バトルバースの強化: 人民解放軍のデジタル・ツイン戦略 (Military Cyber Affairs)

昨今、「デジタル〇〇」という言葉をよく耳にする。軍事におけるデジタル・ツインに関する研究をしている中に、中国人民解放軍のメタバースの活用等に関する研究をしている、米空軍大学の中国航空宇宙研究所(CASI)でアナリストを務めているジョシュア・D・ボーマン氏がいる。今年6月の彼の論稿に人民解放軍のデジタル・ツイン戦略に関する論稿があったので紹介する。(軍治)

バトルバースの強化: 人民解放軍のデジタル・ツイン戦略

Enhancing the Battleverse: The People’s Liberation Army’s Digital twin Strategy

Joshua Baughman

Military Cyber Affairs

Volume 6

Issue 1 HammerCon 2023 Issue Article 1

May 2023

ジョシュア・D・ボーマン(Joshua D. Baughman)(以下、ジョシュ(Josh))は現在、米空軍大学の中国航空宇宙研究所(CASI)でアナリストを務めている。彼の研究の中心は、サイバーと情報ドメインにおける中国人民解放軍(PLA)の活動と人民解放軍(PLA)ロケット軍に関する研究である。国防大学や世界政治研究所の修士・博士課程で、中国のサイバー戦略や誤報対策などをテーマに客員講義を行っている。定期的に発表や出版を行っており、メタバースに関する研究で国際的な評価を受けている。ジョシュ(Josh)は以前、国防大学(NDU)情報・サイバー空間学部(CIC)、米空軍士官学校、北京の清華大学に勤務。合わせて3年間北京に滞在し、中国の安全保障問題に関する編集者やジャーナリストとして、またテレビの司会者、ディレクター、ライター、プロデューサーとして活躍した。余暇には、501(c)(3)教育非営利慈善団体であるミリタリー・サイバー・プロフェッショナルズ・アソシエーション(Military Cyber Professionals Association)のボランティア活動に参加し、最高マーケティング責任者として全国的なリーダーシップの一翼を担っている。ジョシュは北京語に堪能。

*************************************************************************

はじめに:Introduction

2021年が中国で「メタバースの1年目」と呼ばれた後、中国共産党(CCP)は、「デジタル・チャイナ(Digital China)」として知られる習近平(Xi Jinping)の「包括的なデジタル大戦略(comprehensive digital grand strategy)」の一環として、メタバース関連技術の急速な進歩を追求し続けた。メタバースを構成するさまざまな技術のうち、デジタル・ツインは中国における最優先事項として浮上している。

IBMが定義するデジタル・ツインは、「物理オブジェクトを正確に反映するようにデザインされた仮想モデル(virtual model)」である[1]。デジタル・ツインのコンセプトは、アポロ計画の「生きたモデル(living model)」を作成した1960年代のNASAにまで遡ることができるが、人工知能(AI)やその他の技術により、新しくより洗練された適用の可能性が大幅に強化された[2]

北京大学、清華大学、北航大学などの中国のトップ大学やその他の主要な学術機関は、近年このテーマに関する重要な研究を行っている。業界では、「テンセント(Tencent)」や「アリババ(Alibaba)」などのトップ技術企業や、メタバースに特化した大手企業の1つである「51World」が、最近独自のデジタル・ツイン・プラットフォームをリリースした。

人民解放軍(PLA)も、「バトルバース(battleverse)」[3]での能力を強化し続ける中で、デジタル・ツイン技術(digital twin technology)に大きな価値があると考えている。最近の人民解放軍(PLA)メディアと中国の技術報道では、戦場で優位性をもたらすと考えられるデジタル・ツイン技術(digital twin technology)の6つの主な適用例が明らかになった。適用には、教育、意思決定(decision making)、訓練、研究と開発、整備、そして最後に兵站が含まれる。

