米陸軍モデリング・アンド・シミュレーション (Army Science Board)

米陸軍の新たな作戦コンセプトであるマルチドメイン作戦について、米陸軍内の様々な部署でその実効性を高めるための取組みがなされていることはすでに紹介したとおりである。

ここで紹介するのは、マルチドメイン作戦についてモデリング・アンド・シミュレーション(M&S)の視点から見た時に、必要なことは何なのかを調査研究した米陸軍科学委員会の報告書の冒頭部分(EXECUTIVE SUMMARY)である。マルチドメイン作戦が求められたのは正に既存のドメインでのキネティックな戦いから、サイバースペースや宇宙のドメイン、そして電磁スペクトラムを含めたノン・キネティックな戦いを含む中での勝利が望まれるからである。米陸軍が使用しているM&Sの機能は、消耗戦を主体とするキネティックな戦いをモデル化したものであり、人間の認知(cognition)や行動(behavior)を含むノン・キネティックな戦いにも対応できるM&Sの機能が必要とされるとの調査結果をまとめている。人の募集や育成にも言及した報告書である。(軍治)

米陸軍モデリング・アンド・シミュレーション(M&S)

最終報告書 2021年2月

米陸軍科学委員会

2020年米会計年度

Army Modeling and Simulation (M&S)

Final Report February 2021

Army Science Board

Fiscal Year 2020 Study

エグゼクティブ・サマリー:EXECUTIVE SUMMARY

本報告書は、米陸軍長官(SECARMY)が主催した「米陸軍のモデリングとシミュレーション(M&S)」に関する米陸軍科学委員会(ASB)の調査結果をまとめたものである。この研究の目標は、「戦略的意思決定、取得、訓練、および試験・評価(T&E)を支援する米陸軍のM&S能力を評価すること」であり、委託事項(Terms of Reference:TOR)と一致している。

具体的には、米陸軍のM&S能力のニーズ、これらのニーズを満たすための現在の米陸軍M&S能力のギャップ、ギャップを埋めるために活用できる米陸軍外部の最先端(SoTA)能力、M&Sニーズを満たすための米陸軍の組織と人材(才能)管理の方法などを決定することが研究チームのタスクであった。

研究の背景と動機:Study Background and Motivation

米陸軍長官(SECARMY)がこの研究を依頼したのは、将来の作戦環境(OE)と、その環境下で競争し勝利するための米陸軍の作戦コンセプトであるマルチドメイン作戦(MDO)が、過去20年間の紛争を定義するものとは大きく異なるためである。

これまでの紛争では、統合部隊は非同盟の敵対者に対して、すべてのドメイン(陸・空・海・宇宙・サイバー/電子戦(EW))で優位に立つことができた。対等な競争者との将来の紛争では、統合部隊は紛争のすべての局面において、より複雑で致命的な作戦環境(OE)において、すべてのドメインで争うことになる。

米陸軍は、より致死性のキネティック・システムと、宇宙、サイバー、電子戦(EW)、自律性(autonomy)、人工知能(AI)、情報戦など、ますます効果的なさまざまなノン・キネティック能力に直面することになる。これらのノン・キネティックな手段の多くは、紛争の競争の段階で、敵対者がすでに大きな効果を上げて採用している。

さらに、世界的な都市化の傾向から、米陸軍が密集した都市部の複雑な地形で交戦する可能性が高まっており、非戦闘員の集団行動に影響を与えることが求められている。

このような複雑性の増大により、強固なM&S能力が必要となる。米陸軍の上級指導者は、過去 20 年間、重要な戦略および作戦の決定を行うために経験と直感に頼ってきたが、生来の人間的要素の根拠となるパラダイムが大きく変化すると、その有効性は失われる。あるシステム・アナリストの言葉を借りれば、「複雑なシステムは直感的な解決策を拒む(complex systems defy intuitive solutions)」のである。

