戦場で決心を下す (Marine Corps Gazette)

機動戦は死んでいないが、進化しなければならない (www.usni.org)」「機動は死んだ? (RUSI Journal)」、「現代陣地戦とそれに勝つ方法-Valerii Zaluzhnyi (athenalab.org)など、戦いの方法に関する議論がネット上で見受けらえるようになった。その中でも機動戦(maneuver warfare)について再考を促すような論調が見受けられる。ここでも、昨年、米海兵隊機関誌「ガゼット」での受賞記事(2022 Maj Gen Harold W. Chase Prize Essay Contest: Second Place)を紹介する。(軍治)

2022 Maj Gen Harold W. Chase Prize Essay Contest: Second Place

戦場で決心を下す

機動戦を哲学ではなく方法として再定義する

Achieving Decision on the Battlefield

Redefining maneuver warfare as method, not philosophy

by Maj Christopher A. Denzel

Marine Corps Gazette • August 2022

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クリストファー A.デンゼル(Christopher A. Denzel)米海兵隊少佐は米海兵空地タスク部隊(MAGTF)の計画担当者であり、米陸軍高等軍事研究学校(SAMS)を卒業している。彼は現在、米第3海兵遠征軍(III MEF)のG-5に所属しており、不朽の自由作戦(OEF)に従軍し米第24海兵遠征隊(24th MEU)に所属した。

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米艦隊海兵隊マニュアル1(FMFM 1:『用兵(Warfighting』が出版されて以来、機動戦(maneuver warfare)は信仰の対象となった。非生産的な議論が30年経っても頑固に続いていることは、機動戦(maneuver warfare)が専門的な言説に抵抗するようになったことを示している。

機動戦(maneuver warfare)は、敵を打ち負かす数少ない広範な方法のひとつではなく、戦いの哲学(warfare philosophyのひとつとなり、将来の競争にとって重要な議論を混迷させている。

機動戦(maneuver warfare)に固執するあまり、戦略上の目標や作戦上の文脈、戦術的条件とは無関係に、最善の闘い方を主張し、軍種を愚の骨頂に陥れている。

私は、機動戦(maneuver warfare)は、戦法としての信頼性の低さを覆い隠す定義上の問題を抱えていると主張する。本稿では、機動戦(maneuver warfare)、消耗戦(attrition warfare)、陣地戦(positional warfare)を機動戦(maneuver warfare)と同等の手段として再定義し、各手法の信頼性を評価することで、米海兵隊員が機動戦(maneuver warfare)を採用したいと切に願っているにもかかわらず、消耗戦(attrition warfare)や陣地戦(positional warfare)を採用する理由を説明する。

機動戦(maneuver warfare)を再コンセプト化すると、敵を倒すには消耗戦(attrition warfare)と陣地戦(positional warfare)が望ましいことがわかる。タディアス・ドレイク・ジュニア(Thaddeus Drake, Jr.)米海兵隊中佐のような著者は、なぜ30年経っても「システム的崩壊(systemic collapse)が勝利を収めた明白な例を少なくとも1つ挙げることができないのか」と問いかけている[1]

用語の定義:Definition of Terms

ある歴史家は、第一次世界大戦の塹壕戦(trench warfare)は陣地戦(positional warfare)であったと説得力のある表現をしている。また、MCDP-1「用兵(Warfighting)」と一緒になって塹壕戦を消耗的(attritional)と非難する者もいる[2]。一方、ドクトリン上の機動戦(maneuver warfare)の定義では、敵の闘う意志(will to fight)を打ち砕くには、有利な陣地を獲得し、敵の重要な能力や戦力を消耗させることが重要であると、コンセプトが混在している。明らかに、明確化が必要である。

2017年、エイモス・フォックス(Amos Fox)米陸軍少佐は、戦争を「戦場の状況に応じて陣地戦(positional warfare)、消耗戦(attrition warfare)、機動戦(maneuver warfare)の間で揺れ動く3部構成 “と表現した[3]。米陸軍のドクトリンはフォックス(Fox)のコンセプトを支持し、敵部隊を打ち負かす効果として物理的、時間的、認知的の3種類を概説している。以下の説明は、これらが消耗戦(attrition warfare)、陣地戦(positional warfare)、機動戦(maneuver warfare)の定義と密接に追跡することを示している。

