やり続ける – 米海兵隊の進化した電磁スペクトラム作戦(EMSO)への道を維持すること (www.crows.org)

電子戦の脅威とその発展はドメインの区分で言うと「Air Domain」がリードしてきたのであろうと理解している。そのため、電子戦の装備開発は、空中電子戦(airborne EW)を担う空を飛ぶプラットフォームに集中されてきていた。2016年に米国防長官の「情報環境における作戦のための戦略(STRATEGY FOR OPERATIONS IN THE INFORMATION ENVIRONMENT)」が示され、2018年の「情報環境での作戦の統合コンセプト(Joint Concept for Operating in the Information Environment:JCOIE)」の公表以降、米国の各軍種は「電子戦(Electronic Warfare :EW)」を「情報環境における作戦(OIE)」の文脈で、そして更に「電磁スペクトラム作戦(Electromagnetic Spectrum Operations :EMSO)」という広い視野で再整理してきている。

このような流れの中にあって、米海兵隊が「電磁スペクトラム(Electromagnetic Spectrum)」での脅威にどのように備えていくかについて、Association of Old Crows(1964年設立)の「Journal of Electromagnetic Dominance」に掲載の記事を紹介する。情報(Information)の用兵機能(Warfighting Function)化や米海兵隊のMCDO 8「情報(Information)」にも触れ、地上での脅威を考えると米海兵隊の分隊レベルまで電子戦能力を備えることの必要性について述べている。(軍治)

やり続ける – 米海兵隊の進化した電磁スペクトラム作戦(EMSO)への道を維持すること

Staying the Course – Maintaining the Path to Advanced Marine Corps EMSO

By John Haystead

表向きは、米海兵隊は電子戦(electronic warfare :EW)、特に空中プラットフォームがもたらす戦果を高く評価してきた長い歴史があり、2019年の退役まで統合部隊の重要な支援としてEA-6B『プロウラー(Prowlers)』[1]を飛行させてきたのである。

※ EA-6は、アメリカ合衆国のグラマン社が開発した電子戦機。A-6 イントルーダー艦上攻撃機の改設計型であり、主要型であるB型の愛称はプラウラー(Prowler:「うろつく者」の意) (引用:https://ja.wikipedia.org/wiki/EA-6)

EA-6B『プロウラー(Prowlers)』(https://news.usni.org/2019/03/08/marines-sundown-last-ea-6b-prowler-squadron)(訳者追加)

しかし、地上を基盤とする能力は常に極めて限られており、現在、米海兵隊は『プロウラー(Prowlers)』をEA-18Gグラウラー(Growler)などの有人機に置き換えないことを決定しており、空中電子攻撃(Airborne Electronic Attack :AEA)任務の代替アプローチと経路を開発・実施する必要性は、近い将来さらに重要かつ最重要なものとなるであろう。

このような事態を想定して、米海兵隊の電子戦(EW)支持者たちが長年にわたって精力的に活動してきたにもかかわらず、トップレベルの明確な指示と実際の資金提供によって、この要件に対処するプロセスは非常に遅々として進まなかった。しかし、今日、この状況は変わりつつある。

『米海兵隊戦力デザイン2025および2030(Marine Corps Force Design 2025 and 2030)』、特に関連する海兵空地任務部隊(MAGTF)情報環境作戦の適用コンセプト(MAGTF IEOCOE)の出現により、情報作戦の全体的ドクトリンと表明された到達目標への貢献を通じて、米海兵隊の電子戦(EW)能力を大幅に向上させることに対する理解と決意が広がっているようである。

『海兵空地任務部隊情報環境作戦の適用コンセプト(MAGTF IEOCOE)』は2017年にリリースされ、米海兵隊戦闘開発一体化(CD&I)副司令部の電子戦(EW)ブランチ・ヘッドであるブライアン・アッカーソン(Brian Ackerson)米海兵隊中佐によると、「情報環境と電子戦(EW)の見方を大きく変え、海兵空地任務部隊の電子戦(MAGTF-EW)がより確固たる形を取り始められるようになった」と述べている。

アッカーソン(Ackerson)米海兵隊中佐は、用語が「情報環境における作戦(OIE)」に変更されたが、「これは、各米海兵隊遠征軍(MEF)本部に米海兵遠征軍(MEF)情報グループ(MIG)を創設し、すべての『情報環境における作戦(OIE)』活動の最終責任者となる最初の文書である」と指摘する。

