米海兵隊歩兵のための致死性のエコシステム (Marine Corps Gazette)
生成型の人工知能に関する事柄は、「国家としてどのように向き合うのか」レベルの話題から、学校や企業としていかに活用するべきかといった議論までさまざまである。MILTERMでも何度も紹介している米海兵隊機関誌「Gazette」の2023年7月号のテーマは、「Focus on Artificial Intelligence & Machine Learning」である。この号ではいくつかの観点から人工知能を論じた文献がみられる。先に、人工知能を戦いに変化を与えるものとして捉え、これは避けがたい事実として認識し、この新しい技術を取り入れて情報環境における戦いに勝つことを論じた「Adapting to the Changing Face of Warfare‐The urgent need for AI technologies in the Marine Corps」を紹介し、更に、人工知能を現代の軍事組織が抱える「メンタル・フィットネスと自殺防止」に活用する方策を論じた「Machine Learning to Enhance Force Preservation‐AI supporting leadership」を紹介した。ここでは、人工知能と5Gネットワークを活用して戦いにおけるもっとも最前線で闘う歩兵のパフォーマンスを上げる方策を論じた米海兵隊少佐による「Lethal Ecosystems for the Marine Corps Infantryman‐The Marine Corps using adaptive artificial intelligence with 5G networking for the infantryman」を紹介する。(軍治)
米海兵隊歩兵のための致死性のエコシステム
歩兵のために5Gネットワークと共に適応型人工知能使用する米海兵隊
Lethal Ecosystems for the Marine Corps Infantryman
The Marine Corps using adaptive artificial intelligence with 5G networking for the infantryman
by Maj Chris Huff
Marine Corps Gazette • July 2023
ハフ(Huff)米海兵隊少佐は海兵隊中型ティルトローター第161飛行隊の副隊長である。この記事は、ハフ(Huff)少佐が海軍大学院で卒業論文のために行なっている研究に続くものである。人工知能は戦術的なエッジに役立つだろうが、時間、人手、リソースを要する平凡なタスクを完了することで、より大きな応用ができるかもしれない。ハフ大尉の研究は、米国防総省デジタル・人工知能監理室(CDAO)との共同研究である。
私はジャズ音楽が好きだ。子供の頃、父が教員をしていたコミュニティ・カレッジから地元のジャズ局にラジオをダイヤルしていた。車でどこへ行くにもジャズを聴いた。父は特定のミュージシャンが好きで、ジョン・コルトレーンやマイルス・デイヴィス(Miles Davis)、フランク・シナトラを流していた。私はそれが大嫌いだった。自分の車を持ったら、絶対にジャズは聴かないと自分に言い聞かせた。
一家がラジオをソニーのマルチ・ディスク・ステレオにアップグレードしたとき、父は同じアーティストのCDを何枚か買い、繰り返しかけていた。家の中でマイルス・デイヴィス(Miles Davis)を聴きたくなると、父はCDを運ぶケースを車から引っ張り出し、家のステレオでかけていた。
それから30年後、私は自分の車でジャズを聴いている。高速道路を運転中、「Siri」にジャズをかけてくれと頼むと、誰がかけ始めると想像するだろうか?マイルス・デイヴィス(Miles Davis)だ。
帰宅して聴き続けたいときは、「Alexa」に「ジャズを流して」と頼み、エアコンの温度を華氏74度に設定する。迷うことなくエアコンが調整され、ジョン・コルトレーン(John Coltrane)が家中に鳴り響き始める。
なかなかいいでしょ?簡単そうだし、実際そうだ。分かるよ。私がジャズに興味があることや、家の中で華氏74度を好むことは、あなたには関係ないかもしれないが、米国の市民や軍人はすでに日常生活で人工知能(AI)を使っている。
「iMessage」に何かを入力すると、自動的にフレーズ候補が表示される。ジャズをリクエストしたとき、「Siri」はなぜマイルス・デイヴィス(Miles Davis)を再生することができたのか?なぜ「Alexa」はナット・キング・コール(Nat King Cole)ではなくジョン・コルトレーン(Nat King Cole)を家中に流したのか?
