複数のドメインにおける火星の音楽家 -21世紀における諸兵種連合の拡大- (Military Review)

3月23日掲載の「マルチドメイン作戦を維持するために」に続いて、Military Review 2023年3-4月号に掲載の2022年10月に公表された「FM 3-0 Operations」に関する投稿記事を紹介する。この記事は、「FM 3-0 Operations」で記述されるマルチドメイン作戦の内容について、「Combined arms」の観点から概説したものになっている。「FM 3-0 Operations」の要点を取ってばやく抑える際の一助となるのかもしれない。(軍治)

複数のドメインにおける火星の音楽家

21世紀における諸兵種連合の拡大

Musicians of Mars in Multiple Domains

Expanding Combined arms in the Twenty-First Century

Lt. Gen. Milford Beagle Jr., U.S. Army

Col. Richard Creed, U.S. Army, Retired

Lt. Col. Matt Farmer, U.S. Army, Retired

March-April 2023 Military Review

ミルフォード・ビーグルJr(Milford Beagle Jr)米陸軍中将は、カンザス州フォート・レベンワースの米陸軍複合兵器センターの司令官として、ドクトリン、組織、訓練、資材、リーダーシップ、人事、施設、政策など、実戦部隊の近代化を一体化する責任を負っている。小隊から師団レベルまで複数のリーダーシップの立場にあり、ハワイから大韓民国まで世界中に派遣された経歴を持つ。以前は第10山岳師団(ライト)の司令官を務めていた。サウスカロライナ州立大学から学士(BS)、カンザス州立大学から修士(MS)、陸軍高等軍事研究学校から(MS)、陸軍士官学校から修士(MS)を取得している。

リチャード・クリード(Richard Creed)米陸軍大佐(退役)は、カンザス州フォート・レブンワースのCombined arms Doctrine Directorateのディレクターであり、Field Manual 3-0「Operations」の2017年と2022年版の両方の著者と編集者の1人である。米陸軍士官学校から理学士、高等軍事研究学校から理学修士、陸軍士官学校から修士を取得している。第2歩兵師団のG-3などを歴任し、ドイツ、韓国、ボスニア、イラク、アフガニスタンに派遣された経験を持つ。中隊、大隊、旅団の各レベルで指揮を執る。

マット・ファーマー(Matt Farmer)米陸軍中佐(退役)は、カンザス州フォート・レブンワースのCombined arms Doctrine Directorateのドクトリン開発者であり、Field Manual 3-0, Operationsの2022年版の著者の一人である。米国陸軍士官学校で理学士号、国防情報大学で修士号、高等軍事研究大学院で修士号を取得した。彼の経歴にはヨーロッパ、エジプト、イラク、アフガニスタン、韓国での任務がある。

(Image by Spencer Bowers)

会戦で調和を取るには、それぞれの兵器が他の兵器を支援する必要がある。チームプレイが勝利するのだ。火星の音楽家たちよ……適切な場所、適切なタイミングでコンサートに臨まなければならない。

-ジョージS.パットン

80年以上前の第二次世界大戦の開戦時、当時のジョージ・S・パットン将軍は、第2機甲師団に音楽の比喩を使って戦い方を説明した。この選択は、将軍がしばしば深い話と不敬な話を簡単に組み合わせていたことを反映している奇妙なものだった。

今日、戦いの手段は異なり、作戦環境も異なるが、この比喩は今も真実である。新版のフィールド・マニュアル(FM)3-0「作戦(Operations」は、中国やロシアのような脅威がもたらす今日の課題に対応するために拡張された、作戦への実績のある諸兵科連合アプローチ(combined arms approach)を強調している[1]

両敵対者(adversaries)は、陸・空・海・宇宙・サイバースペースを通じて米統合部隊(U.S. joint force)と争うことができる大規模で近代的な軍隊を保有しており、米軍が数十年間闘ってこなかった環境である。米陸軍部隊(Army forces)は、新しいFM 3-0で説明されている作戦コンセプトであるマルチドメイン作戦を通じてこの課題に対処する。

マルチドメイン作戦とは、統合部隊指揮官(joint force commanders)に代わって、目標を達成し、敵部隊(enemy forces)を撃破し、獲得した成果を集約・強化する(consolidate gains)ために、相対的な優位性を生み出し、それを利用するために、統合と米陸軍の能力を諸兵種連合(combined arms)で運用することである[2]

マルチドメイン作戦の核心は、伝統的な1ドメイン、2ドメインのアプローチを超えて、陸、空、海、宇宙、サイバースペースのすべてのドメインを含む諸兵種連合(combined arms)の拡大である。マルチドメイン・アプローチは、米陸軍指揮官(Army commander)および統合部隊指揮官(joint force commanders)が、対等な能力(peer capabilities)を持つ敵部隊(enemy forces)に対して利用可能な優位性を作り出すための選択肢を増やすものである。

利用可能なすべての能力と方法を効果的に一体化するためには、ドクトリンを理解し、その技巧(craft)を習得したリーダーが必要である。FM 3-0やその他のドクトリンを読むことは不可欠であるが、その習得には、本国や戦闘訓練センターでのリーダー育成や訓練で応用することが必要である。

