21世紀型の諸兵科連合 Marine Corps Gazette • September 2022

米軍内でWarfighting Functionの7番目の機能として「Information」が制度的に導入されて以降、MILTERMでも、米統合レベルや米陸軍、米海兵隊での話題を紹介してきているところである。ここで紹介するのは、Combined Armsの視点で「Information」が加わることで起きる変化について述べられた米海兵隊ガゼット誌の論稿である。根底を流れるのは、新たな作戦環境における「maneuver warfare」をどのように実現していくかであると理解する。(軍治)

21世紀型の諸兵科連合

火力、機動、情報の結合された効果を通じて優位性を獲得すること

21st-century combined arms – Gaining advantage through the combined effects of fires, maneuver, and information –

 by LtGen Matthew G. Glavy & Mr. Eric X. Schaner

Marine Corps Gazette • September 2022

グラヴィ(Glavy)米海兵隊中将は現在、米海兵隊司令部の情報担当副司令官を務めている。

シャナー(Schaner)氏は、米海兵隊司令部の情報担当副司令官の計画・戦略部門で、上級情報戦略・政策アナリストを務めている。

適応し、克服することが米海兵隊の際立った特徴である。中国やロシアという戦略的な競争者の出現は、社会的、情報的、技術的な変化による戦いの性格(character of warfare)の進化と重なり、今の時代の進化する周囲の状況に合わせて考え方を適応させることが求められてきている[1]

米海兵隊が戦力デザインを進めるにあたっては、ウォーゲーム、分析、実験、演習を活用し、21世紀の競争と戦いの課題に対応するために、最も重要で実績のある用兵理論(warfighting theories)と用兵コンセプト(warfighting concepts)をどのように適用するかを検討し、洗練する必要がある。第29代米海兵隊総司令官であるアル・グレイ(Al Gray)米海兵隊大将の言葉は、それを最もよく表している。「戦争そのものがそうであるように、我々の戦争へのアプローチも進化しなければならない。もし、我々がこの職業に磨きをかけ、拡大し、改善することをやめれば、時代遅れとなり、停滞し、敗北する危険がある」[2]

本稿では、最も重要かつ永続的な用兵コンセプト(warfighting concepts)の一つである「諸兵科連合(combined arms)」について、我々の競争者や敵にジレンマをもたらすために今日の環境下で適用すべき考え方を提示する。

変化する諸兵科連合の性格:The Changing Character of Combined Arms

MCDP1 『用兵(Warfighting)』には、「諸兵科連合(combined arms)とは、諸兵科連合(combined arms)は、ある効果を打ち消し、もう一方で敵をより弱みがあるようする部隊の完全な一体化である。我々は、敵に対し問題ではなく、望みのない状況に陥れるというジレンマを引き起こす」と書かれている[3]『用兵(Warfighting)』のこの言葉は、我々がなぜ諸兵科連合(combined arms)を行うのかを言い表しており、前の世紀と変わらず今日も適用可能である。

つまり、我々は、利用可能なすべての資源を最大限に活用し、戦闘力を最大化するために、諸兵科連合(combined arms)のドクトリンに従う[4]。諸兵科連合戦術(combined-arms tactics)を通じて、我々は、競争者や敵を勝ち目のない状況に追い込むために、補完的な力を使うことによって、火力、機動、情報(fires, maneuver, and information)を一体化するのである。

現在の状況は、諸兵科連合(combined arms)の性格が3つの主要な方法で変化していることを示している。第一に、情報および関連技術、特にサイバースペース、宇宙、およびソーシャル・メディアのような影響力のある技術の分野における継続的な進歩は、優位性を生み出すために組み合わせることのできる能力の幅を広げている。これらの情報能力を機動や致死性の火力と一体化し、適切な時と場所でジレンマを提示することが、21世紀型の諸兵科連合(21st-century combined arms)の鍵である。

このような技術の活用の広がりを説明するために、我々が様々なメディアを通じて目撃してきたウクライナ紛争のリアルタイムに近い状況を考えてみよう。ソーシャル・メディアを使って会戦をライブストリーミングすることは、20~30年前には考えられなかったことだが、今日では、戦術的な出来事を利用する手段として情報を活用し、国や世界規模で世論を動員し、意思を喚起する力を実証している。

第二に、「成熟した精密打撃体制(mature precision-strike regime :MPSR)」により、諸兵科連合(combined arms)の提供方法が大きく変化した。このレベルの精度を諸兵科連合(combined arms)に一体化することで、競争者と敵の用兵(warfighting)への取り組み方が変化している。「成熟した精密打撃体制(MPSR)」の普及は、全ドメインの偵察と対偵察の闘い(reconnaissance and counter-reconnaissance fight)に勝利することに重点を置いている。この闘いに勝利した行為主体(actor)は、諸兵科連合(combined arms)を適用することができ、敗者はその結果に苦しめられることになる。

