海上を盲目で飛ぶ:日本の海上航空能力の発展

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コロナ禍の影響で1か月遅れとなった各省の令和3年度の概算要求が出そろった。防衛省の概算要求の概要は「我が国の防衛と予算-令和3年度概算要求の概要-」で確認できるが、ニュース報道によると、防衛省の予算要求の総額(過去最大の5兆4898億円)と、来年度の目新しい事業、つまり、宇宙やサイバー攻撃、電子戦など新領域に対応するための「宇宙作戦群(仮称)」や「自衛隊サイバー防衛隊(仮称)」「電子作戦隊(仮称)」といった組織に注目が集まっている。しかし、南西での事態の対処するための陸・海・空自衛隊の島嶼地域に対応するための防衛力整備は整備途上にある。中でも、F35Bの搭載を可能とする護衛艦の改修が注目を浴びているように、航空と海上優勢を確保するための海洋における航空戦力をどのように整備していくかが課題となっている。

ここで、Texas National Security Reviewに掲載されている、米国海軍戦争大学、海上自衛隊幹部学校、笹川平和財団が共同で主催したインド太平洋地域の海洋戦略に関する会議から生まれたラウンドテーブルを契機として執筆された論文のうち、海洋航空戦力について紹介する。論稿では、自衛隊が抱える抱える課題と課題解決のための方策について触れている。(軍治)

海上を盲目で飛ぶ:日本の海上航空能力の発展―Flying Blind at Sea: Growing Japan’s Naval Aviation Capability

日向 亮 2020年10月2日

日向亮(Ryo Hinata-Yamaguchi、ツイッター:@tigerrhy)は、釜山大学校経済国際貿易学部グローバル学科客員教授、太平洋フォーラム非常勤教授を務めている。

近年、日本は、海上自衛隊(JMSDF)の部隊構造と作戦上の即応性(readiness)の両方を強化して、国の領土、隣接、排他的経済水域だけでなく、重要な海上後方連絡線(sea lines of communication)も防衛しようと努めてきた。海上自衛隊(JMSDF)の航空能力(aviation capabilities)には、水上艦(surface combatants)と潜水艦の強化とともに、注目すべき発展が見られた。日本は、海上哨戒(maritime patrol)、掃海、人道支援、災害救援のためのアセットのアップグレードに加えて、「いずも」型ヘリ搭載護衛艦(ヘリ搭載駆逐艦:helicopter destroyers)をF-35Bの発着のために改造することで、船上での戦術能力を追求している。日本の海上航空戦力(naval airpower)の発展は進化的であり、潜在的に革命的であり、拒否的抑止(deterrence by denial)から懲罰的抑止(deterrence by punishment)への移行を示している。それでも、新しいアセットが確固たるコンセプト上の基盤やドクトリン上の基盤のない多目的プラットフォームとして組み立てられているため、日本の海上航空戦力(naval airpower)の将来については疑問がある。
群島国家として、日本にとって海空の優勢は死活的なものである。自衛隊(JSDF)の即応性(readiness)の進展は勇気づけられるものであるが、適切な攻撃能力(offensive capabilities)なしに日本の戦略的フロンティアを拡大することは、より多くの脆弱性を生み出すだけである。ギャップを埋めるために、日本は、既存の能力と強化された艦載航空アセットを組み合わせることにより、制海と海上拒否のための拡張された多次元の海上航空戦力(naval airpower)を構築する必要がある。

日本の海上航空戦力の発展:Developments in Japan’s Naval Airpower

海上自衛隊(JMSDF)は1954年の発足以来、大日本帝国海軍の制度的伝統のいくつかを継承したが、より防御的な戦略と能力への根本的なシフトを伴うものであった[1]。当然のことながら、日本の海上航空戦力(naval airpower)は、海上哨戒と捜索・救助に焦点を当て、攻撃的な側面を最小限に抑えた任務ベースの枠組みで開発された。自衛隊(JSDF)の海上航空能力(naval aviation capabilities)は、大日本帝国海軍のような攻撃的力量はなかったけれども、それらは、高度な磁気探知機、ソナー、ソナー・ブイ、レーダーシステムを装備した固定翼航空機、回転翼航空機などの以前には利用できなかった技術に恵まれていた。新技術は海上自衛隊(JMSDF)の優先事項に適合し、米国の海軍航空アセットの積極的な近代化と日本の固有の防衛産業の発展を促進する施工免許につながるものであった。