包括的な目標は、迅速に適応し改善する、より優れた教育、訓練を受けた効率的な軍隊を構築することである。全国人民代表大会の副議員で陸軍研究所の上級技術者であるWang Mingxiao少将は、2021年のインタビューで、デジタル・ツイン技術(digital twin technology)は「戦場の状況認識(situational awareness)と計画策定能力の戦略的変革の実現に役立つ」と述べた[4]

到達目標は、決心の支配性(decision dominance)[5]を生み出す情報の優位性(information advantage)により、人民解放軍(PLA)がより適切に準備し、将来の紛争に勝つことを可能にする戦力の乗数(multiplier)を生み出すことである。デジタル・ツイン技術(digital twin technology)は、起こり得る台湾侵攻やその他の軍事行動の結果について人民解放軍(PLA)に迅速に強化し、明確なイメージを与える可能性を秘めている。中国共産党(CCP)が侵略を選択した場合、デジタル・ツインは、可能な限り最善の戦略を準備し、弱点を補強し、紛争が始まった後に迅速に適応するのに役立つ可能性がある。

デジタル・ツインの定義:Defining Digital twin

最近の人民解放軍(PLA)メディアの記事「デジタル・ツイン技術: 将来の戦場で『裏をかく』(Digital twin technology: “Outsmarting” the Future Battlefield)」では、デジタル・ツインを次のように定義している。

いわゆるデジタル・ツインとは、物理モデル、センサーの更新、作戦史(operation history)などのデータを最大限に活用し、多くの学問領域にわたる(multi-disciplinary)、多物理量(multi-physical quantities)、多重スケール(multi-scale)、多重確率(multi-probability)のシミュレーション・プロセスを一体化し、仮想空間(virtual space)内にマッピングを完成させるものである。これにより、対応する物理機器のライフサイクル・プロセスの全範囲が反映される[6]

Wang Mingxiao少将は、デジタル・ツイン技術(digital twin technology)を説明するための比喩として鏡を使用し、次のように述べている。「デジタル・ツインとは、文字通り、現実の物理世界のために高度にミラーリングされたデジタル世界を構築することである。システムや機械がどれだけうまく機能しているかは、鏡を見るのと同じように、デジタルの世界を通してはっきりと認識することができる」[7]

本質的に、デジタル・ツインは、リアルタイム・データを使用して理解、学習、判断を可能にするデバイスまたはシステムのデジタル・クローンである。中国共産党(CCP)は、デジタル・ツインを、仮想時間(virtual time)と仮想空間(virtual space)の集合体を構成するメタバースを構成するさまざまな技術の1つと見なしている。

「デジタル・チャイナ」とデジタル・ツイン:“Digital China” and Digital twin

デジタル・ツイン技術(digital twin technology)の重要性は、「Build Digital China」[建设数字中国]、または単に「デジタル・チャイナ(Digital China)」[数字中国]と呼ばれる習近平(Xi Jinping)の「包括的なデジタル大戦略(comprehensive digital grand strategy)」の一環として、中国共産党(CCP)のトップにまで遡ることができる。

習(Xi)氏は「デジタル・チャイナ(Digital China)」を単なる商業戦略や産業戦略ではなく、中国をデジタル変革するための国家を挙げた取り組みとみている。中国共産党中央委員会(CCCPC)と国務院が最近発表した「デジタル中国建設のための全体配置計画」と題した文書には、次のように書かれている。

2035年までに、デジタル発展のレベルは世界の最前線に入り、「デジタル・チャイナ(Digital China)」の構築で大きな成果が得られるだろう。「デジタル・チャイナ(Digital China)」建設の体系的配置はより科学的かつ完全であり、経済、政治、文化、社会、生態文明建設の分野におけるデジタル発展はより調整され十分であり、現代社会主義国家の包括的な建設を強力にサポートしている[8]

技術の進歩と革新は中国の「偉大な復興(great rejuvenation)」に直接結びついており、中国の産業部門と軍事部門全体に響く政策にとって最も重要である。

