米国防総省における統合作戦コンセプト開発の改善

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米軍の新たなJoint Warfighting Conceptsや、Joint All Domain Operations については、その全部が明らかになるのは、いつのことなのだろうか。印象としては、新たな用兵のコンセプトを開発するとする表明してから多くの時間を要していると感じてしまう。新たな用兵のコンセプトを開発しようとするきっかけは、米国の軍事的優位性を脅かす中国やロシアの台頭であると、理解しているがコンセプトの開発とはどれくらい大変なものなのかは想像がつかない。

中国やロシアが米国を脅かすまでになったのには、それらの国が先進化する技術による兵器の長射程化や高速化などを図ったからであり、更に先進化する通信情報技術が、これまでの陸、海、空のドメインに加えてサイバースペースや宇宙が戦いのドメインとして考えなければいけない状況を作ったからともいえる。

このことは、対象とする敵対者を含めて、軍事組織が行動する作戦環境が劇的に変化してしまった中で、戦いで勝利を獲得するための新たな用兵のコンセプトが求められているともいうことができるであろう。

ここで紹介するのは、新アメリカ安全保障センター(Center for a New American Security:CNAS)の統合作戦コンセプト開発(Joint Operational Concept Development)に関する論稿である。この論稿を執筆したのは米国防総省でコンセプト開発に関わった経験のある二人のシニア・フェローであり、分析の内容にも説得力を感じる。各軍種間の関係や古い考えに固執することが新たな用兵のコンセプト開発の遅れの要因になっているのかとの類推をさせてしまう。

提言において、用兵のコンセプト開発にCombatant Commandに権限を与えてはどうかということや、ウォーゲーム(wargaming)や実験を多用することなどは、目を引くところである。

日本でも参考になるところは多々ある論稿であると考えるところである。

ちなみに、「統合」という用語は「joint」のみに使用し、「integration」「integrated」は「一体化」、または「一体型」等の言葉を当てている。更に「Combatant Command」は、「U.S. Indo-Pacific Command(米インド太平洋軍)」などを示す用語であり、「戦闘軍」を当てている。(軍治)

米国防総省における統合作戦コンセプト開発の改善

Improving Joint Operational Concept Development within the U.S. Department of Defense

By Paul Benfield and Greg Grant

OCTOBER 21, 2021

要約:Executive Summary

米国防総省(DoD)は約40年ぶりに、先進的な軍事的ライバル、特に中国とロシアに対抗するための統合用兵コンセプト(joint warfighting concepts)を開発している。このような最後の取組みは、冷戦時代の1970年代後半から1980年代前半にかけて、ヨーロッパの中央戦線におけるソ連の通常兵器の優位性がもたらす戦略上および作戦上の課題に対処するために行われていた。現在、2018年の国家防衛戦略(NDS)が強調しているように、統合部隊(joint force)は「戦争への備えを優先(prioritize preparedness for war)」しなければならず、それには軍事的優位性(military advantage)を高めるための「革新的な作戦コンセプト(innovative operational concepts)」の開発も含まれる[1]。作戦コンセプト(operational concepts)とは、基本的には将来の戦争のビジョン(visions of future war)であり、将来の部隊(future force)のデザインと開発の指針となるものだが、統合部隊(joint force)はまず、何を使って闘う必要があるかという質問に答える前に、将来の戦争(future wars)をどのように闘うつもりなのかという質問に答えなければならない。

しかし、米国防総省(DoD)が「統合コンセプト(joint concept)が主導する、脅威情報に基づく能力開発(joint concept driven, threat informed capability development)」に移行しようとする場合、統合コンセプト(joint concept)の開発と実験のプロセスが根本的に破綻しているという大きな課題に直面している[2]。冷戦後の時代には、統合作戦コンセプト(joint operational concept)を開発する取組みが繰り返されてきたが、このプロセスでは、将来の部隊(future force)や能力開発の指針となるような革新的な用兵のアプローチ(warfighting approaches)を生み出すことはできなかった。むしろ、このプロセスでは、大きな変化をもたらさないように意図的に作られたようなコンセプトが生み出されている。これらのコンセプトは真の「統合(joint)」ではなく、各軍種の優先事項を優先した既存の軍種のコンセプトを最小公倍数でまとめたものである。開発プロセスを通過した革新的な統合アイデア(joint ideas)は、あまりにも水増しされた曖昧なものであり、変化を引き起こすことはできない(したがって、主要なステークホルダーの利益を脅かすことになる)。このような環境では、個々の軍種のコンセプトが統合コンセプト(joint concepts)よりも優先され、投資の優先順位が高くなる。

しかし、各軍種は作戦レベルでの相互依存性が高まっているため、用兵コンセプト(warfighting concepts)や重要な投資は統合(joint)で行う必要がある[3] 。さらに、現在のウォーゲーム(wargaming)や分析によると、この作戦上の相互依存関係は、中国やロシアのような能力の高い対等な敵対者(peer adversary)との将来の紛争において重要な側面となることが示唆されているが、それが強みとなるか弱みとなるかはまだわからない。先進的で適応力のある敵対者(advanced, adaptive adversary)は、米軍(U.S. military)のギャップや継ぎ目を探し出し、それを利用して優位に立つことが予想される。この点で、現在の統合部隊(joint force)は、航空の優位性(air dominance)、海洋の優位性(maritime dominance)、情報の優位性(information dominance)など、米国が長年培ってきた重要な作戦上の優位性(operational advantages)に対抗する手段を開発している対等な敵対者(peer adversary)とのハイ・エンドな戦争には十分な「統合(joint)」を備えていない。本稿で述べるように、対等な敵対者(peer adversary)との紛争が必要とする規模と強度の戦争を成功させるには、まったく新しい用兵の方法(ways of warfighting)が必要であり、そのためには、個々の軍種能力を実際の「統合(joint)」戦闘部隊に一体化する強制機能が必要となる。脅威に焦点を当てた統合用兵コンセプト(joint warfighting concepts)の開発に向けた最近の取組みが成功すれば、その結果が実際に発生する可能性が最も高いことを表している。

本稿では、米国防総省(DoD)が過去に統合コンセプト(joint concepts)を開発しようとした3つの試み(エアランド・バトル(AirLand Battle)、エア・シー・バトル(Air-Sea Battle)、そして最近の取組みである「先進化した能力と抑止力パネル(Advanced Capabilities and Deterrence Panel:ACDP)」)について簡単に説明する。これらのケースをもとに、ストーブ・パイプ化した偏狭な軍種主導の取組みを克服することの難しさや、軍種中心のコンセプトを構築し、それを統合性の古錆(patina of jointness)で覆うことの欠点を明らかにしている。これらのケースは、冷戦後の統合コンセプト(joint concept)が、統合コンセプト(joint concepts)開発プロセスの永続的な病理によって、作戦上の革新を促進したり、軍種への投資の優先順位に変化をもたらしたりするのに役に立たないものになってしまったことを浮き彫りにしている。

現在行われている新しい統合用兵コンセプト(joint warfighting concepts)の開発作業は、米国防総省(DoD)にとって、コンセプト開発を具体的な脅威とその結果としての作戦目標に集中させるという、長い間待たされてきた機会となっている。今回の取組みは、米国防総省(DoD)が、漠然とした、あるいは定義されていない敵対者のグループに対して統合部隊(joint force)がどのように作戦するのが望ましいかという理想的な概念(idealized notions)を支持するのではなく、特定の脅威への対処を中心にコンセプト開発を行っている、この数十年で初めての試みである。しかし、アイデアの競争を促進しない合意プロセス(consensus process)と広くみなされているものを大幅に変更しなければ、米国防総省(DoD)は過去に犯したコンセプト開発の同じ過ちを繰り返す危険性がある。さらに、新しい統合コンセプト(joint concepts)は、将来の部隊(future force)デザインのためにその実行可能性を検証するために、実験の戦役を通じて厳密にテストされ、洗練されなければならない。現在、その実験の部分が欠けている[4]

統合参謀(Joint Staff)は、長年にわたって優先順位をつけず、適切なリソースを提供してこなかった統合コンセプト(joint concept)開発能力を再構築しようとしている。将来の部隊(future force)デザインを一変させる可能性のある真の意味での新しい用兵の方法(ways of warfighting)を生み出すには、国防長官室(Office of the Secretary of Defense:OSD)と統合参謀本部議長(Chairman of the Joint Chiefs of Staff:CJCS)および統合参謀本部副議長(Vice-Chairman of the Joint Chiefs of Staff:VCJCS)が、新しい統合コンセプト(joint concepts)をシステムに組み込むために持続的な注意を払う必要がある。米国防総省(DoD)の上級指導者は、創造的なアイデアを生み出すことよりも、既存の優先事項や長年の特権を守ることを狙いとした合意の成果物(consensus products)に向かうそれぞれの軍種の傾向を克服しなければならない。

本稿では、統合コンセプト(joint concept)開発プロセスを改善するために、以下のような提言を行っている。

  • 将来の作戦環境における優先課題に、統合コンセプト(joint concept)開発の焦点を当てる。
  • 各戦闘軍(combatant commands:CCMDs)に統合コンセプト(joint concept)開発を推進する権限を与える。
  • 合意(consensus)ではなく、広範なウォーゲーム(wargaming)と実験を通じて、将来の戦争(future war)の代替ビジョンを探り、統合コンセプト(joint concepts)を検証する。
  • 野外演習や艦隊演習での実験を拡大する。
  • 「赤として考える(Thinking Red)」という省の文化を育むことで、アイデアの競争力を高める。
  • コンセプト開発者と技術者の間の緊密な一体化を促進する。
  • 焦点を絞ったハイレベルなコンセプトおよび能力開発組織を設立する。

このプロセスを修正することは、有用な統合作戦コンセプト(joint operational concept)を開発するための重要な第一歩だが、米国防総省(DoD)は、統合コンセプト(joint concept)の開発を適切な視点から開始し、適切な問題に焦点を当てるとともに、将来を見据えたものにしなければならない。今日まで、中国とロシアに関する米国防総省(DoD)の考え方は、冷戦後の「一極集中(unipolar moment)」に統合部隊(joint force)が持っていた作戦レベルの優位性(level of operational dominance)を維持・回復することに焦点を当ててきた。また、統合参謀が作成した「Joint Vision: 2010」などのコンセプトは、「情報の優越(information superiority)」を前提としており、「フルスペクトラムの優位性(full spectrum dominance)」という目標を達成するためのものである[5]。このような作戦上のキメラ(operational chimeras)を追求することは、米国の軍事的優位性(U.S. military advantages)を損なわせようとする中国やロシアの取組みによって生じた難解な作戦上の問題を解決するために、米国防総省(DoD)が限られたリソースの多くを費やすことになる。米国防総省(DoD)のコンセプトと能力開発は、既存の業務のやり方(way of doing business)に対する極小の限界利益を追求するのではなく、中国とロシアに作戦上のジレンマを作り出すことに焦点を当てるべきである。

本質的に統合コンセプト(joint concepts)だけが、敵の決心空間(enemy’s decision space)を効果的に制約し、あらゆる作戦ドメインから統合部隊(joint force)全体で生成される様々な潜在的脅威に直面させて敵にジレンマを与えることができる。

統合参謀本部副議長(VCJCS)であるジョン・ハイテン将軍が、過去30年間の米軍(U.S. military)が作戦してきた方法に基づいて新たな統合用兵コンセプト(joint warfighting concepts)を開発しようとした初期の取組みは、2020年後半に一連のウォーゲーム(wargaming)でテストしたところ、全くの失敗に終わったと述べたことで、米国防総省(DoD)が依然として伝統的な用兵の方法(ways of warfighting)に縛られていることが明らかになった[6]。この結果を受けて、ハイテン将軍は、その後の反復作業で代替的な用兵のアプローチ(warfighting approaches)を開発する取組みに拍車をかけたと述べている。

新たな敵対者と新たな作戦上の課題に対処することを意図としているにもかかわらず、新たな統合用兵コンセプト(joint warfighting concept)を策定する最初の取組みが、伝統的な用兵の方法(ways of warfighting)に大きく依存していたことは、急ごしらえの製品(rushed product)であったことを示している。脅威に焦点を当てた作戦コンセプトを成功させるためには、敵対者の能力やコンセプト、想定される期間の統合部隊(joint force)の能力などを徹底的に分析し、コンセプトの形成(shaping)や精選に入る前にインプットを合成する(synthesize)ために必要な時間が必要である。これまでの統合コンセプト(joint concept)開発の傾向は、製品を作り上げることや合意(consensus)を得ることが優先され、地味ではあるが必要な深い分析作業は行われていなかった。

国家防衛戦略(NDS)が新しい戦争のコンセプトを求めてから3年以上が経過した。米国防総省(DoD)は、全く新しい用兵のアプローチ(warfighting approaches)を必要としている。米軍(U.S. military)が現在行われている方法で作戦を続けていては、対等な敵対者(peer adversary)に対する競争力を維持することは不可能であろう。もし、このプロセスが官僚的な論争に巻き込まれたり、軍種の合意(consensus)を得るためにわずかな変化しか生まなかったりしたら、それは悲劇としか言いようがない。

最後に、用兵上の課題(warfighting challenges)に対するコンセプト上の解決策の提案は、それがどんなに優れたものであっても、文官や制服を着た最上級の指導者に支持され、権限を与えられた場合にのみ、この事業の変更(programmatic change)を促すことになる。冷戦後の米国防総省の実績は決して安心できるものではないが、新しい統合用兵コンセプト(joint warfighting concepts)を開発しようとする取組みを支える政治的・官僚的な勢いは相当なものであり、中国とロシアが提起する戦略的・作戦的な課題は、イランや北朝鮮、テロリスト集団による課題よりもはるかに緊急で深刻なものである。もし、米国防総省(DoD)が正しいプロセスを踏んで、中国とロシアにジレンマを与えることに集中できれば、そしてそれが大きな場合、統合部隊の変革という点で大きなプラスの効果が得られるであろう。

