ロシアのウクライナに対する戦争 -現代のクラウゼヴィッツ戦争の複雑性- ①ロシア軍の非効率性と民軍関係 ロシア・セミナー2024
フィンランド国防大学(FNDU)では、2019年からロシア・セミナーを開催している。第6回となるロシア・セミナーは2024年2月に開催され、そのテーマは「ロシアのウクライナ戦争-現代クラウゼヴィッツ戦争の複雑性」であり、その目的は「ロシアのウクライナ戦争に関する議論を深め、ロシアの軍事政策と軍事力に関する新たな知識を生み出すこと」となっている。このロシア・セミナーでの登壇者の論考をまとめたものが「PUBLICATIONS – Russian Military and Security Research group」に掲載されている。
ロシア・セミナー2024では、「国家-社会-武装勢力」のトライアングルの関係における戦いの戦略的側面と広範な側面に焦点を当てており、著名な研究者やロシアの専門家による27の寄稿があり、ロシアの戦争の方法や軍事思想に関する最も重要な知識が満載である。MILTERMでは、27の論考を1章から順次紹介していくつもりである。
一番目の「ウクライナにおけるロシア軍の非効率性は、民軍関係で説明できるのか? 」では、民軍関係と軍事的有効性の関連からうまくいっているとは言えないロシアのウクライナ侵攻の問題を解き明かそうとするものである。いわゆる普通の国家でも民軍関係と軍事的有効性の因果関係を明らかにすることはかなり困難を伴うと論じた上で、ロシアについては、「ネオ・パトリモニアル体制(neo-patrimonial regime)」と言われるプーチン大統領一人が国家機構や国民を私物化する政治体制のもとでの「民軍関係(civil-military relations)」では、軍部の忠誠心が軍人の能力に関わりなく軍事的有効性に影響を与えると分析している。ロシアを分析する際の複雑性と困難さを感じる論考である。(軍治)
ロシアのウクライナに対する戦争 – 現代のクラウゼヴィッツ戦争の複雑性 –
Russia’s war against Ukraine – Complexity of Contemporary Clausewitzian War – |
1_ウクライナにおけるロシア軍の非効率性は、民軍関係で説明できるのか? 討論
CAN CIVIL-MILITARY RELATIONS EXPLAIN THE INEFFECTIVENESS OF RUSSIAN ARMED FORCES IN UKRAINE? A DEBATE
ベッティーナ・レンツ(Bettina Renz)
ベッティーナ・レンツ(Bettina Renz)博士は、ノッティンガム大学国際安全保障学部教授。専門は戦略研究で、特に現代ロシアの防衛・安全保障政策に関心をもつ。彼女の研究は文脈に基づく地域研究と戦略研究を基盤としている。エジンバラ大学でロシア研究の修士号と修士号、バーミンガム大学でロシア・東欧研究の博士号を取得し、これまでにヘルシンキ大学アレクサンテリ研究所上級研究員(2015-16年)、カナダ軍大学著名客員教授(2020年)を務めた。2005年以来、ロシアの軍事・安全保障政策について幅広く発表しており、現在は英国アカデミーの資金でウクライナの軍事改革に関するプロジェクトに携わっている(2019年~)。レンツ(Renz)博士はフィンランド国防大学(FNDU)の春学期客員教授を務めている。
ロシア・セミナー2024におけるベッティーナ・レンツ(Bettina Renz)のプレゼンテーションは、フィンランド国防大学(FNDU)のYouTubeチャンネル(https://www.youtube.com/watch?v=P8VA1bT8ADs) 26:40~でご覧いただける。
要約
民軍関係(civil-military relations)は一国の軍隊の有効性をどの程度決定づけるのだろうか。2022年2月のウクライナ侵攻の場合、民軍の領域(civil-military realm)のパターンが、ロシア軍の予想外の不振の一因をもっともらしく説明している。しかし、ロシアの民軍関係と軍事的有効性の接点については、慎重な調査が必要である。民軍関係(civil-military relations)と軍事的有効性(military effectiveness)の関連性を分析することの難しさ、およびロシアの政治指導部と軍事指導部の相互作用に関する体系的データの欠如は、後知恵に基づくいかなる評価も解釈の余地を残しておかなければならないことを意味する。
はじめに
2022年2月24日までは、ロシアの軍事力はウクライナの軍事力よりもはるかに優れていると広く思われていた[1]。本格的な侵攻が始まった当初は、数日から数週間でロシアが勝利すると予想するオブザーバーさえいた。こうした予想が外れたとき、なぜロシアの軍事力が過大評価されたのか、今後同じようなインテリジェンスの失敗を避けるにはどうすればよいのかという議論が展開された(O’Brien 2022)。装備、予算、人員などの量的優越(quantitative superiority)といった軍事力の物質的指標が過度に強調され、効果的なリーダーシップ、指揮・統制、動機、士気といった人的要因が犠牲になってきたという、ある種のコンセンサスが生まれたのである(Renz 2023)。今後、ロシアの軍事力をより正確に評価するためには、これらを考慮しなければならないだろう。
民軍関係は学際的で幅広い研究分野である。一国の政府、社会、軍隊の関係のあらゆる側面に関わるものである(Owens 2017:1)。政治学的なアプローチでは、制度としての国家と軍隊の関係や権力のやりとりに焦点が当てられ、社会学的なアプローチでは、文民的価値観と軍隊的価値観の統合・一体化(integration)や崩壊(disintegration)に焦点が当てられる(Feaver 1996)。関係性と価値観に焦点を当てるこの分野は、「伝統的な(traditional)」軍事分析では過小評価されがちな軍事的有効性の非物質的要因(non-material factors)を研究するのに適している(Rosen 1995: 30-31)。民軍関係と軍の有効性が密接に関係していることは広く認められている。ピーター・フィーバー(Peter Feaver)が要約しているように、「民軍問題(civil-military problematique)」とは、「文民から頼まれたことは何でもできるほど強力な軍隊と、文民が許可したことだけをできるほど従属的な軍隊を両立させなければならない(to reconcile a military that is strong enough to do anything civilians ask them to with a military subordinate enough to do only what civilians authorise them to do)」という国家のジレンマのことである(Feaver 1996: 149)。民軍関係分析ではしばしば軍に対する文民統制(civilian control)に焦点が当てられるが、これは「民軍問題論の[一面]に関わるものでしかなく、軍の有効性はもう一面に関わるものである(Kuehn and Croissant 2017: 5)。
