戦略的競争下における人工知能と軍事情報支援作戦 (Joint Special Operation University)

このところ、「認知戦(cognitive warfare)」と「特殊作戦部隊(Special Operation Force)」に関わる文献を続いて紹介している。これは、特殊作戦に関する認識が「物理領域だけで戦う」意識を変える必要性を感じているからに他ならない。軍事へのAIの適用についても、単純にターゲットの特定や意思決定サイクル等の迅速化に結び付けるほかに情報戦・認知戦の世界での活用促進を進める必要性を感じている。

今回紹介するのは、米国の統合特殊作戦大学(JSOU)のサイトに掲載の記事である。日本ではそもそも情報戦、情報作戦に対する議論を歴史的・制度的理由から避けてきた経緯があるのは周知のことで、この記事に出てくる軍事情報支援作戦(MISO)についても、日本国内で軍事組織が行うとの前提で議論を始めることはできないだろう。

しかし、作戦環境としての情報環境を認識することと、その環境下で列国の特殊作戦部隊は活動することを前提としていることを知っていることは重要なことだと考える。これまでの投稿などと合わせて一読いただければ幸いである。(軍治)

戦略的競争下における人工知能と軍事情報支援作戦:ウクライナ、台湾、インド太平洋における認知戦

Artificial Intelligence and Military Information Support Operations in Strategic Competition: Cognitive Warfare in Ukraine, Taiwan, and the Indo-Pacific

By AJ Rutherford, PhD

JSOU Report 25-25

November 24, 2025

AJ・ラザフォード(AJ Rutherford)博士は、退役した海兵隊特殊作戦チーム長であり、民間部門で経験豊富な海外セキュリティ・コンサルタントを務めている。彼は情報セキュリティ・情報保証の博士号と戦略情報学の修士号を保持する。コンサルティング業務に加え、アメリカン・ミリタリー大学で教鞭を執り、オペレーティング・システムの強化とセキュリティ、生体認証、修士レベルのサイバーセキュリティ総合プロジェクトに関する講義を担当している。ノーウィッチ大学では大学院生向けにコンピュータ・セキュリティ・インシデント対応を、カンバーランズ大学では情報ガバナンスを専門とする博士課程学生の指導を担当。主な研究テーマは特殊作戦への先端技術(特にAI)統合であり、第五世代戦における特殊作戦部隊(SOF)の将来像を提唱。継続的な研究・共同作業・発表の機会を積極的に求めている。

高度なAIは自然言語処理、大規模生成モデル、感情分析、心理的セグメンテーションを活用し、超パーソナライズされたメッセージを生成する。その結果は?言語的・文化的・思想的障壁を超越した説得力のあるコンテンツである。(AI生成 Adobe Stock画像 by Jonah)

統合特殊作戦大学(JSOU)は、統合特殊作戦部隊の指導者を育成し、学術活動を可能にし、特殊作戦部隊の教育エコシステムを強化し、特殊作戦部隊組織が統合部隊および国家に与える影響力を高める、関連する統合特殊作戦特有の教育プログラムを提供している。詳細は https://www.jsou.eduを参照されたい。報道機関向け情報については https://www.jsou.edu/Pressを参照されたい。

免責事項:本著作物に記載された見解は、完全に著者の個人的な見解であり、米国政府、陸軍省、米国特殊作戦コマンド、または統合特殊作戦大学の見解、政策、または立場を必ずしも反映するものではない。

この記事は公開が許可されており、配布に制限はない。

はじめに

軍事情報支援作戦(MISO)は、歴史的に米軍の心理作戦(PSYOP)ドクトリンに根ざしており、特殊作戦部隊(SOF)における中核的な戦略機能であり続けている。情報の兵器化と、社会的・認知的・デジタル・ドメインにわたる影響力の拡散を特徴とする21世紀の紛争環境において、軍事情報支援作戦(MISO)は新たな技術的・敵対的パラダイムに適応しなければならない。

