撃破(敗北)メカニズムをアップデートする Marine Corps Gazette

戦争における戦いに勝つとはどのように定義したらよいのかは、非常に難解な課題である。MILTERMではこれまでもMarine Corps GazetteのManeuverist論文や米陸軍の「FM3-0 Operations」の紹介の中で、勝つことについて「Defeat Mechanisms」として取り上げてきている。Maneuverist論文では、「撃破(敗北)メカニズムについて Maneuverist #10」でその議論が展開されていた。ここで、2022年2月のMarine Corps Gazetteに掲載されていた「Updating Defeat Mechanisms」を紹介する。この論稿は機動戦(maneuver warfare)を推奨する立場から「Defeat Mechanisms」について論じたものである。ウクライナや中東での消耗的な戦いが繰り広げられる中、戦争における戦いに勝つことについて考えることの参考となれば幸いである。(軍治)

撃破(敗北)メカニズムをアップデートする

現代戦のための勝利のコンセプト

Updating Defeat Mechanisms

Concepts of victory for contemporary warfare

by Dr. Frank Hoffman

Marine Corps Gazette • February 2022

ホフマン(Hoffman)博士2001年に米海兵隊予備役から退役。ペンシルベニア大学ウォートン・スクールを卒業し、ロンドンのキングス・カレッジで博士号を取得。官僚としての最初の33年間の大半を米海軍省で過ごし、戦力構造アナリスト、先進コンセプト開発者、戦略プランナーなど、さまざまな職務を経験。現在は米国防大学の研究員兼教授。これらの発言は彼個人のものであり、国防総省の見解を代表するものではない。

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近年の歴史において、勝利とはとらえどころのないコンセプトである。イラクでもアフガニスタンでも、そして我々自身のドクトリンにおいても。軍事的勝利はせいぜい、与えられた政治的狙い、リデル・ハート(Liddell Hart)の言葉で言えば「より良い平和状態」を得るために必要な前提条件である[1]

戦略レベルでは、戦闘作戦が作戦のより高い政治的成果にどのように貢献し、戦略の勝利理論にどのように貢献するかを理解する必要がある[2]。トーマス・グリーンウッド(Thomas Greenwood)米海兵隊中佐が適切に指摘しているように、会戦はそれだけで終わりというわけではない[3]

歴史が示唆するように、手段と最終目的(ends)を混同することが戦略的成功を保証することはめったにない[4]。しかし、戦略的成功は、作戦/戦術的失敗の前では非常に起こりにくい。

従って、我が国の用兵ドクトリン(warfighting doctrine)には、戦いの作戦・戦術レベルと、戦役(campaigns)や会戦(battles)を闘い勝利するための準備に適切な焦点が当てられている[5]。だからこそ、私はこのページで、マリナス(Marinus)や、機動戦(Maneuver Warfare)の基本的要素に挑戦し、議論してきた執筆者たちの気骨のある言説を心から楽しんできたのである。

※ Marinusは、米海兵隊のドクトリンの過去、現在、未来に関心を持つ退役軍人や元米海兵隊員のグループである。ジョン・F・シュミット(John F. Schmitt)、ブルース・I・グドムンドソン(Bruce I. Gudmundsson)、P.K. ヴァン・ライパー米海兵隊中将(Lt. Gen P.K. Van Riper)、エリック・M・ウォルターズ米海兵隊大佐(Col Eric M. Walters)、ジェームズ・K・ヴァン・ライパー米海兵隊大佐(Col James K. Van Riper)が所属している。(「The Evolution of Maneuver Warfare Theory」-Marine Corps Gazette • September 2022による)

本稿では、現在進行中の議論を、ドクトリンや将来の用兵コンセプト(warfighting concepts)における勝利の確保をどのようにコンセプト化するかに関連する、専門的な文献におけるより大きな課題と結びつける。冒頭では、米軍と米軍の作戦コンセプトの弱点をめぐる新たな議論について簡単に触れる。

続く節では、検証可能な作戦コンセプトの構成要素としての「撃破(敗北)メカニズム(defeat mechanism」を探り、米軍の戦力開発努力を改善する手段として、米陸軍と米海兵隊のドクトリンに基づく修正セットを提示する。建設的な解決策を提示する必要性に留意しながら、この枠組みは機動戦(maneuver warfare)を基礎とし、いくつかの変更を加えてマリナス(Marinus)の洞察に満ちた提言を支持する[6]

この議論は、このガゼットで進行中の議論に貢献するだけでなく、統合ドクトリンや統合全ドメイン作戦のような用兵コンセプト(warfighting concepts)の開発にも役立つものと期待される[7]