さらに、センサーの普及によって生み出される膨大な量のデータを最もうまく活用できる行為主体(actor)は、偵察と対偵察の闘い(reconnaissance and counter-reconnaissance fight)で圧倒的な優位性を獲得することができる。相手より早くデータの意味を理解できる側は、相手より早くターゲットを見つけ、交戦することができる。このように、偵察と対偵察の闘い(reconnaissance and counter-reconnaissance fight)、ひいては21世紀型の諸兵科連合(combined arms)は、「ビッグ・データ」活用の課題を提示しているのである。

我々が目撃している第三の変化は、競争の連続体(competition continuum)における諸兵科連合(combined arms)の使用である。この変化を理解するには、諸兵科連合(combined arms)のコンセプトを拡大し、暴力の閾値より下でも上と同様に適用できるようにすることが必要である。我々は、競争者が米国と同盟関係にある近隣諸国に対してジレンマを生じさせ、ターゲットとなる国や米国の軍事的反応を引き起こすことなく目標を追求するような場所で、これが機能している例を我々は見ている。

例えば、中華人民共和国(People’s Republic of China :PRC)は漁船と沿岸警備隊(Coast Guard)を使い、人民解放軍海軍(People’s Liberation Army Navy)が監視を行いながら、係争中の近海の領土を「奪取(seize)」している。このスキームは、進入する漁船を攻撃して戦争の危険を起こすことを選択するか、干渉せずに中華人民共和国(PRC)が領有権を主張し、目標を達成するための場所を確保するすることを許すかのジレンマを提示する。

洗練された諸兵科連合モデルに向けて:Toward a Refined Model of Combined Arms

20世紀型の諸兵科連合(20th-century combined arms)を理解するための枠組みが支援兵科、有機的火力、機動の結合を意味しているとすれば、21世紀型の諸兵科連合(21st-century combined arms)の枠組みは支援部隊、有機的火力、機動、そして情報の結合を意味していなければならない。21世紀型の諸兵科連合(21st-century combined arms)の構成要素として情報を加えるのは、より広い社会、グローバルな安全保障環境、そして米海兵隊で進行中の変化の多くを支えているからである。

ネットワーク化された社会と米海兵隊のデジタル変革は、ハイパー・コネクティビティ、大量のデータ・ストレージと計算能力、成果を上げるためのデータの融合と相関関係によって特徴付けられる。こうした情報を基盤とする変化は、過去数十年間にはあり得なかった脆弱性と機会をもたらす。この新しい現実に対応するため、米海兵隊は、戦役、作戦、および諸兵科連合(combined arms)において情報の力を活用するアプローチを正式化するために情報の用兵機能(warfighting function)を確立した。

情報の用兵機能(warfighting function)の具体的な目的は、優位性を獲得するための重要な手段としての機動戦理論(maneuver warfare theory)と諸兵科連合(combined arms)の実践から導き出されるものである[5]。MCDP8「情報(Information)」では、「情報用兵機能(information warfighting function)の目的は、我々の目標を可能な限り効果的に達成する手段として、情報の優位性(information advantages)を創造し、活用することである」と述べている[6]

情報は、他のすべての用兵機能(warfighting function)と同様、米海兵隊員が優位性と効果を生み出すために行う活動であると考えることができ、米海兵隊員が火力や機動によって優位性や効果を生み出すのと何ら変わりはない。情報活動には、情報の4つの機能、生成、保護、拒否、投射が含まれる。

米海兵隊のすべての部隊は、競争者や敵よりも効果的に情報を生成、保護、拒否、投射することで、情報の優位性を生み出し、利用することができる。諸兵科連合(combined arms)を通じて、米海兵隊員、情報の機能と関連能力を火力や機動と一体化し、競争者や敵に勝ち目のない状況を作り出すことができる。図1は、21世紀型の諸兵科連合(21st-century combined arms)のモデルである。

図1.20世紀型の諸兵科連合から21世紀型の諸兵科連合(21st-century combined arms)への移行(著者作成)

図1の大きな特徴は、情報の火力(information fires)と情報の機動(information maneuver)というコンセプトである。諸兵科連合(combined arms)の中で、情報を火力の一形態として、また機動の一形態として考え、適用することができる。情報の火力(information fires)の例としては、サイバースペース攻撃や電磁的攻撃を行い、敵を欺いたり、敵の重要なシステムを破壊したりすることが挙げられる。

