今回の米国の大統領選後の国防総省の状況

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23日付のNHKニュース[1]で、大統領選を制し来年1月に新政権を発足するとされるバイデン前副大統領の主席補佐官に起用されるクレイン氏が22日に「ABCテレビに出演し、政権移行に向けた対応などを説明し、政権の閣僚人事について、24日の火曜日に閣僚人事の第1弾が明らかになる」と述べたようです。

1月20日にバイデン政権が発足するのはほぼ確実なようですが、新政権移行には大統領選の結果の遅れ以外にも大きな問題が山積みのようです。

キヤノングローバル戦略研究所の宮家 邦彦氏が11月17日付け日経ビジネス[2]で「米政権移行の遅れがもたらす安全保障上の懸念と2001年の教訓」という記事で、アメリカの公務員の政治任用制度の問題を取り上げ、2000年のブッシュとゴアの大統領選での政権移行の遅れが9.11同時多発テロ攻撃への準備の問題を生起したと「9.11同時多発テロの検証委員会の報告書」が指摘していると紹介されています。
又、ご自分の教訓として、2001年の海南島沖で米海軍偵察機が中国軍機に接触された所謂「海南島事件」は、「当時、国務省には長官と副長官しかおらず、肝心の東アジア太平洋担当次官補は不在だった。あの事件では中国が米国のブッシュ新政権をテストした可能性が高い。」として、政権発足時の国家安全保障チームの発足の遅れがもたらす影響について述べられています。

このような観点から、今の米国の安全保障に直結する国防総省の状況がどうなっているのか心配なところですが、20日付けのDefense newsの「As Trump’s term ends, 40 percent of top DoD jobs lack confirmed officials」が現在の状況と課題について紹介していますので概観してみたいと思います。(黒豆柴)

トランプ政権の終了につれて、国防総省のトップの職務の40パーセントは政治任用された人材を欠いている
As Trump’s term ends, 40 percent of top DoD jobs lack confirmed officials
By: Aaron Mehta     2020/11/20

国防総省にある60の上院の承認ポジションのうち、36名だけ配置されている(2等軍曹ジャックサンダース/米国国防総省)

ワシントン—国防総省の最高レベルでの大幅な交代と相まって、候補者の指名の定例の遅れは、トランプ政権が終わることから上院の確認を必要とする部門のトップの職務の40パーセントが承認された任命者が居ないことを意味している。
ディフェンスニュースの集計によると、国防総省の60のポジションのうち24は上院によって確認された職員によって埋まっておらず、専門家は、現在の候補者が時間切れになる前に上院の承認を受ける可能性はほとんどないと考えている。

確認された幹部がいないこれらの部門の中には、国防長官、諜報、政策、研究、工学の次官、および会計監査など、部門のトップの文民の職務がある。ほとんどすべての欠員は国防長官府(OSD)内にあり、海軍次官、空軍次官、空軍の宇宙取得と統合のための次官の4つのポジションがあり、軍レベルでも陸軍法務顧問が空席のままである。

脚光を浴びた辞任させられた国防長官マーク・エスパー、政策担当次官ジェームズ・アンダーソンとインテリジェンス担当次官ジョセフ・カーナンは、その週を最後としてその職を辞任した。
しかし、欠員は年中問題となっており、4月には20議席が空席で、政権は全体的にポジションを埋めるのに時間がかかっている。
元上院軍事委員会の職員で元海兵隊の将官であるアーノルド・プナロ氏がまとめた情報によると、トランプ政権は前任者の防衛当局者の確認に劇的に遅れをとっている。

オバマ政権が候補者指名するのに平均約5か月、公式に上院の確認(PAS)を必要とする大統領の任命を確認するのに2か月強かかっていた。-これは、プナロ氏のデータによると平均7か月のプロセスで、政策担当次官などのトップ層のOSD幹部には、確認に4か月弱かかっている。

しかし、トランプ政権は、個人を特定してトップの座に指名するための遅いプロセスに悩まされていた。候補指名には約7.5か月、確認には約3.5か月かかった。
-このように個人を確認するには、平均で合計11か月かかっていた。これらのトップ層のOSD幹部に関しては、トランプチームが指名するのに6か月、確認するのにさらに3か月かかった。これは、オバマチームが同じ役割を担うのにかかった時間の2倍以上となっている。