ロシアの民軍関係の研究は、ソビエト連邦崩壊後の最初の20年間は、西側の専門家によってよく研究されたテーマだった。2010年頃からは、ロシアの大幅な軍事改革やクリミア、ドンバス、シリアでの作戦が分析的関心を独占するようになり、このテーマは好まれなくなった(Westerlund 2021)。ロシア・ウクライナ戦争が始まってから、ロシアの軍事力についてよりニュアンスのある理解を求めるようになり、民軍関係に関する分析的関心が復活した。政権への忠誠心に基づく軍指導者の任命による軍の政治化や、軍の専門的自律性を文民指導部が無視するなど、この領域での問題が、ウクライナにおける軍事的有効性を著しく制約していると指摘するオブザーバーもいた(Jarasli 2023; Gomza 2023)。キリル・シャミエフ(Kirill Shamiev)が言うように、「ウクライナにおけるロシアの問題の根本的な原因は民軍ドメイン(civil-military domain)にある・・・・ロシアは経済、技術、人口規模、人的資本において比較優位性にあるにもかかわらず、その政府は十分に効果的な軍事力を生み出すことができなかった」(2024)。
民軍関係の研究は、ロシア軍をニュアンス豊かに理解する上で重要である。しかし本稿では、この関係が軍の効果にどのような影響を与えるかについての評価は、慎重に行う必要があると論じている。次節で説明するように、民軍関係に関する比較研究は、理論的・コンセプト的なレベルでは、民軍関係と軍事的有効性の結びつきは複雑であり、運用が難しいことを示唆している。どのような民軍関係が最も効果的な軍隊を生み出すのか、明確なパターンはなく、その結果は国家によって大きく異なる。さらに、因果関係の特定は、定義することも測定することも難しい「軍事的有効性(military effectiveness)」というコンセプトの議論の余地のある本質によって複雑になっている。本稿の最後の章では、民軍と有効性の接点を運用することの分析上の難しさを念頭に置きながら、ウクライナにおけるロシア軍の効果的なパフォーマンスに対する民軍関係の影響について、アナリストが提示したいくつかの予備的な結論に疑問を投げかける。一方では、これらの研究は、これまで無視されてきたロシアの国防政策の側面について重要な問題を取り上げ、ウクライナでロシア軍が経験した問題のいくつかについて、もっともらしい説明を提供している。その一方で、プーチン政権の閉鎖的な本質や、エリートたちの交流や意思決定に関するデータが不足していることを考慮すると、予備的な結論には疑問が残る。
民軍関係と軍事的有効性の接点を評価する
民軍関係と軍事的有効性の間に関連性があることは論を待たないが、この関連性の正確な本質や研究方法については議論が続いている。さまざまな著者が、特に文民統制(civilian control)のメカニズムやパターンを評価する体系的な文献と比較して、既存の文献の欠点として、民軍と有効性の結びつきの理論化の弱さを強調している(Nielsen 2005; Brooks 2019)。過去に様々な研究がこのテーマに捧げられてきたが、民軍関係が具体的にどのように軍の有効性に影響を与えるのかという疑問は依然として解決されていない。比較的最近出版された2冊の本では、新しい民主主義国家(Croissant and Kuehn 2017)とロシア(Bruneau and Croissant 2019)を含むさまざまな政治体制における民軍関係と軍事的有効性の関連について深く掘り下げている[2]。両書で得られた主な知見は、民軍関係と軍事的有効性の結びつきを測定可能な指標や因果関係に運用することは極めて困難であるということである。その理由は、国家によって異なる歴史的、政治的、文化的、イデオロギー的文脈の重要性と、軍事的有効性を正確かつ意味のある形で定義することの難しさである。
歴史的、政治的、思想的、文化的文脈
民軍関係(civil-military relations)において、どのようなパターンがより効果的な軍を促進するのかは明らかではない。クロワッサン(Croissant)とキューン(Kuehn)の2017年の本が発見したように、「どのような要因が新しい民主主義国家における文民統制(civilian control)と軍の有効性を促進または妨害するかについて、学術的な文献ではほとんど一致していない(Croissant and Kuehn 2017: 7)」。政権をまたいでこのテーマを扱った彼らの2019年版も同様の結論に達している。それは、文民統制(civilian control)の民主的システムを共有する国々(米国、ドイツ、日本)においてさえ、文民統制(civilian control)のメカニズムは大きく異なり、それが軍事的有効性に与える影響も大きく異なることを強調している。同様に、非民主主義国家(トルコ、チリ、中国、ロシア)に文民統制(civilian control)の民主的な制度がないからといって、その国の軍隊が一様に非効率的と見なされるわけではなかった(Bruneau and Croissant 2019: 241)。両巻で検討された、いくつかの国のケース・スタディーは、調査期間中に民軍関係に深刻な変化を経験したが、これが軍事的有効性に及ぼす影響は一様ではなかった。つまり、理論的なコンセプトや比較文献は、潜在的に重要な研究課題や探究のための領域を浮き彫りにすることができるが、あるケースに関する洞察が必ずしも別のケースに関連する、あるいはあるケースに関する洞察が異なる時点で適用される、と仮定してはならない。このような分析上の困難を克服するために、国家の民軍関係とそれが軍事的有効性にどのような影響を与えるかについての研究は、「深い文脈的知識に基づくものでなければならず、政治(国内および国際の両方)を扱わなければならず、時間経過に伴う因果過程を考慮しなければならない」(Bruneau and Croissant 2019: 228)とブルノー(Bruneau)とクロワッサン(Croissant)は指摘している。
ある国の軍隊の有効性に及ぼす民軍関係の影響を推し量ろうとする研究は、調査対象の国家内でこれらのコンセプトがどのように理解されているかを理解する必要がある。これは重要なことである。というのも、このような理解は、比較文献における主要な仮定と乖離する可能性があるからである。例えば、民主的な文民統制(civilian control)という西側の規範が、西側以外でも民軍関係の唯一の機能的、望ましい、あるいは正当な構成と見なされていることを当然視することはできない(Kuehn 2019: 24)。何が効果的な軍隊を構成するかについての考え方も文脈に左右される。オフェル・フリードマン(Ofer Fridman)がロシアについての章で示唆したように、ロシア特有の政治的、文化的、歴史的文脈の中で、ロシアの軍事的有効性に対する理解は、潜在的により狭い西側の認識とは大きく異なっている(Fridman 2019: 159)。一国の民軍関係と軍事的有効性を決定するあらゆる文化的要因を評価するためには、深い文脈的知識が必要である。先行研究が警告しているように、「戦争の方法(ways of war)」、死傷者の受け入れ、士気、動機といった問題に関しては、特に緊張が高まっている時や、現場へのアクセスや体系的なデータへのアクセスが制限されている状況では、文化的な説明はステレオタイプになりやすい(Rosen 1995: 8-9)。
議論の余地のある軍事的有効性の意味