情報の機動(information maneuver)の例としては、敵を欺いたり、能力や動きを明らかにしたり隠したり、敵の意思決定を遅らせたりするために、電子的、デジタル的、物理的シグネチャを変更、抑制、または操作することが挙げられる。情報の火力(information fires)と情報の機動(information maneuver)には多くの例がある。表1は、米海兵隊員が計画策定の際に考慮すべき、非網羅的な例のリストである。利用可能なすべての能力、致死性・非致死性行為を組み合わせて、21世紀型の諸兵科連合のジレンマ(21st-century combined-arms dilemmas)を作り出すのは、米海兵隊員の創造性にかかっているのである。

表1.情報の火力(information fires)と情報の機動(information maneuver)の例。(表は著者提供)

洗練された諸兵科連合(combined arms)のモデルを実装するには、米海兵隊がウォーゲーム、分析、実験、演習を通じて学習を続ける必要がある。米国防総省(DOD)、統合部隊、他の軍種、および省庁はすべて、長距離精密火力と、さまざまなカテゴリー(例:宇宙、サイバースペース、影響)に分類される多様な情報能力を専門とする新技術、能力、編成(formation)の開発を進めている。

しかし、すべての関係者に欠けているのは、最大の優位性と効果を得るために(すなわち、武力紛争の閾値の下または上にジレンマを作り出すために)火力、機動、情報(fires, maneuver, and information)をシームレスに融合させる、競争の連続体(competition continuum)に適用できる諸兵科連合(combined arms)の一貫したコンセプトの開発に焦点を合わせることである。

この21世紀型モデルがどのように機能するかについて、成熟した理解を得るためには、専用のウォーゲーミングと実験の取り組みを進める必要がある。米海兵隊は、スタンドイン・フォース(Stand-in Forces :SIF)を想定した任務を含む、あらゆるタイプの米海兵隊空地任務部隊(Marine Air-Ground Task Force :MAGTF)任務に情報を提供するために、このコンセプトでウォーゲームと実験を行うべきである。

21世紀型の諸兵科連合と米海兵隊遠征部隊(MEU):21st-century combined arms and the MEU

米海兵隊遠征部隊(MEU)は、21世紀型の諸兵科連合(21st-century combined arms)を実行するための十分な訓練と装備を備えている。米海兵隊遠征部隊(MEU)が21世紀型の諸兵科連合(21st-century combined arms)をどのように実行できるかを説明するために、暴力的過激派組織(violent extremist organization :VEO)内の高価値の個人(high-value individual :HVI)(主要指導者、技術専門家、資金提供者など)を攻撃して排除するという仮想的な米海兵隊遠征部隊(MEU)任務を考えてみる。

このシナリオでは、米海兵隊遠征部隊(MEU)はある能力を用いて高価値の個人(HVI)の重要なアセットの使用を拒否し、別の能力を用いて高価値の個人(HVI)を追跡し、さらに別の能力を用いて高価値の個人(HVI)がアセットにアクセス、使用、または修理しようとしたときに攻撃して排除することにより、諸兵科連合(combined arms)のジレンマを作り上げることになる。問題に対処するために個人を特定の場所に「群がらせる(herding)」この手法は、個人を身体的危害(physical harm)にさらすことになる。

この例では、戦闘軍指揮官(combatant commander)の権限のもと、該当するインテリジェンス機関や米国務省と連携している米海兵隊遠征部隊(MEU)に、暴力的過激派組織(VEO)のオンライン・メディア作戦を妨害する任務が与えられている。暴力的過激派組織(VEO)の中核的な指導者グループは、米海兵隊遠征部隊(MEU)が到達可能な比較的小規模で地理的に孤立した地域に位置している。

しかし、プロパガンダや勧誘活動を含むメディア作戦は非常に洗練されており、グローバルなオンライン・プレゼンスを通じて大げさなイメージを投影することに効果的である。このようなプレゼンスは、同グループの支援、資金調達、影響力を高めるのに有効であることが証明されており、脅威が増大していることを表している。

この任務のために、米海兵隊遠征部隊(MEU)は暴力的過激派組織(VEO)のメディア制作スタジオ、プライマリ・サーバー、バックアップ・サーバーの物理的な位置に関するインテリジェンスを受け取る。これら3つのアセットは、約3マイル離れた2つの別々のビルにある。指定された時間に、米海兵隊遠征部隊(MEU)のサイバー・プランナーは、地理的戦闘軍指揮官(geographic combatant commander)を通じて米サイバーコマンド(USCYBERCOM)と調整し、暴力的過激派組織(VEO)のサーバーに対して事前に計画したサービス拒否攻撃(情報の火力(information fires)の一形態)を開始した。

同時に、米海兵隊遠征部隊(MEU)の心理作戦分遣隊は、暴力的過激派組織(VEO)のメディア作戦主任(つまり高価値の個人(HVI))に携帯電話(情報の機動(information maneuver)の一形態)を通じて、オーダーメードのメッセージを配信している。このメッセージは、高価値の個人(HVI)の言語、文化、現地の時事問題などに合わせて慎重に作成され、事前に承認されたものである。このため、高価値の個人(HVI)はサーバーの不調を知らされても疑われない。

