「われわれは中国とのAI競争に負けるかもしれない」 :Bob Work
元国防副長官 Rober Work氏は、国防総省のAIの取り組みに激を飛ばしています。
特に人工知能共同研究センター(JAIC)には、Automation(自動化)も含むことを、はっきり書き込むことべきで、そのために”A”を追加してJAAICとせよと。とにかくAIへの取り組みはかって、米海軍が原子力に取り組んだ時以来の出来事にならなければならない。でなければ中国に負けてしまうと危惧しています。
我が国にはJAAICどころかJAICのような、防衛省を横串に、AIを統括する組織や、その考え方はあるでしょうか?
「われわれは中国とのAI競争に負けるかもしれない」 :Bob Work
オバマ政権下でAIを強く推進したRobert(Bob) Work氏は、中国やロシアに追いつくために米国側の大規模な改革を求めている。彼の目指しているモデル? それはリックオーバー提督による1950年の “Nuclear Navy”の創設だ。
By Sydney J. Freedberg Jr. on September 02, 2020 at 3:00 PM Breaking Defense News
以前のワシントン発の記事をアップデート: Googleがペンタゴン(米国防総省)に対して軍事用のAI技術を提供する極秘計画「Project Maven」を立ち上げ、国防総省による人工知能 (AI) の推進を後押しした元国防副長官 Bob Work氏は、国防総省が十分な役割を果たしていない、国防総省は人工知能の導入を必要としていると主張した。海軍が1950年に原子力を取り入れて改革したように国防総省は官僚主義を打破するために、早急にAI化が必要。そのために人工知能統合センター(JAIC)は、冷戦時代にハイマン・リックオーバー海軍大将が行ったような「むち」として機能している。
「トップダウンの切迫感が必要だ」とWork氏はAFCEAのAI+ML(Machine Learning)カンファレンスで述べた。「1000本の花が咲いていれば、ある程度の時間は楽しめるが、1000本あっても早くは咲いてくれない。」
現在、議会の人工知能に関する国家安全保障委員会の副委員長を務めるWork氏は昨日のカンファレンスで、中国とロシア(中国に比べ可能性は低いが)が軍のAIとオートメーションで米国を追い抜く可能性があり、そうさせないいためには米国は次の3つの大きな改革に着手する必要があると述べている。
■軍事予算の1%、年間約70億ドルを人工知能プロジェクトのために取っておき、各軍種は毎年その資金のプールから資金を得るためにAIについて競いあうこと。
■中国の軍民融合戦略に対抗するために、ペンタゴン、学界、民間部門の官民パートナーシップを構築する。目標は、軍と民間人がAIの技術や技術を共有しやすくすること。最大の最初のステップは、新しいAIアルゴリズムのテスト、評価、検証、検証(TEVV)のためのナショナルセンターを作ることだ。
■2年前にできた人工知能共同研究センター(JAIC)を強化する。まず、JAICの報告書を国防長官や国防副長官に直接提出すること (議会で検討中) 。第2に、JAICの権限の中にAutomation(自動化)も含む(そのため、名前を「JAAIC」に変更)と、はっきり書き込むこと。第三に、海軍の原子炉プログラム (伝説的なHyman Rickover提督によって設立された) が全原子力艦隊に対して行っているように、全軍種のAI 標準化に対する権限をJAICに与えること。
Work氏は次のようなことを付け加えた。米国は、衛星、サイバー空間、電子戦、情報戦を監督する単一の統合戦略支援部隊の中国モデルを模倣することを検討すべきであると述べた。これらの機能は、米国が宇宙司令部、サイバー司令部、その他の機関に分割しているものである。これらの機能が現代社会でいかに相互依存しているかを考えると、「統合された戦略的支援部隊はより良い方法だと思うが、これは分析し、議論し、実験する必要があるだろう。」と彼は述べている。
Rickover提督*再び?