はじめに:Introduction

作戦コンセプト(operational concepts)は基本的にアイデアであり、アイデアは重要である。元米陸軍大将のデビッド・ファスタベンド(David Fastabend)が適切に表現している。作戦コンセプト(operational concept)とは、「現在の戦い(warfare)の問題は何か、それをどのように解決するか」という問いに答える、「ハッ!」とするようなアイデアである[7] 。作戦コンセプト(operational concept)は、部隊が将来どのように作戦し、将来の作戦環境の変化に適応しようとしているかのビジョンを示すものである。コンセプトの開発と実験は、適切に行われれば、軍隊の最も困難な課題を、戦域や戦争の戦役レベル(campaign level of war)でどのように解決するかについて、創造的な思考を促すことができる。コンセプトはまた、そのコンセプト上のビジョンを実行するために将来の部隊(future force)が必要とする能力を述べるものである。

米海兵隊のジェームズ・マティス(James Mattis)大将は、米統合部隊コマンド(U.S. Joint forces Command:JFCOM)の司令官を務めていたとき、作戦コンセプトの重要性を強調した。「コンセプトは組織を変えることができる」と述べ、米陸軍のエアランド・バトル・ドクトリンや米海兵隊の機動戦(maneuver warfare)の受け入れと、そしてその結果としての「劇的な制度上の変化」の原動力となった革新的な作戦コンセプトを紹介している。コンセプトは、「新しい作戦方法の実験と探求を動機づけることで変化を導き、新しい用兵の方法(ways of warfighting)を生み出す」ものである。「適切に行われれば、コンセプトは、ドクトリンが存在しない課題に対する解決策を提案したり、既存のドクトリンに代わるものを提案したりする」と述べている。コンセプトは「実験のための基礎を提供する」ものであり、「将来の部隊(future force)や能力開発の中心(heart)に当たる」ものである[8]

マティス将軍は異例ともいえる率直な評価で、統合コンセプト(joint concept)開発プロセスは失敗だと断言した。「新しいコンセプトは、しばしば官僚的な命令やコンセプト上の必要性によって開始され、その数の多さから意味のある分析ができないほどに増殖している」と書いている。マティス将軍によれば、統合コンセプト(joint concept)開発プロセスは、「自分自身を永続させるために存在しているように思える」ものであり、生み出された成果は、将来の部隊(future force)開発にほとんど影響を与えていないという。このプロセスは焦点を欠いており、「コンセプトの多くは新しい貢献をほとんどせず、既存のアイデアを新しい用語で蒸し返しているに過ぎない」と述べている[9] 。マティス将軍は、このプロセスにおける米統合部隊コマンド(JFCOM)の役割を明らかに周辺的なものと考え、ロバート・ゲイツ国防長官(当時)に米統合部隊コマンド(JFCOM)の解散を進言し、米国防総省(DoD)はその後2011年にこれを実行した[10]

最近の米国防総省(DoD)の「統合(joint)」一体化の取組みと同様、統合コンセプト(joint concept)の開発は1986年のゴールドウォーター・ニコルズ米国防総省再編法に端を発している。この法律は、「イーグル・クロー作戦(Operation Eagle Claw)」(1980年、イランでの米国人人質救出作戦の失敗)や「アージェント・フューリー作戦(Operation Urgent Fury)」(1983年、グレナダ侵攻作戦)において、米国防総省(DoD)の長年にわたる省庁間の協力・調整不足が原因で、統一的な取組みができなかったことを解消することを狙いとしている。また、統合参謀本部議長(CJCS)に統合コンセプト(joint concepts)やドクトリンの策定を任せることで、将来の部隊(future force)や能力開発の指針となる明確なビジョンが生まれることを期待した[11]。しかし、その期待通りの結果は得られなかった。

将来の戦い(future of warfare)についての考え方のギャップを完全に解消し、その用兵上の優位性(warfighting advantages)の侵食(erosion)を食い止めるためには、米国防総省(DoD)は新しい作戦コンセプトだけでなく、作戦コンセプトを開発する新しい方法を開発しなければならない。

30年以上にわたって繰り返されてきた統合作戦コンセプト(operational concept)の開発の取組みは、米軍の戦い方(way the U.S. military fights)や統合部隊のデザイン方法に実質的な変化をもたらすことはなかった。冷戦後、米軍(U.S. military)が他の追随を許さないほどの優位性(advantage)を持ち、各作戦ドメインを超えた圧倒的な支配力(dominance)を持っていた時代には、これらの失敗は、特に地域的に劣勢な大国との競争や非正規の敵(foes)との紛争の中では、用兵上の影響をほとんど与えなかった。しかし、もはやそのような状況ではない。2018年版国家防衛戦略(NDS)が明らかにしているように、中国やロシアとの軍事的競争の再燃に加えて、数十年に及ぶ将来への投資の延期や浪費により、統合部隊(joint force)の相対的な軍事的優位性(relative military advantage)が損なわれ、現在では「空、陸、海、宇宙、サイバースペースのすべてのドメインが争われている」状態である[12]

新しいマルチドメイン・コンセプトを開発しようとする各軍種の取組みは一定の成果を上げているが、「それらはほとんど統合(joint)ではなく、地理的な各戦闘軍指揮官(geographical combatant commanders)に十分な決心の空間(decision space)を提供していない」[13] 。現在の戦略環境では、既存の軍種のアイデアをつなぎ合わせるだけでは達成できない、より深い一体化が求められている。本質的に統合コンセプト(joint concepts)だけが、敵の決心空間(decision space)を効果的に制約し、あらゆる作戦ドメインから統合部隊(joint force)全体によって生み出される様々な潜在的脅威を敵に突きつけることで、敵にジレンマを提示できる。ゴールドウォーター・ニコルズは確かに統合性(jointness)を高めることに成功したが、1)以前はサイロ化されていた用兵ドメイン(warfighting domains)の重複と一体化、2)重要なドメイン(key domains)で米国の軍事的優位性に匹敵する、あるいはそれを超える複数の軍事的競争相手の台頭、などを予測することはできなかった。統合コンセプト(joint concept)の開発プロセスを進めるにあたり、新しく革新的なコンセプトを開発しようとする際に、統合部隊(joint force)が対処しなければならないギャップや継ぎ目を特定することが重要である。

米統合部隊コマンド(JFCOM)の解散に伴い、米国防総省(DoD)にあった統合コンセプト(joint concepts)開発の能力が大幅に失われたため、本質的な統合コンセプト(joint concept)の開発はさらに困難なものとなった。2011年以降、米国防総省(DoD)は統合コンセプト(joint concept)の開発と実験に優先順位をつけたり、適切なリソースを提供したりしておらず、コンセプト作業の最終的な責任は曖昧なままである。それが変わったのは、2018年の国家防衛戦略(NDS)の発表で、対等なライバルに対して優位に立つための新しい統合コンセプト(joint concepts)が求められたからである。現在、統合参謀は、統合参謀本部J-7の統合部隊開発部門(Directorate for Joint Force Development)の中でその能力を再構築すると同時に、新しい統合コンセプト(joint concepts)を開発しようとしている。

将来の戦い(future of warfare)を考える上でのギャップを完全に解消し、用兵の優位性(warfighting advantages)の侵食(erosion)を食い止めるためには、米国防総省(DoD)は新しい作戦コンセプトだけでなく、作戦コンセプトの新しい開発方法を開発しなければならない。そのためには、米国防総省(DoD)が従来のコンセプト開発プロセスや欠陥を克服する必要がある。各軍種、各機能、各戦闘軍(CCMDs)の垣根を越えてアイデアを競い合うことができなければ、付加価値の少ない、水増しされた合意の答え(consensus answers)が繰り返されることになる。なぜなら、米軍(U.S. military)は将来の戦争(future wars)の戦い方を変えなければならず、そうしなければ大国のライバルである中国とロシアのいずれかに敗北するリスクを負うことになるからである。同等かそれに近い状態にある2つの戦力に対して軍事的優位性(military advantage)を確保しようとすると、まったく新しい用兵の方法(ways of warfighting)が必要になる。そのためには、コンセプトという形の革新的なアイデアが中心となる。

本稿では、現在の統合コンセプト(joint concept)開発プロセスがなぜ最適な結果をもたらさないのか、また、ライバルの対等な軍事大国である中国やロシアに対して優位性を生み出すためには、革新的な用兵の方法(ways of warfighting)を生み出し、新たな能力開発を促進するための新しいアプローチが必要であることを論じている。具体的には、米軍の伝統的な用兵のアプローチ(U.S. military’s traditional warfighting approaches)では、質的に同等であり、戦力の相関関係において顕著な優位性を持つライバルの軍事力に対して十分な対応ができない理由を説明している。なぜなら、どちらのライバルに対しても、潜在的な紛争は米国から遠く離れた彼らの玄関口で戦われるからである。この記事では、統合コンセプト(joint concept)開発のケース・スタディを検証し、真の意味での統合コンセプト(joint concept)作業を妨げるプロセス上の欠陥を明らかにしている。最後に、統合コンセプト(joint concept)開発を改善し、それが戦力デザインや能力開発に及ぼす影響を改善するために、プロセスと組織に関する多くの提言を行っている。

なぜ、今、統合作戦コンセプトが問題なのか:Why Joint Operational Concepts Matter Now

歴史学者のバリー・ワッツ(Barry Watts)とウィリアムソン・マーレー(Williamson Murray)は、軍事的革新に関する重要な研究の中で、技術と軍事が急速に変化した時代に、第二次世界大戦前の軍事機関が新しい用兵の方法(ways of warfighting)に適応することができたかどうかを決定づける要因を特定した。「彼らは、将来戦のコンセプト(concepts of future war)を探求し、テストし、改良するための制度的プロセスは、平時における軍事的革新を成功させるための、文字通りの必須条件である」と書いている[14]。著者は、空母航空と水陸両用戦(carrier aviation and amphibious warfare)の例を挙げている。そこでは、コンセプト開発と実験の反復プロセスが、第二次世界大戦中に作戦上の勝利につながった米国の軍事の革新と新しい用兵の方法(ways of warfighting)を促進した。

今日の戦略環境は、航空機、機械化、無線、レーダーなどの能力が大きく進歩した中で、多面的でダイナミックな技術競争、軍事競争が繰り広げられた1920年代、1930年代の戦間期に似ている点が多い。しかし、ドイツが「電撃戦」を、米海軍が「空母航空」を、イギリスが「一体型防空システム(integrated air defense system)」を開発したように、すべての国がこれらの新しい技術や武器を利用して新しい戦い方を開発できたわけではない[15]。このような環境で革新(innovation)を推進するためには、米国防総省(DoD)が将来戦(future war)のビジョンをテストし、改良するための厳格なプロセスに着手することが必要である。その際には、歴史家のワッツとマーレーが指摘した、将来戦(future war)のビジョンが作戦上の現実とうまく結びついていなければならないという教訓にも耳を傾けなければならない[16]

次のセクションで説明するように、米軍(U.S. military)はあまりにも長い間、レガシーな用兵のアプローチ(warfighting approaches)に頼ってきたが、それは先進的な対等なライバルに対する紛争を特徴づける作戦上の現実に直面したときに、実用性が低下する。将来の戦争(future war)に関する新しい概念を構築することは、理想的には紛争が勃発するよりもずっと前に、全く新しい作戦上の課題に対処するための制度的な革新と適応を推進するための中心となる。「作戦コンセプトの戦争は、弾丸が飛んでくるのを待っているわけではない」とファスタベンドは書いている[17]。「それは毎日続くものであり、だからこそ我々は決して休むことができない」。大国のライバルである中国とロシアが軍事的優位性を求めて軍の近代化を進めていることから、米軍(U.S. military)は統合コンセプト(joint concept)開発を早急に改善する必要がある。

レガシーな用兵アプローチの限界:Limitations of the Legacy Warfighting Approach

2018年の国家防衛戦略(NDS)では、米国防総省(DoD)の焦点を「大国による侵略の撃退」、具体的には、能力を高めた中国と復活したロシアにシフトしている。この国家防衛戦略(NDS)は、対等な敵対者に対するハイ・エンドの用兵(high-end warfighting)に向けて統合部隊(joint force)を準備することで、抑止力を強化することを狙いとしている[18]。ロイド・オースティン国防長官は、中国が現在の脅威(pacing threat)であることを明らかにしている。したがって、西太平洋で人民解放軍(PLA)とのハイ・エンドの闘い(high-end fight)において統合部隊(joint force)が直面するであろう作戦上の課題を解決することに、米国防総省(DoD)の焦点と優先順位が置かれるべきである[19]。このような課題は数多くあり、東アジアにおける人民解放軍(PLA)との相対的な軍事的地位の侵食(erosion)に対する米国防総省(DoD)の対応が遅れているため、蓄積され続けている。この侵食(erosion)は、国家防衛戦略(NDS)で強調されているように、米国防総省(DoD)の長期にわたる「戦略的萎縮の期間(period of strategic atrophy)」の産物である[20]

このような知的萎縮(intellectual atrophy)の影響は、統合コンセプト(joint concept)の開発にも及び、もはや時代にそぐわない過去数十年間の仮定や伝統的な考え方に縛られていた。冷戦後の統合コンセプト(joint concept)は、イラク、イラン、北朝鮮などの地域的な軍事力(powers)を打ち負かすことに向けた用兵の「砂漠の嵐モデル」(’Desert Storm model’ of warfighting)にわずかな修正を加えたものだった[21]。三流の軍隊による国境を越えた侵略を阻止することに焦点を当てたこのレガシー・モデルでは、戦域での戦闘力の長期的な増強、敵の防御を「撃退(roll back)」して制空権を確立するための整然とした航空戦役(air campaign)、そして圧倒的な米空軍部隊と地上部隊の投入が行われた[22]。コンセプト作業では、冷戦後の「正統派(canonical)」の脅威として、1991年に米国が大敗をさせたイラク軍を模写したものに注目し、それは戦力構造の議論では、「イラク同等(Iraq equivalents)」と呼ばれていた[23]。実際、「砂漠の嵐」作戦(Operation Desert Storm)の考え方があまりにも浸透していたため、その5つの作戦段階は、冷戦後の時代の戦役の計画策定(campaign planning)のドクトリン上及びコンセプト上のテンプレートとなったのである。