2021年8月13日に中国の寧夏回族自治区で行われたロシアと中国の統合軍事演習を見学するロシアのセルゲイ・ショイグ国防相(左)と中国の魏鳳和国防相。(写真:Savitskiy Vadim、ロシア国防省 via Associated Press)

2016年の発足当初から、マルチドメイン作戦は脅威を知らせていた。したがって、マルチドメイン作戦を理解するための入り口は、中国とロシアの脅威に対する理解である。

中国とロシアによって課される課題:Challenges Posed by China and Russia

中国とロシアの軍事的近代化と、軍事的応用が可能な宇宙、サイバースペース、核能力の拡散は、安全保障政策とドクトリンの変化を促す主要な要因である。複数の敵対者(adversaries)が複数のドメインで統合部隊(joint force)と争うことができるが、中国とロシアが最も危険であることに変わりはない。

両者は作戦上永続性ある編成と能力を有し、復元性があり順応性がある。単一の決定的な取組みでこのどちらかを迅速に撃破することは不可能である。したがって、米陸軍部隊(Army forces)は、有利な戦力比を作り出し、それを利用することによって、複数の決定的なポイントに対して戦闘力を集中させ、時間をかけて優位性を獲得し、敵部隊(enemy forces)を詳細に撃破することができなければならない[3]

戦略レベルでは、中国とロシアは異なる脅威を、異なるスケールで提供している。しかし、両敵対者(adversaries)ともスタンドオフ・アプローチを採用しており、ネットワーク化されたセンサーと長距離火力能力を活用して、米国本土からの戦力投射とグローバル対応に必要な戦略的に価値のある地域への米統合部隊(U.S. joint force)のアクセスを拒否している。

両国とも、イラクとアフガニスタンに対する米国の作戦から、自国を防衛する最善の方法は、敵が国境近くで戦闘力を増強するのを防ぐことだと結論付けた[4]。統合ドクトリンでは、こうしたスタンドオフのアプローチを接近阻止(antiaccess)と領域拒否(area denial)と表現している。接近阻止(antiaccess)とは、通常、統合部隊(joint force)がある地域に進入するのを阻止する長距離能力を指す。

領域拒否(area denial)とは、一般に、ある地域に進入した部隊の行動の自由を制限する中距離および短距離の能力を指す。このようなスタンドオフ・アプローチは、冷戦終結後、中国やロシアが米統合部隊(U.S. joint force)に対して行ってきたことを、平然と行えるようにするものである。

対等な脅威のスタンドオフ・アプローチの戦略的影響の1つは、武力紛争の際に統合部隊(joint force)と同盟国にとって金銭、時間、人命の面で潜在的コストが増加し、米国が挑発に武力で対応する可能性がある閾値を事実上高めることである。

従来型の抑止力の効果を薄めることで、敵対者(adversaries)は侵略を拡大し、情報戦を含む悪意ある活動を行うための行動の自由を高めている。中国とロシアは、米軍部隊と近接戦闘(close combat)に持ち込むリスクを限定した上で、自国の利益を増進し続ける。マルチドメイン作戦の開発は、こうした戦略的考察を考慮したものであった[5]

作戦レベルでは、米陸軍部隊(Army forces)に関連する2つの基本的な闘いがある: (1) 陸軍の能力によって可能となる、敵の接近阻止(antiaccess)と領域拒否(area denial)アプローチを撃破するための統合の闘い(joint fight)、および (2) 統合能力によって可能となる、敵部隊(enemy forces)を撃破し、重要な地形と人口を支配し、統合部隊指揮官(joint force commanders)の国家目標を達成するための地上の闘い(land fight)。

両方の闘いにおいて重要なのは、敵の一体化された防空システム(integrated air defense system)および全体的な一体化された火力指揮(integrated fires command)の構成要素を撃破するために、編成として闘う米陸軍軍団(Army corps)の役割である。

また、戦術的な課題には2つの構成要素がある。第一は、前方に配置された部隊が、通知なしの敵の侵略や攻撃行動から危険にさらされる重要な地形や統合インフラをどのように防衛するかということである。第二は、グローバルなインテリジェンス・監視・偵察能力によって可能となるレイヤー化された意図的防御を採用して、米陸軍部隊(Army forces)が対等な脅威(peer threats)に対してどのように遠征攻勢作戦を実施するかである。

脅威防衛は、準備期間、国境に近い後方連絡線、地形や人口に対する理解、利用可能な兵力、大量の火を迅速に処理する能力など、初期に多くの優位性がある。

防勢的、攻勢的な友軍の作戦中、敵部隊(enemy forces)は友軍の兵站や指揮・統制(C2)ノードを狙い、電磁波戦(electromagnetic warfare)によって友軍の通信を低下させ、情報戦によって我々の闘う意志(will to fight)をターゲットにする。

抑止が失敗した場合、米陸軍の戦術編成は、多勢に無勢で残りの米統合部隊(U.S. joint force)の他のから孤立した状態で同盟国と闘い、勝利する必要がある可能性が高い。

課題に応える:マルチドメイン作戦:Meeting the Challenge: Multidomain Operations

マルチドメイン作戦は、持続可能な政策成果を達成する統合戦役(joint campaigns)に対する米陸軍の貢献である。すべての作戦は、何らかの形で、複数のドメインを通じた能力および作戦に依存している。マルチドメイン作戦は、方法は違うが、あらゆる部隊階層で適用される。軍団以上の部隊は通常、本来マルチドメインである統合および陸軍の能力を、その下部組織に割り当てたり一体化したりする上で、主導的な役割を担っている。

