ウクライナから将来の軍隊への教訓(第5章) (The US Army War College)
MILTERMで、既に紹介しているウクライナから将来の軍隊への教訓(序章から第1章まで)(The US Army War College)とウクライナから将来の軍隊への教訓(第2章から第3章まで)(The US Army War College)、ウクライナから将来の軍隊への教訓(第4章)(The US Army War College)に続く、ウクライナから将来の軍隊への教訓(第5章)を紹介する。(軍治)
行動喚起:ウクライナから将来の軍隊への教訓
Call to Action: Lessons from Ukraine for the Future Force
第2章 1991年から現在までの米国とウクライナの安全保障協力:さまざまな記録
第 5章 インテリジェンス:Intelligence
Clay M. Huffman
キーワード:インテリジェンス(intelligence)、ウクライナ保安庁、ウクライナ国防省国防インテリジェンス局、軍事インテリジェンス、オープン・ソース・インテリジェンス(OSINT)、人工知能(AI)、相互運用性、インテリジェンスの兵器化(weaponizing intelligence)、センサー非依存(sensor-agnostic)、機密解除(declassification)
ロシアのウクライナ侵攻は、米国の軍事インテリジェンスにとって画期的な出来事である。ロシア・ウクライナ戦争は、オープン・ソース・インテリジェンス(OSINT)の重要性の高まり、情報戦(information warfare)を展開するためのインテリジェンスの兵器化の利点、人工知能(AI)に支えられた多感覚的なインテリジェンスの処理・活用・普及(PED)の重要性を浮き彫りにしている。さらに、ロシア・ウクライナ戦争は、紛争前にインテリジェンス共有の基準と慣行を採用する必要性を強調し、インテリジェンスと情報環境における企業の独立性を理解することの重要性を強調している。
1991年のソビエト連邦解体後のウクライナのインテリジェンスの適応は、さまざまな結果をもたらした。しばしば「SSU」(ラテン語にするとSBU)と呼ばれるウクライナ保安庁(Security Service of Ukraine)など、ウクライナの国家インテリジェンス機関は改革に抵抗した[1]。しかしウクライナは、汚職防止策の段階的実施、NATO情報基準の採用、そして「GUR」と呼ばれるウクライナ国防省の国防インテリジェンス局(Defense Intelligence)における2014年以降の慣行において成功を収めた[2]。ロシアのウクライナ侵攻を分析し、インテリジェンスの教訓を得ることで、米国の軍事インテリジェンスの専門家は、インテリジェンスのプロセスや手順が急速に進歩するのにうまく適応し、競争の連続体(competition continuum)における将来の軍事作戦に備えることができる。
ソビエトがルーツ:ウクライナ保安庁
1991年のソビエト連邦解体後、ソ連国家保安委員会(通称「KGB」)をモデルに、ほぼ同じ地域構造と指導部を持つウクライナ保安庁がソ連のルーツから脱却し、ウクライナを支援する主要な国家インテリジェンス機関へと成長した[3]。国家保安委員会がソビエト連邦共産党の保安部門として機能していたのと同様に、ウクライナ保安庁も当初はウクライナ大統領の警護機関および保安部門として機能することに重点を置いていた[4]。
新ウクライナ保安庁の任務は、対インテリジェンス、テロ対策、組織犯罪対策、汚職対策などであった。しかし、同組織は民主的な監視の欠如を利用し、自由民主主義国家における伝統的なインテリジェンス機関の規範から大きく外れたもうひとつの役割、すなわち与党政府の維持も担っていた[5]。この新たな役割を支援するため、ウクライナ保安庁の活動には、選挙に影響を与えようとするもの、ウクライナ国民を大量に監視するもの、ジャーナリストやメディア関係者を脅迫するもの、ウクライナ大統領府の権力維持を支援するために人権を侵害するものなどがあった[6]。
ウクライナ保安庁はまた、軍国主義的で厳重な警備体制を敷き、民主的な監視をほとんど受けずに活動する軍階級を備え、人事の役割も大きく肥大化していた。こうした欠陥のために、ウクライナ保安庁は腐敗しやすく、ウクライナのインテリジェンスがより大きな欧州大西洋インテリジェンス・ファミリーとの重要なつながりを築くことができなかった[7]。
2013年後半、ユーロマイダン、より民主的な政府への政権移行、そしてそれに続く2014年のクリミアとドネツ盆地での危機が、ウクライナ保安庁内に変化を求める圧力を生み出し、ついに前向きな改革につながった[8]。しかし、変革への障害は大きく、ロシア・ウクライナ戦争に至るまで、保安庁の改革は未完成のままだった。
国防インテリジェンス局と軍事インテリジェンスの改革
ウクライナ保安庁は改革に抵抗し続け、2014年と2022年のロシアによるウクライナ侵攻以前はパフォーマンスが低かったが、ウクライナ国防省の国防インテリジェンス局は改革を受け入れ、保安庁よりもはるかに効果的だった[9]。保安庁とは異なり、国防インテリジェンス局は防衛のインテリジェンス、つまり外部の脅威に関するインテリジェンスの支援に専念していたため、保安庁のように内部の政治腐敗(political corruption)に巻き込まれることはなかった[10]。国防インテリジェンス局には政治腐敗がないため、西側の同盟国やパートナーからの支援はより高度なものとなり、その結果、実効性の大幅な向上が促進された。
国防インテリジェンス局の創設者たちは、国家安全保障委員会軍事対インテリジェンス部とソビエト・インテリジェンス総局(Soviet Chief Intelligence Office)の経歴を保持していたが、ウクライナはインテリジェンス総局から提供された組織の多くを失っていた。組織の欠如により、国防インテリジェンス局の創設者たちは、組織の目的と使命を再定義し、はるかに少ない組織で軍事インテリジェンス機関としての役割に焦点を当てた組織を創設せざるを得なくなった[11]。ウクライナ国防省の国防インテリジェンス局は、現場の軍事インテリジェンス部隊の指揮を執らない米国防情報局とは異なり、ウクライ ナ国防省の国防インテリジェンス局の推進役としての役割を果たすと同時に、戦略レベル以下の軍事インテリジェンス、 特殊部隊、偵察能力を含むインテリジェンス部隊の指揮・統制を維持している[12]。
その指揮構造と有機的な特殊部隊の能力から、国防インテリジェンス局は、ソビエト・インテリジェンス総局(Soviet Chief Intelligence Office)から発展したロシア・インテリジェンス総局(Russian Chief Intelligence Office)に酷似している[13]。国防インテリジェンス局は1991年の創設から2014年まで問題に悩まされたが、こうした問題がウクライナのインテリジェンス・コミュニティ外にまで拡大することはほとんどなかったため、国防インテリジェンス局は国際的に信頼されている[14]。
2013年から14年にかけてのウクライナ危機は、国防インテリジェンス局における重要な改革の必要性を示した。人的インテリジェンス・ネットワークの欠如は、国防インテリジェンス局が占領軍に対する作戦を支援するため、人的インテリジェンス能力をより効果的に開発することに再び焦点を絞るきっかけとなった[15]。さらに、ウクライナの軍事インテリジェンスは、より高度なインテリジェンス・監視・偵察(ISR)アセットの獲得と、こうした新技術を戦いの戦術レベルから戦略レベルまで統合(一体化)することに重点を置いた[16]。