自衛隊(JSDF)の海上航空能力(naval aviation capabilities)は当初、海上自衛隊(JMSDF)の固定翼航空機と回転翼航空機の両方と、航空自衛隊(JASDF)のマルチロール/サポートジェットに依存していた陸上ベースのものであった。冷戦中の自衛隊(JSDF)の開発は比較的控えめで、米国主導の作戦計画に準拠して機能するようにデザインされていた[2]。しかし、海上自衛隊(JMSDF)は当初から対潜戦用のヘリ空母の取得に強い関心を抱いており、1950年代初頭に米海軍のコメンスメント・ベイ級の対潜戦用の護衛空母の取得と改造に関する議論から始まり、その後、 1950年代後半から1970年代初頭にかけて、新しいヘリ空母の自国での建造に焦点を当てたさらなる提案につながった[3]。その後、1980年代に、日本はより戦術的な戦闘作戦を含むように海上航空戦力(naval airpower)を拡大するためにAV-8BハリアーIIの取得をめぐって検討した。それにもかかわらず、政治的および財政的な逆風だけでなく、水上戦闘艦および攻撃型潜水艦の優先順位付けのために、取得は実現しなかった。代わりに、日本は、4950トンの「はるな」型や5200トンの「しらね」型ヘリ搭載護衛艦(ヘリ搭載駆逐艦:helicopter destroyers)など、複数の対潜ヘリコプターを発着艦できる護衛艦(駆逐艦:destroyers)に決着を見た。1980年代以降の海上自衛隊(JMSDF)の駆逐艦の多くは、対潜水艦戦(anti-submarine warfare)のために少なくとも1機の回転翼航空機が発着艦するように建造された。

冷戦後の安全保障環境は、日本に中国の急速な軍事近代化とますます積極的な行動、北朝鮮のハイブリッド戦争と戦略核兵器の開発に対する軍事的即応性(readiness)の継続的な多様化、および日本隣接地域でのロシアの定期的な空軍および海軍演習などの新たな課題を提示することになった。さらに、非国家主体からの脅威を含む中東の問題は、日本の経済的安全保障にとって重大な懸念事項である。日本にとって、冷戦後の課題は、1995年、2004年、2010年、2013年に防衛計画の大綱(National Defense Program Guidelines)を改訂することにより、防衛態勢を再構成する触媒となった。防衛大綱改訂間隔の短縮は、日本が新たに流動的な安全保障環境の自衛隊(JSDF)の即応性(readiness)を整えようとする日本の新たな試みを反映している[4]

25年以内に防衛計画の大綱(National Defense Program Guidelines)を4回改訂したことで多くの変化をもたらしたが、それらは5つの分野、南西地域への戦略的焦点のシフト、航空優勢と海洋優勢(air and maritime supremacy)を優先、弾道ミサイル防衛、水陸両用作戦(amphibious operations)能力、多国間協力で一貫していた。海上自衛隊(JMSDF)にとって、これは制海権と海上拒否のための火力、戦力投射、速度の追求を意味している。

日本の安全保障戦略の進展は、海上自衛隊(JMSDF)の航空アセットの世代交代と一致するものであった。2000年代から、海上自衛隊(JMSDF)の主力製品であるP-3C、SH-60J、およびMH-53Eは、徐々にP-1、SH-60K、およびMCH-101に置き換えられていった。海上自衛隊(JMSDF)の航空機を発着する船舶にも大きな進展が見られ、2009年には13,950トンの「ひゅうが」型ヘリ搭載護衛艦(ヘリ搭載駆逐艦:helicopter destroyers)、2013年には19,500トンの「いずも」型ヘリ搭載護衛艦(ヘリ搭載駆逐艦:helicopter destroyers)が就役し、「はるな」型と「しらね」型のヘリ搭載護衛艦(ヘリ搭載駆逐艦:helicopter destroyers)に取って代わった。新しいハードウェアは海上自衛隊(JMSDF)の戦略を根本的に変えることはなかったが、それでも海上自衛隊(JMSDF)の海上哨戒(maritime patrol)、兵站(logistics)、捜索・救助(search and rescue)の能力を大幅に強化することになった。