師団は、場合によっては一体化する役割を果たすこともある。しかし、編隊に統合能力が割り当てられていない場合でも、あらゆるドメインからの敵の能力がもたらす脅威を認識し、それを軽減するための適切な手段を講じなければならない。戦闘力を維持するためには、FM 3-0 で必須とされている高水準の状況認識(situational awareness)と物理的努力(physical exertion)が必要である。

図. 作戦環境のドメインとディメンジョン

(図:フィールドマニュアル3-0, 「作戦(Operations)」より)

マルチドメイン作戦は、連合環境における作戦のための統合と諸兵科連合アプローチ(combined arms approach)という基盤の上に成り立っている。作戦コンセプトは、利用可能なすべての能力を運用するための効果とプロセスを理解する必要性を強調する。

FM 3-0は、物理、情報、人間の3つの次元で理解される5つのドメインを通して、リーダーが作戦環境を見るのに役立つモデルを提供している(図参照)。マルチドメイン作戦は大規模戦闘作戦(large-scale combat operations)に焦点を当てるが、競争、危機、武力紛争時の統合戦役(joint campaigns)の一部として、米陸軍部隊(Army forces)がどのように補完的かつ補強的な方法で作戦を一体化するかを記述する。

4つの信条(tenets)と9つの義務(imperatives)が作戦の遂行の指針であり、対等な脅威(peer threats)によって課される特定の課題に対して、リーダーがどのように戦闘力を適用し、維持するかについての選択肢を提供する。マルチドメイン作戦は、友軍の作戦の結束を維持しながら、撃破メカニズムの使用と敵部隊(enemy forces)を詳細に撃破することを強調する。

FM 3-0 は、米陸軍部隊(Army forces)が戦闘力を生み出し、敵部隊(enemy forces)に対して最大限の効果を発揮するために、各階層内および階層間で縦深作戦(deep operation)、近接作戦(close operation)、支援作戦(support operation)、後方作戦(rear operations)をどのように一体化するかを説明している。

諸兵種連合:Combined arms

諸兵種連合(combined arms)の拡大は、マルチドメイン作戦を一歩前進させる中核となるものである。異なるドメインの能力を諸兵種連合(combined arms)で活用することで生まれる補完・補強効果は、作戦プロセスで生じる一体化(integration)と同期化(synchronization)によって鍵が開けられるのである。

一体化(integration)とは、与えられた目標を達成するために、どの編成のどの部隊階層にどの能力が必要かを決定し、その能力を割り当てることである。同期化(synchronization)とは、これらの能力を時間的・空間的に組み合わせて適用し、敵に良い解決策がないようなジレンマを作り出すことである。リーダーは、通常戦力、多国籍軍、特殊作戦部隊、非正規軍、および利用可能なすべての統一された行動パートナーを一体化し、同期させる。

拡大した諸兵種連合チーム(combined arms team)の各メンバーは、他のメンバーが補強できる強みと、他のメンバーが軽減できる限界を持っている。異なるタイプの能力がどのように組み合わされるかを理解し、敵が予想しない方法でそれらを使用することは、我々が予測可能であることを期待する相手に対して成功するために不可欠である。

リーダーは、自軍の編成と能力が、上位司令部、隣接部隊、および統合戦役(joint campaign)をどのように可能にするかを理解しなければならない。また、自分たちがコントロールできない能力や編成が、どのように自分たちの作戦を可能にするかも理解しなければならない。

成功のためには、兵科や職業的専門性を超えた最高レベルの主題専門知識を持つリーダーのコミットメントが必要である。リーダーはさらに、陸軍の部隊階層間で能力を一体化または配分する際に、リスク情報に基づいた方法で有効性と効率性のバランスを取る方法を理解しなければならない。

この現実は、どの部隊階層に配属されたとしても、出発点は、友軍と敵対者(adversary)の担当地域とその影響地域という観点から、作戦環境を明確に理解することであることを意味する。

作戦環境の理解:ドメインと次元:Understanding the Operational Environment: Domains and Dimensions

マルチドメイン作戦は、リーダーが5つのドメインとその物理的、情報的、人的側面を通して作戦環境を理解することを要求する。「ドメイン(domainとは、作戦環境の物理的に定義された部分であり、独自の用兵能力(warfighting capabilities)と用兵技能(warfighting skills)を必要とする[6]

リーダーは、統合能力や陸軍能力の技術的側面をすべて理解する必要はないが、それらが相互に有益な方法でどのように採用できるのか、また、地上での作戦を支援するためにそれらの能力をどのように要請するのかを理解する必要がある。同様に、旅団より上の階層にいる米陸軍のリーダーは、米陸軍の能力の採用を提唱して、統合部隊(joint force)の他の軍種構成部隊の行動の自由を創出する必要がある。

物理的な性質はドメインを定義するが、マルチドメイン作戦では物理的な要素を超えた要因の重要性が強調される。FM 3-0 は、「各ドメインの物理的、情報的、人的側面を理解することは、指揮官や参謀が作戦の影響を評価し予測するのに役立つ」と記している[7]