1991年に当時世界最大級の軍隊を相手にして、この用兵のアプローチ(warfighting approaches)が成功したことで、米国には変化を求める動機がほとんどなかった。元米国防総省(DoD)の戦略家のジム・ミットレ氏が指摘するように、軍事的に劣勢な敵を倒すという低いハードルが設定されていたため、「新しいコンセプトの開発は停滞し、古い前提は骨抜きにされ、能力開発は単に優先されなかった」のである[24]。米国の戦争方法(American way of war)が圧倒的に優れていることを確信していたペンタゴンは、実績のあるモデルから外れる可能性のある新しいコンセプトにはほとんど知的取組み(intellectual effort)を払わなかった。しかし、ほとんど争われていない米国の軍事的優位性(military dominance)がほぼ不動のものであった時代に開発された作戦コンセプトは、重要な用兵分野(warfighting areas)で同等、さらには優勢に近づいている手ごわい敵対者に対しては、適用範囲が限られてしまうのである。さらに、砂漠の嵐やバルカン半島での航空作戦は、規模が限定されており、集中した作戦地域で行われたため、中国やロシアとの紛争の戦域規模(そしておそらく世界規模)とは似ても似つかないものだった。

軍事力(military power)は、成功した用兵モデル(warfighting model)を発見すると、そのモデルに固執する傾向があるが、それは自らを損ねることになる。歴史学者のマーク・ハーマン(Mark Herman)は次のように述べている。「支配的な軍事力が既存の軍事パラダイムを成文化し、わずかに改良する傾向は、意欲的な敵対者に、時間をかけて弱体化させるための比較的安定したターゲットを与える」[25]。まさにそれが起こったのである。強大国のライバルである中国とロシアは、1991年の「砂漠の嵐」での米国の作戦を見て、米国がこの地域に戦闘力を集中させる時期を争うことなく許すことは、戦略的に間違った選択であると考えた。これを回避するために、両国は、米国の介入を抑止、遅延、場合によっては撃退するための「積極的防衛(active defense)」戦略を採用した。これらの戦略は、高度なセンサーと情報ネットワークによって実現された高精度の精密誘導兵器が、従来型の戦い(conventional warfare)における支配的な能力となり、「成熟した精密打撃体制(precision-guided warfare:MPSR)」という新たな用兵パラダイム(warfighting paradigm)が到来したという認識に基づいている[26]。中国とロシアはこのパラダイム・シフトを認識し、ここ数十年をかけて、前方航空基地や航空母艦などの米国の重要な資産を脅かすのに十分な射距離の範囲で、精密誘導弾を持続的に発射する能力を開発した。同時に、米軍部隊(U.S. forces)が長距離での精密誘導戦(precision-guided warfare)を可能にするネットワークやセンサーを攻撃するための包括的な計画と先進的な能力を開発した。

成熟した精密打撃体制(MPSR)は、米国の海外での軍事作戦に2つの重大な作戦上の課題を突きつけている。第一に、統合部隊(joint force)が争われた戦域(contested theater)に進入して闘うことが難しくなる。第二に、いったん戦域に入ると、これまでに遭遇したことのない精度、密度、量の近距離および遠距離射撃に対処しなければならず、それに対する防御力は限られたものになる。米国は、世界規模の軍事力(global military capacity)では引き続き絶対的な優位性を持つと思われるが、局所的な数的不利(numerical disadvantages)に直面することになり、中国やロシアの火力はこの矛盾をさらに悪化させるであろう。これらの火力は、前方で作戦する米軍部隊(U.S. forces)に深刻な消耗(attrition)をもたらし、また、部隊指揮官に潜在的な脅威の範囲外に彼らの戦力を保持させる能力(ability)を通じて「仮想的な消耗(virtual attrition)」をもたらし、闘いに参加するのに十分な距離まで近づくことができなくなるであろう[27]

米国の戦争方法(American way of war)が、作戦戦域での航空優勢の達成に全面的に依存していることは、米国の競争相手にも知られている。冷戦後の米陸軍は、米空軍が提供する「アルミニウムの傘」による保護の下で常に作戦することを信じて、米陸軍固有の防空(organic air defenses)を切り離したほど、航空優勢は米軍計画策定の中核的な前提となっている。単一のドメインを支配することに依存する用兵のアプローチ(warfighting approaches)は失敗する運命にある。なぜなら、思考力のある敵対者は、取組みを集中させるための明白なターゲットを提示されれば、すぐに対抗策を講じるからである。すなわち、中国は、米国のレガシーな用兵のアプローチ(warfighting approaches)の弱点、特に航空優勢の達成に依存している点を正確に特定していた。中国は、米軍の空からの精密射撃がもたらす脅威を理解し、2つの重要な構成要素に手段を開発して対応した。1)航空機を発射、回収、維持するための陸海空の飛行場の必要性、2)戦域レベルの精密射撃戦役を支える広範な指揮・通信・情報ネットワーク(中国はこれを米軍の重心とみなしている)。

将来の戦争のために十分ではない統合部隊:Joint Force Not Joint Enough for Future War

過去20年間、米軍は陸と空の2つのドメインでのみ戦闘を行ってきたが、空戦はほぼ地上部隊への支援に特化していた。対等の競争相手とのハイ・エンドの戦争では、まったく異なる作戦上の課題、そして、現在の世代の米軍が経験したことのないような作戦環境の大規模な拡大が提示される。これには、海上および水中での戦闘艦隊の交戦、大規模な空中戦、宇宙、サイバー空間、電磁スペクトルでの持続的な戦闘が含まれる。これらすべてのドメインで戦闘がより烈度が増すことで生じる力学は、必ずや各軍種間の関係に圧力をかけ、軍種やドメインの境界を越えた一体化を要求する。

これらの各軍種は独自に、敵対者の接近阻止および領域拒否(A2/AD)ネットワークがもたらす作戦上の課題に対処するための用兵コンセプト(warfighting concepts)の開発に着手している。このような取組みは、統合全ドメイン作戦(Joint All-Domain Operations:JADO)という概念的な用兵のアプローチ(notional warfighting approach)に集約されており、これは、ドメインを超えて-「収束して(convergence)」-攻撃することを狙いとしたもので、敵対者に複数のジレンマをテンポよく与え、敵対者の反応を複雑にし、理想的には敵対者の意思決定サイクル(decision-making cycle)の内部で統合部隊(joint force)が作戦できるようにするためのものである。統合参謀本部副議長(Vice-Chairman of the Joint Chiefs of Staff:VCJCS)のジョン・ハイテン将軍は、統合全ドメイン作戦(JADO)を本当に「諸兵科連合の問題を空、陸、海、さらには宇宙とサイバーに拡大しただけだ」と述べている[28]

理論的には簡単に聞こえるかもしれないが、実際には、これらの異種で別々に「所有(owned)」されている能力を同時に組み合わせることは非常に複雑である。さらに、ドクトリン的に定められた特定の方法で闘うことを考えてキャリアを積んできた軍の将校(military officers)が、他の軍種と共に新しい能力や部隊を新しい方法で使うことを創造的に考えることは本質的に困難である。歴史家のデビッド・ジョンソン(David Johnson)氏は、軍の将校(military officers)にこのような考え方をさせるには、「それぞれの軍種の文化や戦争に対する深い見解に関する基本的な問題」に取り組む必要があると指摘している[29]

これまで米国防総省(DoD)は、将来の戦争(future war)についての統一的なビジョンを、統一された統合コンセプト(joint concept)の一部として、各軍種の賛同を得て、将来の戦域レベルの戦役計画の方向性を定めるという点で、あまりにも進展がなかった。これは、各軍種がそれぞれの特定のドメインでの戦術的な交戦(tactical engagements)を支配することに重点を置いていることが一因である。その結果、米国防総省(DoD)の日常的な革新の生態系(innovation ecosystem)は、マクロ・レベルの作戦上の問題ではなく、ミクロ・レベルの戦術上の問題を解決することになり、これは冷戦後の時代に蔓延している欠点である。ソ連との対決(showdown)は、米国防総省(DoD)にマクロ・レベルでの作戦上の問題を突きつけ、解決を迫った。例えば、ワルシャワ条約機構の空軍と地上軍の攻勢が中央戦線のNATOの防衛力を急速に破壊し、核によるエスカレーションが不可能になるのを阻止することや、ソ連の潜水艦や空軍の攻撃に直面しても大西洋で安定した増援を維持することなどが挙げられる。

中国の水陸両用の台湾侵攻をいかにして阻止するか、米国のバルト海同盟国へのロシアの地上侵攻をいかにして阻止するかなど、統合部隊(joint force)が直面する最も複雑でマクロなレベルの問題を解決することに焦点を当てた統合コンセプト(joint concepts)と実験が急務となっている。どちらの問題にも対応する選択肢を開発するためには、統合部隊(joint force)全体の能力が要求される。戦域や戦役のレベルでは、米軍の潜在的な強さは、敵対者が複数のドメインや方向からの攻撃を計画せざるを得ないような「統合(joint)」で闘う能力にある。実際には、米国の軍隊(U.S. armed forces)が示した統合用兵能力(joint warfighting ability)は、戦闘軍(CCMD)の参謀の創造性と適応力、そして各軍種特有の戦力パッケージを組み合わせて、部分の合計よりも強い効果的な闘い「全体(whole)」にする能力に負うところが大きい。

統合部隊(joint force)は、能力が限られた軽量の地域的敵対者に対しては、このようなアプローチをとることができた一方で、しかし、中国やロシアのケースように、鍵となる能力が対等で、紛争地域が国境に位置するために戦力の生成において著しい優位性を持つ敵対者に対しては、この方法は通用しない。さらに、既存の軍種間のギャップや継ぎ目、特に戦闘軍(CCMDs)間のギャップは、敵対者に利用可能な脆弱性をもたらしており、これを解消しなければならない。対等なライバルにジレンマを与えるためには、統合部隊(joint force)は一体化された全体として作戦し、一時的にしか起こらないであろう戦場の有利な状況にダイナミックに対応できなければならない。個々の各軍種が闘いにもたらす様々な能力が、どのようにお互いを補い、強化するかは、あらゆる紛争に先立って徹底的に調査し、テストし、改良しなければならない。

統合コンセプト(joint concept)開発のケース・スタディ:Case Studies in Joint Concept Development

以下の統合コンセプト(joint concept)開発のケース・スタディは、コンセプト開発と統合参謀の統合コンセプト(joint concept)開発能力の構築の取組みの両方にとって有益な教訓を提供する。これらのケースは、将来の戦い(future of warfare)について真に「統合(joint)」で考えることの出現を妨げ、能力やコンセプトの開発を制限する、ストーブ・パイプ化した偏狭なアプローチが多いことを明らかにしている。

エアランド・バトル:AirLand Battle

最終的にエアランド・バトル(AirLand Battle)のドクトリンに発展したアイデアは、ソ連の装甲の先鋒を攻撃地点での消耗の会戦(battle of attrition)で止めようとしてもうまくいかないという認識から始まったもので、新しいアイデアが必要だった。より効果的なコンセプトは、ソ連とワルシャワ条約機構の計画策定者にジレンマを与えるものでなければならなかった。彼らは、高速で移動し、縦深に梯隊化した作戦機動グループ(Operational Maneuver Groups)がNATOの防御を素早く圧倒し、同盟国に、降伏か急激な核エスカレーションかのどちらか小さい方を選択させることができると考えていたのである。これに対し、米陸軍大将のドン・スターリー(Donn Starry)は、「縦深攻撃(deep attack)」というコンセプトを提唱し、後続の梯隊をターゲットにして、「突破口(breakthrough)が開かれるまで前線の突撃部隊の後ろに積上げる」という「ただ乗り(free ride)」を防ぐことにした[30]。そのための主な手段は、戦場での航空阻止であり、航空部隊を地上の会戦全体(overall ground battle)に一体化することが求められた。

米陸軍と米空軍の緊密な協力関係は、ワルシャワ条約機構による西ヨーロッパ侵攻をいかにして阻止するかという、特定の統一の問題があったからこそ実現したものである[31]。しかし、「統合(joint)」のエアランド・バトル(AirLand Battle)が統合コンセプト(joint concept)開発の成功例として取り上げられることが多いが、エアランド・バトル(AirLand Battle)は基本的に米陸軍のコンセプトであり、後に1981年に米陸軍のドクトリンとなった。そのため、米空軍が米陸軍のように熱狂的に受け入れることはなかった。せいぜい、ワルシャワ条約機構との闘いのための米陸軍と米空軍のイニシアティブを調整し、調和させることができる程度であった。米陸軍の射撃範囲が拡大し、縦深の戦場で米空軍の責任範囲と重なり始めたときに、発生した衝突回避(deconfliction)の問題を両軍種が解決できなかったため、このような成功はわずかなものだった。

デビッド・ジョンソンが指摘するように、NATOを防衛することで得られた統一効果(unifying effect)は冷戦終結後も長くは続かず、結局、軍種内部の協力関係には一過性の影響しか与えなかった[32]。実際、地上戦力と航空戦力の相対的な役割に関する長年の論争は、1991年の「砂漠の嵐」の後、冷戦後の規模縮小の中で、「誰が戦争に勝ったのか(who won the war)」という議論や記事が相次いで発表されたことで、一気にヒート・アップした。こうした議論は、1990年代にバルカン半島で航空戦力を中心とした介入が行われた後に激化した。ジョンソンは、これらの議論と、それに伴う名声や価格設定によって、対立する陣営の間で意見が二極化し、「将来の戦争(future wars)が、地上戦力と航空戦力の相対的な決定力(decisiveness)について、制度上の動機に基づいた判断によって評価される条件が整った」と書いている[33]。実際、米空軍の指導者たちは、「精密な航空戦力を適切にパッケージ化して使用すれば、装甲の厚い敵の地上攻撃を遅らせ、阻止し、場合によっては打ち負かすことができるという選択肢を戦域指揮官に提供できる」という議論を展開し始めた[34]。米空軍は、湾岸戦争の航空戦役で成功した実績を、新しい「統合(joint)」と称していたが、実際には、敵の国境を越えた侵攻を「迅速に停止」させることを狙いとした航空戦力中心のコンセプトにすぐに反映させた[35]