米海兵遠征軍情報グループ(MIG)の下には情報コマンド・センター(ICC)があり、電磁スペクトラム・電子戦(Electromagnetic Spectrum – Electronic Warfare :EMS-EW)の作戦と調整の総責任者である電磁スペクトラム作戦セル(Electromagnetic Spectrum Operations Cell :EMSOC)も含まれている。各歩兵中隊には2600s(無線大隊シグナルズ・インテリジェンス(SI)/EW米海兵隊員)、大隊本部と米海兵隊沿岸連隊(MLR)本部にもシグナルズ・インテリジェンス(SI)電子戦(EW)准尉がいる」とアッカーソン(Ackerson)米海兵隊中佐は言う。

これらの米海兵隊員は、各自のレベルで電子戦(EW)計画作地を担当し、米海兵遠征軍情報グループ電磁スペクトラム作戦セル(MIG EMSOC)と権限や作戦の調整を行うことになる。最終的には、電子戦(EW)と主に電子支援(Electronic Support :ES)は、米海兵隊が競争中に米海軍と統合部隊に提供できるもので、電磁スペクトラム(EMS)で感知し、紛争時には高度な電子攻撃(EA)が『スタンド・イン・フォース(stand-in-force)』として我々の行動を可能にすると考えている」。

アッカーソン(Ackerson)米海兵隊中佐は、「米海兵隊戦闘開発一体化(CD&I)」での自身の仕事と役割について、「私の部下は要件を開発し、最終的にシステムを開発・実戦投入する米海兵隊システム・コマンド(Marine Corps Systems Command :MCSC)(バージニア州クアンティコ)と手を取り合って働いている。我々は、すべての電子戦(EW)システム(航空および地上電子戦(EW)の要件)の要件を開発する責任を負っている。

アッカーソン(Ackerson)米海兵隊中佐の赴任前、「米海兵隊戦闘開発一体化(CD&I)」にはジェフ・カワダ(Jeff Kawada)米海兵隊中佐がいた(2015~2019年)。そのため、情報担当副司令官(Deputy Commandant for Information :DCI.)の計画・戦略担当上級情報戦略・政策アナリストのエリック・シャナー(Eric Schaner)とともに、「情報環境作戦の適用コンセプト(IEOCOE)」文書の作成に一体的に関わった一人である。

シャナー(Schaner)は、署名されたばかりの米海兵隊ドクトリン出版物(MCDP)8「情報(Information)」の主執筆者でもある。米海兵隊ドクトリン出版物(MCDP)8「情報(Information)」は、訓練教育コマンド(TECOM)の政策基準部ドクトリン課と協力して作成されたもので、米海兵隊に8つしかないこのような出版物のうちの1つである。米海兵隊ドクトリン出版物(MCDP)8「情報(Information)」は、米海兵隊で8つしかないこのような出版物の1つで、情報を用兵機能(warfighting function)として作成し、米海兵隊の用兵ドクトリン(warfighting doctrine)に作戦のコンセプトを変換している。

この本は、4つの章から構成されている。情報の本質、情報の理論、情報の効果的な使用、情報の制度化の4章で構成されている。シャナー(Schaner)は、調印を発表したプレスリリースで、「どのような軍や軍属であっても、情報の戦術的な運用に関係なく、米海兵隊ドクトリン出版物(MCDP)8「情報(Information)」で概説されている中核となるコンセプトを適用することができる」と述べている。我々の意図は、情報が用兵機能(warfighting function)であり、指揮官の目標を支援するために諸兵科連合(combined arms)や機動(maneuver)を通じて適用できることを全体的に理解することである。

MCDP 8では、「情報」を戦争遂行機能として位置づけた。(写真:米海兵隊)

同プレスリリースで、情報担当副司令官マシュー・グラヴィ(Matthew Glavy)米海兵隊中将は、「米海兵隊ドクトリン出版物(MCDP)8「情報(Information)」は、「米系兵隊戦力デザイン2030(Force Design 2030)-脅威情報に基づき、コンセプト・ベースで、学習のキャンペーン(campaign of learning)に説明責任を負う」-の文脈で書かれている。情報の用兵機能(information warfighting function)を最大化するために、我々は情報を、情報を生成、保護、拒否、投射し、火力や機動と完全に一体化するような21世紀の諸兵科連合の構成要素としなければならない」と言っている。