この将来の複雑な作戦環境(OE)に対応するため、米陸軍はマルチドメイン作戦(MDO)を作戦コンセプトとして公布し、異種統合システム間の前例のないレベルのシステム・オブ・システムズ(System-of-Systems :SoS)相互依存を要求している。マルチドメイン作戦(MDO)コンセプトの潜在的価値を十分に引き出すためには、直感的でない革新的な作戦コンセプト(concepts of operations :CONOPS)と戦術・技法・手順(tactics, techniques, and procedures :TTP)が必要となる。

仮説に基づく実験を補完するものとして、M&Sはマルチドメイン作戦(MDO)のシステム・オブ・システムズ(SoS)アーキテクチャを定義し、革新的な作戦コンセプト(CONOPS)と戦術・技法・手順(TTP)を開発するために不可欠である。シミュレーションに基づく分析と実験がなければ、マルチドメイン作戦(MDO)のシステム・オブ・システムズ(SoS)アーキテクチャは断片的な方法で進化し、作戦コンセプトの全能力を発揮することはできない。

米陸軍は、31のシステムをほぼ同時に開発する野心的な近代化計画を持っている。最高の財政環境であっても、このような野心的な計画のための資源を維持することは困難である。

さらに、当面の国防予算は圧迫され、米国防総省(DoD)の将来防衛事業計画(FYDP)の中で競合する要求をめぐる争いを悪化させることになる。米陸軍は、あらゆる種類のM&Sツールを活用した信頼できる戦闘効果分析を提示する効果的なアドボカシー・キャンペーン(advocacy campaign)を含め、近代化プログラムについて確固たる主張を行う必要がある。

※ 支持を得るためのキャンペーン

米陸軍は20~30年前に現在のM&S評価ツールを開発したが、それらは冷戦時代の視点を反映している。米陸軍が将来の戦争の現実をモデル化するためにM&S能力を活性化しない場合、以下のような結果を招くだろう。 (1) 準備不足で、マルチドメイン作戦(MDO)を適切に定義できず、統合全ドメイン作戦(JADO)における明確でない役割に追いやられる。 (2) 適切なM&Sによる開発が不十分なため、近代化システムが潜在的に失敗する。

これらの結果を実現する可能性があるため、米陸軍のM&S能力を活性化させるための行動が必要であり、この研究の動機となった。

米陸軍のM&Sの組織・リーダシップ・ガバナンス:Army M&S Organization, Leadership, and Governance

米陸軍では6つのコミュニティがM&Sを使用しており、その用途は以下のように様々である。

分析(Analysis- 代替案分析(AOA)、能力に基づく評価(CBA)、近代化プログラムの優先順位付け、部隊デザイン、コンセプト開発、作戦コンセプト(CONOPS)/戦術・技法・手順(TTP)評価など、さまざまな戦略および取得前の決定を支援する。

取得(Acquisition- 事業化プログラム(programs of record)の要件定義、システム・エンジニアリングと一体化、デザイン開発、検証と妥当性確認(V&V)を支援する。

実験と試験・評価(T&E)(Experimentation and Test & Evaluation (T&E))- 実験・試験デザイン、期待される結果の予測、結果の検証と妥当性確認(V&V)、限られた試験条件からより広範な条件への外挿のためにM&Sを使用する。

訓練(Training- ライブ・バーチャル・コンストラクティブ(LVC)シミュレーションを使用して、部隊にシステムの使用方法を訓練し、ミッション・コマンド(mission command)の熟練度を高める。

インテリジェンス(Intelligence-M&Sにレッド・フォース・アセスメント(Red force assessments)を提供する。

米陸軍参謀本部参謀次長室(DCS)、G-8(事業担当)の下にある米陸軍モデリング・シミュレーション室(AMSO)と将官運営委員会(GOSC)は、これらのコミュニティ間の一体化を調整する。これらは厳密には調整機関である。

