米国とイラン:瀬戸際から

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掲載:2019年6月28日
作成:フォーキャストインターナショナル(FI)社
投稿:Derek Bisaccio FI社アナリスト
(この論評は米国人のアナリストが米国内に向けて出したブログです)

U.S. and Iran: Back from the Brink               June 28, 2019 – by Derek Bisaccio
米国とイラン:瀬戸際から

2017年日本の横田基地で米軍部隊を前に演説する米国大統領ドナルドJ.トランプ

離陸から10分後のドナルド・トランプ大統領の指示で、6月20日のアメリカのRQ-4無人機のイランによる撃墜に対応して実行されることになっていたイランの3か所での軍事攻撃は中止された。

トランプ大統領は、攻撃による予想死傷者―イラン人150人と予測―は無人システムの破壊に比例していないと強調した。代わりに、米国は新しい制裁を制定し、イランとその利益に対してサイバー攻撃を行うことを選択した。

イランとの危機は、トランプ大統領の就任中起きている。
彼の前任者のオバマ大統領によって交渉された合意は、イラン政府が核弾頭の最終的な調達を阻止するには不十分であり、シリアやイエメンなどの国々におけるミサイルの開発やイスラム革命防衛隊の対外活動など、その他の問題に対処することはできないとして、2018年5月に包括的共同作業計画 (JCPOA)から米国を離脱させた。

イランは、イラン当局者が説明している地域の脅威に対して強い抑止力として強力なミサイル軍を維持している。それは、イランが核弾頭を開発した場合に必要なデリバリーメカニズムを提供する事になると考えられる。(テヘランは、そのような意図はないと主張している。)
イランに支援されたイエメンの反政府勢力グループであるアンサルアッラーは、大胆な作戦を拡大している。サウジアラビアにミサイルを撃ち込み、近隣のアラブ首長国連邦への無人機を使用したのと同様にサウジアラビアの国境を越えて攻撃し始めた。
しかし、今年の6月20日のRQ-4の撃墜に先立って、米国とイランの間の緊張が急上昇しているように見えた。

エコノミストは、「イランの指導者たちはトランプ氏の任期が終わるのを待つうちに「戦略的忍耐」を捨ててしまったようだ」と語った。
5月、そして再び6月に民間タンカーがホルムズ海峡近くで破壊工作に遭遇した。
強力なサウジアラビア王子と同様に合衆国当局者がイランの攻撃であると述べたものは、合計6隻になる。
イランはこの攻撃への関与を否定しているが、必要と認める場合にホルムズ海峡を閉鎖出来る能力を保有していると正式に表明している。
素性の不明なロケット弾がイラク南部の外国の石油会社を襲ったが、イラン支援民兵による関与の推測を呼んでいる。

合意が取り決められて以来、JCPOAに準拠している間、そして米国が離脱してから1年以上の間、イラン政府は、同国のウラン備蓄量が間もなく許されている限度に達するはずなので、どう協定への参加が重要であると表明していた。
このような環境の中で、RQ-4の撃墜が起こり、アメリカとイランの間の直接的な対立が懸念されている。
そして、攻撃計画の詳細に報告されたものが正確であれば、アメリカは軍事力でほぼ報復していた。
そしてそれはイランの反応次第では戦争をもたらしたかもしれない。
米国がイランの領土を攻撃した場合、イランが対応を実行しないと考えるのは明らかに困難である。
双方の国が戦争に踏み出すのを止めている状況なので、たとえほんの少しだけであっても、攻撃の中止は両国を戦端から戻す事になる。
米国は追加の軍のアセット(注:軍部隊)をペルシャ湾岸地域に移したが、イランの当局者はドローンに対する「クラッシュ・レスポンス」は「いつでも繰り返すことができる。」と主張している。IRGC(注:イスラム革命防衛隊の)ホセイン・サラミ少将は、のイランのどの国との戦争も望まないが、我々は完全に戦争の準備ができている」と断言した。