米陸軍の作戦の多くは物理的な次元を通じて行動を開始するが、敵対者(adversary)の意志(人間の次元)に影響を与えるためには、最終的には(情報の次元を通じて)影響を与えなければならない。FM 3-0はまた、リーダーシップや指揮・統制(C2)へのミッション・コマンド・アプローチのような、友軍にとって無形の要素が引き続き重要であることを強調している。

己を知る:戦闘力の生成と適用:See Yourself: Generating and Applying Combat Power

用兵機能(warfighting functions)と用兵の力学(warfighting dynamics)は、リーダーが自分の部隊を見渡し、敵に対してどのように能力を用いれば最も効果的かを理解する上で、重要な役割を果たす。FM 3-0は、6つの用兵機能(warfighting functions)を特定している:

・ 指揮・統制

・ 移動と機動

・ インテリジェンス

・ 火力

・ 後方支援

・ 防護[8]

FM 3-0は、戦闘力モデルを修正する。それは、戦闘力の定義を統合の定義に合わせ、敵に対してどのような致死性、破壊的手段を適用できるかを強調するものである。また、戦闘力の構成要素を「要素(elements)」から「力学(dynamics)」に変更し、戦闘力は相互に作用し、環境の変化を受ける変数で構成されているという考えを強化している。

FM 3-0 は、戦闘力の力学(dynamics of combat power)を用兵機能(warfighting functions)から意図的に区別している。同書は、戦闘力を「軍事部隊/編成がある時点で敵に対して適用できる破壊的・破壊的な力の総手段(JP 3-0)」と定義し、戦闘力の力学(dynamics of combat power)を次のように特定する:

・ リーダーシップ

・ 火力

・ 情報

・ 移動性

・ 残存性[9]

敵を知る:脅威と敵の手法:See the Enemy: Threats and Their Methods

米陸軍部隊(Army forces)は、脅威に志向した作戦を展開する。脅威は常に考え、適応しているため、脅威を理解することは作戦中の継続的な要件である。FM 3-0 は、「米陸軍部隊(Army forces)が直面する脅威は、その本質上、ハイブリッドである」と述べている。脅威には、個人、個人のグループ、準軍事組織または軍事組織、犯罪組織、国家、または国家連合が含まれる」[10]

2018年9月13日、ロシアの中国やモンゴルとの国境に近いシベリアのツゴル訓練場で行われた「ボストーク2018」軍事訓練で、中国軍がパレードを行った。(写真:ムラデン・アントノフ、Agence France-Presse)

中国とロシアは、競争・危機・紛争の間に目標を達成するために、大きく5つの手法を組み合わせている:

情報戦(Information warfareとは、目標を達成するための、サイバースペース作戦、電子戦、心理作戦(psychological operations)、偽情報戦役(disinformation campaigns)、その他の欺瞞作戦(deception operations)などの情報活動の使用(use of information activities)である。

システム戦(Systems warfareとは、目標を達成するための、一体化した防空システム(Integrated Air Defense Systems)や一体化した複合火力(Integrated Fire Complexes)のような、ネットワーク化された相互支援システムの使用である。脅威は自国のシステムを防護しながら、相手のシステムを崩壊させる。

阻止(Preclusionとは、戦略的に重要な地域への統合部隊(joint force)のアクセスを拒否するためのスタンドオフ・アプローチの使用(use of standoff approaches)である。

孤立(Isolationとは、連合パートナー、統合部隊(joint force)の構成部隊、または前方に配置された部隊を外部の支援から切り離すために、国力の道具の使用(use of national instruments of power)である。

聖域(Sanctuaryとは、友軍部隊の手の届かないところに脅威となる部隊を配置することである[11]

中国とロシアは、作戦・戦術レベルでは異なる方法で脅威の手法を適用している。リーダーは敵の戦術をよりよく理解し、敵の行動を予測し、味方の行動方針(courses of action)を評価するために脅威の手法を用いる。

競争、危機、武力紛争の間の作戦:Operations During Competition, Crisis, and Armed Conflict

マルチドメイン作戦は、米陸軍部隊(Army forces)が統合作戦に貢献するもので、通常、同盟国やパートナーを巻き込む。統合部隊(joint force)と多国籍パートナーが提供する優位性を活用することは、あらゆる状況において重要な検討事項である。

戦略的文脈-競争、危機、武力紛争-は、指揮官が統合戦役(joint campaign)の文脈における自らの役割を理解し、任務に備えるのに役立つ。

競争の間は、米陸軍部隊(Army forces)は敵対者(adversary)の活動に対抗し、同盟国やパートナーとの訓練や相互運用性を通じて、用兵の信頼性(warfighting credibility)を示す。この活動は、紛争に備えるための余分な時間がないことを認識し、戦闘作戦を成功させるための条件を整えるものである。米陸軍部隊(Army forces)、継続的に紛争に備えることで紛争を抑止する。

危機の間は、米陸軍部隊(Army forces)は、さらなる侵略を抑止し、国益を守るために、統合部隊指揮官(joint force commanders)に選択肢を提供する。

武力紛争の間、米陸軍部隊(Army forces)は敵部隊(enemy forces)を撃破し、緊要地形(key terrain)と人口を統制する。戦略的文脈にかかわらず、米陸軍部隊(Army forces)は、統合部隊(joint force)が持続可能な政治的成果を達成できるよう、統合部隊(joint force)を支援するために継続的に獲得した成果を集約・強化する[12]