戦略と能力の開発は間違いなく重要であったが、問題は残っている。時が経つにつれて、海上自衛隊(JMSDF)は海上拒否と制海の能力を発揮するようになったが、戦力投射は制限されたままであった[5]。その結果、日本にとって新たな問題が生じた。改訂された防衛計画の大綱の下で、日本は戦略的フロンティアを拡大し、「自由で開かれたインド太平洋戦略(Free and Open Indo-Pacific Strategy)」の支援の下で「海上秩序」を確保しながら、積極的に領土を防衛した。しかし、日本の新しい防御範囲は、中国の接近阻止・領域拒否(A2 / AD)の範囲内にあり、つまり、適切な攻撃能力のない日本の戦略的フロンティアの拡大は、脅威を効果的に防御および抑止する能力を損なうだけでなく、新しい脆弱性を生み出すものである。

日本は1945年以来、戦争や直接攻撃から救われてきたが、それでもなお、断定的で挑発的な行動にさらされてきた。海上では、中国、北朝鮮、ロシアの政府船が偽装して、時には日本の海域に入った。空中では、2010年以降、スクランブル(要撃:fighter intercepts)が指数関数的に増加し、2016年には1,168回のスクランブルでピークに達し、中国の航空機に対して74%、ロシアの航空機に対して26%であった[6]。国の近くでの侵入と接近遭遇は直接の紛争につながっていないが、「グレーゾーン」状況の増加は、これまでの抑止措置が失敗したことを明確に示している。

「グレーゾーン」の状況に対処する要求が高まっているにもかかわらず、南西地域では航空基地が深刻に不足している。海上自衛隊(JMSDF)と航空自衛隊(JASDF)は九州と沖縄の7航空基地を含む33航空基地の航空基地を運用しているが、それでも東シナ海のホットスポットからは離れている。海上自衛隊(JMSDF)第5航空群、航空自衛隊(JASDF)第9航空団、第603飛行隊を収容する航空自衛隊(JASDF)基地は、尖閣諸島からまだ420kmの距離にある。下地島空港での新航空基地の建設やローテーション作戦の見通しについての議論が提案されているが、論争を呼んでいる。南西地域の航空基地の不足は、「グレーゾーン」の状況ではすでに問題となっており、不測の事態で施設が損傷した場合はさらに大きな問題が発生することとなる。

日本は、海上航空戦力(sea-based airpower)にさらに注意を払うことにより、ギャップを埋めるための措置を講じた。安倍政権が2018年初頭に防衛計画の大綱を抜本的に改訂する意向を表明した後、与党自由民主党は離島の防衛と捜索・救助のための短距離垂直離着陸するための「多目的空母:multi-purpose aircraft carriers」の運用を含む「クロスドメイン防衛:cross-domain defense」の提案を取り上げた。党の提案は多くの議論を引き起こしたが、2018年12月に発表された実際の防衛計画の大綱と中期防衛力整備計画は、「いずも」型ヘリ搭載護衛艦(ヘリ搭載駆逐艦:helicopter destroyers)が短距離垂直離着陸戦術航空機を発着艦するように転換されると単純に述べた[7]。2020年の予算では、「いずも」型ヘリ搭載護衛艦(ヘリ搭載駆逐艦:helicopter destroyers)の改造に2億9千万ドル、F-35Bステルス戦闘機6機の購入に7億2500万ドルが割り当てられ、綿密な計画が実現し始めた[8]

船上航空能力(shipborne aviation capabilities)の強化は、敵対者を日本の領土、隣接、排他的経済水域および海上後方連絡線(sea lines of communication)から保護および遠ざけるための懲罰的抑止へのシフトを示している。しかし、自衛隊(JSDF)の海上航空能力(naval aviation capabilities)の発展は、特に日本がどのように懲罰的抑止を調整し、海上航空戦力(naval airpower)がその全体的な戦略にどのように適合するかにおいて、答えよりも多くの質問を生み出すことになった。