コミュニティ間のデータやモデルの水平統合(horizontal integration)を指示する権限も、米陸軍のM&S能力のニーズを満たすための首尾一貫したトップダウンのビジョンと製品改善計画を定義し、資金を提供する権限もない。コミュニティ間の一体化は、各コミュニティ内の有志の連合によって達成されるが、これは厳密に人間関係に基づくものであり、したがって刹那的である。その結果、コミュニティは基本的に組織のサイロとして運営され、連携してデータやツールを共有するインセンティブや強制機能はほとんどない。

さらに、20年以上前に米陸軍副次官室(オペレーションズ・リサーチ)が解散して以来、米陸軍には、米陸軍のM&Sニーズを確実に満たし、M&S製品または分析結果の品質を検証する責任、権限、および説明責任を持つ、単一の専任の上級(上級管理職(Senior Executive Service :SES)または将官(General Officer:GO)レベル)指導者ポジションがない。一方、米空軍と米海軍は、最近になって上級管理職(SES)レベルの指導的地位を確立した。

米陸軍には、オペレーションズ・リサーチ/システム分析(ORSA)アナリスト(FA49)、シミュレーション運用担当官(SOO)(FA57)、および民間人のカウンターパート(1515など)を含む、熟練した熱心なM&S実務家の将校がいる。しかし、ここ数年、これらの実務者の数は徐々に減少しており、FA49のアナリストは55%の減少を経験している。FA57の人員は、全認可人員315名のうち、わずか250名しか配置されていない。

※ FAとはfunctional areaの略で、機能別の特技分野のこと、FA49はオペレーションズ・リサーチなどの分析分野、FA57はシミュレーションの運用担当者の分野

同様に、229人の空席があるにもかかわらず、公認の民間人(1515人)アナリストの数は増えていない。問題の一部は、産業界や他のユーザーとの資源の競争と、軍人が中隊の指揮経験(company command)の後にFA49/57のポジションに就く動機付けとなるキャリアパスがないことにある。その結果、上級指導者はM&Sに触れる機会が少なく、情報に基づいた意思決定を行う上でのM&Sと分析の価値に対する理解が不足している。

M&Sの専門知識を持つ人材(才能)を民間企業や他の政府機関と効果的に競争させるためには、例えば、M&S関連分野の学部生を積極的に採用している米空軍のように、米陸軍も積極的に人材を確保する必要がある。人材(才能)を獲得したら、米陸軍はスキルを高めるための強固な訓練と開発プログラムを確立しなければならない。例えば、FA57では8週間のシミュレーション・オペレーション・コースしか必要ない。FA57の将校には、M&S関連分野の上級学位取得の要件はない。

米陸軍のM&Sの技法能力のニーズ:Army M&S Technical capability Needs

米陸軍は、マルチドメイン作戦(MDO)作戦環境(OE)における自軍の戦闘効果を信頼できる形でモデル化できるようにしなければならない。そのためには、以下のような、現在の米陸軍や統合部隊のモデルやシミュレーションではうまく表現できないM&S能力が必要である。

- システム・オブ・システムズ(SoS)の相互作用(SoS Interactions - マルチドメイン作戦(MDO)の実施には、米陸軍システムおよび異種統合システム間のインターフェイス、相互作用、および相互依存の前例のないレベルが必要になる。これらの相互作用のモデリングは、将来のマルチドメイン作戦(MDO)シナリオにおける米陸軍の戦闘効果(combat effectiveness:CE)を評価する上で不可欠となる。米陸軍のM&Sは、敵対者の行動や反撃によりシステム間の接続性が低下した場合の有効性測定(MOE)への影響も考慮する必要がある。システム・オブ・システムズ(SoS)アーキテクチャの定義は、有効性測定(MOE)と任務目標(mission objectives)を達成するために、戦場における統合エンティティ間の情報交換要件を規定するものである。米陸軍/統合M&Sは、複数のシナリオと能力(現在と将来、友軍と敵対者)において最良のレベルの有効性を提供するベースライン・アーキテクチャを選択するために、代替システム・オブ・システムズ(SoS)アーキテクチャを評価する能力がなければならない。ベースライン・システム・オブ・システムズ(SoS)アーキテクチャは、米陸軍近代化プログラムのインターフェース仕様と情報交換要件を開発するために必要である。

