S-400の大失敗-トルコのF-35関連企業参加に注目

掲載:2019年3月5
作成:フォーキャストインターナショナル(FI)社
投稿:Joakim Kasper Oestergaard Balle FI社のWebmaster
(この論評は米国FI社のアナリストが米国内に向けて出したブログです)

S-400 Debacle – A Close Look at Turkey’s F-35 Industrial Participation

トルコは、2018年6月21日、テキサス州フォートワースでの式典で、最初の2機のF-35を納入した。
トルコへのF-35の国内配送を禁止する差し止め命令によりパートナー国としての国の将来は危険にさらされている。

背景情報:トルコは、NATO加盟国かつ重要な地政学的パートナーで、1999年にプロジェクト(注:F-35型機の国際共同開発)が公式に開始されて以来F-35 のパートナー国である。
トルコは、契約済みの14機の最初のロットとともに、100機のF-35ACTOL型機を調達する予定で、米国、日本、イギリスについで4番目に大きいF-35調達国である。
トルコは、航空宇宙産業におけるリーダーになりつつあり、そしてトルコの企業は、約120億ドル相当のF-35の部品に関して貢献することが期待されている。
2018年6月18日、米国の上院は、トルコがロシア製のS‐400 防空ミサイルシステムの購入を決定したことから、F-35の移送を阻止する法案を通過した。数日遅れて6月21日、トルコは、フォートワースにおいて実施された式典において、最初の2機の航空機を受領した。
今のところ、その航空機はパイロット訓練のためにルーク空軍基地に駐留している。

2019年2月19日、ドナルド・トランプ大統領はトルコへのF-35の供給停止の法律に署名した。
トルコがロシア製のS-400地対空ミサイルシステムを調達するというその決定にその確固とした根拠を置いているので、F-35計画に関するパートナー国としてその国の将来の役割は疑問である。
したがって、F-35プログラムに対してトルコの防衛産業基盤が果たしている役割を詳細に検討することがますます重要になってきている。トルコがこのプログラムから追い出された場合には、同国の業務範囲(SOW)が各国の争奪の的になるため、F-35のライバル供給各社がその動静を注視しているとしても、何ら驚くべきことではない。
トルコのSOWは確かに既存のサプライチェーンに吸収される可能性があるが、プログラムへのその国(注:トルコ)のかかわりは膨大であり、すべての業務を大幅に遅らせることなしに、単純に徹夜で進めることはできない。実際には、業務パッケージによっては他の業務パッケージよりも進めることが簡単になる段階的なプロセスがあるだろう。
2018年7月に下院軍事委員会(HASC)議長に送られたレターの中で、当時のJames Mattis国防長官は、計画からすべてのトルコの供給業者を取り除くことによって、最大18-24ヶ月、50-75機の航空機の供給が遅れる可能性があると語った。

トルコのもっとも大きなF-35サプライヤーは、トルコエアロスペース産業(TAI)であり、2008年以来F-35プログラムをサポートしてきている。TAIの最も複雑な業務パッケージは、二次供給元としての中央胴体の製造と組み立てである。
カリフォルニアのエルセグンドーにあるノースロップグラマンは、メインの中央胴体生産者であり、TAIは400 F-35の中央胴体を納入することになっている。
TAIは又、ウェポンベイ(注:胴体内兵器倉)のドアや中央胴体の複合材のスキンやパネルも製造している。さらに、同社は、機体の複合材の吸気ダクトを製造している。数年前、これらは、オ-ビタルATK(現在ノースロップグラマン)によって作られ、自動ファイバー積層(AFP)装置によって製造されている。
TAIはまた、F-35の空対地パイロン(精密機械加工された高耐性アルミニウム構造)の45%を、デンマークのテルマ・エアロストラクチャー(45%)とともに製造しており、残りのパイロンは、カリフォルニア州イングルウッドにあるマーヴィン・エンジニアリング(10%)によって製造されている。空対地パイロンは兵器や外部の備品を運び、航空機の代替任務装備(AME)パッケージの一部である。

  • 他のトルコの供給業者

    ・Alp Aviation:2004年以来本計画に関して、ALp Aviationは、金属機体構造物と組立構成品、着陸装置構成品、及び100基を越えるF135エンジン部品を製造している。
    ・Ayesas:F-35の2つのキー構成品であるミサイル誘導装置のインターフェースユニット及びパノラミックコックピットディスプレイの唯一の供給業者
    ・Fokker Elmo Turkey (GKN): F-35の(注:機体内)電気配線相互接続システム(EWIS)の40%を製造し、さらにすべての中央胴体配線システムの生産でTAIをサポートしている。
    ・Fokker Elmoは、F135エンジン用のEWISも開発した。その大部分はイズミルにある同社の施設で生産されている。
    ・Havelsan:2005年からF-35のトレーニングシステムをサポートしてきた。さらに、同社は将来のトルコのF-35統合パイロットおよびメンテナンストレーニングセンター(ITC)と関連するトレーニングシステムの構築を開発においてトルコのリーダーとして尽力してきている。
    ・Kale Aerospace:2005年からF-35サプライヤー。TAIと連携して、F-35機体構造物と組立構成品を製造している。
    Kaleは、着陸装置アップロックアセンブリの唯一の供給元としてHeroux Devtekもサポートしている。さらに、KaleはPratt&Whitneyとイズミルに合弁会社を設立し、F135エンジン用の生産用ハードウェアを製造している。
    ・Roketsan、ÜBİTAKSAGE:F-35のウェポンベイに搭載される事になる精密誘導スタンドオフミサイル(SOM-J)を開発し、インテグレートし製造するためにロッキードマーチンと提携した。
    ・SOM-Jは、高度に防御された高価値な(注:作戦上の)対水上戦(ASuW)及び地上目標に対して使用するために設計されている。(黒豆芝)

投稿者:Joakim Kasper Oestergaard Balle

デンマークのAarhus School of Businessで財務及び国際ビジネスの修士号取得。
Forecast International のWebmasterで、ヨーロッパのAero Webの編集者
民間航空及び防衛部門の専門家でデンマークのTerma Aerostructures と提携