軍事的有効性を正確に、しかも意味のある形で定義し測定することの難しさが、民軍関係と軍事的有効性の接点を運用しにくくしている(Bruneau and Croissant 2019: 3-6; Eschenauer-Engler and Kamerling 2019: 35-52)。軍事的有効性の源泉は多様であり、定量化可能な物質的資産(人員、技術、予算など)から、訓練、指揮・統制、民軍関係、士気と動機、社会構造、文化的伝統、地球環境など、測定がはるかに困難な要因に及ぶ(Brooks and Stanley 2007)。ある国の軍隊の評価が、可能な限り幅広い要素に基づいて行われたとしても、それは絶対値としての軍事的有効性を推定することにはならない。というのも、軍事的有効性というものは、極めて状況証拠に基づくものだからである。軍隊にはさまざまな機能があり、抑止や平和維持から侵略戦争や領土防衛までさまざまな特定の任務に対処する能力がどの程度高いかは一様ではない(Bruneau and Croissant 2019: 5-6)。軍事的有効性は、特に長期化した戦争では、熟練した人員、適切な装備、士気などの特定の資産の有用性と利用可能性が戦争のさまざまな段階で異なる可能性があるため、紛争を通じて浮き沈みする可能性がある(Eschenauer-Engler and Kamerling 2019: 48)。軍隊は失敗から学び、適応することができる。さらに、戦争は2つ(またはそれ以上)の知性ある敵の間で闘われる決闘であり、そのため一方の軍事的パフォーマンスは敵対勢力の強さと有効性に左右される。
最後に、軍事的有効性と勝利の関係は一筋縄ではいかない。特に侵攻の初期段階において、ロシア軍の作戦がウクライナ軍よりもはるかに効果的でなかったことに異論は少ないが、本稿執筆時点では、戦争の結果は依然として予測不可能である。進行中の戦争で、より効果的に闘っているとみなされた側が勝利を収める可能性はあるが、保証はない(Millett et al 1986: 37)。裏を返せば、人的・経済的コストを顧みず、数の優位を無慈悲に利用して目的を追求することも、場合によっては勝利につながるかもしれないが、これは軍事的有効性の最も狭い定義以外では両立しにくいだろう(Biddle and Long 2004: 541)。BruneauとCroissantが警告しているように、国家の民軍関係と軍隊の有効性の接点を研究することから得られる一般的な洞察には限界がある(Bruneau and Croissant 2019: 4)。
民軍関係、軍事的有効性、ロシア・ウクライナ戦争
ロシア軍がウクライナで非効率的な闘いを行った原因は、民軍関係のパターンにどの程度あるのだろうか。論文のこの節では、開戦以来、この疑問に対して提示されてきたいくつかの説明を検証する。これらの説明は妥当であり、民軍関係に関する文献の中核的な仮定に沿うものであると論じている。しかし、上記の議論を踏まえ、別の解釈も可能であることを示唆している。そのため、どのような発見も予備的なものと考え、さらなる調査を行う必要がある。
軍隊の政治化
ウクライナにおける軍隊の非力さの原因としてアナリストたちが指摘するロシアの民軍関係における重要な問題のひとつは、軍隊の政治化である。この政治化は、プーチンの治世下で、専門的な能力や功績ではなく、政権への忠誠心に基づいて将校を任命、昇進、解任するという形で起こった(Arasli 2023)。例えば、2022年12月と2023年1月(Luzhin 2023)、元プーチンの盟友エフゲニー・プリゴジン(Evgenii Prigozhin)が率いるワグネル民間軍事会社(Wagner Private Military Company)が起こした反乱の失敗(Jastrzębska 2023)後、軍指導者たちが解任され、入れ替わるなど、さまざまな注目を集めた。クレムリンが将校をこのように政治化する理由は、ロシア軍を「クーデター防止(coup proof)」するためであり、軍指導部の忠誠心を確保し、軍隊が政権にとって脅威となるのを防ぐためである(Troianovski 2023)。専門的能力よりも忠誠心を優先させることで、軍のリーダーシップの質は時間の経過とともに低下していった(Gomza 2023)。さらに、戦争継続中に不忠実とみなされた軍指導者が定期的に入れ替わったことで、ウクライナでは「指揮の混乱(command chaos)」と「非効率性(ineffectiveness)」が生じた(Bowen 2023: 25-26)。
政治化と「クーデター防止(coup proofing)」がウクライナにおけるロシア軍の非効率性に影響を与えたという指摘は、民軍関係文献の主要な仮定と一致している。これらは、政治指導部と軍事指導部を制度的にもイデオロギー的にも異なる行為主体としてコンセプト化し、その関係を注意深く管理する必要があるとしている。調和のとれた民軍関係の鍵は、強力な軍隊を維持し、その軍隊が目的とする国家を脅かすことがないようにすることであり、それは軍の専門性(military professionalism)と文民統制(civilian control)のバランスである。イデオロギー的展望がまちまちな文民指導部は、国家に代わって政治的決定を下す(Huntington 1957: 89-97)。職業軍人としての倫理観に縛られる軍隊は、他の職業集団とは異なり、特定の専門分野(軍事学)の中で顧客(国家)に奉仕することを動機としているため、政治を超えた存在であり続ける(Huntington 1957: 71)。例えば、忠誠心を任命の条件とするなど、軍隊が政治化されれば、リーダーシップの質や軍事的有効性に深刻な影響を及ぼしかねない(例えば、Biddle and Long 2004: 532; Pilster and Böhmelt 2011)。
プーチンの「ネオ・パトリモニアル体制(neo-patrimonial regime)」※では、個人的な忠誠心と忠誠心が人事の意思決定の中心となってきたことは広く理解されている。ロシアの国内政治と経済に関する研究は、権力関係があらゆるレベルで高度に個人化されており、ロシア国家のあらゆる分野における統治の質に大きな影響を与えていることを示唆している(Gel’man 2016: 455)。そのため、軍が例外であると考える理由はほとんどなく、政治的動機に基づく軍将校の任免が、ウクライナで闘うロシア軍の効果を制約したことを示唆するのはもっともである。しかし、この因果関係を証明するのは難しく、ロシアの文脈におけるリーダーシップ・ダイナミクスの複雑さを反映していない可能性がある(Shamiev 2023)。ロシアにおけるエリートのリクルートが極めて個人的なものであることは間違いない。制度化されたエリート登用ルートがない中、この慣行はエリツィン時代にまで遡るが、この時代には文民・軍人を問わず、一見恣意的な「雇用と解雇(hire and fire)」が常態化していた(Renz 2006: 906-7)。しかし、これは必ずしも、ロシアの軍将校人事が、他の部門の人事決定に特徴的なひいきや縁故主義ではなく、軍を「クーデターを防止する(coup proof)」必要性に駆られているということを意味しない。結局のところ、プーチンのリーダーシップは(エリツィンのリーダーシップのように)反抗的な軍部によって挑戦されることはなかった。
※1 ネオ・パトリモニアル体制(neo-patrimonial regime):本来パトリモニアリズム(patrimonialism)とは、支配者が権力、財産、権益を独占し、それらを私物化する一方で、支配者の私的隷属者から成る統治機構を用いて領土や人民を支配しようとする伝統的支配の一類型のことであり、ネオ・パトリモニアリズムとは、そうした古代や中世にみられた伝統的なパトリモニアリズムが、合理的=合法的な諸機構や近代国家の枠組みのなかに見出される政治状況を指している。ネオ・パトリモニアル体制(neo-patrimonial regime)とは、支配者が国家機構や国民を私物化する政治体制のことである。(参考:https://www.jica.go.jp/Resource/jica-ri/IFIC_and_JBICI-Studies/jica-ri/publication/archives/jica/field/pdf/2002_03_07.pdf)