消耗戦:Attritional Warfare

フォックス(Fox)は、消耗戦(attrition warfare)は「交戦国が損失を補充する以上のペースで、交戦国の装備、人員、資源を侵食、破壊する」と書いている[4]。この定義を単純化すれば、「敵の闘う能力容量(capacityを低下させる方法」となる。戦力を削ぐといっても、直接アプローチや正面攻撃は必要ない。重心分析(center of gravity analysis)は、間接的ではあるが、本質的に消耗的なアプローチ(attritional approach)を提供する。

陣地戦:Positional warfare

陣地戦(positional warfare)とは、「戦術、火力、移動などを駆使して、相手をある陣地から別の陣地へと移動させ、さらなる攻略を可能にする、あるいは、さらなる攻略のための地域へのアクセスを拒否すること」である[5]。この定義を単純化すれば、「敵の闘う能力(capabilityを低下させる方法」。陣地戦(positional warfare)はあまり論じられることがないため、この定義には詳細な説明が必要である。

高等軍事研究大学院の卒業生3人組(フォックスを含む)は、陣地戦(positional warfare)の復活についてこう主張している。

米国が原子時代を開始したとき、大国間の陸上戦争の支配的な性格は、作戦的機動(operational maneuver)から陣地的防衛へと移行した。イギリスの理論家J.F.C.フラー(J.F.C Fuller)が主張するように、現代の陣地戦(positional warfare)の状況は、核保有国間の「物理的な」陸上侵攻を「時代遅れのもの(obsolete thing)」にしている。ロシアや中国のような地域大国は、自国領土内のシステムを攻撃し、即座に戦略的エスカレーションを引き起こさない限り劣化させることができない、前例のない偵察・攻撃防衛を駆使して、主権と隣接する領土を守っている[6]

要するに、対等な競争者は、消耗戦(attrition warfare)のエスカレーション技法には適さないのだろう。

対等な敵対者は、こちらが戦意(体制存続への存立的脅威)を脅かすことに成功すれば、「爆弾(the bomb)」に頼ることができるため、機動戦(maneuver warfare)も同様にエスカレートする可能性がある。残るのは、拒否戦略(strategies of denial)のように、軍事的優位性になるように戦力を行使する能力を競争者から奪う陣地戦技法(positional warfare technique)である。

この枠組みの中では、遠征前進基地作戦(EABO)とスタンドイン・フォース(SIF)は、主に陣地戦(positional warfare)に依存している。米海兵隊がこうした作戦コンセプトの有効性を実感するには、米海兵隊員は機動戦(maneuver warfare)に常に忠実(Semper Fidelisでなければならないと感じることなく、陣地戦(positional warfare)について会話できるようにならなければならない。

同様に、米海兵隊員は、陣地戦(positional warfare)を採用することによって、多くの者が機動戦(maneuver warfare)と混同している近代戦の本質的原則(例えば、任務戦術や統合兵器)を捨てる必要はないことを理解しなければならない。ウェイン・ヒューズ・ジュニア(Wayne Hughes, Jr.)米海兵隊大尉(退役)も、四半世紀前にこの混同を認識していた。「機動戦(maneuver warfare)が知的に闘うことにほかならないとすれば、その対極にあるのは「愚かな闘い(stupid warfare)」であって、消耗戦(attrition warfare)ではない」[7]

度々寄稿しているタディアス・ドレイク(Thaddeus Drake)米海兵隊中佐を含む複数の軍事理論家や著者は、「システム的崩壊(systemic collapse)」が勝利につながった実例がないことを指摘している。(写真:米海兵隊報、2020年10月号)

機動戦:Maneuver warfare

フォックス(Fox)はドクトリンよりも機動戦(maneuver warfare)を「相手の心理的意志を攻撃し、相手が抵抗する意志を失うほど不利な立場に追い込むことを何よりも追求する」(強調)と狭義に定義している[8]。これとは対照的に、ドクトリンは、機動戦(maneuver warfare)は有利な位置から敵を攻撃するために機動しようとするものであるとして、機動戦(maneuver warfare)と陣地戦(positional warfare)の目的を混合している。