ホワイトハウス移行プロジェクトによって編集された同様のデータは、トランプ政権が任命者の指名と確認においてロナルド・レーガンまで遡った全ての政権に遅れをとったことを示している。

以下の役割は全て現在上院で確認された任命者が不在。

副監察官を除くこれらすべての職務は、個人が職務を遂行するか、またはその能力の有る者が職務を遂行するかのいずれかであるが、これには規則に抵触する恐れがある。
ケースによっては、当局者は、1年のほとんどの間これらの職務を果たしてきた。

そのリストのうち、11人がプロセスのさまざまな状態で候補者を発表された。-その中には、月曜日にトランプの候補者として国際安全保障問題の担当次官補として発表された退役空軍人であるスコットオグレイディ氏が含まれている。
しかし、3月にプロセスを開始した候補者を含むこれらの候補者は、就任の希望を持つべきではないとプナロ氏は述べた。(現在、上院軍事委員会の確認聴聞会は予定されていない。)

「7月は候補者にとって時期が悪かった。今、活動時間は中断されている。」と述べ、選挙詐欺の申し立てとジョージア州での議会のコントロールを決定する決選投票キャンペーンによってすでに動揺している上院にとって、実際に仕事ができるのは約14日しか残っていないと指摘した。

一方、上院多数党(共和党)院内総務のミッチ・マコーネル氏は、政権より長持ちする裁判官選考に焦点を合わせる可能性が高い。

「残念ながら、私は、カレンダーや委員会の前にいる人たちが、レームダックの衰退期に動くという実現性のある試みする人がいると考えるような本当の楽観主義者ではない。」とプナロ氏は語った。政権が候補者を迅速に通過させるのに苦労した理由について、SASC即応および管理支援小委員会のトップの民主党員であるティム・ケインバージニア州上院議員は、候補者の質が問題であると述べた。

「これらの欠員には多くの理由がある。:トランプが人々を追い払うか、人々が去っていくか、トランプは共和党の過半数によって確認できない人々を送ってくる。」とケイン上院議員は金曜日のインタビューでディフェンスニュースに語った。「トランプは、上院の監視に参加する必要がないため、「演技」と上院の確認を通過しない間に合わせ的な人材が実にお気に入りであった。そしてそれは国防総省より大きな戦略だ。」

これは、今年の夏に上院の確認が棄却された後、現在、政策担当国防次官の任務を遂行しているアンソニー・タタ氏の場合に最も明白に見ることができる。
アメリカンエンタープライズ研究所の防衛専門家であるマッケンジーイーグルン氏は、これらのポジションが空席であることの影響を定量化することは難しいと述べた。

「この政権は国防総省の上級の政治的ポジションは慢性的に空席のままなので、官僚機構はある程度まで対応していた。」と彼女は言った。「と同時に、上院の確認がそれを推進させる高官がいなければ、ある特定の線を超えて進むことができない特定の優先度の高い問題がある。それはまるで、キャリア公務員に利用できる活動と選択肢を閉ざす目に見えないゴールポストがあるかのようだ。」

プナロ氏は、軍部の幹部と同様に文民の公務員が怠慢を回復することができる事には同意見で有り、レームダックの状態が残りわずか2か月であるため、上院によって確認されたリーダーシップが不在という状況はそれほど問題にはならないはずだと付け加えた。
しかし、これらの上院によって確認されたトップの民間人が不足していることの1つの側面は、軍人と文民のアンバランスな状況は明らかな懸念事項だとマッケンジーイーグルン氏は考えている。

「統合参謀本部の権力がますます強化される一方で、国防総省内の文民の影響力、専門知識、関連性が著しく低下している。」と彼女は述べた。「OSDの無力さは、この問題が取り返しのつかないほど悪化する前に、次の政権によって対処されなければならない。」


[1] https://www3.nhk.or.jp/news/html/20201123/k10012726691000.html?utm_int=word_contents_list-items_001&word_result=%E3%82%A2%E3%83%A1%E3%83%AA%E3%82%AB%E5%A4%A7%E7%B5%B1%E9%A0%98%E9%81%B8

 

[2] https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00023/111600215/