「砂漠の嵐」作戦に先立ち、より長距離の地対地ミサイル・システムや攻撃ヘリコプターが開発されたことで、地上の指揮官の作戦範囲が広がった。このことが、砂漠の嵐、そしてその後のイラクの自由作戦(Operation Iraqi Freedom)において、米陸軍と米空軍の間で、役割と責任を明確にするための対立を引き起こした。歴史は繰り返されるもので、全ドメイン作戦を狙いとした新しい軍種中心のコンセプトの中で、従来の役割と責任の重複が増え、各軍種間の摩擦が再燃しているのがすでに見られる。例えば、米陸軍がより長距離の精密射撃を追求することは、基本的に米空軍の任務を侵害していると主張する人がいる[36]。ある米空軍の上級指導者は、米陸軍の長距離射撃コンセプトを「バカげている(stupid)」とまで言っている[37]。この取組みが、各軍種の長年の偏狭な衝突に巻き込まれることになれば、真に新しい用兵の方法(ways of warfighting)を開発するための統合部隊の能力(joint force’s ability)は大きな後退となる。

エア・シー・バトル・コンセプト:The Air-Sea Battle Concept

エア・シー・バトル(Air-Sea Battle)の短い人生は、コンセプト開発の取組みの際に起こりうる軍の文化的衝突を浮き彫りにしている。2010年の「4年ごとの国防見直し」(QDR)では、先進化した接近阻止および領域拒否(A2/AD)ネットワークを持つ洗練された敵対者をターゲットにして打撃するという、米空軍と米海軍が取組む、統合エア・シー・バトル・コンセプト(joint Air-Sea Battle concept)の策定が発表された。エア・シー・バトル(Air-Sea Battle)(秘区分なしの版)は、「米国の戦力投射能力を保ち、グローバル・コモンズ(global commons)における行動の自由を維持する」ためのものと説明されている[38]。エア・シー・バトル(Air-Sea Battle)は、中国が高密度の接近阻止および領域拒否(A2/AD)防衛網を構築し、米空軍や米海兵隊が長距離精密弾の同心円状の輪をくぐり抜けて戦わなければならなくなるような状況を打開する方法を模索していた。このコンセプトは、米軍部隊(U.S. forces)の行動の自由を可能にするために、接近阻止および領域拒否(A2/AD)ネットワークを混乱させ、破壊することを狙いとしている。

エア・シー・バトル(Air-Sea Battle)への反発はすぐに起こり、その批判の多くは、エア・シー・バトル(Air-Sea Battle)が「統合(joint)」ではなく「複数の軍種(multi-service)」の作戦コンセプトとして考案されたことに集中していた。エア・シー・バトル(Air-Sea Battle)が緊急の作戦上の課題を解決することを狙いとしていたことには概ね同意していたが、エア・シー・バトル(Air-Sea Battle)が統合参謀の外に置かれていることから、「協業(collaboration)なしに密室で作成された」と批判され、エア・シー・バトル(Air-Sea Battle)はターゲットとなったのである[39]。また、エア・シー・バトル(Air-Sea Battle)が統合部隊(joint force)の開発に過度の影響を与えることで、「ある脅威には最適化されているが、別の脅威には対応できない、バランスの悪い統合部隊(joint force)」になるのではないかと懸念された[40]

米陸軍は、米空軍や米海軍に予算を奪われ、「極近い将来のほぼ実存的な戦い(a near existential fight for its very future)」と考え、米陸軍と、米海兵隊は、この取組みを阻止するために、官僚的な内部抗争(internal bureaucratic battle)を繰り広げた[41]。米陸軍は、イラクやアフガニスタンでの撤退により、関連性、予算配分、戦力構成、最後には戦力を失うのではないかという正当な恐れを抱いていたため、包括的な統合コンセプト(joint concept)としてのエア・シー・バトル(Air-Sea Battle)に対する米陸軍の反対姿勢は、より強固で強硬なものとなっていた。米陸軍の反対により、エア・シー・バトル(Air-Sea Battle)は広く受け入れられることなく、米国防総省(DoD)の小さなオフィスで、取るに足らない短い生涯を終えた。

エア・シー・バトル(Air-Sea Battle)の構想は、米統合部隊コマンド(JFCOM)の閉鎖に伴い、統合コンセプト(joint concept)の開発が特に混乱していた時期に生まれた。米統合部隊コマンド(JFCOM)の責任の多くは統合参謀J-7に移され、何百人もの人員が配置されていたが、その組織が何を生み出すべきなのか、包括的な戦略や指針が欠けていたのである[42]。結局、エア・シー・バトル(Air-Sea Battle)は地上戦力(land forces)の潜在的な貢献を考慮しなかったため、名目上の統合コンセプト(joint concept)から重要な作戦ドメインを外してしまい、その存在に対する官僚の反感を買ってしまった。さらに、エア・シー・バトル(Air-Sea Battle)を妨害するために行われた官僚的な戦い(bureaucratic battles)は、急速に発展する中国の対干渉コンセプトや接近阻止および領域拒否(A2/AD)システムに対応するための米国防総省(DoD)の取組みを後退させることになった。

この時期の用兵コンセプト(warfighting concepts)は、歴史家のマーレーがエア・パワー理論家や戦略爆撃のケースで指摘したように、「バランスや作戦上の現実との密接なつながりを失った」という致命的な欠陥を抱えていた[43]。このケースでは、統合作戦アクセス・コンセプト(Joint Operational Access Concept :JOAC)のような表向きの統合コンセプト(joint concepts)は、接近阻止および領域拒否(A2/AD)システムを克服して、米地上部隊が敵地に駐留できるようにすることに特化していた[44]。このようなコンセプト上のアイデアは、成熟した精密打撃体制(MPSR)の出現-すなわち、複数の軍事力が長距離精密射撃を大規模に実行する手段と方法を持つ作戦環境-という作戦上の現実と衝突した。

各軍種は、成熟した精密爆撃体制(MPSR)の意味するところへの対応が遅すぎた。米海兵隊総司令官デビッド・H・バーガー(David H. Berger)大将が、「成熟した精密打撃体制の技術と規律を一体化した敵対者の前では、大規模な強制進入作戦は実行できない」という、以前から明らかだったことを述べたのは、昨年のことだった。また、このような装備を持つ敵対者がもたらす作戦上の課題には、部隊構造、能力、コンセプトの「大規模な変更」が必要であることを認めた[45]。これは、中国への挑戦にはまったく新しい用兵のアプローチ(warfighting approach)が必要であるという、軍種の指導者によるこれまでで最も強力な声明だった。今後、残りの軍種の参謀総長が米海兵隊総司令官の導きに続いて、軍種としての自己認識を変えようとするか、自らの「聖なる牛(sacred cows)」を犠牲にして、統合の枠組み(joint framework)の中で取組みを従わせることをいとわないかどうかが注目されるところである。

先進化した能力と抑止力パネル:The Advanced Capabilities and Deterrence Panel

2014年に国防副長官に就任したロバート・ワーク(Robert Work)は、大国間競争の再来に対する米国防総省(DoD)の対応を急ピッチで進め、米国と中国・ロシアとの間の軍事バランスの侵食(erosion)を逆転させるための行動をとることを決意した。その全体像は「第3次オフセット戦略(Third Offset Strategy)」と呼ばれ、その中核となる仕組みが「先進化した能力と抑止力パネル(Advanced Capabilities and Deterrence Panel:ACDP)」であった。これは、冷戦時代に重点的に行われていた「先進技術パネル(Advanced Technology Panel)」を現代風にアレンジしたもので、ソ連に対抗するための新たな能力や雇用コンセプトを開発するものだった[46]。ロバート・ワークは、「相手が同等の誘導弾を持ち、長距離ミサイルを我々と同等の密度と精度で攻撃できる時代」に、既存の能力と作戦コンセプトだけに基づいて戦力計画を立てることは、戦力を危険にさらすことになると、省の他の上級首脳部を説得しようとした[47]。この現実は、米軍(U.S. military)がこれまでに直面したことのない作戦上の課題であり、まったく新しい対応の選択肢(response options)が必要となる。

このような相対的な軍事的優位性(relative military advantage)の劇的な変化に対する各軍種の対応の遅さは、先進化した能力と抑止力パネル(ACDP)が成熟した精密打撃体制(MPSR)の課題に対処するために、現状の作戦コンセプトや事業化された能力(programmed capabilities)と代替コンセプトや能力との比較を始めたときに明らかになった。しかし、各軍種が新しいコンセプトとして宣伝したものは、将来戦(future warfare)についての首尾一貫したビジョンや勝利の理論のようなものがなく、部隊デザインを決心する根拠となる粒度が得られなかった。実際には、各軍種には新しいコンセプトを創造的に考える意欲はほとんどなかった。それどころか、提案された統合コンセプト(joint concepts)が事業化された戦力構造(programmed force structure)を脅かす可能性がある場合、彼らは防御的な姿勢をとり、レガシーなプラットフォームやシステムを倍増させようとした。各軍種は、伝統的な作戦方法に甘んじていた。それは、伝統的な作戦方法が、好ましい事業(programs)を脅かす可能性のある「統合(joint)」用兵のアプローチ(warfighting approaches)ではなく、各軍種が好む能力と容量の組み合わせを永続させるものだったからである。

少しずつ変化させていくだけでは、先進化した対等なライバルである中国との軍事バランスを変えるには、十分ではないと考え、先進化した能力と抑止力パネル(ACDP)は、まったく新しい用兵の方法(ways of warfighting)を開発することを狙いとした。各軍種が将来戦(future warfare)についての別のビジョンを検討し、より革新的なコンセプトを開発することを促すために、先進化した能力と抑止力パネル(ACDP)は、2つの主要な取組みを行った。1つ目は、米国防総省(DoD)全体で「事業体としてのウォーゲーム(wargaming enterprise)」を再活性化し、対等なライバルに対抗する新しい作戦方法(ways of operating)を検討・改良する取組みである[48]。2つ目は、「コンセプトを紙の上から現実の世界で実行するための野外実験や実証を支援する」ために、新しい軍種や統合コンセプト(joint concepts)の開発を支援する用兵研究奨励資金(Warfighting Lab Incentive Fund:WLIF)の設立である[49]

将来の戦争(future war)に関する新たなビジョンの探求をさらに進めるため、ワーク副長官は2016年半ば、バージニア州ノーフォークで、米陸軍、米海軍、米空軍の主なコンセプト開発者との会合を開き、中国とロシアに対する戦域レベルの戦い(theater level warfare)のための新たなコンセプトについて議論した。ハイ・エンドな用兵(high-end warfighting)のための補完的(complementary)で、統合(joint)で、分野横断(cross-cutting)のコンセプト開発について議論するために彼らが集まったのは初めてのことだった。その前年、ワークは米陸軍に「エアランド・バトル(Air-Land Battle)」に続く「マルチドメイン作戦」の開発を要求していたが、今は、中国とロシアが課す脅威に対処するための新しい統合コンセプト(joint concepts)を求めていた[50]。しかし、ワークが一体化を呼びかけたにもかかわらず、各軍種は独自の全ドメイン・コンセプトの開発が遅々として進まず、統合コンセプト(joint concepts)の開発は遅れ続けていた。

統合作戦コンセプト(operational concept)開発:合意(consensus)を得るための壊れたプロセス:Joint Operational Concept Development: A Broken Process That Drives Toward Consensus

これらのケースが示すように、統合コンセプト(joint concept)の開発が遅れているのは、コンセプトや部隊の開発において、各軍種とその偏狭な利害関係がプロセスを支配するボトム・アップ式のアプローチが原因の一つである。これらのケースから得られる教訓は、相互運用性を確保する原動力がなければ、各軍種はそれぞれの偏狭なレーンに戻ってしまうということである。純粋に惰性で、他の軍種や統合の世界(joint world)への適用性を十分に考慮することなく、自分たちが作戦するドメインに焦点を当てたコンセプトや支援技術を試験・開発している。

統合コンセプト(joint concept)の開発者が直面する重大な課題の一つは、合意(concurrence)を得るという名目ですべての関係者を満足させることである。合意(concurrence)とは比喩的なものではなく、上級指導者が新しい統合コンセプト(joint concept)などの統合文書(joint documents)を承認するためには、まず米国防総省(DoD)内の関連する利害関係者が懸念を示すことができるレビューと調整のプロセスを経る必要がある。また、統合参謀J-7室は新しい統合作戦コンセプト(operational concept)の起草に責任を持っているが、コンセプトの承認は、いくつかのレビュー委員会、将官運営委員会(general officer steering committee)、統合参謀本部、そして最終的には統合参謀本部議長(CJCS)をクリアすることにかかっている[51]。このような広範かつ協力的なレビュー・プロセスを経ると、必ずと言っていいほど、アイデアの競争を生み出すことのできない合意文書(consensus documents)ができあがる。

統合参謀は、軍種の偏狭性(parochialism)を克服し、真の意味での統合の用兵アプローチ(joint warfighting approaches)に到達することが非常に難しいと感じている。確かに、J7のコンセプト起草の幹部は、デザイン上、何よりもまず統合に焦点(joint-focused first)を当てている。問題は、コンセプト・チームがJ7の起草者だけではないということである。コンセプト開発チームは一般的に、臨時で配属された軍種の計画立案者で構成されており、彼らは常に軍種の平等性に偏っている。その結果、最終的には、曖昧で水増しされた、具体的なことが何も言えないものになってしまう。コンセプト起草者は、意味のある変化を起こそうとすると、すべての軍種の平等性を何らかの形で表現しなければならないと感じてしまう。そうすると、そのコンセプトは、様々な軍種のコンセプトの集合体のようになり、それらがどのように組み合わされるのか、組み合わされると仮定した場合、実際の分析作業はほとんど行われない。特定の軍種からコンセプトが生まれた場合、他の軍種は、それを意味のある形で成功させようとするのではなく、その軍種の角度を把握し、反論を見つけることに時間を費やすことになる[52]