2017年から2020年にかけて、ウクライナの軍事インテリジェンス部隊はインテリジェンス能力の開発を拡大し、組織構造を統一するために大幅な改革を行った[17]。さらにウクライナ軍事インテリジェンスはNATOのインテリジェンス手順を導入し、インテリジェンス融合を可能にする作戦環境の整備などのプロセスを開発した[18]。ウクライナの軍事インテリジェンスは、ウクライナ軍の情報管理システムと重要なインテリジェンス機器を強化するために、両方のインテリジェンス管理システムを近代化した[19]。
ウクライナのインテリジェンス改革は最終的にインテリジェンス収集能力を向上させ、軍事インテリジェンス部隊の指揮・統制を強化し、技術的に改善されたインテリジェンス収集プラットフォームを備えた、より有能なインテリジェンス部隊を生み出した。さらにウクライナのインテリジェンス改革は、ウクライナ軍参謀本部に統合参謀インテリジェンス将校を創設することを可能にし、ウクライナの軍事インテリジェンス訓練をNATOインテリジェンス基準に重点を置いた[20]。2021年、国防インテリジェンス局長のキリロ・ブダノフ(Kyrylo Budanov)少将は、「ウクライナのインテリジェンスは、西側の標準を採用し、西側のシステムに統合(一体化)する主役である」と述べた[21]。
前述したように、ブダノフ(Budanov)のコメントは国防インテリジェンス局の改革にも当てはまるようだ。しかし、ウクライナ保安庁は大幅に遅れていた。他の機関の欠点が指摘された結果、2020年、ウクライナ最高評議会はウクライナ法第912-IX号を可決し、国防インテリジェンス局をドネツ盆地での統合作戦におけるインテリジェンス収集の主体として正式に設立した。同法には、国防インテリジェンス局がほぼすべての国防関連事項、軍事建設、軍事技術協力、サイバーセキュリティにおいてインテリジェンスの責任を果たすことを認める規定も含まれていた。
ウクライナのインテリジェンスが変化しているにもかかわらず、2021年、多国籍統合訓練グループ・ウクライナの一部である米第81ストライカー旅団戦闘チームは、ウクライナではインテリジェンスが最も未発達な用兵機能(warfighting function)であることを発見した。ウクライナの部隊の多くはインテリジェンス将校の役割を疎かにし、情報収集の責任の多くを指揮官が担っていた[22]。
ウクライナのインテリジェンスに欠陥があった結果、2022年、国防インテリジェンス局を中心とするウクライナの軍事インテリジェンスは、ドネツ盆地への再侵攻がロシア軍の最も可能性の高い行動方針であると予測した[23]。しかし、その後のロシアの侵攻は、ドネツ盆地よりもはるかに広い地域の占領に重点を置いていたため、この予測は部分的に間違っていたことが証明された。ウクライナ軍インテリジェンスの評価は、国防インテリジェンス局がドネツ盆地で進行中の戦闘作戦を支援することに主眼を置いていたためと思われる。ウクライナのシステム改革がもっと早く行われていれば、国防インテリジェンス局はキーウやドネツ盆地以西のウクライナの他の地域の脆弱性を示す、より完全なインテリジェンス画像を提供していたかもしれない。
国防インテリジェンス局がドネツ盆地でのインテリジェンス収集に重点を置いていたことや、キーウを管轄していたウクライナ治安庁が相対的に非効率であったことから、当然ながらウクライナの指導部は、ロシアがキーウの占領を目的とした本格的な侵攻を開始するとは考えていなかった。ウクライナの軍事インテリジェンスは、NATOの基準を採用し、新しく近代化されたインテリジェンス装備を受け取るためのプロセスを実装することで、大きな進歩を遂げたが、それでもウクライナのインテリジェンスは西側の軍事インテリジェンスの慣行に遅れをとっていた。
火力下での技法的革新
ロシア・ウクライナ戦争では、一般に公開され、商業的に入手可能な情報から収集されたOSINTの影響がダイナミックな要因であることが証明された。2014年のクリミアとウクライナ東部における危機は、情報を伝達することができるあらゆる電子機器が、メッセージ(messaging)、プロパガンダ(propaganda)、偽情報(disinformation)、欺瞞(deception)を広めるために戦場で使用され、収集、操作、さらにはターゲットとすることができるシグネチャーを提供することができることを示した[24]。
2022年のロシア侵攻で使用された電子機器の数は、2013年から14年にかけてのウクライナ危機の際に使用された数よりも飛躍的に多く、2022年の侵攻で使用された機器の大半は、公共の商用プラットフォーム上で動作していたため、オープン・ソースを通じて機器からインテリジェンスを収集することができた。インテリジェンス・コミュニティは長い間、人間であれ技術者であれ、機密情報源から収集されたインテリジェンスに依存してきたが、人的であろうと技法的であろうと、今日、指導者や軍指揮官が必要とするインテリジェンスの最大80%は、一般に公開され、商業的に入手可能な情報から得られるという試算もある[25]。
ロシア・ウクライナ戦争では、商業衛星の画像、ソーシャル・メディアへの投稿、YouTubeの動画、遺伝子データベースが、ウクライナとロシアの双方に、軍人、部隊の位置、主要指導者の位置、士気、戦闘被害予測に関する情報を提供した[26]。ソーシャル・メディアは、ウクライナ国境やクリミア内におけるロシア部隊の動きを特定し、差し迫った攻撃の兆候や警告を提供する上で大きな役割を果たした[27]。
英国戦略軍司令官のジム・ホッケンハル(Jim Hockenhull)大将は、ウクライナがOSINTを利用して、先読みインテリジェンスを開発し、国民感情を変化させ、ロシアのプロパガンダに対抗し、住民が戦場情報の受け渡しに積極的に参加できるプラットフォームを提供し、情報のクラウドソーシングを通じて代替見解を提供し、機密情報源(sensitive sources)から収集したインテリジェンスの裏付けるような欠落した情報を提供したことを強調した[28]。
ウクライナがOSINTを採用している一例として、ISRの取組みを支援するための情報のクラウドソーシングがある。最近、ロシアがイランの無人航空機(UAS)を使用したため、ロシアの多数のUASが軍の探知プラットフォームを圧倒しウクライナにとって探知が困難となった。UASは低速で飛行し、独特の騒音を発するため、ウクライナの市民はUASを識別し、情報を直接ウクライナ軍に伝え、ソーシャル・メディアで情報を共有し、政府に通知した。UASは低空をゆっくり飛行し、独特の騒音を発するため、ウクライナの一般市民はUASを識別し、情報を直接ウクライナ軍に伝え、ソーシャル・メディアで情報を共有し、政府に通知した。それによって政府のクラウドソーシングによるUASターゲッティングへの対抗のための特定への要請に応えた[29]。
ウクライナは、国民が積極的に情報収集と共有に参加し、軍を支援するインテリジェンス分析に役立てるよう革新してきた。商業技術を対外戦争の取組みに利用した最初の例として、米国に本社を置くMaxar Technologies社は、自社の衛星を使ってウクライナの国民にロシアの軍需品の影響を知らせた[30]。
ロシア軍は、R-187アザート暗号化無線機のような機器を使って安全な通信を可能にするのに必要な能力を維持しているにもかかわらず、ロシア軍の部隊の多くは、通信に市販の携帯電話や暗号化されていない無線機を使うことに頼っている[31]。通信に失敗し、規律が悪くなった結果、ロシアの兵士や指導者までもが、安全でない無線回線やウクライナの携帯電話ネットワークや携帯電話で通信するようになった。ロシアが暗号化されていない通信手段を使用したことで、ウクライナ側はロシアの通話に関するインテリジェンスを収集し、ロシアの要員を地理的に特定し、致命的な弾薬でターゲットにすることができるようになり、その結果、多数のロシアの上級戦術指導者や将校が死亡した[32]。