「Alexa」はどうやってエアコンのサーモスタットと通信し、温度を華氏74度に調整したのか?「Alexa」と「Siri」は人工知能(AI)の現れである。
人工知能(AI)は、ネットワーク化されたハードウェア・デバイスやセンサーと組み合わされることで、生活の質を向上させ、時間を節約する効率を強化し、計り知れない量のデータを分析して有用な最終製品を提供するエコシステムを提供する。
間違いなく、問題はこの技術をどのように使えば、より致死的になれるかということだ。クラウド・ベースの拡張人工知能(augmented AI)を使い、各歩兵に固有のアカウントを通じてウェアラブル・デバイスからアクセスすることで、効率を向上させ、インテリジェンス、監視、偵察、ターゲティングを支援するデータにアクセスするための計り知れない数の能力を提供することができる。
防衛分野における人工知能(AI)とネットワーキングの研究はここ数年で急速に加速しており、今後も続くだろう。国防総省が人工知能(AI)や5Gネットワーキング企業と契約していることはよく知られている[1]。しかし、個々の歩兵のために5Gネットワーク上で動作するデバイスとインターフェイスする適応型人工知能(adaptive AI :AAI)をめぐる研究開発の範囲は、あまり伝えられていない。
個人が日常生活で適応型人工知能(AAI)をどのように使っているかを議論することは、自由を守るために行動する歩兵にこの技術がどのような利益をもたらすかを理解するのに役立つ。いくつかの企業がウェアラブル・デバイスを通じて人工知能(AI)と適応型人工知能(AAI)の改善に取り組んでいる。
人工知能(AI)と適応型人工知能(AAI)は米国防総省(DOD)にとって最近の焦点である[2]。適応型人工知能(AAI)能力を人間の意思決定と統合し、時間を短縮して意思決定の質を高め、キルチェーンの迅速な完了に必要な精度を向上させることが望まれてきた。
Microsoft社、Amazon社、Apple社、Meta社、Snap社、Google社、L3Harris Technologies社は、デジタル・ウェアラブル、クラウド・ベース・コンピューティング、人工知能(AI)に関して、歩兵に有益な製品を開発している。
より具体的には、適応型人工知能(AAI)アルゴリズムでデザインされたソフトウェアを通じて供給されるデータにアクセスするためのハードウェアやデジタル・ウェアラブル・デバイス、センサー、暗号化された波形が開発されている。防衛分野の民間企業は、実戦環境で拡張現実(AR)や仮想ディスプレイを提供するメカニズムを歩兵に装備させることができるソリューションを導入している。
拡張現実(AR)とバーチャル・ディスプレイは、これらの企業が開発中の新製品によってさまざまな形で提供され、現在実戦配備されている個人用電子機器タブレットとは対照的である[3]。
Microsoft社と米陸軍は最近、一体型視覚補強システム(IVAS)を開発した。Microsoft社(同社はゲーム『コール・オブ・デューティー[4]』を開発した会社の買収を進めている)によると、一体型視覚補強システム(IVAS)は「兵士が煙の中や曲がり角を見通したり、ホログラフィック画像を訓練に利用したり、ボタンをクリックするだけで3D地形図を視界に映し出すことができるようになる」[5]。
最近、一体型視覚補強システム(IVAS)プログラムではテストが停止しており、米陸軍は将来の運用テストを予定するため、一体型視覚補強システム(IVAS)の取得を再び延期した[6]。
防護ベストに一体化された陸軍兵士に装着されたMicrosoftの一体型視覚拡張システム(IVAS)は、タブレットよりも扱いにくい。(写真:ブリジット・シター(Bridgett Siter)) |
この能力の例を拡大すると、Microsoft社が説明したように、訓練用のホログラフィック画像のモデルを使うことができる。ゴーグル・ヘッドセットを装着し、5G地上または空中Wi-Fiネットワークにワイヤレスでネットワーク接続された歩兵は、敵戦闘員のように見えるデジタル移動モデルのホログラフィック投影を受信する。
このデジタル・モデルのデザインは調整可能で、デザイン・チームが決定した画像のように見せることができる。コール・オブ・デューティ』のような一人称視点のビデオ・ゲームのデザインのように、デジタル・アートのデザインは、歩兵が様々なタイプの制服を着た戦闘員や制服を着ていない戦闘員を識別する経験を拡大する上で、多大な柔軟性を提供する。
歩兵は実弾を持って訓練場内を移動し、確立された交戦規定(rules of engagement)に基づいてこれらのデジタル・ホログラフィック・ターゲットと交戦することができる。ターゲットに命中させる成功率は、使用者の癖や体の構造、武器の扱いに特有なテクニックや攻撃方法を改善することによっても把握できる。このようなデバイスが提供できる追加機能を想像してみてほしい。
