米陸軍のミサイルレーダー開発「センスオフ」競争
昨年10月に、米陸軍は装備の近代化計画の中で、統合航空・ミサイル防衛(IAMD)システムに組み込まれる老朽化したペトリオットミサイルシステムの能力向上のため、ロッキード・マーティン社とレイセオン社との技術開発契約を締結しました。
加えて、成熟した最新もので、ミサイル・レーダーの代替品をより迅速に追求するための要件を再定義する手段として「センスオフ」の計画を発表しています。
この「センスオフ」は、ロッキード社、レイセオン社の開発計画とは別の取り組みで、業界のどのベンダーも参加可能で、レーダー業界全体に競争の後押しをするものです。
今年に入って、2月にレイセオン社がこの「センスオフ」に参加を表明し、そのアーキテクチャに窒化ガリウム(GaN)を採用するなどの提案を準備していると発表しています。
オーストラリアやイスラエルの企業もこれに興味を示しているとFORECAST INTERNATIONAL社の記事で紹介されています。
1980年代に開発されたこのペトリオットシステムは、日本も平成年代当初に導入が開始され、現在は、高層のミサイル防衛を担当するイージスシステムとともに日本の低層での拠点防空の主装備となっていますが、イージスアショアの導入とともにそのペトリオットシステムについては、ミサイルの能力向上型が新中期防で計画されているものの、米国のIAMDのような現在の対空脅威への迅速な対応可能な全体態勢整備が必要とされていると思います。
加えて、現有装備が米国製のミサイルシステム中心(装備体系、技術)での整備となって、最新の日本や諸外国のその分野の体系的な技術検証を基盤とした要件定義や基盤整備も必要とされています。
今回の米陸軍で実施されている「センスオフ」なる試みは脅威の技術進展が急速に進む中、興味深い取り組みで、ロッキード・マーティン社がこの「センスオフ」の準備にイスラエルのレーダー会社と協力したとの記事がDefense Newsに出ていましので、最新装備の獲得競争の動向を見る上で参考になると考えますので紹介させて頂きます。
Lockheed and Israeli company team up for US Army missile defense radar ‘sense-off’By: Jen Judson
ロッキード社とイスラエルの会社は米陸軍ミサイル防衛レーダー「センスオフ」のために協力
2017年10月19日、日本の嘉手納飛行場の訓練区域に設置されているパトリオットミサイルレーダーシステム。
ワシントン – イスラエル航空宇宙インダストリー(IAI)社の子会社であるイスラエルのレーダー会社エルタ・システムズは、ロッキード・マーティンと米軍の低層航空・ミサイル防衛システムのために開発が計画されているレーダーの「センスオフ」で近々実施予定のデモのために協力している。
スポークスマンによると、ロッキードはデモのための最適なソリューションを会社が完成させるためにエルタ社と協議中であることを確認した。
エルタ社は軍の落札者リストに入っている企業の1つであり、ロッキード社とエルタ社は「両社から最高の技術を引き出すために」一緒に参加することを決めた。なぜなら「エルタ社との成熟した技術は、ロッキード・マーティン社が開発した非常に成熟した技術を補完するものだ。」とスポークスマンは語っている。
「陸軍がより迅速に行動しプログラムを加速させることを選択したとき、私たちにとってエルタと協力することは完全に理にかなったことだった。」陸軍は何年もの間その老朽化したパトリオットレーダーを置き換えるために360度から脅威を検出することができるレーダーを模索していた(軍は新しいレーダーにその能力を要求することから遠ざかっているように思われるが)。
もともと全体システムをパトリオットに交換することを意図していたが、陸軍はおよそ10年前にこれらの計画を遡って、先進の次世代レーダーを含む新しい統合航空・ミサイル防衛システムのコンポーネントを別々に開発した。
いくつかの次世代レーダー製品が高レベルの技術成熟度に到達しているので、軍が新しいレーダーを調達する上であまりにもゆっくり動いていると何年にも亘って評論家は言っていた。
議会はまた、軍が今後5年間で何かを調達することを義務付け、プロセスをスピードアップすることを陸軍に促していた。
陸軍は航空・ミサイル防衛を近代化の最優先課題の1つとし、陸軍は、競争力のある調達計画に先立って、利用可能なものを技術的に言えば入手可能なものを再評価するための「センスオフ」のデモを開催することが新しいレーダーにすばやく移動する最良の方法だと決心した。
センスオフのデモは、今年5月から6月にかけて、ニューメキシコ州のホワイトサンズのミサイル試験場で行われる予定である。 各ベンダは、レーダーを使用して機能を実証するために約2週間の期間を予定している。
センスオフは、ロッキード・マーティンとレイセオンが参加するために選ばれ、すでに開発中の技術開発プログラムに対する別の取り組みである。
そのセンスオフの結果で、陸軍は2022年度末までにレーダーの製造が可能かどうかを検証するために6種類の試作品を製造する1社を選択することを計画している。 追加レーダーの追加契約も予定されている。
エルタ社はそのマルチミッションレーダーで知られており、最近フィンランドにそのELM-2311コンパクトMMRを供給したが、それは世界的に100以上のシステムを販売している。
そのコンパクトなMMRに加えて、エルタ社はアイアン・ドーム用のMMRを供給している。―米軍は2個高射中隊分を購入―David Sling(ダヴィデのスリング[1])、両方ともイスラエルの防空システム。
エルタ社のレーダーは、イスラエル、ガザ、レバノン、シリアの国境で、過去5〜10年間に何千ものロケットとミサイルを探知しており戦闘での実証済みである。
(黒豆柴)
[1] David Sling;ヘブライ語のMagic Wandとしても知られるDavidのSlingは、短距離および戦域用弾道ミサイル、大口径ロケット、巡航ミサイルから防御するように設計されたイスラエルのシステムで、米国と共同開発。アローシステムもアイアンドームも効果的に防御することができない軌道で発射された戦域の敵のミサイルやロケットに対するイスラエルの防御の中層として機能することを意図している。https://missilethreat.csis.org/defsys/davids-sling/