電磁スペクトラムで勝利する。ー米国防総省が新戦略を明かす

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Winning The Spectrum: Pentagon Unveils New Strategy
By Bryan Clark and Timothy Walton
https://breakingdefense.com/2020/05/winning-the-spectrum-pentagon-unveils-new-strategy/

電磁スペクトルは電子戦(EW)を遂行する鍵であり、電子戦は現代戦争を遂行する鍵である。例えば通信やGPSを妨害することで、違うところへと誘導したり、電波を利用したサイバー攻撃により、こちらの武器の機能を停止させたりできる。米国は冷戦終結後、電子戦をほぼ放棄した。ところがロシアがウクライナとの戦争で電子戦がいかに効果的であるかを明確にしたことで、米軍の上層部は不安になった。彼らと議会は、彼らがいかに自分たちを脆弱にしていたかを認識した。そのため米議会はアメリカの電子戦の地位を回復するための戦略を考案するためのグループの創設を命じた。Hudson InstituteのBryan ClarkとTim Waltonのレポートでは、次の指摘をしています。

  • 5Gの利用をめぐって軍事用と商用での周波数の取り合いが起こりつつある。
  • 中国とロシアの軍は過去20年間、電子戦装備の近代化、新たな電子戦オペレータや技術者の教育訓練、各戦闘群や部隊に電子戦隊の配置を行ってきた。一方、この時期、米国の国防総省は冷戦時代の栄冠に安住し、電子戦システムの開発や訓練への投資を怠った。
  • 2013年と2017年に策定されたDoD戦略は、能力とコンセプトを変革するよう軍に指示して、電磁スペクトラムの管理と制御に関する増大する課題に対処しようとしたが、米国と敵対する軍隊の間のギャップを大幅に埋めることはできなかった。強大な敵対者が領土内で戦うことでの地の利を使い、防御を集中することに抗することができるまでに何十年もかかるだろう。(さらに、パンデミック後の予算の制約は、能力格差をより早く埋めるための資金の増加を妨げる可能性が高い。)
  • 議会は懸念を強め、国防総省にEM Spectrum Operations Cross-Functional Teamを立ち上げ、新たな戦略を策定するよう命じた。これは完成間近であり、国防総省が電子戦分野で永続的な優位性を獲得する最後の機会になるかもしれない。
  • 新しい電磁スペクトラム優位戦略では、どのようにして電磁スペクトラムの敵の強みを弱め、弱点を活用するかが強調されている。新しい戦略では、米国とそれに対抗する軍との間での非対称性への対処が盛り込まれている。米国と敵対する大国の間の重要な非対称性は、中国とロシアが紛争地域に近いという単純な事実である。中国人民解放軍(PLA)とロシア軍は、電子戦およびセンサーシステムを、信頼性が高く妨害しにくい有線や見通し内の通信で運用可能な自国の領土または近隣の海もしくは空域に配置することができる。地の利があることで、中国とロシアの部隊は、米軍を発見し攻撃するために、パッシブ、マルチスタティック、低周波の電磁センサーを配備し、またまだ途上のシステム・オブ・システムズや戦術を試すことができる。
  • 逆に人民解放軍が地の利に甘んじて事前に計画された静的なシステム・オブ・システムズと戦術への依存することは、米軍が行う非常にダイナミックで予測不可能なスペクトラム戦に対して不利である。そのため電磁波スペクトル優越戦略は、機動性と複雑性に力点を置く新しい運用概念を採用するべきである。
  • 機動性と複雑性を担保するためには電子支援センサーとEMBM(電磁スペクトラム戦闘管理)によって調整される民間または軍のユーザ間の動的かつ自動化されたスペクトル共有の能力を必要とする。敵の攻撃から身を守るために、米軍はLPI/LPDと電子戦対抗策を持ったパッシブまたはマルチスタティック・センシングに頼ることになるだろう。また、米国の電子攻撃には、フォトニクス技術により幅広い周波数帯に対応可能なAI利用のコグニティブ・ジャマーも必要になる。コグニティブ・ジャマーやEMBMシステムが置かれている電子戦の状況を解析する能力は、脅威、我側および民間の電磁スペクトラム・システムに関する情報に依存する。今日では、インテリジェンス・コミュニティからのデータや分析がオペレータに届くまでに時間がかかり、電子戦機器にプログラムされるまでに相当の時間がかかっている。国防総省は、電磁スペクトラム情報共有のための新しいフレームワークを確立するとともに、配備された電子戦およびEMBMシステムにAIをより利用して電子戦機器の再プログラミングのプロセスを短縮する技術を取り入れる必要がある。
  • 現在の要件分析方法では求められる複雑で予測不可能な電磁戦の機能を定義することは困難である。国防総省は、DoD Adaptive Acquisition Frameworkのような新しいプロセスにより、モデリングやシミュレーション、実験を用いた、様々なシナリオにおけるミッションの影響の包括的な評価を行い潜在的な新しい電磁戦能力を特定することが必要である。
  • 国防総省の持つ現在の訓練区域では、近代的な脅威システムの実物が置かれていないことと、ライブの野外訓練中に米国の電磁スペクトラム放射を傍受されはしかいかという懸念のため、実験や訓練のためにリアルな電磁戦環境を提供できていない。コストのかかる範囲のアップグレードに焦点を当てるのではなく、国防総省は、概念の開発、戦術の革新、あらゆる段階において最も困難な脅威に対する訓練を可能にする、バーチャル及びコンストラクティブなやり方に重点を移すべきである。
  • 国防総省は、新たな方向に進んで、米軍の適応性と敵に対応困難を強いる能力を生み出す機動戦のコンセプトを取り込んだ電磁戦能力の開発に踏み出すべきである。
    もしも国防総省が電磁戦の領域で戦うための新たなより戦略的で積極的なアプローチを開始しなければ、敵は米国の同盟国やパートナー国を踏みにじり、その領土と影響力を獲得しようとするだろう。紛争や過密状態にある電磁スペクトルの中で生き残り、戦う能力を実証することは、米軍が中国やロシアの活動を遅らせ、そして彼らを思いとどませることになるだろう。

