米国防総省はAIに「標準」を 設定

米国国防総省には、何百ものAI関連事業があり、各個が個別に推進されている。そこで国防総省の研究・エンジニアリング(R&E)部門では、人工知能工学のシステムエンジニアリング技法をまとめることで標準を作り、さまざまな国防総省の AI取り組みのストーブパイプを解消、データベースやアプリケーションを共有できるようにしようとしているそうです。これは将来、AIシステムにベンダーロックや維持費用増大を招かないように今のうちにやっておかなければならいことのように思います。またAutonomyシステムの開発も最優先課題だとしています。


DoD Creating Standards For AI Programs
By   Theresa Hitchens on May 19, 2020 at 5:05 PM  Breaking Defense

米国防総省はAIに「標準」を 設定
国防総省の研究・エンジニアリング部門の近代化担当ディレクター、Mark Lewis氏は、「国防総省には、個々の状況を公正に評価することができない何百ものAI関連事業がある」と述べている。


ワシントン:米国防総省の研究エンジニアリング(R&E)部門は、人工知能(AI)アプリケーションの設計と構築を行う多くの事業を最適に行う新たな取り組みを開始したと、近代化担当ディレクターのMark Lewis氏が述べている。

AIは、DoDの研究開発における最優先事項の1つで、R&EディレクターのMike Griffinが担当している。

AFCEAとGeorge Mason Universityが後援したリモート会議「Critical Issues in C4I Conference 2020」でLewis氏が語ったところによると、標準化の取り組みは、新たに任命されたAIのテクニカルディレクターJill Chrisman氏による新構想であると言う。

「数週間前にJillが初めて我々に加わったとき、私は彼女に、国防総省全体のAI関連のすべての取り組みを可視化して、それで結局国防総省はAIに対してどういう状況にあるのかを教えてくれるよう依頼した。しかし国防総省には何百もの関連事業あり、個々の活動を公正に評価することができなかった」とLewis氏は語った。

そのためその替わり、R&E部門では、人工知能工学のシステムエンジニアリング技法をまとめることにした。

この新しい取り組みの重要な目標は、さまざまな米国防総省の AI取り組みのストーブパイプを解消して、データベースやアプリケーションを共有できるようにすることである。

さらにLewis氏は、R&E部門は「戦闘員に最も大きな効果を与える人工知能アプリケーションは何かを解明する」ことを目指していると述べ、これには戦闘員がAIを使ってみて体験し、何がAIの何が効果的であるかを確かめることができるプロトタイプを迅速に開発することも含まれると付け加えた。これは言い換えれば同時に、戦闘に役に立たないものや複雑すぎるものを、省く手段ともなる。

Lewis氏によると、Autonomyシステムの開発も最優先課題の1つだという。この一連の取り組みは、アシスタントディレクターのWayne Nickols氏が担当し、人間とシームレスに連携できるAutonomyシステムの開発に焦点を当てている。

「人間の命を危険にさらすことのないような自律システムが必要である。人間をターゲットとするのではなく、ロボットシステムをターゲットとすることができれば、それが好ましいアプローチである。」とLewis氏は語っている。

Lewis氏は幅広い議論の中で、国防総省の量子科学の研究目標についても言及しているが、「量子科学には多くの誇大宣伝がある」としている。「数年後には、最速のスーパーコンピューターや量子通信技術、量子鍵暗号技術に取って代わる量子コンピューターが話題になっている。率直に言って、その多くは有望ではあるが、非常に長期的なレンジで考えなければならない。」とはいえ、Lewis氏によると、近い将来、国防総省がこの分野に進出する可能性は2つあるという。ひとつは何らかの理由でGPS衛星が使えない場合に代替となるPNT(位置測定、航法、時刻配信)機能、そして将来の「様々な用途のための精巧なセンサー」である。