サイバー攻撃と欺瞞的メッセージ(deceptive messaging)が発生すると、米海兵隊遠征部隊(MEU)の偵察チームは2つの拠点におけるすべての関連活動を観察し、報告するための位置を占拠する。高価値の個人(HVI)がサーバーの問題を調査するためにプライマリ・サイトに到着すると、急速に展開するイベントのカスケードが開始される。これらのイベントは、高価値の個人(HVI)の到着を米海兵隊遠征部隊(MEU)指揮官に通知する偵察報告から始まる。

指揮官の攻撃決定により、軌道上にある2機のF-35が両地点に弾薬を投下するために待機している。このシナリオで生じる勝ち目のない状況は、メディア業務の中断を受け入れるか、修復を試みて物理的な損害と破壊を被るかのどちらかである。空爆の結果、高価値の個人(HVI)と数人の支援要員を排除し、スタジオと両サーバーのある建物を破壊した。

スタンドイン・フォースの海上拒否作戦における21世紀型の諸兵科連合:21st-century combined arms in SIF Sea Denial Operations

スタンドイン・フォース(SIF)は、紛争地域内で同盟国やパートナーとともに前進する部隊を確立することで、敵対者を抑止する。これらの部隊は、艦隊、統合部隊、省庁間、同盟国やパートナーに、敵対者の戦略(adversary’s strategy)に対抗するためのより多くの選択肢を提供する[7]。スタンドイン・フォース(SIF)は指示されれば、艦隊の機動と作戦を支援するために海上阻止行動を行う[8]

スタンドイン・フォース(SIF)は、自前のセンサーや兵器の適用と、海軍や統合部隊のセンサーや兵器との一体化により、海上阻止を支援する[9]。これを達成するためには、すべての用兵ドメイン(warfighting domains)と電磁スペクトルで諸兵科連合(combined arms)を行うことができるスタンドイン・フォース(SIF)が必要である。

スタンドイン・フォース(SIF)がいかに火力、機動、情報(fires, maneuver, and information)を組み合わせて海上阻止作戦のジレンマを作り出すかを説明するために、米国と競争者から敵に変わった相手との間で紛争が勃発したという別の仮想シナリオを使うことにする。このシナリオで生じるジレンマは、敵が友軍の電磁波攻撃に対抗できず、精密打撃に対してより脆弱になることである。

このシナリオでは、米海兵隊沿岸連隊(Marine Littoral Regiment :MLR)の海上火力部隊が、重要なチョークポイント付近で長距離精密射撃を行うのに十分な海上の緊要地形を占拠している。目標(海上の緊要地形)までの機動中、火力部隊は発見されないように陣地を占拠し、敵に対して射撃を行う際に再び諸兵科連合(combined arms)に頼る。

発見されずに移動することは、対偵察戦に勝利した結果である。紛争に先立ち、スタンドイン・フォース(SIF)は重要な海上地形とその周辺における敵の収集方法、能力、技術の発見と地図作成に成功した。

火力の要素がどのように収集されるかを知っているため、機動のための計画は戦術的な欺瞞、敵の収集の窓の既知のギャップを利用する鋭いタイミング、攻撃的サイバー作戦(offensive cyber operations :OCO)、敵の注意を目標への部隊の機動からそらすための物理的攻撃によって支援される。

この例では、米海兵隊沿岸連隊(MLR)は事前に承認された権限と許可を含む、攻撃的サイバー作戦(OCO)を使用する計画を立てている。火力部隊は米海兵隊沿岸連隊(MLR)本部のサイバースペース・オペレーション・セル(連隊の火力と効果の構成要素)と調整し、攻撃的サイバー作戦(OCO)任務のタイミングが彼らの動きを支援することを確実にする。

攻撃的サイバー作戦(OCO)任務は、敵が目標付近で収集していた残りの1つの信号インテリジェンス・アセットを具体的にターゲットにする。米海兵隊沿岸連隊(MLR)本部のサイバー計画者は、事前に調整された統合火力チャネルと戦闘軍指揮官(combatant commander)を通じて、攻撃的サイバー作戦(OCO)任務を促進する。

射撃位置を占拠し、火力任務を遂行する際、海上火力部隊は受動的・能動的なシグネチャ管理技術(情報の機動(information maneuver)の一形態)を用いて、物理的・電磁的シグネチャを抑制・操作する。受動的手段には、通信規律、隠蔽、偽装の使用が含まれる。能動的な手段には、敵の収集を欺くためのデコイの使用が含まれる。

正確なタイミングで、火力部隊は統合部隊と連携して長距離精密射撃を実行する。このタイミングは、空、地表、陸上システムから複数の異なる弾薬を敵の地表目標に大量に投下するために重要である。