人工知能(AI)を軍事情報支援作戦(MISO)に統合することは、変革をもたらす能力を提供し、心理効果の自動化、精密化、および大規模な増幅を可能にする。ハイブリッド戦(hybrid warfare)とデジタルを介した影響力作戦(digitally mediated influence operations)の重要な事例である継続中のウクライナ・ロシア紛争は、AI駆動システムと軍事情報支援作戦(MISO)の交差点を浮き彫りにしている。

AI搭載プラットフォーム(AI-powered platforms)(自然言語生成(NLG)、感情分析、敵対的ディープフェイク検出など)は、特殊作戦部隊(SOF)の影響力強化、戦略的メッセージ発信の支援、およびほぼ対等な競争者に運用される適応型プロパガンダ・ネットワークへの対抗を可能とする[1]

並行して、南シナ海における中国の予測型AI駆動型ナラティブ戦略は、アルゴリズムによる調整が敵対者のメッセージに対抗するだけでなく、地域的な言説を先制的に支配するために活用され得ることを浮き彫りにしている。これはウクライナで見られる反応的な偽情報アプローチとは決定的な対照と補完関係にある。このことは、AI搭載プラットフォーム(AI-powered platforms)がメッセージの精度、応答性、進化する敵対的プロパガンダに対する耐性を向上させることで、特殊作戦部隊(SOF)が戦略的影響力作戦を実施する能力を大幅に強化し得ることを示唆している。

軍事情報支援作戦のドクトリン上の基盤

現代の軍事情報支援作戦(MISO)ドクトリンは、統合出版物3-13.2「心理作戦(Psychological Operations)」に基づき、その心理作戦(PSYOP)の系譜から、認知的ドメイン、感情的ドメイン、デジタル・ドメインにおける影響力のより広範なコンセプト化へとドクトリン的進化を反映している[2]。ドクトリン的焦点は、文化的・文脈的に意味のあるメッセージングを通じて外国の聴衆の知覚と振舞いを意図的に形成することに留まる一方、作戦環境は根本的に変容した。

大国間競争の時代において、特にロシア連邦や中華人民共和国といった敵対者に対して、軍事情報支援作戦(MISO)はより広範な情報アーキテクチャの統合的構成要素として遂行されねばならない。これには、国家主導の偽情報戦役に対抗し、リアルタイムのデジタル影響力作戦の機会を活用するためのサイバー作戦、広報活動、インテリジェンス機能との同期が含まれる。

情報環境における統合作戦コンセプト(Joint Concept for Operating in the Information Environment」で強調されているように、情報作戦の将来は、平時と紛争段階の両方において持続的な認知的効果を達成するために、クロスドメインの相互運用性と、ナラティブ、タイミング、技術的支援手段(technological enablers)のシームレスな融合に依存する[3]。これは、効果的な将来の情報作戦には、平和時と紛争時双方において認知的影響を持続させるために、クロスドメインの統合とナラティブ、タイミング、技術の同期的な活用が必要であることを示唆している。

人工知能と認知戦

現代の国防戦略へのAI統合は、影響力作戦のための自律システムの開発と適用におけるパラダイム・シフトを促進した。自然言語処理、大規模生成モデル、感情分析、心理的セグメンテーション(人々のライフスタイル、価値観、性格、興味、態度に基づいてグループ分けするプロセス)といった先進的なAI技法により、言語的・文化的・思想的境界を越えて説得力のあるコンテンツを配信可能な、超個別化されたメッセージング・アーキテクチャの創造が可能となった。

これらの技術により、軍事情報支援作戦(MISO)は前例のない精度、速度、拡張性をもってナラティブ環境を形成する能力を獲得した。しかし、その実装はアルゴリズム操作、誤った情報の増幅、倫理的曖昧性に関連する複雑なリスクも伴う。NATO戦略的コミュニケーション高等研究所(NATO STRATCOM-COE)の最近の評価は、これらのツールのデュアル・ユースの本質を強調し、戦略的コミュニケーションを支援するだけでなく、合成メディア、自動化されたボットネット、リアルタイムの影響力調整(real-time influence orchestration)を通じて敵対的な情報戦役を促進する能力容量を浮き彫りにしている[4]