人工知能の活用
新たなAI能力の活用は、ロシア・ウクライナ戦争からもたらされた最も重要なインテリジェンス革新のひとつであることに変わりはない。ウクライナ側はAIを効果的に利用し、Clearview AIを通じて顔認識を提供し、PrimerAI社を通じて音声認識、文字起こし、翻訳サービスを提供した[33]。報告によると、ウクライナはClearview AIを使って潜在的なロシア工作員を特定し、偽情報と戦い、戦闘中に死亡したロシア兵を特定し、車両検問所で潜在的な要注意人物を評価したという[34]。
ウクライナ軍は、PrimerAIの音声認識、翻訳、文字起こしを通じて、収集した通信の処理と活用に必要な時間を大幅に短縮し、PrimerAIのアルゴリズムに作業の大部分を任せることで、ロシア軍に対するウクライナ軍の決定的な優位性をもたらした[35]。ウクライナ軍がAIツールを使用することで、インテリジェンス分析官は少ない人員で戦場全体から収集した情報を処理できるようになり、多くの場合、情報を利用するために言語学者や翻訳者に情報を送る必要がなくなった。
ウクライナは、将来の軍事的な意思決定や作戦を推進するために、インテリジェンス目的の情報の分析を可能にする情報のカタログ化方法を必要としていた。このニーズを満たすため、ウクライナはインテリジェンス分析官を管理・可能にし、インテリジェンス・プロセスを迅速化するツールを専門とする米国企業、Palantir Technologies社に注目した。
一例として、Palantir Technologies社のソフトウェアツール「MetaConstellation」を通じて、ウクライナのインテリジェンス分析官は、必要なときに必要な場所で、AI支援による検索で、あらゆる利用可能な手段から商業衛星データに迅速にアクセスすることができ、このプロセスは以前の紛争で少人数の人員と下位の指揮階層で必要とされた時間のほんの一部で済む[36]。「MetaConstellation」を通じて、ウクライナの軍事インテリジェンス分析官は、従来の光学写真、合成開口レーダー、およびターゲッティング・プロセスに直接貢献する熱画像へのアクセスを提供した[37]。ウクライナに対するPalantir Technologies社の支援の規模と範囲は大きく、同社の最高経営責任者(CEO)は、同社のソフトウェアが「ウクライナにおけるターゲッティングのほとんどを担っている」と主張している[38]。
ロシア・ウクライナ戦争から生じたもう一つの重要なインテリジェンス革新は、空中ISRを実施する際に有人航空兵力の代替としてUASを全面的に使用することである。以前の紛争では、UASは有人航空兵力を補完していたが、ウクライナでは戦術UASが航空ベースのISRプラットフォームの大部分を占めている。戦術UASは、都市部の地形に適した能力を提供する。低空でゆっくりと飛行し、決められたエリア内でターゲット上をうろつき、インテリジェンス分析に必要な詳細な生活パターン評価を行うことができる[39]。ウクライナでは、軍は商業的に購入された戦術UASを中心に領土防衛軍(Territorial Defense Forces)を組織することで革新を遂げ、部隊はインテリジェンス・タスクを受けながら、これらの部隊を使用して所望の効果を達成し、将来のターゲッティングに直接影響を与えることができるようになった[40]。
商業用携帯電話ネットワークや無線の使用と同様に、商業用UASの使用は部隊に課題をもたらす。敵に捕捉された場合、商用UASは航空機を操縦するチームを地理的に特定し、敵対者にインテリジェンス収集計画を垣間見せる可能性のある過去のルート情報を保存する。これは、ロシアが暗号化されていない通信を使用するのと同様の負債である[41]。しかし、航空ISRアセットが限られている中、ウクライナの商業用UASの使用は、将来的に商業用UASが戦場を補う可能性のある方法についてのケース・スタディを提示している。
2023年1月現在、米国は1,800機以上のAevex Phoenix Ghost戦術UASと700機以上のAeroVironment Switchblade UASをウクライナ軍に提供している[42]。市販のUASは戦闘にISR能力を提供しているが、Phoenix GhostとSwitchblade UASはISRを提供し、長時間空中に留まることができる一方向の徘徊型弾薬(loitering munitions)として機能する。機会があれば、UAS が爆発物としてターゲットに衝突する前にデータを収集する[43]。このような戦術的UASは、小型のプラットフォームでセンサーとシューターを結びつけ、バックパックに入れて持ち運ぶことができ、戦場で敵対者に破壊されても比較的安価に交換できる[44]。これらのUASは、戦場におけるUASの役割に革命を起こす可能性を示しており、ロシア・ウクライナ戦争が長引くにつれて、その使用は増え続けるだろう。
ウクライナのUAS使用は測定可能な成功を見せたが、ロシアや他の国がUASに対抗する方法を学んでいるため、一時的なものに過ぎない可能性が高い。ウクライナが安価なトルコ製UASを使用しているのと同様に、ロシアは現在、イラン製のShahed-136 UASを使用してISRセンサーと射撃能力を連携させており、これはウクライナの民間インフラ、軍事インフラ、商業輸送港、民間人を最近ターゲッティングにしていることからも明らかである[45]。将来の戦場では、紛争双方がUASに対抗する手段を開発する一方で、互いに同じような壊滅的な方法でUASを使用する可能性が高いため、一方の戦闘員にとって同じISRとターゲティングの優位性が示されることはないだろう。ISRの収集は、UASの破壊力、有効性、前線後方に深く侵入する能力のため、戦場のあらゆる指揮階層で敵のUASを識別することに焦点を当てなければならない。
情報作戦によるインテリジェンスの兵器化
ウクライナ保安庁と国防インテリジェンス局を中心とするウクライナのインテリジェンス改革は、ロシア・ウクライナ戦争前にはさまざまな結果をもたらしたが、米国とNATOが戦略的情報作戦戦役(strategic information-operations campaign)においてインテリジェンスの機密を解除し、兵器化しようとした取組みは、ロシアのプロパガンダと偽情報に対抗する上で決定的な成功を収めた。ロシア・ウクライナ戦争に先立つ数年間、ロシアは米国とウクライナの双方で大規模な偽情報戦役(disinformation campaigns)を展開していたため、多くの人はロシアが再び情報戦の闘いに勝利できると考えていた。クレムリンは頻繁に敵対者に関するインテリジェンスを捏造し、その後ロシア政府は偽旗を使って侵略を正当化した[46]。
しかし、米国とNATOは、ロシア軍の動きや位置に関するインテリジェンスを機密扱いにしないことで、ロシアの偽情報の取組み(disinformation efforts)に対抗し、ロシア軍の今後の動きを事前に電報で知らせた。おそらくキューバ・ミサイル危機以来のいつにも増して効果的に、米国の政策立案者たちは、以下のような計画された侵略に関する機密のインテリジェンスを国民に公開することに成功した。
ロシアは2021年後半からのロシア・ウクライナ国境への軍の集結
ウラジミール・プーチン大統領と習近平主席は、2022年北京冬季オリンピック期間中のウクライナ侵攻について協議した。
ロシアは侵攻を正当化するために、ウクライナがロシア系住民を攻撃しているという知覚(perception)を植え付けようとしている。
闘いが開始するとのロシアの大規模な機甲部隊を移動させた
米国が発表したインテリジェンスは、国内外を問わず、国民の知覚(perception)を形成し、影響を与える上で非常に効果的であった[47]。