作戦の根本的事項:信条と義務:Fundamentals of Multidomain Operations: Tenets and Imperatives

信条(tenets)と義務(imperatives)は、効果的な作戦を特徴づけるものであり、作戦プロセスを通じてリーダーの指針となるものである。

信条Tenets).機敏性(agility)、収束(convergence)、耐久性(endurance)、縦深(depth)という4つの信条は、作戦の望ましい品質を特徴づけるものである。これらはすべて、複数のドメインから利用可能なすべての戦闘力を投入して優位性を生み出し、それを活用するという諸兵種連合運用(combined arms employment)の中核となる考え方につながる。

機敏性(Agilityには、多くの考慮事項が含まれる。機敏な指揮(agile commands)は、作戦段階(phases)、作戦の文脈(contexts)、タスク組織の間を迅速に移行する。機敏なリーダー( agile leaders)は、一瞬の機会の窓(fleeting windows of opportunity)を逃さないようデザインされた作戦アプローチを考案する。俊敏な部隊(agile forces)は、敵のターゲッティングを妨げるために迅速に分散し、必要なときに迅速に集中し、条件の変化に応じて敵よりも迅速に適応する。

収束(Convergenceは、旅団より上位の部隊階層が、利用可能なすべての米陸軍能力および統合能力を用いて、相対的な戦闘力を最大化し、有能な敵部隊(enemy forces)を撃破する機会を創出するようにする。収束(convergence)は、機動と近接作戦の機会を創出するが、その機会を迅速に利用するために、機敏な米陸軍部隊(Army forces)を必要とする。

耐久性(Enduranceとは、敵の攻撃を吸収し、任務達成に必要な時間と空間の中で闘いを押し進める能力のことである。これは、防護、後方支援、テンポの管理の機能である。

縦深(Depthは、敵の編成と作戦環境全体に戦闘力を適用し、連続する作戦目標を確実にし、統合部隊(joint force)の獲得した成果を集約・強化する。縦深における作戦は、敵の好むアプローチを破壊し、敵システムの相互依存的な要素を崩壊させ、敵部隊(enemy forces)を詳細に撃破するために脆弱な状態にする[13]

義務(Imperatives).9つの義務(imperatives)は、現代の戦場で許容できるコストで勝利するために、部隊が何をしなければならないかを説明している。これらは戦争の原則(principles of war)から導き出されたものであるが、現在の課題に合わせたものである。21世紀の大規模戦闘作戦(large-scale combat operations)で勝利するために必要な文化的変化を推進しなければならないため、リーダーの育成と部隊編成の訓練方法に大きく影響するはずだ。9つの義務(imperatives)は以下の通り。

・ 自分自身を見、敵を見、作戦環境を理解する。

・ 常に監視され、あらゆる形で敵と接触することを考慮する。

・ 物理的、情報的、人的な相対的優位性を作り出し、それを利用して決心の優越性(decision dominance)を追求する。

・ 可能な限り最小の部隊で初期接触を行う。

・ 敵に複数のジレンマを与える。

・ 移行を予測し、計画し、実行する。

・ 主たる取組み(main effort)を定め、重点を置き、維持する。

・ 継続的に獲得した成果を集約・強化する。

・ 作戦が部隊や兵士に及ぼす影響を理解し、管理する[14]

第二の義務(imperatives)は、常に敵の監視とあらゆる形態の接触に注意することで、我が米陸軍のあらゆる階級と軍事の職業的専門性に影響するものである。これは、敵の火力に有利なターゲットを提示しないことの重要性に対処するものである。FM 3-0が簡潔に述べているように、「検出できるものは攻撃のターゲットとなり、殺すことができる」[15]

部隊は、分散(dispersion)、掩蔽(cover)、隠蔽(concealment)、偽装(camouflage)、電磁波シグネチャーの遮蔽(masking)、作戦保全(operations security)、および欺瞞(deception)を確実にするために、能力と技法を組み合わせて使用する必要がある。敵の継続的な観測(observation)を考慮することは、防護を作戦化することになるが、これは最終的に、ますます透明化する作戦環境の現実にリーダーが絶えず注意を払うことを必要とする結果である[16]

敵部隊を撃破する:Defeating Enemy forces

詳細に撃破するとは、全部隊(entire force)を一度に撃破するのではなく、部隊の一部に対して圧倒的な戦闘力を集中させることである[17]

複雑な能力と編成で作戦する互角の適応力のある敵を、一度の決定的な取組みで撃破することは、非常に困難である。したがって、FM 3-0は、敵部隊(enemy forces)を詳細に撃破するためのアプローチを提供する。敵部隊(enemy forces)を詳細に撃破することにより、指揮官は潜在的に優勢な敵部隊(enemy force)の一部とそれを可能にするシステム(一体化した火力コマンドや一体化した防空システムなど)に対して、優越した戦闘力を発揮することができる。

指揮官は、そのために撃破メカニズムの組み合わせを適用する。FM 3-0が記述しているように、「マルチドメイン作戦は、脅威の相互依存的なシステムや編成を繰り返し破壊、混乱、孤立、崩壊させ、その機会を利用して敵部隊(enemy forces)を詳細に撃破することにより、脅威の作戦アプローチの一貫性を破壊する」[18]