これは、AIを活用した影響力ツールが本質的にデュアル・ユースのリスクを内包していることを示唆している。なぜなら、それらは正当な戦略的コミュニケーションだけでなく、偽情報や心理操作といった悪意ある敵対的作戦にも活用され得るからである。

ハイブリッド戦の研究室としてのウクライナ

ウクライナとロシアの進行中の紛争は、進行中のハイブリッド戦の中核要素としてリアルタイムのデジタル影響力を作戦に使用する手法におけるパラダイム・シフトを示す。国家・非国家主体双方が、分権型コミュニケーション・プラットフォーム(特にTelegram、Twitter(X)、短編動画メディア)を心理作戦、情報形成、ナラティブ戦の手段として活用している。これらのプラットフォームは、国民感情(public sentiment)の動員、敵対者の士気低下、世界規模の知覚操作において重要な役割を果たしている。

ウクライナは、ユーモア、道徳的明快さ、そして真実性を特徴とする機敏でボトムアップ型の影響力戦略を採用している。しばしば拡散性の高いコンテンツや感情に訴えるメッセージを活用し、国際的な支持を集めるとともに国内の決意を強化している。対照的に、ロシアの情報作戦は依然としてより階層的で工業化されたモデルを反映しており、調整されたボットネット、偽情報戦役、国家統制下のメディアのエコシステムに依存して戦場の現実を覆い隠し、不和を撒き散らしている。

RANDコーポレーションによる紛争の情報環境に関する包括的分析で観察されているように、ウクライナ事例は現代戦における戦略的コミュニケーション、デジタル・プラットフォーム、敵対的認知的ターゲティングの間で進行する相互作用に関する重要な洞察を提供する[5]

人工知能と軍事情報支援作戦は、現代の情報戦における転換点である。ウクライナ・ロシア紛争や中国共産党の台湾への影響力が示すように、AIを活用した影響力作戦は、比類のない速度、精度、到達範囲をもって戦略的成果を上げつつある。(AI生成 Adobe Stock by Kaihkolmages)

RAND研究所の分析が指摘するように、ウクライナ紛争が示すのは、現代戦が敵対者の知覚と振舞いに影響を与えるため、戦略的コミュニケーション、デジタル・プラットフォーム、認知的ターゲティングの統合によってますます定義されるようになっているという点である。こうした進展は、AI-MISO(AI強化型軍事情報支援作戦)が特殊作戦部隊(SOF)にとって単なる支援手段ではなく、同盟国のレジリエンス構築と非従来型の戦い支援における中核的能力として戦略的有用性を有することを強調している。ピエリ(Pierri)らによる追加研究は、AI強化型ボット・ネットワークとFacebook・Twitter上での感情操作(sentiment manipulation)が、戦場情勢(battlefield developments)や正当性に関する認識形成にどのように影響を与えたかを明らかにしている[6]

特殊作戦部隊(SOF)にとって、こうしたツールは青写真であると同時に脅威でもある。その使用法を理解することは、対軍事情報支援作戦(counter-MISO)訓練、作戦上の保全、デジタル地形分析に資する。ウクライナからの知見は、流動的な紛争環境における米国の影響力計画策定を導く予測的ナラティブ・フレームワークの開発も支援する。ウクライナの影響力作戦の動的な活用に関するこれらの知見は、AIがこうした取組みをいかに増幅・拡大し得るかを理解するための重要な基盤を確立する。

人工知能の戦略的目標-軍事情報支援作戦の駆動する

AI拡張型軍事情報支援作戦(AI-augmented MISO)の戦略的価値は、個人の信念形成能力だけでなく、多様な作戦戦域における個別対応型メッセージの拡散を加速・拡大する能力にも由来する。AI強化型軍事情報支援作戦(AI-enhanced MISO)能力はコンセプト的に以下の3つに分類できる。

  1. 構造化データから人間のようなテキストを自動生成するAI技術である自然言語生成(NLG)やディープフェイク・コンテンツ・ツールなどのナラティブ生成システム
  2. リアルタイム感情分析や心理的セグメンテーションを含む、認知マッピング・ツール
  3. プラットフォーム選定、アルゴリズム的ターゲティング、タイミング最適化を含む実行フレームワーク