米国による協調的な情報作戦戦役(information operations campaign)における戦略的なインテリジェンス公開は、国民の知覚(perception)を形成する上で広く成功を収めた。ロシアが商業的なソーシャル・メディア・プラットフォームを使って、ウクライナ人をナチス支持者がウクライナでロシア人に対する大量虐殺を行っているとする重大な偽情報戦役を行ったにもかかわらず、米国の成功は起こった[48]。米国は、国民の知覚(perception)を形成するためにインテリジェンスを公開し、ロシアの侵略に反対する世界的な連合を構築し、さらなる制裁の必要性を支持し、各国の経済に悪影響を及ぼすにもかかわらず欧州諸国に対露行動をとらせるためにインテリジェンスを利用した[49]。情報作戦(information operations)を支援するための戦略的なインテリジェンス公開は、ロシアの侵攻前と侵攻中にリアルタイムの最新情報を提供した。このようなインテリジェンス公開は、機密の壁に閉じ込めておくよりも戦略的に重要であった。
米国が戦略的情報作戦戦役(strategic information-operations campaign)の中核的要素としてインテリジェンスをうまく活用したのと同様に、ウクライナの指導者も戦略、作戦、戦術の各レベルで情報作戦戦役(information operations campaigns)にインテリジェンスをうまく組み込んだ。戦略面では、ヴォロディミル・ゼレンスキー(Volodymyr Zelensky)大統領は、ソーシャル・メディア、世界の指導者たちとの交流、外国議会での演説などを効果的に利用して、プーチンとロシアに対する情報戦を展開し、制裁、兵器、資金、装備、感情的支援などを世界の多くの市民から集めている[50]。
戦略レベルでも作戦レベルでも、国防インテリジェンス局は戦場から収集したインテリジェンスをソーシャル・メディアや組織のウェブサイトを通じて定期的に公開し、情報環境を形成している。たとえば、国防インテリジェンス局は敵の通信を傍受し、ロシア人が障害者の市民を戦争で闘うために送ることについて議論しているビデオをYouTubeに投稿した[51]。国防インテリジェンス局はまた、一般向けのウェブサイトを頻繁に利用して、ロシアに関するインテリジェンスを一般市民に発信している。
戦術レベルでは、ロシア・ウクライナ戦争に反対するロシアの抵抗運動を鼓舞するために、ウクライナ軍はロシア兵が家に電話をかけ、自分たちは世話を受けていると言いながら、ロシア軍に嘘をつかれたり、ウクライナでの任務について上官に惑わされたりする環境を撮影した[52]。
情報戦の遂行はゼレンスキー(Zelensky)の得意とするところだが、彼とウクライナ政府の情報隠蔽能力は、ウクライナの情報防衛能力が攻勢的情報戦(offensive information warfare)の遂行能力と同じくらい有効であることを示唆している。国境での生体認証管理、海外における秘密工作員の隠蔽体質の悪化、ますます大胆になるインテリジェンス作戦、中堅官僚の腐敗、少数派の親ロシア派感情を代表する親ロシア派のウクライナ情報源から生じる確証バイアスなどの結果、秘密作戦の遂行が困難になったため、ロシア連邦保安庁のインテリジェンス機関はウクライナの軍事的準備を見極め、侵攻時に対処することができなかった[53]。ロシアはプーチンの目標を達成するためにインテリジェンスに過度に依存したが、ゼレンスキーとウクライナの情報保護能力、特にウクライナ保安庁が10年以上前にも多数のロシア人スパイを維持していたことを考えれば、ウクライナの対ロシア情報戦計画には明確な優位性がある。
ロシアと同様、米国やNATOもウクライナの国土防衛能力を理解していなかったため、多くの上級指導者や情報機関は、ウクライナがロシアの侵攻によってすぐに陥落すると評価していた[54]。ロシア・ウクライナ戦争が始まる前、米国のインテリジェンス・コミュニティはロシア軍の有効性を過大評価していた。おそらく、人員や装備のオーバーマッチに頼りすぎ、ゼレンスキー(Zelensky)とウクライナ軍の有効性を過小評価していたのかもしれない[55]。
アフガニスタン戦争終結時に、アフガニスタンの上級指導部と軍の行動を予測するためにインテリジェンスを活用できなかったことが影響していると思われるが、米国のインテリジェンス・コミュニティは、アフガニスタンとウクライナの両方における闘う意志(will to fight)の影響を認識できなかった。米国のインテリジェンス・コミュニティ18機関のうち、国務省(DOS)のインテリジェンス・調査局(Bureau of Intelligence and Research)のみが、ウクライナはすぐに陥落するという見解に反対した。この評価は、最近のウクライナの世論調査データに表れた顕著な反ロシア感情に基づいている[56]。闘う意志(will to fight)の重要性が認識されていれば、アフガニスタンの即時崩壊は防げたかもしれない。さらに、闘う意志(will to fight)への理解があれば、ゼレンスキーとウクライナ軍への信頼が高まり、最終的なロシアの侵攻を抑止するために2021年後半にもっと行動を起こすことができたかもしれない[57]。
将来の米陸軍にとっての教訓
オープン・ソース・インテリジェンスは非常に価値があり、インテリジェンスの共有を可能にする
一般公開されている情報や商業的に入手可能な情報とソーシャル・メディアの相互作用から得られるOSINTの利用は、ロシア・ウクライナ戦争におけるウクライナの成功の重要な要素であった。米国は将来の紛争において、この分野の情報の利用を増やさなければならない。イラク戦争やアフガニスタン戦争ではOSINTの利用が徐々に増加したが、ロシア・ウクライナ戦争は、一般公開され、商業的に利用可能なインテリジェンスの膨大な情報環境が、未開拓の機会であることを示唆している。OSINTを限定的に取り入れたとはいえ、今日でも米国のインテリジェンス・コミュニティは機密環境の中で活動し、機密情報源から情報を収集している。しかし、機密情報に頼ることは同盟国や一般市民との情報共有を難しくしている。将来、OSINT はインテリジェンス収集と分析に役立つ情報の大部分を占めるようになるかもしれない。
インテリジェンス分析官は OSINT の課程を受講し、専門的に学ぶことができるが、OSINT は依然としてインテリジェンスのニッチであり、インテリジェンス分析と収集に関する訓練のほとんどは、機密の情報源と方法に焦点を当てている。米陸軍が大規模戦闘作戦(LSCO)の準備を進める中で、OSINT訓練は潜在的な有事作戦の準備に大きな役割を果たす必要がある。
オープン・ソースの手法で入手できる膨大な情報を考慮すると、OSINT はインテリジェンス分析官に非常に有用な情報を提供し、パートナーや同盟国とのインテリジェンス共有の環境を整える。多くの場合、OSINT は機密インテリジェンスの裏付けとなるため、インテリジェンス・コミュニティは重要な情報源と収集方法を特定されないように保護しながら、(機密情報源と方法によって裏付けされた)OSINT をより簡単に共有することができる。市販のセンサーがその能力を高め、インターネット上ですでに利用可能なデータが検索やフィルタリングが容易になるにつれ、同盟国やパートナー間の共有ギャップを埋めるために OSINT を利用する傾向が強まるはずであり、OSINT は将来の戦場において極めて重要になる可能性がある[58]。
