開発が進む韓国の将来戦闘機プログラムのリスク

10月15日から20日に開催されているソウル航空宇宙防衛展(ADEX)で、KF-Xの実物大モックアップが初めて公開されました。
KF-Xは、韓国が保有するF-4EDやF-5E/F等の第3世代戦闘機の老朽化に対応して、KF-16を越える第4.5世代の戦闘機で更新する計画が2010年に発表され、米国やヨーロッパ等との共同開発を目指し開始されたものでした。
しかしながら、米国からの技術移転の拒否や開発費用等の分担の問題で、最終的には、インドネシアとの共同開発に落ち着き、開発が進んでいると聞いていましたが、韓国独自開発のこの4.5世代戦闘機の行く手には、まだまだ厳しい道があるようです。10月15日のDefensenewsに関連する記事が出ていましたので紹介したいと思います。

South Korea’s future fighter program at risk, even as development moves along By: Jeff Jeong    2019.10.16  
開発が進む中、韓国の将来戦闘機プログラムはリスクにさらされている

 

韓国航空宇宙産業、ソウル航空宇宙防衛展(ADEX)で実物大のモックアップを初めて発表

ソウル—開発者によると、韓国国産の戦闘機開発プログラムは、クリティカルデザインレビュー(CDR)に続いてプロトタイプ開発の段階に入っています。

4.5世代戦闘機(74億ドル相当)のKF-Xプログラムは、2021年に最初のプロトタイプのロールアウトし、2026年までにロッキードマーティンの最新のF-16バリアント相当の先進的なツインエンジン戦闘機の開発を考えています。
Korea Aerospace Industries(KAI)は、システムの開発とインテグレーションを担当しています。
9月末のCDRセッションでは、防衛事業庁(DAPA)のメンバーが400種類近くの技術データを調べて、プロトタイプ開発に承認を与える前に、技術が機能要件を満たしているかどうかを確認しました。

「KF-Xプログラムは、CDRが承認されたため、プロトタイプ開発段階に入りました。」と、DAPAのKF-X開発チームの責任者であるヤン・クアンシオ氏は述べています。
「戦闘の要件を満たす先進的な機能を備えたKF-X航空機の開発と部隊への配備に努力したい。」
ジェット機のフルサイズのモックアップは、10月15日から20日に開催されているソウル航空宇宙防衛展(ADEX)で初めて発表されました。
このモデルには、外部燃料タンク用の2箇所、レーザー誘導爆弾2箇所、および他の2箇所のIRIS-T短距離空対空ミサイルの計6箇所の翼下ハードポイントを保有しています。
4箇所のMBDA Meteorの視界外射程の空対空ミサイルが胴体下にあり、ロッキードマーティン社製のスナイパーターゲッティングポッドのモックアップが右舷に取り付けられています。
KAIスポークスマンのキム・ジ・ヒュン氏は、KF-Xはまだ米国製ミサイルシステムの搭載の見通しがあるとDefense Newsに語っています。

当初、DAPAは、KF-Xにレイセオン製AIM-120C高度中距離空対空ミサイルやAIM-9サイドワインダーミサイルなどの米国兵器が搭載されることを望んでいましたが、米国政府がまだミサイルの輸出許可を承認していません。
「米国のミサイルを航空機にインテグレートするのは簡単です。我々はその可能性に良い見通しを持っています。」とキム氏は言いました。
「それは、単に米国の武器システムの輸出規制上の事項です。」

KAIによると、この戦闘機は国産のアクティブ電子走査アレイ(AESA)レーダーを搭載し、最大離陸重量25,600 kg、最大積載量7,700 kgの能力       を保有し、マッハ1.8相当の速度で飛行でき、航続距離は2,900 kmとなる予定です。
KF-XブロックIには、後続の生産ブロック用に計画されている内装ウエポンキャリッジはありません
。 また、初期のバージョンでは、国産の長距離空対地ミサイルが2020年代半ばまでの開発であるため、空対地攻撃能力が不足しています。
タウルス空対地ミサイルの韓国の精密誘導兵器メーカーであるLIG Nex1によって開発されています。

「KF-Xは4.5世代の航空機と呼ばれていますが、第5世代のF-35Aと類似点があります。」とKAIは報道資料で述べています。
「運用コストは米国のステルス戦闘機の半分であり、ハイテク機動能力は、F-35Aに近接しています。」

開発の進展にもかかわらず、潜在的な資金のループホールを含むジェット戦闘機プログラムには課題が見えます。
KF-Xの唯一の国際パートナーであるインドネシアは、開発コストの20%を投資するという当初のコミットメントから後戻りしているためです。
KAIは20パーセントの支払いを強いられており、政府は残りの資金を提供することになっています。
2016年の契約では、インドネシアは約13億ドルを支払い、インドネシアでIF-Xと呼ばれる最大48機のジェット機を調達し、戦闘機の技術移転を受ける事となっています。

しかし、南アジアの国(インドネシア)は、国内予算の制約を理由に、その財政的コミットメントの約13%である1億9000万ドルしか支払っていません。DAPA関係者によると、7月現在、インドネシアには2億5000万ドルの資金不足があります。
ジャカルタは現金ではなく、PTDIとしても知られるインドネシアエアロスペースがライセンス下で生産したCN235輸送機の提供を含め、現物での支払いを申し出ました。
インドネシアはまた、韓国からより多くの技術移転を獲得することに重点を置いて、KF-X / IF-Xの取引条件を再交渉するよう求めたとも伝えられています。

「これは厄介な問題です」と名前を挙げないよう事を求めDAPAの情報筋は語りました。 「両政府は資金調達問題について協議中であるが、まだギャップを縮めていない。」

専門家がKF-Xプログラムの最も困難な課題と見なしている国産のAESAレーダーの開発に多くの注意が向けられてきました。
5月、DAPAは、ハンファシステムズが開発したAESAレーダーのCDRが、2020年後半に公開される最初の生産プロトタイプ用に完成したことを発表しました。
サムソン・タレスが前身として知られているハンファシステムズは、イスラエルのエルタシステムズの支援を受けてAESAハードウェアを完成させました。

ハンファの関係者によると、4月にイタリアのレオナルドの技術支援を受けて、ハードウェアシステムの空中テストが実施されました。
フライトテストベッドは737-500機内で実行され、レーダーは韓国でさらにテストされます。
「レーダーは、2026年までに開発のすべての様相において完了することを目標に、2023年に実機のKF-Xプロトタイプ航空機でテストされる予定です」と、ハンファシステムズのマーケティングマネージャーであるチャン・ボソプは述べています。
KF-X AESAには、F-16Vに搭載したNorthrop Grumman APG-83スケーラブルアジャイルビームレーダーに近い性能を発揮する1,000を超える送受信アンテナモジュールを保有しています。

「AESAソフトウェアの開発とハードウェアへのインテグレーションは困難な作業です。」と、DAPAのKF-Xアドバイザリーグループのメンバーである退職した空軍士官は述べました。
「開発の初期段階での進展にもかかわらず、将来的にはその課程においてリスクがあります。」
(黒豆芝)