トランプ大統領は次のように宣言している。「イランによるいかなるアメリカ人へのどのような攻撃も、偉大で圧倒的な軍の対応に遭遇するだろう。どこにおいても圧倒的とは、壊滅を意味する。」
両サイド間の政治的緊張は高いままである。ワシントンは6月24日に「イラン政府への圧力を強める」新たな「激しい」制裁を明らかにした。
それにもかかわらず膠着状態を通して、ワシントンとテヘランは、オバマ政権の間に行われたような対話を持つことの意欲を示唆したが、そのような協議には、決定的に前提条件で異なるのである。

米国はさまざまなチャネルでイランに手を差し伸べていると言われており、幅広い交渉が期待されるものの前提条件を求めていない。
しかしイランは、新たな交渉の前に米国が制裁を緩和することを望んでいる。
トランプ大統領は、その前提条件が満たされることなく、あるいはいずれにせよ、圧力を劇的に和らげることなく、イラン政府を交渉のテーブルに就かせることが出来るかどうか検討している。
トランプ大統領は、一連のツウィートの中でイランに対する攻撃をキャンセルする決定を確定し、「急いでいない」と述べた。
彼の見解によれば、米国は待つことができるが、経済制裁はイランを痛め続け、イラン政府への国内不満が高まっていくとしている。
イランの石油輸出に対するアメリカの制裁は、政府の収入を劇的に減少させた ― イランのブライアンフック米国特別代表は、制裁はイランの最大500億ドルまでの石油輸出収入を阻止し、―ヨーロッパ連合に対する圧力は、イラン政府が米国の制裁を回避する方法を提供するヨーロッパ連合とイランとの貿易メカニズムを妨げたと述べた。

中国のように、米国のアプローチには対応していない主要な国際的権力もあり、イランの石油をまだ輸入すると主張している。
しかし全体的に見て、イランの経済は2019年には、圧力の下で低迷すると予想される。
したがって、アメリカは忍耐強く、軍事的対応を必要としないイラン軍のデモを無視することができる立場にある。トランプ大統領は無人機と有人機の墜落の違いをたたくことに熱心であった。
イランはアメリカ有人航空機を撃墜する可能性を有しているというが、それは疑いなく即座の厳しいアメリカのレスポンスを生起させるだろう。
しかし、そのような攻撃がない場合、ホワイトハウスは軍と軍の衝突を避け、過去数ヶ月間に見られた低烈度の活動にイランを従事させることに大いに甘んじている。トランプ大統領と彼の顧問たちは、イラン政府がJCPOAの失敗の後に再び米国との交渉に入るならばイラン政府の面目を保つために計画されているものとしてイランの攻撃をみるかも知れない。

CFRの主任研究員のレイ・タキ-が6月22日にポリティコで書いたように、テヘランは戦争ではなくむしろ「米国の最大の圧力戦略に耐えた権限を与えられた党であると主張して、ワシントンとの協議を始めること」を目的とし―そして、明らかにホワイトハウスが攻撃を思いとどまったことは、イランがそのような主張をする機会だけ与えたに過ぎない。
しかし、イランは、前提条件が満たされないまま協議入る必要があると政府が感じた場合に、信頼性を維持するために反抗の表明を利用することはできるだろうが、イラン政府はその攻撃を米国に対する国際的な意見を転換させ、主要国に米国に交渉を促させるために役立つと考えている。

さまざまな攻撃は2つのことをもたらす。
ペルシャ湾地域での戦争が世界経済に深刻な被害をもたらすことを地域外の勢力に証明し、サウジアラビアやアラブ首長国連邦などのイランの地域のライバルに彼らにとっても戦争は費用がかかる事を証明する。
政権関係者として説明されている情報筋は、フィナンシャルタイムズ紙に次のように述べている。
「ここ数週間の我々にメッセージは、米国とその地域の同盟国に明確である:ボタンには手がかかっている。イランの3つの目標を攻撃した場合、我々はドバイの3つの目標を攻撃するだろう。」
UAEがタンカーの攻撃を明らかにする方法に注意を払っているのは、おそらく偶然ではない。
しかし、彼らに関して「国家の当事者」を非難することはあっても、名前で「国家の当事者」を特定することはない。
緊張を解消するには、新しいラウンドの核協議を目標として、米国とイランの間の直接のコミュニケーションを増加することであろう。
バックチャネルでの対話はそれが目立たないので、緊張した状況下でも一般的には可能だが、現在の環境では核交渉は困難である。