作戦的フレームワーク:Operational Framework

戦場は混沌とした環境である。敵部隊と友軍部隊が入り乱れ、友軍の部隊は長い距離を隔てたり、異なる指揮下で行動することが多い。指揮官は作戦的フレームワークを利用して、支配する部隊に秩序と集中力を与え、暴力の行使を管理する。

FM 3-0 では、作戦的フレームワークについて、「指揮官や参謀が作戦コンセプトの時間、空間、目的、資源における戦闘力の適用を明確に視覚化し、記述するのを支援するために用いられる認知ツール(cognitive tool)(ADP 1-01)」[19]と説明している。作戦的フレームワークの構築によく使われるのは、担当地域(assigned areas);縦深作戦(deep operation)、近接作戦(close operation後方作戦(rear operations);主たる取組み(main effort支援の取組み(supporting effort予備(reserveの3モデルである[20]

リーダーは、作戦的フレームワークに対して、過度に硬直的なアプローチをとるべきではない。リーダーは、適用できる場合にのみモデルを使用し、状況特有の要件に合わせて自由にモデルを適応させるべきである。もし、全く別のモデルの方がニーズに合っているのであれば、各部隊階層が同じアプローチを理解し、それに従うように、上位と下位を調整する必要がある。モデルを適応させる場合、リーダーは、自分のフレームワークが上位の部隊階層のフレームワークの入れ子になっていることを確認しなければならない。

指揮官は、区域を割り当てる際に、下位の部隊間の相互支援(mutual support)を考慮する。相互支援(mutual support)には、兵器や能力間の支援範囲を含めることができる。また、部隊間の支援距離の考慮も含まれる。複数の軸に沿って行動する軍団や師団は、非連続の従属編成(noncontiguous subordinate formations)を持つ。

上位部隊階層が非連続の割当区域を割り当てた場合、その部隊階層は、責任を割り当てなかった区域に関連するリスクに対する責任を維持する。担当区域は、作戦の種類と上位部隊が要求する統制のレベルに応じて、作戦区域、ゾーン、またはセクタ ーとなる。担当区域は、敵のターゲッティングの影響を軽減するために部隊を分散させる部下の機動とその能力を支援するのに十分な広さでなければならない。

しかし、部隊階層は、従属編成に不確実または過剰なレベルのリスクを課すことになるような、従属編成の影響力のある地域を越えて広がりすぎてはならない。部隊階層が地域を保持する場合、その地域に関連するリスクも保持する。非連続的な作戦中、リーダーは、特に 指揮・統制(C2)と後方支援ノードに関して、保持した地域のリスクを継続的に評価する必要がある。

指揮官は、与えられた地域内で、縦深作戦(deep operation)、近接作戦(close operation)、支援作戦(support operation)、後方作戦(rear operations)を同期させることにより、時間、空間、目的の観点から作戦を組織化する。また、師団以上の部隊は、大規模戦闘間の作戦の規模が大きいため、縦深地域(deep area)、近接地域(close area)、支援地域(support area)、後方地域(rear area)に従って編隊を編成することもある。

このバージョンのFM 3-0では、「作戦(operations)」に焦点を当てることで、目的から見た部隊の役割を明確にしている-地域は部隊の位置を定義し、作戦は部隊の目的を定義する。

争われた地上の地域の占領と防衛には近接作戦(close operations)が必要であり、通常、近接戦闘(close combat)または近接戦闘の脅威(threat of close combat)を伴う。近接戦闘(close combat)は、通常兵力にとって最もリスクの高い活動である。縦深作戦(deep operation)および後方作戦(rear operations)は、一般に、近接作戦(close operation)での成功を可能にし、近接戦闘(close combat)での機動に有利な条件を確立するために行われる。

縦深作戦(Deep operationsは、敵部隊(enemy forces)に対する戦術的行動であり、通常、友軍と直接接触しない場所で、将来の近接作戦(close operations)を形成し、後方作戦(rear operations)を防護することを意図する。近接作戦(Close operationsは、下位の機動部隊とそれを支援する部隊の戦術的行動であり、その目的は、敵部隊(enemy forces)に接近し破壊するために機動と火力(maneuver and fires)を用いることである。後方作戦(Rear operationsは、主要な下位機動部隊の後方で、移動を容易にし、作戦範囲を拡大し、所望のテンポを維持する戦術的行動である」[21]

米陸軍部隊(Army forces)は、争われた通信環境で闘うことになるため、指揮・統制に対するミッション・コマンド・アプローチは、これまで以上に不可欠である。指揮官が規律ある主導性とリスクを引き受ける能力を可能にする方法の1つは、時間、空間、および目的における各部隊階層の役割を説明することである。FM 3-0では、以下のような一般的な考慮事項を提供している。

大規模戦闘作戦(large-scale combat operations)の間、旅団戦闘チーム(BCT)と師団は、一般に敵の機動編成の撃破に重点を置く。軍団とそれ以上の組織は、一般に、統合部隊指揮官(joint force commander:JFC)の計画と優先順位に従って、敵の一体化した防空システムおよび敵の一体化した火力コマンドの一部の撃破に焦点を当てる[22]