この統合諸兵科連合作戦(joint combined-arms operation)では、近接した無人航空機システムからの空中電磁攻撃と有人立ち合い妨害機からの電磁攻撃で、米海兵隊沿岸連隊(MLR)の攻撃に対する敵の防御力を低下させる。敵艦が統合部隊の電磁波攻撃に対抗できないことで、艦の防御力が低下し、精密打撃に対して脆弱になる。

射撃任務が完了すると、米海兵隊沿岸連隊(MLR)部隊は直ちにその位置から諸兵科連合(combined arms)を使用して移動し、事前に指定された隠れ場所への移動を支援する。移動は、既知の収集脅威に対して米海兵隊沿岸連隊(MLR)の移動を選別するためにデザインされた、統合電磁波防御・攻撃能力の使用を含む、事前に承認された作戦コンセプトによって促進される。

このシナリオでは、米海兵隊沿岸連隊(MLR)部隊は米海兵隊沿岸連隊(MLR)本部の電磁スペクトル作戦セルと調整し、米海兵隊沿岸連隊(MLR)の発射位置から隠蔽位置への移動をカバーするために、共同スクリーニング行動のタイミングを陽動攻撃と同期させる。

諸兵科連合と偵察と対偵察:Combined Arms and Reconnaissance and Counter-reconnaissance

「成熟した精密打撃体制(MPSR)」の拡散を特徴とする活動環境では、潜在的な敵との接触を獲得し維持することが重要視される[10]。最初に見た行為主体(actor)は、最初に方向を定め、最初に決断し、最初に効果的に攻撃することができ、圧倒的な優位性を獲得することができる。この考え方は、スタンドイン・フォース(SIF)の成功理論の中核をなす原則であり、偵察と対偵察が、諸兵科連合(combined arms)を可能にするスタンドイン・フォース(SIF)の永続的な機能として確立しているのである。

スタンドイン・フォース(SIF)は統合部隊にホスト国へのアクセスを提供し、競争の連続体(competition continuum)のあらゆる地点で全ドメインの偵察を行う。これらの相互支援的な重要任務は、艦隊と統合パートナーが目標管理を確立し、潜在的敵対者(potential adversary)の活動と能力について理解を深めるのに役立つ。

これによって統合部隊は、暴力の閾値以下で潜在的敵対者(potential adversary)を特定し、対抗することができ、武力紛争が始まったら、統合部隊が先手を打って攻撃することができるようになる。スタンドイン・フォース(SIF)は、潜在的敵対者(potential adversary)の収集方法と能力を明らかにするために、対偵察を行う。これは、潜在的敵対者(potential adversary)がスタンドイン・フォース(SIF)を理解し、位置を特定する能力を否定するために行われ、それによって競争者や敵に作戦上の問題を生じさせるものである。

偵察と対偵察の闘い(reconnaissance and counter-reconnaissance fight)は、主に、それぞれが相手の行動を観察し知ろうとする一方で、相手が同じことをするのを防ごうとする2つの対立するシステム間の競争として特徴づけられる。つまり、偵察と対偵察の闘い(reconnaissance and counter-reconnaissance fight)は、事実上、情報と実用的なインテリジェンスをめぐる戦いである。

スタンドイン・フォース(SIF)の海上偵察の要諦は、艦隊が効果的な火力を発揮するために、潜在的敵対者(potential adversary)または敵の位置を十分に特定できるようにすることである[11]。海上偵察の鍵は、すべてのドメインの収集能力を融合して、首尾一貫したリアルタイムのインテリジェンス画像にすることである。

そのためには、オープンソース・インテリジェンス、一般に入手可能な情報、同盟国やパートナーの能力など、さまざまな収集能力を用いるインテリジェンス収集計画を策定、実行し、ターゲットの拘束と殺害網の完成を維持することが必要である。また、全ドメイン偵察には、米海兵隊沿岸連隊(MLR)が地上から保有するヒューマン・インテリジェンスとシグナル・インテリジェンスを、宇宙とサイバースペース・ドメインで採用する戦闘軍指揮官(combatant commander)と国家レベルの収集能力と融合させる必要がある。

「成熟した精密打撃体制(MPSR)」を使用する行為主体(actor)の要件は、センサーの能力とそのキル・ウェブを使用する正確な方法を隠すことである。対偵察作戦を支援するため、スタンドイン・フォース(SIF)は相手のセンサーを発見し、艦隊に向けられた敵のキル・ウェブを理解する。歴史上、独創的で欺瞞的な戦術を駆使して、敵対者にセンサーを発見させ、能力を暴露させた例が数多くある。

例えば、キューバ危機の際、米国は海軍の駆逐艦から専用の送信機を使用し、海軍の潜水艦からレーダー反射気球を放ち、キューバの防空レーダーを刺激することを組み合わせた。この任務はキューバにレーダーを使用させることに成功し、その後、これまで知られていなかったシステムの特性や能力を米国インテリジェンス機関に明らかにした[12]