各システムと能力:SYSTEMS AND CAPABILITIES

『プロウラー(Prowlers)』退役後の米海兵隊の電子戦(EW)システムと能力について説明すると、現在の米海兵隊の電子戦(EW)能力のほぼ代名詞となっているシステムがある。航空機の場合、AN/ALQ-231 Intrepid Tiger II(IT II)ファミリーは、イラクの自由作戦(Operation Iraqi Freedom :OIF)(2003~2011年)が行われていた頃、米海兵隊スペクトラム一体化ラボ(カリフォルニア州ポイント・ムグ)が開発・構築した『迅速な開発能力(rapid deployment capability :RDC)』としてスタートした。

アッカーソン(Ackerson)米海兵隊中佐は、「米海兵隊を支援するための『プロウラー(Prowlers)』の数が足りなかったので、初期のIT-II (V)1 EWポッドは、米海兵隊のAV-8ハリアー機への初期配備用に開発され、F-18ホーネットにも搭載する予定だった」と述べている。(V)1は2011年に開発されて以来、基本的に米海兵隊遠征部隊(MEU)の『ハリアー(Harriers)』で飛行していたが、F-18やKC-130機への追加展開は当初の計画通りにはなかなか進まなかった。

現在、米海兵隊の『ハリアー(Harriers)』も『プロウラー(Prowlers)』と同様、F-35の登場により、IT II(V)1からの脱却が進められている。

ALQ-231(V)3 Intrepid Tiger IIは、2016年にUSS Waspに搭載されたMEU 22で初飛行し、通信ESおよびEAを提供する。新しいバージョンでは、MV-22航空機のオンボード構成や、KC-130J航空機のロール・オン/ロール・オフ・システムとして搭載される予定である。(写真:米海兵隊)

F-35には固有の電子戦(EW)能力があるため、IT IIを搭載する予定はない。

「IT-IIは時間とともに成熟し、『迅速な開発能力(RDC)』から正式な予算化事業プログラム(Program of Record :POR)に移行し、新しい改良型(V3)がUH-1「ヒューイ(Huey)」ヘリコプターに配備された」とアッカーソン(Ackerson)米海兵隊中佐は述べている。このシステムは現在、米海兵隊遠征部隊(MEU)とともに展開する米海兵隊軽攻撃ヘリ(Marine Light Attack Helicopter :HMLA)分遣隊で使用されている。

初期作戦能力(Initial Operational Capability :IOC)を達成したIT II (V)3は、今年末にはフルアップの能力を発揮する予定である。アッカーソン(Ackerson)米海兵隊中佐によると、「(V)3は(V)1よりも方向探知(Direction Finding :DF)と電子支援(ES)の能力が高く、(V)1が持っていた固有の通信妨害電子攻撃(EA)能力も備えている」そうである。

もう一つのバリエーションであるIT II(V)4は、2021年夏にMV-22Bオスプレイ機で初飛行した。こちらもポッドとしてではなく、初めて内部に能力を組み込んだ。アッカーソン(Ackerson)米海兵隊中佐は、「(V)4バリアントは、ロール・オン/ロール・オフ・キットのシステム・バリエーションである。昨年、MV-22 Ospreyで開発試験(Developmental Testing :DT)が行われ、今年の夏から秋にかけて運用試験(Operational Testing :OT)が行われる最新のバリエーションである。VMM飛行隊に相当数を配備する予定である」。

アッカーソン(Ackerson)米海兵隊中佐によると、「(V)4はV3にやや似た能力を持ち、電子支援(ES)/方向探知(DF)能力が追加されている」そうである。今後、米海兵隊はKC-130タンカー用のIT IIの(V)5型も開発中である。IT II (V)1ポッドもKC-130への搭載を想定していたが、(V)5バージョンは実際の航空機の改造プログラムとなる予定だ。