現在の議論:Current Debate

このページで議論されているいくつかの問題は、専門家や学術文献の他の場所でも提起されている。何人かの学者が、新興の軍事力開発努力に用いられている基底にあるコンセプト(underlying concepts)に異議を唱えている。ある米空軍大学の教授は、機動戦(maneuver warfare)の根底にある歴史や重要な信条、特に道徳的効果や認知的効果を求める願望を批判している。ヘザー・ヴェナブル(Heather Venable)博士は、多くの機動戦(maneuver warfare)の考え方は知的に浅く、非現実的であると指摘している:

厳密な歴史的研究によって検証されたことのないこれらの考え方は、文脈から切り離され、米国のドクトリン全体に歴史的に散りばめられてきた。今日、こうした考え方は、特に競争相手(opponent)に複数のジレンマを与えることを狙いとした、マルチ・ドメイン作戦や全ドメイン作戦のドクトリンを形成し続けている[8]

ヴェナブル(Venable)は、米軍のコンセプトの中には「敵(enemy)を出し抜くことができ、最終的には麻痺させることができるという非現実的な希望と非歴史的な例に基づいている」ものがあることを発見し、機動戦(maneuver warfare)の主要な要素が統合コンセプトに姿を変えて導入されていることを批判した。麻痺(paralysis)はジョン・ウォーデン(John Warden)のような米空軍理論家の中心的なものであったから、これは皮肉なことである[9]

さらに皮肉なことに、ヴェナブル(Venable)は米空軍を批判する機会を逸してしまった。米空軍はまた、競争相手(opponents)に麻痺(paralysis)をもたらすことを強調し、「2035年の統合部隊(joint force)は、複数のアプローチを生み出すためにさまざまな強みを迅速に適用することで、敵対者(adversary)を『複数のジレンマの角(horns of multiple dilemmas)』に立たせるだろう」と指摘している[10]。最新のドクトリンは次のように強調している。

行動の自由を達成するためには、敵対者(adversary)の対応を複雑にしたり、否定したりする作戦テンポで敵対者(adversary)にジレンマを提示し、統合部隊(joint force)が敵対者(adversary)の意思決定サイクルの内側で活動できるようにする、ドメインを超えた収束(convergence)が必要である[11]

ジレンマと麻痺(paralysis)の受け入れは、米陸軍だけに限ったことではない。米インド太平洋軍司令部は、「敵対者(adversary)に複数のジレンマを迅速に提示し、敵対者(adversary)の指導者の統制の感覚を低下させる」ことで、米軍は競争相手(opponent)の決心を形成できると主張している[12]

同盟国であるイギリスも、最新の「一体化した作戦コンセプト(Integrated Operating Concept)」では麻痺(paralysis)の支持者である。このコンセプトは、その「撃破(敗北)メカニズム(defeat mechanism)」を明確に定義していないが、「敵対者(adversary)の理解、意思決定、実行を揺るがすような複数のジレンマを作り出す必要がある」と明言している[13]

権威ある国際戦略研究所の未来アナリスト、フランツ‐ステファン・ガディ(Franz-Stefan Gady)は、主要な競争相手に対する戦略的麻痺(paralysis)を達成することに重点を置く米陸軍を説得力を持って批判している。ヴェナブル(Venable)と同様、ガディ(Gady)もマルチ・ドメイン作戦(MDO)のような新興のコンセプトに欠陥があることを発見し、作戦レベルでの将来の用兵に関する米国のドクトリン上の考え方、つまり、機動(maneuver)を通じて複数の認知的ジレンマを押し付けることによって敵(enemy)を麻痺させることに重点を置く考え方について、再考する必要があると主張している[14]

ガディ(Gady)は、新しいインテリジェンス、監視、ターゲット捕捉、偵察能力の普及により、編隊の機動が必要な攻撃的軍事作戦の探知と対抗がはるかに容易になったと結論づけている。

全体として、ガディ(Gady)の分析によれば、今後の通常型の軍事作戦において、麻痺(paralysis)を与えることははるかに困難であり、その結果、将来の競争相手(opponents)に対しては消耗(attrition)に頼らざるを得なくなる可能性が高い。

彼の評価は、米海軍省が連邦政府の資金で運営する研究部門CNAでロシア研究プログラムを率いるマイケル・コフマン(Michael Kofman)によって、彼の評価は補強された。ロシアの戦略や軍事動向を熱心に研究しているコフマン(Kofman)は、米軍は消耗(attrition)を受け入れ、認知麻痺(paralysis)との恋愛を忘れるべきだと主張する[15]

これらの議論は、これらのページでの機動戦(maneuver warfare)批判と並行しており、ある米海兵隊員は機動戦(maneuver warfare)の中心コンセプトは空想であると述べ、ヴェナブル(Venable)教授と共著者は弱さに対する強さの基本原則にも異議を唱えている[16]