同様の創造的戦術を駆使して、スタンドイン・フォース(SIF)は統合部隊や同盟国・パートナーと協力しながら、潜在的敵対者・敵にその収集方法と能力を明らかにさせる方法を考案しなければならない。これは同盟国やパートナー国でのスタンドイン・フォース(SIF)の持続的な存在を活用することから始まり、時間をかけて、ホスト国やその周辺で潜在的敵対者(potential adversary)が使用する生活パターンと収集のパターンを観察することができる。基本的な理解を確立した上で、スタンドイン・フォース(SIF)は競争相手(Rival)のセンサーを刺激し、能力や収集技術を明らかにさせることで、理解のギャップを解消する。

この行動には、意図的にスタンドイン・フォース(SIF)の編成(formation)を使用し、長期にわたって定期的に予測可能な動きと活動を行い、友軍のパターンに対する潜在的敵対者(potential adversary)の期待値を調整することが含まれる。これには、ホスト国部隊(host nation forces)、米国沿岸警備隊(U.S. Coast Guard)の艦船、省庁間組織、または米海兵隊遠征部隊(MEU)と一体化し、連携するための演習を含めることができる。潜在的敵対者(potential adversary)を刺激するため、スタンドイン・フォース(SIF)は相手の収集活動や態勢の変化を観察する意図で、予期しない動きや、現地指導者との予期しない交戦を行うことがある。

対偵察は、潜在的敵対者(potential adversary)または敵が艦隊の位置を特定するのを阻止するためのスタンドイン・フォース(SIF)による活動も含む。スタンドイン・フォース(SIF)が武力紛争に巻き込まれた場合、敵の収集能力を否定、敗北、または破壊するために、あらゆる種類の諸兵科連合(combined arms)が使用される可能性がある。これには、物理的な攻撃と機動に攻撃的サイバー作戦(OCO)または電磁スペクトラム作戦(electromagnetic spectrum operations)を組み合わせ、敵の「成熟した精密打撃体制(MPSR)」内の重要な指揮・統制ノードを交戦させ、破壊することが含まれる。

武力紛争時のスタンドイン・フォース(SIF)対偵察作戦を成功させるための種は、紛争が勃発するかなり前に蒔かれている。「成熟した精密打撃体制(MPSR)」の普及は、競争者が精密打撃を可能にする強固で多層的かつ冗長なインテリジェンス・監視・偵察ネットワークを構築していることを意味する。スタンドイン・フォース(SIF)部隊は、潜在的敵対者(potential adversary)の「成熟した精密打撃体制(MPSR)」に侵入し、通信回線、ノード、兵器システムなど、キル・ウェブのあらゆるセグメントを危険にさらすために存在し、任務を遂行しなければならない。

武力紛争以下の競争における21世紀型の諸兵科連合:21st-Century Combined Arms in Competition Below Armed Conflict

同業者によるインテリジェンス、監視、偵察、ターゲティングの各能力の広範な向上は、「成熟した精密打撃体制(MPSR)」の基本的な特徴である[13]。競争相手(Rivals)は、米国の長期的な戦力投射の優位性に対するヘッジとして「成熟した精密打撃体制(MPSR)」を利用している。このことは、米国の同盟国やパートナーであることが多い近隣諸国に対して強圧的な戦略を追求するための隠れ蓑を潜在的な敵対勢力に提供することになる。

このことは、中国が「成熟した精密打撃体制(MPSR)」の保護下に米国の戦略を損ない、東アジアのパワー・バランスを変化させようとしていること以上に明確な例である。中華人民共和国(PRC)以外にも、ロシア、イラン、暴力的過激派組織(VEO)などの戦略的競争者は、「成熟した精密打撃体制(MPSR)」を強圧的活動の隠れ蓑として、米国に挑戦するジレンマを提示しようとするものばかりである。

米海兵隊空地任務部隊(MAGTF)は、「成熟した精密打撃体制(MPSR)」を隠れ蓑にして米国の目標を損なおうとする競争者に対する効果的な対抗手段であることは、デザイン上明らかである。これは、米海兵隊空地任務部隊(MAGTF)が敵国、他の米海兵隊空地任務部隊(MAGTF)、統合部隊、および米国務省や沿岸警備隊(Coast Guard)のような省庁間パートナーと行動を調整する場合に、特に顕著である。説明のために、米海兵隊遠征部隊(MEU)が水陸両用即応グループ(Amphibious Ready Group :ARG)、ホスト国、戦闘軍指揮官(combatant commander)、米国務省、沿岸警備隊と行動を調整し、重要な国際貿易ルートに対する潜在的敵対者(potential adversary)の違法な領有権主張を阻止するという別の仮定のシナリオを紹介する。