アッカーソン(Ackerson)米海兵隊中佐はまた、現在、海兵空陸任務部隊(MAGTF)の中高度・長期耐久型無人航空機システム(UAS)の遠征(MUX/MALE)プラットフォームに搭載される可能性のある電子支援(ES)能力に焦点を当て、様々な技術を研究していると報告している。現在、MQ-9 Reaperがこれにあたる。一時期、米海兵隊はRQ-21 Blackjack 無人航空システム(UAS)に電子戦(EW)ポッドを搭載することを検討したが、進まず、いずれにせよ、現在はRQ-21を廃棄している。

IT IIの(V)1の通信電子攻撃(Comms-EA)型から(V)3、(V)4、(V5)と変遷し、将来的には無人航空システム(UAS)も視野に入れている」と、アッカーソン(Ackerson)米海兵隊中佐は総括している。全体としては、現在持っている電子攻撃(EA)タイプの能力を維持しつつ、電子戦(EW)サポート/センシングタイプの役割に重点を移していく予定である」。

地上を基盤とする作戦とシステム:GROUND-BASED OPERATIONS AND SYSTEMS

アッカーソン(Ackerson)米海兵隊中佐の観察によると、米海兵隊の電子戦(EW)は地上側でも進展している。『戦力デザイン(force design)』で進めてきたすべてのことは、歩兵分隊レベルまでの高密度/オンデマンド型の能力を持つことを本当に目指しており、2600sやシグナルズ・インテリジェンス(SI)電子戦(EW)専門家(無線大隊(RadBn)の系兵隊員を考えてください)が運用するものと、「付随的運用」に焦点を当てた多数のシステムとの混合能力を視野に入れている。

米海兵隊員が背負うバック・パックやウェアラブル・システムを組み合わせたものだが、米海兵隊員が操作するものではない。IT-IIと似ているのは、航空機のパイロットやクルー・チーフが操作するシステムを求めていない点である。任務の計画策定などは、2600の専任の運用者が地上からポッドやシステムを遠隔操作するか、機内から操作することが期待されている。特にUH-1、MV-22、KC-130の場合は、機体の後部で簡単に任務を実行することができる。

アッカーソン(Ackerson)米海兵隊中佐によると、現在の『戦力デザイン(force design)』では、米海兵隊は各歩兵中隊にシグナルズ・インテリジェンス(SI)/電子戦(EW)チームを置くことを検討している。「つまり、各中隊に約半ダースの2600のチームがあり、彼らは中隊レベルの電子戦(EW)専門家となる。彼らはまた、分隊レベルで米海兵隊の付随的運用者によって運ばれるシステムの任務計画策定、指揮・統制、任務の取り込みを提供する責任のある人々でもある。

中隊レベルのチームは、現在実戦配備されている米海兵隊の通信エミッター感知・攻撃システムII(Communication Emitter Sensing and Attack System II :CESAS II)も保有することになる。これは米海兵隊唯一の高出力地上移動型電子攻撃(EA)装置で、海兵空陸任務部隊(MAGTF)に脅威の通信を探知、拒否、妨害する能力を提供する。通信エミッター感知・攻撃システムII (CESAS II)のアップグレードにより、新システムは軽量化され、周波数範囲も2倍になった。アッカーソン(Ackerson)米海兵隊中佐は、「このシステムの最新型は昨年初期作戦能力化(IOCd)され、各チームがこのシステムと追加SIGINT機器を運用する予定である。電子戦(EW)側の焦点は、電磁スペクトラム(EMS)でセンシングして統制することである」。

ノースカロライナ州キャンプ・レジューンでの演習で、第2海兵師団(MARDIV)第2海兵連隊第1大隊(1/2)が使用した上図の最新版通信エミッター感知攻撃システムII(CESAS II)は、昨年、初期運用能力を達成した。(写真:米海兵隊)

今後、米海兵隊システム・コマンド(MCSC)は、新しい『ファミリー化した海兵空陸任務部隊電子戦地上システム(MAGFOS)』の開発を進めている。アッカーソン(Ackerson)米海兵隊中佐の説明によると、「これは、付随的なオペレーターのために検討しているシステムファミリーで、チーム・ポータブル版(ただし、ほぼ固定サイトでの運用に近いもの)を含み、対無人航空システム(UAS)、対遠隔統制足跡爆破装置(counter-RCIED)、対通信、対C5ISRセンター能力が組み込まれている」とある。また、米海兵隊の水陸両用戦闘車(ACV)や高性能偵察車(ARV)など、さまざまな車輪付き車両に搭載することを想定した車両搭載型も用意されている。