ロシア・ウクライナ戦争でOSINTの役割は飛躍的に高まったが、政府内のインフラが不足しているため、一般に公開されているニュース、記録、その他の情報を検索するのは非常に困難で手間がかかる。CIAは2014年に終了した対外放送情報サービスの後継であるオープン・ソース・エンタープライズを維持しているが、オープン・ソース・エンタープライズへの継続的な予算削減が示すように、インテリジェンス・コミュニティは機密情報源よりもオープン・ソース情報を重視していないとの批判がある。機密ネットワークがオープン・ソース情報にアクセスできないなど、現在のシステムとプロセスがOSINT分析を難しくしている[59]。さらに、現在のシステムを批判する人々は、オープン・ソース情報を軽視することによって、米国が COVID-19 パンデミックの前に重要なオープン・ソース情報を見逃してしまい、米国政府は中国のような競争者と競争するために必要なオープン・ソース・ツールを欠いている可能性があると指摘している[60]。
公に、あるいは商業的に入手可能な極めて膨大な情報を検索できるソリューションを探す場合、米陸軍は大学図書館が開発したようなシステムに注目するとよいだろう。一例として、ワシントン DC を拠点とする複数の大学が最近、膨大な公開情報を選別するための包括的なデータベース・システムを構築し、直感的な検索システムを開発した[61]。OSINTに特化したインテリジェンス機関の設立以外でも、公立大学が使用するシステムと手法により、米軍はパンデミックから大規模戦闘作戦(LSCO)に至るまで、将来の問題に対してより効果的にインテリジェンス分析官を準備することができる。
人工知能に支えられたセンサー感知型インテリジェンスの処理・活用・普及(PED)は紛争において重要である
インテリジェンスの処理・活用・普及(PED)は、特定の分析官を特定のプラットフォームに結びつける現在のシステムから脱却すべきである。むしろ、インテリジェンスの処理・活用・普及(PED)はセンサーにとらわれないようにならなければならない。インテリジェンス分析官は、競争の連続体(competition continuum)全体にわたって、ますます迅速かつ致命的なターゲッティング・サイクルをサポートするために、統合または連合のインテリジェンス収集プラットフォームを利用するAI対応の能力が必要である。
ロシア・ウクライナ戦争は、いかにして多種多様なセンサーから機密のインテリジェンスとOSINTをふるい分け、そのインテリジェンスを迅速にターゲッティング・サイクルに投入するかが主要課題のひとつであることを示している。この要件に対処するため、米陸軍は、インテリジェンス・センサーからシューターへのやりとりを迅速化するAIを強化したシステムを必要としている。最近、米陸軍はAIと機械学習によって実現される「戦術的インテリジェンス・ターゲッティング・アクセス・ノード(Tactical Intelligence Targeting Access Node:TITAN)」に投資した。この戦術地上局は、「宇宙、高高度、空中、地上の各レイヤーから受信したセンサー・データを処理」し、「ターゲッティングと状況認識、理解にインテリジェンス・サポートを提供し、最終的にセンサーからシューターまでのタイムラインを短縮する」ことを目指している[62]。
同様に、米空軍は将来の戦場で競争するために、センサーにとらわれないシステムへと移行している。米第16空軍に焦点を当てた「コンバージド・エアフォース・エンタープライズ・ミッション(Converged Air Force Enterprise Mission:CAFEM)」フレームワークを通じて、同軍は特定のISRプラットフォームに縛られたインテリジェンス分析から、地理的境界、配属部隊、構成要素を超えたインテリジェンス分析のフェデレーションを中心とする新しいモデルへの移行を目指している。この新しいモデルは、同じような問題に取り組んでいる分析官同士を結びつけ、すべての部隊と職員が共有する報告基準を開発し、人員不足や能力のギャップに対応できるネットワークを構築するものである[63]。空軍は当面、「コンバージド・エアフォース・エンタープライズ・ミッション(CAFEM)」の中心を暗号インテリジェンス分析に置いているが、このモデルは他のセンサーやインテリジェンス分野(intelligence disciplines)にも拡大する可能性が高い[64]。
将来の紛争において、AIを活用したセンサーからシューターまでのタイムラインを短縮することの重要性を考えると、米陸軍は「戦術的インテリジェンス・ターゲッティング・アクセス・ノード(TITAN)」を重要な近代化の取り組みとして優先させるべきである。現在、「2021年米陸軍近代化戦略(2021 Army Modernization Strategy)」では、米陸軍ネットワークを重要な近代化優先事項として概説しており、この優先事項は、マルチドメイン作戦(MDO)における状況把握を確保しながら、広い作戦区域のマルチドメインで部隊を指揮・統制することに重点を置いている[65]。ソリューションの構築には時間がかかるが、米陸軍は「戦術的インテリジェンス・ターゲッティング・アクセス・ノード(TITAN)」の実装に向けた現在のスケジュールを早め、将来の紛争で潜在的な敵対者に対するオーバーマッチを達成し、他のサービスとのパリティを維持するために、多大な資源を投入する必要があると思われる。「戦術的インテリジェンス・ターゲッティング・アクセス・ノード(TITAN)」や「コンバージド・エアフォース・エンタープライズ・ミッション(CAFEM)」のようなシステムが通信し、相互運用可能であることは、極めて重要であり、国防総省(DoD)の包括的な統合全ドメイン指揮・統制システムの糧となる。
インテリジェンスと情報環境における企業の影響の増大
ウクライナでは、Maxar TechnologiesやPalantir Technologies社のような多国籍企業が、インテリジェンス作戦を可能にし、国民国家間の「伝統的な戦いの限界(confines of traditional warfare)」にとらわれない戦場に影響を与えることで、勝者と敗者を選ぶという大きな役割を、時には一方的に果たすことになる。ウクライナでは、多国籍企業が同国を支援するために独自の決断を下し、国民国家に隠れて活動することがしばしばあった。多国籍企業による支援の多くは、インテリジェンス作戦や情報環境に影響を及ぼしているため、米陸軍は、戦場に初めて登場する可能性のある商業アセットが氾濫する将来の紛争に備える必要がある。商業用UASや衛星がロシアの動きに関するウクライナのインテリジェンスを支援しているように、将来の戦場でも同様の使い方がされる可能性が高い。
多国籍企業の支援はウクライナ側に不釣り合いな利益をもたらしたが、多くの多国籍企業は日和見主義であり、企業が紛争から利益を得ることができれば、将来的に米国の敵対者を支援する可能性がある。現在のロシア・ウクライナ戦争でも、2023年1月にロシアがイランのUASに米国や欧米の12社の技術を採用していたことが発覚しており、企業が米軍にとって有益にも不利にも、将来の戦場に大きな影響を与える可能性があることを実証している[66]。そのため、陸軍インテリジェンスは、鹵獲した敵の装備品に含まれる米国や欧米を拠点とする部品を特定する技法的インテリジェンス手法を開発し、企業が潜在的または実際の敵対者を支援することを探知、抑止、防止しなければならない。
情報戦における情報の優位性を可能にするインテリジェンスの兵器化
米国とウクライナが欧州や国際的な支持を得るためには、敵対者の将来の行動を詳述したインテリジェンス(最も顕著なのは、ロシアのウクライナ侵攻を予測したことである)の公開、偽旗作戦の実施計画の強調、敵対者の戦争犯罪の文書化など、連携した情報作戦戦役(information-operations campaign)が不可欠であった。インテリジェンスの公開を情報作戦(information operations)に統合(一体化)することは、あらゆる指揮階層における今後の作戦環境と情報環境においても同様に重要である。ウクライナが示したように、現代における情報戦は、情報のスピードと正確さに重点を置いたときに最もうまく機能する。
