のところ、労働賃金を削減するしか、航空機を持てる費用内で運用することはできないでしょう」とアバ中将は付け加えた。アパ中将は続けて「F-35では、空軍はロッキードマーチンと一緒になって、飛行機の部品の滞空時間を増やすために、信頼性と保守性の向上に取り組んでいます。部品が破損する頻度が少ないほど、航空機から部品を取り外さなければならない回数が少なくなり、整備員が航空機の修理に費やす時間が削減できます。さらに購入しなければならないスペアパーツは少なくなり、修理に出さなければならない部品もパーツも少なくなります。空軍にとっても、業者にとっても。これらすべてが、コスト削減に効いてきます。」と語った。なお「 航空機の維持費を削減する勢いが高まっていますが、それがある程度まで行きつくと、それ以上は難しくなります。」「私たちの兵器体系は成熟したレベルにあります・・・したがってそれに掛かる維持コストをどうするかは大きな問題です。だからと言って代わりに新しいものを開発するには20年もかかります。」とアバ中将は指摘している。「これからもこの問題を解決するべく努力を続けますが、コスト削減の取り組みだけでは不十分です。F-35問題に対する別の策は、利用できる予算額を拡大することです。」とアバ中将は運用コストを下げる代わりに、空軍にもっと多くの資金を割り当てることについて言及している。

「F-35問題をどのように処置していくのが最善なのかについてはさまざまな意見がありますが、2022会計年度でどれだけの予算を割り当てるのがいいのかはまだわかりません。」と戦略国際問題研究所ハリソン氏は指摘し、「私たちはいろいろな意見のヒアリングをしていますが、それはただ単にレトリックを聴いているにしか過ぎません。結局のところ、重要なのは、最終的に議会の予算案がどうなるかです。それがF-35事業に対する真の評価になります。予算が割り当てられる飛行機の数、すなわち2022年度、議会は要求されたよりも多くの機数を追加し続けるか、それとも要求された機数のみの予算になるかということです。」と語っている。