日本の海上航空戦力の新段階:A New Phase in Japan’s Naval Aviation

日本の海上航空戦力(naval airpower)の、懲罰的抑止へのより大きな焦点への移行は、大規模な再構成を伴うものである。とりわけ、日本の地政学的特性と脅威と脆弱性の本質を考慮すると、日本固有のエアシーバトル・ドクトリンと海上・航空優勢のための即応性(readiness)が死活的なものとなる[9]。これに関連して、F-35Bの調達と「いずも」型ヘリ搭載護衛艦(ヘリ搭載駆逐艦:helicopter destroyers)の改修は、日本の海上航空戦力(naval airpower)に新たな次元を付け加えることになる。ただし、新しいアセットは、強固なコンセプト上の基盤とドクトリン上の基盤のない多目的プラットフォームとして構成されているため、能力の実際の即応性(readiness)への変換はまだ始まったばかりである。

F-35Bは、限られたスペース内の地域で離発着するための実力を備えたステルス性を持った多目的プラットフォームとして魅力的な特徴を持っている。それでも、日本の航空機の意図された用途は不明であり、艦隊防衛、水陸両用作戦(amphibious operations)のための火力支援、および空対空防衛はすべて検討下にある。あいまいさは、F-35Bが海上自衛隊(JMSDF)ではなく航空自衛隊(JASDF)によって多目的機として運用されるという事実に起因しているものである。確かに、航空自衛隊(JASDF)のオプションは、海上自衛隊(JMSDF)を戦術戦闘機の作戦に適応させるよりも、航空自衛隊(JASDF)を船上作戦に適応させる方が安価で迅速であるため、短期的には費用効果が高く効率的であった。しかし、航空自衛隊(JASDF)はF-35Bを次世代の多目的プラットフォームとして特定しており、船上任務は航空機が提供する多くの任務の一部にすぎない。したがって、F-35Bは、「いずも」型ヘリ搭載護衛艦(ヘリ搭載駆逐艦:helicopter destroyers)でのみオンデマンドを基本として運用するため、海上自衛隊(JMSDF)の信頼性が、やや矛盾している。

F-35Bをホストする船舶に関しては不確実性がたくさんある。「いずも」型の改造は、新しい専用船や小艦隊の建造と作戦に伴う莫大な費用と比較して、日本の船上航空能力を強化するための最も安価で迅速な選択肢であった。それでも、実際の有効性には疑問がある。 F-35Bの発着艦の可能性については当初から考慮すべき点があったが、「いずも」は主に海上哨戒を可能にするようにデザインされており、より適していた。改修を行ったとしても、戦術作戦の実力は、自衛と小規模な火力支援にのみ十分である。その結果、限られた能力容量は、対潜水艦戦(anti-submarine warfare)のための船の本来の機能が限られた戦術能力によって犠牲にされるゼロサムバランスを生み出し、逆もまた同様であった。

主要な問題は、戦略上および作戦上の要求が改修された「いずも」の能力を超えた場合に日本が何をすべきかということである。最も重要なタスクは、艦船と船上航空のドクトリン上の機能を決定することである。一方で、優先順位が制海と海上拒否である場合、戦術航空機用の専用の空母が最良の選択肢となるであろう。主な利点は、船がより効果的な艦隊の防空、火力支援、および縦深打撃のためのより速い応答性で前方展開されるかなりの数と多様な航空機を離発着する能力を持っているということである。一方、水陸両用作戦(amphibious operations)に焦点が当てられている場合、水陸両用輸送艦(強襲揚陸艦:amphibious assault ships)は、陸上自衛隊(JGSDF)の水陸両用部隊を配備し、近接航空支援のためにF-35Bを発艦するためのもっともらしい選択肢である。注意点は、輸送艦(強襲揚陸艦:amphibious assault ships)の能力容量と機能により、制海と海上拒否ではなく、自衛と火力支援のための海上航空(naval aviation)が増えるということである。