さらに、バック・パック型と、ヘルメットや対空ベストに装着するウェアラブル型の2種類の携行型『ファミリー化した海兵空陸任務部隊電子戦地上システム(MAGFOS)』が計画されている。アッカーソン(Ackerson)米海兵隊中佐は、「歩兵にとって重要なのは、電磁スペクトラム(EMS)で敵を検知し、ターゲットにできるセンシング能力を持つことである。航空の側面に結びつくと、焦点は電子支援(ES)の部分にあり、目標はドメイン認識(domain awareness)である」と述べている。

アッカーソン(Ackerson)米海兵隊中佐は、『ファミリー化した海兵空陸任務部隊電子戦地上システム(MAGFOS)』は、対等な敵対者に対して使用されることを意図していることを強調し、この取り組みの全体的な焦点は、異なるバリエーションが完全に堅牢な能力を提供するために一緒に動作することであると述べている。すべてのシステムは、電磁会戦管理システム(Electromagnetic Battle Management System :EMBS)スペクトラム・サービスのフレームワークを通じてネットワーク化されている。

「しかし、複数のシステムがあれば、相乗効果やネットワーク化された電子攻撃(EA)/電子支援(ES)能力が得られ、すべてが連動して高度な能力を発揮することができる。ウェアラブル・ギアから始まり、基本的な方向探知(DF)と脅威の特定を行う分隊レベルのシステム、バック・パック型ではある程度の基本的な防御電子攻撃(EA)、そしてマウント型やチーム・ポータブル型に移行すると、より強力な能力が得られるようになる」。

『ファミリー化した海兵空陸任務部隊電子戦地上システム(MAGFOS)』は、米陸軍のC4ISR/EW Modular Open Suite of Standards (CMOSS) アーキテクチャも採用している。「アッカーソン(Ackerson)米海兵隊中佐は、「これはプログラムの重要な部分であり、CMOSSシャーシにカード型ソリューションを搭載することを検討している」と述べている。

必ずしも電子戦(EW)システムだけである必要はない。ソフトウェア無線機(SDR)や高度な受信機など、無線システムは電磁スペクトラム(EMS)での感知や戦場での認識にも使用することができる。また、複数のボックスを必要としないため、1台の車両に多くのシステム能力を搭載することができ、ベンダーに縛られることなくスペースを節約することができる。

米海兵隊システム・コマンド(MCSC)は2020年に『ファミリー化した海兵空陸任務部隊電子戦地上システム(MAGFOS)』の開発を開始し、現在はチーム・ポータブル・エレメントの中層取得を進めている。その他の能力は開発中であり、今後5年以内にこれらのシステムを提供することを到達目標としている。

アッカーソン(Ackerson)米海兵隊中佐は、「米海兵隊沿岸連隊(MLR)や新歩兵大隊などの新しい『戦力デザイン(force design)』が始まると、これらの部隊が最初にシステムを受け取ることになる。その間に、古い『対無線式統制即席爆発装置電子戦装置(CREW)』タイプのシステムを廃棄し、現在はバック・パック型のModi IIと車両搭載型(Modi Vehicle Power Adapter II – MVPA II)の多機能電子戦(multi-function EW :MFEW)を使用している。Modi IIは現在実戦配備されているが、車両搭載型はより米海兵遠征部隊(MEU)的な任務、あるいは対反乱戦的な役割を意図しており、過去2年間に納入されている」という。

それはプロセスである:IT’S A PROCESS

米海兵隊の全く新しい包括的な電子戦(EW)能力の実現は、すでに数十年来の継続的なプロセスであり、その過程で障害や課題がなかったわけではない、というのが最も適切な表現である。

これらの課題の中で特に重要なのは、このような馴染みのない技術を採用することに対し、長らく他の優先事項に任務と訓練の焦点を合わせてきた想定ユーザが組織的に抵抗してきたことであった。『プロウラー(Prowlers)』コミュニティを除いて、電磁スペクトラム作戦(EMSO)の大局的な利点と重要性は、米海兵隊全体で十分に理解され、説明されることはなかった。そして、EA-6Bの退役とともに、その擁護と専門知識の基盤さえも急速に失われ始めた。