イランは、2020年の選挙でトランプ大統領がどのように行動するかを見ている。
選挙におけるトランプの敗退は、後継者によってJCPOAを回復するか、少なくともイランにとってより好ましい条件の下で、交渉のテーブルに着く道を開くかもしれない。
トランプ大統領は、JCPOAを離脱し、より良い結果を得ることを目指して運動していたが、2020年の選挙に先立ってイランと交渉することに意味のあるプレッシャーは感じていない。
特に様々な民主党の主要な候補者が彼のアプローチを批判することに彼らの照準を合わせていたので、彼はJCPOAを離脱することとして確実に選挙運動をすることができるのである。

イランが先に制裁を廃止するという要求をやめるならば-あるいは、おそらく、特定の制裁の終結を友好的な意思表示として受け入れるならば-トランプ大統領は疑いなく対話に興味を持つだろう。イランを攻撃しないという彼の決定は、彼が米国により強い手をもたらす状況の下で協議のオプションを拡張し続けることを可能にする柔軟性を与えるのだ。
それ以外の場合は、トランプ大統領はイラン政府を圧迫している政策の道を変える必要性が殆どないと考えている。
これは、RQ-4の撃墜後に開始された最新の制裁措置によって証明されている。

6月24日の制裁には、前回の核交渉で主要な役割を果たしたイランのモハメッド・ジャバド・ザリフ外務大臣が含まれていた。
ザリフ外務大臣は、オバマ政権下で元米国務長官ジョン・ケリーと親密な関係を構築し、両者の間にある程度の信頼関係を築き、JCPOAへの道を切り開いた。
6月24日の制裁措置が成立した後、イランのハッサン・ローハニ大統領は次のように質問した。「あなた方は交渉を要求している。もしあなた方が真実を語っているのなら、なぜあなたは同時に私たちの外相を制裁しようとしているのか?」
制裁されるザリフ外務大臣は、ワシントンはイランとの対話について、より具体的には、ローハニ政権との対話について真剣ではないというメッセージをテヘランに送る。
JCPOAの失敗を考えれば、イランの最高指導者アリ・ハメネイ氏が米国と交渉するための新たな顔を求めているかもしれない、それと同じかもしれない。
2021年の再選挙に立候補する資格がないローハニ大統領は、JCPOAの崩壊により、部分的に劇的に弱体化した。 ザリフ外務大臣は、外交政策のいくつかの重要な分野で軽んじていたとする苦情を踏まえて、留任を確信する前、今年初めに辞任しようとしていた。
ローハニ政権の信頼性の喪失は、言い換えれば、2021年のイラン選挙の後に、新たな指導者を擁立する動機となる。―真剣な対話のために。

これらの事情から、どちらの当事者も、少なくとも今のところまだ新しい交渉を開くことを急いでいないことを示唆している。
彼らが到着するたびに、それらは論争の的になることは確実であり、そしてJCPOAの崩壊後、アメリカとイランの間の信頼の欠如によっていっそう悪くなるだろう。
それにもかかわらず、直接のコミュニケーションを通して、どちらかの側が誤って計算し、もう一方のレッドラインを超える可能性を減らすことができるというバックチャネル対話を追求することによって、将来の核協議のための基礎を築くことは双方にとって地域安全保障にとって有益であう。

その月の初めにRQ-4が撃墜されたことは、両者がどちらも望んでいない偶然の衝突にどれほど近づいているかの警告となったのだ。
(黒豆芝)