軍団は師団と闘い、師団は旅団と闘い、旅団は大隊と闘う。各上位の部隊階層は、下位の編隊が与えられた目標を達成するための条件を整え、そのための資源、指針、および状況認識を提供することを目指す。軍団と師団は編隊として闘うため、縦深作戦、近接作戦、支援作戦、後方作戦に対する一体化したアプローチが必要であり、どの部隊階層も戦場の一部分に近視眼的に焦点を当てる余裕はない。

獲得した成果を集約・強化すること:Consolidating gains

2017年のFM 3-0では、獲得した成果を集約・強化するという考え方が導入され、2019年の米陸軍ドクトリン公刊物(ADP)3-0「作戦(Operations」では、その必要性が引き続き明確にされた。2022年版のFM 3-0では、競争、危機、武力紛争の間の作戦における必須事項であり重要な考慮事項として、獲得した成果を集約・強化の重要性を確認している。

獲得した成果を集約・強化することは、米陸軍部隊(Army forces)が行う作戦の最終的な目的を達成することである。それは段階的なものではなく、戦略的な成果を得るための戦術的な目標の利用である。獲得した成果を集約・強化するには、リーダーが最終状態を念頭に置いて作戦を遂行し、その全体的な最終状態を可能な限り迅速に達成するために必要な行動を取ることが必要である。

獲得した成果を集約・強化するには、作戦の目的を明確に説明し、それを達成する方法について理解を共有することから始まる。そして、部隊が目標を達成し、敵部隊(enemy forces)を撃破すると、その成果をより永続的なものにするために行動を起こす。

獲得した成果を集約・強化することは、最初は小部隊が目標を集約することから始まるかもしれない。また、師団が旅団に迂回した敵軍を撃破する任務を与え、安定化作戦のための条件を整えることもできる。同盟国やパートナーに都市部での重要な安定したタスクを依頼することも、獲得した成果を集約・強化するための効果的な手段となり得る。

上位の部隊階層は、獲得した成果を集約・強化するために、規模を拡大し、テンポを速めるための資源を要求する。ホスト国部隊、統合火力、安全保障部隊支援能力、特殊作戦部隊、民事、広報、工兵、宇宙・サイバースペース能力へのアクセスは、下位部隊の成功を結集し拡大する機会を提供する。

主要な戦役や作戦では、獲得した成果を集約・強化することが、地域や集団に対する責任を他の合法的な当局に移行させ、最終的には持続可能な政策成果を得るための原動力となる。紛争後の競争では、米陸軍部隊(Army forces)は統合部隊(joint force)のために獲得した成果を集約・強化を続け、望ましい条件の安定を拡大または維持する。

海洋環境:Maritime Environments

太平洋ピボット(Pacific Pivot)から10年が経過した今、米陸軍のドクトリンがインド太平洋戦域のような海洋環境での作戦に関する固有の考慮事項を説明し始めることは極めて重要である[23]。第7章では、こうした考慮事項の多くを取り上げ、同様に、海洋環境の影響を大きく受ける北極圏での活動の側面についても説明している。

海洋環境での作戦には、統合の能力と米陸軍の能力を相互に支援する形で活用することが必要である。後方支援、通信、防護、移動性は、海洋環境における地上部隊にとって困難であり、統合部隊(joint force)とのより高いレベルの一体化を必要とする。地上部隊は、しばしば航空構成部隊や海上構成部隊を支援することがあるが、これはここ数十年の米陸軍部隊(Army forces)が慣れ親しんできたものとは異なるものである。

海上作戦は、基地、港湾、海上交通の要衝を確保するために地上部隊に依存している。地上部隊は、地対地および地対空射撃によって航空作戦および海上作戦を可能にし、同時に統合部隊(joint force)が重要な地形やインフラを保持または奪取することを可能にする[24]

争われた中での展開:Contested Deployments

米陸軍部隊(Army forces)は、本国から海外の集結地域まで、脅威による挑戦を受けることを予期しなければならない。第二次世界大戦以降、「米軍は、本属の駐屯地(home stations)から作戦戦域まで、争うことなく、概ね予測可能な展開を行った。敵は、本国や作戦地域までの移動中に、展開部隊に大きな影響を与える能力がなかったからである。これは、もはや事実ではない」[25]

FM 3-0の付録Cには、米国内や海外の本属の駐屯地(home stations)にいるときを含め、戦力投射のどの段階でも米軍を観察、混乱、遅延、攻撃することができる対等な脅威に対処するための計画が書かれている。「したがって、指揮官と参謀は、友軍が常に監視され、接触しているという前提で、展開を計画し、実行しなければならない」-これはマルチドメイン作戦の必須事項である[26]

将来へのマルチドメイン作戦:Multidomain Operations into the Future

FM 3-0は陸軍全体の変革のきっかけとなるものである。マルチドメイン作戦ドクトリンは、他の米陸軍ドクトリンの更新を促し、将来の戦力デザインに影響を与えるだろう。専門的な軍事教育は、その信条(tenets)、義務(imperatives)、および作戦環境に対するアプローチを考慮しなければならない。

マルチドメイン作戦は、部隊の本属の駐屯地(home stations)や戦闘訓練センターでの集団訓練に変化をもたらすだろう。同盟国やパートナーとの相互運用性は、これまで以上に重要であり、技術的、人的、手続き的な要件に対処する必要がある。我々の焦点は、同盟国やパートナーを持つことだけでなく、良き同盟国やパートナーとなることであるべきだ。