この作業に十分な優先順位とリソースが与えられなかった結果、米国防長官室(OSD)と統合参謀には、必要な規模で統合コンセプト(joint concepts)を開発し、実験を行う手段がないのである。1995年、「軍隊の役割と使命に関する委員会」は、「砂漠の嵐」作戦において、各軍種は個々には素晴らしい働きをしたが、連携してはうまく機能しなかった(they did not work well together)と指摘した。「それぞれの軍種の取組みを導く統一的なビジョンがないため、「それぞれの軍種は、自分の軍種がどのように統合用兵(joint warfighting)に貢献すべきかという独自のビジョンに基づいて能力を開発し、自軍種の部隊を訓練した」と述べている。さらに、統合ドクトリンは「競合する、時には相容れないコンセプトの要約」である[53]

30年近く経った今、米国防総省(DoD)が将来の戦争(future war)についての統一的なビジョンや、将来の部隊(future force)デザインや能力開発を方向付けるための統合コンセプト(joint concept)を生み出すという点では、ほとんど進歩していないことは明らかである。それどころか、ファスタベンドが数年前に警告したような結果になっている。「統合レベル(joint level)では、疑似概念(pseudoconcepts)が、はるかに重要なもの、つまり統合戦闘の将来(future of joint combat)の真の可視化の場を占めている」[54]。将来戦(future warfare)についての一貫したビジョンに基づいた真の統合コンセプト(joint concepts)を開発するには、各軍種が信じ、その周りに部隊を構築することができるコンセプトを開発するプロセス自体に優先順位をつけ、リソースを投入することから始めなければならない。

統合コンセプト(joint concept)開発の改善:Improving Joint Concept Development

統合コンセプト(joint concepts)は、すべての関係者に受け入れられる最小公倍数を作るために、軍種の好みを単純に合体させたものであってはならない。ぜなら、それは潜在的な敵対者が米国の軍隊(U.S. armed forces)と闘う方法ではないからである。さらに、米国防総省(DoD)は、各戦闘軍(CCMDs)や各ドメインを超えた先進的なライバルに対して、どのように統合戦役(join campaign)を闘うつもりなのかをより明確にする必要がある。米国防総省(DoD)が統合コンセプト(joint concept)の開発と実験の能力を再構築しようとしている中で、以下の提言はそのプロセスを改善することを目指している。

将来の作戦環境における優先課題に統合コンセプト(joint concept)開発を集中させる。

エアランド・バトル(AirLand Battle)の開発から得られる教訓は、各軍種がコンセプトや能力開発に焦点を当てる特定のターゲットを持っていれば、的を射る可能性が高いということである。1970年代から1980年代にかけて、エアランド・バトル(AirLand Battle)のコンセプトと実現能力の開発を担当した人たちは、非常に具体的な作戦上の課題を解決することに集中できたという優位性(advantage)があった。それは、ワルシャワ条約機構の強力な大規模戦車部隊が、ドイツ国内の国境沿いに薄く配置されたNATOの援護部隊(covering forces)を圧倒するのを阻止することだった。デビッド・ジョンソンは次のように述べている。「コンセプトの一貫性は、特定の場所で特定の能力で武装した特定の敵対者に対して解決しなければならない問題があるという制度上の合意(consensus)からしか生まれない」[55]。したがって、統合コンセプト(joint concepts)は、優先すべき用兵シナリオ(warfighting scenarios)の解決に焦点を当てるべきである。

コンセプト上の一貫性を生み出す取組みは、現在、開発中のコンセプトがあまりにも多く、表向きは戦力デザインと開発を導くことを意図したコンセプトばかりであるという事実によって妨げられている。統合参謀本部議長の「統合作戦の基本コンセプト」(Capstone Concept for Joint Operations:CCJO)があり、その下には、特定の戦域の脅威に基づく統合用兵コンセプト(joint warfighting concepts)、統合部隊(joint force)の様々な機能要素のための支援コンセプト、各戦闘軍(CCMDs)が開発する統合用兵コンセプト(joint warfighting concepts)が入れ子状に配置されている[56]。一貫性のある革新的な統合コンセプト(joint concepts)を開発するための省内の帯域が限られている場合、冗長性はあまり意味をなさず、複数の統合コンセプト(joint concept)文書は戦力開発の際に問題を曇らせる可能性がある。優先すべき戦域に焦点を当て、コンセプト開発のリソースを優先すべき各戦闘軍(CCMD)の作戦上の課題の解決に向けるべきである。

同時に、コンセプト開発者は、既存の戦争計画の繰り返しを作るという誘惑を避けなければならない。意図した目的である部隊デザインと能力開発を推進するためには、統合用兵コンセプト(joint warfighting concepts)は将来志向でなければならない。統合用兵コンセプト(joint warfighting concepts)には、将来の戦争(future war)に関する首尾一貫した作戦上の現実的なビジョンが含まれていなければならず、新たな課題や現在解決策が存在しない課題に対する革新的な対応策を提供しなければならない。理想的には、これらの対応策は、まだ採用されていない新しい作戦方法を提案するものでなければならない。マティス将軍が書いているように、「正当化されるためには、新しいコンセプトは、単に既存のドクトリンに付加価値を与えるだけではなく、既存のドクトリンに明確な代替となる新しいコンセプト上のパラダイムを提供するべきである」[57]

各戦闘軍(CCMDs)に脅威ベースの統合コンセプト(joint concept)開発を推進する権限を与える。

各戦闘軍(CCMDs)は脅威ベースの統合コンセプト(joint concept)開発を推進すべきである。なぜならば、彼らは統合部隊が直面している戦域特有の作戦上の問題に最も精通しているからである。各戦闘軍(CCMDs)は、自由に使える戦力を使って最終的に軍事作戦を計画・実行する組織である。戦闘軍(CCMD)を中心としたコンセプト開発プロセスに移行することで、作戦コンセプトに対する軍種の支配力を排除し、統合コンセプト(joint concepts)に基づいて将来の戦役を計画策定し実行する責任を実際に負う組織に責任を負わせることができる。さらに、戦闘軍(CCMD)の参謀はその問題に精通している。彼らは、大国のライバルの軍事行動を日常的に観察している。彼らは、特定の戦域における兵站上の課題や、潜在的に脆弱な輸送のチョーク・ポイントを熟知している。国防科学委員会(Defense Science Board)が招集したパネルが指摘したように、「彼らの後継者は、(統合コンセプト(joint concept))プロセスを通じて生み出された能力の最終的な受け手となる」ため、各戦闘軍(CCMDs)はコンセプト開発において主要な役割を担うべきである[58]

ジョンソンが言うように、「各軍種は、統合部隊指揮官(joint force commander)に、一体化された火力と機動を提供することで、戦域全体の戦役計画を実現するのに最適な能力と組織を提供する方法で、自らを組織し、装備すべきである」というのが理想である[59]。そのためには、統合コンセプト(joint concept)の開発は、特定のドメインで作戦するために特定の軍種が好むアプローチを推進するのではなく、それぞれの戦闘軍(CCMD)の最も差し迫った作戦上の課題を解決することに集中しなければならない。しかし、現状ではそのようにはなっておらず、軍種のアプローチが支配的である。脅威ベースのコンセプト開発には、各戦闘軍(CCMDs)の深い理解と参加が必要である。

しかし、戦闘軍(CCMD)を中心としたアプローチにはいくつかの欠点がある。中心となる課題は、各戦闘軍(CCMDs)が短期的なものに集中していることである。各戦闘軍(CCMDs)の主な責務は、戦域戦役計画によって戦争を未然に防ぐことと、戦争が起こった場合の緊急事態対応計画と作戦計画を策定し実行することである。これらは非常に大きな任務であり、戦闘軍(CCMD)の参謀が将来のコンセプトや能力について考える能力を制限している。統合コンセプト(joint concepts)を開発するためには、各戦闘軍(CCMDs)は「今夜の闘い(fight tonight)」に備えるだけでなく、大国のライバルが直面する能力上の課題を地平線上に見て、対応の選択肢を開発できなければならない。

これが2つ目の課題である。現在、各戦闘軍(CCMDs)には、近い将来の計画策定と、コンセプト開発に必要な将来のスキャンの両方を行う人材がいない。また、将来の課題はともかく、現存する戦争計画について考えることに専念できる人材があまりにも少ないのである。これは、戦闘軍(CCMD)が平時の関与(engagement)を好み、戦略家のトム・エールハルト(Tom Ehrhard)が指摘するように、「戦争思考や戦争計画策定から徐々に離れていった」結果であり、「平時の形成(shaping)を専門とする地域参謀が、作戦上の戦争策定者を犠牲にして膨らんでいった」のである[60]

最後に、戦闘軍(CCMD)演習は数ヶ月から数年前に計画されることが多いため、新しいコンセプトを検討することができず、また、演習の頻度が低いため、優先順位の競合が起こりやすい。戦闘軍(CCMD)の演習は通常、特定のシナリオで最大の役割を担う軍種が実施する。当然のことながら、演習は統合(joint)ではなく軍種固有のものである。計画された演習に新しいコンセプトを導入するには、1年もの準備と計画策定が必要になることがあり、その結果、硬直的で過度に規定された結果となり、機敏な実験と反復的なフィードバック・サイクルが阻害される。

各戦闘軍(CCMDs)が、それぞれの戦域に特有の脅威に対処するために、新しい統合用兵コンセプト(joint warfighting concepts)を採用し、受け入れることになっているのであれば、コンセプト開発プロセスにおいて重要な手腕を発揮すべきなのは当然のことである。各戦闘軍(CCMDs)が本来の立場で統合コンセプト(joint concept)開発を主導するためには、優先順位を見直す必要がある。各戦闘軍(CCMDs)は、0年から2年の期間を超えて将来について考えるために、より多くの時間とリソースを費やす必要がある。また、軍事的な外交や形成(shaping)から、戦い(warfare)に焦点を当てるようにしなければならない。そのためには、戦闘軍(CCMD)の参謀を大幅に再編成する必要があるかもしれない。最後に、各戦闘軍(CCMDs)は、将来に焦点を当てた演習を通じて、機敏な研究サイクルを可能にする必要がある。

合意(consensus)ではなく、広範なウォーゲーム(wargaming)と実験を通じて、将来の戦争の代替ビジョンを探り、統合コンセプト(joint concepts)を検証する。

ウォーゲーム(wargaming)と実験は、将来の戦争のビジョンを描くだけでなく、仮定に挑戦し、将来戦(future warfare)のための新しいコンセプトや能力の実行可能性を検証するためにも重要である。どちらも、困難な課題に対する代替的な解決策を探るためには不可欠である。ウォーゲーム(wargaming)は、ピーター・ペルラ(Peter Perla)が「研究のサイクル」と呼ぶ、ウォーゲーム(wargaming)、演習、分析を織り交ぜて作られる研究の中心的存在である。効果的であるためには、「権威と影響力のある立場にある人、グループ、組織が、現在および将来の決心、コンセプト、計画に影響を与えるために、その出力を利用することが必要である」[61]。つまり、省のウォーゲーム(wargaming)と上級指導者の意思決定(decision-making)の間に結合組織(connective tissue)を構築するためにガバナンス構造を導入し、ウォーゲーム(wargaming)と実験によって生み出された洞察がプログラム化された決心を行う人々にまで浸透するようにする必要があることを意味する。

このような結合組織(connective tissue)は存在しない。米国防総省(DoD)の「事業体としてのウォーゲーム(wargaming enterprise)」を復活させようとしたワーク前副長官の主な意図の1つは、ウォーゲーム(wargaming)を上級指導者の優先事項とよりよく一致させ、ゲーム情報を普及させるメカニズムを提供することだった。しかし、ウォーゲーム(wargaming)の結果や洞察が上級指導者の意思決定(decision-making)に実際に役立つかどうかは、同じ指導者からの要求信号(demand signal)と、必要な時間を投資する意思に大きく依存している。実際にウォーゲーム(wargaming)に参加しようとする上級の省の指導者を見つけるのは稀なことである。

新しい戦域固有の用兵コンセプト(warfighting concepts)のウォーゲーム(wargaming)は、継続的かつ反復的なプロセスでなければならないが、これにはかなりのリソースが必要であり、すでに統合参謀本部議長(CJCS)のために世界規模の一体型ウォーゲーム(Globally Integrated Wargame)などのウォーゲームを実施している統合参謀J-7室に要求することは多い[62]。戦域固有の統合用兵コンセプト(joint warfighting concepts)のテスト、改良、検証には、ウォーゲーム分析(wargaming analysis)の独自の戦役が必要となる。これには十分な資金が必要であり、個々の軍種に丸投げしてはならない。脅威に基づく統合コンセプト(joint concept)の開発には、徹底した脅威分析が必要である。

さらに、ウォーゲーム(wargaming)の参加者は、米国防総省(DoD)の先進的な能力だけでなく、対等なライバルの能力についても深い知識を持っていることが不可欠である。これは、対等なライバルの戦いの理論(theories of warfare)を研究することを生業としている統合部隊(joint force)の専門家が比較的少ないことから、困難なことである。プレーヤーは、他の軍種や構成部隊がもたらす能力や、サイバー兵器などの新しい能力についてよく知らないことが多い。効果的にするには、参加者は能力のウォーゲーム(wargaming)の「料理本(cookbook)」に精通していなければならない。そうでなければ、膨大な時間が、採用する選択肢のゲーム化ではなく、教育のために費やされることになる。さらに、参加者が先進的な能力の影響を評価し、軍事的優位性をもたらし、追加投資が必要な能力を判断できることも重要である。そのためには、参加者に多大な時間を割いてもらう必要があるが、場合によっては、省で最も厳重に管理されている能力へのアクセスを提供する必要もある。

中国との戦いに備える上で、ウォーゲーム(wargaming)は特に重要である。というのも、人民解放軍(PLA)は最近の作戦経験がないため、どのように作戦を展開するかという点では疑問符がついているからである。冷戦時代、米国の国防当局は、ソ連の勝利理論が第二次世界大戦末期までに洗練された作戦術に似ていたこともあり、潜在的な戦争でソ連がどのように行動するかをよく理解していた。人民解放軍(PLA)の場合はそうではない。紛争が始まるまで米国が知らない新しい用兵の方法(ways of warfighting)を開発している可能性がある。ウォーゲーム(wargaming)は、戦間期に米海軍大学校で、第二次世界大戦前の日本海軍がどのように作戦していたのか、学生たちは強みや能力が大きく異なる敵対者を考えることで、知識のギャップを埋めていたように学習プロセスにおける重要な役割を持っている[63]