敵対者が正確さに邪魔されない場合、しばしば米国よりも速く行動する。米国は、紛争の早い段階で、そして多くの場合、事件が起こる前に、情報の優位性(information advantage)を獲得しなければならない。米陸軍は、いくつかのドクトリンと構造を変更することで、軍事インテリジェンス、サイバー、信号、情報作戦(information operations)を統合(一体化)し、情報源を保護しながら情報を正確に分析する速度を向上させ、将来の敵の行動に対する攻勢的情報戦(offensive information warfare)を行動発生前に可能にする態勢を整えることができる。
現在の対外情報公開の慣行は、米陸軍が情報の優位性(information advantage)を獲得し、将来の戦場でパートナーや同盟国とともに作戦する能力を阻害する可能性もある。1971年にヘンリー・キッシンジャー(Henry Kissinger)が発表した国家安全保障決定覚書119号は、軍事機密情報は国家安全保障上のアセットとして扱われるべきであり、米国が利益を得る立場にある場合にのみ外国の政府や組織と共有されるべきであると述べている[67]。この覚書は、国防総省と各軍が解釈するための広範な指針を提供しているが、対外情報公開をめぐる官僚主義はあまりにも煩雑で、米陸軍が優位性を獲得するためにインテリジェンスを完全に兵器化する能力を阻害している[68]。
現在の情報開示慣行を再検討することに加え、米陸軍は情報の過剰分類(overclassification)に起因する問題に対処しなければならない。アヴリル・ヘインズ(Avril Haines)国家インテリジェンス長官は2022年の初めに、情報を分類する米国インテリジェンス・コミュニティの現在のアプローチには本質的な欠陥があり、そのアプローチは米国が同盟国やパートナーと情報を共有することを妨げ、国民と政府との間に不信感を生み、結果として米国の国家安全保障に打撃を与えると述べた[69]。
さらに、情報が過度に分類され続けることで、米国が情報的優位性を獲得することができない。情報を公開し兵器化するのではなく、過剰分類のために特定の情報を保持することで、米陸軍は情報戦で敵対者に先制打撃を許す可能性がある。また、過剰分類は、限られた対外情報公開担当者にさらなる負担を強いる。
過剰分類(overclassification)の解決策として考えられるのは、シングル・ソース報告をデフォルトで同盟国やパートナーに公開できるようにし、監督官と対外情報公開官が情報を見直し、公開を制限するシステムを開発することである[70]。このシステムを導入すれば、インテリジェンス公開を可能にするためではなく、インテリジェンス公開を制限するためにインテリジェンスを見直すことになるため、インテリジェンスの過剰分類が難しくなり、対外情報公開担当者の仕事量も削減される。また、インテリジェンス報告においては、特定の機密インテリジェンス・トピックや重点分野について、情報源や方法を削除した非分類の分析や要約を作成し、情報戦戦役(information warfare campaigns)における機密インテリジェンスの利用を兵器化する既定のシステムを開発することも可能である。このアプローチを実装するためには、米陸軍は、対外情報公開の慣行に関する訓練をさらに充実させ、対外情報公開の権限を下位の指揮階層に与える必要がある。
NATO標準の採用がインテリジェンス共有を可能にした
ウクライナ国防省の国防インテリジェンス局を中心とするウクライナ軍事インテリジェンスが2014年から2022年にかけてNATO基準を採用する取組みを重ねたことで、ロシア侵攻の前も後も、ウクライナと米国をはじめとするNATO諸国との間で証拠共有を促進する信頼関係が構築された。国防インテリジェンス局の構造は米軍インテリジェンスとは異なるが、2013年から14年にかけてのウクライナ危機の後、前者がNATO基準を採用できたことで、ロシア軍部隊と指導部をターゲッティングした即座の成功を収める準備が十分に整った。米国の同盟国やパートナーの多くは異なる組織デザインを維持するため、このパターンは今後もほぼ間違いなく繰り返されるだろう。
米軍インテリジェンス・コミュニティが大規模戦闘作戦(LSCO)に備える際には、紛争が勃発した場合に将来の成功を確実にするため、訓練を通じてパートナーや同盟国と共通の慣行やシステムを共有しなければならない。米国は、銃撃戦が始まってからシステムを開発するという重大な難題を軽減するために、紛争が勃発するかなり前から訓練に情報を統合(一体化)しなければならない。パートナーや同盟国と早期に情報を共有することは、統合抑止(integrated deterrence)を高める取組みの重要な要素であるべきである。これは、「2022年米合衆国国家防衛戦略(2022 National Defense Strategy of the United States of America)」で詳述されている国防総省の重要なコンセプトであり、「潜在的な敵に侵略の愚かさを理解させるために、米国政府全体、同盟国やパートナーとの緊密な協力のもと、国防総省が自由に使えるあらゆる手段」を使用することを目指している[71]。
統合抑止(integrated deterrence)は、その定義からして、敵対者が行動を起こす前に、競争の連続体(competition continuum)の上位にあるさらなる侵略行為を抑止するために行われなければならない[72]。NATOは非NATO加盟国であるウクライナに移転可能な一般的に理解された一連の基準と慣行を提供したが、NATOのような大きな組織体がないため、米国がパートナーや同盟国との訓練や演習を増やすインド太平洋地域では課題が生じる可能性がある。その結果、米陸軍は、インド太平洋地域で米国が複数のパートナーや同盟国とともに、またそれらを通じて闘うような紛争が激化した場合にインテリジェンス共有を可能にするため、インテリジェンス訓練に関する共通の実践体系と基準を策定し、維持しなければならない。
結論
ロシアの大規模なウクライナ侵攻につながる紛争の進展は、2つの先進国民国家間の戦いの将来を垣間見せるものとなった。米国は将来の戦場がウクライナの戦場と同じになるとは期待できないが、ロシア・ウクライナ戦争から学んだ多くのインテリジェンス上の教訓は、米陸軍の軍事インテリジェンスが大規模戦闘作戦(LSCO)やその他の軍事作戦のために、競争の連続体(competition continuum)にわたって準備することができる。ロシア・ウクライナ戦争から学んだいくつかの中心的な教訓は、インテリジェンスを兵器化することで情報的優位性(informational advantage)を促進すること、重要なOSINTによってインテリジェンスの共有が可能になること、AIによってサポートされるセンサーにとらわれないインテリジェンスの処理・活用・普及(PED)が今後の近代化の取組みに不可欠であること、パートナーや同盟国と共有されるインテリジェンス標準と実践に関する紛争前の訓練が非常に良い結果をもたらすこと、企業はインテリジェンス・ドメインと情報環境の両方において独立した行為主体として活動することが多いこと、などである。このような教訓を軍隊に浸透させることで、米陸軍は将来の新しく進化し続ける作戦環境に備えることができる。
ノート
[1] Ministry of Defense of Ukraine, The State Program for the Development of the Armed Forces of Ukraine until 2020 (Kyiv: Ministry of Defense of Ukraine, 2017), 14.