このような評価を行うためには、統合システムを適切なレベルの忠実度とセキュリティ分類でモデル化する必要があり、そのためには、米陸軍、米空軍、米海軍、米海兵隊のモデルを使用可能なセキュリティレベルで統合できる分散シミュレーションのフレームワーク/環境が必要である。

ノン・キネティックな効果(Non-Kinetic Effects - ノン・キネティックな現象やシステムは、宇宙、通信、ミッション・コマンド(Mission command)、サイバー、電子戦(EW)、自律性/人工知能(AI)、人間と機械の相互作用、情報作戦(IO)など、紛争においてますます重要となっている。このようなノン・キネティックシステムや現象の多くには、エンジニアリングレベルの高忠実度モデルが存在するが、それらをコンストラクティブの戦闘効果(CE)モデルに直接組み込むことは技術的に困難であることが分かっている。例えば、宇宙、サイバー、電子戦(EW)のM&Sや分析は分類されており、それらをより高いレベルの戦闘効果(CE)モデルに組み込むには、シミュレーション全体を最高レベルの分類で実行する必要がある。あるいは、モデルを単独で実行し、その効果を表すアルゴリズムやパラメトリック関係をより低いセキュリティレベルで開発し、部隊対抗(Force-on-force :FoF)戦闘効果(CE)モデルに入力できるようにする必要がある。複数の独立した変数の関数としてのノン・キネティックの現象のパラメトリック・モデリングは、困難で時間のかかるプロセスであり、エンジニアリング・モデルに組み込まれた人工知能(AI)によって支援される必要がある。

人間の認知と行動(Human Cognition and Behavior - マルチドメイン作戦(MDO)の重要な信条であるコンバージェンス(convergence)は、すべてのドメイン、電磁(EM)スペクトラム、および情報環境における能力を迅速かつ継続的に一体化することを含む。その狙いは、クロスドメインのシナジーと複数の攻撃形態によって効果を最適化することである。将来のマルチドメイン作戦(MDO)コンバージェンス(convergence)では、ドメインや各軍種を超えて、すべての部隊階層で絶妙に同期した指揮・統制(C2)が必要となる。米陸軍と米国防総省(DoD)は、人間の認知と行動が指揮の決定の速度と質に与える影響など、統合全ドメイン指揮・統制(JADC2)のモデリングを改善する必要がある。人工知能(AI)による意思決定支援の有無にかかわらず、人間の次元の発見的モデルを開発するために、米陸軍は、バーチャル・ヒューマン・イン・ザ・ループ(virtual human-in-the-loop)内および人工知能(AI)ソフトウェア・イン・ザ・ループ(software-in-the-loop)内のモードで動作するライブ・バーチャル・コンストラクティブ(LVC)シミュレーション能力を必要とする。

シミュレーションが可能にする実験(Simulation Enabled Experimentation - 米陸軍は、(a)マルチドメイン作戦(MDO)をコンセプトからドクトリンに進展させ、(b)マルチドメイン作戦(MDO)システム・オブ・システムズ(SoS)アーキテクチャを開発するために、統合構成内のシステムで実験を実行しなければならない。米陸軍は、実戦演習の高いコストを軽減し、シナリオ、条件、および赤/青のシステム能力の全範囲にわたって動作するフィールド実験の限られた能力を緩和するために、実戦実験を補完し、補強するためにM&Sを使用する予定である。分散型ライブ・バーチャル・コンストラクティブ(LVC)シミュレーション環境は、M&Sツールを改良し検証するために使用される実験結果を提供する。統合部隊の評価のために、ライブ・バーチャル・コンストラクティブ(LVC)環境は、様々なレベルの忠実度と分類で、あらゆる統合システムの「プラグ・アンド・プレイ(plug and play)」モデルで簡単に実験を構成する能力を持つべきである。