代わりに、日本は、海上航空(naval aviation)および水陸両用作戦(amphibious operations)の能力における最近の開発を収束させる多目的船を選ぶことができる。それでも、柔軟性は必然的に航空能力と水陸両用能力のゼロサムバランスを生み出し、船舶は「多芸は無芸(jack of all trades but master of none)」ということになる。警告にもかかわらず、改造された「しずも」は、自衛隊(JSDF)の将来の需要と船上航空の適用をテストし決定するための移行プラットフォームを果たす可能性がある。

F-35Bや新しい船などの新しい道具は、懲罰的抑止能力を大幅に強化するが、海上自衛隊(JMSDF)の現在の能力を強化するようにデザインされており、現在の能力を置き換えるものではない。開発にかかわらず、海上哨戒は引き続き重要な任務であり、敵対者の対抗手段に対処する能力を強化するため、海上自衛隊(JMSDF)にとってより重要になるであろう。特に中国、北朝鮮、ロシアによる核攻撃や弾道ミサイル潜水艦の開発により、海上哨戒の課題は依然として現実のものとなっている。海上哨戒の能力を質的および量的に強化する次世代の能力への関心がより高まるであろう。

長期的な将来の技術開発についても考慮する必要がある。特に、無人航空機システムは、有人システムの生理学的および技術的制約を回避する上で多くの利点を提供する。将来的には、人工知能(AI)の開発と適用により、無人航空機の有用性が大幅に向上するだろう。船上無人航空機は、海上哨戒だけでなく、火力支援、給油、打撃能力にも大きな関心を寄せることだろう。

防衛計画策定上のジレンマ:Defense-Planning Dilemmas

日本の海上航空戦力(naval airpower)は現在ターニングポイントにある。日本の海上航空(naval aviation)での即応性(readiness)を強化するためにはさらなる開発が必要であるが、東京の防衛計画策定は依然として政治、官僚主義、および資源によって厳しく制約されている。

政治的制約は、憲法第9条と、防衛関連の問題をめぐる定期的な論争から生じている。確かに、今日の政治的障壁は過去ほど手ごわいものではなく、厳しい安全保障環境は日本の防衛手段を強化する必要性に信憑性を与えている。それでも、政治的および法的要因は、日本の攻撃的戦略と能力の境界を形成し続けるであろう。日本政府は防衛目的で攻撃的能力を創造的に正当化することができるが、戦略的打撃などの戦略的な攻勢はすべて、「自己防衛」と「必要最小限の武力行使」の境界を超えていると見なされるであろう[1]

海上自衛隊(JMSDF)の海上航空戦力(naval airpower)の大幅な進歩を妨げる予算上の制約がある。海上航空能力(naval aviation capabilities)は資本集約的である。日本はすでに大きな予算上の課題に直面しており、東京が航空機搭載型護衛艦(空母)または輸送艦(強襲揚陸艦:amphibious assault ships)の建造を選択した場合にのみ、船舶、航空機、および戦闘と護衛群を形成する補給船に必要な投資と作戦および維持のコストを考えると、困難は増大することになる。予算の問題は、日本の固有の防衛調達システムの高価な本質によって悪化する。海外からの既製(COTS)の購入について議論することはできるが、そのような購入は国内の防衛産業からの深刻な反発を引き起こすであろう。あるいは、日本は、艦船製造業者との統合開発プログラムを通じて船舶を建造することもできる。しかし、技術的主権と計画策定の両方に問題がある。

日本が費用を負担できるかどうかは、文脈が求められる。防衛省が現在の予算枠内で国のGDP上限の1%を自主的に課した海上航空(naval aviation)用の専用船を購入できるかどうかが問題である場合、他の機能と自衛隊(JSDF)の優先順位の大きなトレードオフが行われない限り、答えはノーである。しかし、日本に財政能力容量があるかどうかという質問であれば、答えはイエスである。プロジェクトが必要であるとみなされる限り、防衛予算は増分需要ベースで上限を超えて増加する可能性がある。

他の主要なリソースの制約は、人的リソースに関係している。自衛隊(JSDF)に所属する25万人の男女のうち、15万人が陸上自衛隊(JGSDF)に所属しているのに対し、航空自衛隊(JASDF)と海上自衛隊(JMSDF)には46,000人しかいない。航空優勢と海洋優勢(air and maritime supremacy)のための新しい能力の大規模な調達と拡張は、必然的に、新しいプラットフォームを運用および維持するためにかなりの数の人員を必要とする。海上自衛隊(JMSDF)の人員を増やす努力がなされているが、採用と維持の問題は即応性(readiness)の大幅な改善を制約するだろう。