私はウィリアムズ(Williams)少佐の、消耗(attrition)か機動かという議論の限界についての批判に同意する[17]。この仕掛けは、30年ほど前のベトナム戦争後、FMFM1が導入されたとき、このような構図は単純化されすぎていた。機動戦(maneuver warfare)の擁護者たちは、作戦術のあらゆる疑いのない美徳(positive virtues)を主張し、消耗(attrition)は生兵法(application of raw force)であると非難した。

リチャード・シンプキン(Richard Simpkin)は『スウィフトへの競争(Race to the Swift』の中で、「消耗の常習者(addicts of attrition)」と「機動の達人(masters of maneuver)」に対する辛辣な一撃で、このコントラストを捉えている[18]。数十年前、我々はこの誤解を解き、消耗(attrition)が機動戦(maneuver warfare)を含む戦いにおいて必要な役割を果たしていることを理解していたと思う[19]。ただ、それをいかに賢く効果的に適用するかということなのだ[20]

しかし、ヴェナブル(Venable)、コフマン(Kofman)、ガディ(Gady)、そしておそらく数人の米海兵隊の著者から判断すると、消耗の使徒(apostles of attrition)の第二世代が存在する。

用兵コンセプトにおける勝利:Victory in Warfighting Concepts

現在の米陸軍のドクトリンは、重要な敵(enemy)の機能を無力化し、戦闘力を発生させたり回復させたりする能力を奪うために、戦闘空間の奥行きにわたって敵対者(adversary)の資産を危険にさらすことの重要性を強調している。また、競争相手(opponent)にジレンマを生じさせ、指揮官が最適でない行動を取らざるを得ないようにすることの重要性も強調している:

米陸軍部隊は、敵(enemy)に味方の行動への対応を強制することによって、主導性を握り、保持し、利用する。敵(enemy)に複数のジレンマを提示することで、指揮官は敵(enemy)が最終的に手に負えない状況に追い込まれるまで、敵(enemy)に継続的な反応を強いる。主導性を握ることで、敵(enemy)の指揮官に圧力をかけ、好みの選択肢を捨てさせ、コストのかかるミスを犯させる[21]

最新のコンセプトでは、米陸軍はドメインを越えた能力の収束(convergence)を通じて「能力のオーバーマッチ」を得ようとしている。マルチ・ドメイン作戦(MDO)では、「勝利/撃破(敗北)メカニズム(victory/defeat mechanism)」の中心理論はコンバージェンスであると思われ、それは次のように定義される。

※ オーバーマッチ(overmatch):〔勝負にならないほど〕勝ること(参考:https://eow.alc.co.jp/search?q=overmatch)

すべてのドメイン、電磁スペクトラム(EMS)、および情報環境における能力を迅速かつ継続的に一体化することで、ミッション・コマンド(mission command)と規律ある主導性(disciplined initiative)を駆使したクロスドメインの相乗効果と複数の攻撃形態を通じて、敵(enemy)を圧倒する効果を最適化する[22]

米陸軍は、非線形の作戦を実行し可能にすることで、将来の統合部隊指揮官(joint force commander)のためにオーバーマッチを生み出す。米陸軍は、数的優越に立つ敵対者(adversary)を相手にグローバルな争われた作戦(contested operations)を展開する作戦において、戦闘空間の奥行き全体にわたって攻撃を仕掛けることで、オーバーマッチを生み出す。最新の米陸軍参謀総長白書は、米陸軍が主要な紛争でどのように勝利することを期待しているかを明らかにしている。

その中で、米陸軍部隊は「決心の支配性(decision dominance)」を活用し、センサーとプラットフォームを一体化することによって、陸・空・海の目標を撃破するとしている。敵(enemy)の抵抗意志に打ち勝ち、打ち勝つために想定される「撃破(敗北)メカニズム(defeat mechanism)」は、機動攻撃陣地から採用される同時機動、火力、情報アセットの使用である[23]

米陸軍は過去にドクトリンで「崩壊(disintegration)」を使用しており、その定義は「(指揮統制手段、インテリジェンス収集、重要なノードなどの)下位の構成要素を破壊する(destroyingまたは混乱させる(disruptingことによって敵(enemy)のシステムの一貫性を破壊し、敵の作戦遂行能力を低下させるとともに、敵(enemy)の能力や闘う意志(will to fight)を急速に崩壊させること」である[24]。これは、敵対者(adversary)の抵抗意思や能力をどのように低下させるかについて、より明確な論理と仮説である。

米海兵隊のドクトリンは歴史的に、迅速な行動によって敵対者(adversary)の結束を砕き、システム全体の混乱を意図した結果をもたらすことに焦点を当ててきた。マリナス(Marinus)は、私同様、この発動メカニズムを支持している。