[2] Andrew Lohsen and Nick Fenton, Corruption and Private Sector Investment in Ukraine’s Reconstruction (Washington, DC: Center for Strategic and International Studies, November 2022); Ministry of Defense of Ukraine, State Program, 14; and Philipp Fluri and Leonid Polyakov, “Intelligence and Security Services Reform and Oversight in Ukraine – An Interim Report,” Connections: The Quarterly Journal 20, no. 1 (Winter 2021): 55–56.
[3] Greg Miller and Isabelle Khurshudyan, “Ukrainian Spies with Deep Ties to CIA Wage Shadow War against Russia,” Washington Post (website), October 23, 2023, https://www.washingtonpost.com/world/2023/10/23/ukraine-cia-shadow-war-russia/.
[4] Taras Kuzio, “Ukraine,” in The Handbook of European Intelligence Cultures, ed. Bob de Graaff and James M. Nyce (Lanham, MD: Rowman & Littlefield, 2016), 405.
[5] Oleksandra Ustinova and Steven Pifer, “Getting Ukraine’s Security Service Reform Right,” Atlantic Council (website), March 1, 2021, https://www.atlanticcouncil.org/blogs/ukrainealert/getting-ukraines-security-service-reform-right/.
[6] Kuzio, “Ukraine,” 410.
[7] Maksym Bugriy, “Ukraine’s Security Sector Reform: Is Ukraine Taking Western Advice?,” Connections: The Quarterly Journal 17, no. 3 (Summer-Fall 2018): 85.
[8] Bugriy, “Ukraine’s Security Sector Reform, 72, 78.
[9] David Vergun, “Ukraine Making Progress on Defense Reforms, Official Says,” Department of Defense (DoD) (website), June 7, 2021, https://www.defense.gov/News/News-Stories/Article/Article/2648670/ukraine-making-progress-on-defense-reforms-official-says/.
[10] “About DIA,” Defense Intelligence Agency (website), n.d., accessed on January 4, 2024, https://www.dia.mil/About.aspx.
[11] Fluri and Polyakov, “Reform and Oversight,” 55–56.
[12] “Glorious Intelligence Units,” Defense Intelligence of the Ministry of Defense of Ukraine (website), n.d., accessed on December 10, 2022, https://gur.gov.ua/en/content/glorious-unit-of-intelligence.html.
[13] “Why Russia’s GRU Military Intelligence Service Is So Feared,” BBC News (website), April 19, 2021, https://www.bbc.com/news/world-europe-56798001.
[14] Fluri and Polyakov, “Reform and Oversight,” 56.
[15] Leonid Polyakov, “Defence Institution Building in Ukraine at Peace and at War,” Connections: The Quarterly Journal 17, no. 3 (Summer-Fall 2018): 102.
[16] Neveen Shaaban Abdalla et al., “Intelligence and the War in Ukraine: Part 2,” War on the Rocks (website), May 19, 2022, https://warontherocks.com/2022/05/intelligence-and-the-war-in-ukraine-part-2/.
[17] Ministry of Defense of Ukraine, State Program.
[18] Abdalla et al., “Intelligence.”
[19] Ministry of Defense of Ukraine, State Program.
[20] Ministry of Defense of Ukraine, State Program.
[21] “Kyrylo Budanov: Ukrainian Intelligence Is Able to Conduct Operations in Any Part of the World, If Necessary,” Ukrainian Security and Cooperation Center (website), September 7, 2021, https://uscc.org.ua/en/kyrylo-budanov-ukrainian-intelligence-is-able-to-conduct-operations-in-any-part-of-the-world-if-necessary/.
[22] 81st Stryker Brigade Combat Team, Command Report No. 22-1 (1 June 2020–6 January 2022) (Grafenwoehr, DE: Joint Multinational Training Group-Ukraine, 2022), 16.
[23] Mykhaylo Zabrodskyi et al., Preliminary Lessons in Conventional Warfighting from Russia’s Invasion of Ukraine: February–July 2022 (London: Royal United Services Institute, November 30, 2022), 22–23.
[24] Polyakov, “Defence Institution Building,” 102.
[25] Warren P. Strobel, “Rise of Open-Source Intelligence Tests US Spies,” Wall Street Journal (website), December 11, 2022, https://www.wsj.com/articles/rise-of-open-source-intelligence-tests-u-s-spies-11670710806.
[26] Strobel, “Open-Source Intelligence.”
[27] Jack Hewson, “Ukrainian Company Uses Social Media, Open Source Technology to Counter Russian Invasion,” PBS (website), April 19, 2023, https://www.pbs.org/newshour/show/ukrainian-company-uses-social-media-open-source-technology-to-counter-russian-invasion.
[28] Jim Hockenhull, “How Open-Source Intelligence Has Shaped the Russia-Ukraine War” (speech, Royal United Services Institute Members Webinar, London, UK, December 9, 2022), https://www.gov.uk/government/speeches/how-open-source-intelligence-has-shaped-the-russia-ukraine-war.
[29] Morgan Meaker, “Ukraine Enters a Dark New Era of Drone Warfare,” WIRED (website), October 21, 2022, https://www.wired.com/story/russia-ukraine-drones-shahed-136-iran/.
[30] John Frank, “Denver Tech Companies Play Key Roles in Ukraine Battle against Russia,” Axios Denver (website), June 7, 2022, https://www.axios.com/local/denver/2022/06/07/denver-palantirmaxar-ukraine-russia.
[31] Alex Horton and Shane Harris, “Russian Troops’ Tendency to Talk on Unsecured Lines Is Proving Costly,” Washington Post (website), March 27, 2022, https://www.washingtonpost.com/national-security/2022/03/27/russian-military-unsecured-communications/.
[32] Christopher Bronk, Gabriel Collins, and Dan Wallach, Cyber and Information Warfare in Ukraine: What Do We Know Seven Months In? (Houston: Rice University’s Baker Institute for Public Policy, September 6, 2022).
[33] Paresh Dave and Jeffrey Dastin, “Exclusive: Ukraine Has Started Using Clearview AI’s Facial Recognition during War,” Reuters (website), March 14, 2022, https://www.reuters.com/technology/exclusive-ukraine-has-started-using-clearview-ais-facial-recognition-during-war-2022-03-13/; and Will Knight, “As Russia Plots Its Next Move, an AI Listens to the Chatter,” WIRED (website), April 4, 2022, https://www.wired.com/story/russia-ukraine-war-ai-surveillance/.
[34] Dave and Dastin, “Exclusive.”
[35] Knight, “As Russia Plots.”
[36] Patrick Tucker, “The Ukraine War Is Teaching the US How to Move Intelligence Faster,” Defense One (website), October 12, 2022, https://www.defenseone.com/technology/2022/10/ukraine-war-teaching-us-how-move-intelligence-faster/378361/.
[37] David Ignatius, “How the Algorithm Tipped the Balance in Ukraine,” Washington Post (website), December 19, 2022, https://www.washingtonpost.com/opinions/2022/12/19/palantir-algorithm-data-ukraine-war/.
[38] Jeffrey Dastin, “Ukraine Is Using Palantir’s Software for ‘Targeting,’ CEO Says,” Reuters (website), February 1, 2023, https://www.reuters.com/technology/ukraine-is-using-palantirs-software-targeting-ceo-says-2023-02-02/.
