米国の電子戦:あなたは間違ったことをしている – US Electronic Warfare: You’re Doing It Wrong –

「新たな冷戦」という言葉が聞かれるようになっているが、これは、米国がイラクやアフガニスタンでの反抗勢力との戦いに翻弄されている間の約15年間に、ロシアや中国といった米国でいう修正主義国家が、軍事力を高めた結果といわれている。ここでいう軍事力の内容は、核、空軍力、海軍力、陸上戦力に留まらず、進展する科学・技術の粋を集めた人工知能までに及ぶ。その軍事力を構成する機能の内、電子戦能力については、ロシアのウクライナ紛争において米国を中心として西側諸国が太刀打ちできないほどまでに、能力の差を見せつけられたといわれる。

電子戦分野での戦い方には各種考えられるであろうが、「力」に「力」で対抗するのか、または、クラウゼヴィッツや孫子の言うように「力」に対して「知恵」で戦うことが考えられる。「モザイク戦(mosaic warfare)」と呼んでいるが、これは一概にはこれと言えないが、「消耗戦(attrition warfare)」か「機動戦(maneuver warfare)」なのかと問われると、電子戦における「機動戦(maneuver warfare)」いう見方もできるのではないかと考えられる。

米国戦略予算評価センター(Center for Strategic and Budgetary Assessments: CSBA)の研究成果を取り扱った記事を紹介する。

米国の電子戦:あなたは間違ったことをしている US Electronic Warfare: You’re Doing It Wrong

米国戦略予算評価センター(Center for Strategic and Budgetary Assessments: CSBA)によると、米国はロシアと中国の強力なEW勢力に対抗するために間違った妨害機(jammer)に投資しているという。敵の弱点を利用する別のアプローチが存在する。

By   Sydney J. Freedberg Jr.

on November 21, 2019 at 4:03 AM

 

CSBAは有人システムと無人システムのネットワークを必要とし、それぞれが特別な役割を果たす

電子戦への予算の増加と高いレベルの注意にもかかわらず、ペンタゴンの「取り組みは焦点が合っておらず、失敗する可能性が高い」と議会の委託研究は今日警告している。米国戦略予算評価センター(CSBA)の報告書によると、米国が必要としているのは、ロシアと中国を凌ぐことができる根本的に新しいアプローチである。

[CSBAの研究文書全体はこちらから]

大幅に遅れた2020年の予算で、ペンタゴンは電子戦に101億ドル(秘密区分なし)を要求しているが、その大部分は、海軍のEA-18Gグラウラー用の次世代妨害機(jammer)や水上戦艦用のSEWIP[1]システムなどの従来のプラットフォームになっている 。(米陸軍と米空軍は1991年以来、電子戦軍団をほぼ解散し、米海軍に任務を任せており、現在再建を試みているところである)これらのプラットフォームは大きく、高価で、人間が搭乗しているため、消耗品ではないが、レーダー、無線機、妨害機(jammer)は強力な信号を発信することで敵に自分の存在を伝えることになる。

CSBAはミッションをユニットに一致させるためのUberのようなアルゴリズムを提案する

それに加えて、中国とロシアは従来のプラットフォーム(飛行機、艦船、高出力アンテナを搭載した大型トラック)に多額の投資を行っており、米国は独自の条件でそれらに匹敵することができないとCSBAは警告している。代わりに、米国は技術と戦術の両方の新世代のものを展開配備することにより、米国は敵対者に先んじて飛躍すべきである。有人システムと無人システムのネットワークを想像すると、比較的消耗型のドローンが積極的に信号を発している間、残りの部隊は沈黙し、ステルスを保ち、残存する。空中、陸上、海上、宇宙、およびサイバースペースからの部隊をまとめ、必要に応じてその場で再編成できるマルチドメインの指揮・統制ネットワークが想像できる。最終目標:権威主義的な敵対者の集権的システムが追いつけない、分散した柔軟な部隊を作り出す。

Uber For EW:電子戦にとってのUber

それはどのように機能するのか?「それは本質的にUberのようなものである」と筆頭著者のBryan Clarkは私に語った。「指揮官は部隊にさせたい任務を入力し、タスクを可能とする部隊を特定し、地理的境界、時期などの制約を入力し、システムはいくつかの提案された行動方針とともに戻ってくる。行動方針を開発するために、どの部隊がタスクをもっともよく達成できるかを決定するようにシステムは利用可能なすべての部隊にわたってオークションを実行する」-Uberのアルゴリズムは乗客の希望するピックアップポイントと目的地を利用可能なドライバーを数秒(日に数万回も)で一致させる。

Bryan Clark

もちろん、この種の統合全ドメイン指揮・統制システムを駆動する人工知能は、Uberのものよりもはるかに洗練されたものでなければならない。通常の乗り物、グループ乗り物、高級車を単に区別するのではなく、さまざまなタイプのドローン、飛行機、船、地上車両、衛星などの能力を知る必要があり、どれが固有の機能と現在の場所の両方に基づいミッションを実行できるのかを計算する必要がある。乗客を降ろす場所を単に知るのではなく、さまざまなターゲットに対して、投下するのに最適な種類の爆弾、遂行するための妨害(jamming)、または展開配備するマルウェアを把握する必要がある。