中国共産党(CCP)の最新の「国家情報化第十四次五カ年計画」では、デジタル・ツイン技術(digital twin technology)が「戦略的研究展開と拡張性のある技術革新の強化」を目的とした「戦略的先端技術の展開」戦略の一環として具体的に言及されている[9]。産業界に設定された主要な到達目標は、「デジタル・ツイン都市の構築を検討する」ことである[10]

国家開発改革委員会(NDRC)、科学技術省(MST)、工業情報技術省(MIIT)、天然資源省(MNR)、住宅・都市農村開発省(MHUR)はいずれも、都市情報モデル(CIM)やビルディング情報モデル(BIM)などのデジタル・ツイン都市をサポートする政策を提唱している[11]

デジタル・ツイン技術(digital twin technology)に戦略的に重点を置くことで、中国の学術界と商業部門の両方で大きな発展が見られた。北京大学、清華大学、北杭大学などの中国のトップ大学、中国科学院オートメーション研究所(IACAS)、最近では中国インターネット協会などの学術機関は、デジタル・ツイン都市および関連産業での適用の研究に注力してきた[12]

業界では、「51World」、「アリババ(Alibaba)」、「テンセント(Tencent)」などの企業がデジタル・ツイン開発を加速するために大きな進歩を遂げており、ここ数カ月で新しいプラットフォームを発表している。「51World」は、メタバース業界への参入を広範に推進する中で、デジタル・ツインの適用の開発をより簡単かつ効率的に行うための新しいプラットフォームである「51World Developer Platform(51WDP)」を構築した[13]

51WDPは個人でも企業でも完全にオープンである。「51World」の創設者兼最高経営責任者(CEO)のLi Yi氏は、「2030年までに完全な仮想世界(virtual world)の構築を目指し、100万の企業とユーザーにデジタル・ツインサービスを提供する」と述べた[14]

「51World」はメタバースのカンファレンスを開催した

「アリババ(Alibaba)」は、「超統合デジタル・ツイン・プラットフォーム」[超融合数字孪生平台正式公開]と呼ばれる独自のデジタル・ツイン・プラットフォームをリリースした。「アリババ・クラウド・インテリジェンス(Alibaba Cloud Intelligence)」の副社長、Zhang Lei氏は次のように述べている。「従来のデジタル・ツイン技術(digital twin technology)と比較して、このプラットフォームは知覚、シミュレーション、制御、視覚化を含む4つのドメインからのデータを一体化して計算できるため、アルゴリズムがより高速かつ強力になり、分析、推論、意思決定のスピードと正確さを確実なものとする」[15]

現在、新しいプラットフォームは高速道路、都市交通、埠頭、空港で使用されている。一例として、未来交通工学研究所と提携した城義高速道路が挙げられる[16]。未来交通工学研究所所長のチェン・ケン博士は、「成義高速道路は全長約157キロメートルで、デジタル・ツイン技術(digital twin technology)を活用し、すべての要素を完全にカバーする初のスマート高速道路である」と述べた[17]

城義高速道路のデジタル・ツイン

最後に、「テンセント(Tencent)」は、「業界が低しきい値と低コストでツイン・アプリケーションを開発し、効率の飛躍を達成し、デジタル・ツインの適用を軽量かつ高速にする」ようにデザインされた独自のデジタル・ツイン・プラットフォームをリリースした[18]

「テンセント(Tencent)」 は、輸送、建設、公園、都市、産業、エネルギー、自動車のソリューションに取り組むプラットフォームを徐々に構築している[19]

軍事における適用:Military Application

デジタル・ツイン技術(digital twin technology)を活用できる商用の適用例は数多くあるが、人民解放軍(PLA)は(メディア報道によると)軍事的適用として6つの主要な分野を見込んでいる。

表1: デジタル・ツイン技術(digital twin technology)の軍事的適用の概観
軍事的適用 説明
教育 視覚化と全体的な学習体験の向上
意思決定 戦場の包括的かつリアルタイムの状況認識(situational awareness)により、指揮官は最善の行動方針を効果的に追求可能
訓練 実際の戦闘をより適切に模擬
研究と開発 新しい軍事兵器システムの開発のスピードと費用対効果の向
整備 完全なライフサイクル管理により、修理の必要性を効果的に予測可能
兵站 中央集権化を抑え、より柔軟なオン・デマンドでより高速なサプライ・チェーンを構築