軍事情報支援作戦(MISO)へのAI統合は、高度なシステムが相乗的に作用し、争われる情報環境全体において前例のない精度、適応性、速度をもって認知的効果を構築・調整・展開するという、より深い作戦論理を反映している。機械学習、駆動型コンテンツ生成、リアルタイム感情分析、聴衆セグメンテーション・ツールを活用することで、AIは一貫したナラティブの迅速な拡散を可能にする。例えば、ウクライナの主権防衛、侵略行為への倫理的非難、偽情報に直面した越境的連帯への訴えなどがそれにあたる。

これらの能力は軍事情報支援作戦(MISO)の心理的影響範囲を大幅に拡大し、複数の言語的・文化的・地政学的文脈にまたがる同時並行的な影響力戦役の調整を可能にする。ゴールドファーブ(Goldfarb)、リンゼイ(Lindsay)、キャヴァリー(Caverley)が論じるように[7]、戦略的競争におけるAIの役割は、ナラティブ支配性の決心サイクル(decision cycle)を圧縮する能力容量にあり、危機時における世論(public perception)形成において主体に時間的・情報的優位性を与える点にある。

これは、AIが意思決定サイクル(decision-making cycle)を加速させることでナラティブ競争における戦略的優位性を提供し、危機時に行為主体がより迅速かつ効果的に世論(public perception)を形成することを可能にすることを示唆している。インド太平洋地域における中国の類似技術応用は、AIの地政学的汎用性に対する理解を深める比較事例を提供する。

中国の人口知能-南シナ海での影響を駆動する

南シナ海における中国の作戦に比較の視点で光を当てると、AIを活用した影響力能力が、地域のナラティブと戦略的知覚を形成するために体系的に展開されている実態が明らかになる。中国共産党(CCP)は、感情分析やソーシャル・ボットネットからアルゴリズムによるコンテンツ・キュレーションに至るまで、AIツールをますます活用し、海洋領土紛争(maritime territorial disputes)を取り巻く情報的地形を支配しようとしている。

中国政府(Beijing)は、WeChat、TikTok、Twitterなどのプラットフォームを通じて、国営メディアによる情報増幅と自動化された偽情報の拡散により、国内外の双方に向けた正当性ナラティブを構築している。これらの戦役は、振舞いの分析に基づくメッセージのタイミングとターゲティングを最適化する機械学習アルゴリズムによってさらに洗練されている。

洪慈婕(Tzu-Chieh Hung)と洪慈薇(Tzu-Wei Hung)の研究は、中国がWeChatやTikTokなどのプラットフォームにおいて、リアルタイム感情追跡とAI強化型行動ターゲティングを活用し、異論を抑制し有利なナラティブを増幅させる実態を明らかにしている[8]。特殊作戦部隊(SOF)にとって、これはデジタル感情の変化に連動した早期警戒システムの作戦上の重要性と、敵対的な認知統制を未然に防ぐ地域特化型対抗影響力戦略の必要性を浮き彫りにしている。

ロシアと中国のアプローチを比較することは意義深い。両国ともAI強化型影響力作戦(AI-enhanced influence operations)に多大な投資を行ってきたが、その手法は異なる制度的・文化的パラダイムを反映している。ロシアは心理的不安定化に基づく迅速で破壊的な偽情報を好む一方、中国はナラティブ・エコシステムに対する長期的かつ体系的な統制を重視する。

こうした相違点があるにもかかわらず、両モデルとも予測分析、合成メディア、クロス・プラットフォーム調整の活用において収束傾向を示している。ウクライナ・ロシア紛争において、中国がロシアのミームを基盤とした戦い(meme-based warfare)の側面や迅速なプロパガンダ・ループの一部を観察・適応させた証拠がある一方、ロシアも作戦において中国の感情駆動型ターゲティング手法の一部を模倣している。