制約を考慮すると、日本の海上航空戦力(naval airpower)を拡大することは、主要な防衛計画策定のジレンマを生み出すことになろう。一連の「グレーゾーン」の状況に直面する場合、防衛計画担当者は、漠然とした提案につながる可能性のあるさまざまな要因の集まりを考慮する必要がある。したがって、海上自衛隊(JMSDF)の海上航空戦力(naval airpower)の拡大に関する議論は、費用対効果に焦点を当て、自衛隊(JSDF)の防衛計画策定と即応性(readiness)を損なうだけの威信に焦点を当てたハードウェア中心の空想を避けなければならない。

死活的な問題の1つは、船上航空能力が実際に適切な効果をもたらすかどうかである。船上航空の強みは、その一定のカバレッジ、速度、および柔軟性にある一方で、航空機と船舶の両方が、対艦および対艦システムから電磁機能に至るまでの脅威に直面した、敵対者の接近阻止・領域拒否(A2 / AD)にさらされている。このような背景から、船上航空機能を強化することのコストとメリットが他の選択肢にどのように重くのしかかるかを調べることが重要である[10]。日本が単に接近阻止・領域拒否(A2 / AD)の能力を強化するために空母の調達を正当化するのであれば、陸上ベースの対空および対艦ミサイル、戦術的な空対空戦闘機、空中給油機、攻撃的潜水艦、機雷を強化することがより妥当かもしれない。攻撃の場合でも、多くの人が敵対者の部隊や施設に対する陸上攻撃巡航ミサイルを保証するであろう。そのような代替案がより費用効果が高いことが証明されれば、船上航空能力の価値は低下するであろう。

防衛計画策定のジレンマにもかかわらず、日本の防衛および抑止戦略を強化するためには、船上航空能力が死活的に重要である。領土的、隣接的、排他的経済水域と海上後方連絡線(sea lines of communication)の防衛に焦点を当てた海洋の議題が拡大していることを考えると、日本の船上航空能力は制海と海上拒否に焦点を当てるべきである。水陸両用輸送艦(強襲揚陸艦:amphibious assault ships)は確かに魅力的ですが、そのような船は戦略的に攻撃的である遠征軍により適しており、水陸両用任務が自国の離島を守るために戦略的に防衛的である日本には必要ないかもしれない。したがって、海上航空(naval aviation)専用の空母は日本により適していて、艦隊防衛と火力支援のためのF-35Bや、海上哨戒と掃海のための回転翼航空機を離発着することができる。P-3CやP-1などの地上航空機と組み合わせると、日本は制海と海上拒否のために、より即時の多次元形式の海上航空戦力(naval airpower)を引き受けることができる。

日本の海上航空戦力(naval airpower)の強化は、東京の意図が戦略的に防御的であったとしても、東アジアの隣国から否定的な反応を招くであろう。中国、北朝鮮、ロシアは、自衛隊(JSDF)の海上航空戦力(naval airpower)の強化を、潜在的に攻撃的な適用と軍事バランスの不利な変化に対する脅威と見なすであろう。日本の海上航空戦力(naval airpower)の新たな開発は新たな安全保障のジレンマを引き起こすかもしれないが、日本の海上航空戦力(naval airpower)を強化しないことの結果ははるかに悪くなるだろう。日本がすでに直面している脅威を考えると、賢明な対策は脆弱性を埋め、脅威を抑止し防御する日本の能力を改善させることである。

即応性に向けたステップ:Steps Toward Readiness

日本の海上航空戦力(naval airpower)を体系化するには、能力を即応性(readiness)に変えるための精巧な手順が求められる。アセットがその任務を効果的に実行できることを保証するためにさまざまな大胆な手段を必要とするため、プロセスは単純ではない。