1. 教育:Education

デジタル・ツインの軍事的適用の主な理由として教育が挙げられている。「デジタル・ツイン技術: 将来の戦場で『裏をかく』(Digital twin technology: “Outsmarting” the Future Battlefield)」の著者、Zhang Zhen氏と Shang Dunmin氏は、新しい機械または構成品の例を挙げている。新しい機械を理解する最も簡単な方法は、それを個々の構成品から分解することである。ただし、著者が指摘しているように、これは難しく、非常に時間がかかる可能性がある。

彼らはロシアのAL-31航空エンジンを例に挙げている。エンジンがどのように動作するかを理解するには、2 次元の図を見るだけでは不十分であり、実際のモデルを使用するのは現実的ではない。Zhang氏とShang氏は、「デジタル・ツイン技術(digital twin technology)の出現は、航空エンジン専攻の教育に新しいアイデアを提供し、複雑なシステムの構造と原理を2次元の平面図で示すのが難しいという問題を効果的に解決する」と書いている[20]

デジタル・ツイン技術(digital twin technology)により、分解が難しい複雑な構造の構成品を視覚化できる。さらに、デジタル・ツインは「機器の構造、機械の状態、機械原理をより直感的に表示できるため、教育内容がより豊かで受け入れやすくなる」[21]

したがって、教育分野では、デジタル・ツインを使用すると、生徒の学習体験を効果的に向上させると同時に、授業ごとに実際の機械を使用するコスト(時間と費用の両方)を削減できる。

デジタル・ツイン・エンジンのコンセプト図

 

2. 意思決定:Decision Making

Zhang氏とShang氏は、デジタル・ツインの適用を戦場での意思決定を補完するものと考えている。著者らは「デジタル・ツイン技術(digital twin technology)により、実際の戦闘状況を仮想戦場(virtual battlefield)にマッピングし、戦場データをリアルタイムで提示できる」と書いている[22]

デジタル・ツイン技術(digital twin technology)は、戦闘プラットフォーム、兵器システム、戦場環境などの戦争実体のコピーを仮想空間(virtual space)に作成し、すべてのコピー・モデルを一体化して、戦場での最も包括的かつリアルタイムの実際の状況を指揮官に示す。戦場の状況を最も正確に把握できる。

複雑な敵の状況と戦場環境を伴う智能化戦(intelligent warfare)の時代において、最善の指揮決定を行うには、現在の戦場状況を知ることが重要である。「軍事ダイジェスト(Military Digest」誌の記事で著者らは、「戦場学習アルゴリズムの支援により、さまざまな戦闘の計画(combat schemes)が達成できる戦闘効果をシミュレートすることができ、指揮官が最短時間で最善の戦略を選択できるようにする」と書いている[23]

デジタル・ツインにより、戦場の正確かつリアルタイムの評価が可能になり、指揮官は勝利につながる最善の決定を下すことができる。

3. 訓練:Training

著者のZhang氏とShang氏は、デジタル技術が兵士に提供する没入型訓練(immersive training)の利点について論じている。著者たちは次のように書いている。

デジタル・ツインは、リアルシーンの3Dモデリング技術やビッグデータ技術などを一体化し、人、装備、環境の仮想(virtual)と現実(reality)の有機的な組み合わせを実現し、動的な戦場の環境の仮想プレゼンテーション(virtual presentation)を形成できる軍事訓練シーン向けのデジタル・ツイン・プラットフォームを構築する[24]