しかし、全体的には、現在の作戦コンセプトに関して、批判者は妥当な点を指摘している。米陸軍と米空軍(あるいは統合ドクトリン)は、複数のジレンマを作り出すことに注力すべきではない。コンバージェンスについても、さらなる歴史的分析と正当化が必要かもしれないが、米海兵隊ドクトリンにおける「崩壊(disintegration)」やその同類である「システム混乱(systems disruption)」のような過去の米陸軍のコンセプトは、実現可能であり、歴史的根拠もある。

このことは、時間的・空間的に組織化され、特定の望ましい効果のために重要な脆弱性に向けられる、支援または有効化する「撃破(敗北)メカニズム(defeat mechanism)」を用いる作戦アプローチの集大成として理解/適用される場合に、特に当てはまる。

この議論から、今日、統合および軍種のドクトリンに含めることを検討すべき一連の「撃破(敗北)メカニズム(defeat mechanism)」が提案された[25]

撃破(敗北)メカニズムを現代化する:Modernizing Defeat Mechanisms

米陸軍のドクトリンは、作戦計画に「撃破(敗北)メカニズム(defeat mechanism)」を含めることに関して、より明確である。

米陸軍のドクトリンでは、「撃破(敗北)メカニズム(defeat mechanism)」を「敵(enemy)の反撃に対して友軍が任務を達成するための方法であり、米陸軍部隊はあらゆる階層において、4つの「撃破(敗北)メカニズム(defeat mechanism)」、破壊(destroy)、転位(dislocate)、崩壊(disintegrate)、孤立(isolate)を組み合わせて使用する」と定義している[26]

米海兵隊のドクトリンは、「撃破(敗北)メカニズム(defeat mechanism)」に明確に言及していないが、この用語は使用され、理解されている[27]

イギリス陸軍のドクトリンは、ドクトリン用語として「撃破(敗北)メカニズム(defeat mechanism)」を使用していないが、陸上部隊が競争相手(opponent)の道徳的・物理的結束力を攻撃する3つの方法として、破壊(destruction)、転位(dislocation)、混乱(disruption)などの重要な要素を挙げている[28]

私は、米海兵隊がドクトリンを更新し、知的一貫性を確立するために、一連の「撃破(敗北)メカニズム(defeat mechanism)」を評価し、改良することを提案する。表1は、計画策定やコンセプトの作成において、作戦アプローチを運用するための構成要素(building blocks)としての「撃破(敗北)メカニズム(defeat mechanism)」を反映したものである。

続くコラムは、各「撃破(敗北)メカニズム(defeat mechanism)」に関連する戦闘力の主要な構成要素、望ましい効果、具体的なターゲットを要約したもので、最も重要なメカニズムであるシステムの破壊(systems disruptionや崩壊(disintegration)は、時間と空間における巧みな作戦術(operational art)と効果の編成の産物である。

表1. 撃破(敗北)メカニズムと見積もられる効果

撃破(敗北)メカニズムの有効化 戦闘力の構成要素 望ましい効果 ターゲット
破壊 火力 能力容量の消耗 物理的資源・部隊・プラットフォーム
転位 機動 地上的、時間的な位置の優位性。 戦域指揮官または作戦指揮官の認知的状態。
劣化 主に情報/サイバー/電磁スペクトラム(EMS)キネティックな兵器またはサイバー兵器によって達成される。 認知的タスク、意思決定、統制の能力容量を遅くしたり減少させようとする 選択的な敵対者のネットワーク/システムの作戦的能力容量

会戦システムの要素間のリンクを攻撃

志向喪失 サイバーや他の情報システム 意思決定や指揮・統制の能力容量を遅らせる 指揮・統制システムを通じて全てのレベルの指揮官
最高調のメカニズム
システムの混乱/崩壊 組合せによる累積 競争相手の対応能力を乱すカスケード効果 敵対者部隊の結束と効果的な統制

この提案されたフレームワークは、敵対者(adversary)の物理的資産を排除するための火力ベースの「撃破(敗北)メカニズム(defeat mechanism)」として、破壊的な悪意の消耗(vice attrition)を使用している[29]

この方が目的をより明確に定義でき、消耗の戦略(strategy of attrition)や長期的憔悴の戦略(strategy of long-term exhaustion)につきまとう時間的次元や歴史的お荷物を避けることができる。消耗とは、物理的な破壊として描かれることが多いが、戦いに必要な要素であることは一般によく知られているが、十分な要素であることはまれである[30]

敵対者(adversary)の能力をある程度低下させることはしばしば必要であり、奇襲や主導性の掌握と組み合わせることで、認知的な影響ももたらす。競争相手(opponent)の重要な脆弱性に十分な注意を払いながら適用すれば、作戦の継続が最終的な結果をより高価なものにすると競争相手(opponent)に認識させることができるはずである。

転位(dislocationは機動の産物(product of maneuver)であり、敵対者(adversary)の位置や防御を役に立たなくしたり、無意味にしたりすることで、位置的・時間的優位を作り出す[31]。競争相手(opponent)に移動させ、自軍を露出させるか、あるいは後に火力による詳細な敗北に直面させるかもしれない。