フォックス(Fox)はドクトリンを誤解しているのだろうか?陣地戦(positional warfare)を使って消耗戦(attrition warfare)を脅かし、敵対者の闘う意志(will to fight)を砕くことが機動戦(maneuver warfare)を定義するものなのか。この順序と結果によって機動戦(maneuver warfare)を定義するのは、ドレイク(Drake)が書いている空想(fantasy)である。

歴史はこの勝利の理論(theory of victory)をほとんど支持していない。さらに悪いことに、消耗戦(attrition warfare)が信頼に足る脅威となるためには、それが計画され、資源が確保されなければならない。そのため、機動戦(maneuver warfare)は敵に強制される枝葉の計画となり、友軍の方法が敵の選択肢となる。

このように、機動戦(maneuver warfare)の定義上の問題の核心を示す3つの選択肢がある。

第一に、ドクトリンにあるように、認知的効果(cognitive effects)を達成するための陣地戦(positional warfare)(または消耗戦(attrition warfare))の方法として機動戦(maneuver warfare)を定義することができる。

第二に、機動戦(maneuver warfare)の認知的効果(cognitive effects)を、その後の活用のための条件設定として説明できる。

第三に、より狭義には、物理的・時間的に大きなコストをかけずに認知的効果(cognitive effects)を得ようとする試みと定義できる。

最初の定義は、機動戦(maneuver warfare)を方法ではなく結果にしている。単に勝つことの利点を讃えるドクトリンは、読者に勝つための複数の方法を与えて、書き直した方がよいだろう。

第二の定義は逆の問題を提起する。機動戦(maneuver warfare)が方法ではなく条件になってしまうのである。機動戦(maneuver warfare)の議論では、敵の首尾一貫性を打ち砕くことに焦点が当てられることが多すぎる。

果てしない迂回(turning movement)が到達目標でなければ、消耗戦(attrition warfare)か陣地戦(positional warfare)で攻略するのが答えである。混乱状態にある敵は、破壊されるか移動させられない限り、再編成する。このため、機動戦(maneuver warfare)は精神的抑制のための戦術であり、勝利を達成するための方法ではない。

第三の定義は、消耗戦(attrition warfare)や陣地戦(positional warfare)の論理により合致しており、本稿ではこれを用いる。この定義は、機動戦(maneuver warfare)を空想の域に追いやり、30年以上経っても機動戦(maneuver warfare)の成功例を挙げることができないのはなぜかというドレイク(Drake)の疑問に答えるものである[9]

それが本当なら、なぜなのか。後述するように、米海兵隊が機動戦の方法(maneuver warfare methods)を採用しないのは、怠慢ではなく、敵の意志(enemy’s will)を攻撃することは当てにならないという認識である。

方法の信頼性:Reliability of Method

プランとは、特定の状況下で成功または失敗した後にのみ検証される仮説である。状況は常に変化するため、指揮官はこのような実験を一度しか行うことができず、信頼できる方法を好むようになる。

信頼性とは、指揮官がまず実行を検証し、次にその成果を活用する能力(可逆性に依存する成果)によって構成される部分もある。この検証可能性と可逆性という2つの用語が、信頼性を調査するための基礎となる。

検証可能性:Verifiability

消耗戦(attrition warfare)は本質的に検証可能である。敵の欺瞞や損失を隠そうとする試みによって検証可能性は不完全になるが、破壊された資源は観察し解釈することができる。

陣地戦(positional warfare)は、主観的である陣地優位と、さらに不確実性を増す搾取やアクセス拒否を必要とする。このため、陣地戦(positional warfare)は検証可能性が低い。

機動戦(maneuver warfare)は最も検証不可能な方法である。なぜなら、「戦う意志」とは、指標があるにもかかわらず、それ自体が目に見えない決定だからである。

撤退が遅延戦術なのか、反撃のためのリセットの試みなのか、あるいは結束の破砕から生じる敗走なのか。指揮官は、戦意が「ここ」で失われ、「そこ」では失われないことを、どのようにして知るのだろうか?そして、どこからが「ここ」で、どこからが「そこ」なのか。

