米空軍はAIによる予測メンテナンスを拡大

Air Force Expands AI-Based Predictive Maintenance

 

ワシントン: 米空軍では、人工知能(AI)と機械学習を利用した「予測メンテナンス」を、さらに12の兵器システムに拡大する計画だと、兵站/エンジニアリング/部隊保護担当副参謀長のウォーレン・ベリー中将は述べている。更にウォーレン・ベリー中将はミッチェル研究所において「予測メンテナンスは空軍にとって本当にゲームチェンジャーになる。」、「突然にでなく、予定して計画的にメンテナンスが実施できるようになる効果は大きい。そうすることで即応性が向上し、戦闘能力が向上すると確信している。」と語った。「我々は長い間、Fly-to-fail (航空機が降りてくるのを待って、機体が止まったところまで部品を持って行って修理する)方式で整備してきた。しかし、今日のこのような場当たり的で、また時間もかかるメンテナンスのやり方は、ロシアや中国がサイバー攻撃や米軍基地への攻撃などによって軍の通信が妨害されるようなことも想定される将来の紛争では不可能である。空軍では「攻撃を受けている状況での兵站業務」を重要な優先事項の1つに掲げ、2021年にはさまざまな取り組みに30億ドルの予算要求をしている。ベリー中将によると米空軍は、2つの重要な予知保全計画、すなわちCondition-Based Maintenance(CBM+)とEnhanced Reliability Centered Maintenance(ERCM)を推進する中で得られた成功事例と教訓を、DODのJoint Artificial Intelligence Center (JAIC)と共有しているとのことである。
米空軍では前述のCBM+を使用しており、C-5、KC-135、B-1の3機種を対象にモニタリングして既に18ヶ月から24ヶ月が経過していて、その効果が出始めている。
ERCMについては、我々の情報システムや現在のメンテナンス情報システムのデータ、故障率や航空機のミッション特性や故障原因の理解の上に構築される人工知能と機械学習に依るものとなっている。」とベリー中将は説明した。ベリー中将は、リストを手元に持っていないと述べたが、年末までに12種類の兵器システムのメンテナンスがERCMに統合される対象になると述べた。
ベリー中将によると、空軍が行う兵站業務には他にも多くの変化があるが、それには将来的な観点が求められる。特に欧州と太平洋地域の戦域における補給品の最適な配備方法であり、太平洋地域では同盟国が地理的に分散しているため、特に問題がある。我々の資産の事前配置についての考え方を根本的に変える必要がある。そのためには、パートナーや同盟国に単に資材や設備の事前配置を求めるのではなく、運用ベースを契約するサポートによるものでも、実際に利用されているサポートでも、そのキャパシティとケーパビリティを事前配置するという考え方が必要としている。またベリー中将は「過去に持って行っていたものを整備の現場に持っていくことはできない。これからは使うものの多くはその現場になければならない。」と付け加えている。
そのためには、これらの地域の同盟国や友好国と協力する新たな方法が必要になるだろうと述べ、欧州抑止イニシアティブと太平洋抑止イニシアティブが役立つかもしれないと指摘した。「しかし、もう少し根本的なところで進めておくべきことがある。」とベリー中将は言っている。
最後に、ベリー中将は、指揮統制の改善は、「Adaptive operation and Agile combat employment」を確立するための空軍のあらゆる努力の基礎になると強調した。ランド研究所が2019年に行った「Distributed Operation」に関する研究では、「この種の分散型航空作戦は、冷戦終結後の空軍の運用方法に大きな変化をもたらした。」と説明している。

ベリー中将によると、「Log(igitics) C2」は、Breaking Defenseの読者がよく知っているように、米空軍のもう1つの最優先課題であるJoint All Domain Command and Control (JADC2)に関係しているという。

「JADC2は、マルチドメインの運用において意思決定の優位性を持つことを目的としている。したがって、運用継続とロジスティクスは運用者に従うものであるから、ロジスティクスは、マルチドメインの運用をサポートするためにJADC2と同様に意思決定の優位性を持ち、運用者に合わせてマルチドメイン運用をサポートすることができるようにならなけければならない。」これには、古いITシステムを、クラウド・ストレージや、F-35のような航空機に搭載されたセンサーや特定のメンテナンスを行うマシンからなどの複数のセンサーからのデータ融合ができるような最新のシステムへの換装も必要になる。
「そこでのデータは、回りで何が起きているのか、また、基地やデポ、より広範な供給システムなど、より広範なところで何が起きているのかを認識するための鍵となる。」と、ベリー中将は言っている。