しかし、その最終的な効果は、相手の指揮官から主導性を奪い、当初保持していた優位性を奪うことである。その他に、志向喪失(disorientation劣化(degradationという2つの「撃破(敗北)メカニズム(defeat mechanism)」が想定されている。偽情報の注入や、なりすましデータによる敵対者(adversary)の指揮・統制(C2)システムの破壊は、志向喪失(disorientationの機能である可能性がある。

その他の受動的な形態の欺瞞やおとりも考えられる。後者は、指揮・統制(C2)システムやインテリジェンス・監視・偵察システムにおける状況認識レベルの低下や機能性の低下を意味する。この劣化(degradation)は、キネティックな攻撃であることもあれば、アルキラ(Arquilla)とロンフェルト(Ronfeldt)が示唆したように、戦闘力の一形態としてのサイバー作戦を含むこともある[32]

劣化(degradation)は、時間と共に指揮・統制(C2)システムを再構成し適応させることができる、有能な技術的敏捷性を持つ競争相手に対しては、おそらく一時的な効果を捉える。このメカニズムは、ボイドのコンセプトにおける敵対者(adversary)の理解や方向性を低下させ、敵対者の作戦サイクルや適応能力を鈍らせる。このメカニズムは、現代戦において情報が戦闘力の源泉としてどのように機能するかを最大限に理解するために含まれている[33]

マリナス(Marinus)の記事から私が唯一区別しているのは、実現可能なメカニズムと、システム崩壊という頂点に達する「撃破(敗北)メカニズム(defeat mechanism)」である。

これらの構成要素は、コンセプトや作戦計画の根底にある理論的根拠である。時間と空間を超えて組織化された複数のメカニズムを適用する必要性は、時に見落とされる。文脈によっては、破壊のような単一のメカニズムで十分なこともある。

しかし、競争相手(opponent)の戦略の狙いを否定し、有利な条件での解決を迫るためには、何らかのメカニズムの組み合わせが必要になる可能性が高い。メカニズムの相互効果については、イスラエルの学者の洞察に基づく[34]

ネイト・ラウターバッハ(Nate Lauterbach)米海兵隊中佐やヴェナブル(Venable)博士が主張しているように、対等な競争者(peer competitor)との大きな抗争(major contests)では、成功のためにはこのような組み合わせの取組みと柔軟性が必要になる[35]。このようなメカニズムを正しく組み合わせ、編成することが、作戦術を非常に有用なものにしているが、同時に知的に要求されるものでもある。

志向喪失(disorientation)/劣化(degradation)メカニズムの組み込みは、敵対者(adversary)の指揮・統制(C2)機能を低下させる物理的かつノン・キネティックな手段(non-kinetic means)を確実に組み込むことを意図している。

米国のシンクタンクが「システム戦(Systems Warfare)」、あるいはあるチームが「決心中心戦(Decision-Centric Warfare)」と呼ぶものを推進するために提唱している2つの主要コンセプトがある[36]。これらの提案されたコンセプトは、機動戦理論(maneuver warfare theory)に合致した方法で、敵対者(adversary)のシステムを混乱させ、破壊するためのノン・キネティックな手段(non-kinetic means)を強調している。

これらは敵対者(adversary)をシステムとして理解し、システム対決や作戦システムの悪意の消耗(vice attrition)をめぐる会戦についての中国の考えを反映している。これらのコンセプトには、ブライアン・クラーク(Bryan Clark)が仮想消耗(virtual attrition)と呼び、ロバート・ワーク(Robert Work)元国防副長官が「見えない打撃(invisible strikes)」と呼ぶものを含む消耗(attrition)が組み込まれている。

これらの擁護者は、21世紀の勝利には、加農砲の一斉射撃やミサイルよりも、会戦ネットワーク競争(battle network competitions)と破壊の可能性を使いこなすことが必要だという、一世代前の議論を持ち出している[37]

システム破壊(systems disruptionとは、最終目的の成果物、あるいは軍事的な目標であり、4つの「撃破(敗北)メカニズム(defeat mechanism)」をいくつか組み合わせた創造的な組み合わせによってのみ達成される[38]。この用語は、米海兵隊のドクトリンに由来するもので、競争相手(opponent)をシステムとして考え、敵(enemy)の防御を侵食するのではなく、敵(enemy)のシステムに侵入し、それをバラバラにすることを目指すものである[39]システム破壊(systems disruptionは、特に近代的な諸兵科連合部隊(modern combined arms forceであれば達成可能なはずである。