野外演習および艦隊演習での実験を拡大する。作戦コンセプト(operational concept)は、実験によってテストされ、検証されて初めて現場の部隊に役立つ。

実験は、学習サイクルの重要な一部であり、仮定に挑戦し、何が機能するか、そして重要なことに何が機能しないかを確認するためにアイデアを探求するものであり、米国防総省科学委員会(Defense Science Board)の調査によれば、「良いアイデアと悪いアイデアを分離する」ことである。これは、将来戦(future warfare)に向けたコンセプトや能力を検討する際に特に重要である。「まず大きなアイデアを正しく理解し、それを実験や知的議論の対象とし、学んだことに基づいて洗練させる」[64]

現在のプロセスの欠点は、コンセプトが開発されてから実験にかけられることである。ある軍種が主導権を握っている特定の能力を評価するのには適しているかもしれないが、「複雑で多面的な戦争遂行のコンセプトには不向き」なアプローチである[65]。それよりも、実験と改良を繰り返していくべきである。さらに、このような実験は統合レベル(joint level)で、できれば各戦闘軍(combatant commands)で行うべきである。というのも、軍事行動には慣れというものがあり、軍種の要素が初めて協力するのが戦闘であってはならないからである。例えば、米空軍が米空軍と緊密に連携したいと考える理由は、軍種の人員が似たような言葉を話し、ほとんどの部分で共通の背景を持ち、多くの要素が一緒に練習して、ある程度第二の性質の戦術、技術、手順を確立しているからである。課題は、人員が本業で忙しく、実験の準備や実験実施に参加できないことである。これが、特に実動実験が減少し、事前に計画されたイベントの余白に詰め込まれることが多い理由の1つである。

さらに、J-7は統合実験(joint experimentation)を主導・実施する責任を持つ部門を解散し、リソースや任務については曖昧なまま、昨年になってようやくこの能力を再構築したということもある。この動きは主に予算上の問題から生じたもので、新しい統合コンセプト(joint concepts)をどのようにして厳密にテストし、洗練させていくかという点が懸念された[66]。この分野では、戦域固有のアイデアに加えて、各戦闘軍(CCMDs)が実験を支援することで大きな貢献が可能である。元太平洋艦隊司令官のスコット・スウィフト(Scott Swift)提督は、この点で先駆者であり、自分の艦隊を「バトル・ラボ(battle lab)」として提供し、新しい用兵の方法(ways of warfighting)をウォーゲーム(wargaming)、テスト、実験した[67]。各戦闘軍(CCMDs)は、コンセプト開発チームとともに、用兵研究奨励資金(WLIF)を活用して野外実験を支援し、用兵コンセプト(warfighting concepts)の継続的な革新を促進する必要がある。

「赤として考える(thinking red)」の文化を醸成することで、アイデアの競争力を高める。

米国防総省科学委員会(Defense Science Board)が指摘したように、創造的なアイデアを生み出すためには、作戦上の「レッド・チーム(red teams)」が不可欠であり、「賢い敵対者を使ってあらゆるコンセプトに挑戦する」ことが必要である[68]。そのためには、現在の米国防総省(DoD)ではほとんどが場当たり的に行われているレッド・チーム(red teams)の取組みよりも、はるかに包括的なレッド・チーム(red teams)の取組みが必要である。冷戦の終結とともに衰退した重要な思考スキルである、防衛専門家の「赤として考える(think red)」を拡大するために、米国防総省(DoD)全体で取り組む必要がある。レッド・チームの編成(red teaming)は、確立された思考に疑問を投げかけ、推論を研ぎ澄まし、ギャップを明らかにし、問題を解決するための別の方法を提案する手段である。レッド・チームの編成(red teaming)は、コンセプト開発における「集団思考」を防ぐために不可欠である。レッド・チーム(red teams)は、アナリスト、運用者、科学者、エンジニア、情報専門家の意見を取り入れ、多様な視点を持つべきである。効果的なレッド・チームの編成能力(red teaming capability)は、代替コンセプトと戦力の組み合わせのトレード・オフを常に評価できるものでなければならない。そのため、レッド・チームの編成(red teaming)はコンセプト開発プロセスの初期段階で頻繁に行われなければならない。一般的に、レッド・チーム(red teams)が行われるのは、コンセプトの開発プロセスが進みすぎて、レッド・チーム(red teams)が欠点を発見しても大きな変更ができないほど多くの「コンカー」が付けられたときである。レッド・チーム(red teams)の効果を最大限に発揮させるためには、レッド・チーム(red teams)が生み出す成果物や洞察が、上級指導者の決心の変化に結びついていなければならない。そうでなければ、レッド・チーム(red teams)は単なる空虚な知的演習に過ぎない。

統合コンセプト(joint concept)と能力開発のためのトップ・ダウン・モデルを開発する。

一貫性のある統合コンセプト(joint concept)をシステムに浸透させるには、米国防長官室(OSD)と統合参謀の最高レベル、理想的には長官、副長官、議長、副議長の「ビッグ4」による継続的な注意が必要である。つまり、統合参謀のJ7担当部署が主導する現在のプロセスよりも、トップ・ダウンで進めていかなければならないということである。効果的なプロセスは、軍のリーダーシップに対する3つ星の統合責任者(three-star joint director)の限界を受け入れる必要がある。J7は、軍種参謀総長の偏狭性(parochialism)、年功序列、予算上の権力を克服することは期待できない。最終的には、軍の各軍種は統合コンセプト・プロセス(joint concept process)が生み出すものに基づいて行動することになっている。

しかし、現在デザインされているシステムでは、他のコンセプトを犠牲にして特定のコンセプトを選ぶような動機付けはなされていない。統合参謀の行動プロセス(レビューのために文書を統合参謀に移動させる手段)の不同意は、可能な限り避けるべき第三のレールと考えられており、リンゴの木馬を崩すことへの嫌悪感を組織的に強化している。反対意見を取り入れ、レガシーな事業(programs)と将来の事業(programs)の間で難しい選択をし、事業(program)と予算のプロセスで各軍種がその決心を守ることを実際に保証するプロセスを監督できるのは、米国防総省(DoD)の最上級の指導者だけである。

コンセプト開発と能力開発の緊密な一体化を促進する。

米国防総省科学委員会(Defense Science Board)は次のように述べている。「軍事的革新(military innovation)は、技術のプッシュとニーズのプルが同時に行われる機会があれば、より可能性が高くなる」[69]。軍事的優位性を生み出すためには、作戦コンセプトと技術革新をより密接に結びつけ、両者が相互に影響し合えるようにする必要がある。米国の軍隊(U.S. armed forces)は、第二次世界大戦中の空母航空の開発から、過去20年間の無人システムの採用に至るまで、新技術を活用した新しい作戦方法を開発する能力において、長年にわたり競争力を維持してきた。

米国防総省(DoD)は、コンセプト開発者とエンジニアや技術者を結びつける新しい組織構造を必要としている。この組織は、特定の課題に対して作戦上のインパクトを与えるための権限とリソースを持たなければならない。これは特に、統合(joint)および戦闘軍(CCMD)の優先能力について言えることだが、これらの能力は必ずしも単一の軍種に合致するものではないため、従来は予算編成プロセスにおいて孤児となっていた。自律システム、ロボット工学、人工知能などの新興技術の進歩に見られるように、破壊的な変化(disruptive change)の時期には、コンセプト開発に技術的な機会を組み込むことが重要である。戦略家のフランク・ホフマン(Frank Hoffman)が指摘するように、これらの「破壊的(disruptive)」技術が将来の戦場でほぼ確実に収束することで、過去に大きな技術的ブレークスルーが繰り返されたように、戦い(warfare)に革命的な変化をもたらす複合的な効果がもたらされるであろう[70]。課題は、技術開発と革新(innovation)を組み合わせることである。これは、トップ・ダウンによるコンセプト開発に導かれた、ボトム・アップのプロセスでなければならない。

統合参謀は、能力開発のために革新的なコンセプトと「破壊的技術(disruptive technologies)」をより緊密に一体化するため、「コンセプトから能力へ」というアプローチを導入しようとしている[71]。疑問の余地はないが、米国防総省(DoD)は、敵対者を凌駕するために、新しい技術を迅速に運用するために、作戦コンセプト(operational concept)と斬新な買収アプローチをより緊密に、反復的に結合する必要がある。米国防総省(DoD)では、取得コミュニティと作戦コミュニティが、組織文化的な面だけでなく、プロセスや実行の面でも異なるため、運用者と技術者の間の緊密な協業は困難である。とはいえ、これらのコミュニティ間の協業を強化することは、特に中国とのダイナミックな軍事技術競争にさらされている今日の戦略的環境においては不可欠である。

明確で正確なコンセプトは、特定の能力が現場でどのように使用されるかを定義するため、効果的な能力開発に不可欠である。これは、効果的なシステム・デザイン、特に非常に複雑なシステムのデザインに不可欠である。コンセプトが曖昧であったり、定義が不十分であったりすると、システム・デザイン者は運用者に必要なものを正確に提供することができない[72]。つまり、コンセプト開発者は、コンセプトのアイデアに技術的な思考をより多く盛り込む必要があり、そのためには技術者がコンセプト開発プロセスに参加する必要があるのである。コンセプト開発者と技術者をより密接に連携させないと、技術者や取得専門家の目的に対して要求信号が不十分なため、能力開発を推進できないコンセプトを構築してしまう危険性がある。

しかし、本稿で取り上げた軍種の偏狭性(parochialism)やストーブ・パイプ化した戦力開発に伴う課題や障害は、統合用兵コンセプト(joint warfighting concepts)と能力開発をより緊密に結びつける取組みに反するものである。米国防総省(DoD)には、各軍種が新しい統合用兵コンセプト(joint warfighting concepts)に沿って調整し、現行能力の近代化と新しい能力の開発の間で必要なトレード・オフと厳しい選択を行うように強制する機能が必要である。廃止された米統合部隊コマンド(JFCOM)の代わりに「統一された将来戦コマンド(Unified Future Warfare Command)」を設置して、能力開発への新技術の導入を促進し、「各軍種がシームレスな統合部隊(joint force)として行動できるように準備する」という案もある[73]。ただでさえ肥大化した米国防総省(DoD)の官僚機構に、さらに別の機能を持つコマンドを加えるとなると、かなりのコストがかかる。また、人員やリソースを奪い合うことになり、必ず反対意見が出てくる。ドナルド・ラムズフェルド(Donald Rumsfeld)元国防長官の小規模な「戦力変革室(Office of Force Transformation)」であれ、米統合部隊コマンド(JFCOM)のような大規模な組織であれ、過去のこのような取組みの足かせとなってきた課題は変わらない。

戦闘軍(CCMD)の用兵上の課題(warfighting challenges)に焦点を当てた、上級指導者主導のコンセプトおよび能力開発組織を設立する。

歴史学者のマーレー―とワッツは、第二次世界大戦の前後の軍事的革新を検証する中で、「重要な問題は、ハードウェア、コンセプト、ドクトリン、組織の間で、将来の敵対者よりも優れた『適合性(fit)』を達成することである」と結論づけている[74]。新技術に関する一連のアイデアを最大限に活用し、それらのアイデアを新しい作戦コンセプトに一体化することができる国は、将来のあらゆる戦場で著しい優位性(marked advantage)に持つことができるであろう。そのためには、用兵コンセプト(warfighting concepts)と技術の一体化をより密接に行う、上級指導者が管理する組織体を提案する。上述した理由から、戦闘軍(CCMD)の用兵上の課題(warfighting challenges)に注目し、それをサポートする統合用兵コンセプト(joint warfighting concepts)と能力に焦点を当てた現在の軍部中心の能力開発アプローチから移行するためには、トップ・ダウンで上級指揮官が主導する組織が必要である。

このような組織を成功させるには、適切な人材を選び、最も困難な問題に集中させることが重要である。そのためには、問題を深く理解し、敵対者の能力について情報コミュニティから提供された洞察力を持っていなければならない。米国防総省科学委員会(Defense Science Board)は、「コンセプト開発は知的好奇心を必要とする」と述べている。「コンセプト開発者は厳選され、この任務に専念すべきである」と述べている。コンセプト開発者は、米軍(U.S. military)の能力や作戦の方法(ways of operating)の特性を熟知しているだけでなく、「赤い(red)」能力や用兵の方法(ways of warfighting)についても深く理解していなければならない。そのためには、大国のライバルの軍事的近代化に対応するための統合用兵コンセプト(joint warfighting concepts)や対応策を開発することに焦点を当てた、作戦的な心(operationally-minded)を持ち、インテリジェンス・コミュニティの情報(intelligence community–informed)に精通した専門家の幹部が、省内に必要である。

コンセプト開発は、出来上がった製品を棚に並べるだけの一過性のものであってはならない。統合コンセプト(joint concepts)が適切に検討されるために必要な、上級指導者の支援による息抜きと継続性が認められるまでは、組織的な敬意の欠如に常に悩まされることになるであろう。このことは、将来の戦闘を視覚化することは、反復的かつ継続的なプロセスであるべきだということにつながる。よく言われるように、米国の大国のライバルたちは、米軍(U.S. military)の「学校に通い」、その作戦の方法(ways of operating)を熱心に研究して、有利になるようなギャップや継ぎ目を学んできた。中国やロシアの戦い方(ways of warfare)にも同じことをしなければならない米国防総省(DoD)には、彼らの作戦や戦略の考え方を研究し、理解するための常設チームが必要なのである。