この潜在的敵対者(potential adversary)は、狭いが交通量の多い航路を通過する国際貨物船をターゲットに、小型ボートによる嫌がらせ作戦を展開している。このシナリオでは、潜在的敵対者(potential adversary)は「成熟した精密打撃体制(MPSR)」を隠れ蓑にして、高速小型ボートのネットワークを使い、通過する船舶に高速で接近し、ニアミスさせ、嫌がらせをする。

嫌がらせキャンペーン(harassment campaign)の目標は、これらの船舶の動きを鈍らせ、貿易を混乱させることである。具体的なジレンマは、小型船舶と交戦してエスカレートするリスクを負うか、貿易とサプライチェーンの混乱という経済的影響を受けるかである。

このようなキャンペーンは国際的な批判を浴びるが、効果的な対応ができないのは、潜在的敵対者(potential adversary)が長期的に領土の既成事実を追求することに対抗できないことを意味する。このジレンマに対し、米海兵隊遠征部隊(MEU)は武力紛争を引き起こすことなく、国際水域での自由な貿易の流れを促進するために、30日間、小型船嫌がらせキャンペーン(harassment campaign)を妨害する任務を負っている。

米海兵隊遠征部隊(MEU)主導の任務の到達目標は、潜在的敵対者(potential adversary)が嫌がらせを追求すればするほど、領土の野心達成に有害となるような、ジレンマを作り出すことである。この任務では、小型ボートの嫌がらせの群れ(harassing swarms)を発見、固定、追跡、阻止、破壊し、(さまざまなメディアを通じて)暴露するための取り組みを計画、調整する。

このため、水陸両用即応グループ(ARG)の艦船と米海兵隊遠征部隊(MEU)、沿岸警備隊(Coast Guard)のカッター、およびホスト国の沿岸警備隊(host-nation coast guard)の艦船2隻が海峡に位置し、物理的な存在感で決意を示す。沿岸警備隊(Coast Guard)の艦艇は、潜在的脅威に最も近い国際水域をパトロールする。水陸両用即応グループ(ARG)の艦船は、海峡を通過する沿岸警備隊(Coast Guard)の艦艇と商船との間の国際水域で哨戒する。

このように目に見える形で存在感を示すと同時に、戦略的メッセージ・キャンペーン(strategic messaging campaign)を大幅に強化し、米国とホスト国の政府高官による共同声明と記者ブリーフィングを定期的に行っている。このメッセージ・キャンペーン(messaging campaign)は、国際水域での航行の自由(freedom of navigation)を確保するために、米国とホスト国の結びつきが強化されていることを強調している。

米海兵隊遠征部隊(MEU)S-2は30日間、水陸両用即応グループ(ARG)のセンサー、沿岸警備隊(Coast Guard)のセンサー、戦域や国のアセット、米海兵隊遠征部隊(MEU)の航空アセットからのインテリジェンスを融合し、紛争地帯の海洋ドメインの認識を維持する。これらのアセットを一体化することで、センサーの多層ネットワークができ、潜在的敵対者(potential adversary)の海岸近くでの小型ボートの群れ(swarm)の形成の兆候や警告を与えることができる。早期警報(early warning)は、群れ(swarm)を追跡し阻止するための鍵である。

群れ(swarm)を発見し、固定し、追跡すると、ホスト国の沿岸警備隊(host nation coast guard)と沿岸警備隊(Coast Guard)の艦船が、商業船に接近する前に群れ(swarm)の編隊を阻止するために移動して、阻止を開始する。沿岸警備隊の船が群れ(swarm)に近づくと、米海兵隊遠征部隊(MEU)の無人航空機(unmanned aircraft system :UAS)が小型船の群れ(swarm)の上を飛行するように操縦される。無人航空機(UAS)にはビデオ録画装置と電波妨害装置が搭載されている。

戦闘軍指揮官(combatant commander)からの権限と許可を得て、事前に承認された作戦コンセプトを使用して、無人航空機(UAS)は群れ(swarm)を記録し、無線通信を妨害する。妨害は、群れ(swarm)の指揮官が行動を指示し調整する能力を混乱させる。ホスト国と沿岸警備隊(Coast Guard)の艦船が同時に到着すると、嫌がらせの群れ(swarm)は結束を失い、その任務を放棄する。

この阻止行動は、米海兵隊遠征部隊(MEU)、水陸両用即応グループ(ARG)、沿岸警備隊(Coast Guard)、ホスト国の沿岸警備隊指揮官(host nation coast guard commanders)の共同声明とともに、米海兵隊遠征部隊(MEU)が嫌がらせの群れ(swarm)のビデオ映像を公開することで締めくくられる。この声明は、米国とホスト国の上級指導者による追加的な声明と記者会見によってフォローアップされ、強化される。