火力、機動、サイバー攻撃の組み合わせは、選択された脆弱性に対して連鎖的な効果を生み出し、相手部隊の効果的な対応能力を著しく混乱させる。

指揮・統制(C2)システムを劣化させ、欺瞞や偽情報によって意思決定で受け取る情報の方向性を失わせると、敵対者(adversary)の適応と対応をさらに複雑にする。敵対する指揮官がこのような攻撃に対して理解し、評価し、適応する能力は、遅々として進まず、非効率的なものとなる。作戦レベルでは、システムの混乱は、我々が求める望ましい効果と、ほとんどのサイバーベースの兵器の一過性の特徴を捉えている[40]

現代の米海兵空地タスク部隊(MAGTF)が、米海軍または統合部隊(joint force)の一部として、システムの破壊または崩壊を達成するために、これらを活用できることは明らかである。これらの用語を明確かつ一貫して使用することで、対話と計画の理解、および提案された作戦コンセプトのテストが容易になる。

戦争の作戦レベルでは、意図的な「撃破(敗北)メカニズム(defeat mechanism)」の組み合わせの結果としてのシステムの混乱は、この時代には、単に「決心の支配性(decision dominance)」や、よく言われる麻痺(paralysis)や複数のジレンマの効果よりも、よりもっともらしく見える。

表1の有効化メカニズムでは、戦いの道徳的/認知的領域と物理的領域に関連する「撃破(敗北)メカニズム(defeat mechanism)」の相互作用を説明することができない[41]。以下の図1は、その概略図である。

機動戦における撃破(敗北)メカニズムの相乗関係。(図は筆者提供)

「撃破(敗北)メカニズム(defeat mechanisms)」は、敵対者(adversary)の戦闘力の一次元(能力、能力容量/規模、指揮官の意志/指揮機能)に対して主要な目的を持つが、損失が増大し、会戦機能が低下し、指揮官の対応能力が損なわれるにつれて、相互に増幅する効果もある。

私が定義した一連の成功メカニズムは、その出発点として提供するものである。主要な戦闘作戦を中心としない戦略的文脈や戦略的任務については、別の成功メカニズムを開発することも可能である[42]

この枠組みは、攻撃と防御の両方、さらに戦争の物質的要素と道徳的/認知的要素を組み込んだものである。消耗中心の議論(attrition-centric arguments)は、MCDP1の重要な要素と故ジョン・ボイド(John Boyd)米空軍大佐の影響に挑戦するものである[43]。ボイドの研究は歴史的に浅いものであると考えるべきではなく、戦争の道徳的、認知的、物理的次元の相互作用的性質がいかに重要であるかという彼の強調は、軍事史に十分に根ざしている[44]

戦いの人間的、ノン・キネティックな要素を無視し、対等な競争者(peer competitors)に対する装備やキネティックな手段を強調することは、人間現象としての戦争や、アジアで最も挑戦的な競争者の規模の大きさを現実的に見るよりも、空想に過ぎない。

破壊(destruction)(必要であれば消耗(attrition))は、戦いにおけるさまざまな場面で意味を持つ。破壊的な剣は(空と地上と海上で)、必要なときに目的と暴力をもって確実に適用される。

しかし、火力と機動は、競争相手(opponents)の結束と有効性を混乱させ、崩壊させるノン・キネティックな道具(non-kinetic tools)も加わり、断固とした力(decided edge)を生み出して、われわれが勝利することを可能にする。我々のドクトリンは、ドメインを超えた相互補完的な相互作用を反映させることができ、また反映させるべきである。

全体として、批評家たちは、われわれに思考を洗練させ、機動戦(maneuver warfare)が新たな環境に適用可能であることを確認させたという点で、称賛されるべきである。火力と破壊の利点に関して、ドメインによる区別を指摘するのは正しい。しかし、一部の消耗の使徒(apostles of attrition)が提唱する単一のアプローチの有効性には限界があることを理解すべきである。

結論:Conclusion

戦争における成功は依然として複雑であり、あまりにも稀である。劇的な会戦の勝利は、欠陥のある政策や欠陥のある戦略を正すことはできない[45]。しかし、健全な戦略は、プロの軍隊が作戦上、戦術上、望ましい結果をもたらすことができることを前提としている。

戦い、戦争の遂行は、MCDP1に従って常に進化している。不朽の連続性はあるが、これからの時代、ベイルートや砂漠の嵐作戦(Operation DESERT STORM)、イラクの自由作戦(Operation IRAQI FREEDOM)のような闘い方はしない。将来の敵対者(adversaries)の目をくらまし、混乱させ、打ち負かすために、剣と盾の両方を振るうことが求められている。

機動戦(maneuver warfare)は、紛争の連続体(continuum of conflict)全体にわたって、現代の紛争に対する価値あるアプローチであることに変わりはない。しかし、まずは単純化しすぎた消耗対機動(attrition vs maneuver)というレッテルを捨てて、現代戦における勝利を達成するための戦闘力の源泉の相互作用を含む、より全体論的なアプローチを受け入れる必要がある。そうすることで、ハリネズミのような考え方を排除することができる。

結局のところ、「我々の行動が敵(enemy)の敗北の引き金になることを考え抜くことが、戦争の術と学(art and science of war)の重要な部分である」というマリナス(Marinus)の意見に、私は強く同意する[46]

ノート

[1] B.H. Liddell Hart, Strategy, Second Ed, (New York, NY: Praeger Publishers, 1967).