[39] Kimberly Johnson, “Tactical Combat Drones Play a Role in Ukraine Air Defense,” Flying Magazine (website), March 25, 2022, https://www.flyingmag.com/tactical-combat-drones-play-a-role-in-ukraine-air-defense/.
[40] Jason Beaubien, “In the Russia-Ukraine War, Drones Are One of the Most Powerful Weapons,” NPR (website), July 30, 2022, https://www.npr.org/2022/07/30/1114024870/russia-ukraine-war-drones.
[41] Beaubien, “Russia-Ukraine War.”
[42] Christina L. Arabia, Andrew S. Bowen, and Cory Welt, US Security Assistance to Ukraine, Congressional Research Service (CRS) Report IF12040 (Washington, DC: CRS, updated January 3, 2024), 2.
[43] Arabia, Bowen, and Welt, Security Assistance to Ukraine.
[44] Valerie Insinna, “Meet ‘Phoenix Ghost,’ the US Air Force’s New Drone Perfect for Ukraine’s War with Russia,” Breaking Defense (website), April 21, 2022, https://breakingdefense.sites.breakingmedia.com/2022/04/meet-phoenix-ghost-the-us-air-forces-new-drone-designed-for-ukraines-war-with-russia/.
[45] Meaker, “Ukraine Enters.”
[46] Huw Dylan and Thomas J. Maguire, “Secret Intelligence and Public Diplomacy in the Ukraine War,” Survival 64, no. 4 (August-September 2022): 37.
[47] Dylan and Maguire, “Secret Intelligence,” 33–34.
[48] Christian Perez and Anjana Nair, “Information Warfare in Russia’s War in Ukraine,” Foreign Policy (website), August 22, 2022, https://foreignpolicy.com/2022/08/22/information-warfare-in-russias-war-in-ukraine/.
[49] Julian E. Barnes and David E. Sanger, “Accurate US Intelligence Did Not Stop Putin, but It Gave Biden Big Advantages,” New York Times (website), February 24, 2022, https://www.nytimes.com/2022/02/24/world/europe/intelligence-putin-biden-ukraine-leverage.html.
[50] Missy Ryan et al., “Outmatched in Military Might, Ukraine Has Excelled in the Information War,” Washington Post (website), March 16, 2022, https://www.washingtonpost.com/national-security/2022/03/16/ukraine-zelensky-information-war/.
[51] 4TheRecord, GUR Intercept Call – the Russians Send Their Disabled to Fight in Ukraine (English Translation) (United Kingdom: 4TheRecord, November 29, 2022), YouTube video, https://www.youtube.com/watch?v=i6bNJJVYrA8.
[52] Richard Sisk, “Captured Russian Troops Call Home While Filmed by Ukrainian Officials, Raising Geneva Convention Questions,” Military.com (website), March 1, 2022, https://www.military.com/daily-news/2022/03/01/captured-russian-troops-call-home-while-filmed-ukrainian-officials-raising-geneva-convention.html.
[53] “The War in Ukraine Has Battered the Reputation of Russian Spies,” Economist (website), October 9, 2022, https://www.economist.com/europe/2022/10/09/the-war-in-ukraine-has-battered-the-reputation-of-russian-spies.
[54] Frank Langfitt, “Why Most Predictions about the Ukraine War Have Been Proved Wrong,” NPR (website), February 19, 2023, https://www.npr.org/2023/02/19/1158194914/why-most-predictions-about-the-ukraine-war-have-been-proved-wrong.
[55] Nomaan Merchant and Matthew Lee, “US Intelligence Agencies Review What They Got Wrong on Russia’s Invasion of Ukraine,” PBS (website), June 4, 2022, https://www.pbs.org/newshour/nation/us-intelligence-agencies-review-what-they-got-wrong-on-russias-invasion-of-ukraine.
[56] Wesley Wark, “Good Intelligence Will Be Pivotal in Next Phase of Ukraine War,” Center for International Governance Innovation (website), May 30, 2022, https://www.cigionline.org/articles/good-intelligence-will-be-pivotal-in-next-phase-of-ukraine-war/.
[57] Julian E. Barnes, “Why the US Was Wrong about Ukraine and the Afghan War,” New York Times (website), March 24, 2022, https://www.nytimes.com/2022/03/24/us/politics/intelligence-agencies-ukraine-afghanistan.html.
[58] Sean Corbett and James Danoy, “Beyond NOFORN: Solutions for Increased Intelligence Sharing among Allies,” Atlantic Council (website), October 31, 2022, https://www.atlanticcouncil.org/in-depth-research-reports/issue-brief/beyond-noforn-solutions-for-increased-intelligence-sharing-among-allies/.
[59] Nomaan Merchant, “Congress to the Intel Community: Your Spies Were Basically Clueless as the COVID Pandemic Approached from China,” Fortune (website), January 12, 2023, https://fortune.com/2023/01/12/intelligence-community-spies-review-congress-no-useful-information-china/.
[60] Merchant, “Congress.”
[61] Aki Peritz, “Building an Open-Source Intelligence Buyer’s Club,” War on the Rocks (website), October 20, 2022, https://warontherocks.com/2022/10/building-an-open-source-intelligence-buyers-club/.
[62] Courtney Albon, “Army Developing TITAN System to Improve Sensor-to-Shooter Timeline,” Defense News (website), October 6, 2022, https://www.defensenews.com/land/2022/10/06/army-developing-titan-system-to-improve-sensor-to-shooter-timeline/; and Program Executive Office – Intelligence, Electronic Warfare & Sensors, “TITAN Update,” U.S. Army (website), June 28, 2022, https://www.army.mil/article/257991/titan_update.
[63] Francis Castillo, “Air Force Cryptologic Office Establishes New Information Dominance Initiative,” Air Force (website), April 8, 2022, https://www.af.mil/News/Article-Display/Article/2993853/air-force-cryptologic-office-establishes-new-information-dominance-initiative/.
[64] Castillo, “Air Force Cryptologic Office.”
[65] Headquarters, Department of the Army (HQDA), 2021 Army Modernization Strategy (Washington, DC: HQDA, 2021), 7.
[66] Natasha Bertrand, “CNN Exclusive: A Single Iranian Attack Drone Found to Contain Parts from More Than a Dozen US Companies,” CNN (website), January 4, 2023, https://www.cnn.com/2023/01/04/politics/iranian-drone-parts-13-us-companies-ukraine-russia/index.html.
[67] Henry Kissinger, National Security Decision Memorandum no. 119, “Disclosure of Classified United States Military Information to Foreign Governments and International Organizations,” July 20, 1971, Washington, DC.
[68] Andrew Radin, “Commentary: How Should the US Military Share Secrets?,” RAND (website), October 31, 2022, https://www.rand.org/pubs/commentary/2022/10/how-should-the-us-military-share-secrets.html.
[69] Dustin Volz, “Vast Troves of Classified Info Undermine National Security, Spy Chief Says,” Wall Street Journal (website), January 27, 2022, https://www.wsj.com/articles/vast-troves-of-classified-info-undermine-national-security-spy-chief-says-11643286602.
[70] Corbett and Danoy, “Beyond NOFORN.”
[71] DoD, 2022 National Defense Strategy of the United States of America (Washington, DC: DoD, 2022), IV.
[72] DoD, 2022 National Defense Strategy, IV.