例えば、歩兵の前方にターゲッティング・ディスプレイを投影し、識別、精度、殺傷率を向上させることができる。ターゲッティング・ホログラフは、射手がどのように武器を構えても確実にターゲットに命中するように射手を支援することができる。攻撃的航空支援アセットが歩兵に火力を提供するとする。
この場合、歩兵は航空機の物理的位置を示すデジタル表示を受け取ることができ、逆に航空機は各友軍歩兵の位置を示すデジタル表示を受け取ることができる。
特に無人のインテリジェンス・監視・偵察・ターゲッティング・システムが部隊を支援する場合、航空機のオーバー・ザ・ホライズン(OTH)送信能力は、支援部隊の位置に関する必要な状況認識(situational awareness)を指揮センターやインテリジェンス・チームに提供することができる。
「Facebook」、「Instagram」、「Oculus」の親会社であるMeta社は、数十億ドルを投じて仮想現実のウェアラブル・デバイスを開発してきた[7]。同社はメタバース(metaverse)創世記のパイオニアである。
メタバース(metaverse)とは、歴史的にライブ、バーチャル、コンストラクティブ・シミュレーション環境として知られているものを説明する新しい用語である。また、メタバース(metaverse)は、ライブ、バーチャル、コンストラクティブ・シミュレーションの理論に対する新しい試みでもある。
メタバース(metaverse)には複数の方法でアクセスできるが、Meta社(以前は「Facebook社」として知られていた)が投資している主な分野は、仮想現実のウェアラブル・デバイスとインターフェイスを結び、メタバース(metaverse)に関与することだ。2014年、Meta社は「Oculus VR」の買収を発表し、Meta社の仮想現実空間への扉を開いた[8]。
Meta社の創業者で最高経営責任者(CEO)のマーク・ザッカーバーグ(Mark Zuckerberg)は最近、CNBC※でMeta社のバーチャル・リアリティ・ウェアラブル・デバイスの進捗状況を説明し、それぞれの新しいプロトタイプと機能について説明した[9]。
※ 【訳者註】CNBCは、ニュース通信社ダウ・ジョーンズとアメリカの大手テレビネットワークのひとつNBCが共同設立したニュース専門放送局。(引用:https://ja.wikipedia.org/wiki/CNBC)
Meta社のグループ・ディレクター、マーティン・ハーベック(Martin Harbech)は最近、リンクトインにこう投稿した。「VR(仮想現実)とAR(拡張現実)は、パーソナル・コンピューティングと同じくらい、あるいはそれ以上に、世界を変える可能性を秘めており、見分けがつかないほどリアルな視覚体験がその大きな役割を果たすだろう」[10]。
Meta社は、同社の研究所であるReality Labsを通じて、ハードウェア技術の進歩に注力している。Meta社の最高技術責任者(CTO)であるアンドリュー・ボスワース(Andrew Bosworth)は、新しいVRハードウェアをデザインするMeta社の取り組みを率いている。ボズワース(Bosworth)にとって最近の商業的成功は、新しいレイバン・ストーリーズ※のメガネである。
※ 【訳者註】Ray-Ban Stories(レイバン・ストーリーズ)は見た目はサングラス、しかし小型カメラやマイク、オーディオ機能を内蔵した次世代のウェアラブル・デバイス。撮影した写真や動画は専用アプリを使ってFacebookをはじめ、Instagram、Twitter、TikTokなどのSNSにも共有可能。(引用:https://find-model.jp/insta-lab/facebook-ray-ban-stories/)
これらのメガネにはカメラ、音声で操作できるコマンド・ソフト、スピーカーが搭載されており、機能的でありながらファッショナブルにデザインされている。彼は、10年後には誰もがカメラ付きメガネをかけるようになると予想している[11]。
「Snapchat」の親会社であるSnap社は、2016年にSpectaclesを発表した[12]。このメガネはレイバン・ストーリーズに似ているが、最近Snap社は拡張現実(AR)画像も投影する「Spectacles」を数量限定で発売した。
Snap社は、メタバース(metaverse)における成長に関して私が近い将来に大きくなると主張するカテゴリーである、商業用メガネのスペースに没入型ARをオーバーレイすることにおいてリードしている。Snap社のカメラ付きメガネの最近の新リリースである「Spectacles 3」は、3次元で画像をキャプチャすることができる。