ロシアの民軍関係は、政治指導者側の不信と恐怖によって動かされているという仮説は、対立しやすい民軍領域が明確に区分されているという核心的な考え方と一致している。これでは、ロシアでは物事が違った見方をされる可能性があるという余地がほとんどない。冷戦時代、西側のアナリストたちはソ連の民軍関係について膨大な量の研究を行ったが[3]、ソ連自体にはこのようなテーマや問題は存在しなかった。少なくとも、ソ連には「さまざまな集団の利害を代表する制度的メカニズムがなかった」(Gudkov 2003)からである。ウラジーミル・セレブリアニコフ(Vladimir Serebriannikov 1995: 44)が説明するように、ソ連の政治指導部と軍事指導部は、対立しやすく、一方が他方に従属する別個の行為主体とは見なされていなかった。
「1990年代の初めまでは・・・・軍人と文民は互いを完全に理解した上で共存し、軍人と文民は国家の対等な主人(khoziaeva)を構成し、両者は一致団結して国家の政治を支え、同じイデオロギーを持ち、互いの利害は完全に一致するというのが先験的な前提だった」。
この国の指導部はしばしば、統一された「軍政指導部(military-political leadership)」[voenno-politicheskoe rukovodstvo]と呼ばれた。これは西側の民軍関係の考え方からは異質なコンセプトだが、ロシアでは今日でも広く使われている(Arbatov 2002: 14; Golts 2018: 236; Sharovskii 2019)。このことは、歴史的経験に基づけば、ロシアにおける文民領域と軍事領域の制度的・イデオロギー的境界は、それほど明確なものではないと考えられることを示唆している。また、エリツィン(Yeltsin)もプーチンも、制度化された強力な文民統制(civilian control)システムが不可欠であると考えていなかった理由も、このことが示しているのかもしれない。
民軍関係(civil-military relations)は、1990年代初頭、新たに成立したロシア連邦の民主化移行に関する議論の一部となった。当時、西側の民軍関係のコンセプトはロシアの辞書に載ったものの、学者や分析家の世界でも、政治レベルでも、主流になることはなかった。国家議会では、ヤブロコ(Yabloko)や右翼勢力連合(SPS)のような民主的な展望を持つ政党だけが、民主的な文民統制(civilian control)を主張していた(Korguniuk 2001)。しかし、これらの政党は常に少数派であり、2003年の選挙後には、もはや議会に代表を擁することはなかった。ロシアでは、西側の民軍関係のコンセプトは、目指すべきものというよりも、むしろ異質なものとみなされる傾向がある。プーチンの最初の任期中、国家議会の国防委員会の顧問は、文民統制(civilian control)を「政治的デマゴーグのための流行りの話題(fashionable topic for political demagoguery)」にすぎないと評し、これは「国家にとって重要な大義」ではないと断言した(Cheban 2003)。国防省の広報誌「クラスナイア・ズヴェズダ(Krasnaia Zvezda)」の記事は、民軍関係に問題があるという考え方を、「祖国の守護者たちを疑いの目で見ている、新しくできた「民主主義者(democrats)」たちの妄想」だと断じた。その著者の目には、軍を民間人が管理する必要があるという考えは「反軍プロパガンダ」に他ならなかった(Peven’ 2015)。
行政レベルでは、政治指導部と軍指導部の関係の問題は認識されず、対処されることもなかった(Zolotarev 2002: 53)。1990年代末に権威主義的な傾向が強まる以前から、文民統制(civilian control)にはリップ・サービス以上のものは払われていなかった(Vorob’ev 2003)。プーチンは大統領就任当初から根本的な軍事改革を優先させたが、それは少なくとも、長年の放置が軍隊の品位を低下させ、士気を低下させ、社会における軍隊の地位と軍事的有効性に深刻な影響を及ぼしていることを認識していたからである(Renz 2018: 61-62)。しかし、プーチンが進めた改革は「戦略・軍事技術レベルの質問(questions at the strategic and military-technical level)」に限定され、文民統制(civilian control)システムを制度化する取り組みには関与しなかった(Golts 2018: 256)。このことは、プーチンが潜在的な軍の反抗を対処すべき問題とは考えていなかったことを示唆している。フリドマン(Fridman)も示唆しているように、ロシアの文脈は「民軍関係(civil-military relations)に関する文献が提示する文民指導部と軍指導部の間の絶え間ない競争という一般的な仮定(Fridman 2019: 172)」に挑戦している。
忠誠心 vs 実力
プーチンの高度に個人化された「ネオ・パトリモニアル体制(neo-patrimonial regime)」では、忠誠心は軍部だけでなく、すべての指導者人事において重要な考慮事項である。しかし、忠誠心と能力は相互に排他的なものではないため、関連する技能や経験が意思決定に影響しないとは限らない。2008年にクレムリンが急進的な軍事改革プログラムを開始した際、軍指導部の大幅な人事異動が行われた。多くの主要な役職者が交代し、財務・経理畑出身の文民国防相(アナトーリイ・セルジューコフ:Anatolii Serdiukov)と、文民指導部が断行した大規模な改革を一貫して支持した新参謀総長(ニコライ・マカロフ:Nikolai Makarov)が就任した(Herspring 2008)。参謀本部とロシア将校団の規模は大幅に縮小され、「金属ブラシ(metal brush)」で「錆びついた軍事機械を掃除(clean a rusty military machine)」する動きで、10 万人以上の役職が削減された(Pukhov 2008: 8)。忠誠心は、急進的な改革を支持する将校団を作るという意味で、こうした人事の決定に影響を与えたが、新しい役職者が変化を受け入れ、近代化された軍隊を運営するための技能や能力も、少なくとも同じくらい重要だったと思われる。少なくとも、冷戦に囚われ、非効率なソ連の大衆軍を手放したくない保守的な将校たちの抵抗があったためである(Barany 2005: 35)。予想通り、2008年の改革における急進的な変化と将校職の大幅な削減は、軍内の全員に好評ではなかった(Gorenburg 2009)。しかし、クレムリンは明らかに、改革への批判や抵抗が反乱や反抗につながることを恐れていなかった。プホフ(Pukhov)が言うように(Pukhov 2008: 7)、保守的な軍部組織の粛清は、軍隊をより効果的にするために行われたのであって、クーデターを防ぐために行われたのではない。