エアランド・バトル(AirLand Battle)のドクトリンが統合部隊(joint force)による空と地の一体化をより深いレベルに押し上げたように、マルチドメイン作戦は、地上での作戦を支援するために海上、宇宙、サイバースペースの能力を一体化する戦術、技法、手順(tactics, techniques, and procedures)の開発を継続的に推進することになるだろう。マルチドメイン・タスク部隊(multidomain task force)や戦域火力コマンドのような組織は、最初のステップである。

部隊は、新しい能力を既存の米陸軍および統合の構造およびプロセスと一体化する方法についての解決策を開発し、実験する必要がある。この実験の結果、陸米軍および統合のプロセスが新しくなったり、既存の組織が調整されたりする可能性がある。しかし、米陸軍および統合部隊(joint force)としてどのような変更を行うにしても、我々がどのように闘うかについての共有された理解(shared understanding)によって知らされなければならない。その共有された理解(shared understanding)は、我々のドクトリンから始まる。

このマルチドメイン作戦の版は、「ドクトリンの最終目的(end of doctrine)」ではない。米陸軍部隊(Army forces)が2030年の陸軍に到達するために、FM 3-0の考えを学び、訓練し、改良していく中で、進化を続けていくことになる。マルチドメイン作戦の将来の版は、部隊の経験に基づいて、主要な考えを更新し、新しい能力を考慮し続けることになる。

パットン(Patton)は「火星からの音楽隊」の演説で、オーケストラと各楽器の役割に喩えて、自分が望む闘い方のための諸兵科連合アプローチ(combined arms approach)を説明した。その2千年前、孫子(Sun Tzu)は音楽、色彩、味覚に関する公理で、組み合わせの優位性を明らかにしている。

音は5つしかないのに、この5つの組み合わせによって、聴くことのできないほどのメロディが生まれる。

色彩は5色もないのに、組み合わせると、見たこともないような色相になる。

味覚は5種類以上あるわけではないが、それらを組み合わせることで、味わい尽くせないほどの風味が生まれる[27]

我々は、軍事思想の象徴であるこれらの人々の観察が、戦争に勝つための魔法の弾丸を提供するものでないことを知っている。しかし、長い間、これらの見解は、敵部隊(enemy forces)を驚かせ、圧倒するような方法で戦争中に組み合わせを用いるという考え方が、単なる一過性の流行ではないことを示唆している。実際、それは軍事組織を成功させるための基盤の一部なのである。

敵部隊(enemy forces)を奇襲し、圧倒するような方法で、利用可能なすべての能力を取り入れることができる技巧(craft)の達人であるリーダーは、ドクトリンのささやかな更新を、米陸軍部隊(Army forces)が統合部隊(joint force)に提供する圧倒的な優位性に変えることができる。

ノート

[1] Huba Wass de Czege, “Lessons from the Past: Making the Army’s Doctrine ‘Right Enough’ Today,” Institute of Land Warfare Publication No. 06-2 (Arlington, VA: Association of the United States Army, September 2006), 15, accessed 1 December 2022, https://www.ausa.org/sites/default/files/LPE-06-2-Lessons-from-the-Past-Making-the-Armys-Doctrine-Right-Enough-Today.pdf. This essay provides a guide for how to develop a successful operations doctrine. In it, Wass de Czege noted the importance of minimizing change in doctrine so that it is easier for the force to assimilate it. He wrote that “many key ideas of AirLand Battle merely require recultivation.”

[2] Field Manual 3-0, Operations (Washington, DC: U.S. Government Publishing Office [GPO], 2022), 1-2.

[3] Ibid., 1-3.

[4] Army Techniques Publication 7-100.3, Chinese Tactics (Washington, DC: U.S. GPO, 2021), 1-10.

[5] FM 3-0, Operations, 1-3–1-4.

[6] Ibid., 1-18.

[7] Ibid., 1-21.

[8] Ibid., 2-1.

[9] Ibid., 2-3.

[10] Ibid., 2-6.

[11] Ibid., 2-7–2-12.

[12] Ibid., 1-14–1-16.

[13] Ibid., 3-2–3-7.

[14] Ibid., 3-8.

[15] Ibid., 3-10.

[16] Ibid., 3-10–3-13.

[17] Army Doctrine Publication 3-0, Operations (Washington, DC: U.S. GPO, 2010), 3-19.

[18] FM 3-0, Operations, 1-3.

[19] Ibid., 3-23.

[20] Ibid.

[21] Ibid., 3-27–3-31.

[22] Ibid., 6-10.

[23] For more on the Pacific Pivot, see Christopher H. Robertson, The Obama Administration’s Pacific Pivot Strategy: An Assessment (Fort Leavenworth, KS: U.S. Army School for Advanced Military Studies, 25 May 2017), accessed 1 December 2022, https://apps.dtic.mil/sti/pdfs/AD1039909.pdf.

[24] FM 3-0, Operations, 7-1.

[25] Ibid., C-1.

[26] Ibid.

[27] Sun Tzu, quoted in Thomas R. Phillips, ed., Roots of Strategy (Harrisburg, PA: Stackpole Books, 1985), 28.