著者らは、五感すべてをリアルタイムで正確にシミュレートし、兵士が「戦争の炎を感じる(feel the flames of war)」ことができる[25]、洗練された将来のツイン技術を想像している。彼らは、他の国がデジタル・ツイン技術(digital twin technology)を訓練に適用する中で、現在起こっている他の例も見ている。彼らは、米国宇宙軍から「デジタル・スペース・ツイン(Digital Space Twin)」を構築する契約を獲得した米国企業スリングショット・エアロスペース(Slingshot Aerospace)を強調している。

彼らはウェブサイトから、「この製品は、軌道上の物体のリアルタイム・マッピングと宇宙天気データを物理ベースのシミュレーションと組み合わせて、計画されたミッションが実際の宇宙環境でどのように動作するかをユーザーに示す。」と書いている[26]。Zhang氏とShang氏は、中国軍を訓練するための費用対効果の高い方法として、人民解放軍(PLA)にも同様の能力を導入すると考えている。

4. 研究と開発:Research & Development

Zhang氏とShang氏は、デジタル・ツインが研究開発の新たなパラダイムを生み出したと主張する。以前の物理モデルは多くの手順を必要とし、非常に時間がかかり、コストがかかった。デジタル・ツインにより、「デジタル・モデル‐試験‐修正‐完成」という新しいプロセスが可能になる[27]

著者らは、デジタル・ツインを活用した研究開発について3カ国の事例に注目している。第一に、フランスでは、デジタル・ツイン技術(digital twin technology)を使用して高度なインテリジェント機器テスト・システムを作成し、新型戦闘機の研究開発コストを25%削減したダッソー・アビエーション・カンパニー(Dassault Aviation Company) について言及している。

第二に、英空軍向けにデザインされている英国のBAEシステムズのテンペスト第6世代戦闘機は、コンピューターでシミュレートされたデジタル・ツインと3Dプリントされたモデルを組み合わせて使用しており、その到達目標は戦闘機の開発を簡素化し、スピードアップすることである。2035年までに実用化される予定である。

第三に、米国のロッキード・マーチン社は、航空機の「構造デジタル・ツイン(Structural Digital twin)」を生成するツールとして「航空共通分析ツールセット・データ・マネージャー(CATDM)」を利用している。デジタル・ツインの使用により、人民解放軍(PLA)は次世代の兵器システムをより迅速に開発したいと考えている。

5. 整備:Maintenance

デジタル・ツイン技術(digital twin technology)の使用により、整備が大幅に効率化される。Wang Mingxiao少将は高官であり、デジタル・ツイン技術(digital twin technology)の軍事的適用を加速することの主要な推進者である。特に、彼の研究は、軍事装備の整備におけるデジタル・ツイン技術(digital twin technology)の利点に焦点を当てている。

「解放軍報(PLA Daily)」とのインタビューでWang Mingxiao氏は、「設備に関しては、これは設備保守の透明性が大幅に高まり、完全なライフサイクル管理が可能になることを意味する」と述べた[28]。その到達目標は、特定のハードウェア構成品がいつ、どのように故障するかを正確に予測することである。

機器のすべての構成品を常に監視しているセンサーは、問題が発生するとログを記録する。これにより、デジタル・ツインで使用されるデータの記録が作成され、機器の修理が必要になる時期を正確に予測したり、製品が変更またはアップグレードされた場合の潜在的な整備問題の予測にも役立つ。

デジタル・ツインの利点を語るWang Mingxiao少将

6. 兵站:Logistics

兵站については人民解放軍(PLA)のメディアでは言及されていないが、中国の技術大手、新浪公司の雑誌「軍事ダイジェスト(Military Digest」の「智能化戦戦(intelligent warfare)におけるデジタル・ツイン技術(digital twin technology)の応用」というタイトルの記事で特集されている。そこで著者は次のように書いている。

デジタル・ツイン技術(digital twin technology)をサプライ・チェーン、輸送ネットワーク、兵站業務に適用することで、兵站支援部門が戦場の兵站ニーズを予測・瞬時に把握し、戦場の設備故障や兵站などの問題を高品質かつ効率的に解決できるようになり、兵站の安定化が図れる。支援は智能化戦戦(intelligent warfare)の要件を満たすことができる[29]