データ管理(Data Management – キネティック、ノン・キネティック、ブルー・システム(Blue systems)/レッド・システム(Red systems)のあらゆるドメインにおける認定データの利用可能性と一貫性は、共通のデータ標準、より厳格なノン・キネティックな効果データベース、認定された現在および将来の脅威データに対する必要性を促進する。統合データ標準(Joint data standards)は、各軍種間で共通のデータと構成可能なモデルを共有するために重要である。米陸軍および他の軍は、ノン・キネティックな効果のための統合部隊需効果マニュアル(JMEM)のような厳格に認証されたデータベースを開発すべきである。M&Sの用途のための現在の脅威および対抗脅威データは、セキュリティ分類によって制限されている。将来の戦場の統合M&Sには、米国防インテリジェンス局(DIA)から使用可能な分類で認証された脅威データ、将来のシステムのための権威ある、認証された、一貫した脅威データを開発するための手段、および有効な脅威データによるマルチドメイン作戦(MDO)シナリオが必要である。

米陸軍のニーズを満たすために役立つ外部の技法能力:External Technical capabilities to Help Satisfy Army Needs

米陸軍M&Sコミュニティは、これらの能力ニーズの一部を満たすために熱心に取り組んでいる。しかし、資源の制約の中でタイムリーな進歩を遂げるには限界がある。幸いなことに、米陸軍以外では、多くの重要なニーズ分野で注目すべき進展があり、米陸軍はその取組みを補うために活用することができるはずである。

マルチドメイン・フェデレートM&Sフレームワーク(Multi-domain federated M&S frameworks - 産業界、国防省国防高等研究計画局(DARPA)、および他の軍種はすべて、複数のアプリケーションのためのフェデレート、マルチドメイン、マルチセキュリティ・コンストラクティブまたはライブ・バーチャル・コンストラクティブ(LVC)シミュレーションの開発または使用に取り組んでいる。これには、コンセプト開発、作戦コンセプト(CONOPS)/戦術・技法・手順(TTPs)評価、シミュレーションが可能にする実験(Simulation Enabled Experimentation)、訓練などが含まれる。防衛産業の元請契約者(prime contractors)は、過去20年間、軍事契約顧客のニーズを支援するため、あるいは将来の顧客ニーズを理解するために、ライブ・バーチャル・コンストラクティブ(LVC)システム・オブ・システムズ(SoS)統合ラボ(例えば、「仮想戦センター(virtual warfare centers)」)を使用してきた。

また、米空軍と米海軍は、「プラグ・アンド・プレイ(plug & play)」の連携モジュールを可能にする分散型フレームワークを持つとされるシミュレーション・統合・モデリングのための先進的なフレームワーク(Advanced Framework for Simulation, Integration, and Modeling :AFSIM)などの連携型M&Sツールの開発を進めている。さらに、国防省国防高等研究計画局(DARPA)のAssault Breaker IIプログラムでは、クロスドメイン、軍種横断的な用兵構成の分析を支援する高度なM&S環境を開発している。

ノン・キネティックな現象のための高忠実度エンジニアリングM&Sツール(High-fidelity engineering M&S tools for non-kinetic phenomena - 多くの専門企業が、通信ネットワーク、サイバー、電子戦(EW)などのノン・キネティックな現象のモデリングと評価に使用するための高忠実度エンジニアリングレベルのM&Sツールを開発している。これらは、コンストラクティブ・シミュレーションやハードウェア/ソフトウェアのイン・ザ・ループ・エミュレーション、あるいは製品の試験・評価(T&E)や検証と妥当性確認(V&V)に使用するスタンドアロン・ツールであることが多い。米陸軍は、戦闘能力開発コマンド(CCDC)のラボやデータ分析センター(DAC)にこれらのツールをいくつか保有しているが、より高度な戦闘効果モデルとの垂直統合(vertical integration)をもっとうまく行うことができる。