そのために著者は、ワーク副長官の時代に始まった組織、先進化した能力と抑止力パネル(ACDP)を復活させることを提案している[75]。先進化した能力と抑止力パネル(ACDP)は、軍種、任務、役職などの部門を超えた横断的な解決策が存在しない、最も困難な作戦上の課題を解決することに重点を置いていた。その一環として、運用者、アナリスト、技術者からなる選抜グループが、中国やロシアの軍事的優位性に対抗するための新しいコンセプトや対応策を検討することになった。各戦闘軍(CCMDs)、各軍種、米国防長官室(OSD)から選ばれたメンバーは、米国防総省(DoD)の「王冠の宝石(crown jewels)」と呼ばれる、米国防総省(DoD)の在庫の中で最も厳重に管理されている能力にアクセスすることができた。このグループは、既存の能力と新しい能力を革新的な方法で組み合わせて、実際の作戦に影響を与える新しい方法を模索した。このグループは、既存の統合部隊の能力のギャップを埋めると同時に、潜在的な敵対者に新たな作戦上のジレンマを与えることに重点を置いていた。中国やロシアとのダイナミックな軍事競争の中で、新しい能力や新しい作戦方法によって得られる軍事的優位性は一過性のものであり、賢いライバルたちは時間をかけて対抗策(counters)を開発していくからである。

コンセプトの限界に挑戦することを課された各チームは、可能性のある技術を評価し、防衛事業(defense program)を密接に協力して開発している国防副長官と統合参謀本部副議長(VCJCS)に直接提案した。先進化した能力と抑止力パネル(ACDP)は、米国防総省(DoD)の革新を妨げる大きな問題を解決することを意図している。先進化した能力と抑止力パネル(ACDP)は、米国防総省(DoD)内で革新(innovation)を阻害している大きな問題を解決することを意図している。それは、各軍種が通常、姉妹となる軍種との間の競争のため、単独では解決できない任務を遂行しようとしないことである[76]。また、予算が限られた時代には、従来のように自分たちの事業(programs)を支援するという役割に戻り、「統合用語(joint terms)」で考えるということをしなくなる。このような現実の副産物として、革新(innovation)への取組みの多くは、省内に散在する小規模な取組みであり、最高レベルの官僚的な支持者がいないため、戦力開発に明確な影響を与えることができないということがある。

先進化した能力と抑止力パネル(ACDP)は、官僚主義を排除し、統合部隊(joint force)が直面している最も困難な作戦上の課題を解決するために、優先順位をつけた難問を解決するための資金を提供できる上級指導者に直接提言した。先進化した能力と抑止力パネル(ACDP)は、分析的なアイデアから、実験、野外演習での評価に至るまで、革新(innovation)の優先順位付けと調整を行った。先進化した能力と抑止力パネル(ACDP)は、斬新なアイデアのための情報交換センター(clearinghouse)としての役割を果たし、戦闘軍(CCMD)特有の作戦上の問題の様々な要素に取り組んでいる米国防総省(DoD)内の別々の組織に焦点を当て、一体化した。先進化した能力と抑止力パネル(ACDP)は、これらの異種格闘技をまとめ、提案された能力やコンセプトの実行可能性を評価し、ゲーム・チェンジャーとなりうるものを特定した。米国防総省(DoD)の階層的で凝り固まった官僚主義は、このようなアプローチを必要とし、斬新なアイデアや事業(programs)のチャンピオンが優先分野にリソースを向けることを必要とする[77]

米国防総省科学委員会(Defense Science Board)の調査によると、能力開発に対する戦闘軍(CCMD)の影響力は依然として小さい。「戦闘軍指揮官(CCDR)は、どんなに切実なニーズや素晴らしいアイデアを持っていても、戦力提供者のいずれかを説得してスポンサーになってもらう必要がある」。そして、その場合でも、要求承認プロセスのどの段階でも拒否権があるのである[78]。我々が提案するモデルは、、コンセプト開発と能力開発を統合レベル(joint level)で結びつけるために、この問題を解決するために特別にデザインされたものである。コンセプトに基づいてリソースを決心する上級指導者主導のメカニズムとして、このモデルは、首尾一貫した戦争遂行コンセプトを中心に構成された統合および戦闘軍(CCMD)の能力開発の優先事項を推進するための焦点化機能を務める。これまでの経験が示すように、最高レベルの上級指導者が集中的に関与しなければ、防衛事業(defense program)に真の変化をもたらすために必要な厳しい選択は起こらないか、既得権益の競合の中で生き残ることはできない。

また、先進化した能力と抑止力パネル(ACDP)モデルは、米国防総省(DoD)が直面している大きな課題の解決に大きく貢献すると考えている。つまり、米国防総省(DoD)の日常的な革新の生態系(innovation ecosystem)では、先進的なライバルとの戦域レベルの戦い(theater-level warfare)を特徴づけるようなマクロ・レベルの作戦上の問題を解決することはできない。近年、米国防総省(DoD)にはいくつかの「革新(innovation)」組織があり、小規模なプロジェクトで目覚ましい成果を上げているが、それらは依然として過度にストーブ・パイプ化し、米国防総省(DoD)の他の組織には及んでいない。平時のルール・セットでは、重要な能力分野で同等に近づいている中国などのライバルに対抗するために必要な規模の革新と変化を推進する触媒となるような実在の脅威はない。我々が提案する組織は、米国防総省(DoD)が抱える抑止力の信頼性向上の問題を定義し、その解決策を生み出すために統合コンセプト(joint concept)と能力開発を調整するものである。

結論:Conclusion

過去に縛られ、現在に夢中になっている軍事組織は、変化、特に新しい用兵の方法(ways of warfighting)を受け入れることが非常に困難であると感じることが多い。歴史家のデビッド・ジョンソンが指摘するように、彼らは、確立された軍種のアプローチや闘いの「我々の方法(our way)」を進化させ、慣れ親しんだもので実験を行い、革新は周辺部でしか扱わないことを好む[79]。1970年代半ばから1980年代初めにかけては、軍の各軍種が新しいアイデアを模索し、新しい用兵コンセプト(warfighting concepts)を受け入れる姿勢を示した知的発酵(intellectual ferment)の時期だった。その背景には、1960年代後半から1970年代にかけてのソ連の通常戦力の近代化により、ヨーロッパの中央戦線の軍事バランスが大きく変化したことがある。

しかし、より大きなきっかけとなったのは、1973年のアラブ・イスラエル戦争、通称「ヨム・キプール戦争」だった。この戦争は、米国とソ連が長年にわたって開発してきた最新の武器とシステムを装備した大国間の衝突であった。この戦争を見ていた人たちは、現代の戦場の驚異的な殺傷力に驚かされた。特に、ソ連の高度な防空技術は、熟練したパイロットに対しても致命的で、イスラエルは、ほとんど訓練を受けていないエジプト人やシリア人が発射したソ連製のレーダー誘導式地対空ミサイル(SAM)や高射砲によって、18日間で109機の航空機を失った。米国防総省(DoD)のアナリストは、イスラエルの損失率を外挿して、米ソ戦争が起きた場合、ヨーロッパ中央戦線の米戦術航空戦力は17日で全滅すると予見していた[80]。また、イスラエルの戦車がサガー対戦車誘導弾(Sagger anti-tank guided missiles)で大量に失われたことも、米陸軍の計画策定者を悩ませた。「米陸軍の調査チームがシナイやゴラン高原で見たひどい破壊は、戦い(warfare)における精密さの革命が地上戦に適用された最初の証拠であった」と、ロバート・スケールズ(Robert Scales)元米陸軍少将は書いている[81]

各軍種が新しい用兵の方法(ways of warfighting)を導入するためには、新たなきっかけが必要になると考えられる。そのきっかけが、米国が大国のライバルとの軍事衝突に負けることでないことを祈るばかりである。

最後に、もう一つの役割と任務の衝突として浮上していることについて、コメントしておきたい。効果的な統合用兵コンセプト(joint warfighting concepts)を完全に実現することは、それぞれの軍種の伝統的な役割と任務の重複が増えることを意味する。効果的な統合用兵コンセプト(joint warfighting concepts)を完全に実現することは、各軍の伝統的な役割や任務の重複が増えることを意味する。それは同時に、現状を守る偏狭な人々が、変化をもたらす取組みを後退させ、小出しにするという長年の伝統に戻ることを意味する。これは今に始まったことではない。第二次世界大戦における戦略爆撃か戦術爆撃かの議論から、第一次ペルシャ湾岸戦争における作戦地域の定義をめぐるドクトリン上の議論に至るまで、各軍種の偏狭性(parochialism)は、効果的な作戦コンセプトを生み出すことよりも、予算比率を確保することに重きを置いている。

軍種の偏狭性(parochialism)がなくなる将来を見通すことは困難である。しかし、各軍種の分離がもたらす潜在的な弊害が、潜在的な利益を上回る必要はない。文民と軍人の上級指導者が権限を持つハイ・レベルなタスク・フォース方式のコンセプト開発は、個別の軍種の専門性を合成しながら、個別の作戦上の問題をドメインにとらわれない全体的な視点でとらえることができる。クロス・ドメイン(cross-domain)の解決策は、実験やウォーゲーム(wargaming)でどれだけ成功したとしても、実際に省の最も上級の指導者に支持され、権限を与えられた場合にのみ、事業の変更(programmatic change)を促進する。

もし、米国防総省(DoD)が統合コンセプト(joint concept)開発の構造とプロセスを正しく理解することができれば、対等な敵対者に対して軍事的な優位性を生み出すために必要な革新的な用兵のアプローチ(warfighting approach)を開発できる可能性が高くなる。上記の提言は、過去のコンセプト開発に携わった人々の意見も反映されている。過去の統合コンセプト(joint concept)開発の限界を認識しつつも、現在、米国防総省(DoD)が大国のライバルである中国やロシアとの競争にさらされている状況では、作戦コンセプトの開発プロセスが不可欠であるという認識を持っている。

統合部隊(joint force)は、将来戦(future warfare)で直面する問題に対処する新しい方法を考え始めなければならない。将来戦(future warfare)に向けて統合部隊(joint force)を準備する上で決定的に欠けているのは、特定の敵対者に対して各軍種がどのように一体化して闘うかを視覚化した統合作戦コンセプトである。しかし、歴史的な統合コンセプト(joint concept)開発から学んだ教訓と、米国防総省(DoD)の首脳部が革新的な開発アプローチを後押ししなければ、そのような取組みは、米国防総省(DoD)の何の変哲もないオフィスでゆっくりと消えていくことになるかもしれない。

Author:著者

ポール・ベンフィールド(Paul Benfield)

防衛プログラム非常勤シニア・フェロー

パラス・アドバイザーズ 新興技術担当ディレクター

ポール・ベンフィールドは、新アメリカ安全保障センター(Center for a New American Security:CNAS)の防衛プログラムの非常勤シニア・フェロー。また、国家および経済の安全保障に特化した戦略的コンサルティング会社であるパラス・アドバイザーズの新興技術部門のディレクターも務めている。民間企業に入社する前は、米国陸軍で20年以上にわたり、空挺部隊、特殊作戦部隊、歩兵部隊に所属していた。ポールは1997年10月に米陸軍に入隊し、韓国とノースカロライナ州フォート・ブラッグに勤務し、「不朽の自由作戦(Operation Enduring Freedom)」(1次および3次)と「イラクの自由作戦(Operation Iraqi Freedom)」(1次)の支援に参加した後、2005年に士官候補生学校に入学した。彼は優秀な学業生として卒業し、2005年9月に歩兵の少尉に任命された。2007年1月から2008年3月まで、イラクのバグダッドで「増派(Surge)」を支援するために第82空挺師団に所属し、2010年には第3歩兵師団に所属してイラクのファルージャに派遣され、助言・支援活動を行った。2013年5月には、優れたリーダーシップを評価され、ダグラス・マッカーサー・リーダーシップ賞を受賞した。最終的には、国防副長官の軍事補佐官を務めました。ポールは、国防副長官の軍事補佐官として、米国防総省(DoD)の革新と近代化の優先事項を担当し、革新的で変革的な作戦コンセプトに新技術を取り入れることに注力した。ジョージタウン大学で政策管理の修士号を、キャンベル大学で政治学の学士号を取得している。

グレッグ・グラント(Greg Grant)

防衛プログラム非常勤シニア・フェロー

MITRE国家安全保障セクター シニア・プリンシパル

グレッグ・グラントは、新アメリカ安全保障センター(Center for a New American Security:CNAS)の防衛プログラムの非常勤シニア・フェローです。8年間の米国防総省(DoD)での勤務経験に加え、ジャーナリストとして数年間、イラクとアフガニスタンでの戦争を取材した経験もある。現在は、MITREの国家安全保障部門のシニア・プリンシパルとして、新興技術の作戦上の意味合いや、戦争の性質の変化への影響を中心に研究している。それ以前は、防衛革新部隊実験(Defense Innovation Unit Experimental:DIUx)の戦略担当シニア・ディレクターを務めていた。また、ロバート・ワーク国防副長官の特別補佐官を務め、国防省の「第3次オフセット戦略(Third Offset Strategy)」の策定に貢献した。米国防総省(DoD)では、潜在的な敵対国に対する米国の軍事的優位性を維持・向上させるための新技術やコンセプトを特定する「先進的な能力と抑止力パネル(ACDP)」のディレクターを務めた経験がある。また、ロバート・ゲイツ、レオン・パネッタ、チャック・ヘーゲルの各国防長官のスピーチライターを務めた。2003年のイラク侵攻の際には、米国部隊に同行してレポーターを務め、その後も多くの出版物でイラク戦争やアフガニスタン紛争の取材を続けてきた。ジャーナリズムに興味を持つ前は、戦略国際問題研究所(CSIS)の研究員として働いていた。それ以前には、冒険旅行会社を設立し、ヒマラヤ、アンデス、アルプス、アフリカなどへの登山やトレッキングの遠征を行っていた。ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院(SAIS)で戦略研究の修士号を取得している。

ノート

[1] Summary of the 2018 National Defense Strategy of the United States: Sharpening the Military’s Competitive Edge (Washington: Office of the Secretary of Defense, 2018), 7.

[2] Chairman of the Joint Chiefs of Staff Instruction, Implementing Joint Force Development and Design, Department of Defense Memorandum, CJCS 3030.01, December 3, 2019, C-1.