特殊作戦部隊(SOF)にとって、この二重の影響力進化の軌跡を理解することは不可欠である。それは敵対的な学習ループを明らかにするだけでなく、情報環境における共通の脆弱性を浮き彫りにし、積極的かつ統一された戦略的対応を必要とするためである。本事例は、特殊作戦部隊(SOF)がAI強化型軍事情報支援作戦(AI-enhanced MISO)を単なるコミュニケーションのツールではなく、競争的な情報環境における認知的機動の戦略的手段としてコンセプト化する必要性を強調している。

これらの戦術は、地域の安定性だけでなく、台湾の情報主権防衛や危機前の認知的抵抗を可能にする特殊作戦部隊(SOF)の一連の将来の任務に対しても直接的な課題を突きつけている。国家戦略は異なるものの、いずれのケースも共通の作戦ツールとプラットフォームに依存しており、これらは次節でAI強化型影響力作戦(AI-enhanced influence operations)を支える技術として詳述される。

ツールと技法

自然言語生成(NLG)の進歩により、ターゲットなる聴衆の特定の心理的・文化的次元に合わせた、説得力があり文脈的に微妙なニュアンスを持ち、多言語対応のコンテンツを大規模に生成することが可能になった。自然言語生成(NLG)とディープフェイク(AIを用いて、実際には発言・行動していない人物がそうしたように見せかけるフェイク動画やフェイク画像)は、ナラティブ生成システム(特定のトピックに対する人々の思考や感情に影響を与えるため、自動的にストーリーやメッセージを生成するAIツール)の範疇に属する。これらは、知覚を形作り認知に影響を与えるようにデザインされた説得力のあるテキストおよびビジュアル・コンテンツの自動生成を可能にするためである。

これらのツールは、大量かつ感情に響くナラティブを構築し、複数のプラットフォームに迅速に拡散させる基盤となる。これらのシステムは、作戦目標に沿ったナラティブを素早く構築でき、情報の出現から影響力の行動までの遅延を短縮する[9]

この機能を補完する形で、AI搭載の感情分析プラットフォームは、TelegramやVKontakteといったソーシャル・メディア環境や新興の暗号化通信チャネルにおける態度変動を体系的に追跡し、メッセージングをニア・リアルタイムで適応的に調整することを可能にする。

さらに、合成メディア技術、特にディープフェイクの進化は、デュアル・ユースのジレンマをもたらす。これらは敵対的な偽情報に対抗する上で有用であると同時に、抑止や強制を目的とした戦略的に調整された欺瞞コンテンツを生成する能力も有している

精密な影響力の頂点において、心理的プロファイリング(個人の価値観、興味、ライフスタイル、性格を分析し、その振舞いを理解・予測するプロセス)を通じた認知的ターゲティングは、個人の信念体系、感情的トリガー、感受性パターンを巧みに利用することで、聴衆の振舞いをきめ細かく操作することを可能にする。

ゴンバル(Gombar)による最近の研究で明らかにされたこれらの技法は、戦略的コミュニケーション、行動科学、アルゴリズム戦の境界を曖昧にするAIを介した影響力エコシステムへの移行を示している[10]。これは、新興のAI駆動型影響力技法が情報環境を、戦略的コミュニケーション、振舞い操作、アルゴリズム的意思決定が収束する複雑なエコシステムへと変容させつつあり、伝統的な境界や作戦規範に挑戦していることを示唆している。

実行プラットフォーム

影響力戦役の作戦上の効果は、ターゲットする聴衆の人口統計的・文化的・行動的特性に合わせたデジタル実行チャネルの戦略的選定と活用にますます依存している[11]。TelegramやWhatsAppといったプラットフォームは、特に紛争地域や情報争奪環境において、分散型で暗号化されたピアツーピア情報伝達経路として機能する。これらのプラットフォームは、TikTokやダーク・ウェブのフォーラムと共に、実行フレームワーク・カテゴリーの一部を構成する—AI生成ナラティブが戦略的に展開・増幅される運用チャネルである[12]