これらの画像は、3次元仮想現実(VR)ウェアラブル・デバイスを使用して再放送され、視聴者は最初に画像をキャプチャしたときと同じ深さと次元で視覚体験を追体験することができる[13]。失敗から学んだり、より良い訓練を受けたり、さらなる実験のためにデータを取得したりするために、ある経験を再生したいと望むなら、これは非常に便利な機能だ。
クラウド・ベース・コンピューティングがこの技術を可能にしている。Microsoft社、Amazon社、Apple社、Google社は、クラウド・ベース・コンピューティングに多大な投資を行ってきた。
クラウド・ベースのシステムの例としては、「Microsoft Azure」、「Amazon Web Services」、「Apple iCloud」、「Google Cloud」などがある。クラウド・ベースのシステムとの相互運用性を向上させる例としては、「Microsoft Teams」の利用が挙げられる。
「Microsoft Teams」のアカウントを持つ個人は、Microsoft社の数あるプラットフォームのいずれかを使って製品を作成することができ、製品を開発しているチームにアクセスできる人なら誰でも、製品に修正を加えたり、製品の作業と同時に入力内容を確認したりすることができる。
このようなシステムを持つ企業はMicrosoft社だけではない。他の例としては、「Google Drive」や「Slack」がある。製品への変更は、チームが行うと自動的に保存される。製品は、チームメンバーがインターネットに接続していれば、いつでもどこでもアクセスできる。
Apple社の「iCloud」は、同社の「Siri」インターフェースを通じて適応型人工知能(AAI)を提供する。Amazon社の「Alexa」は、同社の「Alexa」インターフェースを通じて適応型人工知能(AAI)を提供する。これら2つの例は、クラウドを通じて双方向の情報ストリームを提供する商用製品であり、ユーザーの好みを学習するようにデザインされた適応型ソフトウェアを通じて、ユーザーの体験を向上させる。
各社のソフトウエアは各社独自のものであり、クラウド・ベースのソフトウエアを中心に形成されるエコシステムは閉じたアーキテクチャである。
クローズド・アーキテクチャ・デザインの一例として、私が「Siri」に「Amazon Music」アプリケーションでジャズを再生するよう頼んだときがある。現在、Apple社は「Siri」を使って「Amazon Music」アプリケーションを開くサポートを追加していない。携帯電話で「Amazon Music」アプリケーションを手動で開く場合、「Siri」の音声コントロール・コマンドを使う代わりに、「Alexa」の音声コントロール・コマンドがアプリケーションとインターフェイスして音楽を再生する。
「Amazon Music」アプリケーションを開いているときに「Alexa、ジャズをかけて」と言えば、フランク・シナトラが流れ始める。「Siri」にジャズを再生するよう頼むと、「iTunes」はマイルス・デイヴィス(Miles Davis)を再生する。どちらのクラウドも、各社独自のソフトウェア・アプリケーションをサポートしており、クローズドなエコシステム・アーキテクチャとなっている。
ソフトウェアはどのようにしてユーザーの好みを学習するのか?ユーザー・アカウントによって、適応型人工知能(AAI)は各ユーザーの個人的な嗜好を理解することができる。例えば、Apple社製品を使う場合、ユーザーは「iCloud」アカウントを持っている必要があり、「Alexa」を使う場合、ユーザーはAmazonアカウントを持っている必要がある。
アカウントは、企業のソフトウェアがアルゴリズムを使ってユーザーの好みを学習することを可能にし、ユーザー契約は、ユーザーが入力したデータを企業がプラットフォーム上で使用することをほぼ全面的に承認する。これらの嗜好は、頻繁なユーザーの要望に基づいて効率を向上させるのに役立つ。
もし私がマイルス・デイヴィス(Miles Davis)を頻繁に演奏するのであれば、私が「Alexa」にジャズを演奏するよう頼んだとき、人工知能(AI)は最初に演奏するミュージシャンとしてマイルス・デイヴィス(Miles Davis)を参照するだろう。ソフトウェアへのアクセスは、Apple社の「Safari」やMicrosoft社の「Edge」のような、インターネットにアクセスするためのインターフェースとともに、アプリケーションまたはユニフォーム・リソース・ロケーターによって完了する。アプリケーションは最もユーザー・フレンドリーなアクセスを提供し、エコシステムがオープンなアーキテクチャを持つ場合、アプリケーション間のソフトウェア一体化(software integration)を可能にする。
個人のアカウントと「iPhone」ほどの小さなハードウェア・インターフェースによって、戦闘員は他のハードウェア・デバイスとリンクし、人工知能(AI)と拡張現実(AR)ディスプレイの組み合わせによってユーザーの好みを学習できるアプリケーションにアクセスできるようになる。