[3] “Defense Science Board Summer Study on Transformation: A Progress Assessment,” Office of the Under Secretary of Defense for Acquisition, Technology, and Logistics, February 2006, 137, https://dsb.cto.mil/reports/2000s/ADA444738.pdf.

[4] Robert G. Angevine, “Time to Revive Joint Concept Development and Experimentation,” War on the Rocks, January 23, 2020, https://warontherocks.com/2020/01/time-to-revive-joint-concept-development-and-experimentation/.

[5] Eric V. Larson, “Force Planning Scenarios, 1945–2016: Their Origins and Use in Defense Strategic Planning,” RR-2173/1-A, RAND Corporation, 2019, 181, https://www.rand.org/pubs/research_reports/RR2173z1.html.

[6] Tara Copp, “It Failed Miserably: After Wargaming Loss, Joint Chiefs Are Overhauling How The US Military Will Fight, Defense One, July 26, 2011. https://www.defenseone.com/policy/2021/07/it-failed-miserably-after-wargaming-loss-joint-chiefs-are-overhauling-how-us-militarywill-fight/184050/.

[7] David A. Fastabend, “That Elusive Operational Concept,” Army, June 2001, 40.

[8] James N. Mattis, “Vision for Joint Concept Development,” attachment to Memorandum for U.S. Joint Forces Command, Subject: Joint Concept Development Vision, Norfolk, VA , 2009, 2–3.

[9] Mattis, “Vision for Joint Concept Development.”

[10] James N. Mattis and Bing West, Call Sign Chaos: Learning to Lead (New York: Random House, 2019), 186.ただし、米国防総省(DoD)が米統合部隊コマンド(JFCOM)を廃止した一方で、多くの事務所と職員は無傷のままであり、統合参謀J7担当部署に異動したことに注意する必要がある。

[11] James R. Locher III, Victory on the Potomac: The Goldwater-Nichols Act Unifies the Pentagon (College Station, TX: Texas A&M University Press, 2002), 445.

[12] Department of Defense, Summary of the 2018 National Defense Strategy (2018), https://dod.defense.gov/Portals/1/Documents/pubs/2018-National-Defense-Strategy-Summary.pdf.

[13] Tom Greenwood and Pat Savage, “In Search of a 21st-Century Joint Warfighting Concept,” War on the Rocks, September 12, 2019, https://warontherocks.com/2019/09/in-search-of-a-21st-century-joint-warfighting-concept/.

[14] Williamson Murray and Allan R. Millett, eds., Military Innovation in the Interwar Period (New York: Cambridge University Press, 1998), 410.

[15] Deputy Secretary of Defense Bob Work speech to the Royal United Services Institute (RUSI), Whitehall, London, UK, September 10, 2015. https://www.defense.gov/Newsroom/Speeches/Speech/Article/617128/royal-united-services-institute-rusi/.

[16] Murray and Millett, Military Innovation in the Interwar Period, 407.

[17] Fastabend, “That Elusive Operational Concept,” 41.

[18] Department of Defense, Summary of the 2018 National

Defense Strategy, 7.

[19] Secretary of Defense Lloyd Austin, “Message to the Force,” Memorandum for all Department of Defense Employees, March 4, 2021, https://media.defense.gov/2021/Mar/04/2002593656/-1/-1/0/SECRETARYLLOYD-J-AUSTIN-III-MESSAGE-TO-THE-FORCE.PDF.

[20] Department of Defense, Summary of the 2018 National Defense Strategy, 1.

[21] Elbridge A. Colby, Testimony before the Senate Armed Services Committee, Hearing on Addressing China’s and Russia Emergence as Great Power Competitors and the Implementation of the National Defense Strategy, January 29, 2019, 5–6.

[22] Eric Larson, David Orletsky, and Kristin Leuschner, “Defense Planning in a Decade of Change: Lessons from the Base Force, Bottom-Up Review, and Quadrennial Defense Review,” MR-1387-AF, RAND Corporation, 2001, 91, https://www.rand.org/pubs/monograph_reports/MR1387.html.

[23] Eric V. Larson, “Force Planning Scenarios, 1945–2016: Their Origins and Use in Defense Strategic Planning,” RR-2173/1-A, RAND Corporation, 2019, 147, https://www.rand.org/pubs/research_reports/RR2173z1.html.

[24] Jim Mitre, “A Eulogy for the Two-War Construct,” The Washington Quarterly, 41 no. 4 (Winter 2019), 18.

[25] Mark Herman et al., “Military Advantage in History,” Information Assurance Technology Analysis Center, 2002, 83, https://www.motherjones.com/wp-content/uploads/legacy/news/featurex/2008/07/military-advantage-in-history.pdf.

[26] See Andrew F. Krepinevich, Maritime Competition in a Mature Precision-Strike Regime (Washington: Center for Strategic and Budgetary Assessments, 2014).

[27] Christopher M. Dougherty, “Why America Needs a New Way of War,” (CNAS, June 2019), 23.

[28] Colin Clark, “Gen. Hyten On The New American Way of War: All-Domain Operations,” Breaking Defense, February 18, 2020, https://breakingdefense.com/2020/02/gen-hyten-on-the-new-american-way-of-war-all-domainoperations/.

[29] David E. Johnson, “Shared Problems: The Lessons of AirLand Battle and the 31 Initiatives for Multi-Domain Battle,” PE-301-A/AF, RAND Corporation, August 2018, 7, https://www.rand.org/pubs/perspectives/PE301.html.

[30] General Donn A. Starry, “Extending the Battlefield,” Military Review, March 1981.

[31] Starry, “Extending the Battlefield,” 2.

[32] David E. Johnson, “Learning Large Lessons: The Evolving Roles of Ground Power and Air Power in the Post–Cold War Era,” MG-405-1-AF, RAND Corporation, 2007, 19, https://www.rand.org/pubs/monographs/MG405-1.html.

[33] Johnson, “Learning Large Lessons,” 31.

[34] Benjamin S. Lambeth, The Transformation of American Air Power (Ithaca, NY: Cornell University Press, 2000), 282.

[35] Lambeth, The Transformation of American Air Power, 280.

[36] Theresa Hitchens, “VCSAF Wilson Presses Service’s Long-Range Strike Role,” Breaking Defense, November 2, 2020, https://breakingdefense.com/2020/11/vcsaf-wilson-presses-services-long-range-strike-role/.

[37] Valerie Insinna, “Air Force general says of Army’s long range precision fires goal: ‘It’s stupid’,” Defense News, April 2, 2021, https://www.defensenews.com/air/2021/04/02/air-force-general-says-of-armys-longrange-precision-fires-goal-its-stupid/.

[38] “Air-Sea Battle: Service Collaboration to Address Anti-Access & Area Denial Challenges” U.S. Department of Defense, May 2013, https://archive.defense.gov/pubs/ASB-ConceptImplementation-Summary-May-2013.pdf.

[39] Joint Force Development and Capabilities Integration and Development System Integration Summary Report, Joint Staff J7 Joint and Coalition Operational Analysis (JCOA) Division, December 19, 2013.

[40] Joint Force Development and Capabilities Integration and Development System Integration Summary Report, 40.

[41] Mark Perry, “The Pentagon’s Fight Over Fighting China,” Politico, August 2015, https://www.politico.com/magazine/story/2015/06/pentagon-air-force-navy-fight-china-119112_full.html.

[42] Joint Force Development and Capabilities Integration and Development System Integration Summary Report, 21–23.

[43] Murray and Millett, Military Innovation in the Interwar Period, 407.

[44] Gregory Kreuder, “Lead Turning the Fight: The Joint Operational Access Concept and Joint Doctrine,” Joint Forces Quarterly, 69 (2nd Quarter 2013), 105.

[45] General David H. Berger, “The Case for Change: Meeting the Principal Challenges Facing the Corps,” Marine Corps Gazette, June 2020, 9.

[46] Donald Hicks, ARPA/DNA, Long Range Research and Development Planning Program, Final Report of the Advanced Technology Panel (Washington, DC: DoD, April 30, 1975).

[47] Remarks Delivered by Deputy Secretary of Defense Bob Work at the CNAS Defense Forum, December 14, 2015, https://www.defense.gov/Newsroom/Speeches/Speech/Article/634214/cnas-defense-forum/.

[48] Matthew B. Caffrey, On Wargaming: How Wargames Have Shaped History and How They May Shape the Future, (Newport, RI: Naval War College Press, 2019), 220.

[49] Robert O. Work, Office of the Deputy Secretary of Defense, Warfighting Lab Incentive Fund and Governance Structure, Memorandum for the Director, Cost Assessment and Program Evaluation, May 6, 2016, https://defenseinnovationmarketplace.dtic.mil/wp-content/uploads/2018/02/DSD_memo.pdf.

[50] Kelly McCoy, “The Road to Multi-Domain Battle: An Origin Story,” Modern War Institute, October 27, 2017, https://mwi.usma.edu/road-multi-domain-battle-origin-story/.

[51] Chairman of the Joint Chiefs of Staff Instruction Directive, Guidance for Developing and Implementing Joint Concepts, August 17, 2016, A-8.

[52] Derived from conversations with previous joint concept writers who prefer to remain anonymous.

[53] “Directions for Defense: Report of the Commission on Roles and Missions of the Armed Forces,” U.S. Department of Defense, 1995, 2-2 and 2-3, https://apps.dtic.mil/dtic/tr/fulltext/u2/a295228.pdf.

[54] Fastabend, “That Elusive Operational Concept,” 44.

[55] David Johnson, “An Army Trying to Shake Itself from Intellectual Slumber, Part I: Learning from the 1970s,” War on the Rocks, February 2, 2018, https://warontherocks.com/2018/02/army-trying-shake-intellectual-slumber-part-learning-1970s/.

[56] Chairman of the Joint Chiefs of Staff guidance, Implementing Joint Force Development and Design, CJCSI 3030.01, December 3, 2019. P. A-3, https://www.jcs.mil/Portals/36/Documents/Library/Instructions/CJCSI%203030.01.pdf?ver=O6zZFkX3mYGe3_WQ-3Jva8A%3d%3d#:~:text=The%20Capstone%20Concept%20for%20Joint,under%20conditions%20of%20disruptive%20change.

[57] Mattis, “Vision for Joint Concept Development,” 6.

[58] “Defense Science Board Summer Study on Transformation: A Progress Assessment,” 138.

[59] Johnson, “Learning Large Lessons,” xviii.

[60] Thomas P. Ehrhard, “Treating the Pathologies of Victory: Hardening the Nation for Strategic Victory,” Heritage Foundation, October 30, 2019. https://www.heritage.org/military-strength/topical-essays/treating-the-pathologies-victory-hardening-the-nation-strategic.

[61] James F. Dunnigan, Pat Harrigan, and Matthew Kirschenbaum, Zones of Control: Perspectives on Wargaming (Cambridge, MA: MIT Press, 2016), 177.

[62] See Angevine, “Time to Revive Joint Concept Development and Experimentation.”

[63] Caffrey, On Wargaming, 85.

[64] “Defense Science Board Summer Study on Transformation: A Progress Assessment,” 137.

[65] Kevin M. Woods and Thomas C. Greenwood, “Multi-Domain Battle: Time for a Campaign of Joint Experimentation,” Joint Forces Quarterly, 88 (1st Quarter 2018), 19.

[66] Joint Force Development and Capabilities Integration and Development System Integration Summary Report, 24–25.

[67] Admiral Scott H. Swift, “Fleet Problems Offer Opportunities,” U.S. Naval Institute Proceedings, March 2018, https://www.usni.org/magazines/proceedings/2018/march/fleet-problems-offer-opportunities.

[68] “Defense Science Board Summer Study on Transformation: A Progress Assessment,” 25.

[69] “Defense Science Board Summer Study on Transformation: A Progress Assessment,” 140.

[70] Frank Hoffman, “Squaring Clausewitz’s Trinity in the Age of Autonomous Weapons,” Foreign Policy Research Institute, December 2018, 2.

[71] CJCS 3030.01, C-2.

[72] 一体化した航空作戦指揮・統制システムである戦域会戦管理中核システム(Theater Battle Management Core System:TBMCS)の開発は、能力開発を推進するための作戦コンセプトなしに高度なシステムを開発しようとした場合に遭遇する問題の好例である。戦域会戦管理中核システム(TBMCS)は、砂漠の嵐作戦で採用されたものよりも簡単に航空任務指令書を作成したいというユーザーの要望から生まれた。戦域会戦管理中核システム(TBMCS)は、砂漠の嵐作戦(Operation Desert Storm)で採用されたものよりも簡単に航空任務指令書(Air Tasking Order)を作成したいというユーザーの要望から生まれたが、現場でどのように使用されるかを定義する包括的な作戦コンセプトがなかったため、システム開発は困難を極めた。

[73] Safi Bahcall, “The Case for a Unified Future Warfare Command,” War on the Rocks, February 19, 2020, https://warontherocks.com/2020/02/the-case-for-a-unified-future-warfare-command/.

[74] Murray and Millett, Military Innovation in the Interwar Period, 410.

[75] See Robert Work, James A. Winnefeld, and Stephanie O’Sullivan, “Steering in the Right Direction in the Military Technical Revolution,” War on the Rocks, March 23, 2021.

[76] Richard H. Van Atta and Michael J. Lippitz, “Transformation and Transition: DARPA’s Role in Fostering an Emerging Revolution in Military Affairs,” Institute for Defense Analysis, April 2003, 63.

[77] “Defense Science Board Summer Study on Transformation: A Progress Assessment,” 138.

[78] “Defense Science Board Summer Study on Transformation: A Progress Assessment,” 148.

[79] Dr. David Johnson, “Army Modernization for an Increasingly Certain Future,” Briefing Deck, RAND Corporation.

[80] Edward C. Keefer, Harold Brown: Offsetting the Soviet Military Challenge 1977–1981 (Washington: Historical Office, Office of the Secretary of Defense, 2017), 575, https://history.defense.gov/Portals/70/Documents/secretaryofdefense/OSDSeries_Vol9.pdf.

[81] Robert Scales Jr., Certain Victory: The U.S. Army in the Gulf War (Fort Leavenworth, KS: U.S. Army Command and General Staff College Press, 1994), 9.