このような成長痛の初期の例として、最初のイントレピッド・タイガー・ポッド(Intrepid Tiger pods)を米海兵隊のハリアー飛行隊に配備したときのことが挙げられる。当然のことながら、『ハリアー(Harriers)』のパイロットは、すでにキネティック兵器の運搬という明確な戦闘任務があると認識しており、通信妨害の支援という新しい役割にはあまり乗り気ではなかった。

それに加えて、目に見えない効果を持つこの奇妙なポッドが、自分たちの味方機の通信を妨害しているという事実もあり、天下一品とはとても言えなかった。『プロウラー(Prowlers)』に代わる効果的な空中電子戦(airborne EW)を構築し、運用することは、この最初の遠慮を克服するための大きな課題の一つであった。

しかし、現在では、教育や訓練の充実により、IT IIを利用するすべてのプラットフォームで、初期の抵抗はほとんどなくなっているとアッカーソン(Ackerson)米海兵隊中佐は言う。「自機の通信への干渉の問題に関しては、「大した問題ではないと考えている」と彼は言う。「ただ、それを回避するための戦術、技術、手順(TTP)を開発しなければならない。それはすべて、優れた任務計画策定によって対処できることなのである。

地上側では、米海兵隊は別の問題を発見した。例えば、米海兵隊の各無線大隊(RadBns)は、これまで相反する新しい電子戦(EW)の任務を負わされることになった。無線大隊(RadBn)は情報局の信号収集任務を専門としており、またそれと密接に関連するため、敵の通信を妨害するのではなく、聞き取るように訓練されていた。そして、彼らが使用し、熟知している機器には、電子攻撃(EA)システムは含まれていなかった。

アッカーソン(Ackerson)米海兵隊中佐は、各無線大隊(RadBns)が電子戦(EW)の任務に全面的に参加するようになったと述べている。この能力が成熟し、実戦配備されるにつれて、2600のコミュニティは、「そうだ、この電子戦(EW)は実際に重要だ」と言うようになり、彼らは、我々がどのように活動したいか、また、統合部隊および海軍部隊のために、米海兵隊が何をもたらすかを考える上で、彼らが不可欠の一部となることを理解して、これらすべてを確実に支持している。SIGINTだけでなく、SIGINTと連動した電子攻撃(EA)も含めたセンシング能力である」。

アッカーソン(Ackerson)米海兵隊中佐は、初期段階では、専門職のSIGINT /EW米海兵隊員を訓練するのは各無線大隊(RadBns)の責任であるが、「真の目標は、これらのSIGINT /EWチームが歩兵大隊に所属し、完全に一体化されて、大隊を完全に支援しながらシームレスに活動することだ」と述べている。

米海兵隊は、EWの運用をより小さな部隊にまで広げたいと考えている。昨年末、第3海兵隊第3大隊、第3海兵隊遠征軍情報グループ第3無線大隊、第25歩兵師団第2歩兵旅団戦闘チームは、ハワイ州スコフィールドバラックスで合同EW訓練イベントを行い、EWによって小規模部隊の殺傷力をいかに高められるかについて学んだ。(写真:米海兵隊)

おそらく、米海兵隊における電磁スペクトラム作戦(EMSO)の決定的な重要性の受け入れ、採用、および評価を真に広く達成するという点で、学んだ最も重要な教訓と克服する必要がある最大の障害は、自ら招いたものであったかもしれない。

カワダ(Kawada)米海兵隊中佐の観察によると「見落とされがちなのは、技術は簡単な部類に入るということである。産業界はそれを構築しようとするが、それを実行するために必要な人々の経験と専門知識、そしてDOTMLPF(ドクトリン、組織、訓練、資材、リーダーシップ、人員、施設)が難しい部分なのである。これは、米海兵隊が『プロウラー(Prowlers)』を退役させたことで、全くうまくいかなかったことかもしれない。米海兵隊の電子戦(EW)の専門性を維持することは、それほど意図的に行われてきたわけではなく、時間を要する部分である」。