彼らの選択は、ターゲットとなる聴衆の行動的・文化的・心理的プロファイルに合わせて調整されており、公開・非公開のデジタル・ドメイン双方において、影響力作戦のタイミング、伝達、共鳴を精密にすることを可能にする。例えばTikTokやInstagramは、感情を刺激する短編ビジュアル・ナラティブを高速で拡散する媒体として機能し、急速な心理的関与を引き起こすようデザインされている。一方、YouTubeやFacebookは、対抗ナラティブ、歴史的枠組み、偽情報反論に適した長編コンテンツの展開を支援する[13]

Twitter(X)はハイブリッドな役割を担い、リアルタイムのオープンソース・インテリジェンス増幅とミーム戦(memetic warfare)を促進する。ここでは象徴的なコンテンツがアルゴリズムによる拡散を通じて急速に拡散する。さらに、ダーク・ウェブのフォーラムは比較的規制の緩い生態系として存続し、国家・非国家主体が匿名で心理作戦、情報洗浄、標的型偽情報の散布を行っている。

※ ミーム戦(Memetic Warfare)とは、インターネット上の「ミーム(meme:ネット上で共有・拡散される画像、動画、フレーズ、ジョークなど)」を兵器として用い、人々を心理的に操作し、政治的、イデオロギー的、または戦略的な目的を達成しようとする情報戦・心理戦の一形態

グアリーノ(Guarino)らが指摘するように、多プラットフォーム影響力アーキテクチャの意図的な構築により、国家主体は表層的・隠蔽的なデジタル・ドメイン双方でナラティブ効果を同期させ、認知的・心理的影響力を強化できる[14]。これは、国家主体が多プラットフォーム影響力アーキテクチャを通じて表層的・隠蔽的なデジタル・プラットフォーム双方でナラティブを戦略的に調整することで、認知的・心理的影響力を増幅できることを示唆している。

早期指標と有効性の測定

AI強化型軍事情報支援作戦(AI-enhanced MISO)の作戦上の価値を評価するには、デジタル感情分析と現実世界の行動インテリジェンスを統合した多次元フレームワークが必要である[15]。感情分析と行動追跡は、知覚マッピング・ツール(メッセージや出来事に対する人々の感情、思考、反応を追跡・分析する技術)の範疇に属し、聴衆の態度、感情状態、関与パターンをリアルタイムで評価することを可能にする。

これらのツール(Brandwatchがその代表例)により、運用者はデジタル・プラットフォーム全体におけるターゲットとする人口の反応に基づき、メッセージ戦略を動的に調整できる。戦役効果の定量的指標には、ソーシャル・メディアのトレンド分析や感情極性スコアリングを通じて捕捉される敵対者や対立の人口における感情の変化、同盟国支持ハッシュタグや支援的ナラティブの増加などが含まれる。

同時に、敵対的プロパガンダへの関与減少(クリック通過率の低下、コメント抑制、ネットワーク拡散の減衰など)は、メッセージの重要性低下を示す指標となり得る。デジタル圏(digital sphere)を超え、ウクライナ・ロシア紛争におけるロシアの徴兵忌避や反体制派動員に象徴される徴兵回避、エリートの分断、市民的不穏といった行動的表出は、認知的混乱とナラティブ共鳴の決定的な証拠を提供する。

サボール(Sabour)らが指摘するように、これらの現象はAI駆動型影響力作戦が二次的・三次的な心理的影響を生み出し、敵対的意思決定や社会的結束のメカニズムを変容させる可能性を示唆している[16]。これらの指標は、AI-MISO(AI強化型軍事情報支援作戦)の作戦の威力を示すと同時に、ドクトリンの適応と戦略的先見性の必要性を強調している。

TelegramとWhatsAppは、特に紛争地域において情報を共有するための分散型で暗号化された通信手段である。これらのプラットフォームは、TikTokやダーク・ウェブのフォーラムと共に、実行フレームワークの一部と見なされている—AI生成のナラティブを戦略的に展開し増幅するために使用される運用チャネルである。(AI生成のAdobe Stock画像:Jonah)