まず、能力を効果的に使用し、保護する精巧なドクトリンを開発することが重要である。ドクトリンを考案することは、特にさまざまな不測の事態で最初に登場することが多い船上航空機能では困難である。注意点は、インド太平洋の文脈では、接近阻止・領域拒否(A2 / AD)はさまざまな形状とサイズの多くの状態で処方されており、かなりのレベルの柔軟性で接近阻止・領域拒否(A2 / AD)ゾーンの奥深くに戦闘効果を提供するために完全な任務の即応性(readiness)が求められる。さらに、自衛隊(JSDF)が特定の条件下で海上航空戦力(naval airpower)を行使することを強いる政治的、法的、および資源の制約を考えると、ドクトリンの策定には課題がある。したがって、日本の海上航空戦力(naval airpower)は、戦術的に攻撃的であるが戦略的に防御的であるのにはるかに適しており、戦略的打撃ではなく、脅威に対応するための速度と精度を中心にしている。

第二に、効果的かつ効率的な即応性(readiness)キルチェーンの開発は、自衛隊(JSDF)の能力がどのように調整および一体化されるかに依存する。特に、日本が地上、海上、空中、宇宙、サイバースペース、電磁スペクトラムを含む「マルチドメイン防衛」を確立するために動く。日本の海上航空(naval aviation)は、航空優勢と海洋優勢(air and maritime supremacy)を握る能力のネットワークの一部であり、任務を効果的に遂行するだけでなく、脅威から保護するために、自衛隊(JSDF)の他のアセットと調整することが不可欠である。ここで死活的なものは、脅威に対処するためのより効果的かつ効率的なマルチドメイン手段を促進するための統合交戦能力システムを含む、指揮、統制、通信、コンピューター、インテリジェンス、監視、目標捕捉、および偵察である。

第三に、航空自衛隊(JASDF)と海上自衛隊(JMSDF)の統合の取り組み船上航空作戦を遂行するのか、海上自衛隊(JMSDF)の指揮下に置くのかについて話し合う必要がある。 航空自衛隊(JASDF)と海上自衛隊(JMSDF)の組み合わせは、より資源効率が高く、航空自衛隊(JASDF)の専門知識を活用するが、2011年に解散した英国のハリアー統合部隊の不幸に追随する可能性がある。海上ドメインの脅威に対処する需要が高まると、航空自衛隊(JASDF)に任務を課すのがより適切であろう。そうすることで、海上自衛隊(JMSDF)と航空自衛隊(JASDF)の両方が、それぞれのドメインでの即応性(readiness)を研ぎ澄まし、洗練することができ、航空優勢と海洋優勢(air and naval supremacy)を獲得し、維持する上でより効果的かつ効率的になる。それでも、海上自衛隊(JMSDF)への海上の戦闘機の適用のタスクの移行は、他の海上作戦への影響に関する疑問を提起するだけでなく、教育航空集団(Air Training Command)と航空集団(Fleet Air Force)の両方で大規模な再構成を必要とする。

第四に、近代化と即応性(readiness)の拡大により、作戦のテンポと補給品の消費が増加し、その結果、維持、修理、およびオーバーホールの需要が高まる。海上航空(naval aviation)は、その任務と海洋環境の影響により、間違いなく最もリソースを消費する能力セットの1つである。したがって、日本の海上航空戦力(naval airpower)の拡大は、最初に主要な航空基地の維持、補修、およびオーバーホール能力容量の大幅な強化を必要とするであろう。

第五に、日本の海上航空戦力(naval airpower)の強化が日本の安全保障協力にどのように適合するかを検討することが重要である。とりわけ、日本は米国と協力して新しい戦略を策定し、相互運用性を改善して効果を高める必要がある。さらに、インド太平洋およびそれを越えた安全保障上のリスクに対応するためには、オーストラリア、カナダ、インド、大韓民国、英国、東南アジア諸国連合(ASEAN)の一部の国、そして潜在的に台湾などの志を同じくする国々との多国間パートナーシップにおいても、開発が必要である。しかし、多国間協力は決して容易なことではない。地域の安全保障と防衛関係の強化における日本のより積極的かつ多様な努力にもかかわらず、東京がより攻撃的な能力と姿勢を追求することは、中国に対してより中立的でヘッジ的なアプローチを取ることを好む国家間で躊躇を引き起こす可能性がある。したがって、日本は、地域の志を同じくする国々と緊密に協力することにより、国家安全保障の課題と保証の提供の両方のバランスをとる防衛と外交の適切な組み合わせを確保する必要がある。