次の人へ:NEXT PERSON UP

既に述べたように、米海兵隊に高度な電子戦(EW)能力を導入するプロセスは、多くの成熟した段階を経ており、現在も進行中である。しかし、変わらないことは、一貫した全体戦略の必要性に焦点を当て続けていることであり、このことは、「米海兵隊戦闘開発一体化(CD&I)」の電子戦(EW)支部長を務める者、その他同様の任務を担う行動役員レベルの者など、米海兵隊の電子戦(EW)指導者の中核グループによって着実に主張され、推進されてきたのである。

カワダ(Kawada)米海兵隊中佐は、「目標は常に、次の人にバトンタッチして前に進むという戦略を一貫して貫くことだった。長年、この戦略を守り、前進させるために、誰もが自分の役割を果たしてきたのである。特定の技術に焦点を当てるのではなく、この戦略の鍵となるのはアーキテクチャであり、そのアーキテクチャに接続されるすべての光沢のある物(shiny objects)が出たり入ったりするのである。最近になって、この仕事を任された我々は、能力の開発に携わってきたが、全体の戦略は、我々の前にいた人たち(came before)が設定したものである」。

この「前にいた人たち(came before)」の中には、AOC(Association of Old Crows)や電磁スペクトラム作戦(EMSO)のコミュニティで広く知られているジェイソン・シュート(Jason Schuette)米海兵隊中佐(退役)とマット・プール(Matt Poole)米海兵隊少佐(退役)が含まれている。カワダ(Kawada)米海兵隊中佐とアッカーソン(Ackerson)米海兵隊中佐の前に、ジェイソン・シュート(Jason Schuette)米海兵隊中佐(退役)は、「米海兵隊戦闘開発一体化(CD&I)」の電子戦(EW)部門長を務め、その後、米海兵隊電磁スペクトラム作戦(EMSO)のドクトリンと要件開発にも携わった。

彼の投稿の中から、マット・プール(Matt Poole)米海兵隊少佐(退役)は、第1海兵航空兵器戦術飛行隊(MAWTS-1)のスペクトラム戦(Spectrum Warfare)部門長を務め、また、統合電子戦(EW)センター(JEWC)で統合要件を扱う任務を2度経験した。現在の米海兵隊電磁スペクトラム作戦(EMSO strategy)戦略と電磁波スペクトラム作戦セル(EMSOC)として知られるものの基礎となる計画のいくつかを見直すことに興味がある人は、米海兵隊機関誌(Marine Corps Gazette)の2015年8月号に掲載された彼らの記事「サイバー電子戦-作戦の継ぎ目を閉じる(Cyber Electronic Warfare – Closing the Operational Seams)」を参照されたい。

その記事の中で、「米海兵隊は、実行を適切に調整、対立解消、同期化するために、『スペクトラム戦(spectrum warfare)』能力を全体的に計画策定、一体化、調整するための集中組織を必要としている…」という先見の明のある言葉がある。『海兵空地任務部隊情報環境作戦の適用コンセプト(MAGTF IEOCOE)』は、明らかにこの考え方を反映し、遂行している。アッカーソン(Ackerson)米海兵隊中佐は、「すべての軍とDOD全体が、ここ数年、情報作戦とスペクトラム作戦と優位性の重要性に本当に目覚めている。それは、単にバラバラなものの束ではなく、良いことだ」と述べている。

もちろん、これが現実の予算や資金調達にどう反映されるかは、まだわからない。いつものように、「論より証拠(The proof will be in the pudding)」。カワダ(Kawada)米海兵隊中佐は、「良いニュースとしては、米海兵隊が米海兵遠征軍情報グループ(MIG)を構築し、3つ星の情報担当副司令官(マシュー・グラヴィ(Matthew Glavy)米海兵隊少将)を立ち上げたことで、電磁スペクトラム作戦(EMSO)がこの『情報のバケツ(bucket of Information)』の中に入っているので、「情報環境における作戦(OIE)」組織構造内だけでなくリーダーシップ領域でも得ることができた」と述べている。

本稿で引用・言及した人物に加え、筆者はスコット・クーパー(Scott Cooper)米海兵隊中佐(退役)の貴重な見識と協力に感謝したい。クーパー(Cooper)米海兵隊中佐は、EA-6B飛行隊長を含む20年間の米海兵隊勤務を経て、米海兵隊電磁スペクトラム作戦(EMSO)の初期の提唱者、計画者の一人である。