AI強化型軍事情報支援作戦(AI-enhanced MISO)の戦略的潜在力は大きいものの、その世界的な普及は依然として不均一である。大半の国家は、これらのツールを大規模に展開するために必要な計算インフラ、中央集権的なメディア統制、およびドクトリン的統合を欠いている。ロシアと中国の事例が示唆に富むのは、AI-MISO(AI強化型軍事情報支援作戦)が普遍的に有効だからではなく、これらの体制が規制や倫理的制約が最小限の寛容なデジタル・エコシステムで運用しているためである。

さらに、両国は影響力アーキテクチャにリアルタイム・データを提供するハイブリッド型の文民・軍事AIエコシステムを構築している。こうした条件は容易に再現できない。特殊作戦部隊(SOF)にとって、これはAI-MISO(AI強化型軍事情報支援作戦)を万能ツールと見なすのではなく、文脈上の実現可能性の観点から評価すべきことを示唆している。すなわち、米国の利益を支援するために、どこで、いつ、どのように効果的に運用できるかである。これらの事例研究から学ぶことは、誇大宣伝と運用上の現実を区別し、より精緻なドクトリン開発を支えるのに役立つ。

結論

AIと軍事情報支援作戦(MISO)の収束は、現代の情報戦における決定的な転換点を画す。ウクライナ・ロシア紛争や台湾における中国共産党(CCP)の影響力に見られるように、AIを活用した影響力作戦は比類なき速度・精度・到達範囲で戦略的効果を発揮し、認知の戦場空間のテンポとトポロジーを再構築している。

ウクライナではAIツールが草の根運動の動員とナラティブ形成を支援する一方、台湾では中国による感情操作が紛争前の心理的条件を整えている。これらの事例は、認知的優位性を獲得するためにデジタル・エコシステムが積極的に兵器化されている実態を示している。インド太平洋地域の緊張の高まりは、将来の米中対立において同盟の結束力と抑止力の安定性に向けた持続的な心理戦役が展開されることを示唆している。

米特殊作戦部隊(SOF)は、デジタル復元性(digital resilience)、能力構築、倫理的影響戦略に焦点を当てたAI-MISO(AI強化型軍事情報支援作戦)パートナーシップをウクライナおよび台湾と積極的に鍛えるべきである。ロシア・ウクライナ戦争および中国の南シナ海作戦から得られた新たな研究は、特殊作戦部隊(SOF)が感情マッピング、デジタル監視、自動化された対抗メッセージングといったAI駆動型能力を採用する必要性を浮き彫りにしている。

これらのツールは、認知的優越性を運用化するために特殊作戦部隊(SOF)のドクトリン、訓練、計画策定フレームワークに組み込まれなければならない。この変革には技術的適応以上のものが必要であり、倫理的・戦略的な再調整が求められる。特殊作戦部隊(SOF)は、21世紀の大国間競争において民主主義的ナラティブの支配性を推進しつつ、敵対的な偽情報に対抗する責任あるAI駆動型心理作戦を主導する能力を備えなければならない。

ノート

[1] ゴーラヴ・グプタ(Gourav Gupta)他著「高度な機械学習と融合手法を用いたディープフェイク検出の包括的レビュー」、Electronics 13、第1号(2024年):95。https://doi.org/10.3390/electronics13010095。

[2] 統合参謀本部「軍事情報支援作戦(Military Information Support Operations」、統合出版物3-13.2(統合参謀本部、2011年)、https://info.publicintelligence.net/JCS-MISO.pdf

[3] ジョシュア・A・シッパー(Joshua A. Sipper)著「サイバーと宇宙:最新ドメインにおける情報戦と統合全ドメイン効果」論文、CYBER 2023:第8回国際サイバー技術・サイバーシステム会議にて発表、ポルトガル・ポルト、2023年9月25日、 https://personales.upv.es/thinkmind/dl/conferences/cyber/cyber_2023/cyber_2023_1_10_80004.pdf.