戦術的なタイムライン上では、指揮官は敵の意志(enemy’s will)を推測することしかできない。検証は数日後、数カ月後になることもある。降伏でさえ、誠意が証明されるのは事後になってからである。少なくとも、敵の意志(enemy’s will)を攻撃することは、莫大なインテリジェンス上の課題を伴う。

可逆性:Reversibility

消耗戦(attrition warfare)は、敵が補給するよりも早く資産を破壊するため、戦術的なタイムライン上では不可逆的となる[10]。破壊された戦車は、敵がどんなに幸運で賢くても破壊されたままであり、死んだ戦闘員には意志がないだけでなく、決して考えを変えない。

陣地戦(positional warfare)は、敵対勢力を移動させるか、ある区域へのアクセスを拒否しようとするものである。そのためのメカニズムは可逆的であり、陣地戦(positional warfare)も同様である。高地を取れば、敵は夜逃げするかもしれないし、他のユニットがあなたの陣地を側面から攻撃し、あなたを転覆させ、優位性を失うかもしれない。陣地優位には時間がかかる。

機動戦(maneuver warfare)の可逆性が明らかになったはずだ。闘う意志(will-to-fight)はすぐに逆転させることができる。援軍が現れ、包囲された敵の意志(enemy’s will)を回復することもある。敗走した部隊が復活することもある。また、包囲部隊が前進を行なえば、包囲された部隊は崩壊する代わりに後方地域の脅威となる。

本質的に可逆的なものは信頼できるのだろうか?軍事的保守主義はそうではないことを示唆している。戦闘という究極の争いの場では、指揮官は確定性を好む。

交渉人は人質犯を説得したり(闘う意志(will to fight))、犯人と人質の間に身を置いたり(位置的優位)することができる。それでも、警察が危機を終わらせるためには、文字通り手錠で人質の腕(能力容量(capacity))を奪う必要がある。

直感的な検証:Intuitive Validation

簡単な思考実験は、消耗戦(attrition warfare)の信頼性の優位性を示している。地対空ミサイルが作動しているのに向かって、ミサイル発射機が撃つ意志を失っていることを信じて飛行するパイロットがいるだろうか?どんなパイロットでも、何らかの「有利な立場(レーダーを妨害する)」を得てから、消耗(attrition)を通じて戦場から脅威を決定的に排除したいと思うだろう。

その場合でも、厳密な結節分析ではレーダーの破壊を好む(目標数が少なくても効果は同じ)が、パイロット(命にかかわる保守的な人)は、たとえミサイルがレーダーなしでは作動できなくても、ミサイルの破壊を好む。これは、撃つつもりのないものに弾の入っていない武器を向けないのと同じ理由である。

交戦相手の意志(belligerent’s will)を攻撃することは、本質的に可逆的であり、検証するのが非常に困難であるため、実際に実行するのは難しい。演習では実際の意志(real will)は影響を受けないので、訓練はより難しい。

機動戦(maneuver warfare)の神話は正しいと感じられるが、歴史的記録では消耗戦(attrition warfare)が優勢である。戦いの理論家たちは、四半世紀前にこのような空想的な機動戦観(fantastic view of maneuver warfare)から脱却した。しかし、米海兵隊の「機動戦主義者(maneuverists)」は、徹底して凝り固まったままである。

ここからどこへ向かうのか?:Where to Go from Here?

この分析は、機動戦(maneuver warfare)を軽んじるのではなく、機動戦(maneuver warfare)とは何か(そしてそうではないのか)についての理解を深め、米海兵隊員が戦場で勝利するための適切な方法を見極める助けとすることを意図している。その意図は、米海兵隊員にいきなり陣地戦(positional warfare)や消耗戦(attrition warfare)の技法を採用するよう説得するのではなく、米海兵隊員がすでにそれらを使用していることを納得させることにある。

ドクトリンは、機動戦(maneuver warfare)が「米海兵隊のやること(what Marines do)」であるという建前を捨て、我々が使おうとする作戦コンセプトを支持する考え方を受け入れなければならない。さらに、方法の信頼性は、部隊が採用する方法を理解し、熟知することによっても構成されるため、ドクトリンと実践を調和させることが不可欠となる。

