米国、軍用ドローン輸出規制を緩和
米国はUAV(UAS)の輸出について、これを大量破壊兵器運搬能力を有するミサイルの拡散を防止する国際的かつ自発的なレジームであるMTCRに従ってきた国内の規制を緩和するとのことです。
今まで米国やMTCR加盟国がUAS移転について自ら手足を縛っている間に、中国やロシアが中東などにおける需要に応じ、軍事的な繋がりを強化していく状況を看過できないということだろうと思います。まだMTCRそのものの緩和をするものではありませんが、米国の規制の中ではすべてのUAVが輸出可能となります。一応、制限は時速800km以下(民間航空機の巡航速度程度)としていますが、この速度は巡航ミサイル以上の極超音速兵器がこの緩和で漏れ落ちないような配慮かと思われます。
米国、軍用ドローン輸出規制を緩和
この変更により、現在米国で製造されているすべてのカテゴリーIのドローンの輸出規制が緩和される。
その中には、米国の対テロ戦争で重要な役割を果たした長時間周回(Long-loitering)監視能力を持ったシステムや武装システムも含まれる。
By Paul McLeary on July 24, 2020 at 3:52 PM Breakig Defense
Washington: トランプ政権は、海外の同盟国にドローンを販売する際のルールを大幅に変更した。
これにより、より大型で時速800 kmで飛行できる高速なドローンまでが新たなカテゴリーとして海外に輸出できるようになる。
発表は数週間前から予想されていた。ブッシュ政権ではドローン市場で中国やイスラエルとの競争が激化する中、少なくとも2年間に渡って35カ国が参加するミサイル技術管理レジーム(MTCR)の規則改正に取り組んできた。
これまでは、500キログラムのペイロードを300キロメートル以上運搬できるシステムはすべて、外国への持ち出しについて「極めて輸出が不許可となる可能性が高いもの:strong presumption of denial」の対象となっていた。時速800キロまでのドローンに対するこの「否認の推定」を撤回することで、今や友好国は米国の防衛産業が現在生産しているほぼすべてのドローンの機種を導入することが可能になった。「MQ-1 Predators」 や 「MQ-9 Reaper」は、その新しいカテゴリー規定の半分の速度であるが、「RQ-4 Global Hawk」 でさえも最高速度は時速約575キロで、今回のカテゴリーの速度制限をはるかに下回る。
今回の変更は、「武器システムを友好国や同盟国に売却する際に米政府が実施する大規模な監視プロセスを廃止するものではない」「今回の変更によってもすべての移転案件は、引き続き通常の審査基準の対象となる、これは非常に厳格でありその概要は UAV輸出政策ですでに示されている。これには通常兵器移転政策と武器輸出規制法が含まれる。」と政治・軍事問題担当国務次官補のR.クラーク・クーパー氏は語っている。「MTCRのメンバー国にも、中国のような非メンバー国にも、米国政府のように従う規則の変更があれば公表したと同じように公表をしてほしい」とクーパー氏は付け加えた。
これは、中国やイスラエルが市場に進出し、世界中で使用されている米国やNATOのシステムと互換性のないドローンを購入させることへの懸念が高まることに対し防衛産業は長年働きかけてきた成果でもある。
業界団体である航空宇宙産業協会の国際問題担当副会長、レミー・ネイサン氏は、「米国のこの動きの重要な側面は、透明性があることだ。」「何について調整を行っているのか、なぜそれが合理的なのか、どれだけ透明性があるかを踏まえ基準を設定しているので、他の国々もこのような調整するつもりがあるなら、我々の基準に従ってほしい」と述べている。
この変更により、米国の防衛産業が現在製造しているすべてのカテゴリーIのドローンが輸出できるようになる。
その中には、米国政府が過去20年間にわたって行ってきた反テロ戦争で重要な役割を果たしてきた、長時間周回(Long-loitering)監視能力を持ったシステムや武装システムも含まれる。
米国がこれらのドローンを広く輸出することを望んでいない懐疑的な人も多い。
スティムソン・センター(Stimson Center)のレイチェル・ストール副所長は最近、「紛争の性質を変え、その使用の正当性、合法性、戦略的有効性について疑問や懸念を生じさせ、現場での民間人の生活や生活に直接影響を与える能力についての議論は、より慎重になる必要がある。」と書いている。
米国製の航空機や武器を使ってイエメンの民間人を無謀に爆撃しているサウジアラビアのような政府を罰することをトランプ政権はためらってきたが、武装ドローンを手に入れれば更に無謀なことが起こりうる。
米国は速度の基準を拡大することで、これは米国の将来の販売可能性に関するもので、これはMTCR加盟34カ国にも強いるというものでははない。
また、すべてのメンバーがこの動きを支持しているわけではないようだ。「確かに、MTCRの中には異なるパートナーからの意見が混在している。」とクーパー氏と語っている。
トランプ政権はMTCRに署名した国々と協議したが、「加盟国からの関心の有無はさまざまだった。」。
AIAのNathan氏は、多くの同盟国や友好国が軍事用無人機の共同生産や共同開発に関心を持つようになってきているが、MTCRではUAVがミサイルであるとされてと同じ扱いをされている限り共同生産や共同開発で他国と協力することは難しかった。今回のこの動きはUASについて米国と同盟国と協力可能性の拡大すると述べている。
参考 MTCR カテゴリーⅠ
カテゴリーⅠ (ITEM1 ~ ITEM2)
(ア)品目:搭載能力500キログラム以上かつ射程300キロメートル以上の完成したロケット・システムや完成した無人航空機システム及びロケットの各段,再突入機,ロケット推進装置,誘導装置等のサブシステム。
(イ)規制態様:最大限の慎重さが求められるため,カテゴリーⅡ品目と同じ規制に加え,以下の規制の指針が示されている。
(i) 輸出の目的にかかわらず,特段の慎重な考慮が行われ,かかる輸出は不許可となる可能性が極めて大きい。
(ii) カテゴリーⅠ品目の生産設備の輸出は許可されない。
(iii)その他のカテゴリーⅠ品目の輸出は,輸出国政府が,1)輸入国政府による保証を盛り込んだ拘束力のある政府間約束を取り交わし,かつ,2)その品目が申請された最終用途にのみ使用されることを確保するために必要な全ての手段を尽くすことに対する責任を負う場合にのみ,例外的に許可される。