人間の認知と行動のM&Sと研究/分析(Human cognitive and behavior M&S and research/analysis – 学会、連邦政府系研究開発センター(FFRDC)、および産業界では、人間の認知と行動のモデリングに関する研究開発が定期的に行われている。これらのプロジェクトのいくつかは、統合全ドメイン指揮・統制(JADC2)の構成における指揮の決定の速度と質に関する人間の次元を評価するためのバーチャル・シミュレーション(virtual simulations)能力を開発するための健全な基礎を提供することができる。さらに、自律的なターゲット認識(target recognition)や意思決定支援などのアプリケーションに使用できる人工知能(AI)/機械学習(ML)アルゴリズムに関する膨大な量の研究が行われている。バーチャル・シミュレーション(virtual simulations)能力では、人工知能(AI)/機械学習(ML)意思決定支援ソフトウェアをループ内に挿入し、オペレーターがループ内にいる状態で、人工知能(AI)が支援する人間の意思決定パフォーマンスの有効性を判断することができるはずである。

デジタル・エンジニアリング(DE)/モデルベース・システム・エンジニアリング(MBSE)(Digital Engineering (DE)/Model-Based Systems Engineering (MBSE))- デジタル・エンジニアリング(DE)/モデルベース・システム・エンジニアリング(MBSE)の価値は、いくつかの事業化プログラム(programs of record)で証明されており、大規模で複雑なプログラムにおいて、防衛の元請契約者(prime contractors)やトップクラスの下請け契約者(subcontractors)によって日常的に使用されている。その価値は、主に、取得ライフサイクル全体にわたって、複数の分析、デザイン、開発、生産、および維持管理アプリケーションを水平統合(horizontal integration)するための単一の権威あるデータベースを提供することにある。

画期的なインフラ能力(Groundbreaking infrastructure capabilities - 過去10年間に、M&S能力を大幅に向上させることができる、いくつかの画期的な技術が出現した。クラウド・ベース環境、GPUの飛躍的な性能向上、超並列コンピューティング、量子コンピュータなどがその例である。

米陸軍のM&Sの組織的管理能力と人材(才能)管理能力のニーズ:Army M&S Organizational and Talent Management Capability Needs

米陸軍は、マルチドメイン作戦(MDO)と統合全ドメイン指揮・統制(JADC2)の複雑なモデルを作成するために必要な専門知識を持つ、M&Sに精通した適切な人材(才能)を募集、雇用、開発、および保持しなければならない。米陸軍が明日から人材(才能)プールを構築するプログラムを開始したとしても、M&Sのニーズを満たすのに十分なSTEM専門家を確保することはできない。この状況を是正し始めるために、米陸軍は以下を一方的に採用することができる。

※ STEMとは、Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Mathematics(数学)の頭文字

- 米陸軍士官学校(USMA)と予備役将校訓練課程(ROTC)の士官候補生のSTEM専攻を増やすことを義務付ける。米陸軍士官学校(USMA)は士官候補生にSTEM専攻の枠を設けておらず、法律で定められた理学士号を授与しているにもかかわらず、米陸軍士官学校(USMA)で最も普及している専攻は歴史学である。米海軍は、士官団のSTEMへの依存度が高く、米海軍士官学校ではSTEM専攻の米海軍士官候補生(midshipmen)ミに65%の枠を設けることを義務付けている。

- 対象とする分野で高い能力を持つ卒業生を輩出していることで知られる大学STEM学部と提携する。以前は、米陸軍は下級将校(主に大尉/少佐)を選抜して1~3年間大学院に通わせ、卒業後は米陸軍士官学校(USMA)やペンタゴン、あるいは他の主要な取得プロジェクトに配属するようにしていた。