結論:Conclusion

日本は戦略的防衛を続けながら、冷戦後の時代にそのフロンティアを大幅に拡大し、自衛隊(JSDF)の任務を多様化させてきた。それでも、攻撃能力の不足は、懲罰的抑止を効果的に実行する日本の実力を弱め、自衛隊(JSDF)にさらなる脆弱性を生み出している。日本の領土と海上後方連絡線(sea lines of communication)を効果的に守り、自衛隊(JSDF)の他の死活的なアセットを守るためには、海上自衛隊(JMSDF)と航空自衛隊(JASDF)の航空優勢と海洋優勢(air and maritime supremacy)への即応性(readiness)が重要である。ギャップを埋めるための中心的な部分は、海上自衛隊(JMSDF)の航空集団(Fleet Air Force)と船上航空機の現在の能力を組み合わせた多次元形式の海上航空戦力(naval airpower)である。海上航空能力(naval aviation capabilities)が水上艦や潜水艦とともに向上すると、海上自衛隊(JMSDF)の制海と海上拒否への即応性(readiness)が大幅に強化される。それにもかかわらず、日本の防衛計画担当者は、最も費用効果の高い方法で最適な即応性(readiness)を確実にする必要がある。

ノート

[1] 防衛省「2020年度日本の防衛(防衛白書)」200-201ページ、https://www.mod.go.jp/e/publ/w_paper/wp2020/pdf/index.html.

[1]受け継がれた伝統の詳細については、アレッシオ・パタラーノ著「戦後の日本を海の力として:帝国の遺産、戦時中の経験、海軍の形成」(London: Bloomsbury, 2015)を参照のこと

[2]道下徳成、ピーター・スワーツ、デービッド・ウィンクラー「太平洋における冷戦の教訓-米国の海洋戦略、危機予防、日本の役割」(Washington, DC: Woodrow Wilson Center, 2016)、https://www.wilsoncenter.org/sites/default/files/media/documents/publication/lessons_of_the_cold_war_in_the_pacific.pdf.

[3] 小谷哲男著「ヘリ空母「いずも」導入の意味、日本の安全保障戦略における重要性」 (日本国際問題研究所 主任研究員)、http://wedge.ismedia.jp/articles/-/3084、岡田幸和「幻に終わった海上自衛隊のヘリ空母」世界の艦船(1994年12月)

[4] 防衛省「2005年版日本の防衛(防衛白書)」、https://www.mod.go.jp/e/publ/w_paper/2005、「平成23年度以降に係る防衛計画の大綱」、https://www.mod.go.jp/e/d_act/d_policy/pdf/guidelinesFY2011.pdf、「平成26年度以降に係る防衛計画の大綱について」、https://www.mod.go.jp/j/approach/agenda/guideline/2014/pdf/20131217_e2.pdf.

[5] 後瀉 桂太郎「海洋戦略論」勁草書房135ページ

[6] 防衛省「平成28年度の緊急発進実施状況について」統合幕僚監部報道発表、https://www.mod.go.jp/js/Press/press2017/press_pdf/p20170413_01.pdf

[7] 防衛省「中期防衛力整備計画(平成31年度~平成35年度)」11ページ、https://www.mod.go.jp/j/approach/agenda/guideline/2019/pdf/chuki_seibi31-35.pdf

[8] 防衛省「我が国の防衛と予算-令和2年度概算要求の概要」8,13ページ、https://www.mod.go.jp/e/d_act/d_budget/pdf/200330a.pdf.

[9] 日向(山口)亮「日本の防衛即応性:航空優勢および海洋優勢の作戦における展望と問題」Naval War College Review71号No3(2018年夏号)41-60ページ

https://www.jstor.org/stable/26607066.

[10] たとえば、ティルは、「機能を実行するためのコストは、機能を実行しない場合のコストまたは他の方法のコストと比較する必要がある」と主張している。ジェフリー・ティル著「海上戦力:21世紀のガイド」(ニューヨーク、ニューヨーク:ラウトレッジ、2013年)、127ページ