2022年2月のウクライナ侵攻までは、2008年に開始された急進的な軍事改革がロシアの軍事的有効性を大幅に向上させたと広く信じられていた。軍指導部がプーチン政権に忠誠を誓っていることへの疑念はほとんど表明されなかったが、この忠誠心が軍の実力を向上させる妨げになっているとは一般的には考えられていなかった。2014年のクリミアと2015年からのシリアにおけるロシアの作戦は、おおむね成功したと判断された。そこでは、近代化されたロシア軍は作戦の計画策定と実行において技能を発揮し、戦術レベルでも好成績を収め、この継続的な経験から教訓を学び、革新を行った(Norberg 2014, Adamsky 2020)。当時、これらは規模も範囲も限定的な作戦であり、指揮・統制にもいくつかの問題が残っていると指摘されたが、ウクライナ侵攻開始後にイヴァン・ゴンザ(Ivan Gomza)が主張したように、ロシアの戦争が「無能な忠誠者(inept loyalists)」によって闘われているという感覚はなかった(Gomza 2023: 435)。
プーチンの「ネオ・パトリモニアル体制(neo-patrimonial regime)」における権力関係における忠誠心の中心性は、軍事指導者の能力とは無関係に、軍事的有効性に影響を与える可能性があると言える。というのも、忠誠とは双方向のプロセスであり、権力や物質的資産における利益や恩恵へのアクセスと引き換えに、個人的な忠誠が上官に提供されるからである(Gel’man 2016: 460)。このメカニズムは、役職者が上司の意見と一致しない意見を放映することで利益や利益を失うことを恐れたり、「不誠実(disloyal)」と認識されたりするため、主導性と動機を抑制する可能性がある。例えば、ウクライナ侵攻に至るまでの期間、ウクライナ連邦保安庁(FSB)の将校は疎外や解任を恐れたため、現地の状況に関する真実ではなく、大統領の聞きたいことを大統領に伝えたと広く信じられている(Abdalla et al 2022; Galeotti 2016: 13)。このため、戦争が開始された当初から、達成不可能な目標を掲げて軍隊を設立するというインテリジェンスの失敗につながった(Dylan et al 2022)。軍指導部についても同様の主張がなされており、彼らはロシア軍の真の準備態勢や状態、戦場で遭遇する問題について大統領を欺いたと疑われている(Holland and Shalal 2022)。このように軍が適格な助言だけでなく、誠実な助言も提供できなかったことが、侵攻前と侵攻中の意思決定の誤りを招き、戦場でのパフォーマンスに深刻な影響を及ぼしたと予想するのは無理からぬことである(Arasli 2023)。
ロシア軍の指導者たちが、大統領に正直な情報や助言を伝えることを恐れているのは、それが特権の喪失や報復、解任につながる可能性があるからだ。戦争の準備、計画策定、遂行には、利用可能な作戦能力と計画を現実的な目標に確実に合致させるために、政治指導者と軍事指導者の間で開かれた対話が必要であることは、民軍関係の文献でよく理解されている(Feaver 2003: 145)。ウクライナの戦場におけるロシア軍の劣勢を説明するために、この議論を遡及的に適用することには注意点がある。ロシアの戦略的意思決定や、クレムリンと軍指導部との相互作用の本質に関する体系的な情報には、ほとんどアクセスできないからだ。ウクライナ侵攻までは、プーチンの外交政策と軍事力の行使がますます積極的になり、クレムリンが参謀本部からの助言に依存する傾向が強まったという指摘があった。さらに、クリミアとシリアでの作戦の成功は、クレムリンの軍に対する支持を強めただけでなく、エリートの意思決定に対する軍の影響力を高めた可能性もある(Blanc et al 2023: 95-97)。
開戦以来、ロシアと西側のメディアは、ウクライナ国内を含むさまざまな部隊司令部への大統領の訪問を定期的に報じてきた。これらの訪問では、作戦を指揮する軍首脳と会談し、最新情報を得るとともに、プーチン自身の言葉を借りれば、「事態の進展について意見を聞き、話を聞き、情報を交換する(to hear your opinion on how the situation is developing, to listen to you, to exchange information)」(Armstrong 2023)。もちろん、これらの報道を額面通りに受け取るのはナイーブだろうが、忠誠心を求めるプーチンの欲望が、プーチンの戦争を闘う軍部による適格な意見をほとんど封じ込めてしまったという考え方もあるのだろう。戦争における重要なターニング・ポイントは、クレムリンが政治的に好都合だと考えたからではなく、軍事的な必要性から、軍指導部から伝えられた厳しい真実を背景に、いくつかの困難な決断が下されたことを示唆している。たとえば、戦争のごく初期にロシア軍がキーウとウクライナ北部から撤退し、2022年秋にヘルソンから撤退したことは、プーチンの最大主義的な政治的目的と一致せず、クレムリンにとってかなりの政治的・評判的後退を意味した(Eckel 2022)。ディミトリ・ミニッチ(Dimitri Minic)が発見したように、ロシア国内ではウクライナでの作戦遂行に批判的な意見が後を絶たず、その中にはロシア軍の戦場でのパフォーマンス改善を求める軍将校からの勧告も含まれている。彼の見解によれば、これがさまざまな適応の成功につながり、軍隊は戦役(campaign)の初期段階で遭遇した問題を克服することができたという(Minic 2023)。
戦争計画策定における軍の専門的自治権への干渉
クレムリンに的確な助言を提供したロシア軍指導部の能力と勇気はさておき、オブザーバーは、特に侵攻の直前において、軍が戦略の計画策定からほとんど排除されており、このことが軍事的有効性に深刻な影響を及ぼしたと主張している。国防計画策定と、利用可能な軍事的選択肢に関する政治指導部への助言は、ロシア参謀本部の中心的な任務であるにもかかわらず(Blanc et al 2023: 10-11)、侵攻の実施方法に関する決定は、プーチン大統領が、せいぜい軍指導部の最上層部を含む信頼できる顧問の小さなサークルと秘密裏に行ったことが示唆されている。この戦役(campaign)の原動力となったのは、参謀本部ではなく連邦保安庁(FSB)であったという疑惑がある(Dalsjö and Norberg 2022: 14)。参謀本部は、達成不可能な目標を軍隊に設定し、侵攻が決定された後の準備と計画策定にはあまりに時間がなかった。作戦・戦術レベルの指揮官はもちろん、前線に送られた兵士でさえ、侵攻の前日まで計画について知らされていなかったと伝えられている(Blanc et al 2023: 98-99)。ロシア行政府が戦争の計画策定における軍の自主性に課したこうした制限は、民軍関係にさらなる緊張をもたらしただけでなく(Shamiev 2023)、特に戦争の初期段階において、戦場の有効性に深刻な影響を及ぼした(Arasli 2023, Blanc et al 2023: 77; 98-99)。
もちろん、大規模な戦争の計画策定や準備から軍を排除することが、戦場での非効率につながったという指摘はまったくもっともである。政治家と軍隊の間に明確な役割分担があれば、民軍関係(civil-military relations)はより調和的であり、軍事的有効性につながることは広く理解されている。いつ戦争に踏み切るかについての政治的意思決定は民間人だけの領域だが、専門家である軍部には、用兵(warfighting)という専門分野の中で広範な自律性と影響力が与えられなければならない(Huntington 1957: 84)。そのためには、助言することを恐れない熟練した軍事指導者が必要なだけでなく、軍事指導者が「軍事的に論理的な国家の到達目標を追求するために(軍事指導者と)意思疎通を図り、影響を与える」(Millett et all 1986: 44)ことを可能にする政治行政も必要である。政治指導者の側が軍の専門的能力を軽視することは、軍事的に非論理的な到達目標の追求や勝ち目のない戦争につながり、その結果、戦場での失敗や戦略的敗北につながることが、比較文脈の研究から示唆されている(例えば、Brooks 2008; Freedman 2023)。