*(Rickover提督:原子力潜水艦の開発、配備を推進し「原子力海軍の父」と称された)「私たちは皆正しいことを言っている:AIは絶対に重要だ。AIで、今後何年にもわたって戦場で優位に立つことができるだろう。」「重要なのは我々は急かされている気持ちがあるかということ。それがないために、我々はレースに負けているかもしれない。」とWork氏は語っている。
Work氏は、「米国が遅れを取らないためには、資金提供だけでなく、新たな緊迫感と新たな組織形態も必要だ」と言い。また「海軍の原子力への取り組みのようなモデルを採用することを勧めたい」と述べている。
原子力時代の幕開けとともに、議会は、より保守的な考えを持つ提督たちを飛び越してハイマン・リックオーバーを昇進させ、海軍原子炉の責任者として原子力要員の訓練や原子力船の建造に関する厳しい技術基準を定める権限を彼に与えた。「NR: 海軍原子炉」の権限は海軍だけでなくエネルギー省にも及び、それ以外の軍と文民の両方でのやり方とは大きくかけ離れていた。
このモデルはAIにどのように適用されるのだろうか? Work氏はJAIC,これはJAAICと名前を変えるべきだが、人間と機械の協調的な戦闘ネットワーク…。最も重要なAI対応アプリケーションの「システム・アーキテクト」であれと言っている。JAIC/JAAICは、この専門用語を明らかにするために、ほとんどの軍事用AIプロジェクトの技術標準を効果的に設定し、陸、海、空、宇宙、サイバー空間を横断してデータを共有する、包括的なJoint All Domain Command & Control (JADC2)システムにそれらを統合するだろう。
Work氏によると、JAICがAIのさまざまな側面で運営するクロスファンクショナルチームは、追加された70億ドルのAI資金の一部を受け取る資格を得るためには、そのプログラムが、重要な「統合運用にインパクト」を持っていることを「証明する」必要があるという。中には、JAICが、予算はない軍にAIのアップグレードに投資をさせるケースもあるが、かってビル・ペリー国防長官がGPSの初期バージョンを車や船舶、航空機に搭載させたように、それはそれぞれの軍種のものだけに限らず、他の軍種でも使えるものになる。
同氏は、「JAICはもっと“筋肉質”であれ。」「JAICは“鞭”であり、短期的な軍事的優位性を得るために私たちが今追求すべきアプリケーションとアルゴリズムは何か?’を軍の幹部に提案をして(鞭を当てて)いく部門である。」と語った。
これらの提案は、国防総省だけでなく業界も混乱させ、改革は政治的にも官僚的にも困難な戦いになるだろう。「私が提案しているのは…。全て軍種がこれに抵抗するだろう」とWork氏は認めている。
しかし、国防政策の世界では今でもWork氏が認められており、11月にジョー・バイデンが大統領に就任した場合、Work氏は再びペンタゴンに戻ってくる可能性がある。
Work氏にはこの分野で大きな信頼を得ている。元海兵隊砲兵将校で、政府やシンクタンクの要職を歴任し、オバマ政権では国防副長官にまで昇進した。Work氏は、米国がアフガニスタンとイラクでゲリラ戦を行っている間に、中国とロシアは軍事技術を劇的に進歩させたと警告し、彼はChuck Hagel国防長官にあたり、米国のハイテクの優位性を取り戻すための第3次オフセット戦略を発表させた。トランプが政権を握った後、その名前は消えてしまったが、中国を封じ込めることについて大統領自身が曖昧な態度、ロシアのウラジミール・プーチンと対決することの露骨な拒否にもかかわらず、テクノロジー、特にAIにおける大規模な競争の重要性はトランプ政権下でのペンタゴンの中で高まっている。
つい昨日、米国防総省は、中国が造船、ミサイル防衛、攻撃用ミサイルで米国を追い抜いたとする驚くべき新報告書を発表した。報告書によると、中国が急速に発展したのは、「軍民融合」政策によるところが大きいという。国際的な協力を使って、また「窃盗」により外国の技術を取り入れた。「中国の文民経済と軍事経済の間に明確な線引きがないため、中国の軍事近代化に貢献することを望まない米国等の国々にとって、デューデリジェンス費用(そのリスクを把握するためのコスト)が増大する。」と報告書は述べている。
Work氏も同様に、最も危険な競争相手として中国を優先しているが、ロシアは軍事ロボット工学において著しく進歩していると指摘する。しかし、ロボット車両やドローンはAIと自動化の一側面にすぎない。それと同様に重要であり、中国にとって大きな強みであるソフトウェアシステムと通信ネットワークの中の「見えない」Autonomy機能は、膨大な量のセンサーデータを精査してターゲットを特定したり、サプライのルートを決めたり、メンテナンスをスケジュールしたり、司令官にオプションを提供することができる。
アルゴリズムは目に見えないため、スパイ機や衛星が戦車や飛行機、船を数える冷戦時代よりも、現在の力の相関関係を計算するのははるかに難しい。例えば、Work氏によると、適切な自動化パッケージを使えば、廃品となった戦闘機を、人間のパイロットを出し抜くことができる能力を持ち、もし墜落しても構わないドローンに変えることができるという。それはDARPAのAlphaDogfightシミュレーションで、AIが人間のパイロットに5-0で勝ったことなどから想像できることだ。
AIで動く世界は「驚きに満ちている」とWork氏は警告する。「もし時代遅れの古いMiG-21やMiG-19にすごい最新のAIを組み込めば、プラットフォーム自体が示すよりもはるかに能力があるので、それに直面した米国のパイロットは驚愕するだろう。」
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