Sabrewing社の貨物無人機-空軍の挑戦

米空軍ではAgility Prime ProgramというFlying Carの民間開発促進事業を立ち上げ、電動のフライングカーの技術を無人の貨物機や無人の救難救命ミッションに使う開発が進められています。米国では特に無人機の開発を促進するために、いろいろな新しい調達制度を作ってきています。そこでもう既にフライングカーに着目しているところに米国のスピードを感じます。これは貨物機だけでなく救難救命機への使途も検討されています。これは戦場の負傷した兵士の救出だけでなく、大規模災害時にもヘリコプターよりも早く輸送ができるという点で我が国でも検討するべきビークルであるようにも思います。


Sabrewing社の貨物無人機-空軍の挑戦
米空軍契約の「Rhaegal」無人貨物機は新たな軍事ミッションを可能とする。
By Jeremy Hsu IEEE SPECTRUM 1 May 2020

ヘリコプターのように離陸したり着陸したりできる電気式貨物用ドローンが、「フライングカー」技術が米空軍のコンファレンスで注目を集めている。

カリフォルニア州カマリロに拠点を置くスタートアップSabrewing社は、米空軍の「Agility Prime」 事業(米空軍のFlying Carの民間開発促進事業)で初めて契約を獲得した「Rhaegal cargo drone」をロールアウトした(Rhaegal:龍の一種を意味する英語の古語)。エドワーズ空軍基地での初の飛行テストを条件が整えば、Rhaegal-A無人機は 「Agility Primeデモンストレーションを実施し、「衝突の可能性を検知して回避する」、「GPS信号なしで操作する」、「模擬戦場における救命能力」を試験する。

Sabrewing社のCEO、Ed De Reyesによれば、「50カイリ離れている戦場に通常のヘリコプターで30分かかるところをRhaegal-A無人機は15分で到達できるので、理論的にはゴールデンアワーの時間内に全ての犠牲者を救出し多くの命を救うことができる。」としている。(ゴールデンアワー:外傷後の時間であり、迅速な内科的および外科的治療が死亡を予防する可能性が最も高い時間を指す)

もちろん米軍のヘリコプターや救難救命に使用される航空機の中には、Sabrewingドローンの最高時速230マイル(時速370キロメートル)に匹敵する速度で飛行できるものもある

。しかし、ドローンの利点は、低価格であること、敵の砲火の下、有人のヘリコプターや航空機を危険に晒すことなく危険な医療避難を行えることにある。

Rhaegal-A無人機は、タービンエンジンから電気を受け取る電気モーターで駆動される4つのダクト付きファンで飛行する。これにより、ヘリコプターのように垂直離着陸を行う場合には2,700ポンド(1,225キログラム)まで、飛行機のように滑走路から離着陸する

場合には5,000ポンド(2,268キログラム)まで運搬することができる。このような揚力は米空軍の避難要求を満たすのに十分である。

Rhaegal-A型機は、Sabrewing社が商業用と軍事用の両方の顧客に販売しようと計画している大型のRhaegal-B型機の半分の大きさしかない。Rhaegal-Aはカスタムコンテナしか運ぶことができないが、Rhaegal-Bは通常航空会社と航空貨物会社の両方で使用される2つの標準LD-1コンテナを運ぶことができる。レーガルAとは異なり、レーガルBは、1つのタービンが故障した場合の冗長性と追加の安全性のために、最大2.8メガワットの電力を供給する二つのタービンエンジン(サフラン・ヘリコプター・エンジン製) を持つ。

Sabrewing社の構想では、こうした標準的なコンテナを軍の任務に合わせて改造し、心臓や呼吸のモニター、薬、航空医の座席、負傷者を運ぶための医務室などを備えたミニ病院のスイートにしたいとしている。レーガル-Aのテストがうまくいけば、Rhaegal-Bは最終的に6人の死傷者と2人の航空医を運ぶかもしれない。「飛行機に乗ってから病院に行くまで直接医療処置を受けられないということはなくなる」とSabrewing社のCEO、Ed De Reyesは言っている。

空軍はまた、無人機が自律的に衝突を回避できるようにするSabrewing社の探知・回避システムを評価したいと考えている。Rhaegal-Aは、できるだけ安全に飛行するために、350メートル先を見通せるレーダー、約一マイル(1.6 km)先の航空機を探知できるカメラシステム、レーダー、夜間着陸用赤外線探知装置、送受信GPSシステムなど、10個のセンサーを使っている。

空軍がこの無人機について興味を持っているもう1つの点は、Rhaegal-Aが、GPS信号が妨害されたりスプーフィングされたりするような敵対的な困難な環境でうまく機能するかということである。Sabrewing社は、ドローンのGPS代替技術の詳細を明かしていないが、De Reyes氏によると、「これは昔からの技術の21世紀バージョンであり、航空機のエレクトロニクスとコンピューティング能力の近代的な技術を利用している。依然として一部のドローン、航空機、船舶、潜水艦、および宇宙船は、運動測定に基づいて位置を計算する安価で正確なセンサーを備えた慣性ナビゲーションシステム(慣性誘導システムとしても知られる)を有効に利用しているように」と述べている。

Sabrewing社はまた、AIベースのシステムをテストしており、これは貨物用ドローンが特定の着陸地帯にいる人や動物、車両などの障害物を認識するのに役立つ。Rhaegal-Aは、着陸地帯が潜在的に危険であると認識した場合、そこから一旦離脱して、着陸する機会がないか着陸地帯を絶えずチェックする。一定の時間内に危険が去らなければ、無人貨物機は2次着陸地帯に移動する。

Rhaegal-Aはすでに離陸から着陸までの飛行計画に沿って自律的に飛行することができるので、連邦政府から任命された人間のオペレーターがいるにもかかわらず、ドローンのコントロールはほとんどボタンを押すことと、キーボードを使ってドローンが自分で命令を出すことぐらいしかない。無人貨物機の飛行はすべてコンピューターが制御しており、したがって操縦者が誤って対気速度を失って立ち往生したり、雷雨や建物の中に飛び込んだりさせてドローンを危険にさらすことはない。

Rhaegal-Aのモジュール式デザインは、軍事用途から見ても商業用途から見ても魅力がある。Sabrewing社はドローンを4つのパーツ (機首部分、貨物と翼、エンジンベイ、尾翼) に分解して、組み立て直すことができるようにしている。これにより、欠陥部分を取り除き交換することが可能になり、24時間以内に貨物用ドローンを再稼働させることができる。

Sabrewing社チームは当初、Rhaegal貨物用ドローンを軍事目的を念頭に置いて設計しなかった。しかし米軍関係者からアプローチを受け、最終的にAgility Primeプログラムに応募することを決定した。最近Small Business Innovation ResearchのフェーズII契約 (二年間で325万米ドル相当) を獲得している。

このように軍事契約と政府契約に軸足を移すことは、COVID-19の世界的大流行による経済混乱を回避するのに役立つかもしれない。空軍との契約以外にも、Sabrewing社は、米国の友好国の匿名の顧客から65機の貨物用ドローンを受注している。民間航空貨物市場は、パンデミックの間、オンライン配送に対する人々の要求が航空貨物輸送を必要とするからそれほど悪くなっていないとDe Reyes氏は語っている。