ウクライナへの本格的な侵攻の場合、クリミア併合やシリアへの介入の場合と同様、戦争に踏み切ったのはクレムリンだと疑う理由はほとんどない。しかし、秘密主義を特徴とし、プーチンの小さな内輪(inner circle)が支配するロシアの「ネオ・パトリモニアル体制(neo-patrimonial regime)」における行政の意思決定の本質を考えると、オブザーバーは、戦役(campaign)に向けた戦略の計画策定への軍の関与の程度について疑問を呈するのは当然である。2022年2月のウクライナ侵攻の決定は、大統領を中心とした少数の顧問グループによってなされた可能性が高い。しかし、このグループの誰が具体的に関与していたのかは不明であり、また、計画策定プロセスのどの段階においても軍指導部にどの程度の指導や専門知識を求め、提供していたのかも不明である。本格的な侵攻の実現可能性と成功の可能性の議論に関して言えば、軍事顧問の大幅な関与がなかったとしても、たとえばウクライナ東部への介入がより限定的なものになるなど、根本的に異なる結果につながったとは到底保証できない。2009年の調査では、ロシアの文民エリートたちと軍事エリートたちの間で、外交政策の優先順位に若干の違いがあることがわかったが、外交政策の手段としての武力の有用性については、後者の方がより「寛容(permissive)」な見方をしていることもわかった。同調査は、「軍事保守主義(軍事専門家が外交政策において自制の代弁者であるという見解)は、現代ロシア国家における民軍関係(civil-military relations)の支配的パターンを適切に反映していない」と結論づけた(Stewart and Zhukov 2009: 336)。ロシアの軍事指導者が公の場で政治的見解を表明することはほとんどないが、特にクリミア併合に成功して以来、プーチンの軍事化が進む外交政策によって、ロシアの外交政策の到達目標に対する文民と軍部の見解がさらに収束(convergence)していったことを示唆する証拠がある(Bruusgaard 2014: 87; Westerlund 2021: 42)。
2021年を通じてウクライナへの本格的な侵攻の可能性が高まったとき、ロシアの軍事アナリストの中には、少なくともウクライナの軍事力が向上しているため、そのような事業の危険性と困難性を警告する者もいた(Khodarenok 2021; Khodarenok 2022)。しかし、これは一致した見解ではなかった。他の多くのアナリストは、ウクライナの軍事力はロシアのそれに比べて弱く、無視できるものだと見なしていた(Boltenkov 2021; Al’shaeva 2021; RIA Novosti 2022)。クリミアとシリアにおける軍事改革の成果と作戦上の成功は、ロシア軍の自信と態度を著しく向上させた(Giles 2017)。そのため、クレムリンと同様、軍指導部もウクライナに対する迅速かつ決定的な勝利が非常に現実的な見通しだと考えていたことは想像に難くない。もしそうだとすれば、ロシアを長期化しコストのかかる戦争に引きずり込んだのは、民軍関係(civil-military relations)の機能不全よりもむしろ、「軍政指導部(military-political leadership)」の側の思い上がりだったということになる。
ロシアの民軍関係は基本的に対立関係にあるというコンセプトに基づき、アナリストたちは、クレムリンの意思決定における秘密主義と、計画策定プロセスにおける軍事的専門知識の排除は、「内輪(inner circle)」以外の人々に対する不信の結果であると示唆した。このため、戦役(campaign)を計画策定する時間があまりに少なく、特に戦争の初期段階において軍事的有効性を上げることができなかった(Blanc et al 2023: 98-99; Gomza 2023: 459)。アムンド・オスフラテンは、数十年にわたるロシアの軍事作戦にまたがる「ロシアの正規陸上戦(Russian way of regular land warfare)の方法」についての詳細な研究の中で、別の解釈を提示している。彼の目には、ロシアの文脈の中で、2022年2月の侵攻の正確な計画を直前まで可能な限り秘密にしておくという決定は、作戦術(operational art)に関するロシアの伝統的な考え方に沿った意識的な決定であり、誤算ではなかったと映っている(Osflaten 2023: 156)。彼は、歴史的な観点から、2022年の侵攻は、秘密裏に作戦の初期段階で奇襲をかけることに重点を置く、侵攻に対する「標準的なロシアのアプローチ(standard Russian approach)」に従って計画されたと示唆した(Osflaten 2023: 174)。この「標準的アプローチ(standard approach)」の中では、作戦レベルの計画策定、最適と思われる兵力構成の準備、奇襲の要素の維持が何よりも優先される。戦術レベルや個人レベルでの備えを犠牲にするという事実は、計算されたリスクとして受け入れられている(Osflaten 2023: 168)。このアプローチは、2008年のグルジアや2014年のクリミアなど、過去の侵攻では有効であることが証明されていたが、ウクライナへの本格的な侵攻にはスケール・アップできなかった。この解釈によれば、侵攻の初期段階における戦術的な非効果性は、「ロシアの戦争方法(Russian way of war)」に内在する計算されたリスクの結果であり、今回はそれが実を結ばなかったのであって、文民と軍部の関係に誤りがあった証拠ではない(Osflaten 2023,特にpp. 150–180)。
ロシアの軍事的有効性に関する見解
「軍事的有効性(military effectiveness)」の定義と測定の難しさ、そしてこのことがロシア・ウクライナ戦争における民軍関係との接点に関する知見に与える影響は、これまでのこのテーマの分析ではほとんど語られることなく放置されてきた。上記のフリドマン(Fridman)が指摘したように、ロシアの文脈における軍事的有効性の意味を考えることは重要である(Fridman 2019: 159)。例えば、「人命と資源において許容可能なコストで(at an acceptable cost in lives and resources)」到達目標と任務を達成する能力は、軍事的有効性についての西側の理解の中心である(Bruneau and Croissant 2019: 1)。ロシアの認識では、この有効性の尺度はそれほど中心的なものではないようだ。例えば、過剰な部隊防護は長所ではなく、先端技術に大きく依存する西側諸国の軍隊に特徴的な短所として認識される傾向がある(Brychkov et al 2019)。これは、ロシアが「自らの損失に対するはるかに高い抵抗力(much higher resistance to its own losses)」(Khramchikhin 2020)と「意識的な自己犠牲(conscious self-sacrifice)」(Khramchikhin 2019)に対するより強い準備によって効果的に利用できる弱点である。ウクライナ戦争の経済的コストも、西側の軍事的有効性の枠内では一見見えない。2024年5月の軍管区司令官との会談でプーチンは、ロシアの軍事費はソ連が費やしたGDPの13%にはまだ達していないものの、同年にはほぼ9%まで引き上げられたと誇らしげに発表した(ロシア連邦大統領2024年)。彼の目には、これは明らかに成果であり、軍事的有効性に関する問題ではない。