さらなる決意を伝えるため、沿岸警備隊(Coast Guard)の阻止、混乱、暴露作戦は、ホスト国との米海兵隊遠征部隊(MEU)の諸兵科連合のデモンストレーション演習を背景に実施される。マルチメディア・キャンペーンでは、阻止任務と諸兵科連合のデモンストレーションの両方の画像とビデオを使用して、決意を表現している。

結論:Conclusion

21世紀において競争し、効果的に戦うためには、米海兵隊は21世紀型の諸兵科連合(21st-century combined arms)の近代的アプローチを適用することで、進化する安全保障環境に適応する必要がある。諸兵科連合(combined arms)のアプローチは、米海兵隊が機動戦(maneuver warfare)を実行する方法である。迅速で柔軟、かつ機略的な機動は、諸兵科連合部隊(combined arms force)によってのみ達成され、戦闘力、柔軟性、即応性を最大化する多様な手段によってのみ可能となる[14]

20世紀における米海兵隊の成功は、諸兵科連合(combined arms)の習得を特徴としていた。しかし、刻々と変化する今日の環境では、複合化しなければならない能力がさらに多く存在する。この中には、あらゆる用兵のドメイン(domains of warfighting)で活用される広範な新しい情報能力も含まれる。

現在の出来事は、ハイパーコネクテッド・ワールドで精密打撃網が拡散するにつれて、諸兵科連合(combined arms)の性格が変化することを示すものである。「成熟した精密打撃体制(MPSR)」は、米国の競争者が武力紛争の閾値未満で強制的な戦略を適用するために必要なカバーを提供する。「成熟した精密打撃体制(MPSR)」は、エスカレーションを抑止することで、競争者が、被害国や米国の反応を引き起こすことなく、ターゲットとなる近隣諸国に自らの意志を押し付けるという到達目標を段階的に達成することを支援するものである。

さらに、「成熟した精密打撃体制(MPSR)」は、広大な地理的空間にわたってターゲットを迅速に発見し、攻撃することを可能にする。そのためには、膨大な量のデータを収集し、活用することで、ターゲットの品質追跡を達成し、維持する必要がある。大容量ストレージと計算によるデータの融合と相関は、21世紀型の諸兵科連合(21st-century combined arms)の重要な特性として、意思決定のスピード、焦点、スケールを確立する。

データ融合とデータ活用の成功は、相手に対して大規模な優位性を生み出すために組み合わせることができる、ますます多様化する能力に焦点を当てるために必要な、より速い決心速度(decision speeds)を勝利側が経験することを意味する。

この課題は、すべてのドメインで勝つための核心となるものである。スタンドイン・フォース(SIF)も従来の米海兵隊空地任務部隊(MAGTF)も、競争の連続体(competition continuum)のあらゆる地点で、この闘いに勝つための人員、訓練、装備を備えていなければならない。諸兵科連合のジレンマ(combined-arms dilemmas)を作り出し、その成功を利用して戦闘での決定を達成することは、機動戦(maneuver warfare)の基礎である。

21世紀は、思考や戦術が停滞しないように、洗練された諸兵科連合モデル(combined-arms model)へと移行しなければならない。情報という用兵機能(warfighting function)は、諸兵科連合(combined arms)の柱であることを認識しなければならない。我々は、あらゆる創造性と戦術的洞察力(tactical acumen)を駆使して、あらゆる能力を新しい方法で組み合わせ、優位性を生み出し、21世紀における国家の遠征即応部隊(force-in-readiness)としての役割を果たさなければならないのである。

ノート

[1] Gen David H. Berger, “The Case for Change,” Marine Corps Gazette 106, vol 6 (2020).

[2] Headquarters Marine Corps, MCDP 1, Warfighting, (Washington, DC: 1993).

[3] Ibid.

[4] Ibid.

[5] Headquarters Marine Corps, MCDP 1‑3, Tactics, (Washington, DC: 2017).

[6] Headquarters Marine Corps, MCDP 8, Information, (Washington, DC: 2022).

[7] Headquarters Marine Corps, A Concept for Stand‑in Forces, (Washington, DC: 2021).

[8] Ibid.

[9] Ibid.

[10] Ibid.

[11] Ibid.

[12] Tyler Rogoway, “Are Some Of The UFOs Navy Pilots Are Encountering Actually Air- borne Radar Reflectors?” The Drive, June 22, 2019,  https://www.thedrive.com/the-war-zone/28640/could-some-of-the-ufos-navy-pilots-are-encountering-be-airborne-radar-reflectors.

[13] A Concept for Stand‑in  Forces.

[14] The Ellis Group, “21st Century Combined Arms,” Marine Corps Association, December 1,  2016, https://mca-marines.org/blog/gazette/21st-century-combined-arms.