電磁スペクトラムで勝利する。ー米国防総省が新戦略を明かす” に対して1件のコメントがあります。

  1. wpmaster より:

    国防総省が作成している電子戦の新戦略については次の記事がありました。

    国防総省は議会に提出する電子戦報告書を作成中。
    Mark Pomerleau ,C4ISRNET date_range October 29, 2019

    https://www.c4isrnet.com/electronic-warfare/2019/10/29/pentagon-preparing-first-electronic-warfare-report-for-congress/

    国防総省に新設された電子戦のための部門横断チームは、議会への最初の報告書提出に向けて準備を進めている。
    これは2019年の国防授権法で規定されているために、180日ごとに議会に報告書を提出することが求められている。また国防総省の電子戦戦略に関するアップデートも提供しなければならない。

    J8(Joint Staffの要件・能力開発担当)副部長のLance Landrum准将は、チームはこの第1報作成の最終段階にあると述べた。
    Landrum准将は10月28日、AOC(Associaton of Old Crows) International Symposiumにおいて、全般的に見ればクロスファンクショナルチームは、すべての領域にわたって軍事的優位性を確保するため、電磁的優位性に焦点を当てていると明かした。

    4月1日に正式に設立された同組織は、国防総省と契約業者を合わせた約20人からなり、同省全体で11の組織を代表する13人の国防総省職員を抱えている。クロスファンクション・チームにも関わっているLandrum准将は、同チームは法案に関わる質問にも対応しなければならないと付け加えた。

    このことは「チームで要件を特定し、電磁スペクトルに関連するガバナンスと我々の能力、およびその物理的機動空間でのオペレーションに関するポリシーを策定し計画を作っている」ことであり、「私たちはこれをまとめる任務を負っており、私たちのビジョンは、電磁スペクトルの性質、電磁スペクトルの重要性とそれが私たちの能力のすべてにどのように関連するか、私たちのシステムにどのように関連するか、私たちのネットワークにどのように関連するか、指揮統制、データリンクなどを包括的に見渡すものになる。」とLandrum准将は述べている。

    国防総省関係者によると、この鍵となる取り組みは、国防総省の2013年DoD電磁スペクトル戦略と2017年電子戦戦略を統合して、単一の優越性戦略にすることだとしている。

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