軍事的有効性と軍事的勝利の間の複雑な関係は、どちらも議論の余地のあるコンセプトであり、ロシアの民軍関係と軍事的有効性の接点を研究する際には留意する必要がある。戦争は戦略的な活動であるため、その目的が作戦地域での軍事的成功に限定されることはほとんどなく、「外交・経済活動のより広範な全体像に適合する(fit into a broader picture of diplomatic and economic activity)」(Monaghan 2022)。このように、戦争における勝利とは、単に領土の獲得や損失といった客観的な指標の達成や、開戦時に明示された固定的な戦略的な到達目標の達成を意味するものではない。さらに、交戦国の目標は、戦況の変化により、戦争期間中に定期的に変化する。つまり、「国家が戦争を始めたのと同じ理由で戦争を終わらせることはめったにない(states rarely finish wars for the same reasons they start them)」(Mandel 2007: 461-4)。戦争における勝利もまた主観的なものである。外国の傍観者による成功と失敗の評価が、政治指導者や戦争当事者に共有されるとは限らないからである(Mandel 2007: 265)。ジョンソン(Johnson)とティアニー(Tierney)が言うように、「勝敗は見る者の目の中にある(victory is in the eye of the beholder)」のであり、誰が最終的に戦争に勝ったかという認識は、必ずしも「現場の結果と結びついている(linked to the results on the ground)」わけではないのである(2007: 61)。
この記事を書いている時点で、ロシアとウクライナの戦争が始まって2年以上が経過しているが、戦争の帰趨はいまだ予断を許さず、どちらの側にも決定的な軍事的勝利を収めることは難しい。ロシア軍はウクライナ全土の制圧と占領に失敗しており、この目標は今後も達成されない可能性が高い。しかし、この到達目標に到達できなかったことや、戦場で遭遇した戦術的な問題が、ロシアの軍隊の有効性に関する見解を現在、そして将来にわたってどの程度形成しているかは不明である。クレムリンがこの戦争を、長年の外交・国内政策目標に沿った他の重要な点で、効果的なものだと認識している可能性は低くない。これには、「近くの海外(near abroad)」での戦略的利益の維持と拡大、「影響圏(sphere of influence)」での優位性の誇示、欧米の圧力に対抗できる大国としての地位の向上、体制の強化などが含まれる(Götz and Staun 2022, Fridman 2019)。
オスフラテン(Osflaten)は、ウクライナの敗北と占領が、クレムリンの目から見た戦争の成功の唯一の尺度ではなかった可能性を提起した。戦略的な誤算というよりも、全面的な侵攻はロシアの軍事計画担当者による意識的な「賭け(gamble)」であった可能性がある、と彼は推測する。奇襲を戦力増強に利用すれば成功できると考えていたとはいえ、こうした計画が失敗するリスクも受け入れていたのである(Osflaten 2023: 175)。彼の目には、侵攻からわずか1カ月でロシア軍がキーウ地方とウクライナ北部から速やかに撤退したことは、「ロシア軍は部分的に失敗を覚悟し、不測の事態に備えた(Russian forces were partially ready for a failure and prepared for contingency operations)」ことを示唆し、第2段階ではウクライナ東部と南部に焦点を当てたと映るかもしれない(Osflaten 2023: 176)。それはともかく、クレムリンがウクライナ全土の制圧に失敗したことを、自国の軍隊の有効性に重大な問題がある証拠だと解釈するのは当然ではない。戦争が始まって2年以上が経つが、クレムリンが描くウクライナでの成功は依然として「柔軟で、日和見的で、主観的(flexible, opportunistic and subjective)」なものだ(Provoost 2023)。戦争の結果、ロシアが決定的な敗北を喫し、現政権が終焉を迎えない限り、プーチンは、自国の軍隊が戦場でどれほど効果的に機能したかとは無関係に、その結果をロシアの勝利として国内聴衆や国際社会の一部に伝えようとするだろう。
結論
ウクライナ侵攻の際、ロシア軍は西側諸国の多くのオブザーバーが予想していたよりもはるかに効果的ではなかった。このことは、戦前の軍事分析の是非に疑問を投げかけ、敵対国の能力を将来的にどうすればより微妙に評価できるようになるかという議論を再燃させた。ロシアの民軍関係や、それが軍事的有効性にどのように関係しているかに注意が払われていなかったことは、重要な見落としであったと指摘された。このギャップを埋めるために、アナリストたちは、ウクライナにおけるロシアの軍事的失敗を民軍関係(civil-military relations)がどのように説明できるかについて、さまざまな説明を提示してきた。本稿は、これらの説明はもっともらしいが、ロシアの民軍関係と軍事的有効性の間の結びつきについては本格的な調査が必要であると論じた。民軍関係と軍事的有効性の因果関係を立証することの難しさ、「軍事的有効性(military effectiveness)」の意味の論争、現代ロシアにおけるエリートの意思決定に関するアクセス可能なデータの欠如を考慮すると、予備的な結論は議論の余地を残しておく必要がある。
本稿では、既存の民軍関係の枠組みはロシアのケースの特殊性を十分に捉えていない可能性があり、そのため、関係における機能不全(dysfunctions)がウクライナにおける軍事的有効性をどのように制限したかの解釈に歪みが生じる可能性があることを強調した。たとえば、文民領域と軍事領域が明確に区分されているという仮定は、クレムリンと軍隊の関係を基本的に対立しやすいものとしてコンセプト化しているが、これはロシアにおける関係のとらえ方を反映していないように思われる。このことは、ウクライナにおけるロシア軍の不振の原因として、ロシア軍の政治化、「クーデター防止(coup proofing)」の取組みと効果、軍の専門的自律性に対する文民の干渉について、オブザーバーが主張するいくつかの点に疑問を投げかけるものである。
ロシアの民軍関係には、本稿の範囲を超えて、さらなる調査に値する特異性が他にもある。2023年夏、エフゲニー・プリゴジン(Evgenii Prigozhin)率いるワグネル民間軍事会社による反乱未遂事件は、ロシアの民軍関係に深刻な機能不全があることを示す証拠として広く解釈された(Arasli 2023, Komin 2023)。実際、この出来事は、文民指導者と軍部との権力交換に焦点を当てた既存の枠組みではとらえにくい。プーチンのかつての側近であり、「内輪(inner circle)」の一員であったプリゴジン(Prigozhin)は、武装組織のリーダーであると同時に、文民エリートの一員でもあった。反乱後、政権の「クーデター防止(coup proofing)」が明らかに強化され、軍の指導者の何人かが解任されたが(Gomza 458-9)、反乱はすぐに終結し、政権に忠誠を誓う正規軍が参加したり、積極的に支援したりすることはなかった(Economist Intelligence Unit 2023)。プリゴジン(Prigozhin)の反乱は確かに厄介なものであったが、それがロシアの民軍関係について何を物語るのか、またウクライナにおける軍事的有効性にどのような影響を与えたのかは明らかではない(Baev et al 2023)。