その考えは、「智能化戦争の兵站(intelligent war logistics)」には、配分が集中化されず、より柔軟になるため、「オンデマンドで迅速な供給(on-demand and fast supply)」が必要になるということである。行き詰まったサプライ・チェーン管理システムを通過する代わりに、デジタル・ツインを使用することで、必要な資材の予測と展開の両方に迅速に適応できるようになる。ウクライナ紛争における最近のロシア軍の失敗に見られるように、戦闘で勝利を収めるには人や物資の移動が極めて重要である。

結論:Conclusion

人民解放軍(PLA)にとってのデジタル・ツインの潜在的な利点は明らかだが、中国のメディアで説明されている能力の多くは、現在の能力よりも開発の初期段階にあることを理解しておく必要がある。人民解放軍(PLA)は、他の先進国の軍隊と同様に、能力の教育や向上に役立つジェット・エンジンなどのツイン・モデルを構築することができる。

しかし、他の多くの軍事的適用の中でも「戦闘状況を仮想戦場(virtual battlefield)にマッピングできる」または「戦場の兵站ニーズを予測して即座に認識する」というアイデアはまだ現実化されていない。さらに、人民解放軍(PLA)のデジタル・ツイン機能に対する理解と要望の多くは、同盟国だけでなく米国(スリングショット・エアロスペース(Slingshot Aerospace)などの企業)からもたらされている。

デジタル・ツイン技術(digital twin technology)が情報の優位性をもたらし、意思決定の優位性を生み出すことができるという人民解放軍(PLA)の評価は正確である。人民解放軍(PLA)がデジタル・ツイン能力の向上を続けるにつれて、可能な限り最善の戦略をより適切に準備し、弱点を補強し、台湾であろうと他の場所であろうと紛争が始まったら迅速に適応するという目標に近づくことになるだろう。

しかし、米国にはパートナーや同盟国という大きな利点がある。メタバース全体と同様に、デジタル・ツインの主要な進歩は1つの国からだけで起こるのではなく、より大きな世界的な取り組みの一部となるだろう。国際規範を形成し、米国のデジタル・ツイン技術(digital twin technologies)への中国のアクセスを制限することは、米国の優位性を維持し、おそらく中国の軍事紛争を抑止しながら、人民解放軍(PLA)による戦争利用を防ぐのに役立つ可能性がある。

***************************************

本書で表明または暗示されている意見、結論、および推奨は、あくまでも著者個人のものであり、必ずしも航空大学校、空軍省、国防総省、またはその他の米国政府機関の見解を代表するものではない。公開許可済み:配布は無制限。

ノート

[1] “What Is a Digital Twin? | IBM.” Accessed January 27, 2023. http://www.ibm.com/topics/what-is-a-digital-twin.

[2] To learn more about the origin of the digital twin concept read “Digital Twins and Living Models at NASA” https://ntrs.nasa.gov/citations/20210023699.

[3] 「バトルバース(battleverse)」とは、中国が人民解放軍(PLA)のために特別に構築した別のメタバースを構築することを目指していることを指す。「バトルバース(battleverse)」については「バトルバースへ:中国のメタバース戦争(Enter the Battleverse: China’s Metaverse War)」(https://digitalcommons.usf.edu/mca/vol5/iss1/2/)を参照のこと。

[4] National People’s Congress Wang Mingxiao: Speed up the military application of digital twin technology. PLA Daily. Accessed March 8 2023. http://www.81.cn/zt/2021nzt/2021qglh/lhjs/9993836.html.