米国戦略予算評価センター(CSBA)の閃き(inspiration)の一部は、モザイク戦(Mosaic Warfare)と呼ばれる米国防高等研究計画局(DARPA)のコンセプトであると、Clarkは私に言った。非常に簡単に言えば、米国防高等研究計画局(DARPA)は、伝統的な軍事組織はジグソーパズルのようなものであり、すべてのピースは大きな絵のただ1か所にしか収まらないと主張している。将来の組織はモザイクのようなものである必要がある。モザイクでは、さまざまな方法で小さなビルディングブロックのセットを組み合わせて、無限にさまざまな画像を作成できる。

インターネットのように、この種のネットワーク化された部隊は、破損したノードにデータを渡すように組織を再編成することにより、物理的な破壊、ハッキング、または妨害(jamming)などの敵の攻撃に残存することができると、Clarkと他の著者が主張する。そのため、ロシアと中国の部隊は、いくつかの重要なリンクを妨害(jamming)したり、主要な司令部、基地、艦船、衛星を物理的に破壊したりすることで無力にするのをはるかに難しくするであろう。

陸海空における電子戦および電磁戦闘管理(EMBM)のためのCSBAスキーム

「米国防総省の電子戦経費の増加……は、米軍がEMSでどのように作戦し、戦うかについての一貫したビジョンに導くものではなく、中国やロシアに対して大幅な改善をもたらす可能性は低い」と米国戦略予算評価センター(CSBA)は述べている。その主な理由は、「ALQ-249 Next Generation Jammer [ Navy EA-18G Growerジェットで使用 ] やSLQ-32 Shipboard EW Improvement Program [ aka SEWIPなどの水上艦船 ]、プラットフォーム・セントリックのEWプログラムに集中しているためである。これらのシステムは既存のプログラムを更新するが、米軍の作戦方法を根本的に変えるものではない」

What To Buy:何を購入するか

そして根本的な変化は必要なものであると米国戦略予算評価センター(CSBA)は主張している。ロシアや中国とはまったく対照的に、米軍は若き指導者による主導性と即興に高い価値を置いているが、実際には、それらの指導者に複雑で変化する戦闘空間を理解し、洗練された対応を実行する洗練された計画ツールを提供していない。

「現場の指揮官が利用できるツールは、創造的な作戦を開発し計画するためには不十分である。その結果、指揮官、特に大規模な計画策定参謀が不足している若年の指導者は、敵が予測できるドクトリン、習慣、伝統に頼る傾向がある」と米国戦略予算評価センター(CSBA)は主張している。「この新しいC3 [指揮、統制、コミュニケーション]アプローチの重要な要素は、「指導者が指揮系統を上下して、自分の軍隊と作戦を創造的に計画、適応、再構成できるようにする」DARPAが取り組んでいる新しい計画策定ツールの開発である。

これらの新しいツールは、指揮官が新しい種類の部隊を迅速に再編成および再編成するのに役立つものである。電子戦任務のすべての側面を自身で単独で行うこと—米国の計画策定と敵の対抗策の両方を簡潔にする—が、できる大型の強力な航空機に頼るのではなく、将来の部隊は複数の有人および無人のプラットフォーム間で機能を分解保持する。消耗型ドローンはレーダー信号を発しますが、他のドローンや有人システムは受動的にレーダーの反射波を受信し、検出が困難なデータリンクのノートを比較して敵部隊の位置を把握する。有人の母船から発射される可能性のある他の消耗ドローンは、妨害(jamming)に必要な強力な信号を送信できるが、ネットワーク内のすべての部隊は、敵の送信を受動的に聞く能力を備えている。

現在、米国戦略予算評価センター(CSBA)はペンタゴンの高額チケットプログラムを缶詰にすることを求めていない。より小さく、より革新的なアイテムのために資金を解放するためにそれらを整理するだけである。「今日の複数任務の艦船、航空機、または部隊の小さな一部をより小さく、安価で多機能でない部隊と置き換えるだけで、米軍部隊パッケージの適応性を大幅に向上させ、敵対者にかなりの複雑さを課すことができる」とレポートは主張している。

特に中国は、ロシアよりもはるかに多くのリソースを持っているが、実際の戦闘経験ははるかに少なく、詳細な事前計画策定と集権的統制に大きく依存している、と米国戦略予算評価センター(CSBA)は述べている。「人民解放軍の軍事システムの比較的静的で柔軟性に欠ける本質と、中央集権的で合意に基づく意思決定への継続的な依存は、米軍が活用できる機会を創り出す可能性がある」とこの報告書は主張する。米国が真に米軍の人々に力を与える軍事技術と軍事組織を構築できればであるが。

[1] Surface Electronic Warfare Improvement Program