[2] Frank Hoffman, “The Missing Element in Crafting National Strategy: A Theory of Success,” Joint Force Quarterly, (Washington, DC: National Defense University Press, 2d Quarter 2020).

[3] Col Thomas C. Greenwood, USMC (Ret.), “The Elusive Quest for Victory in War,” Proceedings, (Annapolis, MD: U.S. Naval Institute Press, October 2021).

[4] On Theory of Victory, see Brad Roberts, “On Theories of Victory, Red and Blue,” (Livermore, CA: Lawrence Livermore Lab, Center for Global Research, June 2020).

[5] I accept the point raised by Marinus Era Novum, “Continuing the Dialogue, Strategy and Maneuver Warfare,” Marine Corps Gazette, (Quantico, VA: May 2021), that Marine doctrine has to connect strategy to operations. However, I find that Strategy and Campaigning do that satisfactorily across a range of conflicts even if they are nested under MCDP 1.

[6] Marinus, “Defeat Mechanisms,” Marine Corps Gazette, (Quantico, VA: July 2021).

[7] Colin Clark, “General Hyten on the New American Way of War, All Domain Operations,” Breaking Defense, (February 2020), available at https://breakingdefense.com.

[8] Heather Venable, “Paralysis in Peer Conflict? The Material Versus the Mental in 100 Years of Military Thinking,” War on the Rocks, (December 2021), available at https://warontherocks.com.

[9] On air power enthusiasm for strategic paralysis, David S. Fadok, “John Boyd and John Warden, Airpower’s Quest for Strategic Paralysis,” (Maxwell, AL: School of Advanced Airpower Studies, February 1995).

[10] Headquarters Department of the Air Force, Air Force Future Operating Concept, (Washington, DC: 2015).

[11] Air Force Doctrine Publication (AFDP) 3-99, Department of the Air Force Role in Joint All-Domain Operations, Curtis LeMay Center for Doctrine Development and Education, 2020.

[12] Terrence J. O’Shaugnessy, Matthew D. Strohmeyer, and Christopher D. Forrest, “Strategic Shaping: Expanding the Competitive Space,” Joint Force Quarterly, (Washington, DC: National Defense University Press, 3rd Quarter, 2018).

[13] Ministry of Defence, Integrated Operating Concept 2025, (London, UK, 2021).

[14] Franz-Stefan Gady, “Manoeuvre versus Attrition in US Military Operations,” Survival, (Milton Park: Taylor and Francis, August/ September 2021).

[15] Michael Kofman, “A Bad Romance : US Operational Concepts Need to Ditch Their Love Affair with Cognitive Paralysis and Make Peace with Attrition,” Modern Warfare Institute, (March 2021), available at https://mwi.usma.edu.

[16] Thaddeus Drake, “The Fantasy of MCDP

1,” Marine Corps Gazette, (Quantico, VA: October 2020).

[17] MAJ Joseph Williams, “Mindlessness in Maneuver Warfare,” Marine Corps Gazette, (Quantico, VA: August 2021)

[18] Richard E. Simpkin, Race to the Swift : Thoughts on Twenty-First Century Warfare, (London: Brassey’s, 2000).

[19] For a thorough examination of attrition in modern warfare see Carter Malkasian, A History of Modern Wars of Attrition, (Westport, CT: Praeger, 2002); and Cathal Nolan, The Allure of Battle: A History of How Wars Have Been Won and Lost, (Oxford: Oxford University Press, 2017).

[20] Craig Tucker, “False Prophets: The Myth of Maneuver Warfare and the Inadequacies of FMFM-1 Warfighting,” (Ft. Leavenworth, KS: Command and Staff College, 1995), Richard D. Hooker, ed. Maneuver Warfare: An Anthology, (Novato, CA: Presidio, 1993); and Wilf Owens, “The Manoeuvre Warfare Fraud,” Small Wars Journal, (September 2008), available at https://smallwarsjournal.com.

[21] Department of the Army, Army Doctrinal Publication 3-0, Operations, (Washington, DC:2019).

[22] U.S. Army, TP 525-3-1, The U.S. Army in Multi-Domain Operations 2028, (Ft. Eustis, VA, Training and Doctrine Command 2018).

[23] GEN James C. McConville, U.S. Army, Army Multi-Domain Transformation Ready to Win in Competition and Conflict Chief of Staff Paper #1, (Washington, DC: Department of the Army, March 2021).