米海兵隊員が機動戦の方法(maneuver warfare methods)を実行していると思い込めば、実際に採用する陣地戦の技法(positional warfare techniques)や消耗戦の技法(attrition warfare technique)を失敗するに違いない[11]

さらに、作戦戦術のようなベスト・プラクティスを機動戦(maneuver warfare)と混同することは、方法に関する真剣な言説を妨げる。「消耗主義者の手紙(attritionist letters)」や「機動主義者の論文(maneuverist papers)」のような藁人形演習は、機動戦(maneuver warfare)を米海兵隊の禁句にすることで、いかに専門的な言説を抑圧しているかの典型的な例である。このような強迫観念を抱く軍種は他にない。

基礎となるドクトリンは、戦術レベルおよび作戦レベルにおいて、競争の連続体(competition continuum)全体に適用可能な勝利の理論について、さまざまな選択肢を提供すべきである。それは、米陸軍ドクトリンの撃破(敗北)メカニズム(defeat mechanisms)から借用することもできる。

カリフォルニア州トゥエンティナインパームスの米海兵隊航空地上戦闘センターで行われた米海兵隊空地タスク部隊(MAGTF)用兵演習(MWX)は、米海兵隊員の複合火器と機動訓練に重点を置いている。

(写真:コートニー・ホワイト米海兵隊軍曹)。

また、指揮官の意図の方法の部分は、決まり文句(「敵をジレンマの角に立たせる」)やベスト・プラクティス(「諸兵科連合を使う」)ではなく、敵を倒すために意図された実際の方法を説明するために使うこともできる。

指揮官が「方法:私は敵の抵抗力を削ぐために消耗戦(attrition warfare)を用いる」と書く指揮官を想像するのは難しい。しかし、この嫌悪感は非合理的である(反対の「敵の闘う意志(will to fight)を消し去る」というのは、さらに不合理に聞こえる)。

指揮官がすでに採用している多くの方法は消耗的(attritional)である。考えてみよう。「敵対者のY能力を低下させるために、長距離砲を大量投入し、Xに対して攻撃的航空支援を出撃させる」。

米海兵隊空地タスク部隊(MAGTF)用兵演習(MWX)はまた、米海兵隊員に対し、部隊対抗の環境下で、同様の能力を持つ自由な思考の敵と戦うことを課し、機動戦、消耗戦、陣地戦をよりよく理解するための道筋を示す。

(写真:ジャクィリン・デイビス(Jacquilyn Davis)米海兵隊上等兵)

専門家は、MCDP-1「用兵(Warfighting)」が悪と呼ぶからといって、正しい道具を使いたがったり、その名前で呼ぶことにこだわったりすべきではない。戦いの形態(forms of warfare)を単に戦場で敵を打ち負かす方法として理解するならば、消耗戦(attrition warfare)や陣地戦(positional warfare)について成熟した話ができ、機動戦(maneuver warfare)を意味のある、使用可能な定義にまで落とし込むことができる。

機動戦(maneuver warfare)への盲目的な固執は、手段や最終目的に関係なく、軍種を固定された方法に縛り付ける。米海兵隊がMCDP-1「用兵(Warfighting)」を無視する理由は、このドクトリン上の拘束具にあるのかもしれない。

現在の作戦コンセプトと安全保障環境は、敵の戦意(enemy’s will to fight)を削ぐものではないことは自明である。接近阻止戦略(antiaccess strategies)に対抗し、敵の闘う意志(will to fightが持続しているにもかかわらず、競争相手が目標を達成する能力を奪うことである。上記の定義によれば、このようなコンセプトは陣地戦(positional warfare)に大きく依存している。それなのに、我々がそれについてほとんど語らないのは、何とも奇妙なことである。