- 軍人がSTEM分野の大学院学位を取得するためのキャリアパスを強化する。米陸軍は、米陸軍が後援する主要な高等研究所(Centers of Excellence)において、下級将校が大学院教育(MSおよびPhDレベル)を受ける機会を提供することにより、STEMを軍種の文化に再注入(reinfuse)できる。また、より高い学歴を持つ専門家の数を増やすことは、米陸軍が新しく高度な技術を購入する「賢い買い手(smart buyer)」となり、近代化活動の決定においてより良い戦略的パートナーとなることにつながる。

- 個人が適切なセキュリティ・クリアランスを有している(またはその資格を有している)ことを確認する。

- 人口動態の変化を考慮し、採用活動を拡大する。STEM分野への女性やマイノリティの参加を拡大するためのイニシアチブが存在し、そのうちのいくつかは全米科学財団(NSF)の支援を受けており、これらの資金提供プログラムは高い技能を持つ人材を送り出している。例えば、コンピュータ・情報科学・工学部門(CISE)は、STEM分野の学生を育成するために、大学やカレッジに資金を提供している。

勧告:Recommendations

研究チームの調査結果と勧告は、報告書本文のトピックごとに示されている。要約すると、研究チームは米陸軍に以下の行動をとることを推奨している。

M&Sの開発:M&S Development

- 米陸軍将来コマンド(AFC)- 将来の統合マルチドメイン作戦(MDO)戦場における米陸軍システムの戦闘効果をモデル化し評価するためのフェデレートM&Sツールのひと揃え(suite)を可能にする要件を開発するための横断的なM&S機能的横断チーム(CFT)を確立し、資源を提供すること。

- 米陸軍参謀本部(G8計画担当)、米陸軍将来コマンド(AFC)、ASA(ALT):

・  国防省国防高等研究計画局(DARPA)と提携し、統合マルチドメイン作戦(MDO)Simulationの新たな進化を利用する。

・  近代的な分析的M&S能力と統合マルチドメイン作戦(MDO)の作戦環境をモデル化するシステム・オブ・システムズ統合研究所(SoSIL)を提供するために、十分な資金を投入した俊敏な取得プログラムを確立し、資源を提供することである。

人材(才能)管理:Talent Management

- 米陸軍参謀本部(G1人事担当):

-  民間人: コンピュータ・プログラミングやシステム・エンジニアリングを含むM&S関連分野の大学院学位を取得する機会を民間人に増やす。

-  将校

・ FA57将校の大学院進学率を上げる

・ FA49/FA57将校が作戦部隊に関連することを促進する。

資源:Resources

- 米陸軍長官(SECARMY)

-  ネットワーク・コンバージェンス(network convergence)と米空軍によって提供されるものと同等の資源で始まるノン・キネティックな欠陥を修正する適切な米陸軍のモデルと分散統合ライブ・バーチャル・コンストラクティブ(LVC)シミュレーション・フレームワーク内でマルチドメイン作戦(MDO)作戦をモデル化する能力を開発する。

- 米陸軍のM&Sアプリケーションとコミュニティ全体でマルチドメイン作戦(MDO)の科学・技術(S&T)進歩を可能にするため、集中的な米陸軍モデル改善計画(AMIP)を作成し管理する。

ガバナンスと組織:Governance & Organization

- 米陸軍長官(SECARMY)

 事務局に専任の上級将校を任命する。

・M&S分野の専門家

・ 米陸軍のM&Sを主導し、M&Sに関する米陸軍参謀総長(CSA)と米陸軍長官(SECARMY)のシニア・アドバイザーを唯一の責務とする者。

・ 現在の縦割り行政(stovepipes)の上位に位置する

・ 米陸軍の能力を向上させるための優先順位を指導し、実施する権限と資源を有する。

・ 米陸軍の主要な分析の品質管理を行う。

・ 陸軍全体のM&Sの意思決定の中心となる者