[24] Ibid.

[25] Originally presented in Frank Hoffman, “Defeat Mechanisms in Modern Warfare,” Parameters Vol. 51, no. 4, (Carlisle, PA: Winter, 2021–22).

[26] Headquarters Department of the Army, Field Manual 3-0, Operations, (Washington, DC:2017).

[27] “Defeat Mechanisms.”

[28] UK Army, Land Operations, Army Doctrinal Publication AC71940, (London : March 2017).

[29] There is a difference that some overlook between attrition as a mode/method of warfare, and attrition or firepower as an operational/ combat function. As Venable and Lauterbach noted, the Corps’ new concepts liked EABO reflect an appreciation for the role of destruction in maritime warfare. Heather Venable and LtCol Nate Lauterbach, “Between a Rock and a Hard Place,” Marine Corps Gazette, (Quantico VA: January 2021).

戦いの様式・方法としての消耗(attrition)と、作戦・戦闘機能としての消耗(attrition)や火力(firepower)との間には、見過ごされている違いがある。ベナブル(Venable)とローターバック(Lauterbach)が指摘するように、EABOを好む海兵隊の新しいコンセプトは、海上戦における破壊の役割に対する評価を反映している。Heather Venable and LtCol Nate Lauterbach, “Between a Rock and a Hard Place,” Marine Corps Gazette, (Quantico VA: January 2021).

[30] Huba Wass de Czege, “Army Doctrinal Reform” in Asa Clarke, et al, eds., The Defense Reform Debate: Issues and Analysis, (Baltimore, MD: Johns Hopkins University Press, 1984).

[31] I am using a narrower approach to dislocation than the four (positional, functional, temporal and moral) defined by Robert R. Leonhard, The Art of Maneuver Warfare: Maneuver Warfare Theory and AirLand Battle, (Novata, CA: Presidio, 1991).

[32] John Arquilla and David Ronfeldt, In Athena’s Camp, Preparing for Conflict in the Information Age, (Santa Monica, CA: R AND, 1997)

[33] John Arquilla, Bitskrieg, The New Challenge of Cyberwarfare, (Cambridge, UK: Polity Press, 2021).

[34] On the reciprocal effects of multiple mechanisms, see Eado Hecht, “Defeat Mechanisms, The Rationale Behind the Strategy,” Military Strategy Magazine, (Tel Aviv: IJ Infinity Group, Ltd, 2014).

[35] LtCol Nate Lauterbach and Heather Venable, “Why Attack Weakness, A Reconsideration of Maneuver and Attrition,” Marine Corps Gazette, (Quantico, VA: September 2021).

[36] These concepts are presented in Robert O Work, “A Joint Concept for Systems Warfare,” Center for a New American Security, (December 2020), available at https://www.cnas.org; Bryan Clark, Mosiac Warfare: Exploiting Artificial Intelligence and Autonomous Systems to Implement Decision-Centric Operations, (Washington, DC: Center for Strategic and Budgetary Assessment 2020); Bryan Clark, Dan Patt, and Timothy A. Walton, Implementing Decision-Centric Warfare: Elevating Command and Control to Gain an Optionality Advantage, (Washington, DC: Hudson Institute, 2021).

[37] John Stillion and Bryan Clark, What it Takes to Win: Succeeding in 21st Century Battle Network Competitions, (Washington, DC: Center for Strategic and Budgetary Assessments 2015).

[38] This article focuses more narrowly on systems disruption than Marine doctrine states per MCDP 1.

[39] MCDP 1.

[40] Max Smeets, “A Matter of Time: On the Transitory Nature of Cyberweapons,” Journal of Strategic Studies Vol. 41, no. 1–2, (2018).

[41] On this point, which would be consistent with Boyd, see the chart in Eado Hecht, “Defeat Mechanisms.”

[42] A nod to Col Greenwood’s arguments about the loaded connotations of victory and defeat.

[43] On Boyd’s thinking see Frans Osinga, Science, Strategy and War: The Strategic Theory of John Boyd, (Oxford: Routledge, 2006). On Boyd’s sense of how the elements interact, see Antulio J. Echevarria, Jr., War’s Logic: Strategic Thought and the American Way of War, (New York, NY: Cambridge University Press, 2021).

[44] War’s Logic. See also On Boyd’s impact see Ian T. Brown, A New Conception of War: John Boyd, the U.S. Marines, and Maneuver Warfare, (Quantico, VA: Marine Corps University Press, 2018).

[45] Williamson Murray and Mark Grimsley, “Introduction,” Williamson Murray, MacGregor Knox and Alvin Bernstein, eds., The Making of Strategy, Rulers, States and War, (New York, NY: Cambridge University Press, 1995).

[46] “Defeat Mechanisms.”