ノート

[1] サディアス・ドレイク・ジュニア(Thaddeus Drake Jr.)の「MCDP-1の空想(The Fantasy of MCDP-1)」米海兵ガゼット誌2020年10月号 (Quantico, VA)。この見解はドレイク一(Drake)人ではないし、ドレイク(Drake)が初めてでもない。軍事史家のハンス・デルブリュック(Hans Delbrück)も同様に、「会戦を伴わなくとも、敵がこちら側の求める条件を受け入れるようなところまで追い込む可能性は、究極的には、流血を伴わずに戦争を遂行することを可能にする純粋な機動戦略につながる。しかし、そのような純粋な機動戦略は、弁証法的なゲームに過ぎず、戦史上の現実の出来事ではない。」と結論付けている。(ハンス・デルブリュック(Hans Delbrück)『近代戦の夜明け(The Dawn of Modern Warfare)』ウォルター・J・レンフロー・Jr.(Walter J. Renfroe, Jr.)訳 [ネブラスカ大学出版、1990年])。政治学者リチャード・ベット(Richard Bett)が戦略の「幻想(Illusion)」について考察している中で、彼が提起している戦略の防衛策のひとつは、現実の世界では常に「賢すぎる」、「より複雑で洗練されたアプローチに直面した際の消耗の信頼性である。複雑な戦略を立てることは、アクティブな銘柄選びのようなものだ。リスクが高く、高いリターンが期待できるが、そのためにはウォーレン・バフェット(Warren Buffet)やビスマルク(Bismarck)のような並外れた人材が必要なのだ。消耗はインデックスのようなものだ:市場の上昇や軍事力の優位性といった基本的なトレンドが有利であれば、ゆっくりと、しかし確実に機能する」(リチャード・ベッツ(Richard Betts)『戦略は幻想か?』(国際安全保障 [マサチューセッツ工科大学出版局, 2000年秋]).最後に、カタル・ノーラン(Cathal Nolan)の作品『The Allure of Battle(会戦の魅力)』は、戦いの歴史において消耗が実質的に唯一の勝利のメカニズムであると結論づけている。「多くの戦争では、会戦による最終決着よりも、士気と物資の消耗が終局を意味する。たいていの戦争でもそうだ。どの時代においても、大国間の戦争ではほとんど常にそうである。いずれの場合も、戦略的損失は、先の戦術的成果をより大きな紛争における決定的なものとして受け入れることを拒否した敵との長期にわたる消耗の戦争の後に生じた」。(カタル・ノーラン(Cathal Nolan)「会戦の魅力:戦争の勝利と敗北の歴史」[オックスフォード大学出版局 2019年]).米海兵隊の規範から外れることを厭わなければ、他にも数え切れないほどの例がある。

[2] Headquarters Marine Corps, MCDP 1, Warfighting, (Washington, DC: 1997).

[3] Amos Fox, “A Solution Looking for a Problem: Illuminating Misconceptions in Maneuver-Warfare Doctrine,” Armor, (Fall 2017), available at https://www.benning.army.mil.

[4] “A Solution Looking for a Problem: Illuminating Misconceptions in Maneuver-Warfare Doctrine.”

[5] Ibid.

[6] Nathan Jennings, Amos Fox, and Adam Taliaferro, “The US Army is Wrong on Future War,” Modern Warfare Institute, (December 2018), available at https://mwi.usma.edu.

[7] Wayne Hughes Jr., “Naval Maneuver Warfare,” Naval War College Review, (Newport, RI: Naval War College, Summer 1997).

[8] “A Solution Looking for a Problem: Illuminating Misconceptions in Maneuver-Warfare Doctrine.”

[9] “The Fantasy of MCDP-1.”

[10] より長い時間軸で見ても、失われた資源を交換することは、紛争を維持する国家の能力に消耗をもたらす。新しい砲弾はすべて、他の兵器システムに使われなかった資金と金属を意味する。また、軍事資源に費やされる1ドルはすべて、国家の経済的福利に投資できない1ドルである。実際、歴史を通じて消耗戦が決定的な理由もここにある。

[11] これは、指揮官が機動戦であると信じている消耗戦や陣地取りの方法について、適切なパフォーマンスや有効性の尺度を形成することについては言うまでもない。MCDP 1が奨励する二枚舌は、指揮官が戦域について尋ねる質問が現実に即していないため、戦域を誤解する結果となる。