このハードウェアは、5Gネットワークにアクセスして他のユーザーと相互運用可能な接続性を提供し、他のユーザーの位置、敵のターゲッティング・データ、通信をサポートするデータを表示することができる。Microsoft社の一体型視覚補強システム(IVAS)プロジェクトのようなウェアラブルは、戦術ジェット機のパイロット用のヘッドアップディスプレイのような拡張現実(AR)ディスプレイを提供する。
しかし、これらのデータはすべて安全なのだろうか?L3Harris Technologies社は、5Gエコシステム向けのネットワーク暗号化通信に取り組んでいる。L3Harris Technologies社は、同社の5Gネットワークを「安全でスケーラブル、回復力のあるモバイル戦術5Gネットワークシステムであり、劣化、断続的、潜在的、争奪戦(電子戦)環境における移動中の通信を可能にする」と説明している。
L3Harris Technologies社は、「重くて電力を消費するバックパックベースのネットワークを箱の中に入れる必要性をなくしながら、範囲を最大化する」。5Gネットワークを構築した。その範囲は、「5ポンド以下のウェアラブル・ギア」で30km以上のエリアをカバーする。
L3Harris社は、アーキテクチャの制約を理解した上で、同社の「5Gセキュア・ネットワーク・システムは、スタンド・アロンでも、セキュア・クラウド・ベース・システムに統合することもできるようにデザインされている」と説明している[14]。セキュア・クラウドとは、米国防情報システム局(Defense Information Systems Agency)の米国防総省セキュア・クラウド・コンピューティング・アーキテクチャ(DOD Secure Cloud Computing Architecture)を指す。
米国防総省情報システム局のウェブサイトに掲載されている概要では、セキュア・クラウド・コンピューティング・アーキテクチャについて、「エンタープライズレベルのクラウドセキュリティと管理サービスのスイート……(商用クラウド環境でホストされる影響レベル4と5のデータのための)境界とアプリケーションレベルのセキュリティのための標準的なアプローチを提供する」と説明されている[15]。
歩兵は暗号化された安全な5Gネットワーク上でクラウド・ベースの技術を使用し、作戦環境で米国防総省(DOD)デジタル・アプリケーションを使用できる。L3Harris社は周波数ホッピングの「Mobile Ad Hoc Network」波形も提供している。
L3Harris社は、この波形は5Gネットワーク機器とのマルチレイヤーアンチジャム機能を持つと説明している[16]。クラウド・ベースの適応型人工知能(AAI)を使用し、各歩兵に固有のアカウントを通じてウェアラブル・デバイスからアクセスすることで、計り知れない数の機能を提供することができる。
例えば、指揮官や指導者は、安全なネットワーク上でリアルタイムに味方の隊員の位置をよりよく追跡することができる。ウェアラブル・デバイスを使用することで、歩兵は拡張人工知能(augmented artificial intelligence)による推奨情報でカスタマイズされた拡張現実(AR)ディスプレイで映し出されるデータにアクセスすることができる。
ウェアラブル・デバイスは、歩兵一人一人に、武器の交戦時のターゲティングと精度を向上させることができる。ウェアラブル・デバイスにアクセスし、暗号化された5Gネットワークを介してリンクされた拡張人工知能(augmented artificial intelligence)は、必要な口頭でのコミュニケーション量を減らしながら、より良い状況認識(situational awareness)と効果的なコミュニケーションを提供することができる。
ネットワーク化されたデバイスのエコシステムは、様々な種類の報告書用のデータを送信することができ、クラウドがすでに収集した作戦や演習に関する情報を使って、特定の量のデータを報告書に自動的に入力することで、報告書の作成に必要な時間を短縮できる可能性が高い。
これらの機能はそれぞれ効率を向上させ、歩兵が敵と接近し、火力と機動で敵を撃破するための正確な解決策を練る時間を短縮する。これだけ時間が節約できれば、歩兵がジャズを聴きたくなるとは思えないが、聴くことはできるだろう。
ノート
[1] Theresa Hitchens, “Hughes Wins Bid for 5G/ Satellite Network under DOD Experiment,” Breaking Defense, March 21, 2022, https://breakingdefense.com/2022/03/hughes-winsbid-for-5g-satellite-network-under-dod-experiment.