[4] ジュリオ・コルシ(Giulio Corsi)他著「Xにおける合成メディアの拡散」、ハーバード・ケネディ・スクール誤情報レビュー5号(2024年):2頁、https://misinforeview.hks.harvard.edu/article/the-spread-of-synthetic-media-on-x/

[5] フランチェスコ・ピエリ(Francesco Pierri)他著「ロシアのウクライナ侵攻時のFacebookとTwitterにおけるプロパガンダと誤った情報」, WebSci ’23: 第15回ACMウェブ科学会議2023論文集, テキサス州オースティン, 2023年4月30日, https://dl.acm.org/doi/10.1145/3578503.3583597.

[6] ピエリ(Pierri)他著「ロシアのウクライナ侵攻時のFacebookとTwitterにおけるプロパガンダと誤った情報」

[7] アヴィ・ゴールドファーブ(Avi Goldfarb)他著「予測と判断:なぜ人工知能は戦争における人間の重要性を高めるのか」、『国際安全保障』第46巻第3号(2021/22年冬号):7–42頁、 https://direct.mit.edu/isec/article/46/3/7/109668/Prediction-and-Judgment-Why-Artificial.

[8] 洪慈婕(Tzu-Chieh Hung)、洪慈薇(Tzu-Wei Hung)著「中国の認知戦の仕組み:台湾の反偽情報戦争の最前線からの視点」、グローバル・セキュリティ研究ジャーナル第7巻第4号(2022年):ogac016、https://doi.org/10.1093/jogss/ogac016

[9] ベン・ケレオパ=ヨーク(Ben Kereopa-Yorke)著「クラウゼヴィッツ・フレームワーク:理論的大規模言語モデル強化情報作戦における新たなフロンティア」情報戦ジャーナル第23巻第2号(2023年)、 https://www.jinfowar.com/journal/volume-23-issue-2/clausewitzgpt-framework-new-frontier-theoretical-large-language-model-enhanced-information-operations.

[10] マリヤ・ゴンバル(Marija Gombar)著「アルゴリズム的操作と情報科学:戦略的コミュニケーションにおけるメディア理論と認知戦」ヨーロッパ・ジャーナル・オブ・コミュニケーション・アンド・メディア・スタディーズ第4巻第2号(2025年):41?63頁 https://www.ej-media.org/index.php/media/article/view/41.

[11] クリスティ・J・W・レドフォード(Christy J W Ledford)著「チャネルの変遷:社会マーケティング・キャンペーンにおけるコミュニケーション・チャネル選択の理論に基づく指針」Social Marketing Quarterly第18巻第3号(2012年):175-186頁 https://www.researchgate.net/publication/258188480_Changing_Channels_A_Theory-Based_Guide_to_Selecting_Traditional_New_and_Social_Media_in_Strategic_Social_Marketing.

[12] レン・ゾウ(Ren Zhou)著「TikTokの推薦アルゴリズムがユーザー・エンゲージメントに与える影響の理解」International Journal of Computer Science and Information Technology第3巻第2号(2024年):201–208頁、https://doi.org/10.62051/ijcsit.v3n2.24

[13] ホマ・ホセインマルディ(Homa Hosseinmardi)他著「YouTubeにおける過激派コンテンツの消費に関する検証」米国科学アカデミー紀要119巻32号(2021年):e2117277119、https://doi.org/10.1073/pnas.2101967118

[14] パオ・ムニョス(Pao Muñoz)他著「Twitter上の偽情報ネットワークのモデリング:構造、行動、およびクロス・プラットフォームのダイナミクス」, Applied Network Science 9, no. 4 (2024), 15, https://doi.org/10.1007/s41109-024-00610-w.

[15] ラジェシュ・ポール(Rajesh Paul)他著「デジタル・サービス・マーケティングにおけるAIを活用した感情分析:ITサービスにおける顧客フィードバックループのレビュー」、American Journal of Scholarly Research and Innovation2巻2号、166–192頁、https://doi.org/10.63125/61pqqq54.

[16] サハンド・サボール(Sahand Sabour)他著「人間の意思決定はAIによる操作の影響を受けやすい」ArXiv、(2025)、https://arxiv.org/abs/2502.07663