ワグネル(Wagner)のような準民間軍事会社もそうだが、大規模な武装部隊を擁するロシア連邦保安庁(FSB)や国家警備隊など、正規軍以外のロシアの制服組の存在意義は、民軍関係に関する多くの研究において、まだ十分に掘り下げられていない。ドミトリー・トレニン(Dmitry Trenin)が指摘するように、民軍関係を研究する際には、「ロシアにおける軍隊の意味の複雑さ全体を考慮しなければならない。そこでは、「第一の軍隊(first army)」と肩を並べて、第二の軍隊が存在するのである」。既存の民軍関係の枠組みでは、こうした「その他の」サービスは、その全体が国防省傘下の正規軍と並んでロシアの権力ブロックまたは権力構造(silovye struktury)を構成しているが、クーデター防止策または政治指導部の権力基盤として軽視される傾向がある(Renz 2005: 560)。ロシアの民軍関係における対立の少ない可能性のあるモデルにおける権力構造(silovye struktury)の位置づけと、権力構造(silovye struktury)が軍事的有効性に及ぼす影響についてより深く調査することで、重要な新しい洞察が得られる可能性がある。
本稿はまた、「軍事的有効性(military effectiveness)」の定義と測定の複雑さ、そしてロシア人自身が自国の軍隊の有効性をどのように見ているかを、有効性が民軍関係によってどのような影響を受けるかを分析する上で、より明確に扱う必要があることを示唆した。これは、潜在的に問題となりうる教訓を学ぶことを防ぐために重要である。クリミアとシリアにおけるロシアの軍事作戦の有効性が、当時多くのオブザーバーを驚かせたことも忘れてはならない。これらの出来事は、ロシア軍に対する分析的関心を著しく高め、その結果、以前は控えめであった側面に関する新たな研究が豊富に行われるようになった。結局のところ、こうした洞察は、ロシア軍がウクライナでこの効果的なパフォーマンスを繰り返すことができなかったときの新たな驚きを防ぐことはできなかった。この意味で、ロシアの民軍関係と軍事的有効性の接点を分析するには、ロシアの歴史、政治、社会に関する深い文脈的知識が必要なだけでなく、戦略学と戦争の複雑な本質に関するしっかりとした基礎知識も必要である。これには、軍事的有効性を包括的に定義したり測定したりすることはできず、状況証拠に基づくところが大きいという認識も含まれる。結局のところ、このことは、ウクライナの事例から得られた洞察が、異なる文脈におけるロシアの軍事力の推定に役立つことを制限している。仮に今回のケースで、問題の多い民軍関係が軍事的有効性を著しく阻害したとしても、このことは、まったく異なる状況下で闘われるであろう将来の紛争において、ロシアの軍隊がどのようなパフォーマンスを発揮するかについては、ほとんど教えてくれない。ブルノー(Bruneau)とクロワッサン(Croissant)はこう結論づけた。セキュリティ対策が効果的であるために必要なこと、それを測定する能力、成功や失敗を説明する方法について、現実的でなければならない(Bruneau and Croissant 2019: 4)」。
最後に、ウクライナにとって、民軍関係によってロシアの軍事的有効性が制限されたとしても、それはほとんど慰めにならないことに留意しなければならない。ロシア軍は多くのオブザーバーが期待したほどの活躍を見せず、ウクライナの完全占領は望み薄だが、クレムリンは計り知れないコスト、痛み、破壊を与えた。潜在的な侵略国家を脅威にさらすのは、効果的な軍事力だけではない。それ以上に重要なのは、指導者たちの意図と、それがもたらすかもしれない代償を考慮せずにそれを行使する覚悟である。
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ノート
[1] 本稿は、2024年2月14日にFNDUのロシア・セミナーで行われた筆者の基調講演「民軍関係と軍事効果:ロシアのウクライナ侵攻からの教訓」を加筆・修正したものである。 ユハ・クッコラ、カトリ・ピノニエミ、ジュリアン・ウォラー、サラ・ウィットモアには、本論文の初期の草稿について有益なコメントをいただいた。 残りの間違いはすべて私自身のものである。
[2] Bruneau and Croissant’s 2019 volume categorises Russia as a ‘hybrid or semi-democratic political regime’ along with Turkey, rather than as a ‘nondemocratic system’ alongside China and Egypt. By 2019 when the book was published, this categorisation was at least questionable.
[3] Some of the major works are Kolkowicz, Roman, The Soviet Military and the Communist Party, Princeton, NJ, Princeton University Press; Kolkowicz, Roman and Andrzej Korbonski, Soldiers, Peasants and Bureaucrats: Civil-military relations in Communist and Modernizing Societies, Boston: G. Allen and Unwin, 1982; Odom, William E., ‘The Party-Military Connection: A Critique’, in Dale R. Herspring and Ivan Vogyles (eds.), Civil-military relations in Communist Systems, Boulder: Westview Press: 1978; Timothy J. Colton, ‘The Party-Military Connection: A Participatory Model’, in Dale R. Herspring and Ivan Vogyles (eds.), Civil-military relations in Communist Systems, Boulder: Westview Press: 1978; Timothy J. Colton, Commissars, Commanders, and Civilian Authority: The Structure of Soviet Military Politics, Cambridge: Harvard University Press, 1979; Timothy J. Colton and Thane Gustafson (eds.), Soldiers and the Soviet State: Civil-military relations from Brezhnev to Gorbachev, Princeton, NJ: Princeton University Press, 1990.