[2] Government Accountability Office, Artificial Intelligence DOD Should Improve Strategies, Inventory Process, and Collaboration Guidance (Washington, DC: March 2022).
[3] MCSC Office of Public Affairs and Communication. Marine Corps Systems Command, “Handheld Tablet Improves Situational Awareness,” Marines, September 5, 2019, https://www.marcorsyscom.marines.mil/News/News-Article-Display/Article/1952936/handheldtablet-improves-situational-awareness.
[4] Microsoft News Center, “Microsoft to Acquire Activision Blizzard to Bring the Joy and Community of Gaming to Everyone, across Every Device,” Microsoft, January 18, 2022, https://news.microsoft.com/2022/01/18/microsoft-to-acquire-activision-blizzard-tobring-the-joy-and-community-of-gaming-toeveryone-across-every-device.
[5] Deboarah Bach, “U.S. Army to Use HoloLens Technology in High-Tech Headsets for Soldiers,” Microsoft, June 8, 2022, https://news.microsoft.com/transform/u-s-army-touse-hololens-technology-in-high-tech-headsetsfor-soldiers.
[6] Colin Demarest, “Congress Freezes $349 Million for Army’s Next Generation Goggles,” C4ISRNET, March 21, 2022, https://www.c4isrnet.com/battlefield-tech/it-networks/2022/03/21/congress-freezes-349-million-for-armys-next-generation-goggles.
[7] Staff, “Inside Reality Labs Research,” Meta, November 16, 2021, https://tech.fb.com/arvr/2021/11/inside-reality-labs-meet-the-teamthats-bringing-touch-to-the-digital-world.
[8] Staff, “Facebook to Acquire Oculus,” Meta, March 25, 2014, https://about.fb.com/news/2014/03/facebook-to-acquire-oculus.
[9] Kif Lewsing, “Mark Zuckerberg Showed These Prototype Headsets to Build Support for His $10 Billion Metaverse Bet,” CNBC, June 21, 2022, https://www.cnbc.com/2022/06/21/mark-zuckerberg-shows-early-metaverse-headsets-mirror-lake-holocake.html.
[10] Martin Harbech, “The Holy Grail of VR is the ‘Visual Turing Test’,” LinkedIn, June 2022, https://www.linkedin.com.
[11] Salvador Rodriguez, “Facebook’s Bosworth Says Glasses with Cameras Will be the Norm in 10 Years,” CNBC, September 10, 2021, https://www.cnbc.com/2021/09/10/facebooks-bozsays-glasses-with-cameras-will-be-the-normin-10-years.html.
[12] Sarah Frier, “Snapchat Will Release $130 Sunglasses With Built-In Camera,” Bloomberg, September 21, 2016, https://www.bloomberg.com/news/articles/2016-09-24/snapchat-willrelease-130-sunglasses-with-built-in-camera.
[13] Information variable at https://www.spectacles.com/learn.
[14] Information available at https://www.l3harris.com/all-capabilities/secure-5g-network-andenterprise-solutions.
[15] Information regarding Defense Information Systems Agency is available at https://disa.mil/~/media/files/disa/fact-sheets/secure-cloud-computing.pdf.
[16] Information regarding Falcon Net Ecosystem. L3 Harris is available at https://www.l3harris.com/all-capabilities/falcon-net-ecosystem.