[5] 「決心の支配性(decision dominance)」とは、「指揮官が敵対者よりも効率的に感知、理解、決定、行動、評価できる望ましい状態」である。「情報の優位性(information advantage)」とは、「あらゆる軍事能力の活用を通じて、関連する行為主体の行動、状況の理解、意思決定に関して軍隊が主導権を握っている状態」である。これらのコンセプトについて詳しくは、イアン・サリバン(Ian Sullivan)の著作「情報優位性についての考え(Thoughts on Information advantage)」(https://community.apan.org/wg/tradoc-g2/mad-scientist/m/articles-of-interest/395306)とThe Lightning Pressによる「INFO1:情報作戦とその能力スマート・ブック(情報作戦とその他の関連する情報活動)(INFO1: The Information Operations & Capabilities SMARTbook (Guide to Information Operations & the IRCs))」(https://www.thelightningpress.com/information-advantage-and-decision-dominance/.)を参照のこと。

[6] Zhang Zhen; Shang Dunmin. “Digital Twin Technology: ‘Outsmarting’ the Future Battlefield.” PLA Daily. Accessed January 11, 2023. http://www.81.cn/jfjbmap/content/2022-07/29/content_320893.htm.

[7] National People’s Congress Wang Mingxiao: Speed up the military application of digital twin technology. PLA Daily. Accessed March 8 2023. http://www.81.cn/zt/2021nzt/2021qglh/lhjs/9993836.html.

[8] “The Central Committee of the Communist Party of China and the State Council issued the “Overall Layout Plan for the Construction of Digital China”. People’s Daily. Accessed March 8, 2023. http://paper.people.com.cn/rmrb/html/2023-02/28/nw.D110000renmrb_20230228_3-01.htm.

[9] “14th Five-Year Plan for National Informatization.” DigiChina. Translated by Stanford Cyber Policy Institute Freeman Spagli Institute. Jan. 24, 2022. https://ssrn.com/abstract=4190967

[10] Ibid.

[11] Ibid.

[12] Ibid.

[13] Ma, Si. “51World to Accelerate Development of Digital Twin”. China Daily. Accessed January 11, 2023. http://www.chinadaily.com.cn/a/202208/23/WS6304903ba310fd2b29e73d12.html

[14] Ibid.

[15] “Ultra Integrated Digital Twin Platform Officially Released. Aliyun. Accessed January 15, 2023. https://developer.aliyun.com/article/988967.

[16] Chengyi Expressway is an important section of the Chengdu-Chongqing Ring Expressway in the national expressway network

[17] Ibid.

[18] “Tencent Releases Digital Twin Cloud, Four Core Technologies Accelerate the Twinning of All Things.” Tencent Cloud. Accessed March 20, 2023. https://cloud.tencent.com/developer/news/962100

[19] Ibid.

[20] Zhang Zhen; Shang Dunmin. “Digital Twin Technology: ‘Outsmarting’ the

Future Battlefield.” PLA Daily. Accessed January 11, 2023.

[21] Ibid.

[22] Ibid.

[23] Pang Xuefan; Wang Zhenyu. “Application of Digital Twin Technology in Intelligent Warfare.” Military Digest. Accessed January 23, 2023. https://www.secrss.com/article/46111.

[24] Zhang Zhen; Shang Dunmin. “Digital Twin Technology: ‘Outsmarting’ the Future Battlefield.” PLA Daily. Accessed January 11, 2023.

[25] Ibid.

[26] Slingshot Aerospace. “Slingshot Aerospace Announces Industry’s First Digital Space Twin; U.S. Space Force Space System Command’s SpaceWERX Awards $25 Million Contract to Slingshot Aerospace.” Accessed January 26, 2023. https://slingshotaerospace.com/newsroom/slingshot-aerospace-stratfi.

[27] Zhang Zhen; Shang Dunmin. “Digital Twin Technology: ‘Outsmarting’ the Future Battlefield.” PLA Daily. Accessed January 11, 2023.

[28] National People’s Congress Wang Mingxiao: Speed Up the Military Application of Digital Twin Technology. PLA Daily. Accessed March 8 2023. http://www.81.cn/zt/2021nzt/2021qglh/lhjs/9993836.html.

[29] Pang Xuefan; Wang Zhenyu. “Application of Digital Twin Technology in Intelligent Warfare.” Military Digest. Accessed January 23, 2023. https://www.secrss.com/article/46111.